説明

クレーン用ハウジング構造

【課題】各種ウインチの駆動用モータを収容するハウジングが取り外され、燃料が抜き取られたりするのを防止する。
【解決手段】複数のウインチ10〜12の駆動用モータ10a〜12aは、同様な構造を有する複数のハウジング9a〜9d内に収容される。天板状部材30a〜30dは、相互に、ハウジング9a〜9dの内側に折曲された側縁部31a、32aで、締結部材によりハウジング9a〜9dの内部で締結されている。開閉ドア40aは、ドア枠体45の内側で天板部31に固定されている。天板状部材30a〜30dのいずれかを取り外すだけで、対応する駆動用モータ10a〜12aを取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン用ハウジング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小型から大型の移動式クレーンは、走行体と、この走行体に旋回可能に装着された旋回体とを備え、旋回体には、ブームが起伏可能に取り付けられている。旋回体の基部となる旋回フレームには、主巻用ロープを介して主吊荷フックを昇降する主巻ウインチ、補巻用ロープを介して副吊荷フックを昇降する補巻ウインチ、起伏用ロープを介してブームを起伏する起伏ウインチ等が取り付けられている。
【0003】
各ウインチには、ロープを巻上げ、巻下げするためにドラムを駆動する油圧モータが取り付けられており、各油圧モータは、旋回フレームに取り付けられたハウジング内に収容され、ガードされている。ハウジングは、油圧モータ全体を覆う大きさを有し、天板部と表・裏面板部とが一体に形成されたパネルにより構成されており、このパネルを旋回フレームにボルト等の締結部材により締結して構成されている。
【0004】
天板部と表・裏面板部とが一体に形成されたハウジングでは、サイズが大きいため、取付けや、ウインチの交換時におけるハンドリングが大変である。また、長期間の使用によりひずみが累積しやすく、その場合に一部のみを修理したり改造したりすることが困難である。
そこで、ハウジングを、それぞれが、個々の油圧モータを覆う複数個に分割し、かつ、各ハウジングを天板、表面板と裏面板とに分割して構成し、これらの部材を、旋回フレームに植立した天井梁付きのピラー部材に取り付けた構造が知られている。このクレーン用ガード構造では、各ウインチの一側面側に配置されたブレーキ等を覆う第1のハウジング、および他面側に配置された油圧モータ等を覆う第2のハウジングを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−143155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クレーンでは、ウインチの交換、修理あるいはクレーンの運搬の際におけるウインチの取り外しが必要となる。しかし、上記特許文献1に記載されたクレーンでは、旋回フレームに植立した天井梁付きのピラー部材に天板、表面板、裏面板を取り付ける構造であるため、ウインチを持ち上げる際、ウインチの油圧モータがピラー部材の天井梁に突き当たる。このため、ウインチを取り外すにはこれらの部材をすべて取り外す必要があり、交換作業が大変であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、旋回フレームに取り外し可能に取り付けられた複数のドラムと、各ドラムに取り付けられたドラム駆動用の複数のモータと、少なくともモータを収容する複数のハウジングと、を備え、各ハウジングは、モータの上部を覆う天板部および天板部と一体に形成され、各モータにおけるドラム側の一側面を覆い、ドラムおよびモータとの干渉を回避する開口が設けられた裏面板部を有する天板と、各モータにおける一側面と反対側の他側面を覆う開閉ドアとを備え、天板を取り外すことにより、開閉ドアを取り外すことなくモータが取り付けられたドラムを取り外し可能とされていることを特徴とする。
また、本発明は、旋回フレームに取り外し可能に取り付けられた複数のドラムと、各ドラムに取り付けられたドラム駆動用の複数のモータと、少なくともモータを収容する複数のハウジングと、を備え、各ハウジングは、モータの上部を覆う天板と、各モータにおけるドラム側の一側面を覆い、ドラムおよびモータとの干渉を回避する開口が設けられた裏面板と、各モータにおける一側面と反対側の他側面を覆う開閉ドアとを備え、天板を取り外すことにより、裏面板および開閉ドアを取り外すことなくモータが取り付けられたドラムを取り外し可能とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクレーン用ハウジング構造によれば、天板部と裏面板部とが一体化された天板、または天板部のみを取り外すだけで、モータが取り付けられたドラムを取り外すことが可能であり、ウインチの交換あるいはクレーンの運搬の際におけるウインチの取り外しを能率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のハウジングが搭載された一実施の形態としてのクレーンの側面図。
