説明

クレーン

【課題】特殊なロープを使用することなく、構成を簡略化しながら、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避し、かつ、両シーブブロック同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させる。
【解決手段】第1ロープ11は、ブーム側シーブ14a,14bの配列に沿って1つ置きに選ばれるブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15a,15bの配列に沿って1つ置きに選ばれる吊荷側シーブ15aとに交互に掛け渡されることにより、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで両側に位置するブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15aに巻回され、第2ロープ12は、第1ロープ11が掛けられていないブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bとに交互に掛け渡されることにより、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで両側に位置するブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bに巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンにおいて吊荷部に吊るした荷物の昇降を行う場合、ブームに設けられたブーム側シーブブロックと吊荷部が取り付けられた吊荷側シーブブロックとの間にクレーン本体のウインチから引き出されたロープを巻回し、上記ウインチの駆動でロープを巻き取りまたは繰り出すことにより上記両シーブブロック間の距離を変化させることが行われている。そして、大重量の荷物を吊る場合には、クレーン本体に設けられた2つのウインチの一方から引き出したロープを上記両シーブブロックのシーブ配列の中央から一方端側のシーブに巻回するとともに、上記2つのウインチの他方から引き出したロープを上記両シーブブロックのシーブ配列の中央から他方端側のシーブに巻回し、上記2つのウインチの同時駆動によって上記両シーブブロック間の距離を変化させることも行われる。
【0003】
しかし、このような構成では両ウインチの回転量に差が生じると、その差に応じてロープの巻取り長さまたは繰り出し長さに差が生じて吊荷側シーブブロックが傾くことになる。
【0004】
そこで下記の特許文献1には、このような不都合を解消すべく、2つのウインチからそれぞれ引き出されたロープの端部同士を連結ロープで繋ぎ、この連結ロープをブーム側シーブブロック中央のイコライズ用シーブに掛けるようにしたものが開示されている。この特許文献1の構成では、一方のウインチから引き出されたロープの端部と連結ロープの一方端がコネクタを介して接続されているとともに、他方のウインチから引き出されたロープの端部と連結ロープの他方端がコネクタを介して接続されている。この特許文献1の構成によれば、一方のウインチの回転量と他方のウインチの回転量との間に差が生じても、その差に応じて連結ロープがイコライズ用シーブを回動させながら動く、すなわち上記コネクタが上下するだけであり、ブーム側シーブブロックと吊荷側シーブブロックとは互いに平行な状態に保たれる。
【特許文献1】実開昭62−186894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術によると、2つのウインチからそれぞれ引き出したロープを相互に接続するための連結ロープやコネクタが必要になるため、クレーンの構成が複雑化するという問題点がある。また、コネクタによる各ロープと連結ロープの連結作業が必要になるので、ロープをクレーンへ取り付ける際の作業が煩雑になるという問題点がある。
【0006】
一方、これらの問題点を解消するために、上記両ウインチのロープと連結ロープを1本のロープで代用することも考えられる。しかし、このような構成では、代用するロープとして非常に長尺な特殊なロープ、例えば両ウインチのロープと連結ロープを足した長さ程度又はそれ以上に長いロープを準備する必要がある。
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、特殊なロープを使用することなく、構成を簡略化しながら、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避し、かつ、両シーブブロック同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1によるクレーンは、起伏部と、この起伏部の先端に設けられるとともに水平方向に配列された複数の起伏部側シーブを含む起伏部側シーブブロックと、この起伏部側シーブブロックの下方に配置されるとともに前記各起伏部側シーブと同方向に配列された複数の吊荷側シーブを含む吊荷側シーブブロックと、第1ウインチと、この第1ウインチから引き出されるとともに前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間に巻回された第1ロープと、第2ウインチと、この第2ウインチから引き出されるとともに前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間に巻回された第2ロープと、前記吊荷側シーブブロックに取り付けられた吊荷部とを備え、前記第1ウインチと前記第2ウインチの同期駆動により前記第1ロープと前記第2ロープを同時に巻き取りまたは繰り出すことによって、前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間の距離を変化させて前記吊荷部を昇降させるクレーンであって、前記第1ロープは、前記起伏部側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブと前記吊荷側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブとに交互に掛け渡されることによって、前記吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する前記起伏部側シーブと前記吊荷側シーブに巻回され、前記第2ロープは、前記起伏部側シーブのうち前記第1ロープが掛けられていないシーブと前記吊荷側シーブのうち前記第1ロープが掛けられていないシーブとに交互に掛け渡されることによって、前記吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する前記起伏部側シーブと前記吊荷側シーブに巻回されていることを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明において、複数の起伏部側シーブが水平方向へ配列されているとは、複数の起伏部側シーブが全体として水平方向に配列されていることを表す概念であり、複数の起伏部側シーブが単一の水平軸回りに設けられている形態のみならず、上下に分かれた複数の水平軸回りに起伏部側シーブが設けられているが、全体としては水平方向に配列されているような形態をも含む概念である。また、本発明において、複数の吊荷側シーブが各起伏部側シーブと同方向に配列されているとは、複数の吊荷側シーブが全体として上記起伏部側シーブと同様の水平方向に配列されていることを表す概念である。また、これらの概念には、複数の起伏部側シーブと複数の吊荷側シーブのいずれか一方が前記複数の水平軸回りに設けられており、他方が単一の水平軸回りに設けられている形態も含まれる。
【0010】
また、本発明における起伏部側シーブ及び吊荷側シーブは、第1ロープまたは第2ロープが掛けられたシーブのみを表す概念であって、例えば起伏部側シーブブロック及び吊荷側シーブブロックにロープの掛けられていない空のシーブが含まれているとしてもそのようなシーブは含まない概念である。また、本発明における吊荷部の重心部とは、吊荷部の重心点のみを表す概念ではなく、吊荷部の重心点およびその重心点の近傍の部分をも含む概念である。
【0011】
