説明

クレンジング化粧料

【課題】皮膚に施されたマスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料を効果的に除去するとともに、洗浄後の肌にぬめり感がなく、さっぱりとした洗い上がり感を有し、さらに使用時ののびが良好なクレンジング料の提供。
【解決手段】(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩を2〜20質量%と、(B)25℃で液状の油を5〜30質量%と、(C)(c1)、(c2)及び(c3)を構成モノマーとして含むアクリル系ポリマーを0.2〜3質量%と、(D)水とからなり、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計含有率が、(A)+(B)+(C)+(D)=100質量%であり、(A)と(B)の質量比が、(A)/(B)=1/3〜2/1であるクレンジング化粧料。
(c1)アクリル酸又はメタクリル酸。
(c2)アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル。
(c3)アクリル酸又はメタクリル酸と、炭素数16〜22の高級アルコールにエチレンオキシドを15〜30モル付加した化合物とのエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に施されたマスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料を効果的に除去するとともに、洗浄後の肌にぬめり感がなく、さっぱりとした洗い上がり感(以下、さっぱり感とも言う。)を有し、さらに使用時ののびが良好なクレンジング料に関する。
【背景技術】
【0002】
メイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料は、肌を美しく見せ、外界の刺激から肌を保護する効果を有し、現代社会の生活においては欠かせないものとなっている。しかし、これらの化粧料は油性成分や無機顔料を多量に含んでいるため、皮膚の毛穴を塞ぎ、新陳代謝を妨げ、また化粧料自体が徐々に酸化されて刺激性を有することがあり、長時間の使用は肌トラブルの原因となる場合がある。このため、1日1回はクレンジング料を用いてこれらの化粧料を除去する必要がある。
【0003】
従来より、化粧落とし用のクレンジング化粧料としては、流動パラフィン、スクワランや植物油等の液状油が主として配合されており、これらは非イオン界面活性剤により油性成分が乳化、または可溶化されている。しかしながら、これらのクレンジング料では、水で洗い流した後に油性成分や界面活性剤などが皮膚へ残存することによるぬめり感があるという問題があった。このため使用後に固形石けんや洗顔フォーム等のアニオン性界面活性剤を主体にした洗顔料で顔を洗う、いわゆるダブル洗顔をする必要があった。ダブル洗顔は2種の洗顔料を用いて2段階に分けて洗浄を行う為、手間がかかるとともに、2度の洗浄による肌への負担が生じるという問題があった。
【0004】
そこで、近年、一度でメイクアップ化粧料と皮膚の汚れとを落とせるダブル洗顔不要タイプのクレンジング料が提案されており、例えば、特許文献1において一相型クレンジング用組成物が提案されている。しかし、このクレンジング用組成物は使用時の伸びが良く耐水性に対しても効果があるものの、ノニオン性界面活性剤を主として用いるため洗浄後のさっぱり感においては満足できるものではなかった。
【0005】
特許文献2では、メイク汚れを落とすことができると同時に、水を加えることにより泡立たせることができる皮膚洗浄料として、ポリオキシエチレンジエステルと、両性界面活性剤及び/又は半極性界面活性剤とを含有する皮膚洗浄料が提案されている。この皮膚洗浄料は、水を加えない場合は皮膚状でののびが悪く、水を加えると泡立つことでのびは良くなるが、クレンジング力が弱くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−5213号公報
【特許文献2】特開平7−179331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮膚に施されたマスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料を効果的に除去するとともに、洗浄後の肌にぬめり感がなく、さっぱりとした洗い上がり感を有し、さらに使用時ののびが良好なクレンジング料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究を行った結果、炭素数12〜20の脂肪酸塩、25℃で液状の油、及び特定のアクリル系ポリマーを含有させることによって、上記目的にかなったクレンジング化粧料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩を2〜20質量%と、(B)25℃で液状の油を5〜30質量%と、(C)(c1)アクリル酸又はメタクリル酸、(c2)アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル及び(c3)アクリル酸又はメタクリル酸と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとのエステルを構成モノマーとして含むアクリル系ポリマーを0.2〜3質量%と、(D)水とからなり、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計含有率が、(A)+(B)+(C)+(D)=100質量%であり、(A)と(B)の質量比が、(A)/(B)=1/3〜2/1であるクレンジング化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクレンジング化粧料は、メイクアップ化粧料や紫外線防止化粧料を効果的に除去することができるとともに、洗浄後の肌にぬめり感がなく、さっぱりとした洗い上がりを有し、さらに使用時ののびが良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のクレンジング化粧料は、(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩、(B)25℃で液状の油、(C)アクリル系ポリマー、(D)水からなる。以下、各成分について説明する。
【0012】
〔(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩〕
本発明で用いられる炭素数12〜20の脂肪酸塩は、より詳細には炭素数12〜20の直鎖又は分岐の脂肪酸と塩基との塩である。脂肪酸は単一物であっても混合物であってもよく、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、それらの混合物が挙げられる。
