説明

クレンジング化粧料

【課題】クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、且つ、経時安定性に優れるクレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(a)〜(d):成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子成分(b):25℃で液状の油剤成分(c):L−テアニン成分(d):水を含有することを特徴とするクレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアクリル系水溶性高分子、25℃で液状の油剤、L−テアニンおよび水を含有するクレンジング化粧料に関し、更に詳しくは、クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れるクレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚上の皮脂の汚れやメイクアップ化粧料を除去するために用いられるクレンジング化粧料は、大別すると油性タイプ、乳化タイプ、水性タイプ等がある。例えば、油性クレンジング化粧料としては、主に化粧や油汚れと相溶することでクレンジング効果を発揮する液状油に、水での洗い流しを良好にするために界面活性剤を加え、更に洗い流し後の肌に保湿効果を付与するために多価アルコールを配合した技術(特許文献1、2参照)等がある。また、乳化タイプクレンジングとしては、液状油を界面活性剤にて乳化し、カルボキシビニルポリマーやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を加えて、クリーム状、乳液状にした技術(特許文献3、4)があり、みずみずしい使用感と洗浄後の肌のさっぱり感を特化させた水性クレンジングとしては、多量の多価アルコールに界面活性剤を加え、ポリアクリル酸アクリル酸アルキルなどの水溶性高分子でゲル状する技術(特許文献5、6)等がある。一方、肌に優れた保湿効果を付与する技術としては、グリセリンや多価アルコールを多量に配合する技術やアミノ酸の一種であるL-テアニンを配合することを特徴とする技術がある(特許文献7、8)。
【特許文献1】特開2007−230899号公報
【特許文献2】特開平4−308518号公報
【特許文献3】特開2005−145874号公報
【特許文献4】特許第4185441号公報
【特許文献5】特開2002−284672号公報
【特許文献6】特開平9−87139号公報
【特許文献7】特開平7−149621号公報
【特許文献8】特許第3543478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2の技術による油性クレンジング化粧料は、油性成分を多量に含有するため、油汚れとのなじみが良く、クレンジング効果に優れる反面、拭き取り後、又は洗い流し後に、油性成分が肌に残存してべたつき感を生じ、また洗い流し後の肌の保湿効果も不十分であった。また、特許文献3〜6の技術による乳化タイプ、水性クレンジング化粧料は、クレンジング効果を高めるために界面活性剤を多量に配合する必要があるが、この界面活性剤は化粧や油汚れとともに、肌の皮脂を過剰に乳化・除去してしまうため、洗い流し後の肌がつっぱり、肌の保湿機能が低下してしまうといった問題が存在していた。通常、肌の保湿効果を高めるためには、特許文献7、8の技術による製剤中に保湿成分を配合する技術が存在するが、これらは化粧水や乳液、クリームなどのスキンケア製剤に関しては効果を発揮するものの、クレンジング化粧料のような、洗い流し行為を伴う化粧料に関しては十分な効果を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記実情に鑑み、本発明者らは鋭意研究の結果、特定のアクリル系水溶性高分子、25℃で液状の油剤、L−テアニンを含有することにより、クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れるクレンジング化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、次の成分(a)〜(d):
成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子
成分(b):25℃で液状の油剤
成分(c):L−テアニン
成分(d):水
を含有することを特徴とするクレンジング化粧料を提供するものである。
【0006】
また、成分(a)の含有量が、2.5〜15.0質量%であることを特徴とする前記クレンジング化粧料を提供するものである。
【0007】
さらに、成分(a)と成分(b)の含有質量比(a):(b)が1:2〜1:7あることを特徴とする前記クレンジング化粧料を提供するものである。
【0008】
さらに、成分(b)が、炭素原子数6〜10の分岐脂肪酸と炭素原子数5〜18のアルコールとのモノエステルであり、25℃において液状であるエステル油1種または2種以上であることを特徴とする前記クレンジング化粧料を提供するものである。
【0009】
さらに、界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする前記クレンジング化粧料を提供するものである。
【0010】
さらに、成分(a)が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%である(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることを特徴とする前記クレンジング化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクレンジング化粧料は、特定のアクリル系水溶性高分子を用いて、25℃で液状の油剤を乳化し、さらにL−テアニンを含有することによって、クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、それぞれの構成成分について、詳細に説明する。