このクレーンでは、第1ロープが、起伏部側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブと吊荷側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブとに交互に掛け渡されることによって、吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する起伏部側シーブと吊荷側シーブに巻回されている。さらに、このクレーンでは、第2ロープが、起伏部側シーブのうち第1ロープが掛けられていないシーブと吊荷側シーブのうち第1ロープが掛けられていないシーブとに交互に掛け渡されることによって、前記吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する前記起伏部側シーブと前記吊荷側シーブに巻回されている。従って、このクレーンでは、各ロープが吊荷部の重心部を通る鉛直線に対して左右どちらか一方ずつのシーブにそれぞれ巻回されている場合に比べて、各ロープが吊荷部の重心部を通る鉛直線に対して両側のシーブにバランスよく巻回されている。このため、第1ウインチの回転量と第2ウインチの回転量に多少の差が生じたとしても、吊荷側シーブの配列のどちらか一方端側に巻上げまたは巻下げが偏るのを抑制することができる。これにより、両シーブブロック同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させることができる。
【0012】
また、このクレーンでは、個別に設けられた第1ロープと第2ロープを用いて起伏部側シーブブロックと吊荷側シーブブロックとの間の距離を変化させる。このため、両シーブブロック間の距離を変化させるのに一対のロープを連結ロープとコネクタを介して繋いだものを用いる従来の構成と異なり、連結ロープやコネクタを用いない分、クレーンの構成を簡略化できるとともに、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避できる。
【0013】
また、上記課題を解決する手段の項で説明したように両ウインチのロープと連結ロープを1本のロープで代用することも考えられるが、この場合には非常に長尺な特殊なロープを使用せざるを得ない。これに対して、このクレーンでは、各ウインチ毎に個別に設けられた第1ロープと第2ロープとを用いているので、上記のような長尺な特殊なロープを使用しなくてもよく、そのような長尺なロープよりも短い長さのロープを使用することができる。従って、このクレーンでは、特殊なロープを使用することなく、構成を簡略化しながら、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避し、かつ、両シーブブロック同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させることができる。
【0014】
(請求項2)上記クレーンにおいて、前記第1ロープのうち前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックに巻回されている巻回部分の基端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の一方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の一方端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第1ロープの巻回部分の先端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の他方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の他方端側のシーブとに掛けられており、前記第2ロープのうち前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックに巻回されている巻回部分の基端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の他方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の他方端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第2ロープの巻回部分の先端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の一方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の一方端側のシーブとに掛けられていることが好ましい。このように構成すれば、起伏部側シーブブロックと吊荷側シーブブロックに対して第1ロープと第2ロープとを相互に対称となる形態で巻回することができるので、吊荷側シーブの配列のどちらか一方端側に巻上げまたは巻下げが偏って作用するのをより確実に抑制することができる。これにより、両シーブブロック同士をより確実に平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させることができる。
【0015】
(請求項3)上記クレーンにおいて、前記第1ウインチ及び前記第2ウインチを駆動する駆動装置と、当該駆動装置の駆動モードを前記第1ウインチと前記第2ウインチを同期駆動する同期駆動モードと、前記第1ウインチと前記第2ウインチを個別に駆動する個別駆動モードとに相互に切り替える切替装置とを備えていることが好ましい。このように構成すれば、同期駆動モードで第1ウインチと第2ウインチにより大重量の荷物の吊り作業を行うことができるのに加えて、個別駆動モードでは第1ロープと第2ロープとをそれぞれ別のシーブブロック対に接続すれば第1ウインチと第2ウインチとで個別の吊り作業を行うことができる。すなわち、実施可能な吊り作業の多様性を向上させることができる。
【0016】
(請求項4)この場合において、前記駆動装置は、前記第1ウインチを駆動する第1流体圧モータと、前記第2ウインチを駆動する第2流体圧モータと、前記第1流体圧モータに作動流体を供給するための第1ポンプと、前記第2流体圧モータに作動流体を供給するための第2ポンプとを含み、前記切替装置は、前記同期駆動モードでは、前記第1流体圧モータに供給される流体圧と前記第2流体圧モータに供給される流体圧とを平衡化し、かつ、前記第1流体圧モータに掛かる作動流体の背圧と前記第2流体圧モータに掛かる作動流体の背圧とを平衡化する一方、前記個別駆動モードでは、前記第1流体圧モータに供給される流体圧と前記第2流体圧モータに供給される流体圧とを互いに独立させ、かつ、前記第1流体圧モータに掛かる作動流体の背圧と前記第2流体圧モータに掛かる作動流体の背圧とを互いに独立させることが好ましい。このように構成すれば、切替装置により駆動装置の駆動モードを同期駆動モードと個別駆動モードとに相互に切替可能な機構を構成することができる。また、この構成によれば、同期駆動モードでは第1流体圧モータと第2流体圧モータが同じ圧力で駆動されるので、第1ロープと第2ロープが同じ張力で操作される。すなわち、第1ロープと第2ロープに掛かる張力の均一化を図ることができるので、第1ロープと第2ロープの寿命の均一化を図ることができる。
【0017】
