説明

クロストリジウム・バクテリアの培地およびクロストリジウム毒素を得るための方法

【課題】動物性産物不含(APF)培地およびクロストリジウム・ボツリヌス菌バクテリアを産生するボツリヌス毒素の培養および発酵のための工程。
【解決手段】得られたボツリヌス毒素はボツリヌス毒素医薬組成物を製剤化し、配合するために用いることができる。APF培地は有意に減少するレベルの肉製品または乳製品副産物を含み、動物由来産物の代わりに非動物性から作られた産物を用いることができる。好ましくは、用いられるAPF培地は動物由来産物不含であるか、または実質的に不含である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2003年9月25日に出願された米国出願番号10/672,876の一部継続出願であり、該出願の完全な内容が本明細書に引用される。
【0002】
背景
本発明は、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための培地および方法に関する。特に本発明は、十分な生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための、実質的に動物性産物不含の培地、培養物、およびクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアなどの有機物の嫌気性発酵方法に関する。
【背景技術】
【0003】
治療、診断、研究または美容の目的のためのヒトまたは動物への投与に適切な医薬組成物は、活性成分を含有することができる。医薬組成物はまた、一つ以上の賦形剤、緩衝液、担体、安定剤、保存剤および/または充填剤を含むことができる。医薬組成物中の活性成分は、ボツリヌス毒素などの生物製剤であることができる。ボツリヌス毒素医薬組成物を製造するために用いられるボツリヌス毒素活性成分は、複数段階培養、発酵、および一つ以上の動物由来産物(大量のボツリヌス毒素を得るために用いられる一つ以上の培養および発酵培地中の肉培養液およびカゼイン成分、および最終的に配合されたボツリヌス毒素医薬組成物中の血液分画または血液製剤賦形剤など)を利用した配合工程を通して得ることができる。活性成分生物製剤が動物由来産物を利用する工程を通して得られる、医薬組成物の患者への投与により、患者は種々の病原体または病原菌を受ける潜在的危険性を受けうる。例えばプリオンは、医薬組成物に存在することができる。プリオンは、正常なタンパク質を作る同じ核酸配列から異常立体配座アイソフォームとして生じると仮定されるタンパク性感染粒子である。さらに正常アイソフォームタンパク質のプリオンタンパク質アイソフォームへの翻訳後レベルにおける「補充反応」に感染性が存在すると仮定されている。明らかに正常の内因性細胞タンパク質は誘発されて、病原性プリオンコンフォメーションに折り畳まれる。
【0004】
クロイツフェルト・ヤコブ病は、伝染性物質が明らかにプリオンタンパク質の異常アイソフォームである、まれなヒト感染性海綿状脳症の神経変性障害である。クロイツフェルト・ヤコブ病の個体は、6ヶ月以内に明らかに完全な健康体から無動無言症に悪化しうる。従って、動物由来産物を用いて得られるか、または配合される、ボツリヌス毒素などの生物製剤を含む医薬組成物の投与からの、クロイツフェルト・ヤコブ病などのプリオン媒介疾患の取得に、潜在的危険性が存在しうる。
【0005】
ボツリヌス毒素
クロストリジウム属は、形態および機能によりグループ分けされる127以上の種を有する。嫌気性グラム陽性菌クロストリジウム・ボツリヌス菌は、潜在的ポリペプチド神経毒、ボツリヌス毒素を産生し、これはヒトおよび動物にボツリヌス中毒症として知られている神経麻痺性疾病を引き起こす。クロストリジウム・ボツリヌス菌およびその胞子は一般に、土壌に見られ、そのバクテリアは在宅の缶詰工場での不適切に滅菌され、封をされた食品容器中にて増殖することができ、これが多くのボツリヌス中毒症の場合の原因である。ボツリヌス中毒症の影響は典型的に、クロストリジウム・ボツリヌス菌培養物または胞子に感染した食料を食べた後18〜36時間後に現れる。ボツリヌス毒素は明らかに、内臓の内層を希釈されずに通ることができ、末梢運動神経細胞を攻撃することができる。ボツリヌス毒素中毒の症状は、歩行困難、嚥下困難および会話困難から呼吸筋の麻痺および死まで進行しうる。
【0006】
ボツリヌス毒素A型は、ヒトに知られる最も致命的な天然の生物兵器である。約50ピコグラムのボツリヌス毒素A型(精製神経毒複合体)が、マウスにおけるLD50である。ボツリヌス毒素A型は、モル濃度基準にてジフテリアの18億倍、シアン化ナトリウムの6億倍、コブロトキシン(cobrotoxin)の3000万倍およびコレラの1200万倍致命的である。文献(Singh, 細菌タンパク質毒素の重大な態様, 天然毒素IIの63〜84ページ(第4章), B.R. Singhら編, Plenum Press, New York (1976))(ここに、0.3ngが1Uに匹敵するボツリヌス毒素A型の規定LD50は、BOTOX(登録商標)約0.05ngが1ユニットに匹敵するという事実に直される)。BOTOX(登録商標)は、カリフォルニア州アーバインのアラーガン社(Allergan, Inc.)で市販されているボツリヌス毒素A型精製神経毒複合体の商標である。1ユニット(U)のボツリヌス毒素は、それぞれ約18〜20グラムの重量の雌スイスウェブスターマウスへの腹腔内投与におけるLD50として定義される。言い換えれば、1ユニットのボツリヌス毒素は、雌スイスウェブスターマウスの群の50%を殺すボツリヌス毒素の量である。7つの一般的に免疫学的に明確なボツリヌス神経毒が特徴付けられており、これらはそれぞれボツリヌス神経毒抗原型A、B、C、D、E、FおよびGであり、それぞれが型特異的抗体との中和により区別される。ボツリヌス毒素の異なる抗原型は、影響する動物の種、および引き起こされる麻痺の重篤度および期間の点で異なる。例えばボツリヌス毒素A型は、ラットにおいて生じる麻痺率により測定したとき、ボツリヌス毒素B型よりも500倍強いことが測定されている。さらにボツリヌス毒素B型は、ボツリヌス毒素A型についての霊長類LD50の約12倍である480U/kgの用量において霊長類に非毒性であると測定されている。コリン作動性運動ニューロンに高い親和性を有して明らかに結合するボツリヌス毒素はニューロンに転位し、アセチルコリンのシナプス前放出を遮断する。
【0007】
ボツリヌス毒素は、例えば過活動骨格筋により特徴付けられる神経筋障害の治療のための臨床設定に用いられてきた。ボツリヌス毒素A型は、米国食品医薬品局により、12歳を超えた患者における特発性眼瞼痙攣、斜視および片側顔面痙攣の治療、頚部ジストニアの治療および眉間(顔面)のしわの治療のために承認されてきた。FDAはまた、頚部ジストニアの治療のためにボツリヌス毒素B型も承認してきた。ボツリヌス毒素A型の末梢(すなわち筋肉内または皮下)注射の臨床効果は通常、注射の1週間以内に見られ、注射後数時間以内が多い。ボツリヌス毒素A型の単一筋肉内注射からの典型的な症状軽減(すなわち弛緩性筋麻痺)期間は、約3ヶ月から約6ヶ月であることができる。
【0008】
すべてのボツリヌス毒素抗原型は明らかに、神経筋接合部における神経伝達物質アセチルコリンの放出を阻害するが、異なる神経分泌タンパク質に作用し、および/または異なる部位におけるこれらのタンパク質を開裂することによりそうする。ボツリヌス毒素Aは、特異的に細胞内、小胞関連タンパク質SNAP−25のペプチド結合を加水分解することができる亜鉛エンドペプチダーゼである。ボツリヌス菌E型はまた、25キロダルトン(kD)シナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を開裂するが、ボツリヌス毒素A型と比較して、このタンパク質中の異なるアミノ酸配列を標的する。ボツリヌス毒素B型、D型、F型およびG型は小胞関連タンパク質(VAMP、シナプトブレビン(synaptobrevin)とも称される)に作用し、それぞれの抗原型はタンパク質を異なる部位にて開裂する。最後にボツリヌス毒素C型は、シンタキシンおよびSNAP−25の両方を開裂するために示されている。これらの作用機序の差異は、種々のボツリヌス毒素抗原型の作用の相対的有効性および/または期間に影響することができる。
【0009】
抗原型にかかわらず、毒素中毒の分子機序は類似しており、少なくとも3工程または3段階を含むようである。本方法の最初の工程において、毒素は重鎖(H鎖)および細胞表面レセプター間の特異的な相互作用を通して標的ニューロンのシナプス前膜に結合し、レセプターはボツリヌス毒素の各抗原型によって異なると考えられる。H鎖のカルボキシル末端部分Hは、毒素の細胞表面への標的化に重要であるようだ。
【0010】
第二工程において、毒素は、毒細胞の細胞膜を横断する。毒素はまずレセプター媒介エンドサイトーシスを通して細胞によって取り込まれ、毒素を含むエンドソームが形成される。次いで毒素はエンドソームから細胞の細胞質に逃れる。この最後の工程はH鎖のアミノ末端セグメントHにより媒介されると考えられ、これは約5.5以下のpHに応じて毒素の構造変化を誘発する。エンドソームは、エンドソーム内のpHを軽減するプロトンポンプを有することが知られている。コンフォメーション変化は疎水性残基を毒素に暴露し、これはエンドソーム細胞膜に毒素をそれ自体組み込むことを可能にする。次いで毒素は、エンドソーム細胞膜を通して細胞質ゾルに転位する。
【0011】
ボツリヌス毒素活性の機序の最終工程は、HおよびL鎖と一緒になったジスルフィド結合の還元を含むようである。ボツリヌス菌およびボツリヌス毒素の完全な毒性作用は、ホロトキシンのL鎖に含まれ;L鎖は、認識、および神経伝達物質含有小胞の細胞膜の細胞質表面との結合、および小胞の細胞膜との融合に不可欠なタンパク質を選択的に開裂する亜鉛(Zn++)エンドペプチダーゼである。ボツリヌス神経毒、ボツリヌス毒素B、D、FおよびGは、シナプトブレビン(小胞関連膜タンパク質(VAMP)とも称される)、シナプトソーム膜タンパク質の分解をもたらす。シナプス小胞の細胞質表面に存在するほとんどのVAMPは、これらの開裂事象のいずれか一つの結果として除去される。各毒素は、特異的に異なる結合を開裂する。
【0012】
ボツリヌス毒素タンパク質分子の分子量は、知られているボツリヌス毒素抗原型の7つすべてについて、約150kDである。興味深いことに、ボツリヌス毒素は、1つ以上の関連非毒性タンパク質とともに、150kDボツリヌス毒素タンパク質分子を含有する複合体として、クロストリジウム・バクテリアにより放出される。従って、ボツリヌス毒素A型複合体は、クロストリジウム・バクテリアにより900kD、500kDおよび300kD体として産生することができる。ボツリヌス毒素B型およびC型は明らかに、500kD複合体としてのみ産生される。ボツリヌス毒素D型は300kDおよび500kD複合体の両方として産生される。最後に、ボツリヌス毒素E型およびF型は約300kDの複合体としてのみ産生される。複合体(すなわち約150kDより大きな分子量)は、非毒性血球凝集素タンパク質および非毒性非血球凝集素タンパク質を含むと考えられる。従って、ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素分子(神経毒成分)および一つ以上の非毒性血球凝集素タンパク質および/または非毒性非血球凝集素タンパク質(後者はNTNHタンパク質と称することができる)を含有することができる。これら二つの型の非毒性タンパク質(ボツリヌス毒素分子とともに関連する神経毒複合体を含有することができる)は、ボツリヌス毒素分子への変性に対する安定性、および毒素を摂取するときの消化酸に対する保護を提供するために作用することができる。さらに、より大きな(約150kD分子量より大きな)ボツリヌス毒素複合体は、ボツリヌス毒素複合体の筋肉注射部位からのボツリヌス毒素の低速度の拡散を生じ得ることが可能である。毒素複合体は、複合体をpH7.3にて赤血球で処理するか、または約7〜8のpHの適切な緩衝液中、カラムクロマトグラフィーなどの分離工程を複合体に行うことにより、毒性タンパク質および血球凝集素タンパク質に解離させることができる。ボツリヌス毒素タンパク質は、血球凝集素タンパク質の除去に顕著な不安定性を有する。
【0013】
