説明

クロストーク補正量評価装置及びクロストーク補正量評価方法

【課題】オーバードライブ技術により画素に印加する電圧レベルを補正して3次元クロストークを低減させる際、その補正量を目視によって容易に評価することを可能としたクロストーク補正量評価装置及びクロストーク補正量評価方法を提供すること。
【解決手段】実施の形態によれば、クロストーク補正量評価装置は、補正手段と表示手段とを備えている。補正手段は、右目用映像と左目用映像とを液晶表示パネルにフレーム単位で交互に表示させて立体視映像表示を行なう際に、連続する前フレームと後フレームとの階調の組み合わせに応じて液晶表示パネルの画素に与える電圧レベルを補正することにより、3次元クロストークの低減を図る。表示手段は、右目用映像及び左目用映像の一方に水平方向に順次階調の変化する第1の評価パターンを表示し、右目用映像及び左目用映像の他方に第1の評価パターンと同じパターン内に、垂直方向に配列され配列順に順次階調の変化する複数の升目を有する第2の評価パターンを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施の形態は、シャッタ眼鏡方式を用いた立体視映像表示において3次元クロストークに対する補正量を評価するクロストーク補正量評価装置及びクロストーク補正量評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、従来より、平面的な映像表示画面を用いてユーザに立体感のある映像を認識させる技術の開発が進められている。この技術は、相互に人間の両目の間隔に対応した視差を有する2種類の映像を用意し、右目用映像をユーザの右目に視認させ、左目用映像をユーザの左目に視認させることにより立体視を行なうものである。
【0003】
一例としては、右目用映像と左目用映像とを同一の映像表示画面に交互に表示させ、ユーザの掛けた立体視用眼鏡に対して、右目用映像の表示時に左目のシャッタを閉じ、左目用映像の表示時に右目のシャッタを閉じるように制御することで、ユーザに立体視映像を認識させる、いわゆる、シャッタ眼鏡方式が実用化され市場に普及している。
【0004】
一方、近年では、映像の表示に液晶表示パネル等を使用した映像表示装置が普及している。この映像表示装置は、マトリクス状に配列された複数の画素を備える液晶表示パネルを、例えば蛍光管や放電灯のような冷陰極管等を光源とするバックライトで背面側から照明する構造となっている。
【0005】
この場合、液晶表示パネルでは、映像信号に基づいたレベルの電圧を各画素にそれぞれ印加して、各画素の階調(輝度)を制御することで映像を形成している。そして、表示する1画面(フレーム)毎に画素に印加する電圧レベル(または、デジタル信号の補正量)を制御することにより、複数のフレームに亘って連続して各画素の階調(輝度)を変化させることができる。
【0006】
しかしながら、液晶表示パネルは、液晶分子の応答速度によっては、画素の輝度(階調)が変化する速度が遅くなる場合がある。すなわち、現在表示すべきフレームに、その直前のフレームの出力映像の影響が残ってしまい、現在表示すべきフレームとその直前のフレームとが同時に表示されるような表示状態となってしまうことがある。
【0007】
この場合、右目用映像と左目用映像とを交互に表示する立体視映像においては、相互に視差を有する映像が交互に表示されるため、現在の表示フレームにその直前のフレームが重畳されて表示されると、ユーザに映像が2重に見えてしまう、いわゆる3次元クロストークが生じることになる。
【0008】
このため、現在では、画素の輝度(階調)を目標とする輝度(階調)により迅速に到達させるために、目標とする輝度(階調)に対応した電圧レベルよりも高い、または、低い電圧レベルを印加して画素の変化速度を速めることで液晶の応答速度を補正する、いわゆる、LAO(level adopted overdrive)と称されるオーバードライブ技術を用いて、3次元クロストークを低減させるようにしたクロストークキャンセラが実用化されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】“Evaluation of Gray to Gray Performance in Stereoscopic Displays” Wen-Chuan Tsai,Meng-Huan Yang,Hung-Shiang Ruan,Chien-Wen Chen,Kai-Chieh Chang,Ko-Shun Wang,International Display Workshops 2010,pp1295-1298,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