【0013】
塩基としては、特に限定されず、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基、トリエタノールアミンやイソプロパノールアミン、塩基性アミノ酸等の有機塩基を用いることができる。炭素数12〜20の脂肪酸塩は単独または2種以上を組み合わせて使用することができ、好ましくはパルミチン酸またはステアリン酸を使用されることが望ましい。炭素数12〜20の脂肪酸塩の含有率は、組成物(クレンジング化粧料)全体量に対して、通常2〜20質量%であり、好ましくは5〜14質量%の範囲である。2質量%より少ない場合には洗浄力が弱くなるおそれがあり、20質量%を越える場合はクレンジング料が硬くなって、皮膚上でののびが悪くなってしまうおそれがある。
【0014】
〔(B)25℃で液状の油〕
本発明で用いられる25℃で液状の油としては、化粧品、医薬品などに通常用いられる液状油を用いることができる。これらの液状油は、非極性油と極性油から選ばれる。非極性油としては流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素油が挙げられる。極性油としては脂肪酸、エステル油、トリグリセライド等から選ばれる。脂肪酸としてはオレイン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。エステル油としてはオレイン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル等が挙げられる。トリグリセライドとしてはグリセリンの脂肪酸トリエステルであって、該脂肪酸としては、カプリン酸、エチルヘキサン酸、オレイン酸等が挙げられる。中でも、オレイン酸を主たる脂肪酸組成とする脂肪酸とグリセリンとの脂肪酸トリエステルであるトリグリセライドが好ましく、例えば、オリーブ油、ヒマワリ油等の植物油を挙げることができる。クレンジング効果をより一層高めるために、成分(B)は、非極性油と極性油を質量比で4:1〜1:2で併用することが好ましい。さらに、2種類以上の極性油を含有していることが好ましく、特に、エステル油とトリグリセライドを質量比で4:1〜1:2で含有していることが特に好ましい。
【0015】
25℃で液状の油の含有率は、組成物全体量に対して、通常5〜30質量%であり、好ましくは10〜20質量%の範囲である。5質量%より少ない場合にはクレンジング力が低くなるおそれがあり、30%を越える場合には洗浄後にぬめり感が生じるおそれがある。
【0016】
(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩と(B)25℃で液状の油との質量比は、(A)/(B)=1/3〜2/1であり、特に1/2〜1/1であることが好ましい。
【0017】
〔(C)アクリル系ポリマー〕
本発明で用いられるアクリル系ポリマーは、下記の(c1)〜(c3)のモノマーを重合して得られた共重合体である。
(c1)アクリル酸又はメタクリル酸。
(c2)アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル。
(c3)アクリル酸又はメタクリル酸と、炭素数16〜22の高級アルコールにエチレンオキシドを15〜30モル付加した化合物とのエステル。
【0018】
アクリル系ポリマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルの共重合体が挙げられ、さらに前記共重合体を、例えば、多価アルコールのアリルエーテルで架橋して得られる架橋重合体も使用することができる。これらアクリル系ポリマーの中でも、架橋重合体が脂肪酸塩配合系における増粘効果の点で好ましい。これらのアクリル系ポリマーは水分散液の形態にてローム&ハース社から市販されている。例えば、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル共重合体の市販品としては、アキュリン22,アキュリン28(商品名:いずれもローム&ハース社製)が挙げられ、架橋重合体の市販品としては、アキュリン88(商品名:ローム&ハース社製)が挙げられる。これらアクリル系ポリマーの中でも、脂肪酸塩配合系における増粘効果の点で、特にアキュリン88が好適である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの双方を意味する。
【0019】
アクリル系ポリマーの含有率は、組成物全体量に対して、通常0.2〜3質量%であり、好ましくは0.3〜1.5質量%である。0.2%質量未満であると増粘効果が低くなるおそれがあり、3%を超えると使用性が低下するおそれがある。
【0020】
〔(D)水〕
本発明のクレンジング化粧料は、上記(A)〜(C)の各成分の他に(D)成分として水を含有し、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計含有率が、(A)+(B)+(C)+(D)=100質量%となる量の水が用いられる。
【0021】
本発明のクレンジング化粧料は、上記の有効成分の他に、(A)の脂肪酸塩以外のアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、25℃で固体の油、防腐剤、殺菌剤、湿潤剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、紫外線吸収剤、増粘剤、香料などを、本発明の効果を損なわない範囲で、使用することができる。
【0022】
本発明のクレンジング化粧料を調製する際、例えば、(A)と(B)の混合物、および(C)と(D)の混合物を80℃にて加熱混合して均一にした後、両予備混合物を混合する。これを室温付近まで攪拌冷却して乳化状態の組成物を得ることができる。本発明のクレンジング化粧料は、ミルク状やクリーム状の形態をとることができ、安定性の観点からクリーム状の形態をとることが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
〔実施例1〜8〕
表1に記載の成分組成を有するA成分を用いて、各成分を表2に示す質量部で配合した実施例1〜8のクレンジング化粧料を調製した。また、各クレンジング化粧料について下記評価方法により評価を行った。結果を表2に示す。
【0025】
実施例で使用した(B)、(C)の各成分は以下のとおりである。
パールリーム4(流動イソパラフィン;日油株式会社製)
NOFABLE EO−85S(オレイン酸エチル;日油株式会社製)
精製ひまわり油85(ヒマワリ油;日油株式会社製)