すべてのボツリヌス毒素抗原型は、プロテアーゼにより開裂するか、または傷つけられて、神経刺激性となるべき不活性単一鎖タンパク質として、天然のクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアにより作られる。ボツリヌス毒素抗原型A型およびG型を作る細菌の菌株は内因性プロテアーゼを有し、それゆえ抗原型A型およびG型は、主としてその活性な形態にてバクテリア培養物から回収することができる。一方、ボツリヌス毒素抗原型C型、D型およびE型は、タンパク非分解性菌株により合成され、それゆえ培養物から回収されたとき典型的に不活性化される。抗原型B型およびF型は、タンパク分解性およびタンパク非分解性の両方の菌株により産生され、それゆえ活性または不活性な形態のいずれかにて回収することができる。しかし例えば、ボツリヌス毒素B型抗原型を産生するタンパク分解性菌株でさえ、産生された毒素の一部を開裂するのみである。傷つけられている分子の傷つけられていない分子に対する正確な比は、インキュベーションの長さおよび培養物の温度に依存する。それゆえボツリヌス毒素A型と比べて既知の有意に低有効性のボツリヌス毒素B型が占める可能性があるので、例えばある割合のボツリヌス毒素B型のいずれかの調製物は不活性であると考えられる。臨床製剤における不活性なボツリヌス毒素分子の存在が、その臨床効果に寄与せずに製剤の総タンパク質充填量に寄与し、これは増大した抗原性につながっている。さらにボツリヌス毒素B型が筋肉注射において、より短期間の活性を有し、同じ用量レベルにおけるボツリヌス毒素A型より作用も弱いということが知られている。
【0014】
インビトロ研究は、ボツリヌス毒素が脳幹組織の初代細胞培養からアセチルコリンおよびノルエピネフリンの両方のカリウムカチオン誘起放出を阻害することを示している。さらにボツリヌス毒素が脊髄ニューロンの初代培養におけるグリシンおよびグルタミン酸塩の両方の誘発放出を阻害し、脳シナプトソーム製剤におけるボツリヌス毒素がそれぞれの神経伝達物質アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、CGRPおよびグルタミン酸塩の放出を阻害することが報告されている。
【0015】
医薬組成物における使用のためのボツリヌス毒素は、よく知られているシャンツ工程の改変版を用いたクロストリジウム・ボツリヌス菌の嫌気性発酵により得ることができる(例えば文献(Schantz E.J., et al., 医薬におけるボツリヌス毒素および他の微生物神経毒の特性および使用, Microbiol Rev 1992 Mar;56(1):80-99;Schantz E.J., et al., ヒト治療のためのボツリヌス毒素A型の調製および特徴付け, chapter 3 in Jankovic J, ed. 神経学的疾患および治療 ボツリヌス毒素による治療 (1994), New York, Marcel Dekker;1994, pages 41-49;およびSchantz E.J., et al., 医学的研究におけるボツリヌス毒素A型結晶の使用, in: Lewis GE Jr, ed. ボツリヌス中毒症の生物学的態様 (1981) New York, Academic Press, pages 143-50)を参照のこと)。
【0016】
ボツリヌス毒素(150キロダルトン分子)およびボツリヌス毒素複合体(300kDa〜900kDa)は、例えばカリフォルニア州キャンベルのリスト生物学研究所(List Biological Laboratories)株式会社;応用微生物学研究センター(Centre for Applied Microbiology and Research、英国Porton Down);和光(大阪、日本)ならびにミズーリ州セントルイスのシグマ・ケミカルから得ることができる。医薬組成物を含む市販のボツリヌス毒素としては、BOTOX(登録商標)(ヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムとのボツリヌス毒素A型精製神経毒複合体)(使用前に0.9%塩化ナトリウムと再構成される凍結乾燥粉末として100ユニットバイアルにてカリフォルニア州アーバインのアラーガン社より入手可能)、Dysport(登録商標)(ボツリヌス毒素医薬組成物におけるヒト血清アルブミンおよびラクトースとのクロストリジウム・ボツリヌスA型毒素血球凝集素複合体)(使用前に0.9%塩化ナトリウムと再構成される粉末として英国バークシャー州のイプセン社(Ipsen Limited)より入手可能)およびMyoBlocTM(カリフォルニア州サンディエゴのSolstice Neurosciences(以前はアイルランド、ダブリンのElan Corporationより入手可能)より入手可能な、ボツリヌス毒素B型、ヒト血清アルブミン、コハク酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含有する約pH5.6の注射用溶液)が挙げられる。
【0017】
種々の臨床病態を治療するためのボツリヌス毒素A型の成功は、他のボツリヌス毒素抗原型に興味をもたらした。従って、少なくともボツリヌス毒素A型、B型、E型およびF型は、ヒトにおいて臨床的に用いられている。さらに純粋な(約150kDa)ボツリヌス毒素は、ヒトを治療するために用いられている。例えば文献(Kohl A., et al., 足の短指伸筋試験におけるボツリヌス毒素A型(Botox(登録商標))の効果の高精製神経毒(NT201)との比較, Mov Disord 2000;15(Suppl 3):165)を参照のこと。従ってボツリヌス毒素医薬組成物は、ボツリヌス毒素錯体の使用と対照的に、純粋な(約150kDa)ボツリヌス毒素を用いて製造することができる。
【0018】
ボツリヌス毒素A型は、pH4〜6.8における希釈水溶液に可溶であることが知られている。上記の約7のpHにて安定非毒性タンパク質は、具体的にpHおよび温度が上昇するにつれて、毒性の段階的喪失を生じて神経毒から解離する。文献(Schantz E.J., et al ヒト治療のためのボツリヌス毒素A型の調製および特徴付け(特に44〜45ページ), Jankovic, J., et al, ボツリヌス毒素による治療, Marcel Dekker, Inc (1994)の第3章)。
【0019】
一般に酵素と同様に、ボツリヌス毒素(細胞内ペプチダーゼである)の生物学的活性は、少なくとも一部、その3次元コンフォメーションに依存する。従ってボツリヌス毒素A型は、熱、種々の化学的表面伸縮および表面乾燥により解毒化される。さらに既知の培養、発酵および精製により得られた毒素複合体を医薬組成物製剤に用いるためにはるかに低い毒素濃度に希釈すると、適切な安定剤が存在しなければ、毒素が急速に解毒化することが知られている。ミリグラム量からミリリットルあたりナノグラムを含む溶液への毒素希釈には、そのような大幅な希釈における特異的な毒性の急速な喪失のため、有意な困難が存在する。毒素は医薬組成物を含む毒素が製剤化された後、何ヶ月かまたは何年か使用されうるので、毒素はアルブミンおよびゼラチンなどの安定剤により安定化することができる。
【0020】
ボツリヌス毒素が次のような種々の臨床設定に用いられることが報告されている:
(1)頸部ジストニアを治療するために、筋肉注射(複数筋肉)あたりBOTOX(登録商標)約75〜125ユニット;
(2)眉間のしわ(深いしわ)を治療するために、筋肉注射あたりBOTOX(登録商標)5〜10ユニット(鼻根筋への5ユニット筋肉注射および各皺眉筋への10ユニット筋肉注射);
(3)恥骨直腸筋の括約筋内注射により便秘を治療するために、BOTOX(登録商標)約30〜80ユニット;
(4)上眼瞼の側部瞼板前眼輪筋および下眼瞼の側部瞼板前眼輪筋を注射することにより眼瞼痙攣を治療するために、筋肉あたり約1〜5ユニットの筋肉注射されたBOTOX(登録商標);
(5)斜視を治療するために、注射すべき筋肉の大きさおよび所望の筋麻痺の程度(すなわち所望のジオプター補正の量)の両方に基づき変化する注射量である、約1〜5ユニットのBOTOX(登録商標)を外眼筋に筋肉注射;
(6)発作後の上肢痙縮を治療するために、次の5つの異なる上肢屈筋へのBOTOX(登録商標)の筋肉注射:
(a)深指屈筋:7.5U〜30U
(b)浅指屈筋(flexor digitorum sublimus):7.5U〜30U
(c)尺側手根屈筋:10U〜40U
(d)とう側手根屈筋:15U〜60U
(e)上腕二頭筋:50U〜200U。
5つの指示筋のそれぞれは、各治療セッションにて患者が90U〜360Uの上肢屈筋BOTOX(登録商標)を筋肉注射されるように、同じ治療セッションにて注射されている。
(7)片頭痛を治療するための、25UのBOTOX(登録商標)の頭蓋骨膜注射(眉間の筋肉、前頭筋および側頭筋に対照的に注射)は、25U注射後3ヶ月間にわたる片頭痛頻度、最大重篤度、関連嘔吐および急性投薬使用の尺度の減少により測定されるように、ビヒクルと比べて片頭痛の予防的治療としての有意な利点を示している。
【0021】
ボツリヌス毒素A型は、12ヶ月まで(European J. Neurology 6 (Supp 4): S111-S1150:1999)、状況次第で27ヶ月もの長い間、有効性を有することができることが知られている。文献(Laryngoscope 109:1344-1346:1999)。しかしBotox(登録商標)の筋肉注射の通常の期間は典型的に、約3〜4ヶ月である。
【0022】
医薬組成物を含む市販のボツリヌス毒素は、商標BOTOX(登録商標)(カリフォルニア州アーバインのアラーガン社より入手可能)にて販売されている。BOTOX(登録商標)は、滅菌真空乾燥形態にてパッケージされた精製ボツリヌス毒素A型錯体、ヒト血清アルブミンおよび塩化ナトリウムからなる。ボツリヌス毒素A型は、N−Zアミンカゼインおよび酵母エキスを含む培地にて増殖したクロストリジウム・ボツリヌス菌のホール菌株の培養物から作られる。ボツリヌス毒素A型複合体は、一連の酸または酸およびエタノール沈殿による培養液から、活性な高分子量毒性タンパク質および関連血球凝集素タンパク質からなる結晶性複合体に精製される。結晶性複合体は、真空乾燥の前に、生理食塩水およびアルブミンを含む溶液に再溶解させ、滅菌ろ過(0.2ミクロン)する。BOTOX(登録商標)は、筋肉注射の前に滅菌非保存生理食塩水で再構成することができる。BOTOX(登録商標)の各バイアルは、滅菌真空乾燥形態にて、防腐剤なしでクロストリジウム・ボツリヌス毒素A型複合体約100ユニット(U)、ヒト血清アルブミン0.5ミリグラムおよび塩化ナトリウム0.9ミリグラムを含む。
【0023】
真空乾燥BOTOX(登録商標)を再構成するために、防腐剤なしの滅菌正常生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注射)を、適当な大きさのシリンジにて適切な量の希釈剤を作ることにより用いる。BOTOX(登録商標)をバブリングまたは同様の激しい撹拌により変性させるため、希釈剤をバイアルに穏やかに注射する。再構成BOTOX(登録商標)は、冷蔵庫(2℃〜8℃)内に保存することができ、無色透明液体であり、粒状物質不含である。30日までその有効性を保持した再構成BOTOX(登録商標)の報告がある。例えば文献(Guttman C., Botoxの冷凍保存後の眼瞼痙攣治療の有効性の保持, New York investigators find, EuroTimes 2000 Nov/Dec;5(8):16)を参照のこと。真空乾燥生成物を−5℃以下の冷凍庫にて保存する。
【0024】
一般に、C.ボツリヌスの4つの生理学的群が認識される(I、II、III、IV)。血清学的に区別される毒素を産生することができる有機物は、二つ以上の生理学的群に由来することができる。例えばB型およびF型毒素は、群Iまたは群IIからの菌株により産生され得る。さらにボツリヌス神経毒を産生し得る他のクロストリジウム種の菌株(C. baratii, F型; C.butyricum, E型; C. novyi, C型またはD型)が、同定されている。
【0025】
クロストリジウム・ボツリヌス菌型の生理学的群を第I表に記載する。
第I表.クロストリジウム・ボツリヌス菌の生理学的群
【表1】

これらの毒素型は、クロストリジウム・ボツリヌス有機物の適当な生理学的群からの選択により産生することができる。群Iとして示される有機物は通常、タンパク分解性として称され、A型、B型およびF型のボツリヌス毒素を産生する。群IIとして示される有機物は糖分解性であり、B型、E型およびF型のボツリヌス毒素を産生する。群IIIとして示される有機物はボツリヌス毒素C型およびD型のみを産生し、有意の量のプロピオン酸の産生により群IおよびIIの有機物から区別される。群IV有機物はG型の神経毒のみを産生する。
【0026】