【図2】図1に図示されたクレーンの上面図。
【図3】本発明のクレーン用ハウジング構造の一実施の形態としての外観斜視図。
【図4】図3におけるウインチを取り外した状態の斜視図。
【図5】図4を裏面側から観た分解斜視図。
【図6】図5に図示された開閉ドアの分解斜視図。
【図7】図5においてハウジングを組み付けた状態の斜視図。
【図8】図7におけるVIII−VIII線で切断したハウジング上部側の断面図。
【図9】図7におけるIX−IX線で切断したハウジング上部側の断面図。
【図10】図7におけるX−X線で切断したハウジング上部側の側面図。
【図11】本発明のクレーン用ハウジング構造の実施形態2の外観斜視図。
【図12】図11におけるウインチを取り外した状態の外観斜視図。
【図13】図12を裏面側から観た分解斜視図。
【図14】図13においてハウジング組み付けた状態の斜視図。
【図15】図14におけるXV−XV線で切断したハウジング上部側の断面図。
【図16】図14におけるXVI−XVI線で切断したハウジング上部側の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態1]
(クレーン全体構造)
以下、本発明のクレーン用ハウジング構造の一実施の形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明のクレーン用ハウジング構造を有する一実施の形態としてのクレーンの側面図であり、図2は、図1に図示されたクレーンの上面図である。
クレーンは、下部走行体1と、下部走行体1上に旋回可能に設けられた上部旋回体2を備えている。上部旋回体2は、旋回フレーム3を備える。旋回フレーム3は、中央部のメインフレームとメインフレームの車幅方向の両側に連結された左右ベッドにより構成されている。旋回フレーム3の幅方向(図2における上下方向)の一側部の前部に運転室4が設けられ、運転室4の後方側には、エンジン室5が設けられている。
エンジン室5内には、エンジン6およびラジエータ7等が配置されている。
【0011】
旋回フレーム3の幅方向における運転室4と対向する他側部の前部には、電気品ユニット(図示せず)が収容された電気品格納室8が設けられ、電気品格納室8の後部には、4個のハウジング9a、9b、9c、9dが設けられている。ハウジング9a、9b、9dに対応して、主巻ウインチ10、補巻ウインチ11、起伏ウインチ12が、それぞれ、配置されている(図2参照)。各ウインチ10、11、12は、それぞれ、ロープを巻き取るドラム10b、11b、12bとドラム10b、11b、12bを駆動する油圧モータ10a、11a、12aとを有する。油圧モータ10a、11a、12aの出力軸は、それぞれ、遊星減速機を介してドラムに連結されている。旋回フレーム3の最後部、すなわち、ハウジング9dおよびエンジン室5の後部には、カウンタウエイト14が設けられている。
【0012】
旋回フレーム3のメインフレームの前部には、図示はしないが、ブーム等の作業装置が取付けられるアタッチメント取付部17が設けられている。
上記した主巻ウインチ10は、アタッチメント取付部17に起伏可能にとりつけられたブームの先端側に吊り下げられる主吊荷フックに一端が係止された主巻用ロープを巻上げ、巻下げして主吊荷フックを昇降する。補巻ウインチ11は、ブームの先端側に吊り下げられる副吊荷フックに一端が係止された補巻用ロープを巻上げ、巻下げして副吊荷フックを昇降する。また、起伏ウインチ12は、起伏用ロープを介してブームを起伏する。
【0013】
(ハウジング構造)
図3は、図1および図2に図示された旋回フレーム3に取り付けられた、本発明の一実施の形態としてのハウジング構造の外観斜視図である。
主巻ウインチ10および補巻ウインチ11は、それぞれ、ブラケット21に取り付けられ、ブラケット21は、旋回フレーム3のメインフレームに設けられている取付部3a、3bにボルト等の締結部材71により固定されている。同様に、起伏ウインチ12は、ブラケット22に取り付けられ、ブラケット22は、旋回フレーム3のメインフレームに設けられている取付部3cに、ボルト等の締結部材72により取り付けられている。