アキュリン88〔(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル/(メタ)アクリル酸と炭素数18のアルコールにエチレンオキシド20モル付加した化合物とのエステルから得られる共重合体と、トリメチロールプロパンまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルとの架橋物;ローム&ハース社製〕
【0026】
<評価方法>
(1)安定性
45℃条件下で1ヶ月静置保存した後の状態を確認し、下記のように安定性を判定した。
○:分離がみられなかった。
×:分離がみられた。
【0027】
(2)クレンジング効果の評価
メイクをした20名の女性をパネラーとし、クレンジング化粧料を使用した時の汚れ落ちについて下記のように判定した。
2点:十分メイクの汚れが落ちたと感じた場合。
1点:ややメイクの汚れが落ちたと感じた場合。
0点:明らかにメイク汚れの落ちが悪いと感じた場合
【0028】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表2中に表示した。
◎:合計点が35点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:クレンジング効果に非常に優れるクレンジング化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:クレンジング効果に優れるクレンジング化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満、または、合計点が30点以上かつ0点の評価をしたパネラーが1人以上いる:クレンジング効果がやや不十分なクレンジング化粧料である。
×:合計点が20点未満:クレンジング効果が不十分なクレンジング化粧料である。
【0029】
(3)使用後の肌のさっぱり感の評価
メイクをした20名の女性をパネラーとし、クレンジング化粧料を使用した後のさっぱり感について下記のように判定した。
2点:使用後にさっぱり感が残ると感じた場合。
1点:使用後にあまりさっぱり感がないと感じた場合。
0点:使用後のさっぱり感がないと感じた場合。
【0030】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表2中に表示した。
◎:合計点が35点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:非常に良好なさっぱり感が得られるクレンジング化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、または、合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーが1人または2人:良好なさっぱり感が得られるクレンジング化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:さっぱり感がやや不十分なクレンジング化粧料である。
×:合計点が20点未満:さっぱり感が低いクレンジング化粧料である。
【0031】
(4)使用時ののびの評価
メイクをした20名の女性をパネラーとし、クレンジング化粧料を使用した時ののびの感触について下記のように判定した。
2点:使用時ののびが良く軽い感触であると感じた場合。
1点:使用時ののびがやや悪くやや重い感触であると感じた場合。
0点:使用時ののびが悪く重い感触であると感じた場合。
【0032】
20名の合計点を求めて、下記の基準で評価して表2中に表示した。
◎:合計点が35点以上、かつ、0点の評価をしたパネラーがいない:肌上でののびが非常に良いクレンジング化粧料である。
○:合計点が30点以上35点未満、または、合計点が35点以上かつ0点の評価をしたパネラーが1人または2人:肌上でののびが良いクレンジング化粧料である。
△:合計点が20点以上30点未満:肌上でののびがやや不十分なクレンジング化粧料である。
×:合計点が20点未満:肌上でののびが悪いクレンジング化粧料である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
〔比較例1〜5〕
表1のA成分を用いて、各成分を表3に示す質量部で配合した比較例1〜5のクレンジング化粧料を調製した。また、各クレンジング化粧料について、実施例1〜8と同様の上記評価方法により評価を行った。結果を表3に示す。
【表3】

【0036】
表2から明らかなように、実施例1〜8の本発明のクレンジング化粧料は、クレンジング効果に優れ、洗い上がり後のさっぱり感、安定性および使用時ののびがともに良好であった。
【0037】
これに対して表3から明らかなように、比較例1のクレンジング化粧料は、質量比(A)/(B)が1/3よりも小さいため、洗い上がり後のさっぱり感が低く、安定性が不良であった。比較例2のクレンジング化粧料は、(A)成分の配合量が多いため、クレンジング効果がやや不充分であった。比較例3のクレンジング化粧料は、質量比(A)/(B)が2/1よりも大きいため、使用時ののびがやや不充分であり、クレンジング効果が不充分であった。また、比較例4のクレンジング化粧料は、(B)成分の配合量が多いため、洗い上がり後のさっぱり感が低く、使用時ののびがやや不充分であり、安定性が不良であった。比較例5のクレンジング化粧料は、(B)成分の代わりに25℃で固形の油であるワセリンを配合しているため、使用時ののびがやや不充分であり、さっぱり感が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数12〜20の脂肪酸塩を2〜20質量%と、(B)25℃で液状の油を5〜30質量%と、(C)(c1)、(c2)及び(c3)を構成モノマーとして含むアクリル系ポリマーを0.2〜3質量%と、(D)水とからなり、(A)、(B)、(C)及び(D)の合計含有率が、(A)+(B)+(C)+(D)=100質量%であり、(A)と(B)の質量比が、(A)/(B)=1/3〜2/1であるクレンジング化粧料。
(c1)アクリル酸又はメタクリル酸。
(c2)アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル。
(c3)アクリル酸又はメタクリル酸と、炭素数16〜22の高級アルコールにエチレンオキシドを15〜30モル付加した化合物とのエステル。

【公開番号】特開2012−201622(P2012−201622A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66833(P2011−66833)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】