説明

クレーン振れセンサ及びクレーン

【課題】簡素な構成で正確に振れを検出することができるクレーン振れセンサを提供する。
【解決手段】クレーン本体Cに設けられ、クレーン本体Cの下方に向けられた撮像部10と、クレーン本体Cに吊り下げられて撮像部10と対向する吊り具Cに設けられ、アレイ状に配列された複数のLEDチップにより発光面が形成され、上方へ向けて照射光を発するLEDアレイ素子を有するターゲット部20とを備え、ターゲット部20の発光面の重心から縁までの最短距離をd、撮像部10とターゲット部20との間の最大ストロークをLMAX、撮像部10の撮像素子の瞬時視野角をQとした場合に、以下の関係を満たすことを特徴とする。
Q×LMAX<d

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン振れセンサ及びクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、コンテナクレーン等の各種のクレーンにおいては、クレーン本体に吊り下げられる吊り具の振れ角や振れ量を検出し、この検出値に基づいて吊り具の振れを制御するものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された吊り具の振れ角を検出する装置では、それぞれ略正方形に形成されて上方に向けて照射光を発する第一のターゲットと第二のターゲットとを、吊り具の上面の一方端と他方端とに配置し、第一のターゲットと第二のターゲットとをそれぞれ上方から撮像し、撮像された第一のターゲットと第二のターゲットとの合成画像情報に基づく画像処理によって、各ターゲットの重心位置を算出し、これら重心位置の時間的変化に基づいて振れ角を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2907325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては、第一のターゲット及び第二のターゲットに複数の発光素子を集合させたものを用いているので、複数の発光素子を制御する必要があり、発光素子の駆動回路が複雑になってしまうという問題があった。
【0006】
また、発光素子の発光面積が不適切な場合には、天候が雨や霧のときに、第一のターゲット及び第二のターゲットが発した照射光の光軸が遮られてしまって、重心位置を算出することができなり、誤検出が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、簡素な構成で正確に振れを検出することができるクレーン振れセンサ及びクレーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るクレーン振れセンサは、クレーン本体に設けられ、前記クレーン本体の下方に向けられた撮像部と、前記クレーン本体に吊り下げられて前記撮像部と対向する吊り具に設けられ、アレイ状に配列された複数のLEDチップにより発光面が形成され、上方へ向けて照射光を発するLEDアレイ素子を有するターゲット部とを備え、前記ターゲット部の発光面の重心から縁までの最短距離をd、前記撮像部と前記ターゲット部との間の最大ストロークをLMAX、前記撮像部の撮像素子の瞬時視野角をQとした場合に、以下の関係を満たすことを特徴とする。
Q×LMAX<d
この構成によれば、アレイ状に配列された複数のLEDチップにより発光面が形成されるLEDアレイ素子を有するターゲット部を備えるので、ターゲット部の光源が単体の素子で構成されることとなる。これにより、ターゲット部を制御する駆動回路の構成を簡略化することができるので、クレーン振れセンサ全体の構成を簡素にすることができる。
また、上記構成によれば、上式の関係を満たすことでターゲット部の十分な発光面積が確保されるので、天候が雨や霧の場合であっても、ターゲット部からのいずれかの照射光が撮像部の各撮像素子に到達することとなり、ターゲット部の誤検出を抑制することができる。
【0009】
また、前記ターゲット部は、前記LEDアレイ素子が発した照射光を集光して均一化するレンズを備えることを特徴とする。
この構成によれば、ターゲット部が発した照射光を集光して均一化するレンズを備えるので、照射光を拡散させないで撮像素子に到達させることができる。
【0010】
また、水平方向における前記吊り具の各ストロークでの最大触れ量をX、前記レンズの投影角をPとした場合に、以下の関係を満たすことを特徴とする。
X/L<P/2
この構成によれば、上式の関係を満たすので、例えば、振れによって吊り具が変位したとしてもターゲット部が撮像部の撮像範囲から外れない。これにより、撮像部の撮像範囲からターゲット部が外れて生じる誤検出を抑制することができる。
【0011】
また、前記LEDアレイ素子の照射光の波長は、太陽光スペクトルのピークよりも長波長寄りであることを特徴とする。
