説明

クレーンの操作装置及びクレーン

【課題】簡単に操作モードを切換えることができるクレーンの操作装置を提供する。
【解決手段】作業機を駆動させる複数の駆動手段31,32,33,34を有するクレーン1に装備されて、操作量に応じて駆動手段31,32,33,34を動作させる操作手段2を備えるクレーンの操作装置Sである。
そして、操作手段2が操作されると、第1の駆動手段33又は第2の駆動手段31のいずれか一方に操作量に応じた速度で単独操作をさせた後に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段33又は第2の駆動手段31のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの操作装置及びクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、クレーンは、車体に旋回自在に取付けられた旋回台と、旋回台に起伏自在、伸縮自在に取付けられたブームと、ブームの先端からワイヤによって吊下げられるフックと、を備えて構成されている。
【0003】
このクレーンには、ブームの先端からフックまでの距離を一定に維持したままフックを移動させるフック平行移動や、吊り荷と地面までの距離を一定に維持したままフックを移動させるフック水平移動などを行う技術が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、フック平行移動とフック水平移動を切換えるモード切換スイッチを備えることで、所定のモードを選択して吊り荷の平行移動及び水平移動を行うクレーン車のフック制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−129387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した特許文献1では、モード切換スイッチを操作して、複数の操作モードから目的とする操作モードをその都度選択することが必要であり、操作が煩雑であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、簡単に操作モードを切換えることができるクレーンの操作装置と、このクレーンの操作装置を備えるクレーンと、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のクレーンの操作装置は、作業機を駆動させる複数の駆動手段を有するクレーンに装備されて、操作量に応じて前記駆動手段を動作させる操作手段を備えるクレーンの操作装置であって、前記操作手段が操作されると、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか一方に操作量に応じた速度で単独操作をさせた後に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明のクレーンの操作装置は、操作量に応じて駆動手段を動作させる操作手段を備えるクレーンの操作装置であって、操作手段が操作されると、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか一方に操作量に応じた速度で単独操作をさせた後に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段を備えている。
【0010】
したがって、作業者は、操作モードをその都度選択することなく、作業機の状態を見ながら自己の感覚に基づいて操作量を調整して、別々の単独動作を調和させて実行できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の制御系の構成を説明するブロック図である。
【図2】カーゴクレーンの全体構成を説明する側面図である。
【図3】操作手段の正面図である。
【図4】操作手段の側面図である。
【図5】実施例1のトリガストロークとスプールストロークの関係を説明するグラフである。
【図6】実施例1の伸縮連動操作を説明する説明図である。(a)はトリガ操作量とブーム先端の伸長速度及び吊荷の下方向移動速度との関係を説明するグラフであり、(b)はブームと吊り荷の位置関係を説明する説明図である。
【図7】実施例2のトリガストロークとスプールストロークの関係を説明するグラフである。
【図8】実施例2の伸縮連動操作モードを説明する説明図である。(a)はトリガ操作量と伸長速度及び巻下速度との関係を説明するグラフであり、(b)はブームと吊り荷の位置関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