【0014】
主巻ウインチ10、補巻ウインチ11、起伏ウインチ12のドラム10b、11b、12bのそれぞれは、ハウジング9a、9b、9d内に収容される油圧式の駆動用モータ10a、11a、12a(図2参照)により駆動される。主巻ウインチ10、補巻ウインチ11、起伏ウインチ12は、それぞれ、遊星減速装置を内蔵している。
旋回フレーム3には、補巻ウインチ11と起伏ウインチ12との間に、第3のウインチを取り付け可能なスペースが設けられている。このスペースには、例えば、第3の吊荷フックが必要とされる場合に、この第3の吊荷フックを昇降するために、第3のウインチが装着される。
【0015】
図4は、図3におけるウインチを取り外した状態の斜視図である。
ハウジング9a〜9dには、それぞれ、切欠き32bが設けられている。各切欠き32bは、駆動用モータ10a〜10cに対応して設けられ、各ウインチ10〜12に取り付けられた状態で、駆動用モータ10a〜10cを挿通することが可能な大きさ、形状に形成されている。ウインチが装着されていないハウジング9cの切欠き32bは、覆い板58により塞がれている。
【0016】
図5は、図4を裏面側、すなわちクレーンの左側方から観た分解斜視図である。
ハウジング9a〜9dは、旋回フレーム3の一部を構成するベッド51上に設けられ、それぞれ、天板部31と裏面板部32とが一体成形された天板状部材(天板)30a〜30dと、裏面板部32に対向して配置された開閉ドア40aまたは40bとを備えている。天板部31と裏面板部32は、板金をプレス加工によりほぼL字形状に折曲して形成されている。
ベッド51の前方側には、電気品格納室8を構成する前方フレーム部材52が取り付けられており、ベッド51の後端には、後方フレーム53が取り付けられている。ハウジング9a〜9dは、前方フレーム部材52と後方フレーム53との間に直線状に並べて配置されている。
【0017】
各天板部31の幅方向に平行に延出された一対の側辺には、ハウジング9a〜9dの内側方向に向けてほぼ垂直に折曲された側縁部31aが形成されている。また、各裏面板部32における側縁部31aに隣接する一対の側辺には、ハウジング9a〜9dの内側方向に向けてほぼ垂直に折曲された側縁部32aが形成されている。各側縁部31a、32aには、それぞれ、複数の貫通孔33が形成されている。
【0018】
図6は、開閉ドア40a、40bの分解斜視図である。開閉ドア40a、40bは、ドア本体41a、41bとドア枠体45を有する。ドア本体41a、41bは、それぞれ、ハウジング9a〜9d内に収容される駆動用モータ10a、11a、12aの一側面を覆うパネル部材であり、前面に、施錠および開錠可能な鍵部42が設けられている。
ドア枠体45は、ドア本体41a、41bを保持する部材であり、ドア本体41a、41bに対向する開口部45a、45bを有する枠状形状を有する。ドア本体41a、41bは、後述する如く、ボルト等の締結部材によりドア枠体45に回動可能に取り付けられる。ドア枠体41aと41bとは、隣接して配列され、隣接面に対して線対称にドア枠体45に取り付けられる。
電気品格納室8は、前方フレーム部材52と、開閉ドア40cとから構成されており、開閉ドア40cには、開閉ドア40a、40bと同様に、鍵部42が設けられている。
【0019】
図7は、ハウジングを組み付けた状態の斜視図であり、図8は、図7におけるVIII−VIII線で切断したハウジング上部側の断面図であり、図9は、図7におけるIX−IX線で切断したハウジング上部側の断面図であり、図10は、図7におけるX−X線で切断したハウジング上部側の側面図である。
図10に図示されるように、各天板状部材30a〜30dは、隣接する天板状部材30a〜30d同士の側縁部31a、32aに設けられた貫通孔33に貫通されるボルト73により相互に固定される。図5における最も前方側のハウジング9aの天板状部材30aは、その側縁部31a、32aに設けられた貫通孔33と、前方フレーム部材52に設けられた貫通孔(図示せず)とに挿通されるボルトにより電気品格納室8に固定される。最も後方側のハウジング9dの天板30dは、その側縁部31a、32aに設けられた貫通孔33と、後方フレーム53に設けられた貫通孔(図示せず)とに挿通されるボルトにより後方フレーム53に固定される。
【0020】