オーバードライブ技術により画素に印加する電圧レベルを補正して3次元クロストークを低減させる際、その補正量を目視によって容易に評価することを可能としたクロストーク補正量評価装置及びクロストーク補正量評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施の形態によれば、クロストーク補正量評価装置は、補正手段と表示手段とを備えている。補正手段は、右目用映像と左目用映像とを液晶表示パネルにフレーム単位で交互に表示させて立体視映像表示を行なう際に、連続する前フレームと後フレームとの階調の組み合わせに応じて液晶表示パネルの画素に与える電圧レベルを補正することにより、3次元クロストークの低減を図る。表示手段は、右目用映像及び左目用映像の一方に水平方向に順次階調の変化する第1の評価パターンを表示し、右目用映像及び左目用映像の他方に第1の評価パターンと同じパターン内に、垂直方向に配列され配列順に順次階調の変化する複数の升目を有する第2の評価パターンを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態における映像処理装置の信号処理系の一例を説明するために示すブロック構成図。
【図2】同実施の形態における映像処理装置の映像処理部に設けられるクロストークキャンセラの一例を説明するために示すブロック構成図。
【図3】同実施の形態におけるクロストークキャンセラを構成する補正テーブルの一例を説明するために示す図。
【図4】同実施の形態における映像処理装置で発生される評価パターンの一例を説明するために示す図。
【図5】同実施の形態における映像処理装置で立体視映像表示された評価パターンを立体視用眼鏡なしで見た状態の一例を説明するために示す図。
【図6】同実施の形態における映像処理装置で立体視映像表示された評価パターンを立体視用眼鏡を用いて見た状態の一例を説明するために示す図。
【図7】同実施の形態における映像処理装置で発生される評価パターンの他の例を説明するために示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態で説明する映像処理装置11の信号処理系を概略的に示している。なお、この映像処理装置11は、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号に基づく映像表示を行なうだけでなく、立体視(3次元)表示用の映像信号に基づく映像表示も行なうことができる。
【0014】
すなわち、アンテナ12で受信したデジタル放送信号は、入力端子13を介してチューナ部14に供給されることにより、所望のチャンネルの放送信号が選局される。そして、このチューナ部14で選局された放送信号は、復調復号部15に供給されてデジタルの映像信号及び音声信号等に復元された後、信号処理部16に出力される。
【0015】
この信号処理部16は、復調復号部15から供給されたデジタルの映像信号及び音声信号に対してそれぞれ所定のデジタル信号処理を施している。この信号処理部16が行なう所定のデジタル信号処理には、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号を立体視(3次元)表示用の映像信号に変換する処理や、立体視表示用の映像信号を平面視表示用の映像信号に変換する処理等も含まれている。
【0016】
そして、この信号処理部16は、デジタルの映像信号を合成処理部17に出力し、デジタルの音声信号を音声処理部18に出力している。このうち、合成処理部17は、信号処理部16から供給されるデジタルの映像信号に、OSD(on screen display)信号を重畳して出力している。そして、合成処理部17から出力されたデジタルの映像信号は、映像処理部19に供給される。
【0017】
この映像処理部19は、入力されたデジタルの映像信号を、後段の、例えば液晶表示パネル等を有する平面型の映像表示部21で表示可能なフォーマットに変換している。そして、この映像処理部19から出力された映像信号が、出力端子20を介して映像表示部21に供給されて映像表示に供される。
【0018】
また、この映像処理部19は、合成処理部17から供給される映像信号が立体視(3次元)表示用の映像信号である場合、その映像信号から右目用映像信号と左目用映像信号とを分離し、それらの映像信号に対して、フレーム単位で交互に倍速で出力する処理や、オーバードライブ技術を用いた3次元クロストークの低減処理等を施している。
【0019】