(全体構成)
まず、図2を用いて本発明のクレーンの操作装置Sを備えるクレーンとしての積載型トラッククレーン1の全体構成を説明する。なお、本発明のクレーンは、積載型トラッククレーン1に限定されるものではなく、トラッククレーン、ラフテレーンクレーン、オールテレーンクレーンなどの伸縮・起伏できるブームとウインチを備えるクレーンであれば適用可能である。
【0014】
本発明の積載型トラッククレーン1は、図1,2に示すように、走行機能を有する車両の本体部分となる車体10と、車体10の前側左右に設けられたアウトリガ11,・・・と、車体10に水平旋回可能に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたコラム13と、コラム13に起伏自在に取り付けられた作業機としてのブーム14と、を備えている。
【0015】
アウトリガ11は、積載型トラッククレーン1の転倒を防止するものであり、車体10のフロント側の左右に設けられ、油圧によって張出・接地がおこなわれる。
【0016】
また、旋回台12は、旋回モータ制御手段44によって制御される作業機としての旋回モータ34の動力を伝達されるピニオンギヤを有しており、このピニオンギヤが車体10に設けた円形状のギヤに噛み合うことで旋回軸を中心に回動(旋回)する。
【0017】
さらに、作業機としてのブーム14は、基端ブーム141と中間ブーム142,143と先端ブーム144とによって入れ子式に構成されており、伸縮シリンダ制御手段43によって制御される駆動手段としての伸縮シリンダ33によって伸縮できるようになっている。
【0018】
このうち基端ブーム141は、その付け根においてコラム13に水平に設置された支持軸に回動自在に取り付けられており、上下に起伏できるようになっている。つまり、コラム13と基端ブーム141の先端近傍との間には、起伏シリンダ制御手段42によって制御される駆動手段としての起伏シリンダ32が架け渡されており、この起伏シリンダ32を伸縮することでブーム14全体を起伏することができる。
【0019】
さらに、先端ブーム144の先端には回転自在のシーブ(不図示)が取付けられており、このシーブには先端にフック17が取付けられたワイヤ16が掛けられている。一方、ワイヤ16の末端はウインチ制御手段41によって制御される駆動手段としてのウインチ31に巻き回されており、ウインチ31を回転させることでワイヤ16及びフック17を巻上げ又は巻下げることができる。
【0020】
このように、積載型トラッククレーン1は、駆動手段としてウインチ31、起伏シリンダ32、伸縮シリンダ33、旋回モータ34などを備えているが、これらは車体10に設けられた操作手段としてのウインチ操作レバー、起伏操作レバー、伸縮操作レバー、旋回レバーを操作することで操作レバーの操作量(ストローク)に応じた速度で動作する。
【0021】
(ラジコン送信機の構成)
そして、本実施例のクレーンの操作装置Sは、図3,4に示すように、作業者が車体10から離れた位置に立ってブーム14の伸縮、旋回、起伏及びウインチ31を遠隔操作するために、操作手段としてラジコン送信機2を備えている。
【0022】
このラジコン送信機2は、操作スイッチ群が配置された本体部20と、安定して保持するための握り手部28と、操作量(ストローク)に応じた速度で駆動手段を動作させるためのトリガ27と、を備えている。
【0023】
この操作スイッチ群は作業者が握り手部28を握った状態で親指によって操作しやすい位置に配置されており、トリガ27は作業者が握り手部28を握った状態で人差し指によって操作しやすい位置に配置されている。加えて、トリガ27には、後述する所定の連動操作量に対応した位置にクリック感を持たせることが好ましい。
【0024】
また、本体部20には、操作スイッチとして、電源のON/OFFを切換える電源スイッチ21、ウインチ31の回転方向を切換えるフック巻上/巻下スイッチ22、起伏シリンダ32の伸縮方向を切換える起伏スイッチ23、伸縮シリンダ33の伸縮方向を切換える伸縮スイッチ24、旋回モータ34の回転方向を切換える旋回スイッチ25、操作モードを切換えるモード切換スイッチ26などが配置されている。
【0025】
このモード切換スイッチ26はボタンスイッチであり、押圧するごとに単独操作モード、連動モードの2つの操作モードを切換えることができる。
【0026】
そして、単独操作モードが選択されている場合には、フック巻上/巻下スイッチ22、起伏スイッチ23、伸縮スイッチ24、旋回スイッチ25、及びトリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41、起伏シリンダ制御手段42、伸縮シリンダ制御手段43、旋回モータ制御手段44のそれぞれのスプールの移動量を変化させて、それぞれの駆動手段の速度を変化させる(図1参照)。
【0027】
また、連動モードが選択されている場合、伸縮スイッチ24で方向切替し、トリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41及び伸縮シリンダ制御手段43の両方のスプールの移動量を変化させて、ウインチ31の巻上・巻下速度及び伸縮シリンダ33の伸長速度・縮小速度の両方を変化させる。
【0028】
さらに、連動モードが選択されている場合、起伏スイッチ23で方向切替し、トリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41及び起伏シリンダ制御手段42の両方のスプールの移動量を変化させて、ウインチ31の巻上・巻下速度及び起伏シリンダ32の伸長速度・縮小速度の両方を変化させる。
【0029】
なお、電源スイッチ21は必ずしも備える必要はなく、トリガ27で代用させてもよい。
【0030】
(制御系の構成)
次に、本実施例のクレーンの操作装置Sの制御系の構成を説明する。
【0031】
本実施例のクレーンの操作装置Sは、図1に示すように、駆動手段の制御手段として、ウインチ制御手段41、起伏シリンダ制御手段42、伸縮シリンダ制御手段43、旋回モータ制御手段44などの電磁切換弁(ソレノイド)を備え、これらの駆動手段を制御する連動操作制御手段としてのコントローラ50を備えている。
【0032】
連動操作制御手段としてのコントローラ50は、入力ポート、出力ポート、演算装置などを有する汎用のマイクロコンピュータによって構成され、操作手段からの入力を受けて、駆動手段に対する制御信号を演算して出力する。
【0033】
そして、コントローラ50は、モード切換スイッチ26によって単独操作モードが選択されている場合には、各スイッチ22〜25及びトリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41、起伏シリンダ制御手段42、伸縮シリンダ制御手段43、旋回モータ制御手段44のそれぞれの制御信号を演算・出力してスプールの移動量を変化させる。
【0034】
また、コントローラ50は、連動モードが選択されている場合には、伸縮スイッチ24による方向切替とトリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41及び伸縮シリンダ制御手段43の両方の制御信号を演算・出力して両方のスプールの移動量を変化させる。
【0035】
同様に、コントローラ50は、連動モードが選択されている場合には、起伏スイッチ23による方向切替とトリガ27の操作量に応じて、ウインチ制御手段41及び起伏シリンダ制御手段42の両方の制御信号を演算・出力して両方のスプールの移動量を変化させる。
【0036】
図5には、トリガ27の操作量(トリガストローク)と、ウインチ制御手段41及び伸縮シリンダ制御手段43のスプールの移動量(スプールストローク)の関係を示している。ここでは、上記した連動モードが選択されており、所定の連動操作量としてトリガ27の可動範囲の40%位置が設定され、所定の入替操作量としてトリガ27の可動範囲の70%位置が設定されている場合について説明する。
【0037】
この図5に示すように、伸縮シリンダ制御手段43のスプールストロークは、連動操作量まではトリガストロークに比例して線形に増加し、連動操作量から入替操作量まで最大値を維持して一定値となり、入替操作量から線形に減少し、全体として台形状に推移する。
【0038】
一方、ウインチ制御手段41のスプールストロークは、連動操作量まではゼロのままで、連動操作量から入替操作量までトリガストロークに比例して線形に増加し、連動操作量からは最大値を維持して一定値となり、全体として上記したトリガストロークと上底部分の位置がずれた台形状に推移する。
【0039】
連動操作量は、単独操作から連動操作へ切換える操作量であり、単独操作と連動操作のそれぞれに必要な可動範囲を確保できるように設定することが好ましい。例えば、トリガ27の可動範囲の40%位置に設定することができる。
【0040】
入替操作量は、連動操作中に一定速度となっている側の駆動手段の減速を開始する操作量であり、ブーム14を所定の起伏角度まで起仰させた状態において入替操作量以降のトリガストロークでフック17の水平移動が可能となるように設定されることが好ましい。例えば、トリガ27の可動範囲の70%位置に設定することができる。
【0041】
なお、伸縮シリンダ制御手段43のスプールストロークが最大になる前に伸縮速度が最大に達している場合には、図5に示すように、中央位置よりやや手前でウインチ制御手段41の移動を開始させることで、ウインチ制御手段41のスプールストロークに対応するトリガ27の可動範囲の幅を広くとることができる。
【0042】
(作用)
次に、本実施例のクレーンの操作装置Sによって連動モードで伸縮−ウインチの連動を実行した場合の作用について、図1,3,6を用いて説明する。なお、ここでは所定の連動操作量としてトリガ27の可動範囲の40%の位置が設定され、所定の入替操作量としてトリガ27の可動範囲の70%の位置が設定されている場合を例として説明する。以下では、起伏角度が小さい場合(θ=θ1)と起伏角度が大きい場合(θ=θ2)とに分けて説明する。はじめに起伏角度が小さい場合について説明する。
【0043】
ここで、図6は、縦軸を移動速度とし横軸をトリガ操作量として、ブーム先端のブーム伸縮方向の移動速度と、吊荷の下方向移動速度と、を示したグラフである。
【0044】
(起伏角度θが小さい場合)
まず、作業者がラジコン送信機2のモード切換スイッチ26を親指で押して連動モードを設定し、さらに伸縮スイッチ24を親指でスライドさせて伸長側に設定する。
【0045】
つづいて、作業者が0〜40%の範囲で人差し指でトリガ27を引くと、操作量を受信したコントローラ50は、操作量にほぼ比例して伸縮シリンダ制御手段43のスプールを移動させる結果、伸縮シリンダ33の伸長速度も操作量にほぼ比例して増加する。
【0046】
したがって、この範囲では、ブーム14は操作量に比例した移動速度で伸長するが、ウインチ31は停止したままであるため、ブーム14の伸長に伴い吊り荷は上昇することになる。
【0047】
そして、作業者が40%を超えた範囲まで人差し指でトリガ27を引くと、操作量を受信したコントローラ50は、操作量によらず伸縮シリンダ制御手段43のスプールを一定位置に保持するとともに、操作量と所定の連動操作量の差分にほぼ比例した量だけウインチ制御手段41のスプールを移動させる。
【0048】
結果として、ブーム14は一定速度で伸長しつつ、ウインチ31は差分に比例した速度で巻下げる。したがって、この範囲では、ブーム14の伸長速度と、トリガ27の操作量に起因するウインチ31の巻下による吊荷の降下速度との関係で、吊り荷の移動方向が決定されることになる。
【0049】
具体的には、トリガ27の操作量が比較的少ない場合(例えば40〜50%)には、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度がブーム14の伸長速度に追いつかず、吊り荷は上方に移動する。さらに、トリガ27の操作量が増加して所定量(例えば50%)に達すると、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度とブーム14の伸長速度が調和し、吊り荷はブーム14と平行に移動する。そして、トリガ27の操作量がさらに増加して所定量(例えば60%)に達すると、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度とブーム14の伸長速度が調和し、吊り荷は地面に対して水平に移動する。
【0050】
(起伏角度θが大きい場合)
まず、起伏角度θが小さい場合と同様に、作業者が0〜40%の範囲でトリガ27を引くと、伸縮シリンダ33の伸長速度も操作量にほぼ比例して増加する。したがって、この範囲では、ブーム14の伸長に伴い吊り荷は上昇する。
【0051】
そして、作業者が40%を超えた範囲まで人差し指でトリガ27を引くと、ブーム14は一定速度で伸長しつつ、ウインチ31は差分に比例した速度で巻下げる。したがって、この範囲では、ブーム14の伸長速度と、トリガ27の操作量に起因するウインチ31の巻下による吊荷の降下速度との関係で、吊り荷の移動方向が決定されることになる。
【0052】
具体的には、トリガ27の操作量が比較的少ない場合(例えば40〜70%)には、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度がブーム14の伸長速度に追いつかず、吊り荷は上方に移動する。さらに、トリガ27の操作量が増加して所定量(例えば70%)に達すると、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度とブーム14の伸長速度が調和し、吊り荷はブーム14と平行に移動する。そして、トリガ27の操作量がさらに増加して所定量(例えば90%)に達すると、ウインチ31の巻下による吊荷の降下速度とブーム14の伸長速度が調和し、吊り荷は地面に対して水平に移動する。
【0053】
(効果)
次に、本実施例のクレーンの操作装置Sの効果について説明する。
【0054】
(1)このように、本実施例のクレーンの操作装置Sは、駆動手段としてウインチ31、起伏シリンダ32、伸縮シリンダ33、旋回モータ34などを有するクレーンに装備されて、操作量に応じて駆動手段を動作させる操作手段としてラジコン送信機2を備えている。
【0055】
そして、ラジコン送信機2が操作されると、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか一方に操作量に応じた速度で単独操作をさせた後に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段としてのコントローラ50を備えている。
【0056】
したがって、作業者は、単独操作モードで各スイッチ22〜24をその都度選択することなく、作業機の状態を見ながら自己の感覚に基づいて操作量を調整して、別々の単独動作を調和させた連動操作を実行できるようになる。
【0057】
つまり、移動している途中で水平移動からやや上方への移動、水平移動から平行移動、平行移動からやや下方への移動など、作業者の感覚に基づいて自然に移行することができるため、きわめて操作性が良好となる。
【0058】
加えて、コントローラ50には、高価な計測手段からブーム14の姿勢を入力する必要がなく、実際に吊荷の位置を見ながら操作手段を操作することによって連動操作を実行できるため、装置全体の構成をきわめて簡易なものにすることができる。
【0059】
(2)また、コントローラ50は、ラジコン送信機2の操作量が所定の入替操作量未満の領域では、第1の駆動手段に一定速度で単独動作をさせつつ第2の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせ、操作手段の操作量が所定の入替操作量以上の領域では、第2の駆動手段に一定速度で単独動作をさせつつ第1の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせる。
【0060】
このため、入替操作量未満では第2の駆動手段の相対速度を早くし、入替操作量以上では第1の駆動手段の相対速度を遅くすることで、各駆動手段が駆動源から受け取るエネルギー比率を変えつつ、操作量に応じて第2の駆動手段の速度を早くできる。
【0061】
例えば、入替操作量未満では第1の駆動手段としてのブーム14の伸長速度を一定にしつつ第2の駆動手段としてのウインチ31は増速し、入替操作量以上ではブーム14の伸長速度を減速しつつウインチ31の回転速度を一定にする。これによって、起伏角度が大きい場合にも伸長速度と巻下速度を調和させて、フック17を平行移動させたり、水平移動させたりできるようになる。
【0062】
この場合、オペレータは、トリガ27の操作量が連動操作量を超えると巻下速度が早くなり、さらに操作量を増やして入替操作量を超えるといっそう巻下速度が早くなるような印象を受けることで、操作量と巻下速度の感覚が一致するため操作性が良好である。
【0063】
(3)さらに、コントローラ50は、操作手段の操作量が入替操作量より少ない所定の連動操作量未満の領域では、第1の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせ、操作手段の操作量が連動操作量以上の領域では、第1の駆動手段に一定速度で単独動作を継続させつつ、第2の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせる。
【0064】
このため、移動の途中でモード切換スイッチ26を操作することなく、作業者の人差し指の感覚でトリガ27の引き量を調整して、単独操作から連動操作へと操作モードを自然に移行できる。すなわち、トリガ27の操作量を調整することで、単独操作のみを行うこともできるし、連動操作へ移行させることもできる。
【0065】
例えば、作業機として、伸縮自在のブーム14と、フック17を吊るワイヤ16を巻上げ又は巻下げるウインチ31と、を有しており、コントローラ50は、トリガ27の操作量が所定の連動操作量未満の場合には、ブーム14に操作量に応じた速度で伸縮動作をさせるとともに、トリガ27の操作量が所定の連動操作量以上の場合には、ブーム14に一定速度で伸縮動作を継続させつつ、操作量に応じた速度でウインチ31に巻上動作又は巻下動作をさせる伸縮連動操作を実行する。
【0066】
このため、移動の途中でモード切換スイッチ26を操作することなく、作業者の人差し指の感覚でトリガ27の引き量を調整することで、吊り荷を半径方向へ移動中に上下方向へも自由に動かすことができ、吊り荷の平行移動及び水平移動などを行うこともできる。
【0067】
これにより、例えば水平移動によって荷台上での位置決め作業を容易に行うことができ、また障害物のある場所での回避操作が容易になり作業も安全に行うことができる。
【0068】
また、平行移動から水平モードへと自然に移行することによって、吊り荷を高い場所まで吊上げる際には、平行移動によって上方へ移動させた後に水平移動によって位置を調整することで作業を迅速・正確に行うことができる。
【0069】
特に、ブーム14が伸ばされて作業半径が大きい状態では、上記した伸縮連動操作によって吊り荷を移動させることで、迅速に作業をおこなうことができる。
【0070】
(4)また、本発明のクレーンとしての積載型トラッククレーン1は、上記したいずれかのクレーンの操作装置を備えるため、頻繁にモード切換スイッチ26を切換える必要のない、操作性の良好な積載型トラッククレーン1となる。
【実施例2】
【0071】
以下、本実施例のクレーンの操作装置Sによって伸縮連動モードを実行した場合の作用について、図7,8を用いて説明する。
【0072】
(構成)
全体構成とラジコン送信機2の構成は実施例1と略同様であるから説明は省略する。また、制御系の構成も、図7に示すストロークの関係を除いて、実施例1と略同様であるから、ここでは図7に示すストロークの関係についてのみ説明する。
【0073】
図7には、トリガ27のトリガストロークと、ウインチ制御手段41及び伸縮シリンダ制御手段43のスプールストロークの関係を示している。
【0074】
この図7に示すように、伸縮シリンダ制御手段43のスプールストロークは、連動操作量まではトリガストロークに比例して線形に増加し、連動操作量から一定値となり、全体として台形状に推移する。ただし、この一定値である伸縮速度は、最大値からある程度の余裕を見込んで、最大値の6割から8割程度に設定する。
【0075】
一方、ウインチ制御手段41のスプールストロークは、連動操作量まではゼロのままで、連動操作量からはトリガストロークに比例して線形に増加し、全体として三角形状に推移する。そして、トリガストロークが最大になるときにウインチ制御手段41のスプールストロークも最大になる。
【0076】
すなわち、本実施例では、実施例1と異なり第1の駆動手段の速度(一定値)をあらかじめ所定の余裕を見込んで低く設定しているため、余裕分だけ第2の駆動手段の速度を増加させることができる。この余裕分を見込んだ速度(一定値)は、ブーム14を所定起伏角度に起仰させた状態でフック17を水平移動できるように、第1の駆動手段と第2の駆動手段とのバランスを考慮して設定する。
【0077】
(作用)
作用についても、実施例1と略同様である。すなわち、図8に示すように、起伏角度が小さい場合(θ=θ1)、操作量が0〜40%の範囲では吊り荷は上昇し、40〜60%の範囲では吊り荷は上昇し、60%に達すると吊り荷はブーム14と平行に移動し、70%に達すると吊り荷は地面に対して平行に移動する。
【0078】
一方、起伏角度が大きい場合(θ=θ2)、操作量が0〜40%の範囲では吊り荷は上昇し、40〜80%の範囲では吊り荷は上昇し、80%に達すると吊り荷はブーム14と平行に移動し、95%に達すると吊り荷は地面に対して平行に移動する。
【0079】
(効果)
次に、効果について説明する。
【0080】
(1)本実施例のクレーンの操作装置Sは、実施例1と同様に、ラジコン送信機2が操作されると、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか一方に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段としてのコントローラ50を備えている。
【0081】
したがって、作業者は、操作モードをその都度選択することなく、作業機の状態を見ながら自己の感覚に基づいて操作量を調整して、別々の単独動作を調和させた連動操作を実行できるようになる。
【0082】
この場合、はじめに一定速度で単独操作させる第1の駆動手段の速度をあらかじめ所定の余裕を見込んで設定しているため、この余裕分だけ第2の駆動手段の速度を向上させることができる。
【0083】
なお、この他の構成および作用効果については、実施例1と略同様であるため説明を省略する。
【0084】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施例では、連動操作モードにおいて所定の連動操作量までは単独操作を実行させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、単独操作の範囲はごく狭くてもよく(例えば可動範囲の20%程度)、まったく存在しなくてもよい。
【0086】
つまり、ストロークの最初から一方の駆動手段には操作手段の操作量によらずに常に一定速度で動作させつつ、別の駆動手段には操作手段の操作量に応じた速度で動作させることもできる。
【0087】
さらに、前記実施例では、操作手段としてラジコン送信機2のトリガ27の操作量に基づいて制御する場合について説明したが、これに限定されるものはではなく、車体10に設置された操作レバーの操作量に基づいて制御することもできる。
【0088】
そして、前記実施例では、駆動手段の動作速度を操作量に比例させる場合について限定したが、これに限定されるものではなく、緩起動処理、緩停止処理を実行してもよいし、3次曲線状に変化させてもよいし、操作量に一対一に対応するものであればどのように変化させてもよい。
【符号の説明】
【0089】
S クレーンの操作装置
1 積載型トラッククレーン
12 旋回台
14 ブーム(作業機)
16 ワイヤ
17 フック
2 ラジコン送信機(操作手段)
26 モード切換スイッチ
27 トリガ
31 ウインチ(駆動手段)
32 起伏シリンダ(駆動手段)
33 伸縮シリンダ(駆動手段)
34 旋回モータ(駆動手段)
41 ウインチ制御手段
42 起伏シリンダ制御手段
43 伸縮シリンダ制御手段
44 旋回モータ制御手段
50 コントローラ(連動操作制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を駆動させる複数の駆動手段を有するクレーンに装備されて、操作量に応じて前記駆動手段を動作させる操作手段を備えるクレーンの操作装置であって、
前記操作手段が操作されると、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか一方に操作量に応じた速度で単独操作をさせた後に一定速度で単独動作をさせつつ、第1の駆動手段又は第2の駆動手段のいずれか他方に操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行う連動操作制御手段を備えることを特徴とするクレーンの操作装置。
【請求項2】
前記連動操作制御手段は、前記操作手段の操作量が所定の入替操作量未満の領域では、前記第1の駆動手段に一定速度で単独動作をさせつつ前記第2の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせ、
前記操作手段の操作量が所定の入替操作量以上の領域では、前記第2の駆動手段に一定速度で単独動作をさせつつ前記第1の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせることを特徴とする請求項1に記載のクレーンの操作装置。
【請求項3】
前記連動操作制御手段は、前記操作手段の操作量が前記入替操作量より少ない所定の連動操作量未満の領域では、前記第1の駆動手段に操作量に応じた速度で単独動作をさせ、
前記操作手段の操作量が前記連動操作量以上の領域では、前記第1の駆動手段に一定速度で前記単独動作を継続させつつ、前記第2の駆動手段に前記操作量に応じた速度で単独動作をさせる連動操作を行うことを特徴とする請求項2に記載のクレーンの操作装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のクレーンの操作装置を備えるクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71965(P2012−71965A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219497(P2010−219497)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】