開閉ドア40a、40bは、それぞれ、ねじ等の締結部材をドア枠体45に設けられた貫通孔(図示せず)に挿通し、ドア本体41a、41bに設けられたねじ穴に締結することにより、ドア本体41a、41bとドア枠体45とが一体化されて構成されている。つまり、ドア枠体45は、ハウジング9a〜9dの内側から締結される締結部材によりドア本体41a、41bに取り付けられている。
ドア枠体45の一端部45cは各天板状部材30a〜30dの天板部31の内面側に設けられた取付部35に取り付けられている。すなわち、図8に図示されるように、ドア枠体45の一端部45cと、天板部31の取付部35とに設けられた貫通孔にボルト74を挿通しナットに締結することにより、ドア枠体45が隣接する2個の天板部31に取り付けられる。
【0021】
ドア本体41a、41bは、ドア枠体45の一端部45cに回動可能に保持されている。
図7において、57は、ドア本体41a、41bの回動を案内するガイド部材であり、ドア本体41a、41bは、ガイド部材57により開放時における強度が補強され、また、開放角度が制限される。つまり、ガイド部材57は、ドア本体41a、41bの開放時のストッパの機能を有している。
【0022】
図9に図示されるように、天板状部材30a〜30dの境界部には、雨等の水滴を溜める受け部材61が設けられている。受け部材61は断面コ字状を有し、図10に図示されるように、天板部31の側縁部31aのほぼ全長に亘り延出されている。天板部31の側縁部31aには、ハウジング9a〜9dの内側に突き出す突出部36が一体に形成されている。受け部材61は、受け部材61および突出部36に設けられた貫通孔にボルト75を挿通して天板部31に取り付けられる。
【0023】
(ハウジングの組付方法)
ハウジング9a〜9dを組み付ける方法について説明する。
先ず、ベッド51に電気品格納室8を構成する前方フレーム部材52および後方フレーム53を取り付ける。旋回フレーム3には、主巻ウインチ10、補巻ウインチ11、起伏ウインチ12が取り付けられたブラケット21、22が旋回フレームの取付部3a、3b、3cに締結部材71、72により固定されている。各ウインチ10〜12のドラム10b、11b、12bは、各ドラム10b、11b、12bに内蔵された遊星減速機(図示せず)を介して駆動用モータ10a、11a、12aに連結されている。
【0024】
次に、ベッド51に天板状部材30a〜30dを取り付ける。
最初に、ハウジング9aを、電気品格納室8を構成する前方フレーム部材52に取り付ける。天板状部材30aの前側の側縁部31a、32aの貫通孔33を前方フレーム部材52の貫通孔(図示せず)に位置合わせし、ボルト73を挿通して両部材を連結する。次に、ハウジング9bを構成する天板状部材30bを、天板状部材30aの後側の側縁部31a、32aに取り付ける。以下、同様に、天板状部材30cを天板状部材30bに取り付け、天板状部材30dを天板状部材30cに取り付ける。このように、ハウジング9a、9b、9dを取り付ける際、各ハウジング9a、9b、9dの裏面板部32の切欠き32bにより、ウインチ9〜11の左側部と裏面板部32との干渉を防止することができる。
【0025】
天板状部材30cを天板状部材30bに取り付ける前に、天板状部材30cの裏面板部32の切欠き32bに覆い板58(図3参照)を取り付けておく。覆い板58の取り付けは、天板状部材30cを天板状部材30bに取り付けた後に行ってもよい。天板状部材30dは、前側の側縁部31a、32aを介して天板状部材30cに取り付けた後、後側の側縁部31a、32aを後方フレーム53に連結する。
【0026】
天板状部材30a〜30dの取付けは、上記とは逆に、天板状部材30d、30c、30b、30aの順に行うこともできる。
【0027】
次に、各天板状部材30a〜30dの境界部の下方に、受け部材61を取り付ける。受け部材61の取り付け方は上述した通りである。受け部材61は、天板状部材30aと前方フレーム部材52との境界部の下方および天板30dと後方フレーム53との境界部の下方にも取り付けられる。
【0028】
次に、天板状部材30a、30bおよび天板状部材30c、30dに開閉ドア40a、40bを取り付ける。ドア枠体45には、ドア本体41a、41bが回動可能に保持されて構成されており、天板状部材30a〜30dの裏面板部32の切欠き52に、それぞれ、駆動用モータ10a、11a、12aを挿通して、ドア枠体45を天板状部材30a、30bまたは天板状部材30c、30dに取り付ける。このようにして、開閉ドア40a、40bは、図8に図示されるように、ボルト74により天板状部材30a、30bまたは天板状部材30c、30dに取り付けられる。