さらに、この映像処理部19は、合成処理部17から供給される映像信号が立体視(3次元)表示用の映像信号である場合、右目用映像を映像表示している期間と、左目用映像を映像表示している期間とをそれぞれ示すシャッタ制御信号SCを生成し、出力端子22を介して立体視用眼鏡23に出力している。
【0020】
このため、上記立体視用眼鏡23は、映像処理部19から供給されるシャッタ制御信号SCに基づいて、右目用映像の表示時に左目のシャッタを閉じ、左目用映像の表示時に右目のシャッタを閉じるように制御され、これにより、ユーザに立体視(3次元)映像が認識されることになる。
【0021】
また、上記音声処理部18は、入力されたデジタルの音声信号を、後段のスピーカ25で再生可能なフォーマットのアナログ音声信号に変換している。そして、この音声処理部18から出力されたアナログ音声信号が、出力端子24を介してスピーカ25に供給されることにより音声再生に供される。
【0022】
ここで、この映像処理装置11は、上記した各種の再生動作を含むその全ての動作を制御部26によって統括的に制御されている。この制御部26は、CPU(central processing unit)26aを内蔵しており、映像処理装置11の本体に設置された操作部27からの操作情報を受けて、または、リモートコントローラ28から送出され受信部29で受信した操作情報を受けて、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0023】
この場合、制御部26は、メモリ部26bを利用している。このメモリ部26bは、主として、CPU26aが実行する制御プログラムを格納したROM(read only memory)と、該CPU26aに作業エリアを提供するためのRAM(random access memory)と、各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを有している。
【0024】
また、上記制御部26には、例えばUSB(universal serial bus)規格等の所定の通信規格に準拠した通信インターフェース30が接続されており、この通信インターフェース30を介して外部の電子機器31が接続可能になっている。これにより、制御部26は、ユーザによる操作部27やリモートコントローラ28の操作に基づいて、外部の電子機器31からデジタルの映像信号及び音声信号を取得し、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0025】
さらに、上記制御部26には、ディスクドライブ部32が接続されている。このディスクドライブ部32は、例えばDVD(digital versatile disk)等の光ディスク33を着脱自在とするもので、装着された光ディスク33からデジタルデータの再生を行なう機能を有している。
【0026】
このため、上記制御部26は、ユーザによる操作部27やリモートコントローラ28の操作に基づいて、ディスクドライブ部32により光ディスク33からデジタルの映像信号及び音声信号を読み出させ、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0027】
また、上記制御部26には、評価パターン発生部26cが設けられている。この評価パターン発生部26cは、詳細は後述するが、オーバードライブ技術により上記映像表示部21の液晶表示パネルを構成する画素に印加する電圧レベルを補正して3次元クロストークを低減させた際の補正量を、映像表示部21に交互に表示した右目用映像と左目用映像とをユーザが立体視用眼鏡23を掛けて見る、いわゆる、通常のシャッタ眼鏡方式による立体視映像の視聴形態で目視によって容易に評価することが可能となるような、右目用映像と左目用映像とに対応した評価パターンを表示させるための映像信号を発生するものである。
【0028】
図2は、上記映像処理部19において、オーバードライブ技術を用いて3次元クロストークの低減処理を行なうためのクロストークキャンセラ34の一例を示している。このクロストークキャンセラ34は、立体視(3次元)表示用の右目用映像信号と左目用映像信号とがフレーム周期で交互に入力される入力端子34aを備えている。
【0029】
この入力端子34aに入力された右目用映像信号及び左目用映像信号は、補正テーブル34bとフレームメモリ34cとにそれぞれ供給される。このうち、補正テーブル34bは、映像表示部21の液晶表示パネルを構成する所定の画素に対して、あるフレーム(前フレーム)における階調(輝度)と、そのフレームに続くフレーム(後フレーム)における階調(輝度)と、その画素に印加する電圧レベル(または、デジタル信号の補正量)とを対応付けて記憶している。
