説明

クロスヘッドダイ、および導電性ゴムローラの製造方法

【課題】導電性ゴムローラの周方向における電気抵抗のムラを小さくする効果を高めることが可能なクロスヘッドダイを提供する。
【解決手段】外ダイ穴57と供給口50とが形成された外ダイ22と、外ダイ穴57に設置されたマンドレル21と、を有し、マンドレル21が、マニホールド部と、先端部とを有し、マニホールド部21aが、供給口50に対向した入口と、入口から流入したゴム組成物が流出する2つの出口と、を有する一対の溝と、下面に形成された半円状の溝65とを有し、先端部の外周面と外ダイ穴の内周面との隙間に第1の環状流路60と、第1の環状流路60よりも断面積が小さい第2の環状流路62と、をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真を形成する際に主に使用され、芯金がゴム組成物により被覆された導電性ゴムローラを成形するためのクロスヘッドダイ、および該導電性ゴムローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の熱硬化性の未加硫のゴム組成物を押出し機によりローラ状に押出して成形するためのダイには、クロスヘッドダイがある。クロスヘッドダイは、スクリュー軸とダイがある角度を持って設置されている。そのため、ローラ状になったゴム組成物の内部に芯金を通すことが可能になる。これにより、ゴム層の押出し工程に芯金の被覆工程を組み込めるため、工程の簡略化ができるなどの利点がある(特許文献1参照)。
【0003】
一般的なクロスヘッドダイでは、断面が略円形の外ダイ穴と、ゴム組成物を外ダイ穴に供給する供給口とを有する外ダイに、芯金ガイド穴を持ったマンドレルが挿入されている。外ダイとマンドレルとの隙間には、供給口と押出し口とを連通させるゴム組成物の流路が形成される。押出し口は、マンドレルの先端から芯金の押出し方向に、ある距離を離れた位置に形成され、円形状の断面を有する。
【0004】
以下に、上述した一般的なクロスヘッドダイの内部におけるゴム組成物の流れについて説明する。押出し機より供給口に供給されたゴム組成物は、外ダイ穴の内周面とマンドレルの外周面とに囲まれた展開部流路を通過する。展開部流路では、流路が押出し機のスクリュー軸方向から曲折されることによって、ゴム組成物の流れは円形状から、内側と外側がほぼ真円な環状に変換される。なお、展開部流路は、マンドレルの外周面に形成されたマニホールドとプリランドが組み合わさった流路が一般的である。続いて、ゴム組成物の流れは、外ダイ穴の内周面とマンドレルの外周面との隙間に形成された環状流路を通過する。その後、ゴム組成物は、マンドレルの先端から押出された芯金と接触し、その芯金と一体となって押出し口を通過する。このようにして、芯金がゴム組成物で被覆された導電性ローラが成形される。
【0005】
上述したクロスヘッドダイでは、円形状流路から環状流路に変換される際に、2つのゴム組成物の流れが合流(衝突)し、その合流に伴い接合痕であるウェルドラインが発生することが知られている。ウェルドラインが発生すると、ローラの周方向の電気抵抗のムラが大きくなる。特に、導電性ゴムローラのゴム組成物として使用される電子導電系ゴムにおいて顕著に現れる。
【0006】
そこで、ウェルドラインによる、ローラの周方向の電気抵抗のムラを抑制するためのゴムローラの製造方法が特許文献2に開示されている。このゴムローラの製造方法では、押出し機から供給された円形状のゴム組成物は、マンドレルの外周面に形成された一対のマニホールドに沿って2つに分岐した後、マニホールドの終端部で合流する。その合流によりゴム組成物は、円形状から環状に変換する。その後、ゴム組成物は、マンドレルの外周面に形成されたらせん溝に沿って流れる。特許文献2に開示された製造方法によれば、ゴム組成物がらせん溝に沿って流れることでゴム組成物の流れが撹拌されるので、ウェルドラインの影響によるローラの周方向の電気抵抗のばらつきを低減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−329639号公報