(請求項5)さらにこの場合において、前記駆動装置は、前記吊荷部の巻き上げ時に前記第1ポンプからの作動流体を前記第1流体圧モータへ供給するための第1巻上げ供給路と、前記吊荷部の巻き上げ時に前記第2ポンプからの作動流体を前記第2流体圧モータへ供給するための第2巻上げ供給路と、前記吊荷部の巻き下げ時に前記第1ポンプからの作動流体を前記第1流体圧モータへ供給するための第1巻下げ供給路と、前記吊荷部の巻き下げ時に前記第2ポンプからの作動流体を前記第2流体圧モータへ供給するための第2巻下げ供給路とを含み、前記切替装置は、前記第1巻上げ供給路と前記第2巻上げ供給路とを相互に接続するための第1接続路と、前記第1巻下げ供給路と前記第2巻下げ供給路とを相互に接続するための第2接続路と、これら第1接続路と第2接続路を作動流体が流通可能な流通状態と作動流体が流通できない遮断状態とに切り替えるための開閉弁とを含み、前記開閉弁は、前記同期駆動モードでは、前記第1接続路と前記第2接続路を共に前記流通状態にする一方、前記個別駆動モードでは、前記第1接続路と前記第2接続路を共に前記遮断状態にすることが好ましい。このように構成すれば、第1流体圧モータと第2流体圧モータに供給する流体圧を平衡化するとともに第1流体圧モータと第2流体圧モータに掛かる背圧を平衡化する同期駆動モードと、第1流体圧モータと第2流体圧モータに供給する流体圧を独立化するとともに第1流体圧モータと第2流体圧モータに掛かる背圧を独立化する個別駆動モードとを、1つの開閉弁で切り替えることができる。従って、この構成では、簡単な構成で同期駆動モードと個別駆動モードの切替を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のクレーンによれば、特殊なロープを使用することなく、構成を簡略化しながら、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避し、かつ、両シーブブロック同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック間の距離を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるクレーンの全体構成を示した側面図である。図2は、図1に示したクレーンのブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に対するロープの巻回状態を示した図である。図3は、図1に示したクレーンの第1ウインチ5と第2ウインチ6とを駆動する駆動機構の油圧回路図である。まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施形態によるクレーンの構成について説明する。
【0021】
本実施形態によるクレーンは、図1に示すように、自走機構を有する下部走行体1と、その上部に旋回可能に設けられた上部旋回体2とを備えている。上部旋回体2には、ブーム3が起伏可能に設けられているとともに、ブーム3を起伏動作させるための起伏用ウインチ4と、吊荷作業用の第1ウインチ5及び第2ウインチ6とが搭載されている。なお、ブーム3は、本発明における起伏部の一例である。
【0022】
そして、本実施形態によるクレーンは、第1ウインチ5と第2ウインチ6の同期駆動により各ウインチのロープを同時に巻き取りまたは繰り出すことによって、後述するブーム側シーブブロック14(ポイントシーブブロック)と吊荷側シーブブロック15(フックシーブブロック)との間の距離を変化させて後述の吊荷部16を昇降させるものである。
【0023】
前記起伏用ウインチ4には起伏用ロープ7が巻かれている。この起伏用ロープ7は、起伏用ウインチ4から引き出されるとともに、スプレッダ8における一対のシーブブロック8a,8b間に巻回されている。このスプレッダ8の一方のシーブブロック8aは上部旋回体2に立設されたガントリ9の上部に水平軸回りに回動可能に連結されているとともに、他方のシーブブロック8bはガイケーブル10を介してブーム3の先端部に接続されている。そして、起伏用ウインチ4の駆動により起伏用ロープ7が巻き取りまたは繰り出されることによって、スプレッダ8の一対のシーブブロック8a,8b間の距離が変化し、ブーム3が起伏動作するようになっている。
【0024】
前記第1ウインチ5には第1ロープ11が巻かれている一方、前記第2ウインチ6には第2ロープ12が巻かれている。また、ブーム3の先端部の上面側(図1でブーム3の先端部の左側)にはアイドラシーブブロック13が設けられているとともに、ブーム3の先端部の下面側(図1でブーム3の先端部の右側)にはブーム側シーブブロック14が設けられている。このブーム側シーブブロック14は、本発明における起伏部側シーブブロックに対応するものである。そして、ブーム側シーブブロック14の下方には吊荷側シーブブロック15が配設されているとともに、この吊荷側シーブブロック15の下部には荷物を吊るための吊荷部16が取り付けられている。この吊荷部16は、吊荷側シーブブロック15のシーブの配列方向における中心部に対応する位置に設けられている。
【0025】
そして、前記第1ロープ11は、第1ウインチ5から引き出されるとともに、アイドラシーブブロック13を通り、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15との間に巻回されている。一方、前記第2ロープ12は、第2ウインチ6から引き出されるとともに、アイドラシーブブロック13を通った後、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15との間に巻回されている。
【0026】
詳細には、図2に示すように、ブーム側シーブブロック14は、水平方向(ブーム3の幅方向)に同軸に配列された複数(本実施形態では10個)のブーム側シーブ14a,14b(ポイントシーブ)と、これらブーム側シーブ14a,14bを水平軸回りに支持する図略の支持部材とを有している。なお、ブーム側シーブ14a,14bは、本発明における起伏部側シーブに対応するものである。一方、吊荷側シーブブロック15は水平方向に同軸に配列された複数(本実施形態では10個)の吊荷側シーブ15a,15b(フックシーブ)と、これら吊荷側シーブ15a,15bを水平軸回りに支持する図略の支持部材とを有している。なお、前記ブーム側シーブ14aは、第1ロープ11が掛けられるシーブであり、前記ブーム側シーブ14bは、第2ロープ12が掛けられるシーブである。また、前記吊荷側シーブ15aは、第1ロープ11が掛けられるシーブであり、前記吊荷側シーブ15bは、第2ロープ12が掛けられるシーブである。
【0027】
そして、ブーム側シーブブロック14では、図2の左端にブーム側シーブ14aが配置されるとともに、その右隣にブーム側シーブ14bが配置されている。そして、その後、図2の右側へ向かってブーム側シーブ14aとブーム側シーブ14bが交互に配列され、当該配列の図2の右端にはブーム側シーブ14bが配置されている。一方、吊荷側シーブブロック15では、図2の右端に吊荷側シーブ15aが配置されるとともに、その左隣に吊荷側シーブ15bが配置されている。そして、その後、図2の左側へ向かって吊荷側シーブ15aと吊荷側シーブ15bが交互に配列され、当該配列の図2の左端には吊荷側シーブ15bが配置されている。そして、各ブーム側シーブ14aと各吊荷側シーブ15bが上下に対応する位置に配置されているとともに、各ブーム側シーブ14bと各吊荷側シーブ15aが上下に対応する位置に配置されている。
【0028】
前記第1ロープ11は、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15との間に図2の左側から巻回された後、その先端がブーム3の所定位置に固定されている。すなわち、第1ロープ11のうちブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15aに巻回されている部分の基端側が、ブーム側シーブ14aのうちその配列における図2の左端側のシーブと、吊荷側シーブ15aのうちその配列における図2の左端側のシーブとに掛けられているとともに、先端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の右端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の右端側のシーブとに掛けられている。
【0029】
具体的には、第1ロープ11は、まず、ブーム側シーブ14a,14bの配列のうち図2の左端に位置するブーム側シーブ14aに掛けられた後、吊荷側シーブ15a,15bの配列のうち図2の左端のシーブから1つ右隣の吊荷側シーブ15aに掛け渡されている。その後、第1ロープ11は、前記左端のブーム側シーブ14aから図2の1つ右隣のブーム側シーブ14bを飛ばして次のブーム側シーブ14aに掛け渡され、その次に、当該第1ロープ11が掛けられた前記吊荷側シーブ15aから図2の1つ右隣の吊荷側シーブ15bを飛ばして次の吊荷側シーブ15aに掛け渡されている。そして、第1ロープ11は、以下同様に、ブーム側シーブ14a,14bの配列に沿って図2の右側に向かって1つ置きに選ばれる各ブーム側シーブ14aと、吊荷側シーブ15a,15bの配列に沿って図2の右側に向かって1つ置きに選ばれる各吊荷側シーブ15aとに交互に掛け渡されている。そして、第1ロープ11の引き出し端側の部分は、図2の右端の吊荷側シーブ15aに掛けられた後、上方へ延びるように配置されてブーム3の所定位置に固定されている。このような巻回により、第1ロープ11は、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置するブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15aとに巻回されている。