この構成によれば、ターゲット部の照射光が太陽光スペクトルのピークよりも長波長寄りであるので、ターゲット部からの照射光と太陽光とが区別され易くなり、撮像部で撮像された画像においてターゲット部が明確になる。これにより、ターゲット部を正確に識別することができ、より正確に振れを検出することが可能となる。
【0012】
また、前記LEDアレイ素子の単位面積あたりの発光強度は、前記最大ストロークLMAXの場合に、前記撮像部の撮像素子の最低感度以上で飽和する強さ且つ外光よりも強いことを特徴とする。
この構成によれば、LEDアレイ素子の単位面積あたりの発光強度が最大ストロークLMAXの場合に、撮像部の撮像素子の最低感度以上で飽和する強さ且つ外光よりも強いので、十分な強さの照射光を撮像部の撮像素子に到達させることができる。また、レーザ半導体のように発光強度の制約を受けることなく、出力を増大させて十分な強さの照射光を撮像部の撮像素子に到達させることができる。
【0013】
さらに、本発明に係るクレーンは、前記クレーン本体と、前記クレーン本体に吊り下げられた吊り具と、上記のいずれかのクレーン振れセンサとを備えることを特徴とする。
この構成によれば、上記のいずれかのクレーン振れセンサを備えるので、全体構成を複雑にすることなく、吊り具の振れを正確に検出することができる。また、この検出結果に基づいて吊り具の振れを適切に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るクレーン振れセンサによれば、簡素な構成で正確に振れを検出することができる。
また、本発明に係るクレーンによれば、全体構成を複雑にすることなく、吊り具の振れを正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るクレーン振れセンサ1の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る撮像部10の概略構成拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係るターゲット部20の概略構成拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係るLEDアレイ素子21の発光波長nと太陽スペクトルSとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係るクレーン振れセンサ1の概略構成図であって、図1の状態から吊り具Wが変位した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン振れセンサ1の概略構成図である。
図1に示すように、クレーン振れセンサ1は、クレーン本体Cと、このクレーン本体Cに吊り下げられた吊り具Wとに配設されており、吊り具Wの振れ角θ(図5参照)を検出するものである。これらクレーン本体C及び吊り具Wは、相対的に上下方向に変位することができる。
このクレーン振れセンサ1は、対をなす撮像部10とターゲット部20とを四対備えている。
【0017】
図2は、撮像部10の概略構成拡大図である。
撮像部10は、クレーン本体Cの下部に配設されており、カメラ11と、光学レンズ12と、光学フィルタ13とを備えている。
【0018】
カメラ11は、図2に示すように、クレーン本体Cの下方に向けられた状態で、クレーン本体Cの下面c1に固定されている。各カメラ11は、それぞれ画像処理装置(不図示)に電気的に接続されており、画像データを画像処理装置(不図示)に転送する。
【0019】
光学レンズ12は、カメラ11の下方に固定されており、焦点距離fが例えば30mmのものである。この光学レンズ12は、クレーン本体Cと吊り具Wとが最も離れた場合と最も近づいた場合とにおいて、カメラ11の視野角を、対となったターゲット部20を評価可能な視野角αとする。
【0020】
光学フィルタ13は、太陽光の影響を低減するものであり、ターゲット部20からの照射光の発光波長nに基づいて透過波長帯bf(図4参照)が設計されている。具体的には、透過波長帯bfの中心が、後述のLEDアレイ素子21からの照射光の発光波長Lのピークと重なるように設計されており、透過波長帯bfが比較的に狭くなっている。
【0021】
図3は、ターゲット部20の概略構成拡大図である。
図3に示すように、各ターゲット部20は、LEDアレイ素子21と、レンズ22とを備えている。
【0022】
LEDアレイ素子21は、六十個のLEDベアチップ(AlGaAs)を一のAINセラミックス基板上にアレイ状に多実装し、クリアシリコン樹脂で被覆したものである。このLEDアレイ素子21は、六十個のLEDベアチップが略円形に、且つ、密に集合しており、全体的に見て重心算出に適した形状(例えば、円形)の発光面21aを形成する。