【特許文献2】特開2008−94050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウェルドラインは、上述したように、ゴム組成物の2つの流れの合流箇所をその発生箇所としている。しかし、特許文献2に開示された製造方法は、ゴム組成物の2つの流れの合流箇所(マニホールドの終端部)に、ウェルドラインそのものの発生を抑制する対策がなされていない。そのため、導電性ゴムローラの周方向における電気抵抗のムラを小さくすることに関して、十分な効果を得られないことが考えられる。
【0009】
そこで本発明は、導電性ゴムローラの周方向における電気抵抗のムラを小さくする効果を高めることが可能なクロスヘッドダイ、および導電性ゴムローラの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明によるクロスヘッドは、上端部から下端部まで内部を軸方向に貫通した円形状の外ダイ穴と、前記外ダイ穴を囲む壁部を前記軸方向に交差する方向に貫通し、ゴム組成物を前記外ダイ穴に供給する供給口と、が形成された外ダイと、前記軸方向に内部を貫通し、芯金が流れる芯金ガイド穴が前記外ダイ穴の中心軸とほぼ同軸に形成され、前記外ダイ穴に設置されたマンドレルと、を有し、前記芯金ガイド穴から前記外ダイの前記下端部に向かって流出した前記芯金が、前記ゴム組成物により被覆された導電性ゴムローラを成形するクロスヘッドダイにおいて、前記マンドレルが、マニホールド部と、前記マニホールド部の下面から前記軸方向の下側に延びた先端部と、を有し、前記マニホールド部が、外周面に、前記芯金ガイド穴の中心軸と前記供給口の中心軸を含む平面に対して対称な形状に形成された一対の溝であって、前記供給口に対向し、前記ゴム組成物が前記供給口から流入する入口と、前記入口から前記外周面の周方向に離れるとともに前記入口よりも前記軸方向の下側の位置で前記芯金ガイド穴の中心軸を挟んで互いに対向し、前記入口から流入した前記ゴム組成物が前記軸方向の下側に流出する2つの出口と、を有する一対の溝と、前記下面に前記芯金ガイド穴の中心軸に対して対称に形成され、前記2つの出口の各々に連通する半円状の溝と、を有し、前記先端部の外周面と前記外ダイ穴の内周面との隙間に形成され、前記2つの出口および前記半円状の溝と連通し、前記2つの出口から流出した前記ゴム組成物が、前記周方向に流れる第1の環状流路と、前記隙間の、前記第1の環状流路よりも前記軸方向の下側に形成され、前記第1の環状流路よりも断面積が小さい第2の環状流路と、をさらに有することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明による導電性ゴムローラの製造方法は、上端部から下端部まで内部を軸方向に貫通した円形状の外ダイ穴と、前記外ダイ穴を囲む壁部を前記軸方向に交差する方向に貫通した供給口と、が形成された外ダイと、内部を前記軸方向に貫通し、前記外ダイ穴の中心軸とほぼ同軸に形成された芯金ガイド穴と、前記芯金ガイド穴の中心軸と前記供給口の中心軸を含む平面に対して対称な形状に形成された一対の溝が外周面に形成され、前記芯金ガイド穴の中心軸に対して対称な形状に形成された半円状の溝が下面に形成されたマニホールド部と、前記マニホールド部の前記下面から前記軸方向の下側に延びた先端部とを有するマンドレルと、を用いて、芯金がゴム組成物により被覆された導電性ゴムローラを製造する方法において、前記ゴム組成物を前記供給口から前記外ダイ穴に供給し、供給された前記ゴム組成物を、前記供給口に対向した入口から、前記入口から前記外周面の周方向に離れるとともに前記入口よりも前記軸方向の下側の位置で前記芯金ガイド穴の中心軸を挟んで互いに対向する2つの出口まで流し、前記2つの出口から流出したゴム組成物を、前記先端部の外周面と前記外ダイ穴の内周面との隙間に形成された第1の環状流路に沿って、前記周方向に流し、前記第1の環状流路を通過した前記組成物を、前記隙間の、前記第1の環状流路よりも前記軸方向の下側に形成され、前記第1の環状流路よりも断面積が小さい第2の環状流路に沿って流す第1の工程と、前記第1の工程と並行して、前記芯金を前記芯金ガイド穴に流す第2の工程と、前記芯金ガイド穴から流出した前記芯金を、前記ゴム組成物により被覆する第3の工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、一対の溝の2つの出口から流出したゴム組成物が、第1の環状流路を周方向に合流(衝突)したときに、半円状の溝内で、乱流を発生させることが可能となる。