【0030】
図3は、上記補正テーブル34bの一例を示している。すなわち、縦軸は、所定の画素の過去フレームにおける階調(輝度)を示しており、上側から下側に向けて階調(輝度)が高くなるように配列されている。また、横軸は、所定の画素の現在フレームにおける階調(輝度)を示しており、左側から右側に向けて階調(輝度)が高くなるように配列されている。さらに、過去フレームの階調(輝度)と現在フレームの階調(輝度)とによって指定される数字が、所定の画素に印加する補正された電圧レベルを示している。
【0031】
なお、画素の階調(輝度)が、例えば10ビット(0〜1023)で制御される場合、補正テーブル34bとしては、過去フレームの階調(輝度)と現在フレームの階調(輝度)とをそれぞれ1024通り用意する必要がある。しかしながら、補正テーブル34bの記憶に要するメモリ容量を削減するために、過去フレームと現在フレームとの階調(輝度)をそれぞれ所定量(図3では1/4)だけ間引いて補正量を設定することができる。
【0032】
一方、上記フレームメモリ34cは、供給された映像信号について、その1フレーム分の画素の階調(輝度)を記憶している。なお、連続したフレームで映像信号が供給される場合、フレームメモリ34cは、逐次1フレーム分の映像信号を上書きする。また、フレームメモリ34cは、映像信号が供給された場合、既に記憶している映像信号を補正テーブル34bに出力する。
【0033】
これにより、フレームメモリ34cから出力された、あるフレーム(過去フレーム、または前フレーム)の映像信号と、そのフレームの1つ後のフレーム(現在フレーム、または後フレーム)となる、入力端子34aに供給された映像信号とが、補正テーブル34bに供給されることになる。そして、補正テーブル34bは、所定の画素に対して、過去フレームにおける階調(輝度)と、現在フレームにおける階調(輝度)とで指定される電圧レベルを出力し、この電圧レベルが出力端子34Dを介して画素に印加される。すなわち、補正テーブル34bは、所定の画素について、過去フレームの階調(輝度)と現在フレームの階調(輝度)との組み合わせに応じた電圧レベルを出力することにより、その画素に印加する電圧レベルを補正している。
【0034】
ここで、上記したクロストークキャンセラ34は、映像表示部21の液晶表示パネルを構成している全ての画素のうち、予め設定された所定の画素に対して、それぞれ前後フレームの階調(輝度)の組み合わせに応じて印加する電圧レベルを補正することにより、シャッタ眼鏡方式の立体視映像表示において3次元クロストークの低減が図られるようになる。
【0035】
次に、上記した評価パターン発生部26cが発生する映像信号に基づいて表示される評価パターンにより、各画素に印加する電圧レベルを補正して3次元クロストークを低減させた際の補正量を視覚的に評価することについて説明する。すなわち、評価パターン発生部26cは、それぞれ所定の評価パターンを表示するための左目用映像信号と右目用映像信号とが、サイドバイサイド形式で合成された立体視用の映像信号を発生している。
【0036】
なお、ここでは、サイドバイサイド形式で説明を行なうが、必ずしもサイドバイサイド形式である必要はなく、トップアンドボトム形式やフレームパッキング形式でも良いものである。また、内部で保持するので左目用映像信号と右目用映像信号とをそれぞれ独立に持つようにしても良いものである。
【0037】
この立体視用の映像信号が、上記映像処理部19によって右目用映像信号と左目用映像信号とに分離されるとともに、それらの映像信号に対して、フレーム周期で交互に倍速で出力する処理や、オーバードライブ技術を用いた3次元クロストークの低減処理等が施される。
【0038】
そして、映像処理部19から出力された右目用映像信号と左目用映像信号とが映像表示部21で交互に表示され、その表示映像をユーザが立体視用眼鏡23を掛けて見ることにより、クロストークキャンセラ34における画素に印加した電圧レベルの補正量を目視により評価することができるようになる。
【0039】
図4は、上記評価パターン発生部26cが発生する映像信号によって表示される左目用映像Lと右目用映像Rとの一例を示している。まず、左目用映像Lは、黒画面の水平方向の中央部分に、一定幅の帯状の左目用評価パターンL1を垂直方向に表示している。この左目用評価パターンL1は、グレースケールで表示され、画面の水平方向で左側から右側に向けて階調(輝度)が順次増加するように表示される。
【0040】