【0030】
また、前記第2ロープ12は、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15との間に図2の右側から巻回された後、その先端がブーム3の所定位置に固定されている。すなわち、第2ロープ12のうちブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bに巻回されている部分の基端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の右端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の右端側のシーブとに掛けられているとともに、先端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の左端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の左端側のシーブとに掛けられている。なお、第2ロープ12は、第1ロープ11が掛けられていないブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bとに交互に掛け渡されている。
【0031】
具体的には、第2ロープ12は、まず、ブーム側シーブ14a,14bの配列のうち図2の右端に位置するブーム側シーブ14bに掛けられた後、吊荷側シーブ15a,15bの配列のうち図2の右端のシーブから1つ左隣の吊荷側シーブ15bに掛け渡されている。その後、第2ロープ12は、前記右端のブーム側シーブ14bから図2の1つ左隣のブーム側シーブ14aを飛ばして次のブーム側シーブ14bに掛け渡され、その次に、当該第2ロープ12が掛けられた前記吊荷側シーブ15bから図2の1つ左隣の吊荷側シーブ15aを飛ばして次の吊荷側シーブ15bに掛け渡されている。そして、第2ロープ12は、以下同様に、ブーム側シーブ14a,14bの配列に沿って図2の左側に向かって1つ置きに選ばれる各ブーム側シーブ14bと、吊荷側シーブ15a,15bの配列に沿って図2の左側に向かって1つ置きに選ばれる各吊荷側シーブ15bとに交互に掛け渡されている。そして、第2ロープ12の引き出し端側の部分は、図2の左端の吊荷側シーブ15bに掛けられた後、上方へ延びるように配置されてブーム3の所定位置に固定されている。このような巻回により、第2ロープ12は、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置するブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bとに巻回されている。
【0032】
上記のような巻回により、第1ロープ11は、図2の左右方向に配列された各ブーム側シーブ14aと、隣り合うブーム側シーブ14a同士の間の位置に配置された各吊荷側シーブ15aとに交互に掛け渡されており、第2ロープ12は、図2の左右方向に配列された各ブーム側シーブ14bと、隣り合うブーム側シーブ14b同士の間の位置に配置された各吊荷側シーブ15bとに交互に掛け渡されている。これにより、第1ロープ11及び第2ロープ12がブーム側シーブ14a,14bの配列全域と吊荷側シーブ15a,15bの配列全域とに亘ってバランスよく巻回されている。
【0033】
また、本実施形態のクレーンは、上記第1ウインチ5及び第2ウインチ6を駆動するための図3のような駆動機構を備えている。次に、この駆動機構の構成について説明する。
【0034】
この駆動機構は、第1ウインチ5と第2ウインチ6とをそれぞれ駆動する駆動装置20と、この駆動装置20の駆動モードを切り替える切替装置22とによって構成されている。
【0035】
前記駆動装置20は、第1ウインチ5を駆動するための第1駆動回路24と、第2ウインチ6を駆動するための第2駆動回路26とからなり、これら各駆動回路24,26は共に油圧回路である。第1駆動回路24は、第1油圧モータ28と、第1油圧ポンプ30と、油圧配管32aおよび32bと、第1コントロールバルブ34と、第1カウンタバランス弁36と、第1圧力制御弁38と、接続配管39とを備えている。第1油圧モータ28は、本発明における第1流体圧モータに対応するものであり、第1油圧ポンプ30は、本発明における第1ポンプに対応するものである。油圧配管32aは、本発明における第1巻上げ供給路に対応するものであり、油圧配管32bは、本発明における第1巻下げ供給路に対応するものである。
【0036】
第1油圧モータ28は、第1ウインチ5を駆動するためのものであり、第1ウインチ5の回転軸に接続されている。第1油圧ポンプ30は、作動油を貯留するタンク40に接続されており、このタンク40から作動油を第1油圧モータ28に供給する機能を有している。
【0037】
油圧配管32a,32bは、それぞれ第1油圧モータ28と第1コントロールバルブ34との間を繋いでいる。一方の油圧配管32aは、第1ウインチ5を正転させて第1ロープ11を巻き取る際には第1油圧モータ28に作動油を供給する供給路として機能し、第1ウインチ5を逆転させて第1ロープ11を繰り出す際には第1油圧モータ28から作動油を排出する排出路として機能する。もう一方の油圧配管32bは、第1ウインチ5を正転させて第1ロープ11を巻き取る際には第1油圧モータ28から作動油を排出する排出路として機能し、第1ウインチ5を逆転させて第1ロープ11を繰り出す際には第1油圧モータ28へ作動油を供給する供給路として機能する。
【0038】
第1コントロールバルブ34は、3位置パイロット切替弁からなり、第1油圧モータ28の回転方向、ひいては第1ウインチ5の回転方向を切り替えるために設けられている。この第1コントロールバルブ34は、油圧配管32a,32bの前記第1油圧モータ28と反対側の端部と前記第1油圧ポンプ30の作動油の供給側との間に接続されている。そして、第1コントロールバルブ34は、図3の左右のパイロット部に供給する油圧(パイロット圧)によって、正転位置と中立位置と逆転位置とに相互に切替可能に構成されている。第1コントロールバルブ34は、前記正転位置では第1油圧ポンプ30からの作動油を油圧配管32aを通じて第1油圧モータ28へ供給して第1油圧モータ28を正転させ、前記中立位置では第1油圧ポンプ30からの作動油をタンク40に戻して、第1油圧モータ28を駆動しないように構成されている。また、第1コントロールバルブ34は、前記逆転位置では第1油圧ポンプ30からの作動油を油圧配管32bを通じて第1油圧モータ28へ供給して第1油圧モータ28を逆転させるようになっている。
【0039】
第1カウンタバランス弁36は、油圧配管32aに取り付けられているとともに、そのパイロット部がもう一方の油圧配管32bに繋がっている。この第1カウンタバランス弁36は、第1油圧モータ28から油圧配管32aを通じて排出される作動油に所定の背圧を与える一方、逆方向に流れる作動油、すなわち油圧配管32aを通じて第1油圧モータ28へ供給される作動油は自由に流れさせるように構成されている。これにより、第1油圧モータ28の正転時には、油圧配管32a及び第1カウンタバランス弁36を通じて第1油圧モータ28に自由に作動油が供給される一方、第1油圧モータ28の逆転時には、第1油圧モータ28に背圧が与えられて、吊荷部16の巻下げ時に一定の負荷が第1油圧モータ28に与えられ、第1油圧モータ28の制御速度、すなわち吊荷部16の巻下げ速度が維持されるようになっている。
【0040】
第1圧力制御弁38は、第1カウンタバランス弁36よりも第1油圧モータ28側で油圧配管32a,32b間を接続する接続配管39に取り付けられている。この第1圧力制御弁38は、油圧配管32a側の油圧が所定範囲以上に高くなるまでは閉状態となっており、接続配管39を遮断しているが、その所定範囲を超えて油圧配管32a側の油圧が高くなると開状態となり、接続配管39を通じて油圧が過大になるのを防止する。
【0041】