なお、電気品格納室8の開閉ドア40cの形状およびサイズは開閉ドア40a、40bと相違するが、ドア枠体とドア枠体に回動可能に保持されたドア本体とから構成されている点は同様であり、開閉ドア40a、40bの取り付け前または取り付け後に、前方フレーム部材52に取り付けられる。
【0029】
このようにして、ベッド51に取り付けられた電気品格納室8および後方フレーム53にハウジング9a〜9dが連結される。天板状部材30a〜30dは、ハウジング9a〜9dの内方側に折曲された側縁部31a、32a同士をボルト73により締結することにより、相互に連結されている。また、開閉ドア40a、40bは、ドア本体41a、41bの内側に固定されたドア枠体45が、天板状部材30a〜30dの内側に設けられた取付部35にボルト74を締結することにより天板状部材30a〜30dに取り付けられている。
従って、開閉ドア40a、40bの鍵部42が施錠されていると、天板状部材30a〜30dまたは開閉ドア40a、40bは、いずれも、ベッド51から取り外すこと、換言すれば、ハウジング9a〜9dを分解することができなくなる。
このため、燃料の抜き取りや、ハウジング内に収容された駆動用モータ10a〜10c等の部品の盗難を防止することができる。
【0030】
(ウインチの取り外し)
ウインチは、新品との交換あるいは、クレーンを遠隔地に運搬する際に取り外す必要がある。次に、ウインチの取り外し方法を説明する。
開閉ドア40a、40bの鍵部42が施錠されている状態では、ハウジング9a〜9dの天板状部材30a〜30dを取り外すことができない。先ず、各ウインチ10〜11の中、取り外すウインチに対応するハウジング9a〜9dの開閉ドア40aまたは40bの鍵部42を開錠する。ここでは、説明を簡潔かつ明確にするため、一例として、補巻ウインチ11を取り外す場合を例示する。
【0031】
補巻ウインチ11に対応するハウジング9bの開閉ドア40bの鍵部42を開錠して、ドア本体41bを開ける。
そして、ハウジング9bの内側から、天板状部材30bと天板状部材30aおよび天板状部材30bと30cを締結しているボルト73、および天板状部材30bとドア枠体42bを締結しているボルト74を取り外す。
次に、ボルト75を取り外し、天板状部材30bと天板状部材30aの境界部および天板状部材30bと天板状部材30cの境界部に設けられている受け部材61を取り外す。
これにより、天板状部材30bを締結しているすべての締結部材が取り外されるので、天板状部材30bを取り外す。天板状部材30bは、裏面板部32の切欠き32bに駆動用モータ11aを挿通して取り外すことができる。
【0032】
このようにして、天板状部材30bを取り外した後は、締結部材71を取り外して、補巻ウインチ11をブラケット21と共に取り外すことができる。補巻ウインチ11の上方から天板状部材30bを取り外すことにより、補巻ウインチ11の上方には、補巻ウインチ11を持ち上げる際に干渉する部材は一切なくなるので、補巻ウインチ11の取り外しを容易に行うことができる。
主巻ウインチ10または起伏ウインチ12の取り外しも同様に行うことができる。各ウインチを再び取り付けるには、逆の手順で取り付けることができる。
【0033】
上記一実施の形態によれば、天板部31と裏面板部32が一体成形された天板状部材30a〜30dを取り外すだけで各ウインチ10〜12を取り外すことが可能であり、ウインチの交換を能率的に行うことができる。
【0034】
[実施形態2]
(ハウジング構造)
図11〜16は、本発明の実施形態2を示す。
図11は、本発明のクレーン用ハウジング構造の実施形態2の外観斜視図であり、図12は、図11におけるウインチを取り外した状態の外観斜視図であり、図13は、図12を裏面側から観た分解斜視図であり、図14は、図13においてハウジング組み付けた状態の斜視図である。
なお、以下では、実施形態1との相違点を主体として説明することとし、実施形態1と同様な構成は、対応する部材に同一の符号を付して、適宜、その説明を省略する。
【0035】
実施形態2におけるクレーン用ハウジング構造は、9Aと9Bの2つのハウジングを備えている。
ハウジング9Aは、天板31Aを有し、電気品格納室8の前方フレーム部材52に連結され、主巻ウインチ10の駆動用モータ10aおよび補巻モータ11の駆動用モータ11aを収容する。ハウジング9Bは、天板31Bを有し、後方フレーム53に連結され、起伏ウインチ12の駆動用モータ12aを収容する。
