説明

クレンジング効果と化粧下地効果を有するW/O乳化型化粧直し用組成物

【課題】本発明の課題は、外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に美しい仕上がりの化粧直しが実施できる組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、以下で構成されている組成物である。
(1)油中水型乳化物による拭き取りクレンジング化粧料
(2)W/O乳化剤としてポリエーテル変性シリコーンを含有する。
(3)クレンジング剤として揮発性環状シリコーンを含有する。
(4)乳化安定剤として、揮発性環状シリコーンをゲル化することができる成分を含有する。ゲル化剤としては、有機変性粘土鉱物および、または部分架橋型シリコーン、脂肪酸デキストリンがあげられる。
(5)化粧直し後の化粧モチを悪化させないために、エステル油および炭化水素油の含有量が10%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング効果と化粧下地効果を有する化粧直しに好適な化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、社会的な傾向としてすべてに迅速で簡便なことが要求されることが多く、しかも効果がはっきりと感じられるものが求められている。例をあげると、化粧時間の短縮化ができるパウダーファンデーション等や、リンスインシャンプーのように簡単に洗髪とトリートメントが行える多機能化された製品の技術開発がなされており、その時々で新しい化粧料剤形が市場に提案されてきた。他にも、洗顔とクレンジングを同時に行うクレンジング化粧料や、マッサージとパックが同時にできる化粧料などが開発されている。そこで、我々は、化粧動作のなかでも化粧料の多機能化による動作の迅速化、簡便化が検討されていない事柄として、化粧料の除去と再塗布という、メーキャップ料の化粧直し動作に注目した。
【0003】
一般的な化粧動作としては、化粧直しは、家庭で行われることは、ほとんどなく会社などの外出先で行うため、当然のことながら、充分な設備や時間がなく簡単に行わなければならないことが多い。そのため、実際にはメーキャップが崩れた部分におしろいを塗布するだけということが多いように思われる。この方法は、メーキャップが均一に透明化した場合にのみ有効である。しかし、通常メーキャップ料の崩れは鼻の周りや額などの比較的皮脂が出やすく運動量の多い部分で、当初均一であったメーキャップ料の塗布膜の密着性が低下し、移動することで不均一化し「ヨレ」といったかたちで発生することが多い。このような部分的なメーキャップの崩れ、「ヨレ」に対して、その上からおしろいなどのパウダーを塗布するだけといった化粧直しを行った場合、メーキャップ料の塗布膜が不均一になった状態が発生している上からの修正であるので、充分な化粧直しの効果は得られない。また、何度もこの方法で化粧直しを行った場合には、非常に不自然な仕上がりとなり、逆に肌の状態が悪く見えるといったことが往々にしてありうる。
【0004】
このようなメーキャップの部分的な崩れ、「ヨレ」をほぼ問題なく修正するためには、最低のステップとしても、崩れ、「ヨレ」の部分を完全に落としてから、化粧下地を塗布し、再度メーキャップ料をつけるといった作業が必要であることはわかっているが、実際に外出先でこのようなことを行うことは、煩雑であり時間もかかることでほとんどなされることはない。また、現在のメーキャップ料の処方化技術は、以前のものと比べて化粧持ちを格段に向上させることに成功している。これはメーキャップ化粧料の耐水性、耐油性を向上させることにより、化粧崩れしにくいように処方設計されているためであり、実際メーキャップ料を落とすことに多くの困難を伴うようになっている。
【0005】
今日では、特に皮脂に対しての化粧崩れに注目されており、シリコーン系の基剤の使用が増えている。特にシリコーンレジンやガム質シリコーン、シリコーングラフトアクリル樹脂のような成分が配合されていると、化粧膜が皮膚に固着した状態となり、専用のクレンジング剤を使わないと化粧落としができないといった場合もありうる。これらのメーキャップ料の化粧モチに対する技術開発で、化粧崩れは発生しにくくなってきているが、いまだほとんどの使用者で朝に行ったメーキャップが夕刻まで化粧崩れしないということはありえない。これらのことから、外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に化粧直しが実施できる組成物が発明できれば新しい化粧料製品として認知されるのではと考え研究を開始した。
【0006】
上記した技術に比較的近いものとして以下のものが挙げられる。まず、特許文献1、特許文献2を利用した「メーク落とし化粧料」の開発が挙げられる。これらはアニオン性界面活性剤によるクレンジング用化粧水や、親水性の非イオン性界面活性剤を比較的多量に配合したマイクロエマルジョンであるクレンジング用化粧水または、乳液である。これらの化粧料をコットンや不織布に含浸させメーキャップ料を拭き取って落とすことができ、これを使用した後にメーキャップ料を塗布すれば簡便であるように思われる。しかしながら、アニオン性界面活性剤や非イオン性の界面活性剤だけでは、メーキャップ料との混和性が不充分であるため、クレンジング能力については十分な効果を期待することはできず、簡単にキレイに拭き取れるということにはならない。また、クレンジング後に残存する多量の界面活性剤が、皮脂ばかりでなく汗とも混和性を向上させるため、化粧直し後の化粧モチが著しく低下することは自明である。
【0007】
一方、特許文献3は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルを用いることで水性洗顔料も、油汚れも同時にふき取れる多機能の拭き取り化粧料である。化粧崩れしたメーキャップ料を拭き取って落とした後、そのままメーキャップ化粧料を下地料なしで塗布できるという、クレンジング、水性洗顔、下地料の機能を備えた拭き取り化粧料として開示されている。このものについては、前記特許文献1及び2に記載のクレンジング化粧料の先行技術と比較すると、界面活性剤の配合量が少なくてもある程度のクレンジング効果が得られるため、化粧直し後の化粧モチの低下は比較的良好であるといえるかもしれないが、このポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルの性質上、水と混和性が高いため、たとえ残存量が少量であっても塗布したメーキャップ料の化粧モチ効果を維持するとはいい難い。また、特にシリコーンレジンやガム質シリコーン、シリコーングラフトアクリル樹脂のような成分が配合されることで化粧モチが格段に向上した製品においては、化粧落とし効果自体が不十分である。
【0008】
また、特許文献4に記載のフッ素化合物と液状の油性基剤を含有するクレンジング組成物として開示されているものの中にW/O乳化型(油中水型乳化物)クレンジングクリームがあるが、この組成物については、油中水型乳化物のためメーキャップ料と簡単になじみ良好な化粧落とし性を発揮する。ところが残存油分として流動パラフィンや、パルミチン酸イソプロピルのような皮脂と混和性が高い成分が多量に配合されているため化粧直し後の化粧モチの低下がおこる。また、残存油分が多いため夏用のさっぱりとした使用感が必要とされるメーキャップ料については不都合である。つまり、化粧崩れしやすい夏場に使用するには不適当であるということが言える。
【0009】
特許文献5に記載のポリエーテル変性シリコーン及びポリエーテル変性以外のシリコーンを配合したクレンジング化粧料が開示されている。このものを本目的の化粧直し用組成物に利用することは可能であると考える。しかしながら、この組成物は処方および製法からO/W乳化型(水中油型乳化)または、油性成分が比較的粗大な粒子となって水性ゲル中に分散されていると考えられる。この構造上、ある程度水分が蒸発するまで、または、ゲルから油性成分が分離・放出されるまでのタイムラグがあるので、スムーズな化粧落としといった面では不十分である。加えて、外相が水系であるため、紙類との相性が悪く使用性が低下するといった面がある。たとえば、外出先で最も入手しやすいと思われるティッシュペーパーにこの組成物を取って使用した場合、外相にある水分を吸収してティッシュペーパーが軟化し使用性が低下するといった問題が発生する。そのため水分で軟化しないコットン、不織布などを入手してふき取る必要がある。これらのことから本来目的としていた外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に使用できる化粧直し用組成物としては不適格であるといえる。
【特許文献1】特開2002−541182号公報
【特許文献2】特開平8−143420
【特許文献3】特開2005−97146号公報
【特許文献4】特開平6−227942号公報
【特許文献5】特開2001−181133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に美しい仕上がりの化粧直しが実施できる組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成すべく本発明者らが、検討を重ねた結果、手近な用具で簡単、迅速に美しい仕上がりの化粧直しが実施できる組成物を発明するに至った。つまり化粧落とし後、そのままでメーキャップ化粧料を塗布することができ、美しく仕上がるり、しかも、メーキャップ化粧料の化粧モチ効果を維持できる組成物である。これを利用することにより、化粧直し動作に於ける、化粧ステップを簡略化しうることを見出した。即ち、本発明は、以下で構成されている組成物である。
(1)油中水型乳化物による拭き取りクレンジング化粧料
(2)W/O乳化剤としてポリエーテル変性シリコーンを含有する。
(3)クレンジング剤として揮発性環状シリコーンを含有する。
(4)乳化安定剤として、揮発性環状シリコーンをゲル化することができる成分を含有する。ゲル化剤としては、有機変性粘土鉱物および、または部分架橋型シリコーン、脂肪酸デキストリンである。
(5)化粧直し後の化粧モチを悪化させないために、エステル油および炭化水素油の含有量が10重量%以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に美しい仕上がりの化粧直しが実施できる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最も重要な点は、化粧直し用組成物がW/O乳化(油中水型乳化)ということであり、このエマルジョン外相の大部分は揮発性環状シリコーンであるのでW/S乳化とも呼ばれる状態である。このことによってメーキャップ料に迅速になじむことができるため、簡単に手早く化粧落としをすることができる。実際、ファンデーションや、口紅、アイシャドウなど一般的なメーキャップ料は、塗布後、ほとんど油性原料と着色剤の混合物になっている。例えば、パウダーファンデーションやパウダーアイシャドウ、リップスティックなどは、組成物自体が油性原料と着色剤の混合物であり、水分は不純物程度しか存在しない。また、クリームファンデーションは、W/O、O/Wどちらの乳化タイプでも塗布直後こそは、水分が含有されているが塗布後10分も経つと、ほとんどの水分は蒸発して油性原料と着色剤の混合物になってしまう。しかも化粧モチを良好にするために、その油性成分はシリコーンおよびシリコーン誘導体がほとんどである。そのため、水系およびO/W乳化のクレンジング料の場合、化粧落としをする時点では、ほぼ油性になったメーキャップ料とのなじみが悪く、充分なクレンジング効果が得られないことが多い。実際、完全にクレンジングを行おうとした場合には、クレンジングオイルを使用した後、クレンジングフォームなどのセッケン類を用いた多段階のクレンジングが行われている。
【0014】
ところで、ほとんどのクレンジングオイルは、多量の親水性界面活性剤が配合されており肌への負担が大きく、必ず水で洗い流す必要がある。クレンジングフォームは、洗い流しが前提であることは当然であり、洗い流さないと皮膚トラブルの原因になるため、本発明品のような目的に使用することはできない。ところが、本発明品は、ティッシュペーパーや、コットン、不織布にこの組成物を塗布した後、化粧崩れした部分を軽くふき取るだけで、きれいにクレンジングすることができ、後で洗い流す必要はない。本発明のような外相が揮発性環状シリコーン主体のW/O乳化物は、強固な皮膜で皮膚に密着するシリコーンレジンやガム質シリコーン、シリコーングラフトアクリル樹脂のような、化粧モチを格段に向上させる代表的成分でも同様にすばやくなじみ溶解させることができるのが特徴である。
【0015】
本発明品の化粧下地効果については、以下の点で有利である。W/O乳化物であるため皮膚に水分を与えなめらかな状態にする。ファンデーションのノリを良くし、均一な塗布膜を作りやすくする効果がある。揮発性環状シリコーンを利用しているため、化粧直しに使用するメーキャップ料が素早くなじみ一体化した後、蒸発することで一層密着度が向上する効果もある。また、W/O乳化であるため実質的に親水性の界面活性剤は配合しなくてもよいので、化粧直し後の汗による化粧崩れが非常に起こりにくい。
【0016】
本発明の化粧料に用いるポリエーテル変性シリコーンは、一般に市販されているものでよく、KF−6017、KF−6028、KF−6038(信越シリコーン社製)やABIL EM−90(ゴールドシュミット社製)、SH−3771M、BY22−008、FZ−2233(東レ・ダウコーニング社製)などが例示される。そして、ポリエーテル変性と同様にアルキル変性やアルコキシ変性、アミド変性のような他の変性、および共重合などがなされているものを用いることが出来る。その配合量は、0.1〜10.0重量%が好ましく、特に0.5〜3.0重量%が好適である。0.1重量%以下の配合量であると、W/O乳化を安定化することができず、直ぐに水相と油相に分離してしまい良好な使用性が得られない。ポリエーテル変性シリコーンは、一般的に高粘度であり揮発しない。その配合量が10.0重量%以上の場合は、ふき取り後も残存しべたついて使用感が不良になるなど、化粧直しをした後のメーキャップ料によくない影響を与える。
また、ポリエーテル変性シリコーンは揮発性環状シリコーンと比較すると非常に高価であるためコスト面においても過度の高い配合率は望ましくない。
【0017】
本発明の化粧料に用いる揮発性環状シリコーンは、通常デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが例示されるが、揮発スピードおよび安全性の面から、デカメチルシクロペンタシロキサン単体か、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンを一部混合したものが好適である。配合量は、5.0〜40.0重量%であり、特に10.0〜30.0重量%が好ましい。配合量が5.0重量%以下だとW/O乳化の外相が少なくなりすぎるため、安定な組成物とすることが困難になり通常の製造方法では、なかなか安定に乳化しない。また、油相に水相を長時間かけて徐々に添加するなどの特殊な方法で乳化した場合でも塗布した瞬間に乳化が破壊されて離水し、油性のメーキャップ料と肌の間に水分が存在する状態になり、メーキャップ料とのなじみが低下し化粧落としが良好な組成物とはならない。また、40.0重量%以上の場合では、外相が多すぎるため粘度が低くなりすぎ乳化安定性が低下して分離しやすくなるため好ましくない。
【0018】
本発明の化粧料に用いる乳化安定剤として配合される有機変性粘土鉱物及び/又は部分架橋型シリコーン、脂肪酸デキストリンについては、それぞれ乳化安定化に必要な量であればよく、0.1〜5.0重量%の配合がよい。それぞれ例示すると有機変性粘土鉱物としては、ベントン38(RHEOX社製:塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ヘクトライト)などや、部分架橋型シリコーンとしては、KSG−16、KSG−210(信越化学工業社製)のような複数分子のジメチルポリシロキサンを部分的に架橋した後、ジメチルポリシロキサンなどで混練し、ゲル状にしたものがあげられる。脂肪酸デキストリンについては、レオパールKL(千葉製粉社製)のようなパルミチン酸デキストリンなどがあげられる。それらの配合量は、0.1重量%以下だと充分な乳化安定化効果が得られず、5.0重量%以上だと、伸びが重くなるなど使用性に悪化が生じる。
【0019】
本発明の化粧料に用いる液状油のエステル油又は炭化水素油は、ふき取った後も残存するために、化粧モチの面からできるだけ少ない配合量が好ましい。しかしながら使用感上および、製法上ある程度の配合がなされる場合もありうるため、充分な化粧落とし効果が得られてなおかつ、化粧直ししたメーキャップ料に影響を起こさないという観点から10.0重量%以下が望ましい。エステル油としては、オクタン酸セチル、オリーブ油など、炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワランなどが其々例示できる。
【0020】
他の揮発性成分であるイソブテン、イソドデカン、低分子量の直鎖ジメチコンなどで外相を増量し、W/O型に乳化した組成物の場合は、それぞれの成分は、多量に配合されると皮膚への刺激性が懸念されるため、10.0重量%以下の添加が望ましい。
【0021】
本発明の化粧料に配合される成分として下記に示す、その配合に際しては、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で可能である。もちろんこれにより本発明が限定されるものではない。
【0022】
乳化、可溶化、分散剤としての界面活性剤、例としては、POE脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、POE高級アルコールエーテル、POE.POPブロックポリマーなどの非イオン性界面活性剤や、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アシルサルコシン酸塩、スルホコハク酸塩などのアニオン性界面活性剤、また、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン性界面活性剤があり、イミダゾリン系や、ベタイン系の両性界面活性剤を配合することも可能である。
油分としては、通常の化粧料に使用できるものであれば配合可能で、植物油としては、ホホバ油、ヒマシ油、コメヌカ油、ヤシ油など、動物油としては、牛脂、ラノリンなど、合成油としては、ジメチコン、ポリイソブテン、脂肪酸グリセリンなど、ロウとして、ミツロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウなど、炭化水素としては、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリンなど、高級アルコールとしては、セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノールなど、高級脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸など、その他、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、パーフルオロエーテルなどがあげられる。着色剤としては、通常化粧料に使用されるもので、有機色素(青色1号、緑色3号、赤色202号、赤色227号、黄色4号や、クロロフィル、βーカロチンなどの天然色素があげられる。これらの中から1種または2種以上を任意に選択して用いてもかまわない。また、その他の効果成分としてビタミンA,B,C,Eやその誘導体、各種アミノ酸、ヒアルロン酸ナトリウムやトリメチルグリシンなどの保湿剤を必要に応じて適宜配合してもよい。
本発明の組成物は、系の安定性を損なわない範囲であれば、上記成分のほかにグアーガムやタマリンドガムなどの非イオン性高分子、カチオン化セルロースや、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドポリマーなどのカチオン性高分子、キサンタンガムやアルギン酸ナトリウムなどのアニオン性高分子や、塩化ナトリウム、リン酸水素ナトリウムのような塩類、その他天然水溶性化合物及びその誘導体、防腐剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、保湿剤、低級アルコール、多価アルコール、香料、清涼剤、PH調整剤等を配合することも可能である。また、本発明の化粧料は、この様な必須成分と、任意成分とを常法に従って処理することにより、製造することが出来る。
【実施例】
【0023】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明が、かかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0024】
<実施例1>
以下に示す処方に従って、本発明のW/O乳化型化粧直し用組成物を作成した。
1:セチルジメチコンコポリオール(*1) 2重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 10重量部
3:ジメチコン 10cs 6重量部
4:(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー・ジメチコン混合物(*2) 5重量部
5:精製水 60.9重量部
6:塩化ナトリウム 1重量部
7:1.3ブチレングリコール 10重量部
8:エタノール 5重量部
9:メチルパラベン 0.1重量部
*1 ABIL EM90
*2 KSG−16
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 25%含有
製造方法
A:1〜4を均一に混合する
B:5に、あらかじめ溶解した6〜9を加えて溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化する。
D:ホモミキサーで処理する。
【0025】
<実施例2>
1:PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(*3) 1重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 5重量部
3:ジメチコンコポリオール 1.5重量部
4:塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ヘクトライト(*4) 0.5重量部
5:((ジメチコン/PEG−10/15))クロスポリマー・ジメチコン混合物(*5) 5重量部
6:精製水 70.9重量部
7:リン酸水素2ナトリウム 1重量部
8:1.3ブチレングリコール 10重量部
9:エタノール 5重量部
10:メチルパラベン 0.1重量部
*3 KF−6028
*4 ベントン38
*5 KSG−210
((ジメチコン/PEG−10/15))クロスポリマー 25%含有
製造方法
A:1〜5を均一に混合する
B:6に、あらかじめ溶解した7〜10を加えて溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化する。
D:ホモミキサーで処理する。
【0026】
<実施例3>
1:ジメチコンコポリオール(*5) 1重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 40重量部
3:オクタン酸セチル 10重量部
4:パルミチン酸デキストリン(*6) 5重量部
5:精製水 27.9重量部
6:塩化ナトリウム 1重量部
7:1.3ブチレングリコール 10重量部
8:エタノール 5重量部
9:メチルパラベン 0.1重量部
*6 KF−6017
*7 レオパール KL
製造方法
A:1〜4を均一に加熱混合する
B:5に、あらかじめ溶解した6〜9を加えて加熱溶解する。
C:AおよびBを70度に保つ。
D:AにBを徐々に加えて乳化した後、ホモミキサーで処理する。
E:室温まで冷却する。
【0027】
<比較例1>
ふき取り化粧水
1:1,3−ブタンジオール
10 重量部
2:ポリオキシエチレン(7)ヤシ油脂肪酸グリセリル(*8)
0.2重量部
3:エタノール 5 重量部
4:水 84.7重量部
5:メチルパラベン 0.1重量部
*8 セチオール HE(コグニスジャパン社製)
製造方法
A:1〜5を均一に混合する。
【0028】
<比較例2>
1:PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 3重量部
3:ジメチコンコポリオール 1.5重量部
4:塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ヘクトライト 0.5重量部
5:精製水 77.9重量部
6:塩化ナトリウム 1重量部
7:1.3ブチレングリコール 10重量部
8:エタノール 5重量部
9:メチルパラベン 0.1重量部
製造方法
A:1〜4を均一に混合する
B:5に、あらかじめ溶解した6〜9を加えて溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化する。
D:ホモミキサーで処理する。
【0029】
<比較例3>
1:PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 50重量部
3:ジメチコンコポリオール 1.5重量部
4:塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ヘクトライト 0.5重量部
5:精製水 30.9重量部
6:塩化ナトリウム 1重量部
7:1.3ブチレングリコール 10重量部
8:エタノール 5重量部
9:メチルパラベン 0.1重量部
製造方法
A:1〜4を均一に混合する
B:5に、あらかじめ溶解した6〜9を加えて溶解する。
C:AにBを徐々に加えて乳化する。
D:ホモミキサーで処理する。
【0030】
<比較例4>
1:ジメチコンコポリオール 1重量部
2:デカメチルシクロペンタシロキサン 20重量部
3:オクタン酸セチル 20重量部
4:パルミチン酸デキストリン 8重量部
5:精製水 34.9重量部
6:塩化ナトリウム 1重量部
7:1.3ブチレングリコール 10重量部
8:エタノール 5重量部
9:メチルパラベン 0.1重量部
製造方法
A:1〜4を均一に加熱混合する
B:5に、あらかじめ溶解した6〜9を加えて加熱溶解する。
C:AおよびBを70度に保つ。
D:AにBを徐々に加えて乳化した後、ホモミキサーで処理する。
E:室温まで冷却する。
【0031】
<試験>
本発明品について、そのクレンジング料としての機能と化粧下地料としての機能を評価した。下腕内側部に部位を設け、予め測色した後、市販のリキッドファンデーションをパフで塗布し、20分間放置して完全に乾燥させた後、実施例および比較例をコットンに含浸または塗布し拭き取った。拭き取り後、30分間待って肌の状態が元に戻るのを確認して再び測色し、試験前の肌色との色差を求めた。更に、再度リキッドファンデーションを塗布し、測色し、化粧料のノリを調べた。使用性および化粧モチについては、女性パネラー20名に実際にティッシュペーパーを用いて化粧直しをしてもらい、結果についてアンケートをとり集計を行った。15名以上良好と答えた場合を○、10名〜14名が△、9名以下を×とし評価した。安定性試験として40℃で3ヶ月間放置し、分離、変臭、変色などがないか確認した。その結果を表1に示す。
【0032】
これより、本発明の化粧直し組成物は、良好なメーキャップ化粧料を除去する作用と、下地化粧料としてメーキャップ化粧料のノリを良くする作用を有することが判る。しかもコットンや不織布を用意しなくてもティッシュペーパーで充分使用性がよく手軽に化粧直しができた。また、化粧モチの低下がないため化粧直し組成物として非常に有用なものであった。加えて、安定性試験の結果も分離もなく製剤として安定していた。
【0033】
比較例1については、比較的少量の界面活性剤で化粧直しができる化粧料という先行技術であるが、化粧ノリに関しては良好なデータが得られたが、クレンジング効果については、何度もこすらないと落ちにくかったため良好とはいえず、且つ化粧モチもあまりよくなかった。また、外出先でもっとも手に入りやすいティッシュペーパーを用いた使用性に関しては、水系の化粧料であるためティッシュペーパーが軟化してしまい非常に使いづらいという結果となった。比較例2については、作成直後から乳化せず分離していたため、評価を行わなかった。比較例3については、一応乳化したのだが非常に低粘度であったためすぐ2層に分離した。比較例4については、エステル油が20重量%と多量に含まれていたため化粧崩れが激しいという結果であった。また、ゲル化剤を多量に含むため伸びが重く使用性が悪かった。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の技術を用いると、拭き取り効果と化粧下地効果を併せ持つ組成物を提供することができるため、外出先でも、どこでも手近な用具で簡単、迅速に美しい仕上がりの化粧直しが可能であり、広く化粧料に応用が期待できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化剤としてポリエーテル変性シリコーンと、クレンジング成分として揮発性環状シリコーンと、乳化安定剤として有機変性粘土鉱物及び/又は部分架橋型シリコーン、及び脂肪酸デキストリン及び液状油が配合されることを特徴とするW/O乳化型化粧直し用組成物
【請求項2】
液状油が、エステル油または、炭化水素油であり、その配合量が10重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のW/O乳化型化粧直し用組成物
【請求項3】
ポリエーテル変性シリコーンの配合量が0.1〜10.0重量%、揮発性環状シリコーンの配合量が5.0〜40.0重量%であることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載のW/O乳化型化粧直し用組成物


【公開番号】特開2008−247785(P2008−247785A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89939(P2007−89939)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】