上記第2駆動回路26は、第1駆動回路24と同様の構成を有している。具体的には、第2駆動回路26は、第2油圧モータ42と、第2油圧ポンプ44と、油圧配管46a,46bと、第2コントロールバルブ48と、第2カウンタバランス弁50と、第2圧力制御弁52と、接続配管53とを備えている。第2油圧モータ42は、本発明における第2流体圧モータに対応するものであり、第2油圧ポンプ44は、本発明における第2ポンプに対応するものである。油圧配管46aは、本発明における第2巻上げ供給路に対応するものであり、油圧配管46bは、本発明における第2巻下げ供給路に対応するものである。
【0042】
そして、第2油圧モータ42は、第2ウインチ6を回転させるために当該第2ウインチ6の回転軸に接続されており、その構成は上記第1油圧モータ28の構成と同様である。また、第2油圧ポンプ44の構成は、上記第1油圧ポンプ30の構成と同様であり、油圧配管46a,46bの構成は、上記油圧配管32a,32bの構成と同様である。第2コントロールバルブ48の構成は、上記第1コントロールバルブ34の構成と同様であり、第2カウンタバランス弁50の構成は、上記第1カウンタバランス弁36の構成と同様である。第2圧力制御弁52の構成は、上記第1圧力制御弁38の構成と同様であり、接続配管53の構成は、上記接続配管39の構成と同様である。
【0043】
上記切替装置22は、駆動装置20の駆動モードを第1ウインチ5と第2ウインチ6を同期駆動する同期駆動モードと、第1ウインチ5と第2ウインチ6を個別に駆動する個別駆動モードとに相互に切り替える機能を有している。この切替装置22は、連結配管54,56と、開閉弁58とによって構成されている。
【0044】
連結配管54は、第1駆動回路24の油圧配管32aと第2駆動回路26の油圧配管46aとを相互に接続するように配設されており、連結配管56は、第1駆動回路24の油圧配管32bと第2駆動回路26の油圧配管46bとを相互に接続するように配設されている。連結配管54は、本発明の第2接続路を構成するものであり、連結配管56は、本発明の第1接続路を構成するものである。本実施形態では、連結配管54が油圧配管32aのうち第1カウンタバランス弁36よりも第1コントロールバルブ34側の部分と、油圧配管46aのうち第2カウンタバランス弁50よりも第2コントロールバルブ48側の部分とを接続するようになっている。また、連結配管56は、油圧配管32bのうち第1カウンタバランス弁36のパイロット部に繋がる位置よりも第1コントロールバルブ34側の部分と、油圧配管46bのうち第2カウンタバランス弁50のパイロット部に繋がる位置よりも第2コントロールバルブ48側の部分とを接続するようになっている。
【0045】
開閉弁58は、電磁式の開閉弁であり、前記連結配管54,56に取り付けられている。この開閉弁58は、連結配管54,56を同時に作動油が流通可能な流通状態と作動油が流通できない遮断状態とに切り替えるように構成されている。具体的には、開閉弁58は、クレーンの運転室に設けられたモード選択スイッチ(図示せず)と操作装置(図示せず)の操作に基づいて開状態と閉状態とに切り替わるように構成されている。前記モード選択スイッチは、オペレータが駆動装置20の駆動モードを同期駆動モードまたは個別駆動モードのいずれかに選択するためのものである。前記操作装置は、オペレータが第1ウインチ5と第2ウインチ6による巻上げまたは巻下げの各操作を行うために用いるものである。
【0046】
そして、開閉弁58は、前記モード選択スイッチにより同期駆動モードが選択されるとともに、前記操作装置により第1ウインチ5と第2ウインチ6が共に操作されたことに応じて開状態となり、前記連結配管54,56を流通状態とするように構成されている。また、開閉弁58は、前記モード選択スイッチにより個別駆動モードが選択されたときと、前記操作装置により第1ウインチ5または第2ウインチ6のいずれか一方のみが操作されるかまたは第1ウインチ5及び第2ウインチ6が両方とも操作されないときには閉状態に保持され、前記連結配管54,56を遮断状態とするように構成されている。
【0047】
そして、連結配管54,56が流通状態のときは、第1駆動回路24の油圧、すなわち第1油圧モータ28の駆動圧と、第2駆動回路26の油圧、すなわち第2油圧モータ42の駆動圧とが平衡化されて駆動装置20が同期駆動モードとなる。一方、連結配管54,56が遮断状態のときは、第1油圧モータ28の駆動圧と、第2油圧モータ42の駆動圧とが個別に制御可能な状態となって駆動装置20が個別駆動モードとなるように構成されている。
【0048】
次に、図2及び図3を参照して、本実施形態のクレーンにおける吊荷部16の昇降時の動作について説明する。
【0049】
まず、オペレータが上記モード選択スイッチで同期駆動モードを選択し、かつ、上記操作装置で第1ウインチ5と第2ウインチ6を同時操作すると、それに応じて切替装置22の開閉弁58は開状態となり、連結配管54,56を流通状態とする。これにより、第1駆動回路24の油圧配管32aと第2駆動回路26の油圧配管46aが連結配管54及び開閉弁58を通じて連通する一方、第1駆動回路24の油圧配管32bと第2駆動回路26の油圧配管46bが連結配管56及び開閉弁58を通じて連通する。
【0050】
この状態で、オペレータが吊荷部16の巻上げのために操作装置で第1ウインチ5と第2ウインチ6を共に正転操作していると、図3の第1コントロールバルブ34の右側のパイロット部に油圧が供給されて、第1ウインチ5を正転させるように作動油を流す位置に第1コントロールバルブ34が切り替えられる。また、図3の第2コントロールバルブ48の右側のパイロット部に油圧が供給されて、第2ウインチ6を正転させるように作動油を流す位置に第2コントロールバルブ48が切り替えられる。これにより、第1油圧ポンプ30から吐出される作動油が油圧配管32aを通じて第1油圧モータ28に供給されるとともに、第1油圧モータ28から作動油が油圧配管32bを通じてタンク40に排出される。また、第2油圧ポンプ44から吐出される作動油が油圧配管46aを通じて第2油圧モータ42に供給されるとともに、第2油圧モータ42から作動油が油圧配管46bを通じてタンク40に排出される。
【0051】
そして、この際、第1駆動回路24の油圧配管32aの油圧、すなわち第1油圧モータ28に供給される油圧と、第2駆動回路26の油圧配管46aの油圧、すなわち第2油圧モータ42に供給される油圧とが連結配管54を通じて平衡化される。また、第1駆動回路24の油圧配管32bの油圧、すなわち第1油圧モータ28に掛かる背圧と、第2駆動回路26の油圧配管46bの油圧、すなわち第2油圧モータ42に掛かる背圧とが連結配管56を通じて平衡化される。これにより、第1油圧モータ28の駆動圧と第2油圧モータ42の駆動圧とが均等になり、第1ウインチ5と第2ウインチ6が正転方向に同期駆動する。なお、第1ウインチ5と第2ウインチ6の駆動開始時点では、第1油圧モータ28に掛かっている油圧と第2油圧モータ42に掛かっている油圧に多少の差が生じている場合があり、上記のように油圧が平衡化されるまでの過程では、掛かっている油圧の低い側の油圧モータが先に駆動される。そして、油圧が平衡に達した時点から第1油圧モータ28と第2油圧モータ42の同期駆動、すなわち第1ウインチ5と第2ウインチ6の同期駆動が開始される。
【0052】
第1ウインチ5と第2ウインチ6が正転方向に同期駆動すると第1ロープ11と第2ロープ12が同時に巻き取られて吊荷側シーブブロック15がブーム側シーブブロック14側に引き上げられる。これにより、吊荷部16の巻上げが行われる。この際、本実施形態では、第1ロープ11と第2ロープ12がブーム側シーブ14a,14bの配列全体と吊荷側シーブ15a,15bの配列全体とにバランスよく、かつ、互いに対称的に巻回されているので、吊荷側シーブ15a,15bの配列のどちらか一方端側に偏って吊荷側シーブブロック15が引き上げられることがない。これにより、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15が平行状態を維持しながら吊荷側シーブブロック15が引き上げられる。
【0053】