実質的に動物性産物不含の特異的培地を用いて破傷風毒素が得られることが知られている。例えば米国特許6,558,926を参照のこと。しかしとりわけ、この特許に開示される「動物性産物不含」培地でさえ、肉製品消化物、バクトペプトン(Bacto-peptone)を用いる。有意なことに、破傷風菌による破傷風毒素の産生対クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアによるボツリヌス毒素の産生は、異なる成長、培地および発酵パラメータおよび検討事項を必要とする。例えば文献(Johnson, E.A., et al., クロストリジウム・ボツリヌス菌およびその神経毒:代謝および細胞の見込み, Toxicon 39 (2001), 1703-1722)を参照のこと。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
それゆえ生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るか、または産生するために必要なものは、動物由来タンパク質などの動物性産物不含または実質的に不含である培地および方法である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
概要
本発明は、この必要性に合い、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るか、または産生するために、動物由来タンパク質などの動物性産物が不含または実質的に不含である培地および方法を提供する。得られたボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素活性成分医薬組成物を製造するために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】「有効性およびpHに対するN源(すなわちHySoyプラスYE)%」という表題の図1は、(1)Y軸の左側にマウス致死量50(MLD50)(青色棒グラフ);および(2)Y軸の左側にSNAP25活性(赤色棒グラフ)として測定されるボツリヌス毒素活性を示すグラフであり、棒グラフの上部に示される経過発酵時間における種々のAPF培地のグラフであり、Y軸の右側のpHにAPF培地pHについて示し、X軸に重量%量の加水分解大豆濃縮物および酵母エキス濃縮物を含むAPF培地について示す。図1のすべての培地はまた、1重量%グルコースを含む。
【0030】
【図2】図2は、本発明の範囲内において、細胞バンク作成、培養および発酵工程を通してボツリヌス毒素を得るための非APF工程(図2の上半分)とボツリヌス毒素を得るためのAPF工程(図2の下半分)とを比較した概要フローチャートである。図2は、集菌工程および精製工程を省略する。
【0031】
【図3】図3は大豆タンパク質濃度のAPF発酵工程におけるボツリヌス毒素A型複合体産生への効果を比較したグラフであり、発酵培地は1重量%グルコースおよび1重量%の酵母エキスを含む。図3にてX軸は、特定の加水分解大豆タンパク質(HySoy)の発酵培地における重量%濃度を示し、Y軸の左側は、最終精製ボツリヌス毒素複合体の有効性を示し、Y軸の右側は、式: 細胞溶解(%)=(OD600max−OD600終点)×100/OD600max[式中、OD600maxは最大増殖時間にて600nmにて測定された光学密度に対応し、OD600終点は発酵集菌時間にて測定されたものである]により測定される完全な細胞溶解の百分率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本明細書において、以下の単語または用語は次の定義を有する。
【0033】
「約」は、限定された項目、パラメータまたは用語が規定の項目、パラメータまたは用語の値の±10%上下の範囲を包含することを意味する。
【0034】
「投与」または「投与すること」は、医薬組成物を対象に与える(すなわち投与する)工程を意味する。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば筋肉内(i.m.)、皮内、皮下投与、くも膜下投与、頭蓋内、腹腔内(i.p.)投与、局所(経皮)および投与の移植(すなわちポリマーインプラントまたはミニ浸透圧ポンプなどの遅延放出装置の)経路により「局所的に投与」される。
【0035】
「動物性産物不含」または「実質的に動物性産物不含」は、それぞれ「動物性タンパク質不含」または「実質的に動物性タンパク質不含」を包含し、血液由来、血液プールおよび他の動物由来産物または化合物がないか、または実質的にないことを意味する。「動物」は、哺乳類(ヒトなど)、鳥、は虫類、魚、昆虫、蜘蛛または他の動物種を意味する。「動物」はバクテリアなどの微生物を除外する。従って本発明の範囲内における、動物性産物不含の培地もしくは工程または実質的に動物性産物不含の培地もしくは工程としては、ボツリヌス毒素またはクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを挙げることができる。例えば動物性産物不含工程または実質的に動物性産物不含工程は、イムノグロブリン、肉消化物、肉製品副産物および牛乳または乳製品または消化物などの動物由来タンパク質が実質的に不含または本質的に不含または完全に不含である工程を意味する。従って動物性産物不含工程の例は、肉製品および乳製品または肉製品副産物もしくは乳製品副産物を除外する工程(バクテリア培養工程またはバクテリア発酵工程)である。
【0036】
「ボツリヌス毒素」は、クロストリジウム・ボツリヌス菌、ならびに改変、組換え、ハイブリッドおよびキメラのボツリヌス毒素により産生される神経毒を意味する。組換えボツリヌス毒素は、非クロストリジウム種により組換え的に製造されたその軽鎖および/または重鎖を有することができる。本明細書において「ボツリヌス毒素」は、ボツリヌス毒素抗原型A型、B型、C型、D型、E型、F型およびG型を包含する。本明細書において「ボツリヌス毒素」はまた、ボツリヌス毒素複合体(すなわち300、600および900kDa複合体)ならびに純粋なボツリヌス毒素(すなわち約150kDa神経毒性分子)の両方を包含し、これらはすべて本発明の実践に有用である。「精製ボツリヌス毒素」は、培養工程または発酵工程から得られるようなボツリヌス毒素を伴うことができる他のタンパク質および不純物から単離または実質的に単離される純粋なボツリヌス毒素またはボツリヌス毒素複合体を意味する。従って、精製ボツリヌス毒素は、少なくとも90%、好ましくは95%以上および最も好ましくは99%以上の非ボツリヌス毒素タンパク質を有することができ、不純物は除去される。神経毒でないボツリヌス菌CおよびC細胞毒素は、本発明の範囲から除外される。
【0037】
「クロストリジウム神経毒」は、クロストリジウム・ボツリヌス菌、酪酸菌またはウェルシュ類似菌(Clostridium beratti)などのクロストリジウム・バクテリアから産生されるか、またはこれらを原産とする神経毒、ならびに非クロストリジウム種により組換え的に作られたクロストリジウム神経毒を意味する。
【0038】
「完全に不含」(すなわち用語「からなる」)は、用いられる器具または工程の検出範囲内にて、物質が検出されないか、またはその存在が確認できないことを意味する。
【0039】
「本質的に不含」(または「本質的に〜からなる」)は、微量の物質のみが検出できることを意味する。
【0040】
「改変ボツリヌス毒素」は、天然ボツリヌス毒素と比較して、その削除、改変または置換されたアミノ酸の少なくとも一つを有しているボツリヌス毒素を意味する。さらに、改変ボツリヌス毒素は、組換え的に産生された神経毒または組換え的に製造された神経毒の誘導体もしくはフラグメントであることができる。改変ボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素レセプターに結合する能力または神経伝達物質のニューロンからの放出を阻害する能力などの天然ボツリヌス毒素の少なくとも一つの生物学的活性を保持する。改変ボツリヌス毒素の一つの例は、一つのボツリヌス毒素抗原型(抗原型Aなど)からの軽鎖および異なるボツリヌス毒素抗原型(抗原型Bなど)からの重鎖を有するボツリヌス毒素である。改変ボツリヌス毒素の別の例は、P物質などの神経伝達物質に結合したボツリヌス毒素である。
【0041】
「患者」は、医学的または獣医学的介護を受けるヒトまたは非ヒト対象を意味する。従って本明細書に開示されるように、組成物は、哺乳類などのいずれかの動物の治療に用いることができる。
【0042】
「医薬組成物」は、活性成分がボツリヌス毒素であることができる製剤を意味する。単語「製剤」は、神経毒活性成分に加えて医薬組成物中に少なくともさらに一つ成分(アルブミンおよび/または塩化ナトリウムなど)があるものを意味する。それゆえ医薬組成物は、ヒト患者などの対象への診断的、治療的または美容的投与(すなわち筋肉注射もしくは皮下注射またはデポーもしくはインプラントの挿入による)に適切な製剤である。医薬組成物は、凍結乾燥または真空乾燥された状態;凍結乾燥または真空乾燥された医薬組成物を生理食塩水または水と再構成した後形成される溶液;または再構成を必要としない溶液であることができる。活性成分は、ボツリヌス毒素抗原型A型、B型、C型、D型、E型、F型もしくはG型の一つまたはボツリヌス毒素であることができ、これらはすべてクロストリジウム・バクテリアにより自然に作ることができる。このように、医薬組成物は、例えば真空乾燥した液体または固体であることができる。医薬組成物の構成成分は、単一の組成物(すなわち、いずれかの必要な再構成流動物を除いて、すべての構成成分は、医薬組成物の初期配合時に存在する)にて、または二成分系、例えば生理食塩水などの希釈剤(ここに、希釈剤は医薬組成物の初期配合時に存在しない成分を含む)で再構成された真空乾燥組成物として含むことができる。二成分系は、長期間の棚保存の間、二成分系の第一成分と十分に適合できない成分の組み込みを可能にする利点を提供する。例えば再構成ビヒクルまたは希釈剤としては、例えば冷凍保存の一週間の使用期間の間、微生物増殖に対する十分な保護を提供するが、毒素を分解する2年間の冷凍庫保存の間には無くなる、防腐剤を挙げることができる。長期間、クロストリジウム毒素または他の成分と適合することができない他の成分を、本法に組み込むことができる;すなわち、およその使用時間にて第二ビヒクル(すなわち再構成流動物)にて加える。ボツリヌス毒素活性成分医薬組成物を製剤化する方法は、米国特許公報2003 0118598 A1に開示される。
【0043】
「実質的に不含」は、1重量%未満のレベルにて医薬組成物が存在することを意味する。
【0044】
「治療用製剤」は、治療に用いられ、それにより、末梢筋の活動過剰(すなわち痙縮)により特徴付けられる障害または疾患などの障害または疾患を緩和することができる製剤を意味する。
【0045】
本発明は、少なくとも減少したレベルの動物性副産物または乳製品副産物を含有し、好ましくは動物性副産物または乳製品副産物が実質的に不含である培地を提供する。「動物性副産物または乳製品副産物」は、動物性(バクテリアを除く)細胞中または動物性細胞により、インビボまたはインビトロにて産生されたいずれかの化合物または化合物の組合せを意味する。タンパク質、アミノ酸および窒素などの培地成分の好ましい非動物性源としては、植物、微生物(酵母など)および合成化合物が挙げられる。
【0046】
本発明はまた、動物性副産物または乳製品副産物が実質的に不含である少なくとも一つの培地を用いてボツリヌス毒素を得るための方法も提供する。例えばボツリヌス毒素は、実質的に動物性副産物不含である発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養することにより得ることができる。
【0047】
本発明はまた、実質的に動物性産物不含であり、植物由来産物を含有する発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養することにより得られるボツリヌス毒素を包含する。さらにボツリヌス毒素は、実質的に動物性産物不含であり、いくつかの大豆から作られた産物を含有する発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養することにより得ることができる。
【0048】
