説明

クレーザデバイス、撮像システムおよび撮像方法

【課題】シンクロトロンを必要としない、小型、軽量、小電力で強力なX線レーザを実現する装置および方法を提供する。
【解決手段】クレーザデバイス100は、X線光子および/またはガンマ線光子を放出する励起された利得媒質原子を有する利得媒質120と、利得媒質120に当接する伝送媒質130と、1つまたは複数のより低い屈折率層を備え、伝送媒質130に当接する反射鏡140とを含む。伝送媒質130は、利得媒質120、および反射鏡の中の材料のうちの少なくとも1つの材料より高い屈折率を有する。X線光子および/またはガンマ線光子は、内部全反射を介して伝送媒質130に閉じ込められ、エバネセント波を通して励起された利得媒質原子と複数回相互作用して増幅された誘導放出を生み出し、高強度のインコヒーレントまたはコヒーレントなX線ビームおよび/またはガンマ線ビームの形成をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ、撮像デバイスおよび撮像方法に関する。より詳細には、本開示は、レーザからのX線エネルギー放出を利用する、レーザ、撮像デバイスおよび撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手荷物、産業用部品、人および動物など、対象の内部画像を生成するために、X線光子を使用することは知られている。コンピュータ断層撮影およびラミノグラフィは、広帯域電離放射(broad band ionizing radiation)を使用する撮像技術の例である。
【0003】
医用イメージングにおいて、広帯域電離放射または光子を多くの異なるエネルギーレベルで使用することに対して、いくつかの欠点が存在する。非常に高いエネルギーレベルは、画像の中の雑音を増加させることによって、信号対雑音のレベルを低下させる可能性がある。非常に低いエネルギーレベルが、患者の体の中に吸収され、そのことが、癌など、放射線起因の問題のリスクを高めることにつながる可能性があると言われてきた。この問題に対処するために、いくつかの医用イメージャは、最低エネルギーの光子をフィルタで取り除くために、フィルタを使用する。これらのフィルタは、より低いエネルギーをフィルタで取り除くばかりでなく、複数のより高いエネルギーの光子をも低減させる。したがって、その結果、医用イメージャは、鮮明な画像を形成するために必要な強度(intensity)を欠くことになる。
【0004】
いくつかの医用イメージャは、マルチエネルギーイメージャ(multi−energy imager)と呼ばれ、2つ以上のエネルギーで撮像する。2つのエネルギーを使用することにより、画像の中の組成の異なる材料が、単一のエネルギーで撮像されるときより、容易に識別される。最近のマルチエネルギー撮像システムは、X線源管(x−ray source tube)を異なる電圧、例えば80kVpおよび140kVpで動作させることによって、異なるエネルギー領域(energy regime)から画像を形成する。次いで、最も簡単な分析において、画像が引き算されてもよく、主として80から140keVまでのより高いエネルギーから形成される画像を作成するが、いくぶんかの80keV未満のエネルギーが、依然として存在する。理想的には、80から140keVの光子によってのみ形成された画像を、80keV未満のエネルギーによって作成された画像と比較することで、異なる組成の材料の間の鮮明な識別(distinction)が可能になるであろう。しかし、実際には、80keV未満のエネルギーは、通常、「高エネルギー」画像の中に存在し、結果として得られた画像の分析において、かなりの困難さと複雑さとをもたらす。
【0005】
いくつかの医用イメージャは、4Dイメージャと呼ばれる。そのようなイメージャは、多くの場合、心臓の画像を生成するために使用され、それにより、医療関係者は、なんらかの心臓関連の問題または異常、例えば閉塞または狭窄した動脈が、患者の中に存在するかどうかを確かめることができる。これらのイメージャは、患者が何百ポンドもの重さがある管の中に配置されて機能する。患者が適切に設置された後で、管を速い角速度で回転させる。そのような撮像に伴う1つの問題は、静止状態の心臓のシャープな画像のために必要とされる時間が短い、すなわち拍動の間であることである。健康な成人は、毎分拍動数(beats per minute)(bpm)が60から80の安静時の心拍数を有し得る。心拍数(heart rate)は、年齢、体重、身長、および体力(physical fitness)など、いくつかの変数を考慮する(accommodate)。あまり健康でない人、率直に言えばそのようなイメージャを利用している可能性がより高い人達は、60bpmをはるかに超え、ときには150bpmを超えるほどの高さの、安静時の心拍数を有する。X線源の重さのために、必要とされる高さの速度で線源を回転させることは、極めて困難であることが知られている。したがって、安静時の心臓の高品質画像を得ることは、人口の大きな比率を占める人々において、極めて困難である。
【0006】
使われているある種の治療技術は、健康問題に対処するために電離放射を使用する。例えば、前立腺癌を治療するために、1つの治療技術は、腫瘍を破壊するために、前立腺の中に放射性の小塊(bead)を設置することを含む。この技術に伴う1つの問題は、これらの放射性の小塊からの放射線は等方性であり、他の領域、例えば大腿骨の照射を結果的にもたらし、白血病のリスクを高めることにつながる可能性があることである。
【0007】