一方、この同期駆動モードにおいて、オペレータが吊荷部16の巻下げのために操作装置で第1ウインチ5と第2ウインチ6を共に逆転操作していると、図3の第1コントロールバルブ34の左側のパイロット部に油圧が供給されて、第1ウインチ5を逆転させるように作動油を流す位置に第1コントロールバルブ34が切り替えられる。また、図3の第2コントロールバルブ48の左側のパイロット部に油圧が供給されて、第2ウインチ6を逆転させるように作動油を流す位置に第2コントロールバルブ48が切り替えられる。これにより、第1油圧ポンプ30から吐出される作動油が油圧配管32bを通じて第1油圧モータ28に供給されるとともに、第1油圧モータ28から作動油が油圧配管32aを通じてタンク40に排出される。また、第2油圧ポンプ44から吐出される作動油が油圧配管46bを通じて第2油圧モータ42に供給されるとともに、第2油圧モータ42から作動油が油圧配管46aを通じてタンク40に排出される。
【0054】
そして、上記の巻上げ動作時と同様に、第1油圧モータ28に掛かる油圧と第2油圧モータ42に掛かる油圧とが平衡化される。これにより、第1油圧モータ28と第2油圧モータ42の逆転方向への同期駆動、すなわち第1ウインチ5と第2ウインチ6の逆転方向への同期駆動が行われる。
【0055】
第1ウインチ5と第2ウインチ6が逆転方向に同期駆動すると第1ロープ11と第2ロープ12が同時に巻き戻されて吊荷側シーブブロック15及び吊荷部16が所定の速度で巻き下げられる。この巻き下げにおいても、上記巻上げの場合と同様に、第1ロープ11と第2ロープ12がブーム側シーブ14a,14bの配列全体と吊荷側シーブ15a,15bの配列全体とにバランスよく、かつ、互いに対称的に巻回されているので、吊荷側シーブ15a,15bの配列のどちらか一方端側に偏って吊荷側シーブブロック15が巻き下げられることがない。これにより、ブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15が平行状態を維持しながら吊荷側シーブブロック15及び吊荷部16が巻き下げられる。
【0056】
次に、オペレータが上記モード選択スイッチで個別駆動モードを選択していると、それに応じて切替装置22の開閉弁58は閉状態に保持される。また、開閉弁58は、この場合に限らず、上記モード選択スイッチで同期駆動モードが選択されている場合でも、閉状態に保持される場合がある。すなわち、オペレータが上記操作装置で第1ウインチ5または第2ウインチ6のいずれか一方のみを操作している場合や、オペレータが上記操作装置を操作していない場合には、開閉弁58は閉状態に保持される。そして、開閉弁58が閉状態に保持されることにより、連結配管54,56は共に遮断状態となっている。これにより、第1駆動回路24の油圧配管32aの油圧と第2駆動回路26の油圧配管46aの油圧は個別に制御可能であるとともに、第1駆動回路24の油圧配管32bの油圧と第2駆動回路26の油圧配管46bの油圧は個別に制御可能となる。このため、第1油圧モータ28と第2油圧モータ42を個別に駆動することができる。
【0057】
そして、個別駆動モードでは、第1ロープ11と第2ロープ12をそれぞれ別のシーブブロック対(図示せず)に巻回して、第1ウインチ5と第2ウインチ6で個別の吊荷部の昇降を行う。なお、個別駆動モードにおける第1ウインチ5の正転及び逆転の動作と第2ウインチ6の正転及び逆転の動作は、上記油圧の均等化を除いて上記同期駆動モードの場合と同様である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によるクレーンでは、第1ロープ11が、ブーム側シーブ14a,14bのうちその配列に沿って1つ置きに選ばれるブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15a,15bのうちその配列に沿って1つ置きに選ばれる吊荷側シーブ15aとに交互に掛け渡されることによって、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置するブーム側シーブ14aと吊荷側シーブ15aに巻回されている。また、本実施形態のクレーンでは、第2ロープ12が、ブーム側シーブ14a,14bのうち第1ロープ11が掛けられていないブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15a,15bのうち第1ロープ11が掛けられていない吊荷側シーブ15bとに交互に掛け渡されることによって、吊荷部16の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置するブーム側シーブ14bと吊荷側シーブ15bに巻回されている。これにより、各ロープ11,12が吊荷部16の重心部を通る鉛直線に対して左右どちらか一方ずつのシーブに巻回されている場合に比べて、各ロープ11,12が吊荷部16の中心を通る鉛直線に対して両側のシーブにバランスよく巻回されている。このため、第1ウインチ5の回転量と第2ウインチ6の回転量に多少の差が生じたとしても、吊荷側シーブ15a,15bの配列のどちらか一方端側に巻上げまたは巻下げが偏るのを抑制することができる。これにより、両シーブブロック14,15同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック14,15間の距離を変化させることができる。
【0059】
また、本実施形態のクレーンでは、個別に設けられた第1ロープ11と第2ロープ12を用いてブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15との間の距離を変化させる。このため、両シーブブロック間の距離を変化させるのに両ウインチから引き出したロープを連結ロープとコネクタを介して繋いだものを用いる従来の構成と異なり、連結ロープやコネクタを用いない分、クレーンの構成を簡略化できるとともに、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避できる。
【0060】
また、本実施形態によるクレーンでは、各ウインチ5,6毎に個別に設けられた第1ロープ11と第2ロープ12とを用いているので、両ウインチのロープとそれらを繋ぐ連結ロープを1本のロープで代用する場合と異なり、非常に長尺な特殊なロープを使用しなくてもよく、そのような長尺なロープよりも短い長さのロープを使用することができる。これにより、例えば、ロープの保管スペースの増大を抑制できたり、一般的にクレーンで使用される通常の長さのロープを使用できるといった効果も得られる。従って、本実施形態のクレーンでは、特殊なロープを使用することなく、構成を簡略化しながら、クレーンへのロープの取り付け作業が煩雑になるのを回避し、かつ、両シーブブロック14,15同士をほぼ平行状態に維持しながらこれらシーブブロック14,15間の距離を変化させることができる。
【0061】
また、本実施形態によるクレーンでは、第1ロープ11のうちブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に巻回されている巻回部分の基端側が、ブーム側シーブ14aのうちその配列における図2の左端側のシーブと、吊荷側シーブ15aのうちその配列における図2の左端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第1ロープ11の巻回部分の先端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の右端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の右端側のシーブとに掛けられている。また、第2ロープ12のうちブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に巻回されている巻回部分の基端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の右端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の右端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第2ロープ12の巻回部分の先端側が、ブーム側シーブ14bのうちその配列における図2の左端側のシーブと、吊荷側シーブ15bのうちその配列における図2の左端側のシーブとに掛けられている。このような構成によりブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に対して第1ロープ11と第2ロープ12とを相互に対称となる形態で巻回することができるので、吊荷側シーブ15a,15bの配列のどちらか一方端側に巻上げまたは巻下げが偏って作用するのをより確実に抑制することができる。これにより、両シーブブロック14,15同士をより確実に平行状態に維持しながらこれらシーブブロック14,15間の距離を変化させることができる。