この乱流により、ウェルドラインが低減されるので、導電性ゴムローラの周方向における電気抵抗のムラを小さくする効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクロスヘッドダイの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すクロスヘッドダイのマンドレルの外形図である。
【図3】図1に示す領域Sの拡大図である。
【図4】図2に示すマンドレルの斜視図である。
【図5】図1に示すクロスヘッドダイの環状流路の断面図である。
【図6】図5(b)に示す環状流路の他の形態を示す断面図である。
【図7】従来のクロスヘッドダイの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明のクロスヘッドダイの一実施形態を示す断面図である。さらに詳しくは、図1は、押出し機1から供給されるゴム組成物11と、芯金供給装置6から送られてくる芯金13とを、クロスヘッドダイ20の中でクロスさせて共に押出しする工程の断面図である。なお、図1は、外ダイ穴の中心軸と供給口の中心軸を含めた断面図である。
【0015】
本実施形態では、まず、押出し機1のゴム投入口(不図示)からゴム組成物11が短冊状もしくはリボン巻き状に投入される。押出し機1のシリンダ2の内部でスクリュー3が回転することにより、ゴム組成物11は、シリンダ2の先端部に接続されたクロスヘッドダイ20に向かって徐々に押出されていく。シリンダ2およびスクリュー3には、温度を一定に保つために温水が循環させてある。温水の温度は、押出しするゴム組成物の種類によって決まる。本実施形態では、30℃から100℃の範囲内とする。スクリュー3によって押出されたゴム組成物11は、スクリュー3の先に設置されたブレーカープレート4を通ることでその流れが整流される。その後、ゴム組成物11は、供給口50を通じてクロスヘッドダイ20の外ダイ穴57に流入する。なお、ブレーカープレート4にメッシュ(不図示)が取り付けられると、ゴム組成物11の中の異物等を除去することが可能となる。クロスヘッドダイ20にも、温水を循環させることで温度制御がなされている。
【0016】
次に、本実施形態のクロスヘッドダイ20の構成について説明する。
【0017】
クロスヘッドダイ20は、外ダイ22と、マンドレル21を有している。外ダイ22は、上端部から下端部まで内部を軸方向に貫通した外ダイ穴57と、外ダイ穴57を囲む壁部を貫通した供給口50と、押出し口59と、を有している。
【0018】
外ダイ穴57は、ほぼ直線状の中心軸を有し、その中心軸に垂直な略円形状の断面を連続的に有した穴である。具体的には、外ダイ穴57は、円柱状形状、円錐状形状、またはそれらを組み合わせた形状の穴である。なお、以下、外ダイ穴57の軸方向の上側の向きを上流方向71と呼び、軸方向の下側の向き(上流方向71とは逆方向の向き)を下流方向72と呼ぶ。押出し口59は、クロスヘッドダイ20に供給されたゴム組成物11を外部に押出すための略円形状の口である。
【0019】
供給口50は、押出し機1から押し出されたゴム組成物11を外ダイ穴57に供給するための略円形状の口である。本実施形態では、供給口50の中心軸は、外ダイ穴57の中心軸と直交している。しかし本発明では、芯金13を送る寸法が確保できればよいので、供給口50の中心軸と外ダイ穴57の中心軸とは、必ずしも直交する必要はなく、交差してればよい。
【0020】