別の好ましい具体的態様にて、ボツリヌス毒素は、実質的に動物性産物不含であり、動物由来産物の代替として加水分解大豆を含む発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養することにより得ることができる。好ましくは、発酵培地中の増殖は、少なくとも細胞溶解が起こるまで進行する。発酵培地の植菌に用いられるクロストリジウム・ボツリヌス菌源は、クロストリジウム・ボツリヌス菌を含む種培地から得ることができる。好ましくは、種培地にて増殖し、発酵培地のための接種菌として用いられるクロストリジウム・ボツリヌス菌は、その指数関数的増殖相におけるものである。種培地の植菌に用いられるクロストリジウム・ボツリヌス菌源は、凍結乾燥培養物から得ることができる。クロストリジウム・ボツリヌス菌は、動物性乳または豆乳における培養物として凍結乾燥することができる。好ましくは、クロストリジウム・ボツリヌス菌は、豆乳中の培養物として凍結乾燥する。
【0049】
本発明はまた、クロストリジウム・ボツリヌス菌を培養するための実質的に動物由来産物不含の培地を含有する組成物も提供する。
【0050】
ある具体的態様にて、組成物は、実質的に動物由来産物不含であるが、非動物性源に由来する少なくとも一つの産物を含む培地を含有し、クロストリジウム・ボツリヌス菌もまた含有する。
【0051】
別の具体的態様にて、組成物は、実質的に動物由来産物不含であるが、植物に由来する少なくとも一つの産物を含む培地を含有し、クロストリジウム・ボツリヌス菌もまた含有する。本発明のさらなる具体的態様は、実質的に動物由来産物不含であるが、大豆由来の少なくとも一つの産物を含む培地を含有し、クロストリジウム・ボツリヌス菌もまた含有する組成物であることができる。
【0052】
本発明としては、(1)発酵培地(該発酵培地は、少なくとも実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する)を準備し;(2)ボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ;そして(3)生物学的に活性なボツリヌス毒素を該発酵培地から回収することにより、生物学的に活性なクロストリジウム毒素(APF培地中のボツリヌス菌神経毒など)を得るための方法が挙げられる。本法にて、発酵培地としてはまた、約0〜3重量%の酵母エキスおよび約0.5〜5重量%のグルコースを挙げることもできる。好ましい発酵培地としては、約1〜2重量%のグルコースが挙げられる。発酵工程は、約5.0〜5.5のpHにて約45時間〜約75時間、約33℃〜36℃の温度にて嫌気性雰囲気下、実行することができる。
【0053】
生物学的に活性なクロストリジウム毒素を得るための本方法は、(発酵培地を準備する上記工程(1)の前に)(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する培地を得、そして(b)培地中のクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを培養する、さらなる二つの工程を含むことができる。
【0054】
有意なことに、発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収する本法における工程(3)は、APF精製工程であるか、またはこれを含むことができる。
【0055】
生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための本法の詳細な具体的態様は、
(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する培地を得、該培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを培養し;
(b)実質的に動物由来産物不含であり、
(i)約4〜8重量%の大豆誘導体、
(ii)約0〜3重量%の酵母エキス、
(iii)約1〜2重量%のグルコース
を含有する発酵培地を準備し、
(c)(i)約5.0〜5.5のpHにて発酵工程を行い、
(ii)約45時間〜75時間の発酵工程を行い、
(iii)約33℃〜36℃の温度にて発酵工程を行い、
(iv)嫌気性雰囲気下、発酵工程を行う
などのボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ、そして
(d)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収(ここに、回収工程はAPF精製工程である)する
工程を含むことができる。
【0056】
本発明はまた、ボツリヌス毒素を培養するか、または発酵させる培地(ここに、培地は、実質的に動物由来産物不含であり、植物に由来するタンパク質産物を含有する)も含む。培地は、約4〜8重量%の大豆誘導体、約0〜3重量%の酵母エキスおよび約1〜2重量%のグルコースを含有することができる。
【0057】
本発明はまた、
(a)(i)実質的に動物由来産物不含である発酵培地を準備し;
(ii)ボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養し;そして
(iii)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収する
ことにより生物学的に活性なボツリヌス毒素を得;
(b)ボツリヌス毒素と適切な賦形剤とを配し、それにより実質的に動物性産物不含医薬組成物(ここに、活性成分はボツリヌス毒素である)を製造する
ことを特徴とする、実質的に動物性産物不含医薬組成物(ここに、活性成分はボツリヌス毒素である)を製造する方法を包含する。
【0058】
さらに本発明はまた、(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する発酵培地を準備し;(b)該発酵培地(ここに、発酵培地はpH5.0〜5.5のpHにて維持されている)中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ;そして(c)生物学的に活性なボツリヌス毒素を該発酵培地から回収することにより、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための方法を包含する。
【0059】
最後に、本発明はまた、クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリア毒素を培養し、および/または発酵させる動物性タンパク質不含培地を包含する。好ましい培地は、実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体;約0〜3重量%の酵母エキス;および約1〜2重量%のグルコースを含有する。
【0060】
図面
本発明の態様は、以下の図面により説明し、または例示する。
【0061】
記載
本発明は、生物学的に活性なボツリヌス毒素を産生することが可能な有機物(クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアなど)の培養および発酵に有用な動物性産物または動物性副産物が不含であるか、または実質的に不含である培地および工程の発見に基づく。得られたボツリヌス毒素は、ボツリヌス毒素活性成分医薬組成物を製造するために用いることができる。従って、有意に減少したレベルの肉製品または乳製品副産物を有する増殖培地が、本明細書にて開示され、好ましい培地の具体的態様は、そのような動物性産物が実質的に不含である。
【0062】
本発明は、動物から作られた産物がクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための培地に必要でなく、特に植物から作られた産物がクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための培地中にて典型的に用いられる動物から作られた産物に代わることができる驚くべき発見を包含する。
【0063】
バクテリアの増殖および発酵に現在用いられる培地は通常、一つ以上の動物由来成分、例えばクックドミートを含有する。本発明に従い、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための好ましい培地は、培地の総重量のわずか約5〜約10%からなる動物由来成分を含む。より好ましくは、本発明の範囲内の培地は、培地の総重量のわずか約1〜約5%未満の動物由来産物を含有する。最も好ましくは、ボツリヌス毒素の産生のためのクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖に有用なすべての培地および培養物は、完全に動物由来産物不含である。これらの培地としては、クロストリジウム・ボツリヌス菌の小スケールおよび大スケールの発酵のための培地、種(第一)培地および発酵(第二)培地を植菌するために用いられるクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養物の増殖のための培地、ならびにクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養物の長期保存に用いられる培地(例えば保存培養)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明のある好ましい具体的態様にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖およびボツリヌス毒素の産生のための培地は、大豆から作られた産物を含有し、動物由来産物と置き換えることができる。あるいは、大豆から作られた産物の代わりに、ルピナス・キャンペストリス(Lupinus campestris)の脱苦味性種を用いることができる。ルピナス・キャンペストリス種のタンパク質含有量は大豆のものと非常に類似であることが知られている。好ましくは、これらの培地としては、加水分解され、水溶性である大豆またはルピナス・キャンペストリス由来産物が挙げられる。しかし、不溶性大豆またはルピナス・キャンペストリス産物はまた、本発明にて動物性産物に置き換えて用いることができる。大豆またはルピナス・キャンペストリス産物により置き換えることができる一般的動物由来産物としては、ウシ心臓浸出液(BHI)、バクトペプトンなどの動物由来ペプトン産物、加水分解カゼイン、および動物乳などの乳製品副産物が挙げられる。
【0065】
クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための大豆またはルピナス・キャンペストリスから作られた産物を含む好ましい培地は、実質的にすべての動物由来産物を植物由来産物で置き換える場合を除き、動物由来産物を含む一般に用いられる増殖培地に類似する。例えば大豆から作られた発酵培地は、大豆から作られた産物、グルコースなどの炭素源、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩含有成分、鉄およびマグネシウムなどの二価カチオン、鉄粉、およびL−システインおよびL−チロシンなどのアミノ酸を含有することができる。発酵(第二)培地の植菌(すなわち種培地または第一培地)のためのクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養物を増殖させるために用いられる培地は好ましくは、少なくとも大豆から作られた産物、塩化ナトリウムなどの塩源、およびグルコースなどの炭素源を含む。
【0066】
本発明は、実質的に動物由来産物不含である培地を用いて、ボツリヌス毒素の産生を最大化するクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための方法を提供する。ボツリヌス毒素の産生のためのクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖は、動物性副産物由来の成分を置き換える大豆副産物を含む培地における発酵により生じ得る。発酵培地のための植菌は、より小スケールの増殖培地(種培地)に由来することができる。発酵工程の大きさおよび容積に応じて、培養のバイオマスを増大させるための種培地における連続する増殖数は変化することができる。発酵培地を植菌するための適切な量のクロストリジウム・ボツリヌス菌を増殖するために、種培地における増殖を含む一つ以上の工程を実行することができる。動物由来産物不含のクロストリジウム・ボツリヌス菌を増殖する方法のために、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖は非動物由来培地に保存される培養物に由来することが好ましい。保存培養、好ましくは凍結乾燥されたものは、大豆由来タンパク質を含み、動物性副産物を含まない培地における増殖により産生される。発酵培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖は、凍結乾燥保存培養物からの直接の植菌により行うことができる。