ハウジング9A、9Bは、それぞれ、実施形態1と同様に、ドア本体41a、41bとドア枠体45により構成される開閉ドア40a、40bを有する。
【0036】
また、ハウジング9A、9Bは、天板31A、31Bとは別体の部材として形成された裏面板32A〜32Dを備えている。
裏面板32A〜32Dは、締結部材(図示せず)によりベッド51に固定される。しかし、各裏面板32A〜32Dは、天板31Aまたは31Bのいずれにも締結されていない。この場合、天板31A、31Bの取付強度を増大するために、天板31A、31Bと裏面板32A〜32Dとを締結部材により締結するようにしてもよい。天板31A、31Bと裏面板32A〜32Dとを締結する締結部材を、ハウジング9A、9Bの外側から取り外し可能としても、以下に説明するように、本実施形態では、ハウジング9A、9Bの内側からでなければ、天板31A、31Bを取り外すことができない締結部を有する構造とされている。このため、鍵部42が施錠された状態では、ハウジング9A、9Bの外側から天板31A、31Bを取り外すことができない。
【0037】
図11に図示されるように、裏面板32Aは、天板9Aのほぼ中央部に対応する位置に固定され、裏面板32Aの一側部側および他側部側における天板31Aの下部には開口81、82(図12参照)が形成される。開口81は、主巻ウインチ10の駆動用モータ10aが挿通可能なサイズを有し、開口82は、補巻ウインチ11の駆動用モータ11aが挿通可能なサイズを有する。
【0038】
裏面板32B〜32Dは、天板9Bに対応する位置に取り付けられる。裏面板32B〜32Dは、間隔をおくことなく、互いに側部を接触させ、あるいは側部の一部を重ねた状態でベッド51に固定されている。裏面板32Dは、ほぼL字形状に形成され、切欠き83(図13参照)を有している。図11に図示されるように、切欠き83は、起伏ウインチ12の駆動用モータ12aを挿通するサイズに形成されている。
つまり、ハウジング9Aは、天板31A、開閉ドア40a、40bおよび裏面板32Aにより構成されている。また、ハウジング9Bは、天板31B、開閉ドア40a、40bおよび裏面板32B〜32Dにより構成されている。
【0039】
天板31A、31Bは、実施形態1と同様にハウジング9A、9Bの内側に向けて折曲された側縁部31a(図13参照)を有し、各側縁部31aには複数の貫通孔33が形成されている。
天板31Aと前方フレーム部材52、および天板31Bと後方フレーム53とは、実施形態1と同様に、ボルト73により締結されている。
【0040】
ベッド51における前方フレーム部材52と後方フレーム53との中間部には、一対のピラー65、66が取り付けられている。前部側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45は、締結部材(図示せず)により前方フレーム部材52とピラー66に締結される。後部側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45は、締結部材(図示せず)により後方フレーム53とピラー66に締結される。
また、開閉ドア40a、40bを回動可能に保持する前部側および後部側のドア枠体45は、実施形態1と同様に、ボルト74により天板31Aまたは31Bに取り付けられる。
なお、裏面板32Bは、ベッド51に取り付けられるのみでなく、一側辺において締結部材(図示せず)によりピラー65に取り付けられる。
【0041】
図15は、図14におけるXV−XV線で切断した上部側の断面図であり、図16は、図14におけるXVI−XVI線で切断した上部側の側面図である。
図15に図示されるように、天板31Aと天板31Bとの間には、受け部材61Aが取り付けられている。受け部材61Aは、断面T字形状を有し、図16に図示されるように、天板31Aまたは31Bの側縁部31aのほぼ全長に亘り延出されている。
【0042】
受け部材61Aは、受け部材61Aの中央部の取付部62および各天板31A、31Bの側縁部31aに形成された貫通孔33にボルト75を挿通して締結することにより天板31A、31Bに取り付けられる。また、天板31Aと31Bとは受け部材61Aを介して連結される。受け部材61Aは、実施形態1と同様、天板31A、31Bの連結部から漏出する雨等の水滴を溜めるためのものである。
【0043】
(ハウジングの組付方法)
実施形態2におけるハウジングの組付方法の一例を下記に示す。
(1)ベッド51に前方フレーム部材52、後方フレーム53、ピラー65、66を取り付ける。前方フレーム部材52には、開閉ドア40cを取り付け、電気品格納室8を構成する。
(2)前方側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45を前方フレーム部材52およびピラー66に取り付ける。また、後方側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45を後方フレーム53およびピラー66に取り付ける。
(3)裏面板32A〜32Dを、ハウジング9A、9Bの内側から締結部材(図示せず)によりベッド51に取り付ける。裏面板32Bは、ピラー65にも締結する。裏面板32A〜32Dは、各ウインチ10〜12を取り外す際に駆動用モータ10a、11a、12aと干渉しないように、開口81、82および切欠き83が、各駆動用モータ10a、11a、12aに対応するように取り付ける。
(4)ボルト73により、天板31Aを前方フレーム部材52に取り付け、天板31Bを後方フレーム53に取り付ける。天板31Aと天板31Bとの間に、受け部材61Aの取付部62を配置し、ボルト75により受け部材61Aを介在して天板31Aと31Bを連結する。ボルト74により、天板31Aを前方側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45に取り付け、また、天板31Bを後方側の開閉ドア40a、40bのドア枠体45に取り付ける。
【0044】
このようにして、ベッド51にハウジング9Aおよび9Bが取り付けられると、天板31A、31B、裏面板32A〜32Dおよび前部側・後部側の開閉ドア40a、40bを相互に締結するボルト等の締結部材は、すべて、ハウジング9A、9Bの内側に収容される。従って、実施形態1と同様、開閉ドア40a、40bの鍵部42が施錠されていると、ハウジング9Aおよび9Bをベッド51から取り外すことができなくなる。
【0045】
(ウインチの取り外し)
実施形態2においては、天板31Aまたは31Bのみを取り外せば、実施形態1の場合と同様な手順で各ウインチ10〜12を取り外すことができる。
天板31Aまたは31Bを取り外すには、開閉ドア40a、40bの鍵部42を開錠してドア本体41a、41bを開き、ボルト73〜75を取り外せばよい。ボルト73〜75を取り外すことにより、天板31Aまたは31Bは、相互に分離し、また、ドア枠体45、前方フレーム部材52または後方フレーム53と分離するので、上方に持ち上げて取り外すことができる。
【0046】
各ウインチ10〜12は、駆動用モータ10a、11a、12aを、それぞれ、裏面板32Aと前方フレーム部材52との間の開口81、裏面板32Aと32Bとの間の開口82または裏面板32Dの切欠き83を挿通してベッド51から取り外すことが可能である。
このように、実施形態2においては、天板31Aまたは31Bのみを取り外すことが可能であり、側板32A〜32Dを締結する締結部材を取り外す必要が無いので、実施形態1の場合よりも、取り外し作業を能率的に行うことができる。但し、開口81、82は、実施形態1における切欠き58より高さ方向に大きいサイズとなる。
【0047】
なお、実施形態1における4つの天板状部材30a〜30dを、実施形態2の場合のように2つとしたり、実施形態2における2つの天板9A、9Bを実施形態1の場合のように4つにしたりすることができる。また、長手方向における天板の長さを、1:1:2として3つにすることも可能である。天板を2つにする場合においても、長手方向における天板の長さを、1:3とすることも可能である。
さらに、天板の数は、クレーンに搭載されるウインチの数に対応して増減させたり、第3のウインチの搭載スペースを設けないようにしたりすることもできる。
【0048】
開閉ドア40a、40bは、2つのドア本体41a、41bと1つのドア枠体45により構成する構造として例示したが、ドア本体41a、41bとドア枠体45の数を同一にしてもよい。また、開閉ドア40a、40bの構造は、ドア本体41a、41bとドア枠体45により構成される構造でなくてもよい。
【0049】
天板状部材30a〜30d、天板31A、31Bを相互に締結する構造は、直接、連結部で連結する構造に限らず、隣接する天板状部材30a〜30d、天板31A、31Bを、連結部材を介して連結するようにしてもよい。天板状部材30a〜30d、天板31A、31B相互の連結部は、取り外し方向、換言すれば上下方向には重ならないようにして連結される構造が望ましいが、水平方向にずれる構造とすれば、相互の連結部が取り外し方向に重なる構造であっても差し支えが無い。
【0050】