外ダイ穴57には、マンドレル21が設置されている。外ダイ穴57にマンドレル21を設置することによって、外ダイ穴57とマンドレル21で囲まれた流路が供給口50から押出し口59まで形成される。この流路は、図1では、供給口50から、後述するマニホールド流路、第1の環状流路60、第2の環状流路62、および第3の環状流路63の順で接続される流路である。なお、本実施形態では、マンドレル21の外周に溝加工などの加工をすることによって、上記の流路形状を形成しているが、外ダイ穴57に同様な加工を行うことでも、流路を形成することができる。
【0021】
マンドレル21は、内部を軸方向に貫通する芯金ガイド穴31を備えている。マンドレル21は、芯金ガイド穴31の中心軸が外ダイ穴57の中心軸と同軸になるように外ダイ57に設置されている。マンドレル21が芯金ガイド穴31を有することで、芯金13とゴム組成物11とを共に押出すことが可能となる。
【0022】
外ダイ22の押出し口59は、クロスヘッドダイ20から押し出されるゴム組成物11の出口である。押出し口59の形状に応じて、所望の形状のローラを押し出し成形できる。本実施形態では、図1に示すように、ダイス23に押出し59が形成されているが、押出し口59は、外ダイ穴57と一体であってもよい。ダイス23は、偏肉調整部24によって外ダイ22と連結され、芯金ガイド穴31の中心軸と、押出し口59の中心軸の同軸度を調整できるようになっており、芯金ガイド穴31の中心軸と押出し口59の中心軸をほぼ同軸となるように調整して使用することが多い。ダイス23を変更することによって、いろいろな形状のゴム組成物11を押出し成形できるようになる。このようなクロスヘッドダイ20を用いることで、押出し機1から供給されたゴム組成物11は、外ダイ22とマンドレル21の間に形成された流路を通過し、押出し口59へと供給される。供給されたゴム組成物11は、芯金ガイド穴31から流出した芯金13と一体となって、押出し口59から押し出されることで、芯金13とゴム組成物11が一体となったゴムローラとして押出し成形される。
【0023】
次に、芯金供給装置6について説明する。芯金供給装置6は、芯金送りローラ7を有する。芯金送りローラ7は、芯金ガイド穴31に芯金13を送り込む。本実施形態において、芯金13には、ゴム組成物11と接着するための接着剤32が、芯金13の両端を除いて塗布されている。芯金ガイド穴31の内径は、芯金13の外径に対して0.01〜0.02mm大きい。芯金13は、芯金ガイド穴31から押出し口59に連続的に送り込まれる。なお、本実施形態では、芯金ガイド穴31は、マンドレル21と同じ部材であるが、別部材であってもよい。例えば、マンドレル21の内部に円筒状の別部材が挿入された構造であってもよい。また、芯金13へのキズを防止するために、マンドレル21は樹脂製であってもよい。芯金ガイド穴31から押出し口59に送り込まれた芯金13は、外ダイ穴57から押出し口59に送り込まれたゴム組成物11に押出し口59にて被覆される。このとき、芯金13とゴム組成物11が共に押出し口59の形状により外径を制御されながらゴムローラ形状に成形される。押出し口59から押出された導電性ゴムローラ12の外径は、ゴム組成物11の押出し量を一定とした場合には、押出し口59の口径と芯金13の供給速度により決定される。なお、本実施形態では、芯金13は円柱状であり、材質は導電性であればよいが金属製であることが望ましい。
【0024】
次に、図1〜図5を参照しながら、マンドレル21の形状、およびゴム組成物11の流路形状について詳しく説明する。図2は、マンドレル21の外形図である。図2(a)は、左側面図であり、図2(b)は、正面図であり、図2(c)は、右側面図である。なお、図2(b)の正面図は、図1のマンドレルを供給口のある位置から見たときの方向を、正面としている。
【0025】
マンドレル21は、マニホールド部21aと、先端部21bとを有する。マニホールド部21aの外周面には、外ダイ穴57の中心軸と供給口50の中心軸を含む平面に対して対称な形状の一対の溝61が形成され、一対の溝61が上記のマニホールド流路を構成している。
【0026】
一対の溝61は、供給口50と対向する位置に、供給口50からゴム組成物11が流入する入口61aを有する。一対の溝61は、入口61aからマニホールド部21aの外周面の周方向に分岐し、下流方向側に開口した2つの出口61bで終端している。なお、一対の溝61は、入口61aから周方向に90°離れた位置まで延び、その後、2つの出口61bが、周方向に互いに180°離れた位置で、芯金ガイド穴31の中心軸を挟んで互いに対向しているのが望ましい。なお、本実施形態において、一対の溝61は、半径8mmの略半円形状であり、断面積は約86mm2であり、流れ方向に沿った流路長さは約35mmである。
【0027】
2つの出口61bに連通し芯金ガイド穴31の中心軸に垂直なマニホールド部21aの下面には、芯金ガイド穴31の中心軸に対して対称な形状の半円状の溝65が形成されている(図4参照)。図3は、図1に示す領域Sの拡大図である。図4は、マンドレル21の斜視図である。
【0028】
マニホールド部21aの下面からは、先端部21bが下流方向72に延びている。先端部21bの外周面と外ダイ穴57の内周面との隙間には、第1の環状流路60と、第2の環状流路62と、第3の環状流路63と、が形成されている。第1の環状流路60は、一対の溝61の出口61bおよび溝65に連通している。第2の環状流路62は、第1の環状流路60よりも下流側に形成されている。図5は、第1の環状流路および第2の環状流路の形状を示す断面図である。図5(a)は、図1に示す切断線A−Aに沿った断面図であり、第1の環状流路60の断面図である。図5(b)は、図1に示す切断線B−Bに沿った断面図であり、第2の環状流路62の断面図である。なお、図5(a)、(b)では、芯金ガイド穴31の記載は省略している。
【0029】
図5に示すように、第1の環状流路60および第2の環状流路62は、外ダイ穴57の中心軸に垂直な断面の形状が、外側と内側がともにほぼ真円な環状となっている。外側の円は、外ダイ穴57の内周面であり、内側の円はマンドレル21の外周面によって構成されている。また、図5に示すように、第2の環状流路62の断面積は第1の環状流路60の断面積よりも小さい。
【0030】
一対の溝61の2つの出口61bから流出したゴム組成物11は、第1の環状流路60に沿って流れるとともに、下流方向72に流れる。第1の環状流路60に沿って流れるゴム組成物11は、合流(衝突)する。このとき、マニホールド部21aの下面に半円状の溝65が形成されているので、ゴム組成物11の2つの流れが合流した後、溝65の内部空間で乱流が発生する。この乱流によりウェルドラインの発生が抑制される。溝65の各々の幅t1(図3参照)は、図5(a)に示す第1の環状流路60を形成する外側の円の半径と内側の円の半径との差t(図3参照)に近づくほどよく、約80%以上であるとよい。言い換えると、幅t1は、差tの80%以上であるとよい。
【0031】
また、本実施形態では、第1の環状流路60は、内側の円の直径が16.8mmであり、外側の円の直径が30mmである環状断面形状であり、流路の長さは10.5mmである。また、溝65の半径r(図3参照)は、5.3mmである。第2の環状流路62では、第1の環状流路60よりも断面積を小さくすることによって、ゴム組成物11の下流方向72の流れ161が阻害される。これにより、一対の溝61の2つの出口61bのそれぞれから流出した2つのゴム組成物11の流れが周方向の流れ162に整流される。
【0032】
なお、本発明では、第2の環状流路62の形状は、外側の円と内側の円がほほ真円な環状断面形状に限定されない。例えば、図6(a)に示すように、環状断面のゴム組成物11の流れを均一にさせるために、外側(外ダイ穴57の内周面)が真円で、内側(先端部21bの外周面)が略楕円状であってもよい。この楕円は、一対の溝61の2つの出口を結ぶ方向を長軸とするほうがよい。これにより、一対の溝61の出口61b付近の流路の断面積が小さくなり、かつ出口61bから離れた位置の流路の断面積が大きくなる。そのため、一対の溝61から流出した直後の、ゴム組成物11の流れを均一にする効果を高めることができる。また、内側に略楕円形状を有した環状流路63を用いることで次のような効果がある。図5(b)に示すように、環状流路63が外側および内側ともに真円である場合は、一対の溝61の出口61bから流出したゴム組成物11の流れは、下流方向の流れ161が強い。一方、図6(a)に示すように、環状流路63が、外側が真円で、内側が略楕円形状である場合には、流れ161が阻害されるので、周方向の流れ162が強くなる。よって、周方向の流れ162が衝突して流れを乱すために、効率よく、ウェルドラインを発生しにくくすることができる。