【0067】
本発明の好ましい具体的態様にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖は、二相種増殖および発酵に進む。これら両相は、嫌気性環境下にて行う。種増殖相は一般に、保存培養からの微生物の量を「スケールアップ」するために用いられる。種増殖相の目的は、発酵に使用可能な微生物の量を増大することである。さらに種増殖相は、保存培養における相対的に休止状態の微生物を、有効に増殖する培養にて活性化させ、増殖させることが可能である。さらに、発酵培養物を植菌するために用いられる一般微生物の容積および量は、保存培養よりも有効に増殖する培養からより正確に制御することができる。従って、発酵培地の植菌のための種培養の増殖が好ましい。さらに、発酵培地の植菌のためのクロストリジウム・ボツリヌス菌の量をスケールアップさせるための種培地における増殖などの連続的工程をいくつでも用いることができる。発酵相におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖が直接の植菌により保存培養から直接進行することができることに留意する。
【0068】
発酵相にて、種増殖からのクロストリジウム・ボツリヌス菌を含む種培地の一部またはすべての種培地は、発酵培地を植菌するために用いられる。好ましくは、種増殖相からのクロストリジウム・ボツリヌス菌を有する約2〜4%の種培地は、発酵培地を植菌するために用いられる。発酵は大スケールの嫌気性環境における最大量の微生物を産生するために用いられる(文献(Ljungdahl et al., Manual of industrial microbiology and biotechnology (1986), edited by Demain et al, American Society for Microbiology, Washington, D.C. page. 84))。
【0069】
ボツリヌス毒素は、タンパク質精製分野における当業者によく知られているタンパク質精製方法を用いて単離および精製することができる。例えば文献(Coligan et al. Current Protocols in Protein Science, Wiley&Sons; Ozutsumi et al. Appl. Environ. Microbiol. 49;939-943:1985)を参照のこと。
【0070】
ボツリヌス毒素の産生のために、クロストリジウム・ボツリヌス菌の培養は、発酵培地の植菌のための種培地において増殖させることができる。種培地における増殖を含む連続的工程の数は、発酵相におけるボツリヌス毒素の産生のスケールに応じて変化することができる。しかし前述のように、発酵相における増殖は保存培養からの植菌から直接進行することができる。動物から作られた種培地は一般に、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のためのBHI、バクトペプトン、塩化ナトリウムおよびグルコースからなる。前述のように、代替の種培地は、動物から作られた成分が非動物性成分に置き換えられるように本発明に従って調製することができる。例えば大豆から作られた産物は、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖およびボツリヌス毒素の産生のための種培地におけるBHIおよびバクトペプトンに置き換えることができるが、これに限定されない。クロストリジウム・ボツリヌス菌の培養は不溶性大豆を含む培地にて増殖することができるが、好ましくは、大豆から作られた産物は水に可溶であり、加水分解された大豆を含有する。しかし増殖および続く毒素産生のレベルは、可溶性大豆産物由来培地にてより大きくなる。
【0071】
大豆から作られた産物のいずれかの源は、本発明に従って使用することができる。好ましくは、大豆は加水分解された大豆であり、加水分解は非動物性酵素を用いて実行される。加水分解された大豆源は、種々の商業業者から入手可能である。これらとしては、Hy-Soy (Quest International), Soy peptone (Gibco) Bac-soytone (Difco), AMISOY (Quest), NZ soy (Quest), NZ soy BL4, NZ soy BL7, SE50M (DMV International Nutritionals, Fraser, N.Y.)およびSE50MK (DMV)が挙げられるが、これらに限定されない。最も好ましくは、加水分解された大豆源は、Hy-SoyまたはSE50MKである。加水分解された大豆の他の潜在的な源が知られている。
【0072】
本発明による種培地におけるHy−Soyの濃度は、25〜200g/Lの範囲である。好ましくは種培地におけるHy−Soyの濃度は、50〜150g/Lの範囲である。最も好ましくは、種培地におけるHy−Soyの濃度は、約100g/Lである。さらに塩化ナトリウムの濃度は、0.1〜2.0g/Lの範囲である。好ましくは塩化ナトリウムの濃度は、0.2〜1.0g/Lの範囲である。最も好ましくは種培地における塩化ナトリウムの濃度は、約0.5g/Lである。グルコースの濃度は、0.1g/L〜5.0g/Lの範囲である。好ましくはグルコースの濃度は、0.5〜2.0g/Lの範囲である。最も好ましくは、種培地におけるグルコースの濃度は、約1.0g/Lである。グルコースを種培地の他の成分と一緒にオートクレーブ処理することにより滅菌することもまた好ましいが、本発明に必須ではない。種培地の増殖前のpHレベルは7.5〜8.5であることができる。例えば種培地のクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖前のpHは、約8.1であることができる。
【0073】
種培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖は、一つ以上の段階にて進行することができる。好ましくは、種培地における増殖は二段階にて進行する。段階1にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の培養は、種培地の量にて懸濁され、嫌気性環境下34±1℃にて24〜48時間インキュベートされる。好ましくは、段階1における増殖は約48時間進行する。段階2にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌を含む一部またはすべての段階1の培地は、さらなる増殖のための段階2種培地を植菌するために用いられる。植菌後、段階2培地は、嫌気性環境下にも34±1℃にて約1〜4日間インキュベートされる。好ましくは段階2種培地における増殖は、約3日間進行する。いずれかの段階の種培地における増殖が、種培地における最終増殖を伴い、発酵培地の植菌前の細胞溶解を生じないこともまた好ましい。
【0074】
クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のための動物性副産物を含む標準発酵培地は、ミューラー(Mueller)およびミラー(Miller)の文献(MM; J. Bacteriol. 67:271, 1954)のレシピに基づくことができる。動物性副産物を含むMM培地における成分としては、BHIおよびNZ−CaseTTが挙げられる。NZ−CaseTTは、動物性乳で見られるタンパク質の群であるカゼインの酵素的消化に由来する市販のペプチド源およびアミノ酸源である。本発明は、非動物性産物が発酵培地におけるBHIおよびNZ−CaseTTに置き換えることができることを示す。例えば大豆から作られた産物で、クロストリジウム・ボツリヌス菌の発酵に用いられるMM培地の動物から作られた成分を置き換えることができるが、これに限定されない。前述のように、不溶性大豆産物もまた、本発明を実践するために用いることができるが、好ましい大豆から作られた産物は水溶性であり、加水分解された大豆に由来する。
【0075】
大豆から作られた産物のいずれかの源は、本発明に従い、用いることができる。好ましくは、加水分解された大豆は、商標名Hy-SoyにてQuest International (Sheffield)から、または商標名SE50MKにてDMV International Nutritionals (Fraser, N.Y.)から得られる。可溶性大豆産物はまた、Soy peptone (Gibco) Bac-soytone (Difco), AMISOY (Quest), NZ soy (Quest), NZ soy BL4, NZ soy BL7およびSE50MK (DMV International Nutritionals, Fraser, N.Y.)を含むが、これらに限定されない種々の源からも得ることができる。
【0076】
本発明の別の好ましい具体的態様にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の発酵に用いられる培地は、動物性副産物不含であり、加水分解大豆、グルコース、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸マグネシウム七水和物、リン酸二水素カリウム、L−システイン、L−チロシンおよび粉末鉄を含有する。種培地について開示されるように、加水分解大豆により、発酵培地における動物性副産物を置き換えることができる。これらの動物性副産物としては、BHIおよびNZ−CaseTT(酵素学的に消化されたカゼイン)が挙げられる。
【0077】
ボツリヌス毒素の産生のための発酵培地におけるHy−Soyの濃度は好ましくは、約10〜100g/Lの範囲である。好ましくはHy−Soyの濃度は、約20〜60g/Lの範囲である。最も好ましくは、発酵培地におけるHy−Soyの濃度は、約35g/Lである。ボツリヌス毒素の最大産生のために、発酵培地における成分の特に好ましい濃度は、グルコース約7.5g/L;塩化ナトリウム5.0g/L;リン酸水素二ナトリウム0.5g/L;リン酸二水素カリウム175mg/L;硫酸マグネシウム七水和物50mg/L;L−システイン125mg/L;およびL−チロシン125mg/Lである。用いられる粉末鉄の量は、50mg/L〜2000mg/Lの範囲であることができる。好ましくは、粉末鉄の量は、約100mg/L〜1000mg/Lの範囲である。最も好ましくは、発酵培地にて用いられる粉末鉄の量は、約200mg/L〜600mg/Lの範囲である。
【0078】
毒素産生の最適レベルについて、大豆から作られた発酵培地の初期pH(オートクレーブ処理前)は、好ましくは約5.0〜7.1の範囲である。pH制御がボツリヌス毒素回復を改善することを発見した。発酵培地の好ましい初期pHは約pH7である。実施例7にて説明されるように、その後pHが減少し、pH5〜5.5を維持するならば、高収率の安定ボツリヌス毒素を得ることができることを発見した。種培地について記載されているように、グルコースおよび鉄などの発酵培地の成分は好ましくは、滅菌のために一緒にオートクレーブ処理する。
【0079】
好ましくは、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖に用いられる第二段階種培地の一部を、発酵培地を植菌するために用いる。発酵は嫌気性チャンバー中、約34±1℃にて約7〜9日間起こる。バクテリア増殖は、培地の光学密度(O.D.)を測定することによりモニターすることができる。発酵は好ましくは、増殖測定(光学密度)により測定されるように、細胞溶解が少なくとも48時間進行した後、停止させる。細胞が溶解するにつれて、培地のO.D.は減少する。
【0080】
本発明の好ましい具体的態様にて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の長期保存に用いられるクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養物および種培地の植菌を増殖させ、4℃における保存前に大豆乳中にて凍結乾燥させる。保存のために凍結乾燥させる動物性乳中のクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養はまた、ボツリヌス毒素の産生に用いることができる。しかし、ボツリヌス毒素の産生の間中、実質的に動物性副産物不含である培地を維持するために、クロストリジウム・ボツリヌス菌の初期培養は動物性乳でなく、大豆乳中で保存することが好ましい。
【実施例】
【0081】
実施例