【0062】
また、本実施形態によるクレーンでは、駆動装置20の駆動モードを、第1ウインチ5と第2ウインチ6を同期駆動する同期駆動モードと、第1ウインチ5と第2ウインチ6を個別に駆動する個別駆動モードとに相互に切り替える切替装置22とを備えている。このため、本実施形態のクレーンでは、同期駆動モードで第1ウインチ5と第2ウインチ6により大重量の荷物の吊り作業を行うことができるのに加えて、個別駆動モードでは第1ロープ11と第2ロープ12とをそれぞれ別のシーブブロック対に接続すれば第1ウインチ5と第2ウインチ6とで個別の吊り作業を行うことができるので、実施可能な吊り作業の多様性を向上させることができる。
【0063】
また、本実施形態によるクレーンでは、切替装置22によって同期駆動モードでは第1油圧モータ28に供給される油圧と第2油圧モータ42に供給される油圧とが均等で、かつ、第1油圧モータ28に掛かる作動油の背圧と第2油圧モータ42に掛かる作動油の背圧とが均等となる状態にされる一方、個別駆動モードでは第1油圧モータ28に供給される油圧と第2油圧モータ42に供給される油圧とが個別に制御可能で、かつ、第1油圧モータ28に掛かる作動油の背圧と第2油圧モータ42に掛かる作動油の背圧とが個別に制御可能な状態にされるので、切替装置22により駆動装置20の駆動モードを同期駆動モードと個別駆動モードとに相互に切替可能な機構を構成することができる。さらに、この構成によれば、同期駆動モードでは第1油圧モータ28と第2油圧モータ42が同じ圧力で駆動されるので、第1ロープ11と第2ロープ12が同じ張力で操作される。これにより、第1ロープ11と第2ロープ12に掛かる張力の均一化を図ることができるので、第1ロープ11と第2ロープ12の寿命の均一化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態によるクレーンでは、第1油圧モータ28と第2油圧モータ42に供給する油圧を平衡化するとともに第1油圧モータ28と第2油圧モータ42に掛かる背圧を平衡化する同期駆動モードと、第1油圧モータ28と第2油圧モータ42に供給する油圧を独立化するとともに第1油圧モータ28と第2油圧モータ42に掛かる背圧を独立化する個別駆動モードとを、1つの開閉弁58で切り替えることができる。従って、簡単な構成で同期駆動モードと個別駆動モードの切替を行うことができる。
【0065】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0066】
例えば、上記実施形態では、起伏部としてブーム3のみが設けられたクレーンに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの構成に限らない。例えば、ブームと、そのブームの先端に接続されたジブとを備えたクレーンにおいても本発明を適用することが可能である。この場合、上記実施形態におけるブーム3の代わりにジブを本発明の起伏部として、上記実施形態と同様の構成を適用することが可能である。
【0067】
また、上記実施形態では、第1ロープ11の引き出し端と第2ロープ12の引き出し端をブーム3に固定したが、本発明はこれに限らず、第1ロープ11の引き出し端と第2ロープ12の引き出し端をブーム側シーブブロック14または吊荷側シーブブロック15のいずれかに固定してもよい。
【0068】
また、第1ロープ11と第2ロープ12をブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に掛け渡す形態は、上記実施形態の構成に限らない。例えば、第1ロープ11は、ブーム側シーブのうちその配列に沿って複数置きに選ばれるシーブと、吊荷側シーブのうちその配列に沿って複数置きに選ばれるシーブとに交互に掛け渡してもよい。このとき、第2ロープ12は、ブーム側シーブのうち第1ロープ11が掛けられていないシーブと、吊荷側シーブのうち第1ロープ11が掛けられていないシーブとに交互に掛け渡す。そして、第2ロープ12は、ブーム側シーブのうちその配列に沿って前記第1ロープ11の場合と同数置きに選ばれるシーブと、吊荷側シーブのうちその配列に沿って前記第1ロープ11の場合と同数置きに選ばれるシーブとに交互に掛け渡すのがよい。なお、この場合には、第1ロープ11及び第2ロープ12の掛けられていない空のシーブがブーム側シーブブロック14と吊荷側シーブブロック15に存在する。
【0069】
また、上記実施形態では、切替装置22を第1カウンタバランス弁36よりも第1コントロールバルブ34側の位置と第2カウンタバランス弁50よりも第2コントロールバルブ48側の位置で両駆動回路24,26の各油圧配管同士を繋ぐように設けたが、本発明はこの構成に限らない。すなわち、図4に示す上記実施形態の変形例のように切替装置62を第1カウンタバランス弁36よりも第1油圧モータ28側の位置と第2カウンタバランス弁50よりも第2油圧モータ42側の位置で両駆動回路24,26の各油圧配管同士を繋ぐように設けてもよい。具体的には、切替装置62の連結配管64(第2接続路)を第1駆動回路24の油圧配管32aのうち第1カウンタバランス弁36よりも第1油圧モータ28側の部分と、第2駆動回路26の油圧配管46aのうち第2カウンタバランス弁50よりも第2油圧モータ42側の部分とを接続するように配設する。また、切替装置62のもう一方の連結配管66(第1接続路)を第1駆動回路24の油圧配管32bのうち第1カウンタバランス弁36のパイロット部に繋がる位置よりも第1油圧モータ28側の部分と、第2駆動回路26の油圧配管46bのうち第2カウンタバランス弁50のパイロット部に繋がる位置よりも第2油圧モータ42側の部分とを接続するように配設する。
【0070】
また、第1ロープ11と第2ロープ12は、上記実施形態の如く巻回することに限定されず、第1ロープ11と第2ロープ12をブーム側シーブ14a,14bの配列と吊荷側シーブ15a,15bの配列に対して同じ側の端部から同方向に巻回してもよい。また、上記実施形態では、ブーム側シーブ14a,14bを合計10個設けるとともに、吊荷側シーブ15a,15bを合計10個設けたが、この構成に限らない。すなわち、ブーム側シーブ14a,14bと吊荷側シーブ15a,15bを上記以外の数設けてもよい。この場合、ブーム側シーブ14a,14bを設ける数と吊荷側シーブ15a,15bを設ける数を上記実施形態のような偶数にしなくてもよく、ブーム側シーブ14a,14bを設ける数と吊荷側シーブ15a,15bを設ける数を奇数としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態に示した第1ロープ11及び第2ロープ12の巻回の形態に限らず、ブーム側シーブ14a,14bの配列の端から1つ置きに選ばれるブーム側シーブ14aと、そのシーブ14aと同じ端からの順番で吊荷側シーブ15a,15bの配列から選ばれる吊荷側シーブ15bとに第1ロープ11を交互に掛け渡すとともに、前記各ブーム側シーブ14a間に配置されたブーム側シーブ14bと、そのシーブ14bと同じ端からの順番で吊荷側シーブ15a,15bの配列から選ばれる吊荷側シーブ15aとに第2ロープ12を交互に掛け渡してもよい。
【0072】
また、同期駆動モードと個別駆動モードの切替方法は、上記実施形態の方法に限らない。例えば、上記実施形態のモード選択スイッチによる操作の代わりに、クレーンに付設の過負荷防止装置(図示せず)のモード選択信号を用いて切替装置22の開閉弁58が開状態と閉状態に切り替わるようにして、駆動装置20の同期駆動モードと個別駆動モードとを切り替えるようにしてもよい。また、第1駆動回路24の油圧と第2駆動回路26の油圧を検出する検出手段(図示せず)からの信号に基づいて切替装置22の開閉弁58が開状態と閉状態に切り替わるようにして、駆動装置20の同期駆動モードと個別駆動モードとを切り替えるようにしてもよい。この場合、検出手段により第1駆動回路24の油圧と第2駆動回路26の油圧がある一定以上の高圧となったことが検出されたときに当該検出手段から出力される信号に基づいて、切替装置22の開閉弁58が開閉するように構成する。