また、右目用映像Rは、黒画面の水平方向の中央部分に、左目用評価パターンL1と同様の一定幅の帯状の右目用評価パターンR1を垂直方向に表示している。この右目用評価パターンR1も、グレースケールで表示され、画面の水平方向で左側から右側に向けて階調(輝度)が順次増加するように表示される。
【0041】
ここで、上記右目用評価パターンR1は、画面上で下半分が左目用評価パターンL1と同じである。しかしながら、上記右目用評価パターンR1には、画面上で上半分に複数の升目が形成されている。この複数の升目は、水平方向及び垂直方向にマトリクス状に一定間隔で配列されており、各升目は、同サイズで同形状となっている。
【0042】
そして、この複数の升目は、その内部が、画面の上側の升目から下側の升目に向けて配列順に階調(輝度)が順次増加するように表示される。また、この複数の升目を構成している水平方向及び垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインは、左目用評価パターンL1と同様に、画面の水平方向で左側から右側に向けて階調(輝度)が順次増加するように表示されている。
【0043】
ここにおいて、左目用映像Lと右目用映像Rとは、画面の下半分における左目用評価パターンL1と右目用評価パターンR1とが同じであるため、画面の下半分が全く同じ映像となる。このため、左目用映像Lと右目用映像Rとの連続するフレームがクロストークキャンセラ34に供給されても、画面の下半分における画素に対しては、オーバードライブ技術による電圧レベルの補正が行なわれないので、基準となる階調(輝度)のガンマを視覚的に確かめることができる。
【0044】
また、画面の上半分については、左目用評価パターンL1は水平方向に階調(輝度)が変化し、右目用評価パターンR1はその複数の升目の内部(パターン中の四角い部分)が垂直方向に階調(輝度)が変化している。このため、ユーザが立体視用眼鏡23を掛けて左目だけで見た場合、クロストークキャンセラ34による3次元クロストークの低減処理が良好に機能していれば、つまり、画素に印加する電圧レベルの補正量が適切であれば、左目用映像Lがそのまま見えることになる。すなわち、左目用評価パターンL1の上半分が、下半分と同じに見えることになる。
【0045】
さらに、左目用評価パターンL1は左側から右側に向けて階調(輝度)が順次増加し、右目用評価パターンR1はその複数の升目の内部が上側から下側に向けて階調(輝度)が順次増加するように変化している。このため、後フレームの階調(輝度)を左側から右側に向けて順次増加するように配列し、前フレームの階調(輝度)を上側から下側に向けて順次増加するように配列した補正テーブル34bとの対応関係が分かりやすくなる。
【0046】
また、上記右目用評価パターンR1の複数の升目を構成している垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインの階調値は、クロストークキャンセラ34で印加する電圧レベルを補正するテーブルの現在フレームの階調値と等しく、複数の升目を構成している水平方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインの座標は、升目内部でそれぞれ階調(輝度)が順次増加する階調値の座標として、クロストークキャンセラ34で印加する電圧レベルを補正するテーブルの前フレームの階調値と等しくなるように設計されている。
【0047】
複数の升目を構成している垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインの部分では、左目用評価パターンL1と同様に、画面の水平方向で左側から右側に向けて階調(輝度)が順次増加するように表示されているため、階調値が異なるが、その周囲の升目の内部は非常に近い階調値になっており、補正された階調値と補正テーブル34bとの対応関係が分かりやすくなる。
【0048】
さらに、人は明るさを相対値として知覚するため、比較対象がないと視覚的に輝度の変動をとらえることができないが、この実施の形態では、右目用評価パターンR1の複数の升目については垂直方向に階調(輝度)を変化させ、升目を構成している水平及び垂直の複数のラインについては、左目用評価パターンL1と同様に水平方向に階調(輝度)を変化させるようにしているので、評価パターン内で輝度を相対的に比較することができるようになる。
【0049】
このため、左目用映像Lと右目用映像Rとを交互に表示し、ユーザが立体視用眼鏡23を掛けないで見た場合には、図5に示すように、升目が見えてしまうが、ユーザが立体視用眼鏡23を掛けて見た場合には、図6に示すように、補正量が適切である場合、升目が見えなくなる。なお、図6において、升目が見えている部分は補正量が不足もしくは過剰である場合を示している。
【0050】
前フレームより現在フレームが増加する場合(パターンでは右上)、升目の内部(パターンでは四角い部分)が明るい場合過補正であり、暗い場合は強調不足となる。逆に、前フレームより現在フレームが減少する場合(パターンでは左下)、升目の内部が明るい場合強調不足であり、暗い場合は過補正となる。
【0051】
また、左目用評価パターンL1と右目用評価パターンR1とがグレースケールで表示されている場合には、表示映像が色づくことによりR(red),G(green),B(blue)の色バランスが崩れたことが分かる。
【0052】
さらに、升目の内部(パターン内の四角い部分)が左目と右目とが異なるように説明したが、升目を構成する複数のラインの部分が左目と右目とで異なるようなパターンの構成にしても良いものである。
【0053】
なお、上記した実施の形態では、右目用評価パターンR1の複数の升目を、水平方向及び垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインを交差させて構成した四角形状としたが、これに限らず、評価パターン内で輝度を相対的に比較することが可能なように、水平方向及び垂直方向にそれぞれ等間隔で規則的に配列されていれば良く、また、ほぼ同サイズであれば種々の形状に形成することが可能である。
【0054】
また、上記クロストークキャンセラ34で印加する電圧レベルを補正する対象となる画素は、右目用評価パターンR1の複数の升目を構成している水平方向及び垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインの交点に対応する画素に限らず、必要に応じて任意選択的に設定することができる。
【0055】
さらに、左目用評価パターンL1と右目用評価パターンR1とは、左目用映像Lと右目用映像Rとが交互に表示されたときに、画面上で同じ位置に表示されるという関係を保った上で、画面内での表示位置を変えられるようにすることにより、画面の全領域について3次元クロストークを低減させる際の補正量を目視によって評価することが可能となる。
【0056】
また、上記した実施の形態では、右目用評価パターンR1に複数の升目を形成するようにしたが、左目用評価パターンL1に複数の升目を形成するようにしても良いことはもちろんである。
【0057】
さらに、評価パターンは、グレースケールで表示されるだけでなく、R,G,B毎に独立して表示することができる。この場合、図7に示すように、左目用映像Lには、黒画面の中央部分に、上記した左目用評価パターンL1と同様に、それぞれが一定幅の帯状に形成される左目用R評価パターンL(R)1,左目用G評価パターンL(G)1,左目用B評価パターンL(B)1が垂直方向に併設表示されている。
【0058】
また、右目用映像Rには、黒画面の中央部分に、左目用映像Lに対応させて、上記した右目用評価パターンR1と同様に、それぞれが一定幅の帯状に形成される右目用R評価パターンR(R)1,右目用G評価パターンR(G)1,右目用B評価パターンR(B)1が垂直方向に併設表示されている。
【0059】
この場合、クロストークキャンセラは、R成分、G成分、B成分毎にそれぞれ設けられている。そして、左目用R評価パターンL(R)1と右目用R評価パターンR(R)1とを用いて、R成分に対する3次元クロストークの低減処理を行なうクロストークキャンセラについての補正量の視覚的な評価が行なわれる。
【0060】
また、左目用G評価パターンL(G)1と右目用G評価パターンR(G)1とを用いて、G成分に対する3次元クロストークの低減処理を行なうクロストークキャンセラについての補正量の視覚的な評価が行なわれる。さらに、左目用B評価パターンL(B)1と右目用B評価パターンR(B)1とを用いて、B成分に対する3次元クロストークの低減処理を行なうクロストークキャンセラについての補正量の視覚的な評価が行なわれる。これにより、ホワイトバランス等の影響を分かりやすく目視により評価することができる。
【0061】
また、画面を構成する画素がRGB以外を有する場合、その色に対するパターンを用いて評価することもできる。
【0062】
なお、この発明は上記した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形して具体化することができる。また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【符号の説明】