他の欠点が、医療分野以外で電離放射を使用する撮像技術において発生する。例えば、最近の貨物検査は、通常、コンテナ自体の中の貨物の中身を撮像することを含む。このことは、大抵、貨物のコンテナをトラック上に置き、トラックを、X線源と検出器との間の一定の位置に誘導することによって実施される。
【0008】
ある種の最新のX線源構成は、発散X線(diverging x−ray)を送信する。とはいえ、一回の通過の間に貨物コンテナ全体を撮像することを可能にするためには、X線源は、貨物コンテナから、半マイル(0.8km)を超える程度の、遠い距離にある必要がある。最終的に貨物コンテナを叩くX線は、それらが貨物コンテナに到達するまでに相当に拡散しているので、X線束密度(x−ray flux density)は極めて低く、20分を超える程度の長さの曝露時間を必要とする。港で毎日100から1000の間の貨物コンテナが荷下ろしされる状態で、そのような長い撮像時間では、あらゆるコンテナに対して実施することは不可能である。100倍から1000倍、またはそれ以上の線束密度を有するより小さいビームを形成することで、あらゆるコンテナに対する走査式検査が可能になる。
【0009】
プリント配線板(PCB)を撮像するために使用される撮像技術は、通常、増加し続ける層を有するPCBに対処するために必要な強度に欠ける。さらに、産業用部品の検査に使用される撮像技術もまた、必要な強度が不足している。そのようなイメージャは、ほぼ連続的に使用され、あまり強力ではないが、より長い耐用年数を有するX線管を使用する。必要な強度に欠けることは、例えば、タービンの羽根における亀裂など、複雑な細部を見ることに失敗すること、またはあらゆる部分を検査することが不可能であることを、結果としてもたらす。
【0010】
X線撮像技術は、例えば、海底油井から水面まで石油および/または天然ガスを運ぶために使用される深海底ライザ(subsea riser)を検査することが望まれる。検査は、時々、なんらかの亀裂がライザの中に形成されているかどうかを確認するために使用される。しかし、現在のX線管は、そのような撮像検査を実用化させるのに十分なX線束をもたらすものではない。500kVp程度の十分なエネルギーおよびX線束を有する産業用X線源は、数百ポンドの重さがあり、かつあまりに少ないX線束しか生み出さないので、撮像のためのデータ取得時間は、数十時間を超える程度となる。その時間の間、ライザは、沖合の波動と共に動く傾向があり、深海底ライザの鮮明な画像を形成することを妨げる。
【0011】
また、X線は、通信をもたらすことおよび中断することにおいて使用することが企図されてきた。例えば、コリメートされた(collimated)高エネルギーで高強度のX線ビームが、地上数マイルの航空機と、ほとんど信号の損失なしに情報を送るために使用されてもよく、一方で、より低いエネルギーの光子は、大気中の粒子によって拡散される。しかし、前述のとおり、知られている携帯型X線源は、そのような使用を実用化する程度の強度およびコリメーション(collimation)を提供するものではない。
【0012】
強度およびコリメーションを提供することができるが、前に論じたいくつかの用途のために必要とされる高いエネルギーに達しない、いくつかのX線源は、X線レーザと呼ばれる。現在、十分に強い唯一の種類のX線レーザは、自由電子レーザであり、その大半は、シンクロトロンを必要とする。シンクロトロンは巨大(直径3.5キロメートル程度)であり、試料の場所まで移動させることは不可能であるため、そのようなレーザは、実際的ではない。シンクロトロンの小型化における最近の進歩は、2つの大きな部屋の大きさであり、所望のコリメートされたX線ビームを、かろうじて十分な強度で生み出す、自由電子レーザをもたらした。しかし、実証されたエネルギーは、多くの用途に必要なエネルギーにはおよばなかった。さらに、これらの小型化されたシンクロトロンX線レーザは、利得媒質(gain medium)を励起させてX線放出プロセスを開始させるために、非常に強力な可視レーザ(約1ギガワットの電力)を必要とする。それゆえ、これらの知られている小型化されたシンクロトロンX線レーザは、技術的に可搬であるとしても、1ギガワットの電源を見つけるのは困難である。そのような電源をもってしても、撮像エネルギーレベルは、約20keVに過ぎない。
【0013】
加えて、シンクロトロンおよび衝突するX線レーザは、単パスレーザ(single pass laser)であり、それは、高強度を生み出すために、光子が進み、かつ誘導放出(stimulated emission)を受ける経路は、非常に長くなければならないことを意味する。
【0014】
従来のX線撮像は、試料の吸収特性のマップを提供する。癌腫(carcinoma)および他の組織学的構造(histological structure)の初期段階を可視化することは、それらの吸収特性と周囲の組織(tissue)の吸収特性との間の差異が最小−数パーセント−であるために、困難でありうる。しかし、屈折率変化が、いくつかの組織学的構造の可視化を可能にするのに十分に顕著でありうることが実証されている。X線位相差画像法(phase−contrast imaging)は、これらの屈折率差に基づいて画像を生成する。この種類の撮像は、X線レーザによってもたらされうるような、空間的にコヒーレントな(coherent)X線ビームに依存し、異なる屈折率の試料含有領域を横切って、これらの領域によって屈折させられる。屈折の際に、これらのX線は、位相シフトを受けて、それらの初期のコヒーレンス(coherence)を失う。これらの「インコヒーレントな(incoherent)」光子が、屈折されない、すなわち直接のX線と相互作用すると、強め合う干渉縞および弱め合う干渉縞が生み出され、それらは、試料の中の非常に高いコントラストの境界の画像に再構成される。位相差顕微鏡法(phase contrast microscopy)に伴う1つの問題は、直接X線ビームの強度が、反射されたビームに比べてずっと高く、干渉縞において、非常に低い信号対雑音比を引き起こすことである。
【0015】
暗視野顕微鏡検査(dark−field microscopy)において、直接ビームが抑圧され、散乱したX線だけを使用することによって画像のコントラストが改善されうる。この種類の撮像は、位相差画像法のように、X線レーザによってもたらされうるようなコヒーレントな入射X線ビームを必要とする。両方の種類の撮像に伴う主要な問題は、現在利用可能な低強度の実験室用(シンクロトロンベースでない)X線源に起因して必要とされる、長い曝露時間である。
【0016】
ナノメートル級の分解能を有するホログラフィック(holographic)X線画像は、フェムト秒(femtosecond)ほどの短い時間内にミクロン単位で測定された対象から作成されうる。X線ホログラフィ(holography)は、ナノ科学およびナノ技術を発展させるためのツールを可能ならしめることができる。しかし、この技術は、X線の波のような性質(wave−like property)に依存し、X線レーザの使用を必要とし、X線レーザのうちで、シンクロトロンベースのX線レーザだけが、現在存在する。したがって、X線ホログラム(hologram)の生成および視認の両方は、シンクロトロンでのみ実施することができ、そのことが、例えば多くのナノ技術の発展を可能にするためにこの技術を使用することを、非現実的にする。
【発明の概要】
【0017】
前述の欠点のうちの1つまたは複数に対処するX線レーザが望まれている。
【0018】
一実施形態は、X線光子を放出する励起された利得媒質原子を有する利得媒質と、利得媒質に隣接し、利得媒質より高い屈折率を有する伝送媒質(transmission medium)と、1つまたは複数のより低い屈折率層を備え、伝送媒質に当接する反射鏡とを含むクレーザ(craser)デバイスを提供する。X線光子は、内部全反射(total internal reflection)を介して伝送媒質に閉じ込められ、エバネセント波が増幅された誘導放出を生み出すことを通して励起された利得媒質原子と相互作用し、増幅された誘導放出は、高強度のインコヒーレントまたはコヒーレントなX線ビームを形成する。
【0019】
一実施形態は、クレーザ放出デバイスと、高強度のインコヒーレントまたはコヒーレントなX線ビームによって生成された画像を検出するための検出器とを含む撮像システムを提供する。クレーザ放出デバイスは、X線光子を形成するために内部で励起されるかまたは外部で励起される利得媒質と、利得媒質に隣接する伝送媒質と、1つまたは複数の段階的な低屈折率層を備え、伝送媒質に当接するように構成された反射鏡とを含む。X線光子は、内部全反射を介して伝送媒質の中で相互作用し、かつ利得媒質原子と相互作用して、増幅された誘導放出および高強度のインコヒーレントまたはコヒーレントなX線ビームの形成をもたらす。
【0020】
一実施形態は、対象を撮像するための方法を提供する。方法は、クレーザビームを形成するステップと、クレーザビームを対象に向けるステップと、対象の画像を検出するステップとを含む。クレーザビームは、利得媒質の中の利得媒質原子を励起することと、少なくとも1つのエネルギーの少なくとも1つのX線光子またはガンマ線光子を、励起された利得媒質原子によって、伝送媒質に放出することと、伝送媒質に当接する反射鏡による内部全反射による、少なくとも1つのエネルギーの少なくとも1つの光子の量子閉じ込め(quantum confinement)と、量子閉じ込め光子(quantum confined photon)が、光子エバネセント波を介して励起された利得媒質原子と相互作用するときの、少なくとも1つのエネルギーの少なくとも1つの光子の増幅された誘導放出とによって形成される。
【0021】
本発明の上記および他の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明が、添付の図面と併せて考慮されるとき、さらに理解され、かつ/または例証されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施形態によるクレーザデバイスを部分的に例示する概略図である。
【図2】一実施形態による、図1の反射鏡の複数の層を示す概略図である。
【図3】一実施形態によるクレーザデバイスを部分的に例示する概略図である。
【図4】一実施形態によるクレーザデバイスの概略図である。
【図5】一実施形態による、図4の利得媒質の部分図である。
【図6】一実施形態による、利得媒質原子の励起を示す、図4のクレーザデバイスの部分図である。
【図7】一実施形態による、利得媒質原子の励起の概略図である。
【図8】一実施形態によるクレーザシステムの概略図である。
【図9】一実施形態による、対象を撮像するためのプロセスステップを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書は、本発明の実施形態および態様をより良く定義し、その製作の実施において当業者を案内するための、一定の定義および方法を提供する。特定の用語または句のための定義が設けられていること、または設けられていないことは、なんらかの特定の重要性、または重要性がないことを暗示するものではなく、別段示さない限り、用語は、関連技術の当業者による慣習的な使用にしたがって理解されるものとする。
【0024】
別段定義されない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書で使用されるような用語「第1の」、「第2の」、他は、なんらかの順序、量、または重要性を表示するものではなく、1つの要素を別の要素と区別するために使用される。また、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」は、量の限定を表示するものではなく、少なくとも1つの言及される項目が存在することを表示し、用語「前(front)」、「後(back)」、「底(bottom)」および/または「頂部(top)」は、別段示さない限り、単に、説明の便宜のために使用され、なんらかの1つの位置または空間的な向きを限定するものではない。範囲が開示される場合は、同じ構成要素または特性に向けられるすべての範囲の終点は、包括的であり、独立に結合可能である。
【0025】
量と関連して使用される修飾語句「約(about)」は、記述された値を含み、かつ文脈によって記載される意味を有する(例えば、特定の量の測定値に関連する誤差の程度を含む)。本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」、「別の実施形態(another embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、他への言及は、実施形態に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造、および/または特性)が、本明細書で説明される少なくとも1つの実施形態の中に含まれ、かつ他の実施形態の中に存在してもよく、または存在しなくてもよいことを意味する。加えて、説明される発明的特徴は、種々の実施形態の中で、任意の適切な方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0026】
図1に例示するように、クレーザシステム160(図8)の一部であるクレーザデバイス100を示す。用語「クレーザ」は、Critical angle Radiation Amplification by Stimulated Emission of Radiation(放射の誘導放出による臨界角放射増幅)を表す。クレーザデバイスは、利得媒質からの蛍光または自然の光子の放出を、内部全反射を介して伝送媒質に閉じ込めることと、閉じ込められたビームを、閉じ込め光子(confined photon)のエバネセント波を介して、利得媒質の誘導放出によって増幅することとによって、高強度のX線ビームを生み出すデバイスである。利得媒質、伝送媒質および反射媒質(reflecting medium)をリング共振器(ring resonator)に成形することによって、クレーザビームを、今日のリング共振器を使用するレーザダイオードにおけるように、一時的かつ空間的にコヒーレントにすることができる。したがって、クレーザは、コンパクトなX線レーザとなりうる。
【0027】
図1では、クレーザデバイス100、エネルギー源104、利得媒質120、伝送媒質130、および反射鏡140を示す。エネルギー源104は、利得媒質原子を励起状態に励起するために必要とされる。あるいは、利得媒質は、放射性物質の場合のように、自然に励起されうる。適切なエネルギー源104の例は、光子ビーム、および/または電子ビーム、陽子ビーム、中性子ビームおよびイオンビームなどの粒子ビームを含む。利得媒質として使用されうる放射性物質の一例はウラニウムであり、ウラニウムは、ガンマ線を約1.76MeVで放出する。
【0028】
電子ビームであるエネルギー源104に対して、電子ビームは、1つまたは複数の冷陰極電界放出デバイス(cold cathode field emitter device)によって形成されてもよい。これらのデバイスでは、電界は、電子を抽出するために、エミッタの両端に加えられる。従来のX線源において使用される従来の熱電子エミッタ(thermionic electron emitter)では、フィラメントが非常に高温で動作し、高熱によるそれらの高エネルギーによって、電子が、フィラメントから「沸きこぼれる」、すなわち脱出する。
【0029】
利得媒質120が、伝送媒質130に比べてより低い屈折率で形成されることが重要である。利得媒質120は、高Z材(high Z material)、すなわち高い原子番号を有する材料で形成されてもよい。さらに、利得媒質120は、1つまたは複数の放射性物質で形成されてもよく、または1つまたは複数の放射性物質と1つまたは複数の非放射性物質とで形成されてもよい。放射性元素を含む利得媒質120の実施形態に対して、利得媒質原子の励起は、核エネルギー遷移によって達成され、したがって、外部励起源104の必要性が取り除かれる。利得媒質120が形成されうる適切な材料は、モリブデン、錫、ユウロビウム、ガドリニウム、エルビウム、イッテルビウム、オスミウム、タングステン、金、コバルト、およびウラニウムを含む。エルビウムで形成される利得媒質120に対する屈折率の実部は、約100keVにおいて0.99999985である。
【0030】
利得媒質120は、複数の材料で形成されてもよいが、これらの材料のうちの1つまたは複数の材料は放射性である。放射性物質は、ガンマ線または電子を放出し、ガンマ線または電子は、次いで、非放射性の利得媒質を励起して蛍光光子を放出させ、蛍光光子は、次いで、残りのクレーザデバイスと相互作用して高強度の光子ビームを形成することができる。あるいは、放射性物質は、中性子または陽子を放出し、中性子または陽子は、非放射性の利得媒質の材料に衝突する際に、非放射性の利得媒質の材料を放射性物質に転換することができる。次いで、これらの新しく生成された放射性物質は、ガンマ線を放出することができ、ガンマ線は、残りのクレーザデバイスによって増幅される。1つの放射性物質が別の放射性物質を生成するという、そのような2段階のプロセスを有する理由は、所望される放出エネルギーに起因し得る。非放射性物質が放射性になるときに、非放射性物質によって放出されるエネルギーのいくつかは、いかなる他の方法でも得ることは不可能である。
【0031】
エネルギー源104からの光子ビームおよび/または粒子ビーム106が利得媒質120の中に入るとき、それらのビームは、利得媒質原子122(図5)を叩くことができるか、できないかのいずれかである。利得媒質原子を叩かない光子または粒子106は、利得媒質原子122によって減速され、結果として制動放射光子(Bremsstrahlung photon)108を放出する。利得媒質原子122の内殻電子(inner shell electron)を叩くことで、これらの電子の放逐を引き起すことができ、原子のエネルギーレベルの増加がもたらされる。そのような励起された利得媒質原子を、全体的に、数字124で表す。励起された利得媒質原子が、それらの接地状態のエネルギーレベルに戻るとき、内殻電子を放逐するのに必要なエネルギーと等価のエネルギーが、K−、L−、またはM−蛍光光子110の形態で解放される。結果としてもたらされる蛍光光子に付される文字K、LまたはMは、元の電子が放逐された電子殻によって決定され、K殻が、原子核に最も近い。あるいは、原子のエネルギーレベルは、原子が放射性であるならば、材料の中の他の原子に対して増加されうる。次いで、その励起された利得媒質原子が崩壊するとき、ガンマ線が、K、LまたはM蛍光光子の代わりに解放されうる。
【0032】
原子に応じて、K−蛍光光子は、約30keVから約120keV未満までの範囲の光子エネルギーレベルを有してもよく、一方で、L−蛍光光子は、約10keVの範囲の光子エネルギーレベルを有してもよく、M−蛍光光子は、さらに低い光子エネルギーレベルを有してもよい。核崩壊に起因するガンマ線は、1MeVを超えるエネルギーを有することができる。光子エネルギーレベルのそれぞれが、クレーザ160の中で増幅されうるので、クレーザは、これらの不連続な、重なりのないエネルギーにおいて、放出する潜在能力を有し、類似するX線吸収係数の材料の間をより良く識別するために、近単色(near monochromatic)マルチエネルギー撮像を可能にする。
【0033】
励起された利得媒質原子から放出された光子110のうちのいくつかは、伝送媒質130の中に進む(図4)。利得媒質120と比較すると、伝送媒質130は、周囲の材料の屈折率より比較的高い屈折率を有する。また、伝送媒質130は、その両側の層よりずっと小さい幅である。この、より小さい幅とより高い屈折率とが、光子を伝送層に量子閉じ込めし(quantum confine)、それらの層の中で十分な誘導放出が発生するのに十分なだけ、それらのエバネセント波がより低い屈折率の層の中に延びることを可能にする。伝送媒質130は、その中でのX線吸収を最小にするために、低Z(原子番号)材で形成されてもよい。伝送媒質130を形成するのに適切な材料は、炭素、ホウ素(屈折率の実部は、約100keVにおいて0.99999993である)、リチウム、ベリリウム、またはポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などの低Zポリマーを含む。
【0034】
放出された光子110は、伝送媒質130を通って反射鏡140まで進み続ける。反射鏡140は、伝送媒質130より低い屈折率を有する1つまたは複数の材料を含む。反射鏡140は、低屈折率の材料の単層から構成されてもよい。あるいは、図2を特に参照すると、反射鏡140は、材料140a〜140nの多数の層から構成されてもよい。材料140a〜140nの層は、連続層(successive layer)のそれぞれ−例えば、140a−が、その1つ上の層−例えば、140bより比較的高い屈折率を有するように、異なる材料組成を含むことができる。あるいは、材料140a〜140nの層は、比較的高い屈折率の材料が、比較的低い屈折率の材料の間に介挿されるように類別されて(graded)よい。任意の数の層140nが、クレーザデバイス100において使用されてもよいことを理解されたい。
【0035】
反射鏡140の中のより低い屈折率の材料は、利得媒質の材料と同じかまたは異なる組成を有する材料から構成されてもよい。また、利得媒質を励起する光子ビームまたは粒子ビームは、それらが十分なエネルギーを有するならば、反射材料の中のより低い屈折率の材料まで貫通し、より低い屈折率の材料を励起することができる。伝送媒質130に閉じ込められたX線は、エバネセント波を有し、エバネセント波は、利得媒質120を貫通するのと同じように、反射鏡に貫入する。それらの波が、励起された低屈折率の反射鏡の材料に遭遇すると、利得媒質120の中で発生するものと同様に、誘導放出が発生することができる。これらの付加的な光子は、伝送層に向かって進み、ひとたび光子が伝送層にはいると、その中に閉じ込められる。それにより、伝送層に閉じ込められた光子ビームの強度が、増加する。
【0036】
放出された光子110のうちのいくつかのは、伝送媒質を通って進み、内部全反射を介して、反射鏡140のマルチ層(multilayer)から伝送媒質130の中に戻る。これらの反射された光子を、光子112として図6に示す。この種類の反射は、光子110が、図6に示すように、反射鏡に対して、内部全反射のための臨界角条件を満足するのに十分に浅い角度を成すときに発生する。
【0037】
反射された光子112が、伝送媒質130と利得媒質112との間の界面に達すると、反射された光子の波動関数(wave function)の実部112’が反射されて伝送媒質130の中に戻り、一方、エバネセント波とも呼ばれる、反射された光子の波動関数の虚部114が利得媒質120を貫通する。エバネセント波が、励起された利得媒質原子124を叩くと、最初の光子114とコヒーレントな光子116の誘導放出が発生し得る。次いで、コヒーレントな波114、116は、それぞれ、さらに2つの励起された利得媒質原子124から誘導放出を生み出して、4つのコヒーレントな光子波を生成することができる(図7)。この増幅プロセスは、クレーザ100を通して継続することができ、強いコヒーレントなX線ビームをもたらす。
【0038】
反射鏡140は、ほぼ完全な(100%)反射率を有することができる。60keVのエネルギーレベルにおいて、99.99パーセントのレベルの反射率が、実験的に実証されている。したがって、あらゆる反射において、電磁波のエネルギーレベルは、0.01パーセントだけ低下するに過ぎない。
【0039】
エネルギーのビーム170が、クレーザデバイス100の縁部に形成された窓150を通ってクレーザデバイス100から脱出することができる(図3および図8)。窓150は、単に、クレーザデバイス100を形成する層のうちのいくつかの層の中にエッチングされてもよく、またはクレーザデバイス100の一部の適所に形成された高屈折率の材料を含むことができ、またはクレーザビーム170をさらに発散または合焦させることができる光学デバイスから構成されてもよい。したがって、ひとたび、十分なエネルギーが、多重反射および誘導放出によって蓄積すれば、1つまたは複数の不連続な単色エネルギーのコヒーレントなX線ビームが、窓150から放出されうる。あるいは、クレーザデバイスが、部分的なリングに形成されるならば、X線ビームは、完全な共振リング(resonant ring)によるものほどコヒーレントではないが、その強度は、依然として、多重反射および誘導放出によって非常に高い。
【0040】
電源180(図8)が、電力をデバイスに供給して利得媒質を励起するために、クレーザデバイス160に接続されてもよい。あるいは、1つまたは複数の利得媒質が放射性であれば、必要な励起のすべては、既に内部に存在するので、電源は不要である。
【0041】
前述の通り、励起エネルギー源は、利得媒質120の内部にあってもよく、または外部源104であってもよい。図1に例示するように、外部励起源104は、利得媒質と、利得媒質120と同じかもしくは異なるエネルギーで蛍光を放つ、反射鏡140の中の低屈折率の材料とを同時に励起してもよく、または外部励起源は、放出する材料を連続的に励起してもよいことを理解されたい。利得媒質を励起することと、利得媒質原子と異なるエネルギーを放出する、反射鏡140の中の材料を蛍光発光させることとの間を順に交代させることの利点は、二重エネルギーの保健用撮像用途におけるように、最初に1つのエネルギーで、次に別のエネルギーで撮像することが望ましい撮像技術に対するものである。
【0042】
さらに、利得媒質120、伝送媒質130および反射鏡140の反復構造が作製されてもよいことを理解されたい。例えば、図1のクレーザデバイス100は、2つ以上の、利得媒質120、伝送媒質130および反射鏡140の反復構造を有してもよい。反復構造によって、クレーザデバイス100は、反射鏡(rm)に当接する伝送媒質(tm)に当接する利得媒質(gm)の反復パターン、gm/tm/rm/rm/tm/rm、他など、を有することができることを意味する。あるいは、クレーザデバイスは、gm/tm/gm/tm/rm、他の交代パターン有することができる。
【0043】
図3を特に参照すると、クレーザデバイス200が、概略的な形で部分的に例示される。クレーザデバイス200は、利得媒質120、伝送媒質130および反射鏡140を含むという点で、クレーザデバイス100に類似する。しかし、クレーザデバイス200は、gm/tmのパターンで伝送媒質130に当接する利得媒質120の複数の反復構造と、反復構造を締めくくる単一の反射鏡140とを有する。外部励起源104が図3に見られるが、前述の通り、内部励起源が、クレーザデバイス200の中で使用されてもよいことを理解されたい。
【0044】
図4を特に参照すると、クレーザデバイス300が、概略的に例示される。クレーザデバイス300は円形であり、外部励起源104が、クレーザデバイスの平面上にある、半径方向に内側のチャンバ155の中に収容される。内部チャンバ155は、励起ビームが、電子または陽子のような荷電粒子(charged particle)を含む場合は、真空チャンバであってもよく、または励起ビームが、光子もしくは中性子のような非荷電粒子を含む場合は、非真空(non−evacuated)チャンバであってもよい。チャンバ155を包含するのは利得媒質120であり、利得媒質120は、伝送媒質130に当接し、かつ伝送媒質130によって包含され、伝送媒質130自体は、反射鏡140に当接し、かつ反射鏡140によって包含される。反射鏡140は、囁きの回廊モード共振器(whispering gallery mode resonator)の形を取ることができ、多重層140a〜140nを含む。囁きの回廊モード共振器140は、X線波長において電磁波を内面全反射するように構成される。
【0045】
囁きの回廊モード共振器は、高Q電磁モード(high Q electromagnetic mode)を持続するように構成される球形または円筒形の構造であり、高Q電磁モードは、内面全反射によって球または円筒の中を循環し、その中に強力に閉じ込められる電磁波である。今までの囁きの回廊モード共振器は、X線より長い光子波長(photon wavelength)においてのみ、作製されてきた。
【0046】
図9を特に参照し、図1〜図8を全体的に参照して、クレーザシステム160のようなクレーザシステムを使用して撮像するための方法が、次に説明される。ステップ400で、クレーザビームが形成される。クレーザビームは、いくつかのサブステップを通して形成されてもよい。第1のサブステップは、利得媒質の中で発見される利得媒質原子を励起して励起状態にすることであってもよい。次に、放出される光子が、励起された利得媒質原子から伝送媒質に放出される。次いで、それらの放出された光子のいくつかが、囁きの回廊モード共振器の形であってもよい反射鏡によって反射され、内部全反射を介して伝送媒質に戻る。最後に、量子閉じ込め光子が励起された利得媒質原子と相互作用するときに、放出された光子のうちの少なくとも1つの光子が、誘導放出を引き起こす。多重のまたは増幅された誘導放出が、強いクレーザビームの形成をもたらす。
【0047】
ステップ405で、クレーザビームが、対象に向けられる。最後に、ステップ410で、対象の画像が検出される。
【0048】
クレーザシステム160は、無数の用途において使用されうる。例えば、クレーザシステム160は、医用イメージング用途において使用されてもよい。高強度の単色ビームを出力するクレーザシステムを使用することで、X線を十分な強度で供給し、大きさの順に、短い時間で、悪性の腫瘍成長につながる遊離基による損傷(free radical damage)のリスクを高める可能性のある未使用の付随エネルギー(unused attendant energy)のない状態で、より鮮明なX線画像を形成することによって、制動放射線(Bremsstrahlung radiation)に依存する大半の市販の医用イメージャの欠点が排除される。
【0049】
さらに、クレーザシステム160は、2つの不連続で別個のエネルギーレベルにおいて、X線を生み出すことができる。したがって、クレーザシステム160は、2つの異なるX線管が加速する電圧を使用することによって実施されるマルチエネルギー撮像において現在問題である、交絡する重複エネルギー(confounding overlapping energy)を排除することによって、現在のマルチエネルギー技術を上回って改善する。
【0050】
また、4次元撮像が、クレーザデバイス160の使用を通して改善される。デバイスは、例えば10センチメートル×10センチメートル×10センチメートル(1000立方センチメートル)の空間であってもよい、小さな空間の中に適合し、現在の4DX線源より3桁まで軽い重さでありうるように構成される。縮小された空間および重量は、少なくとも一桁速く、X線源を患者の回りで回転させることを可能にし、それにより、毎分拍動数が100を超える心拍の間に、容認可能な画像品質を有する静止画像の(stop−motion)X線撮像を可能にする。
【0051】
また、クレーザシステム160は、医療分野以外の用途を有する。例えば、クレーザシステム160は、今日実施されている限定された数と比較して、あらゆるコンテナに対して貨物検査が実施されるような高強度のX線のビームを出力することができる。
【0052】
また、クレーザシステム160は、プリント配線板(PCB)、3次元コンピュータチップ、および産業用検査撮像を撮像するために使用されてもよい。その著しく大きい強度によって、クレーザシステム160は、PCB、コンピュータチップ、および産業用部品のインライン検査(in−line inspection)を可能にし、そのことは、今日実行されているバッチ式試料抽出法(batch sampling)を上回る顕著な改善である。
【0053】
別の用途では、クレーザシステム160の高いビーム強度の出力は、深海底ライザのX線撮像を可能にし、それにより、大きなエコシステムを破壊し、いくつかの世界の水域に影響を与えた石油流出の防止を支援する。
【0054】
さらに、クレーザシステム160は、例えば宇宙空間内の非常に長距離に達する通信のために使用されてもよい。その高エネルギーおよび高強度は、システムが、地面から数マイル上空の航空機と容易に直接に通信することを可能にする。
【0055】
クレーザシステム160の利得媒質を励起する光子ビームまたは粒子ビームを加速するために必要な発電機の電力は、100ワットほどの小さなものであってもよい。したがって、そのようなデバイスは、真に可搬性であり、誘導放出を生成するために1ギガワット以上の電力を必要とする、現在のレーザベースのイメージャを上回る改善である。
【0056】
前述の通り、X線位相差画像法は、屈折率差に基づいて画像を生成する。この種類の撮像は、クレーザシステム160によってもたらされうるような、空間的にコヒーレントなX線ビームに依存し、異なる屈折率の試料含有領域を横切って、これらの領域によって屈折させられる。屈折の際に、これらのX線は、位相シフトを受けて、それらの初期のコヒーレンスを失う。これらの「インコヒーレントな」光子が、屈折されない、すなわち直接のX線と相互作用すると、強め合う干渉縞および弱め合う干渉縞が生み出され、それらは、試料の中の非常に高いコントラストの境界の画像に再構成される。標準的な実験室用X線源で実施される位相差顕微鏡法に内在する課題(challenge)は、X線ビームのコヒーレンスのために必要な大きな距離であり、クレーザシステム160によって完全に排除される課題である。
【0057】
前述の通り、暗視野顕微鏡検査は、位相差画像法と同様に、クレーザシステム160によってもたらされるようなコヒーレントな入射X線ビームを必要とする。暗視野顕微鏡検査の主要な課題は、現在利用可能な(非シンクロトロンベースの)実験室用X線源の低い強度に起因して必要となる長い曝露時間であり、クレーザシステム160が、この課題を改正する。
【0058】
前述の通り、X線ホログラフィは、光の波のような性質に依存し、X線レーザの使用を必要とする。クレーザシステム160の使用で、X線ホログラフィを、シンクロトロンを必要とすることなく、実験室内で達成することが可能となる。
【0059】
本発明が、限られた数の実施形態だけと関連して、詳細に説明されたが、本発明は、そのような開示された実施形態に限定されないことは、容易に理解されよう。むしろ、本発明は、これまで説明されていないが、本発明の趣旨および範囲と同等である、任意の数の変形構成、変更構成、代替構成または等価構成を組み入れるように修正されてもよい。例えば、実施形態は、当初、単一性を意味する用語で説明されているとしても、複数の構成要素が使用されてもよいことを理解されたい。加えて、本発明の種々の実施形態が説明されたが、本発明の態様は、説明された実施形態のいくつかだけを含み得ることが理解されよう。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されると見るべきではなく、添付の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0060】
100 クレーザデバイス
104 X線源
106 光子ビーム
108 制動放射光子
110 K/L/M蛍光光子
112 反射されたK/L/M蛍光光子
112’ 反射された蛍光光子の実部
114 エバネセント波
116 コヒーレントなエバネセント波
120 利得媒質
122 利得媒質原子
124 励起された利得媒質原子
130 伝送媒質
140 反射鏡
140a 第1の光学層
140b 第2の光学層
140c 第3の光学層
140d 第4の光学層
140n N番目の光学層
150 窓
155 真空チャンバ
160 X線レーザデバイス
170 出力ビーム
180 電源
200 光学デバイス
300 光学デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光子またはガンマ線光子を放出する励起された利得媒質原子(124)を有する利得媒質(120)と、
前記利得媒質に隣接し、前記利得媒質より高い屈折率を有する伝送媒質(130)と、
1つまたは複数のより低い屈折率層(140a〜140n)を備え、前記伝送媒質に当接する反射鏡(140)とを備え、
前記X線光子または前記ガンマ線光子が、内部全反射を介して前記伝送媒質に閉じ込められ、前記X線光子または前記ガンマ線光子が、エバネセント波を通して前記励起された利得媒質原子と相互作用して、増幅された誘導放出を生み出し、前記増幅された誘導放出が、高強度のインコヒーレントまたはコヒーレントなX線ビームまたはガンマ線ビーム(170)を形成する、クレーザデバイス(100)。
【請求項2】
前記利得媒質が、外部励起源で励起される、請求項1記載のクレーザデバイス。
【請求項3】
前記外部励起の前記源が、電子ビーム、陽子ビーム、イオンビーム、中性子ビーム、および光子ビームのうちの少なくとも1つである、請求項2記載のクレーザデバイス。
【請求項4】
前記電子ビームが、1つまたは複数の冷陰極電界放出デバイスで形成される、請求項3記載のクレーザデバイス。
【請求項5】
前記電子ビーム、前記陽子ビーム、および前記光子ビームが、1つまたは複数の放射性元素で形成される、請求項3記載のクレーザデバイス。
【請求項6】
前記外部励起源が、
最初に前記反射鏡を通って伝送する励起源、または
最初に前記利得媒質を通って伝送する励起源
のうちの少なくとも一方を備える、請求項2記載のクレーザデバイス。
【請求項7】
前記利得媒質が、1つまたは複数の放射性元素で形成される、請求項1記載のクレーザデバイス。
【請求項8】
前記利得媒質が、1つまたは複数の放射性元素および1つまたは複数の非放射性元素で形成され、前記1つまたは複数の放射性元素によって内部で励起される、請求項1記載のクレーザデバイス。
【請求項9】
前記利得媒質が、モリブデン、錫、ユウロピウム、ガドリニウム、エルビウム、イッテルビウム、オスミウム、タングステン、金、コバルト、およびウラニウムから成る群のうちの1つまたは複数の群で形成される、請求項1記載のクレーザデバイス。
【請求項10】
前記伝送媒質が、低Z材で形成される、請求項1記載のクレーザデバイス。
【請求項11】
少なくとも利得媒質および伝送媒質を備える1つまたは複数の反復構造を備え、
第2の利得媒質が、一方の面上で前記反射鏡に、別の面上で第2の伝送媒質に当接し、第2の反射鏡が、前記第2の伝送媒質に当接する、または
第2の利得媒質が、一方の面上で前記第1の伝送媒質に、別の面上で第2の伝送媒質に当接し、前記反射鏡が、前記第2の伝送媒質に当接する、請求項1記載のクレーザデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−51400(P2013−51400A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−142549(P2012−142549)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】