次の実施例は、本発明により包含される具体的な方法を記載し、本発明の範囲を限定するものではない。クロストリジウム・ボツリヌス菌培養物は、カリフォルニア州キャンベルのリスト研究所などのいくつかの業者より得ることができる。以下のすべての実施例において、「クロストリジウム・ボツリヌス菌」は、クロストリジウム・ボツリヌス菌A型のホールA(ATCC指定番号3502)菌株を意味する。
【0082】
実施例1
クロストリジウム・ボツリヌス菌についての動物性産物不含種培地の調製
対照種培地は、それぞれの培地1リットルごとに次の成分を用いて調製することができる:塩化ナトリウム5g、バクトペプトン10g、グルコース10g、BHI(1リットルまで)、pH8.1(5N水酸化ナトリウムで調節)。
【0083】
試験(動物性産物不含)種培地は、それぞれの培地1リットルごとに次の成分を用いて調製することができる:塩化ナトリウム5g、大豆ペプトン10g、グルコース10g、Hy−Soy(35g/リットル、流動性培地1リットル調製のため)、pH8.1(5N水酸化ナトリウムで調節)。
【0084】
実施例2
動物性産物不含種培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の培養
クロストリジウム・ボツリヌス菌の凍結乾燥培養は、それぞれ1mlの実施例1の対照および試験種培地に懸濁させ、各種培地10mlを含むことができる二つのチューブに分け(種培地ごと)、次いで34℃にて約24〜48時間インキュベートすることができる。次いで培養物1mlを、種培地40ml(それぞれ)を含む125mlDeLong Bellco培養フラスコを植菌するために用いることができる。植菌された培養物は、Coy Anaerobicチャンバー(Coy Laboratory Products Inc., Grass Lake, Mich.)中33℃±1℃にて24時間インキュベートすることができる。
【0085】
実施例3
クロストリジウム・ボツリヌス菌のための動物性産物不含発酵培地の調製
基本発酵培地は、それぞれの培地2リットルごとに次の成分を用いて調製することができる:グルコース15g、塩化ナトリウム10g、硫酸水素二ナトリウム1g、硫酸水素カリウム0.350g、硫酸マグネシウム七水和物0.1g、システイン−HC 0.250g、チロシン−HCl 0.250g、粉末鉄1g、塩化亜鉛0.250gおよび塩化マンガン0.4g。
【0086】
対照発酵培地は、それぞれの調製培地2リットルごとに次の成分を用いて調製することができる:BHI(500ml;乾燥重量のウシ心臓浸出液約45.5グラムに対応する)、NZ−CaseTT30gおよび基本培地(2リットルまで)、pH6.8。
【0087】
基本発酵培地をまず調製することができ、これはpH6.8に調節したpHである。次いでウシ心臓浸出液(BHI)BHIを調製することができ、これは5N水酸化ナトリウムで0.8に調節したpHである。次いでBHIを基本培地に加えることができる。次にNZ−CaseTTを調製することができる。次いでNZ−CaseTTをウシ心臓浸出液がすでに加えられている基本培地に加え、塩酸の付加により溶解させる。次いでpHは5N水酸化ナトリウムで6.8に調節することができる。次いでこの培地は16の100mm試験管ごとに8mlに分けた後、120℃にて25分間オートクレーブ処理することができる。
【0088】
試験発酵培地(動物性産物不含)は、試験窒素源を対照発酵培地に存在するBHIに置き換えることにより調製することができる。適切な試験発酵培地窒素源としては:Hy-Soy (Quest)、AMI-Soy (Quest)、NZ-Soy (Quest)、NZ-Soy BL4 (Quest)、NZ-Soy BL7 (Quest)、Sheftone D (Sheffield)、SE50M (DMV)、SE50 (DMV)、SE%)MK (DMV)、大豆ペプトン (Gibco)、Bacto-Soyton (Difco)、Nutrisoy 2207 (ADM)、Bakes Nutrisoy (ADM) Nutrisoy flour、大豆ミール、バクト−酵母エキス (Difco) 酵母エキス (Gibco)、Hy-Yest 412 (Quest)、Hy-Yest 441 (Quest)、Hy-Yest 444 (Quest)、Hy-Yest (455 (Quest) バクト−麦芽エキス (Difco)、Corn SteepおよびProflo (Traders)が挙げられる。
【0089】
試験発酵培地は、BHIを除外することを除き、対照発酵培地について上記のように調製することができ、関連窒素源はまず、3N塩酸または5N水酸化ナトリウムでpH6.8に調節することができる。培地は16の100mm試験管に8mlに分け、次いで120℃にて20〜30分間オートクレーブ処理することができる。
【0090】
実施例4
動物性産物不含発酵培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖
試験種培地培養物(動物性産物不含)40μl分を、8ml 16×100mm試験管に各8mlの対照または試験発酵培地アリコートを植菌するために用いることができる。次いで培養物を33±1℃にて24時間インキュベートすることができる。次いでチューブをバクテリアの増殖を可能にするために嫌気性チャンバー中にてインキュベートすることができる。各培地アッセイは、三重に行うことができ(すなわち同じ培地の三つの独立した植菌を含むことができる)、非植菌対照を含むこともでき、これは分光光度計のためのブランクとして用いることができる。増殖(光学密度、ODにより測定される)は、ターナー(Turner)分光光度計(モデル330)で660nmにて24時間ごとに測定することができる。細胞溶解が約48時間続いた後に培養は終わるべきであり、次いでボツリヌス毒素産生を測定することができる。
【0091】
さらなる実験は、培地500mlごとに次の成分を含むHy−Soy発酵培地で行うことができる:Hy−Soy17.5g、グルコース3.75g;塩化ナトリウム2.5g;リン酸水素二ナトリウム0.25g、硫酸マグネシウム七水和物0.025g、リン酸二水素カリウム0.0875g、L−システイン0.0625g、L−チロシン0.0625g、粉末鉄0.25g、pH6.8。
【0092】
実施例5
動物性産物不含発酵培地にて増殖したクロストリジウム・ボツリヌス菌によるボツリヌス毒素産生の測定
実施例4の培養細胞を遠心分離し、次いで上清のpHを測定することができる。与えられたサンプルにおけるボツリヌス毒素のレベルは、標準抗毒素を加え、凝集前の経過時間を測定することにより測定することができる。Kf(凝集が起こるのに要する時間(分))およびLf(凝集の上限;凝集により確立される1国際単位の標準抗毒素と等価)の両方を測定することができる。発酵培養液4mlを、与えられた培養物のための各発酵チューブから取り出すことができ、全12mlを15ml遠心分離管中にて混合することができるように一緒にすることができる。チューブは4℃にて30分間5000rpm(3400g)にて遠心分離することができる。上清のアリコート1mlを標準ボツリヌス毒素抗血清0.1〜0.6mlを含むチューブに加え、注意深く振盪してその内容物を混合させることができる。次いでチューブを水浴中45±1℃に置き、初期時間を記録することができる。チューブを頻繁にチェックし、凝集が開始される時間をKfとして記録することができる。凝集が最初に開始されるチューブ中の毒素の濃度はLfFFと表すことができる。凝集が二番目に開始されるチューブ中の毒素の濃度はLfFと表すことができる。
【0093】
並列発酵、増殖および毒素産生アッセイは、次の両方を行うことができる:(a)対照種培地(対照発酵培地を植菌するために用いられる)および対照発酵培地、および;(2)(動物性産物不含)試験種培地(試験発酵培地を植菌するために用いられる)および(動物性産物不含)試験発酵培地。有意に、動物性産物不含であり、動物性産物不含(動物性産物を大豆から作られた産物で置き換える)培養物から植菌された培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌の発酵が約50以上のLf毒素を生じることができることを測定することができる。最低限、Lf毒素は約10に等しい。好ましいLf毒素は少なくとも20である。最も好ましいLf毒素は50より大きい。
【0094】
さらに、種々の大豆産物がBHI欠損発酵培地におけるクロストリジウム・ボツリヌス菌増殖を補助することを測定することができる。従って可溶性大豆調製物で、クロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖のためにBHIを置き換えることができる。最良の濃度は、12.5または25g/Lであることができる。Hy−Soy(Sheffield)は最も高い増殖を与えることができる。不溶性大豆調製物は有効性が低いものであり得る。
【0095】
さらに、Quest Hy−Soy、DMV SE50MKおよびQuest NZ−Soyが、クロストリジウム・ボツリヌス菌増殖のためにBHIを置き換える能力に関して有効な大豆産物であることができることを示す結果を得ることができる。増殖に最適な大豆産物(Quest Hy−Soy、DMV SE50MKおよびQuest NZ−Soyなど)は、毒素産生のためにBHIを置き換える際にも有効であり得るという結果を明らかにすることができる。毒素産生に最良の大豆産物は22.75g/lにおけるQuest Hy−Soyであることができる。より高い濃度のこの産物はより良い増殖を生じるが、毒素産生を改善することができない。SE50MKにより類似の結果を得ることができ、これはより高い濃度が増大した増殖を生じることができるが、毒素産生を増大しないことを示す。一方、NZ−Soyはそのより高い濃度にてより高い増殖およびより高い毒素産生を与えることができる。
【0096】
最終的に、大豆産物はBHIならびにNZ−CaseTTを有効に置き換えることができることを決定することができる。NZ−CaseTTの大豆から作られた培地からの除去は約2〜4倍の増殖を減少することができる。NZ−CaseTTの存在下および非存在下の両方における増殖のための最良の大豆産物は、SE50MKであることができる。HY−SoyでBHIおよびNZ−CaseTTの両方を毒素産生のために置き換えることができる。しかし1日または2日のより長い発酵サイクルが必要であることがある。HY−Soyで培地におけるBHIおよびNZ−CaseTTの両方を毒素産生のために置き換えることができる。しかし酵母エキスは毒素産生に抑制的であることができることを測定することができる。
【0097】
22.75g/lのHY−Soyで、BHIおよびHY−CaseTTの両方を毒素産生のために完全に置き換えることができることを測定することができる。56.88g/lのHY−Soyが最良であることができる増殖における効果と違って、34.13g/lのHY−Soyは毒素産生相について最良であることができる。
【0098】
従って驚くべきことに、Hy−Soyまたは[Hy−Soy+Hy−Yest]で、培地におけるBHIおよびバクトペプトンをクロストリジウム・ボツリヌス菌の種増殖について置き換えることができるかどうかが測定された。さらに、クロストリジウム・ボツリヌス菌による最大レベルのボツリヌス毒素産生を産生するために、実験を設計し、種培地における成分の最適濃度を測定することができる。BHIおよびNZ−CaseTT不含の種培地および発酵培地にて増殖したクロストリジウム・ボツリヌス菌による毒素産生は、BHIおよびNZ−CaseTTを含む培地にて達成するレベルに達するか、またはそれを超えることができる。
【0099】
種培地における増殖についてのHy−Soyまたは[Hy−Soy+Hy−Yest]の最適濃度を測定することができる。Hy−Soyで種培地中の窒素源としてのBHIおよびバクトペプトンをクロストリジウム・ボツリヌス菌の増殖および続く発酵相におけるボツリヌス毒素の産生について置き換えることができることを実験により確認することができる。さらに、Hy−SoyプラスHy−Yestと比較して、種培地における窒素源としてのHy−Soyは、続く発酵工程におけるより高いレベルのボツリヌス毒素を産生することができる。最良のレベルの毒素を産生する種培地におけるHy−Soyの濃度は約62.5g/L〜100g/Lの範囲である。
【0100】
さらなる実験は、発酵によるクロストリジウム・ボツリヌス菌によるボツリヌス毒素の最大産生量についての種培地におけるHy−Soyの最適濃度を決定するために設計することができる。従って種培地における30g、50g、75gおよび100gのHy−Soyはすべて、クロストリジウム・ボツリヌス菌の発酵によりボツリヌス毒素の産生を生じることができ、これは窒素源としてBHIおよびバクトペプトンを含む種培地にて作られるボツリヌス毒素のレベルと同程度またはそれを超えている。