【0063】
11…映像処理装置、12…アンテナ、13…入力端子、14…チューナ部、15…復調復号部、16…信号処理部、17…合成処理部、18…音声処理部、19…映像処理部、20…出力端子、21…映像表示部、22…出力端子、23…立体視用眼鏡、24…出力端子、25…スピーカ、26…制御部、26a…CPU、26b…メモリ部、26c…評価パターン発生部、27…操作部、28…リモートコントローラ、29…受信部、30…通信インターフェース、31…電子機器、32…ディスクドライブ部、33…光ディスク、34…クロストークキャンセラ、34a…入力端子、34b…補正テーブル、34c…フレームメモリ、34d…出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用映像と左目用映像とを液晶表示パネルにフレーム単位で交互に表示させて立体視映像表示を行なう際に、連続する前フレームと後フレームとの階調の組み合わせに応じて前記液晶表示パネルの画素に与える電圧レベルを補正することにより、3次元クロストークの低減を図る補正手段と、
前記右目用映像及び左目用映像の一方に水平方向に順次階調の変化する第1の評価パターンを表示し、前記右目用映像及び左目用映像の他方に前記第1の評価パターンと同じパターン内に、垂直方向に配列され配列順に順次階調の変化する複数の升目を有する第2の評価パターンを表示する表示手段とを具備するクロストーク補正量評価装置。
【請求項2】
前記表示手段は、水平方向の一方から他方に向けて順次階調の増加する第1の評価パターンを表示するとともに、前記第1の評価パターンと同じパターン内に、垂直方向に配列され画面の上側から下側に向けて配列順に順次階調の増加する複数の升目を有する第2の評価パターンを表示する請求項1記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項3】
前記表示手段は、水平方向及び垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインを交差させて複数の升目を形成し、前記複数のラインを水平方向に順次階調の変化するように表示し、前記複数の升目を画面の上側の升目から下側の升目に向けて配列順に順次階調が変化するように表示する請求項1記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記第1の評価パターンと第2の評価パターンとをグレースケールで表示する請求項1記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記第1の評価パターンと第2の評価パターンとをR,G,B成分毎に分けて表示する請求項1記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項6】
前記補正手段は、水平方向及び垂直方向にそれぞれ並行して設けられた複数のラインの交点の座標に対応する階調値を、電圧レベルの補正対象とする請求項3記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記液晶表示パネルの所定の画素について、その前フレームの階調と後フレームの階調とによって、与える電圧レベルが指定される補正テーブルを備える請求項1記載のクロストーク補正量評価装置。
【請求項8】
右目用映像と左目用映像とを液晶表示パネルにフレーム単位で交互に表示させて立体視映像表示を行なう際に、連続する前フレームと後フレームとの階調の組み合わせに応じて前記液晶表示パネルの画素に与える電圧レベルを補正することにより、3次元クロストークの低減を図る場合、
前記右目用映像及び左目用映像の一方に水平方向に順次階調の変化する第1の評価パターンを表示し、前記右目用映像及び左目用映像の他方に前記第1の評価パターンと同じパターン内に、垂直方向に配列され配列順に順次階調の変化する複数の升目を有する第2の評価パターンを表示するクロストーク補正量評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−51572(P2013−51572A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188949(P2011−188949)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【特許番号】特許第5100873号(P5100873)
【特許公報発行日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】