【0073】
また、上記実施形態では、切替装置22の開閉弁58として電磁式の開閉弁を用いたが、これに限らず、前記開閉弁58として電磁式以外のものを用いてもよい。すなわち、前記モード選択スイッチと前記操作装置の操作に基づいて上記と同様に開状態と閉状態とに切り替わるものであれば、油圧式や機械式等の開閉弁を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態によるクレーンの全体構成を示した側面図である。
【図2】図1に示したクレーンのブーム側シーブブロックと吊荷側シーブブロックに対するロープの巻回状態を示した図である。
【図3】図1に示したクレーンの第1ウインチと第2ウインチとを駆動する駆動機構の油圧回路図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例による第1ウインチと第2ウインチとを駆動する駆動機構の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0075】
3 ブーム(起伏部)
5 第1ウインチ
6 第2ウインチ
11 第1ロープ
12 第2ロープ
14a、14b ブーム側シーブ(起伏部側シーブ)
14 ブーム側シーブブロック(起伏部側シーブブロック)
15a、15b 吊荷側シーブ
15 吊荷側シーブブロック
16 吊荷部
20 駆動装置
22、62 切替装置
28 第1油圧モータ(第1流体圧モータ)
30 第1油圧ポンプ(第1ポンプ)
32a 油圧配管(第1巻上げ供給路)
32b 油圧配管(第1巻下げ供給路)
42 第2油圧モータ(第2流体圧モータ)
44 第2油圧ポンプ(第2ポンプ)
46a 油圧配管(第2巻上げ供給路)
46b 油圧配管(第2巻下げ供給路)
54 連結配管(第2接続路)
56 連結配管(第1接続路)
58 開閉弁
64 連結配管(第2接続路)
66 連結配管(第1接続路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏部と、この起伏部の先端に設けられるとともに水平方向に配列された複数の起伏部側シーブを含む起伏部側シーブブロックと、この起伏部側シーブブロックの下方に配置されるとともに前記各起伏部側シーブと同方向に配列された複数の吊荷側シーブを含む吊荷側シーブブロックと、第1ウインチと、この第1ウインチから引き出されるとともに前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間に巻回された第1ロープと、第2ウインチと、この第2ウインチから引き出されるとともに前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間に巻回された第2ロープと、前記吊荷側シーブブロックに取り付けられた吊荷部とを備え、前記第1ウインチと前記第2ウインチの同期駆動により前記第1ロープと前記第2ロープを同時に巻き取りまたは繰り出すことによって、前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックとの間の距離を変化させて前記吊荷部を昇降させるクレーンであって、
前記第1ロープは、前記起伏部側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブと前記吊荷側シーブのうちその配列に沿って少なくとも1つ置きに選ばれるシーブとに交互に掛け渡されることによって、前記吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する前記起伏部側シーブと前記吊荷側シーブに巻回され、
前記第2ロープは、前記起伏部側シーブのうち前記第1ロープが掛けられていないシーブと前記吊荷側シーブのうち前記第1ロープが掛けられていないシーブとに交互に掛け渡されることによって、前記吊荷部の重心部を通る鉛直線を挟んで左右両側に位置する前記起伏部側シーブと前記吊荷側シーブに巻回されていることを特徴とする、クレーン。
【請求項2】
前記第1ロープのうち前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックに巻回されている巻回部分の基端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の一方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の一方端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第1ロープの巻回部分の先端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の他方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の他方端側のシーブとに掛けられており、
前記第2ロープのうち前記起伏部側シーブブロックと前記吊荷側シーブブロックに巻回されている巻回部分の基端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の他方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の他方端側のシーブとに掛けられているとともに、前記第2ロープの巻回部分の先端側が、前記起伏部側シーブのうちその配列の一方端側のシーブと、前記吊荷側シーブのうちその配列の一方端側のシーブとに掛けられていることを特徴とする、請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
前記第1ウインチ及び前記第2ウインチを駆動する駆動装置と、
当該駆動装置の駆動モードを前記第1ウインチと前記第2ウインチを同期駆動する同期駆動モードと、前記第1ウインチと前記第2ウインチを個別に駆動する個別駆動モードとに相互に切り替える切替装置とを備えたことを特徴とする、請求項1または2に記載のクレーン。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記第1ウインチを駆動する第1流体圧モータと、前記第2ウインチを駆動する第2流体圧モータと、前記第1流体圧モータに作動流体を供給するための第1ポンプと、前記第2流体圧モータに作動流体を供給するための第2ポンプとを含み、
前記切替装置は、前記同期駆動モードでは、前記第1流体圧モータに供給される流体圧と前記第2流体圧モータに供給される流体圧とを平衡化し、かつ、前記第1流体圧モータに掛かる作動流体の背圧と前記第2流体圧モータに掛かる作動流体の背圧とを平衡化する一方、前記個別駆動モードでは、前記第1流体圧モータに供給される流体圧と前記第2流体圧モータに供給される流体圧とを互いに独立させ、かつ、前記第1流体圧モータに掛かる作動流体の背圧と前記第2流体圧モータに掛かる作動流体の背圧とを互いに独立させることを特徴とする、請求項3に記載のクレーン。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記吊荷部の巻き上げ時に前記第1ポンプからの作動流体を前記第1流体圧モータへ供給するための第1巻上げ供給路と、前記吊荷部の巻き上げ時に前記第2ポンプからの作動流体を前記第2流体圧モータへ供給するための第2巻上げ供給路と、前記吊荷部の巻き下げ時に前記第1ポンプからの作動流体を前記第1流体圧モータへ供給するための第1巻下げ供給路と、前記吊荷部の巻き下げ時に前記第2ポンプからの作動流体を前記第2流体圧モータへ供給するための第2巻下げ供給路とを含み、
前記切替装置は、前記第1巻上げ供給路と前記第2巻上げ供給路とを相互に接続するための第1接続路と、前記第1巻下げ供給路と前記第2巻下げ供給路とを相互に接続するための第2接続路と、これら第1接続路と第2接続路を作動流体が流通可能な流通状態と作動流体が流通できない遮断状態とに切り替えるための開閉弁とを含み、
前記開閉弁は、前記同期駆動モードでは、前記第1接続路と前記第2接続路を共に前記流通状態にする一方、前記個別駆動モードでは、前記第1接続路と前記第2接続路を共に前記遮断状態にすることを特徴とする、請求項4に記載のクレーン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate