説明

クレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法

【課題】揚重作業に基づく精度の高い検出データをリアルタイムで確認することができ、データ収集にかかる手間とコストを低減することができる。
【解決手段】資材2や作業者3の被検出体に取り付けられるとともに、資材2や作業者3のそれぞれを特定する識別情報が組み込まれた電子タグ4と、クレーンジブ12の先端12aに設けられ、電子タグ4の識別情報を無線で送受信可能とされる通信アンテナ5と、フックブロック11に設けられ、電子タグ4の識別情報を検出可能なタグリーダ6と、フックブロック11に設けられ、タグリーダ6で検出した識別情報を通信アンテナ5に向けて無線により送信する送信部7と、クレーン1の操作室13に設けられ、通信アンテナ5より送信された電子タグ4の識別情報を受信する受信部8と、受信部8で受信した検出データを蓄積するデータ格納部9とを備えたデータ収集システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場では、情報通信技術を用いて労務や揚重実績の状況をモニタリングしたり、これらのデータを蓄積して活用することが行われている。例えば、タワークレーンを用いた現場では、揚重作業を行う際に、階数、揚重資材の種別、時間、人数などの情報をデータとして取得し、蓄積するとともに分析することで、作業改善や計画のための基礎データとしている。このような基礎データを収集する方法の一例が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、吊り荷用のフックブロックにターゲットを取り付け、このターゲットをカメラで自動追尾しながら撮像し、この撮像データを画像処理して対象物体の位置と姿勢を算出し、揚重作業データとして蓄積する装置が記載されている。
【0003】
また、他の基礎データの収集方法として、クレーンのオペレータが例えばタッチパネル式のデータ収集装置を使用して上述した基礎データを手入力する方法や、クレーンのジブ先端に取り付けたカメラで揚重作業を撮影し、その映像を分析する方法がある。さらに、作業者や資材に電子タグを取り付け、これを作業場所の適宜な位置に設置したタグリーダやアンテナで受信して、前記基礎データとしてパソコン等に取り込む方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−116346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の揚重作業に基づくデータ収集方法では、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1では、クレーンの外方にカメラを設置する必要があり、ジブの角度によってはターゲットが死角になってしまうおそれがあり、また、移動式クレーンの場合には、クレーンの移動とともにカメラも移設する必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0006】
また、データ収集装置を用いて手入力する方法では、クレーンのオペレータに入力による手間が発生し、クレーン操作に与える時間的な影響により作業効率が低下するうえ、手入力となるのでデータの信頼性も低下するという問題があった。
また、クレーンに備えたカメラで作業を撮影する方法では、揚重作業のほとんどの動作を記録できるが、その映像のデータ化に時間と手間がかかるとともに、リアルタイム性に欠ける点の問題があった。
さらに、電子タグをタグリーダで受信してデータを取り込む方法では、電子タグを検出すべき場所が作業毎に移動する場合にあっては、タグリーダを多数設置したり、盛り替える必要があり、さらには配線も必要となる等、コストと手間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、揚重作業に基づく精度の高い検出データをリアルタイムで確認することができ、データ収集にかかる手間とコストを低減することができるクレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るクレーンフックを利用したデータ収集システムでは、クレーンフックを利用して揚重作業を管理するデータ収集システムであって、資材や作業者などの被検出体に取り付けられるとともに、それぞれの被検出体を特定する識別情報が組み込まれた電子タグと、クレーンジブの先端に設けられ、電子タグの識別情報を無線で送受信可能とされる通信アンテナと、クレーンフックに設けられ、電子タグの識別情報を検出可能なタグリーダと、クレーンフックに設けられ、タグリーダで検出した識別情報を無線で通信アンテナに向けて送信する送信部と、クレーンの操作室に設けられ、通信アンテナより送信された電子タグの識別情報を受信する受信部と、受信部で受信した検出データを蓄積するデータ格納部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るデータ収集方法では、クレーンフックを利用して揚重作業を管理するデータ収集方法であって、資材や作業者などの被検出体の識別情報を組み込んだ電子タグを被検出体に保持させる工程と、電子タグの識別情報をクレーンフックに設けられたタグリーダによって検出する工程と、タグリーダで検出した識別情報をクレーンフックに設けられた送信部から無線でクレーンジブの先端に設けられた通信アンテナに向けて送信する工程と、通信アンテナより送信された電子タグの識別情報をクレーンの操作室に設けられた受信部で受信する工程と、受信部で受信した検出データをデータ格納部に蓄積する工程とを有していることを特徴としている。
【0010】
本発明では、クレーンフックに設けたタグリーダの通信範囲に入った電子タグの識別情報をタグリーダで検出し、さらにこの検出データがタグリーダからクレーンフックに設けられた送信部へ送られ、さらに送信部よりクレーンジブの先端に設けた通信アンテナを介してクレーン操作室内の受信部へ送られ、その検出データを受信部からデータ格納部へ蓄積することができる。
この場合、通信アンテナが設けられるクレーンジブの先端がクレーンフックと操作室とから見通せる位置であるので、フック部の巻き上げ位置にかかわらず、送信部と通信アンテナとの間、及び通信アンテナと受信部との間の通信状態が遮断されることがなく、相互間で確実な交信を行うことができる。
【0011】
しかも、タグリーダと送信部とがクレーンのフックブロックに装備されているので、クレーンの移動に伴ってタグリーダ等を移設する手間がかからないという利点がある。つまり、タグリーダを複数設置したり、移動する手間が不要となるうえ、配線を省略することができる安価で優れた構成を実現することができる。
【0012】
また、タグリーダがフックブロックに設けられており、クレーンフックは揚重作業箇所に必然的に移動することから、フックブロックに吊り下げられる資材に保持させた電子タグや、その資材に対して玉掛け作業や取り外し作業を行う作業者に保持させた電子タグの識別情報を検出することができる。つまり、フックブロックとともに移動するタグリーダの通信範囲に入る電子タグが検出されるので、フックブロックの位置に応じた揚重作業状況を検出データから確認することが可能となる。
そして、タグリーダで検出した電子タグの識別情報は無線で且つ自動的に受信部へ送信されるので、クレーンのオペレータはリアルタイムで検出データを確認することができる。そのため、従来のような揚重作業にかかわるデータを手入力するといった手間がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
また、本発明に係るクレーンフックを利用したデータ収集システムでは、検出データは、クレーンフックの位置情報と関連付けられていることが好ましい。
【0014】
この場合、資材と作業者の識別情報からなる検出データがクレーンフックの位置と関連付けられることで、玉掛け作業、取り外し作業、巻き上げ、巻き下げといった揚重作業の種別を特定することができる。
【0015】
また、本発明に係るクレーンフックを利用したデータ収集システムでは、検出データには、時間が関連付けられているようにしてもよい。
【0016】
この場合、各種の揚重作業にかかる作業時間を実績として蓄積しておくことが可能となる。
【0017】
また、本発明に係るクレーンフックを利用したデータ収集システムでは、クレーンフックには、フック近傍の作業状況を撮影する作業監視カメラが設けられ、作業監視カメラの映像と検出データとが関連付けられることが好ましい。
【0018】
この場合、電子タグの識別情報を検出することによる揚重作業状況の確認に加え、作業監視カメラによってフック部より下方の作業状況が撮影され、その映像により揚重作業状況を確認することができる。そして、この作業監視カメラにより玉掛け作業場所、或いは取り付け作業場所に近い高さからの映像が取得できるため、より広範囲な視野で確認をすることができる。
【0019】
また、本発明に係るクレーンフックを利用したデータ収集システムでは、データ格納部で収集された検出データをクレーンの外部に設けられる別の端末へ向けて発信する外部発信手段が設けられていることが好ましい。
【0020】
この場合、外部発信手段によって例えば携帯電話網やインターネット回線を使用してクレーンの外部の端末に向けてデータ格納部に蓄積された検出データを発信することができる。そのため、揚重作業現場から離れた場所にいる施工管理者等でもリアルタイムで揚重作業を監視したり、蓄積された検出データを分析することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のクレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法によれば、揚重作業に基づく精度の高い検出データをリアルタイムで確認することができ、データ収集にかかる手間とコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるクレーンフックを利用したデータ収集システムの全体概要を模式的に示した図である。
【図2】玉掛け作業エリアにおける作業状態を示す図である。
【図3】資材を吊って巻き上げる時の作業状態を示す図である。
【図4】取付け作業エリアにおける作業状態を示す図である。
【図5】空荷で取付け作業エリアから玉掛け作業エリアへ移動させる作業状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態によるクレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法について、図面に基づいて説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態によるデータ収集システムは、クレーン1のフックブロック11(クレーンフック)を利用して資材2や作業者3などの情報を収集して揚重作業の管理を行うためのシステムである。本実施の形態のクレーン1として、タワークレーンを一例としている。
ここで、クレーン1は、フックブロック11の下側にフック本体11aを備え、マスト14の上端部分に操作室13とクレーンジブ12が支持されており、クレーンジブ12の先端12aにはフック本体11aを備えたフックブロック11がワイヤ15によって吊り下げられている。
【0025】
データ収集システムは、被検出体をなす資材2及び作業者3に取り付けられるとともに、資材2及び作業者3のそれぞれを特定する識別情報が組み込まれた電子タグ4と、クレーンジブ12の先端12aに設けられ、電子タグ4の識別情報を無線で送受信可能とされる通信アンテナ5と、フックブロック11に設けられていて、電子タグ4の識別情報を検出可能なタグリーダ6と、フックブロック11に設けられていて、このタグリーダ6で検出した識別情報を無線で通信アンテナ5に向けて送信する送信部7と、クレーン1の操作室13に設けられ、通信アンテナ5より送信された電子タグ4の識別情報を受信する受信部8と、この受信部8で受信した検出データを蓄積するデータ格納部9とを備えて概略構成されている。
ここで、送信部7と受信部8とは、通信アンテナ5を介して無線LANによる電波無線、或いは光無線などの通信方法が採用されている。
【0026】
なお、電子タグ4が取り付けられる資材2は、単体のもの、或いは複数の集合体からなる資材群であってもよいし、単体又は資材群を台車や梱包体に収容した状態のものも以下、「資材2」という。
【0027】
本クレーン1では、玉掛け作業を行う玉掛け作業エリアP1と、最上階で資材2を取り付ける取付け作業エリアP2との2箇所で揚重作業が行われ、それぞれの作業箇所P1、P2に作業者3が配置されている。ここで、玉掛け作業エリアP1に配置される作業者を符号3Aとし、取付け作業エリアP2に配置される作業者を符号3Bとする。
【0028】
そして、クレーン1のフック部分には、資材2、作業者3の電子タグ4の出力信号を検出するタグリーダ6、送信部7、作業監視カメラ20、及びこれらを駆動するためのバッテリー21を備えている。
【0029】
電子タグ4は、タグリーダ6と電波を介して交信可能とするアンテナ(図示省略)と、資材2と作業者3を特定するID(識別情報)を記録したICチップとを組み込ませたものであり、非接触方式でタグリーダ6の通信範囲T内に入ると、そのタグリーダ6によってIDが認識されるようになっている。例えば、電子タグ4に組み込まれる識別情報としては、資材2の場合において、資材名称、業者名、施工箇所(運搬先)等の資材情報が記録され、作業者3の場合において、名前、所属、会社名、担当作業等の作業者情報が記録されている。そして、電子タグ4は、予め資材2に対しては適宜な箇所に固定し、作業者3に対しては作業前に携帯させておく。
ここで、アクティブ型のRFIDは、内部に電池を内蔵し、数秒〜数分で予め決められた周期で電波を自動発信するもので、数十メートルの到達距離を有する一般的なものが用いられている。
【0030】
ここで、フックブロック11には、前記タグリーダ6と送信部7とが搭載されており、さらに、フック近傍の作業状況を上方から撮影するための作業監視カメラ20が設けられている。そして、前記タグリーダ6、送信部7、及び作業監視カメラ20には、フックブロック11に設けられているバッテリー21に接続されて電気が供給されている。
そして、作業監視カメラ20で撮影した映像は、無線で操作室13内に設けられるモニター22に表示される構成となっている。
【0031】
また、操作室13には、前記受信部8と、パソコン等の前記データ格納部9と、検出データや作業監視カメラ20で撮影した映像を表示するモニター22と、データ格納部9で収集された検出データをクレーン1の外部に設けられる別の端末(図示省略)へ向けて発信する外部発信部23(外部送信手段)と、を備えている。
【0032】
データ格納部9では、作業監視カメラ20の映像と検出データとが関連付けられており、収集した検出データや作業監視カメラ20で撮影した映像がパソコン上で適宜集計、分析処理が行われ、モニター22に表示させる機能を有している。
さらに、検出データは、クレーンフック11の位置情報と関連付けられるとともに、時間が関連付けされている。
そして、モニター22およびタグリーダ6は互いにリアルタイムで交信しており、タグリーダ6で電子タグ4を検出している間、すなわちタグリーダ6の通信範囲T内に電子タグ4が位置しているときには、表示情報がモニター22に表示されるようになっている。
【0033】
外部発信部23は、モバイルルーターが使用され、データ格納部9に収納されている情報を、自動或いは手動操作によって携帯電話網やインターネット回線に無線で発信する機能を有している。例えば、施工管理者の携帯電話やパソコン等の端末に、検出データや映像による揚重作業状態を自動的に発信することができる。
【0034】
タグリーダ6は、フックブロック11に搭載され、読み込み機能を有するIDタグリーダとされ、所定の通信範囲T内に入った電子タグ4の資材情報や作業者情報を無線で受信するとともに、その識別情報を送信部7へ無線或いは有線で送信する機能を有している。そのため、タグリーダ6は、フックブロック11とともに上下方向に移動することとなり、その移動するタグリーダ6の通信範囲T(図2参照)内に入る電子タグ4を自動的に検出するようになっており、電子タグ4との非接触距離(交信可能な距離)を例えば0〜50m程度の範囲で任意な交信距離に設定して使用することができる。なお、タグリーダ6は、電子タグ4より受信した識別情報や交信記録などのデータを書き込みできる機能を有するタグリーダライタを採用してもよい。
【0035】
本タグリーダ6では、上述したように検出感度(通信範囲T)を任意に変更することで、資材2の大きさや玉掛けワイヤの長さ等に基づいて適宜検出空間を設定することが可能となる。
【0036】
データ格納部9には、受信部8で受信した検出データ(資材情報、作業者情報)が蓄積されるようになっている。
【0037】
次に、上述したデータ収集システムを使用したデータ収集方法について詳細に説明する。
【0038】
図1及び図2に示すように、先ず、資材2や作業者3などの被検出体の識別情報を組み込んだ電子タグ4を被検出体に保持させる。そして、電子タグ4の識別情報である検出データをクレーンフック11に設けられたタグリーダ6によって検出すると、図1に示すようにそのタグリーダ6で検出した検出データがクレーンフック11に設けられた送信部7から無線でクレーンジブ12の先端12aに設けられた通信アンテナ5に向けて無線により送信される。次いで、通信アンテナ5より送信された電子タグ4の検出データがクレーン1の操作室13に設けられた受信部8で受信され、さらに受信部8で受信された検出データがデータ格納部9に蓄積される。
【0039】
図2に示すように、玉掛け作業エリアP1では資材2A及び玉掛け作業者3A、3Bの電子タグ4A、4B、4Gの信号を検出する。そして、図3に示すように巻き上げが始まると、資材2Aのタグ信号のみとなり、図4に示すように取付け作業エリアP2に移動した時点で取り付け作業者3C〜3Fのタグ信号を検出するようになっている。そして、図5に示すように、フックブロック11とともにタグリーダ6が資材2Aの取り付け完了後に取付け作業エリアP2から離れた時点で、全てのタグ信号は検出されなくなる。そして、作業が繰り返される場合には、図2に示すように、再び玉掛け作業エリアP1に戻った時点で玉掛け作業者3A、3B及び資材2Aのタグ信号を検出することになり、その時点で揚重作業の1サイクルが完了となる。
【0040】
つまり、図2に示すように、玉掛け作業エリアP1において、フックブロック11に設けられるタグリーダ6は、吊られている資材2Aに保持させている電子タグ4Aが通信範囲T内に位置するので、その検出データを検出する。このとき、フックブロック11が地上付近に位置しているので、資材2Aの周囲で玉掛け作業を行う2人の作業者3A、3Bが携帯する電子タグ4B、4Cについてもタグリーダ6の通信範囲T内に位置することとなり、それら2人の電子タグ4B、4Cの検出データがタグリーダ6によって検出される。そして、検出された検出データは、図1に示すように、タグリーダ6から送信部7へ送られ、送信部7からジブ先端12aの通信アンテナ5を介して操作室13内の受信部8へ送られてデータ格納部9に蓄積される。
【0041】
また、玉掛け作業エリアP1から所定の取付け作業エリアP2へ向けて資材2Aを巻き上げる際には、玉掛け作業者3A、3Bの電子タグ4がタグリーダ6の通信範囲Tから外れ、図3に示すように、フック11aで吊った資材2Aのみがタグリーダ6の通信範囲T内に位置することになり、この資材情報のみが検出されてデータ格納部9に蓄積される。
【0042】
また、図1及び図4に示すように、取付け作業エリアP2において、タグリーダ6の通信範囲T内には4人の作業者3C、3D、3E、3F及び資材2Aが入っているので、これらに保持、携帯される電子タグ4D〜4Gの識別情報がタグリーダ6によって検出される。そして、検出された検出データは、タグリーダ6から送信部7へ送られ、送信部7から通信アンテナ5を介して受信部8へ送られてデータ格納部9に蓄積される。
【0043】
さらに、図5に示すように、取付け作業エリアP2での資材2Aを取り付けが完了した後、空(資材2を吊っていない状態)のフック11a(フックブロック11)を玉掛け作業エリアP1へ移動させる際には、タグリーダ6の通信範囲T内に電子タグ4が位置しないため、非検出状態となる。
【0044】
また、図1に示すように、電子タグ4の識別情報を検出することによる揚重作業状況の確認に加え、本実施の形態では、作業監視カメラ20によってフック部より下方の作業状況を撮影し、その映像信号も送信部7から通信アンテナ5を介して操作室13内の受信部8へ送られ、その映像をモニター22にリアルタイムで映し出すことができる。そのため、クレーン1の運転者が作業状況の確認が困難な場合であっても、そのモニター22の映像を確認しながらクレーン1を効率よく運転することができる。
【0045】
さらに、データ格納部9に蓄積された検出データ(資材2や作業者3の識別情報)は、フックブロック11の位置と、時間(時刻)とに関連付けされたデータとなり、これをモニター22に表示させることで、クレーン運転者は玉掛け作業、巻き上げ、取り付け、巻き下げ等の作業内容を特定することができる。つまり、これら検出データに基づいて、「誰が、いつ、何を、どの作業を行ったか」という作業実績データとして記録することも可能となる。
【0046】
次に、上述したデータ収集システムの作用について詳細に説明する。
本データ収集システムでは、通信アンテナ5が設けられるクレーンジブ12の先端12aがクレーンフック11と操作室13とから見通せる位置であるので、フック部の巻き上げ位置にかかわらず、送信部7と通信アンテナ5との間、及び通信アンテナ5と受信部8との間の通信状態が遮断されることがなく、相互間で確実な交信を行うことができる。
【0047】
しかも、タグリーダ6と送信部7とがクレーン1のフックブロック11に装備されているので、クレーン1の移動に伴ってタグリーダ6等を移設する手間がかからないという利点がある。つまり、タグリーダ6を複数設置したり、移動する手間が不要となるうえ、配線を省略を省略することができる安価で優れた構成を実現することができる。
【0048】
また、タグリーダ6がフックブロック11に設けられており、クレーンフック11は揚重作業箇所に必然的に移動することから、フックブロック11に吊り下げられる資材2に保持させた電子タグ4や、その資材2に対して玉掛け作業や取り外し作業を行う作業者3に保持させた電子タグ4の識別情報を検出することができる。つまり、フックブロック11とともに移動するタグリーダ6の通信範囲Tに入る電子タグ4が検出されるので、フックブロック11の位置に応じた揚重作業状況を検出データから確認することが可能となる。
そして、タグリーダ6で検出した電子タグ4の識別情報は、無線で且つ自動的に受信部8へ送信されるので、クレーン1のオペレータはリアルタイムで検出データを確認することができる。そのため、従来のような揚重作業にかかわるデータを手入力するといった手間がなくなり、作業効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、資材2と作業者3の識別情報からなる検出データがクレーンフック11の位置と関連付けられることで、玉掛け作業、取り外し作業、巻き上げ、巻き下げといった揚重作業の種別を特定することができる。
また、検出データには、時間が関連付けられているので、各種の揚重作業にかかる作業時間を実績として蓄積しておくことが可能となる。
【0050】
また、フック近傍の作業状況を撮影する作業監視カメラ20が設けられ、作業監視カメラ20の映像と検出データとが関連付けられているので、電子タグ4の識別情報を検出することによる揚重作業状況の確認に加え、作業監視カメラ20によってフック部より下方の作業状況が撮影され、その映像により揚重作業状況を確認することができる。そして、フック部に取り付けた作業監視カメラ20により玉掛け作業場所、或いは取り付け作業場所に近い高さからの映像が取得できるため、より広範囲な視野で確認をすることができる。
【0051】
また、データ格納部9で収集された検出データをクレーン1の外部に設けられる別の端末へ向けて発信する外部発信部23が設けられているので、外部発信部23によって例えば携帯電話網やインターネット回線を使用してクレーン1の外部の端末に向けてデータ格納部9に蓄積された検出データを発信することができる。そのため、揚重作業現場から離れた場所にいる施工管理者等でもリアルタイムで揚重作業を監視したり、蓄積された検出データを分析することができる。
【0052】
上述のように本実施の形態によるクレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法では、揚重作業に基づく精度の高い検出データをリアルタイムで確認することができ、データ収集にかかる手間とコストを低減することができる。
【0053】
以上、本発明によるクレーンフックを利用したデータ収集システム及びデータ収集方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では被検出体として資材や作業者を対象としているが、これに限定されることはなく、他の部材であってもかまわない。例えば、施工階毎に、その階を区別する識別情報をもつ電子タグを取り付けておくようにしても良い。
【0054】
本実施の形態ではタワークレーンを適用対象としているが、クレーンの種類は限定されず、トラッククレーン等の他のクレーンにも適用することが可能である。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 クレーン
2 資材(被検出体)
3、3A〜3F 作業者(被検出体)
4 電子タグ
5 通信アンテナ
6 タグリーダ
7 送信部
8 受信部
9 データ格納部
11 フックブロック(クレーンフック)
12 クレーンジブ
12a 先端
13 操作室
20 作業監視カメラ
22 モニター
23 外部発信部
P1 玉掛け作業エリア
P2 取付け作業エリア
T 通信範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンフックを利用して揚重作業を管理するデータ収集システムであって、
資材や作業者などの被検出体に取り付けられるとともに、被検出体のそれぞれを特定する識別情報が組み込まれた電子タグと、
クレーンジブの先端に設けられ、前記電子タグの識別情報を無線で送受信可能とされる通信アンテナと、
前記クレーンフックに設けられ、前記電子タグの識別情報を検出可能なタグリーダと、
前記クレーンフックに設けられ、前記タグリーダで検出した識別情報を前記通信アンテナに向けて無線により送信する送信部と、
前記クレーンの操作室に設けられ、前記通信アンテナより送信された前記電子タグの識別情報を受信する受信部と、
該受信部で受信した検出データを蓄積するデータ格納部と、
を備えていることを特徴とするクレーンフックを利用したデータ収集システム。
【請求項2】
前記検出データは、前記クレーンフックの位置情報と関連付けられていることを特徴とする請求項1に記載のクレーンフックを利用したデータ収集システム。
【請求項3】
前記検出データには、時間が関連付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーンフックを利用したデータ収集システム。
【請求項4】
前記クレーンフックには、フック近傍の作業状況を撮影する作業監視カメラが設けられ、該作業監視カメラの映像と前記検出データとが関連付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクレーンフックを利用したデータ収集システム。
【請求項5】
前記データ格納部で収集された検出データを前記クレーンの外部に設けられる別の端末へ向けて発信する外部発信手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクレーンフックを利用したデータ収集システム。
【請求項6】
クレーンフックを利用して揚重作業を管理するデータ収集方法であって、
資材や作業者などの被検出体の識別情報を組み込んだ電子タグを前記被検出体に保持させる工程と、
前記電子タグの識別情報を前記クレーンフックに設けられたタグリーダによって検出する工程と、
該タグリーダで検出した識別情報を前記クレーンフックに設けられた送信部からクレーンジブの先端に設けられた通信アンテナに向けて無線により送信する工程と、
前記通信アンテナより送信された前記電子タグの識別情報を前記クレーンの操作室に設けられた受信部で受信する工程と、
前記受信部で受信した前記検出データをデータ格納部に蓄積する工程と、
を有していることを特徴とするデータ収集方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−246130(P2012−246130A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121655(P2011−121655)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】