なお、LEDベアチップの数は、複数個であれば適宜変更可能である
【0023】
このLEDアレイ素子21は、吊り具Wの矩形状となった上面(上部)w1の少なくとも四隅に二つ以上配設されて対となった撮像部10に対向しており、上方に向けて照射光を発するようになっている。このLEDアレイ素子21の照射光の照射角度は、鉛直軸を0度とした場合に、+60度〜−60度となっている。なお、照射光の照射角度は、適宜変更可能である。
【0024】
図4は、LEDアレイ素子21の発光波長nと太陽スペクトルSとの関係を示すグラフである。
図4に示すように、LEDアレイ素子21の発光波長nが太陽スペクトルSのピークよりも長波長寄りに設定されている。より具体的には、太陽光の光強度が比較的に低くなる近赤外域のうちの大気の吸収ラインの波長域に設定されている。
また、このLEDアレイ素子21の単位面積あたりの発光強度は、クレーン本体Cと吊り具Wとが最も離れた場合におけるターゲット部20と撮像部10との最大ストロークLMAX(後述する。)の場合に、カメラ11の撮像素子の最低感度以上で飽和する強さ且つ太陽光よりも強くなっている。
このLEDアレイ素子21は、素子としては一つであるために、LEDアレイ素子21の駆動回路が比較的に簡略化されている。
【0025】
図3に戻って、レンズ22は、具体的には、コンデンサレンズからなり、LEDアレイ素子21の上方に固定されている。このレンズ22は、LEDアレイ素子21から発せられた照射光を集光して均一化する。レンズ22は、LEDアレイ素子21の発光面21aを拡大して上方に投影する。より具体的には、LEDアレイ素子21から照射角度+60度〜−60度で発せられた照射光を、レンズ22が集光して後述する式(2)を満たす所定の投影角βで上方に投影する。
【0026】
このようなターゲット部20と撮像部10との間のストロークLは、クレーン本体Cと吊り具Wとが最も離れた場合の最大ストロークLMAXが40m、最も近づいた場合の最小ストロークLMINが3mに設定されている。
【0027】
クレーン振れセンサ1は、LEDアレイ素子21の発光面21aの半径をd、LEDアレイ素子21とカメラ11との間の最大ストロークをLMAX、カメラ11の撮像素子の瞬時視野角をQとした場合に、以下の式(1)の関係を満たしている。
Q×LMAX<d…式(1)
本実施形態では、上述したカメラ11の撮像素子の大きさが10×10μm、光学レンズ12の焦点距離fが30mmとなっており、瞬時視野角Qが0.33mradとなっている。つまり、本実施形態では、最大ストロークLMAXが40mであるため、LEDアレイ素子21の径(発光面積径)が1.3cm以上となっている。
但し、最小ストロークLMINの場合においても、LEDアレイ素子21全体が撮像されるように、最小ストロークLMINの場合に視野角αよりもLEDアレイ素子21の径(発光面積径)が小さく設定されている。
【0028】
図5は、吊り具Wが振れた場合におけるクレーン振れセンサ1の概略構成図である。
レンズ22の投影角βは、水平方向における吊り具Wの最大触れ量をXとした場合に、以下の式(2)の関係を満たしている。
X/L<β/2…式(2)
本実施形態では、ストロークL=40mの場合における最大振れ量X=±8.5mを基準に定めており、投影角βが+12度〜−12度となっている。すなわち、照射角度+60度〜−60度で発せられた照射光が、レンズ22によって+12度〜−12度で投影される。
【0029】
上記構成からなるクレーン振れセンサ1は、各撮像部10により対となったターゲット部20を撮像して、撮像されたターゲット部20の合成画像情報に基づく画像処理によって、各LEDアレイ素子21の重心位置を算出し、これら重心位置の時間的変化に基づいて振れ角θ(図5参照)を検出する。
【0030】
上記構成からなるクレーン振れセンサ1によれば、アレイ状に配列された複数のLEDチップにより発光面21aが形成されるLEDアレイ素子21を有するターゲット部20を備えるので、ターゲット部20の光源が単体の素子で構成されることとなる。これにより、ターゲット部20を制御する駆動回路の構成を簡略化することができるので、クレーン振れセンサ1全体の構成を簡素にすることができる。
さらに、ターゲット部20を制御する駆動回路の構成を簡略化することにより、管理上・運用上の労力やコストも低減させることができる。すなわち、従来の技術においては、素子の一部が故障するとターゲットの重心検出に誤差が生じてしまうために、複数の素子を正常に点灯させるための保守点検作業に手間が掛かっていた。
これに対して、クレーン振れセンサ1によれば、LEDアレイ素子21が一つの素子なので、故障した場合にはLEDアレイ素子21全体を交換すれば良く、保守点検作業が容易となる。これにより、保守点検作業に伴う労力やコストを低減させることが可能となる。
【0031】
また、上記構成によれば、上述した式(1)の関係を満たすことでターゲット部20の十分な発光面積が確保されるので、天候が雨や霧の場合であっても、ターゲット部20からのいずれかの照射光が撮像部10の各撮像素子に到達することとなり、ターゲット部20の誤検出を抑制することができる。
すなわち、従来の技術において、ターゲット部に半導体レーザ素子を用いたものでは、発光素子は単位面積あたりの発光強度は大きいが発光面積が小さいため、雨天・霧等の場合に発光光軸が遮られて誤検出が発生してしまっていた。また、従来の技術において、砲弾型のように一素子を樹脂モールドしたLEDをターゲット部の光源に用いたものでは、発光素子の単位面積あたりの発光強度も発光面積も小さいため、雨天・霧等の場合に発光光軸が遮られ誤検出が発生してしまっていた。
しかしながら、クレーン振れセンサ1のターゲット部20では、上述したように十分な発光面積が確保されるので、発光源サイズが大きくなる。これにより、天候が雨や霧の場合であっても、撮像されるターゲット形状を安定させることができる。
【0032】
また、ターゲット部20が発した照射光を集光して均一化するレンズ22を備えるので、照射光を拡散させないで撮像素子に到達させることができる。つまり、照射光が拡散してしまうとカメラ11に到達する照射光の割合が少なくなり、輝度を増加させる必要があるが、レンズ22によって照射光を集光して均一化するので、発光面21aの輝度を増加させることを抑止しつつ、カメラ11に到達する照射光の割合を多くすることができる。
【0033】
また、上述した式(2)の関係を満たすので、例えば、振れによって吊り具Wが変位したとしてもターゲット部20が撮像部10の撮像範囲から外れずに、ターゲット部20が撮像部10に撮像されることとなる。これにより、撮像部10の撮像範囲からターゲット部20が外れて生じる誤検出を抑制することができる。
また、ターゲット部に半導体レーザ素子を用いたものでは、投影角度が水平方向と垂直方向とで異なるために、投影角度を双方向で均一にするためには特殊な光学系を構成する必要があった。
これに対して、クレーン振れセンサ1のターゲット部20では、上述したようにLEDアレイ素子21を用いるので、水平方向及び垂直方向の双方向で当方的に投影されるために、単純な光学系で投影角βを制御することが可能となる。
【0034】
また、LEDアレイ素子21の発光波長nが、太陽光の光強度が比較的に低くなる近赤外域に設定されているので、ターゲット部20からの照射光と太陽光とが区別され易くなり、撮像部10で撮像された画像においてターゲット部20が明確になる。これにより、ターゲット部20を正確に識別することができ、正確に振れを検出することが可能となる。
さらに、LEDアレイ素子21の発光波長nが、近赤外域のうちの大気の吸収ラインの波長域に設定されているので、太陽光の影響をより受け難くなり、より正確に振れを検出することが可能となる。
【0035】
ここで、照射光のみを透過させる光学フィルタを用いる場合には、太陽光による影響を低減させるために透過波長帯が狭く且つその波長帯での透過率が高くなったフィルタ特性がよい。
従来技術においてターゲット部に半導体レーザ素子を用いたものでは、半導体レーザ素子の照射光の発振波長帯が非常に狭いことから光学フィルタの透過波長帯も非常に狭くする必要がある。一般に、光学フィルタの透過波長帯が狭くなるほど中心波長を一定に製作することが難しくなり、歩留まりが悪くなる。このため、半導体レーザ素子の個体毎に発振波長を確認し、それに応じた光学フィルタを選定する必要がある。
しかしながら、半導体レーザ素子は、素子温度に応じて発振波長の中心波長が変化するために、照射光の波長が光学フィルタの透過波長帯から外れてしまう恐れが高い。照射光の波長が光学フィルタの透過波長帯から外れてしまうと、照射光の大部分が光学フィルタで遮断されることとなり、カメラ11の撮像素子に受光される照射光が僅かなものとなってしまう。
これに対して、上述したLEDアレイ素子21は、半導体レーザ素子と比較して、発光波長帯が広いため、光学フィルタ13の透過波長帯の管理が容易となる。つまり、照射光の波長帯が広くなることから、製作過程において光学フィルタの中心波長がズレてしまったとしても(図5において符号bf´,bf´´で示す。)、撮像部10側の受光光量に大きな変動がなくなり、ターゲット部20の誤検知を抑制することができる。換言すれば、ターゲット部20に発光波長帯が広いLEDアレイ素子21を用いているので、光学フィルタ13を選定する必要がない。
【0036】
また、LEDアレイ素子21の単位面積あたりの発光強度が最大ストロークLMAXの場合に、撮像部10の撮像素子の最低感度以上で飽和する強さ且つ外光よりも強いので、十分な強さの照射光を撮像部10の撮像素子に到達させることができる。
【0037】