【0101】
種培地中100g/Lの濃度のHy−Soyが続く発酵工程における最も高いレベルの毒素産生を生じたことを見出すことができる。さらにHy−Soy種培地の播種工程1は、24時間後よりも48時間後により大きい増殖を産生したことをデータは示す。
【0102】
実施例6
ボツリヌス毒素を得るための非APF工程
クロストリジウム毒素は、クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアの発酵により得た。従って改変シャンツ(非APF)工程は、次のように高有効性および高精製クロストリジウム・ボツリヌス毒素(すなわちバルク毒素)を得るために行った。改変シャンツ(非APF)工程は高収率のボツリヌス毒素を提供することができる。シャンツおよび改変シャンツ工程の両方は、すべての発酵培地中にてカゼインを用いる。
【0103】
保存培養調製
種々のクロストリジウム・バクテリアは、バージニア州マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能である。あるいは、クロストリジウム・ボツリヌス菌細胞バンクバイアルは、土壌、または腐敗した動物の死骸の深いサンプリング(嫌気性または疑似嫌気性場所にて)などの種々の源からクロストリジウム・ボツリヌス菌を単離することにより調製することができる。一般に、クロストリジウム・ボツリヌス菌は、ボツリヌス中毒症と診断された患者の生理液のサンプル(すなわち創傷ボツリヌス中毒の患者からの創傷交換)から得ることができる。図2の上半分は、細胞バンクバイアルの調製およびボツリヌス毒素の培養および発酵に用いられる非APF工程を概略する。
【0104】
天然または患者源から得られたクロストリジウム・ボツリヌス菌は、血液寒天平板上にて培養し、次いで細胞バンクバイアル培地に高増殖コロニーを植菌する。クロストリジウム・ボツリヌス菌に用いられる細胞バンクバイアル培地は、切り刻まれた新鮮な牛肉を含むクックドミート培地であった。有効に増殖する培養物をグリセロールと混合させて、後の使用のために凍結されたクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアの細胞バンクバイアル(すなわち保存培養)を調製した。
【0105】
種培養
クロストリジウム・ボツリヌス菌細胞バンクバイアルを室温にて解凍した後、四つの培養工程を行った。(1)適切な形態学でコロニーを選択するために、予め減少させたコロンビア血液寒天平板上にてバクテリアをストリーキングし、34℃±1℃にて30〜48時間嫌気的にインキュベートすることにより、解凍された細胞バンクバイアルからのアリコートを培養した。(2)次いで選択されたコロニーを34℃にて6〜12時間カゼイン増殖培地を含む試験管中に植菌した。次いで最も急速な増殖および最も高密度(増殖選択工程)でのチューブの内容物をさらに二つの漸増的嫌気的インキュベーションにより培養した。(3)1リットル種培養ボトル中34℃にてまず12〜30時間のインキュベーション、次いで(4)35℃にて6〜16時間カゼイン増殖培地を含む25リットル種発酵槽における種培養。これら二つの漸増的培養は、pH7.3における水中にて2%カゼイン加水分解物(カゼイン[ミルクタンパク質]消化物)、1%酵母エキスおよび1%グルコース(デキストロース)を含む栄養培地中にて行った。
【0106】
発酵
漸増的培養の後、工業規模(すなわち115リットル)の発酵槽中、制御された嫌気性雰囲気下、培地を含むカゼイン中、35℃にて60〜96時間さらにインキュベーションした。バクテリアの増殖は通常、24〜36時間後に完了し、60〜96時間の発酵中、細胞のほとんどが溶解し、ボツリヌス毒素を放出する。発酵培地pHの制御はシャンツまたは改変シャンツ工程において不要である。毒素が細胞溶解により解放され、培養液中に存在するプロテアーゼにより活性化されると考えられる。適宜、全不純物(すなわち全細胞および破裂性細胞)を除去するために単一層深度フィルターを用いてこの培地のろ過を行い、精製培養液と称される透明溶液を得ることができる。
【0107】
集菌
毒素の集菌は、硫酸でpH3.5まで低下させ、粗毒素を20℃にて析出させることにより達成することができる。次いで粗毒素を超精密ろ過、次いでダイアフィルトレーション(diafiltration)により濃縮した。
【0108】
精製
次いで集菌された粗製の毒素を消化容器に移し、プロテアーゼ阻害剤ベンズアミジン塩酸塩の付加により安定化させた。DNアーゼおよびRNアーゼを加えて核酸を消化させた。原料を含む毒素にUF/DFおよび三つの析出工程(冷エタノール、塩酸および硫酸アンモニウム析出)を行った。精製ボツリヌス神経毒素複合体(バルク毒素)を2〜8℃にてリン酸ナトリウム/硫酸アンモニウム緩衝液中の懸濁液として保存した。
【0109】
得られたバルク毒素は、≧3×10U/mgの特異的有効性、0.60未満のA260/A278およびゲル電気泳動におけるバンディングの特徴的パターンを有し、クロストリジウム・ボツリヌス菌のホールA菌株から調製され、ボツリヌス毒素医薬組成物の配合のための使用に適切な高品質結晶900kDボツリヌス毒素A型複合体であった。
【0110】
配合は、一つ以上の賦形剤(アルブミンおよび塩化ナトリウムなど)と混合し、それにより毒素成分を形成する多数倍希釈のバルク毒素を包含し、成分の凍結乾燥、フリーズ・ドライまたは真空乾燥によるような毒素成分の保存および輸送に安定な形態の調製を包含することができる。
【0111】
シャンツまたは改変シャンツ工程から得られる精製ボツリヌス毒素複合体は、pH7〜8緩衝液のイオン交換カラムから溶出され、ボツリヌス毒素分子からの非毒素複合体タンパク質を解離し、それにより(発酵クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアの型に応じて)約150kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有する精製ボツリヌス毒素A型;または約156kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有する精製ボツリヌス毒素B型;または約155kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有する精製ボツリヌス毒素F型を提供することができる。
【0112】
実施例7
ボツリヌス毒素を得るためのAPF培地および工程
本実施例は、高有効性および高精製クロストリジウム・ボツリヌス毒素A型(すなわちバルク毒素)を得るために実行されるAPF工程を記載する。工程は、他のボツリヌス毒素抗原型と用いることができる。
【0113】
保存培養調製
実施例6に記載するように、クロストリジウム・ボツリヌス菌はATCC、種々の天然源またはボツリヌス中毒症患者から得ることができる。図2の下半分は、細胞バンクバイアルの調製およびボツリヌス毒素の培養および発酵に用いられるAPF工程を概略する。APF細胞バンクバイアルは、植物性寒天平板上にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養することにより調製した。植物性寒天平板は、3:1:1(重量%)の比にて酵母エキスおよびグルコースを含む大豆誘導体HySoy(Quest)を寒天と混合し、設定することにより調製した。プレートを作るための他の市販のAPF寒天平板または脱水粉末もまた、適切であると見出した。次いで選択された高増殖コロニーは、APF細胞バンクバイアル培地中に植菌した。用いられるAPF細胞バンクバイアル培地は、同じ3:1:1の比の加水分解大豆タンパク質、酵母エキス(非動物性産物は酵母の培養またはそれから調製される酵母エキスの調製工程にて用いられた)およびグルコースからなる。他の養分比(すなわち6:1:1、6:0:1および6:3:1)もまた適切であることを見出した。用いられる加水分解大豆(HySoy)および酵母エキス(HyYest)濃縮物は、Quest Internationalから得た。APF培地中のクロストリジウム・ボツリヌス菌培養物をグリセロールと混合し、クライオバイアルにアリコートを取り、後の使用のために凍結させた。発展させたAPF培地を用いて、一年以上の間生存率を欠乏させないでクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを保存することができる。クライオバイアル中のこれらの凍結培養およびグリセロール混合物は、APF細胞バンクバイアルである。
【0114】
種培養
APF細胞バンクバイアルを室温にて解凍した後、単一の培養工程を行った: 次いで1リットル種培養ボトルを同じAPF培地(APF細胞バンクバイアル[保存]培地はAPF発酵[増殖]培地と異なり得る)を用いてAPF細胞バンクバイアル内容物で直接植菌(すなわち血液寒天培地の介入またはチューブ増殖工程なし)し、嫌気性(窒素)雰囲気下pH7.0の初期培地で35℃にて15〜24時間維持した。
【0115】
発酵
次に種ボトル培養物を嫌気性(窒素)雰囲気下、pH7.0の初期培地で35℃にて52〜72時間維持したAPF培地(加水分解大豆タンパク質、酵母エキスおよび1%グルコース)を含む工業規模の10リットル産生発酵槽に移した。発酵開始から約15時間後(培養物pHは自然に6.0以下に減少した)、培養物にHClを加えることによりpH5.0〜5.5の範囲にてpH制御プログラムを開始する。許容される収率の活性なボツリヌス毒素を得るために狭い範囲内でAPF発酵培地のpHを制御することが必要であったことを見出した。従ってこのpH5.0〜5.5へのpH制御はボツリヌス毒素の有効性の低下および欠乏を実質的に防ぐことを見出した。発酵の間、ほとんどの細胞が溶解を受けてボツリヌス毒素を放出し、細胞溶解により解放された毒素が培養液に存在するプロテアーゼにより活性化されると考えられる。単一層デプス・フィルターを用いたこの培地のろ過は、全不純物(すなわち全細胞および破裂性細胞)を除去し、精製培養液と称される透明溶液を生じる。
【0116】
集菌
次いでボツリヌス毒素の集菌は実施例6のように進行することができる(すなわち硫酸析出、次いで精密ろ過による濃縮、それに次ぐダイアフィルトレーション)。
【0117】
精製
次いで毒素の精製を実施例6のように進行することができる: すなわちベンズアミジン塩酸塩およびDNアーゼおよびRNアーゼの付加、硫酸析出、冷エタノール析出、リン酸緩衝液抽出、塩酸析出、リン酸緩衝液抽出およびバルク毒素保存。
【0118】
実施例6の集菌および精製工程の別法として、カラムクロマトグラフィー工程を行うことができる。
【0119】
得られたバルク毒素は、≧3×10U/mgの特異的な有効性、0.60未満のA260/A278およびゲル電気泳動におけるバンディングの特徴的パターンを有するクロストリジウム・ボツリヌス菌のホールA菌株から調製され、ボツリヌス毒素医薬組成物の配合のための使用に適した高品質結晶900kDボツリヌス毒素A型複合体である。従ってこのボツリヌス毒素のためのAPF工程は、高品質毒素を産生することができる。
【0120】
APF工程から得られた精製ボツリヌス毒素複合体は、pH7〜8の緩衝液中イオン交換カラムに通して溶出し、ボツリヌス毒素分子から非毒素複合体タンパク質を解離することができ、それにより(発酵したクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアの抗原型に応じて)約150kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有するボツリヌス毒素;または約156kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有する精製ボツリヌス毒素B型、または約155kD分子量および1〜2×10LD50U/mg以上の特異的有効性を有する精製ボツリヌス毒素F型を提供することができる。例えば本発明のAPF培地の使用により、1.02×10LD50U/mgの特異的有効性のボツリヌス毒素を有するボツリヌス毒素A型複合体を得ることができた。
【0121】