また、上述したが、天板状部材30a〜30d、天板31A、31Bを固定するすべての締結部材をハウジング9a〜9d、9A、9Bの内側からでなければ取り外すことができないようにする必要はない。一部の締結部材がハウジング9a〜9d、9A、9Bの内側からでなければ取り外すことができない構造とすればよい。
【0051】
その他、本発明のクレーン用ハウジング構造は、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形することが可能であり、要は、モータの上部を覆う天板と、モータの一側面を覆う開閉ドアとを備え、天板の締結部材を取り外すことにより、開閉ドアを取り外すことなく取り外すことが可能なものであればよい。
【符号の説明】
【0052】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 旋回フレーム
8 電気品格納室
9a〜9d ハウジング
9A、9B ハウジング
10 主巻ウインチ
11 補巻ウインチ
12 起伏ウインチ
10a、11a、12a 駆動用モータ
30a〜30c 天板状部材(天板)
31 天板部
31A、31B 天板
32 裏面板部
32A〜32D 裏面板
31a、32a 側縁部
32b 切欠き
40a〜40c 開閉ドア
41a、41b ドア本体
42 鍵部
45 ドア枠体
51 ベッド
61、61A 受け部材
73〜75 ボルト
81、82 開口
83 切欠き


【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回フレームに取り外し可能に取り付けられた複数のドラムと、
前記各ドラムに取り付けられたドラム駆動用の複数のモータと、
少なくとも前記モータを収容する複数のハウジングと、を備え、
前記各ハウジングは、前記モータの上部を覆う天板部および前記天板部と一体に形成され、前記各モータにおける前記ドラム側の一側面を覆い、前記ドラムおよび前記モータとの干渉を回避する開口が設けられた裏面板部を有する天板と、
前記各モータにおける前記一側面と反対側の他側面を覆う開閉ドアとを備え、
前記天板を取り外すことにより、前記開閉ドアを取り外すことなく前記モータが取り付けられた前記ドラムを取り外し可能とされていることを特徴とするクレーン用ハウジング構造。
【請求項2】
旋回フレームに取り外し可能に取り付けられた複数のドラムと、
前記各ドラムに取り付けられたドラム駆動用の複数のモータと、
少なくとも前記モータを収容する複数のハウジングと、を備え、
前記各ハウジングは、前記モータの上部を覆う天板と、
前記各モータにおける前記ドラム側の一側面を覆い、前記ドラムおよび前記モータとの干渉を回避する開口が設けられた裏面板と、
前記各モータにおける前記一側面と反対側の他側面を覆う開閉ドアとを備え、
前記天板を取り外すことにより、前記裏面板および前記開閉ドアを取り外すことなく前記モータが取り付けられた前記ドラムを取り外し可能とされていることを特徴とするクレーン用ハウジング構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のクレーン用ハウジング構造において、前記天板および前記開閉ドアは、前記ハウジングの内部に設けられた締結部材により締結されていることを特徴とするクレーン用ハウジング構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクレーン用ハウジング構造において、前記天板は、隣接する天板と対向する側縁に内面側に折曲される側縁部を有し、隣接する前記天板の前記側縁部同士が、直接または他の部材を介して前記締結部材により締結され、前記締結部材により締結された前記天板の前記側縁部に対応する前記ハウジングの内部に、前記側縁部の間から漏洩する水滴の受け部材が配置されていることを特徴とするクレーン用ハウジング構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクレーン用ハウジング構造において、前記ウインチは、遊星減速装置内蔵型であることを特徴とするクレーン用ハウジング構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−75727(P2013−75727A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215075(P2011−215075)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)