ここで、ターゲット部の光源は高輝度化する程に撮像部10の検出率が向上する。
従来技術においてターゲット部に半導体レーザ素子を用いたものでは、JIS規格で決められているレーザクラスを超えて高輝度化するために、眼の保護の観点から安全処置を講じる必要がある。
これに対して、LEDアレイ素子21は、発光強度の制約を受けることなく、出力を増大させて十分な強さの照射光を撮像部10の撮像素子に到達させることができる。
【0038】
また、LEDアレイ素子21は、LEDチップを用いるので、半導体レーザ素子を用いたターゲットと比較して以下の有利な効果を有する。
(1)半導体レーザ素子よりも熱及び衝撃に強い。このため、熱及び衝撃対策を施さなくてもよいので、半導体レーザ素子を用いたターゲットに比べて軽量化することができる。
(2)半導体レーザ素子よりも外部環境に対する安定性及び電気的安定性に優れる。このため、高寿命となり、優れた運用性を得ることができる。
さらに、本発明に係るクレーンは、前記クレーン本体と、前記クレーン本体に吊り下げられた吊り具と、上記のいずれかのクレーン振れセンサとを備えることを特徴とする。
【0039】
また、このようなクレーン振れセンサ1を備えるクレーンによれば、全体構成を複雑にすることなく、吊り具Wの振れを正確に検出することができる。また、この検出結果に基づいて吊り具Wの振れを適切に制御することが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施の形態では、重心を算出しやすいようにLEDアレイ素子21の発光面21aを円形に構成したが、その他の形状(例えば、正方形、正多角形、矩形状)であってもよい。これら場合には、式(1)におけるdをターゲットの発光面の重心から縁までの最短距離とすることで、天候が雨や霧の場合であっても、ターゲット部からの照射光を各撮像素子に到達させることができる。
【0041】
また、上述した実施の形態では、クレーンの種類について特に言及しなかったが、固定式の他、移動式やデリックを含むものに本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…クレーン振れセンサ
10…撮像部
11…カメラ
12…光学レンズ
13…光学フィルタ
20…ターゲット部
21…LEDアレイ素子
21a…発光面
22…レンズ
C…クレーン本体
d…発光面の半径(ターゲット部の発光面の重心から縁までの最短距離)
L…ストローク
MAX…最大ストローク
Q…瞬時視野角
W…吊り具
X…水平方向における吊り具Wの最大触れ量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体に設けられ、前記クレーン本体の下方に向けられた撮像部と、
前記クレーン本体に吊り下げられて前記撮像部と対向する吊り具に設けられ、アレイ状に配列された複数のLEDチップにより発光面が形成され、上方へ向けて照射光を発するLEDアレイ素子を有するターゲット部とを備え、
前記ターゲット部の発光面の重心から縁までの最短距離をd、前記撮像部と前記ターゲット部との間の最大ストロークをLMAX、前記撮像部の撮像素子の瞬時視野角をQとした場合に、以下の関係を満たすことを特徴とするクレーン振れセンサ。
Q×LMAX<d
【請求項2】
前記ターゲット部は、前記LEDアレイ素子が発した照射光を集光して均一化するレンズを備えることを特徴とする請求項1に記載のクレーン振れセンサ。
【請求項3】
水平方向における前記吊り具の各ストロークでの最大触れ量をX、前記レンズの投影角をPとした場合に、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載のクレーン振れセンサ。
X/L<P/2
【請求項4】
前記LEDアレイ素子の照射光の波長は、太陽光スペクトルのピークよりも長波長寄りであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載のクレーン振れセンサ。
【請求項5】
前記LEDアレイ素子の単位面積あたりの発光強度は、前記最大ストロークLMAXの場合に、前記撮像部の撮像素子の最低感度以上で飽和する強さ且つ外光よりも強いことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載のクレーン振れセンサ。
【請求項6】
前記クレーン本体と、
前記クレーン本体に吊り下げられた吊り具と、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のクレーン振れセンサとを備えることを特徴とするクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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