本実施例7にて、1重量%または2重量%のグルコースを有するAPF培地を、使用し(1%グルコースは培地100mlあたりグルコース1gを意味し、2%グルコースはグルコース2gが培地100mlごとに存在することを意味することに留意すること)、最大バクテリア増殖(培養液のピーク光学密度[光学密度は600nmにて測定した]により測定した)が、1%グルコースAPF培地における発酵の約20時間後か、2%グルコースAPF培地における発酵の約40時間後かに起こるが、培地のグルコース含有量がそのように変化するにつれてピーク光学密度は有意に異ならないことを測定した。細胞自動溶解および毒素放出は、発酵の約55時間後に1%グルコースAPF培地にて最大量の有効ボツリヌス毒素(有効毒素についてのSNAP−25アッセイにより測定)を生じたが、2%グルコースAPF培地にて有効ボツリヌス毒素の量(有効毒素についてのSNAP−25アッセイにより測定)がしばらく経った培地に存在し、発酵の65時間後にさらに増大したと考えられる。従ってより効率的(すなわち単位時間あたりに得られるより多くの毒素の量)な毒素産生工程が低(1%)グルコースAPF培地の使用により実行することができることが示され、ボツリヌス毒素のより急速な放出が、存在する低(1%)グルコースAPF培地量の使用により起こった。
【0122】
図1に示されるように、APF培地におけるボツリヌス毒素の産生のための最適パラメータは次のパラメータの組合せであったこともまた測定した:(1)APF発酵培地における約6重量%の加水分解大豆濃度(図1における「HySoy濃度」)であり、6%大豆は培地100mlあたり6gの大豆タンパク質を意味する;(2)APF発酵培地における0%〜3%酵母エキス濃縮物(図1における「YE濃度」);(3)嫌気性(窒素雰囲気)条件下33〜35℃の温度における50〜72時間の発酵;(4)初期細胞増殖後、発酵期間を通してpH約5.0〜5.5に維持された発酵培地のpH、および(5)APF発酵培地における1重量%グルコース。
【0123】
従って図1に示すように、APF培地に存在するタンパク質が増えるにつれて(HySoyおよびYEの総量として)、培地のpHはより低い毒素安定性を生じながら増大する傾向にあり、培地における同じ総タンパク質栄養素含有量においてpHが低下したとき、毒素産生収率は劇的に増大した。非APF工程ではpHが上昇しないように総タンパク質含有量を低下させるため、毒素産生における有害な効果を有するpHの上昇はない。図1は、培地のpHが約5.3〜5.5の狭い範囲内に制御したときに常により大きな活性(MLD50およびSNAP−25アッセイにより測定)があったことを示す。図1はまた、最高毒素収率(SNAP25アッセイにより測定)が6%加水分解大豆および1%酵母エキスを含有する培地により得られたことも示す。
【0124】
用いたSNAP−25アッセイは、ボツリヌス毒素のSNAP−25タンパク分解活性を測定するためのELISA基準法であった。SNAP−25は、25kDa分子量のシナプトソーム関連タンパク質の略語である。SNAP−25は、ニューロン・エクソサイトーシスに関与する206アミノ酸細胞膜タンパク質である。アッセイは、文献(Ekong T., et al., 組換えSNAP−25はインビトロにおけるクロストリジウム・ボツリヌス菌A型毒素エンドペプチダーゼ活性のための有効な基質である, Microbiology (1997), vol 143, pages 3337-3347)に開示される方法に基づく。アッセイは、ポリスチレン96ウェルのマイクロタイタープレートに結合した不完全SNAP−25タンパク質(206アミノ酸残基ペプチド)、および197〜198のアミノ酸のSNAP−25の還元ボツリヌス毒素A型による酵素加水分解により調製した開裂生成物(197アミノ酸残基ペプチド)を認識するモノクローナル抗体を用いる。次いで開裂生成物に結合したモノクローナル抗体は、二次抗体(ヤギ抗マウスIgG結合セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ[HRP])とともに検出され、これは発色基質(TMB)の存在下、変色を起こす。
【0125】
MLD50(マウス50%致死量)アッセイは、アッセイの開始時にそれぞれ17〜22グラムの重量の雌マウス(約四週齢)にボツリヌス毒素の腹腔内投与によるボツリヌス毒素の有効性を測定するための方法である。各マウスを背臥位のまま頭部を傾け、25〜27ゲージの3/8”〜5/8”針を用いて約30度の角度にて生理食塩水中のボツリヌス毒素の連続希釈物のうちの一つを右下腹部に腹腔内投与する。各希釈物につき72時間にわたって死亡率を記録する。最も濃縮された希釈物が注射されたマウスの少なくとも80%の死亡率を生じ、最も濃縮されていない希釈物が注射されたマウスの20%を超えない死亡率を生じるように、希釈物を調製する。四つの希釈物の最小値が死亡率の単調減少範囲内に入らなければならない。単調減少範囲は、80%以上の死亡率で開始する。四つ以上の単調減少率内にて、二つの最大率および二つの最小率は減少させなければならない(すなわち等価でない)。50%のマウスが注射観察期間後三日以内に死亡する希釈物を、ボツリヌス毒素の1ユニット(1U)からなる希釈物として定義する。
【0126】
有意に、少なくとも:(1)細胞バンクバイアル・クックドミート培地をAPF培地に置き換え;(2)血液寒天培地コロニー選択工程を排除し;(3)次のカゼイン培地をベースとするチューブ増殖工程を排除し;そして(4)非APF発酵培地をAPF培地にすべて置き換えることによって、本発明のAPF工程は実施例6の非APF工程と異なる。
【0127】
図2は、細胞バンク作成、培養および発酵工程を通して、工業規模(非APF)シャンツ工程(実施例6)と実施例7の工業規模APF工程の違いの概要を示す。図2は、集菌工程および精製工程を省略する。
【0128】
APF培地はクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアのために選択するために用いることができることもまた見出した。従って実施例6および7の初期培養工程の同時実践は、APF培地内またはAPF培地上におけるボツリヌス毒素の増殖および産生をもたらす特性でクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアの単離および増殖を可能にする。非APF培地からAPF培地へのクロストリジウム・ボツリヌス菌培養物の移動は、新環境に適合できるか、または新環境にて増殖および産生できないバクテリアの選択的死滅を通してバクテリアを充実させ、選択する。
【0129】
種々の刊行物、特許および/または参考文献を本明細書に引用し、その内容はそのまま引用される。
【0130】
本発明はいくつかの好ましい方法に関して詳細に記載されているが、他の具体的態様、種類および改変は本発明の範囲内で可能である。例えば多種多様な動物性産物不含工程は本発明の範囲内である。
【0131】
従って次の特許請求の範囲の精神および範囲は、上記の好ましい具体的態様の記載に限定すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する発酵培地を準備し;
(b)ボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ;そして
(c)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収する
ことを特徴とする、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための方法。
【請求項2】
発酵培地がさらに約0〜3重量%の酵母エキスを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
発酵培地がさらに約1〜2重量%のグルコースを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
発酵工程が約5.0〜5.5のpHで行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
発酵工程が約45時間〜75時間行われる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
発酵工程が約33℃〜36℃の温度にて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
発酵工程が嫌気性雰囲気下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
準備工程の前に、実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する培地を得、該培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを培養する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
回収工程が動物性タンパク質不含(APF)精製工程である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する培地を得、該培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを培養し;
(b)実質的に動物由来産物不含であり、
(i)約4〜8重量%の大豆誘導体、
(ii)約0〜3重量%の酵素エキス、
(iii)約1〜2重量%のグルコース
を含有する発酵培地を準備し、
(c)(i)初期細胞増殖後、約5.0〜5.5のpHにて発酵工程を行うこと、
(ii)約45時間〜75時間の発酵工程を行うこと、
(iii)約33℃〜約36℃の温度にて発酵工程を行うこと、
(iv)嫌気性雰囲気下、発酵工程を行うこと
などのボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ;そして
(d)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収(ここに、回収工程はAPF精製工程である)する
ことを特徴とする、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための方法。
【請求項11】
培地が実質的に動物由来産物不含であり、植物由来のタンパク質産物を含有する、ボツリヌス毒素を培養または発酵させるための培地。
【請求項12】
培地が約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する、請求項11記載の培地。
【請求項13】
培地が約0〜3重量%の酵母エキスを含有する、請求項11記載の培地。
【請求項14】
培地がさらに約1〜2重量%のグルコースを含有する、請求項11記載の培地。
【請求項15】
培地が実質的に動物由来産物不含であり、
(a)約4〜8重量%の大豆誘導体;
(b)約0〜3重量%の酵母エキス;および
(c)約1〜2重量%のグルコース
を含有することを特徴とする、クロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを培養し、および/または発酵させるための培地。
【請求項16】
(a)(i)実質的に動物由来産物不含である発酵培地を準備し;
(ii)ボツリヌス毒素の産生を可能にする条件下、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス菌を培養し;そして
(iii)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収する
ことにより生物学的に活性なボツリヌス毒素を得;
(b)ボツリヌス毒素と適切な賦形剤とを配し、それにより活性成分がボツリヌス毒素である実質的に動物性産物不含医薬組成物を製造する
ことを特徴とする、活性成分がボツリヌス毒素である実質的に動物性産物不含医薬組成物を製造する方法。
【請求項17】
(a)実質的に動物由来産物不含であり、約4〜8重量%の大豆誘導体を含有する発酵培地を準備し;
(b)初期細胞増殖後、pH5.0〜5.5に維持されている、該発酵培地中にてクロストリジウム・ボツリヌス・バクテリアを発酵させ;そして
(c)該発酵培地から生物学的に活性なボツリヌス毒素を回収する
ことを特徴とする、生物学的に活性なボツリヌス毒素を得るための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125251(P2012−125251A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45669(P2012−45669)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−557985(P2007−557985)の分割
【原出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】