本発明に係るクレンジング化粧料に用いることができる成分(a)特定のアクリル系水溶性高分子は、成分(b)25℃で液状の油剤を乳化する目的等で含有されるものである。当該水溶性高分子を用いて乳化された油剤によって本クレンジング化粧料は、滑らかに肌に伸び広がり、化粧や油汚れと良く馴染み、十分なクレンジング効果を付与することができる。
【0013】
本発明における成分(a)は、アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子である。
【0014】
成分(a)の構成成分の一つであるアクリル酸又はメタアクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」と称する。)の成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、95.42質量%(以下、単に「%」とする。)以上97.48%以下が好ましく、95.47%以上97.46%以下がより好ましく、95.97%以上96.94%以下が更に好ましい。
【0015】
成分(a)の構成成分の一つであるアクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル(以下「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」と称する。)の種類は、成分(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、アルキル基の炭素数が、18以上24以下であることが好ましい。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステル及び(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
この中でも、本発明においては特に、成分(a)を含む後述する中和粘稠水溶液、及び電解質存在下における該中和粘稠水溶液の粘度特性や質感を考慮すると、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、及びメタクリル酸テトラコサニルが好ましく、少なくともメタクリル酸ベヘニルを50%以上含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが更に好ましい。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、2.43%以上4.3%以下が好ましく、2.91%以上3.84%以下がより好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの成分(a)におけるより詳しい構成比としては、アルキル基の炭素数が18以上24以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43%以上4.3%以下含有させることが好ましい。より具体的には、例えば、アルキル基の炭素数が18以上24以下の1種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2.43%以上4.3%以下含有させてもよく、アルキル基の炭素数が18以上24以下の2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合体を2.43%以上4.3%以下含有させてもよい。
【0019】
成分(a)の構成成分の一つであるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の種類は、成分(a)の特性を損なわなければ特に限定されないが、本発明においては、例えば、エチレン性不飽和基がアリル基である化合物を好適に用いることができる。具体的には、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテル、及びペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースが特に好ましい。なお、これらエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0020】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の成分(a)における構成比は、その特性を損なわない限り特に限定されず、自由に設定することができる。本発明では特に、0.08%以上0.29%以下が好ましく、0.11%以上0.24%以下がより好ましく、0.15%以上0.19%以下が更に好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の成分(a)における構成比が0.08%未満の場合、製剤中において、十分な粘度が得られず、経時での廃液の原因になる場合がある。
【0021】
本発明に係るクレンジング化粧料に含有する成分(a)は、以上説明したアクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなる。重合方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法から自由に選択して用いることができる。例えば、これらの構成成分を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0022】
重合に用いる不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスは、特に限定されないが、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0023】
重合に用いる溶媒も特に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られる水溶性高分子を溶解しないものであって、当該重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロペンタン、及びシクロヘキサン等の炭化水素溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも特に、n−ヘキサン、及びn−へプタンを好適に用いることができる。また、これら炭化水素溶媒は、ケトン、エステル、エーテル、及び飽和アルコール等の有機溶媒と組み合わせて使用することもできる。好ましい有機溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、プロピオン酸ブチル、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0024】
重合に用いる前記溶媒の量は、攪拌操作性を向上させる観点及び経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300〜5000質量部であることが好ましい。
【0025】
重合に用いる重合開始剤も特に限定されないが、例えば、ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも特に、高分子量の水溶性高分子(a)を得るためには、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートを用いることが好ましい。
【0026】
重合に用いる前記重合開始剤の量は、重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが好ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。逆に、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。
【0027】
重合における反応温度は、目的の成分(a)が得られれば、特に限定されないが、50℃以上90℃以下で行うのが好ましく、55℃以上75℃以下で行うのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。逆に、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがあるからである。反応時間は、反応温度によって適宜設定することができるが、通常、0.5〜5時間で行うことが好ましい。
【0028】
反応終了後、反応溶液を例えば80℃以上130℃以下で加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、本発明に係るクレンジング化粧料に含有する成分(a)を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる成分(a)の水への溶解性を損なうおそれがあるからである。
【0029】
本発明に用いられる成分(a)は、水に膨潤したゲル状組成物に電解質を添加することにより、粘度増加を生じるものである。例えば、成分(a)類似のポリアクリル酸アクリル酸アルキルコポリマーであるカーボポール1342(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)1%を含む中和粘稠水溶液は、塩化ナトリウム1%を添加することにより粘度低下を引き起こすが、成分(a)は粘度増加を示す。これは、前者は塩化ナトリウムの添加によって高分子の凝集・収縮が生じ、系全体の粘度が低下するのに対し、成分(a)は高分子中に導入されたアルキル基が、水溶液中で会合体を形成するため、増粘性が増しているものと推察される。
【0030】
また、本発明に用いられる成分(a)は、電解質と共存させることにより増粘性を示す特性があるが、更に温度変化に対しての粘度値の変化が少ないという特性がある。具体的には、成分(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、50℃における粘度が、クレンジング化粧料に用いた際に、温度変化の影響を受けにくいという観点から、0.8以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.1以下であることがより好ましい。
【0031】
また、本発明に用いられる成分(a)は、電解質濃度の変化に対しての粘度値の変化が少ないという特性がある。具体的には、成分(a)1%及び塩化ナトリウム1%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度1に対して、成分(a)1%及び塩化ナトリウム0.5%を含む中和粘稠水溶液の25℃における粘度が、クレンジング化粧料に用いた際に、電解質濃度の異なる種々の配合処方に活用しやすいという観点から、0.7以上1.2以下であることが好ましく、0.9以上1.0以下であることがより好ましい。
【0032】
ここでいう電解質とは、水その他の溶媒に溶かした時その溶液が電気伝導性を持つようになる物質であり、化粧料として通常用いられるものであれば、有機・無機を問わず用いることができる。具体的には、アミノ酸、乳酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機化合物と、それらのカリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の無機塩が挙げられる。また美白効果のある電解質しては、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸アルキルエステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等と、それらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等のアスコルビン酸類が挙げられる。さらには海洋深層水、温泉水等、これら電解質を含む天然由来の水溶液も挙げられる。
【0033】
成分(a)特定のアクリル系水溶性高分子のクレンジング化粧料中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、2.5%以上15.0%以下であることが好ましく、5.0%以上10.0%以下であることがより好ましい。
【0034】
本発明に用いられる成分(b)25℃で液状の油剤は、化粧料や油汚れと相溶することで、それらを肌から取り除く効果を発揮させることを目的として含有されるものである。
【0035】
成分(b)としては、化粧料一般に使用される動物油、植物油、鉱物、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油溶性紫外線吸収剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、α−オレフィンオリゴマー等の炭化水素類、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ホホバ油、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、炭酸ジアルキル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル等の油溶性紫外線吸収剤類、低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン油類等が挙げられる。
【0036】
これらの中でも特に、炭素原子数6〜10の分岐脂肪酸と炭素原子数5〜18のアルコールとのモノエステルであり、25℃において液状であるエステル油、具体的にはイソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルなどが、クレンジング効果、経時安定性の点で優れ、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
なお、本発明における液状とは、25℃で1〜3000mPa・s以下の粘度値を指し、十分な流動性を有する性状である。ここでの粘度測定は、B型回転粘度計(東芝システム株式会社・ビスメトロン粘度計VDA2)を用いて測定できる。
【0038】
成分(b)25℃で液状の油剤のクレンジング化粧料中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、10.0%以上60.0%以下であることが好ましく、20.0%以上50.0%以下であることがより好ましい。
【0039】
本発明における成分(a)と成分(b)の配合比率は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、乳化安定性の観点より、(a):(b)=1:2〜1:7であることが好ましく、1:3〜1:5であることがより好ましい。
【0040】
本発明に用いられる成分(c)L−テアニンは、アミノ酸の一種で、水溶性の白色の結晶性粉末であり、緑茶のうま味の一成分であって、カフェインによる興奮抑制効果が知られるものであり、本発明においては、成分(a)と共に、洗い流し後の肌に対し、相乗的に保湿効果を示すものである。本発明に用いられるL−テアニンは、通常化粧品に用いられるものであれば特に限定されるものではない。市販品としては、例えば、サンテアニン(太陽化学社製)等が挙げられる。
【0041】
成分(c)L−テアニンのクレンジング化粧料中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、0.05%以上5.0%以下であることが好ましく、0.5%以上3.0%以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明に用いられる成分(d)の水は、肌に水分を与え、みずみずしい使用感及び清涼感を付与するものである。
【0043】
成分(d)水のクレンジング化粧料中の含有量は、本発明の目的を損なわない限り、特に限定されず、目的や他の構成成分の配合により、適宜調整することが可能であるが、5.0〜95.0%が好ましく、30.0〜70.0%がより好ましい。成分(d)をこの範囲で用いると、みずみずしい使用感に優れるクレンジング化粧料を得ることができる。
【0044】
本発明のクレンジング化粧料は、成分(a)を含有することで成分(b)を含む油剤を乳化することができるものであり、乳化するための界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とするものである。これにより肌への刺激等の安全性面において特に優れるものとなり、敏感肌用としてのクレンジング化粧料への応用も可能となる。ここで実質的に含有しないとは、全く含有しないか、含有したとしても本発明に影響を与えない程度の極微量であることを意味するものであり、含有量では、0.1%未満を意味するものである。
【0045】
本発明のクレンジング化粧料は、上記成分に加えて、成分(a)を塩基性物質を用いて中和することにより、未中和の場合に比べて成分(b)をより多く含有することが可能となり、クレンジング効果の観点からより好ましいものとすることができる。塩基性物質の種類は、特に限定されず、公知の塩基性物質を自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどの無機の塩基性物質、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンアミノメチルプロパノール、乳酸ナトリウムなどの有機アミン、アンモニアなどや、L−アルギニン、L−リジン、ヒスチジン、オルニチン、カナバニン等の塩基性アミノ酸などの塩基性物質が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。中和した場合の水溶液のpHは特に限定されないが、25℃におけるpHが6.5以上7.5以下になるように調製できればよりクレンジング効果に優れるものとなる。ここでのpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計(堀場製作所社製)を用いて測定できる。
【0046】
本発明のクレンジング化粧料は、上記成分に加え、さらに通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、電解質、高分子物質、保湿成分、美容成分、殺菌剤、防腐剤、無機紛体、有機紛体、酸化防止剤、色素、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0047】
本発明のクレンジング化粧料の製造方法としては、成分(d)の水に、成分(a)の水溶性高分子を加えてT.K.HOMODISPER(TOKUSHU KIKA社製)を用い、攪拌・膨潤させる。そこへ成分(b)の25℃で液状の油剤を添加しながら攪拌・乳化し、さらに成分(c)L−テアニンを混合分散することでで得ることができる。
【0048】
本発明のクレンジング化粧料の使用法は、手で使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによりなんら制約されるものではない。まず最初に本発明の成分(a)の合成例を挙げ、具体的に説明する。本発明の成分(a)は何らこれらの合成例に制約されるものではない。
【0050】
[合成例1]
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mLの四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:メタクリル酸ステアリルが10〜20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80質量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1質量部以下の混合物)1.35g、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.05g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体43gを得た。
【0051】
[合成例2]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.58gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体44gを得た。
【0052】
[合成例3]
合成例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.80gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状の(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体45gを得た。
【0053】
かくして得られた成分(a)は、そのまま化粧料に含有して用いてもよいが、あらかじめ水に膨潤して用いることもできる。例えば、脱イオン水等の純水に分散し、ホモミキサー3000〜5000回転で1時間膨潤させた膨潤物をクレンジング化粧料に配合することができる。以下に上記合成例を用いた本発明品であるクレンジング化粧料の実施例、比較例について説明する。
【0054】
クレンジング化粧料:実施例1〜9及び比較例1〜5
下記表1〜表3に記載のクレンジング化粧料を以下に示す製造方法により調製し、下記処方及び製造方法で調製される固形状油中水型ファンデーションをクレンジング対象として、1)クレンジング効果、2)洗い流しやすさ、3)洗浄後の肌の保湿効果の3項目に関して以下に示す評価方法及び判断基準により評価し、結果を併せて表1〜表3に示した。
【0055】
固形状油中水型ファンデーション(クレンジング対象)の処方
(成分) (%)
1.有機変性スメクタイト 1.0
2.エタノール 5.0
3.1,2−ペンタンジオール 2.0
4.塩化ナトリウム 0.5
5.クエン酸 0.1
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.香料 適量
8.精製水 残量
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
10.硫酸バリウム被覆雲母チタン 1.5
11.シリコーン被覆酸化チタン 7.5
12.シリコーン被覆黄酸化鉄 0.4
13.シリコーン被覆ベンガラ 0.07
14.シリコーン被覆黒酸化鉄 0.01
15.シリコーン系界面活性剤※3 2.0
16.ジポリヒドロキシステアリン酸ポリオキシエチレン※4 1.0
17.オクタメチルシクロテトラシロキサン 7.0
18.イソノナン酸イソノニル 10.0
19.イソノナン酸イソトリデシル 3.0
20.ショ糖脂肪酸エステル 1.0
21.マイクロクリスタリンワックス 6.0
22.酢酸トコフェロール 0.05
※3 KF−6028(信越化学工業社製)
※4 アラセルP−135(クローダ社製)
【0056】
固形状油中水型ファンデーション(クレンジング対象)の製造方法
A:成分1〜9を70℃にて均一に溶解する。
B:成分10〜22を70℃にて均一に混合する。
C:BにAを加え乳化する。
D:70℃にて容器に流し込み充填後室温まで冷却する。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
[実施例1〜9、比較例1〜5の製造方法]
1.成分(1)〜(2)、(6)〜(10)を均一に混合溶解・膨潤する。
2.成分(3)〜(5)を均一に混合溶解する。
3.1に2を添加し、分散乳化することで、目的であるクレンジング化粧料を得た。
【0061】
[実施例1〜9、比較例1〜5の評価方法]
専門パネル20名により以下の方法で使用し、各評価試験を行った。
前記油中水型ファンデーション(クレンジング対象)0.5gを顔に塗布し、3時間経過後に表1〜表3のクレンジング化粧料を2gを手に取り、1分間クレンジング行為を行った後、水で洗い流して評価した。各評価に対する評価内容及び評点は以下のとおりとした。
[評価1]クレンジング効果(目視観察)
4点:ファンデーションが完全に洗い流された状態。
3点:ファンデーションがほとんど洗い流された状態。
2点:ファンデーションがところどころ残っている状態。
1点:ファンデーションがほとんど落ちていない状態。
[評価2]洗い流しやすさ
4点:流水に対して15秒以内で洗い流すことができた。
3点:流水に対して15〜30秒で洗い流すことができた。
2点:流水に対して30秒以上の洗い流しが必要であった。
1点:流水に対して洗い流しきれなかった。
[評価3]洗浄後の肌の保湿効果
4点:肌の保湿効果が6時間以上持続した。
3点:肌の保湿効果が3時間以上持続した。
2点:肌の保湿効果が1時間以上持続した。
1点:肌の保湿効果は全くなかった。
【0062】
各評価に対する評価結果の点数をそれぞれ合計し、以下に示す評価基準に従って評価した。なお、本発明では、80点満点の評価に対して50点以上であるB以上の評価が好ましいものとした。
[評価基準]
(評価) :(点数)
AA :70点以上
A :60点以上69点以下
B :50点以上59点以下
C :40点以上49点以下
D :30点以上39点以下
E :29点以下
【0063】
[評価4]経時安定性
表1〜表3のクレンジング化粧料を広口規格ビン(PS−No.6)に40mL注ぎ、キャップを閉め、50℃恒温槽に、1ヶ月間静置し、分離を目視にて観察し、以下の基準に従って判定を行った。
(判定基準) :(判定)
分離は全く認められない : ◎
分離した層が1mm未満であり問題ないレベル : ○
分離した層が1mm以上5mm以下であり問題となるレベル : △
分離した層が5mm以上である : ×
【0064】
表1〜表3の結果から明らかなように本発明に係る実施例1〜9は、クレンジング効果に優れるとともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れる効果があった。一方、、成分(a)の代わりにアクリル酸アクリル酸アルキルコポリマーを含有した比較例1及び比較例2は水によって洗い流しにくく経時安定性も不十分であった。また、成分(c)を含有しない比較例2は洗浄後の肌の保湿効果及び洗い流しやすさが劣り、成分(c)の代わりに他のアミノ酸であるグリシルグリシンを含有した比較例3や、成分(c)の代わりに他の保湿剤であるグリセリンを含有した比較例4は洗浄後の肌の保湿効果や洗い流し効果等が不十分であり、すべてを満足するものは得られなかった。
【0065】
[コンダクタンス値による保湿効果評価]
洗浄後の肌の保湿効果についてコンダクタンス値測定から検証した。表4に実施例4と比較例3のクレンジング後のコンダクタンス値の測定値を示す。試験方法は前期同様、前記固形状油中水型ファンデーションを顔に塗布した後、各クレンジグ化粧料にてクレンジグした後、コンダクタンス値をSKICON−200EX(IBS社製)で測定し、結果を下記表3に示す。なお、いずれの場合も固形状油中水型ファンデーション塗布前のブランクを100とした。
【0066】
【表4】

【0067】
表4から実施例4ではクレンジング後のいずれの場合にもクレンジング前のブランクのコンダクタンス値よりも高い値を示し、保湿効果が持続していることが示された。一方、比較例2では、2時間後以降はクレンジング前よりもコンダクタンス値が低くなり保湿効果が持続しない結果となった。
【0068】
実施例10 クレンジング化粧料
(成分) (%)
1.イソノナン酸イソノニル 15.0
2.ジメチルポリシロキサン 5.0
3.合成例2の水溶性高分子(a) 5.0
4.L−テアニン 2.0
5.グリシルグリシン 1.0
6.エタノール 3.0
7.グリセリン 10.0
8.1,2−ペンタンジオール 1.0
9.水酸化ナトリウム 適量
10.精製水 残量
11.セルロースパウダー 3.0
【0069】
1.成分(1)〜(2)を均一に混合溶解する。
2.成分(3)〜(10)を均一に混合溶解・膨潤する。
3.2に1を添加し、分散乳化してクレンジング化粧料を得た。
【0070】
実施例10のクレンジング化粧料は、クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。
【0071】
実施例11 クレンジング化粧料
(成分) (%)
1.イソノナン酸イソトリデシル 20.0
2.軽質流動イソパラフィン 5.0
3.合成例3の水溶性高分子(a) 5.0
4.L−テアニン 2.0
5.セリン 1.0
6.エタノール 3.0
7.グリセリン 10.0
8.水酸化ナトリウム 適量
9.精製水 残量
10.セルロース繊維 3.0
【0072】
1.成分(1)〜(2)を均一に混合溶解する。
2.成分(3)〜(10)を均一に混合溶解・膨潤する。
3.2に1を添加し、分散乳化してクレンジング化粧料を得た。
【0073】
実施例11のクレンジング化粧料は、クレンジング効果を有するともに、水による洗い流しが良好で、洗浄後の肌に保湿効果を併せ持ち、なお且つ、経時安定性に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(d):
成分(a):アクリル酸又はメタアクリル酸と、アクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物と、が少なくとも結合した共重合体からなり、電解質を含有させた場合に増粘性を発揮する水溶性高分子
成分(b):25℃で液状の油剤
成分(c):L−テアニン
成分(d):水
を含有することを特徴とするクレンジング化粧料。
【請求項2】
成分(a)の含有量が、2.5〜15.0質量%であることを特徴とする請求項1記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
成分(a)と成分(b)の含有質量比(a):(b)が1:2〜1:7あることを特徴とする請求項1又は2の項記載のクレンジング化粧料
【請求項4】
成分(b)が、炭素原子数6〜10の分岐脂肪酸と炭素原子数5〜18のアルコールとのモノエステルであり、25℃において液状であるエステル油1種または2種以上である請求項1〜3の何れかの項に記載のクレンジング化粧料。
【請求項5】
界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする請求項1〜4の何れかの項記載のクレンジング化粧料。
【請求項6】
成分(a)が、(メタ)アクリル酸95.42〜97.48質量%、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル2.43〜4.30質量%およびエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0.08〜0.29質量%である(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体であることを特徴とする請求項1〜5の何れかの項記載のクレンジング化粧料。

【公開番号】特開2010−235467(P2010−235467A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83006(P2009−83006)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】