【0033】
なお、ここでいう楕円形とは、図6(a)に示す楕円形だけでなく、図6(b)に示すように、半径が同じ2つの半円を互いに対向して配置し、各半円の円孤の両端を、長さが同じで互いに平行な2つの直線で結んだ形状も含む。
【0034】
図6(b)に示すこの第2の環状流路62では、内側が長軸の長さが26.8mm、短軸の長さが25.8mm、半径が12.8mmであり、外側の円の直径が30mmであり、流路の長さは約4.1mmである。なお、上述した各流路の寸法は、代表的な値である。
【0035】
また、本実施形態では、2本の溝61を使用しているために、第2の環状流路62の内側を略楕円形状としたが、本発明では、溝の本数に合わせて違う形状を取ることもできる。例えば、4本の溝を形成する場合は、第2の環状流路62は、外側がほぼ真円で内側が略四角形の形状となる。この第2の環状流路62では、内側の略四角形のそれぞれの頂点が溝の出口付近に配置されるようにした方がよい。
【0036】
第3の環状流路63は、内側および外側がともに略真円となっている。第3の環状流路63では、第2の環状流路62を通過したゴム組成物11が、押出し口59へ向かって流れる。
【0037】
上記のように構成されたクロスヘッドダイ20を使用することで、供給口50から供給されたゴム組成物11をウェルドラインの影響の小さい安定した環状断面流に変換することが可能となる。よって、ウェルドラインの影響による導電性ゴムローラ12の周方向の電気抵抗のムラを低減することができる。これにより、導電性ゴムローラ12の周方向における電気抵抗のばらつきを小さくすることが可能となる。また、クロスヘッドダイ20に形成された流路の全体的な容積を小さくするほうが、ゴム組成物11が流路に接している時間も短くなり、電気抵抗の変化も少なくなる。そのため、クロスヘッドダイ20における流路の容積は約32cm3以下であることが望ましい。ここでいう流路の容積とは、一対の溝61の容積と、第1の環状流路60〜第3の環状流路63の容積との合計である。第3の環状流路63の容積には、押出し口59までの容積が含まれる。換言すると、図1に示すように、押出し口59と、芯金13と、マンドレル21と、外ダイ穴57で囲まれる内部空間の容積である。
【0038】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0039】
(実施例1)
本実施例においては、上述したクロスヘッドダイ20を用いて導電性ゴムローラ12を押出し成形により製作した。
【0040】
まず、本実施例で使用したゴム組成物11について説明する。弾性体材料として、EPT−4045(三井石油化学株式会社製)を100部、酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)を5部、ステアリン酸(日本油株式会社製)を1部、PEG#400(日本油株式会社製)を1部用いた。導電性材料として、ケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラッブインターナショナル株式会社製)を8部、シーストSO(東海カーボン株式会社製)を30部用いた。可塑剤として、ダイアナプロセスオイルPW−380(出光株式会社製)を60部用いた。脱水剤として、VESTA BS(井上石灰工業株式会社製)を4部用いた。他の添加剤として、ノクセラーM(大内新興化学工業株式会社製)を1部、ノクセラーTET(大内新興化学工業株式会社製)を1部、ノクセラーTRA(大内新興化学工業株式会社製)を1部、サンファックス200S(鶴見化学工業株式会社製)を1部用いた。
【0041】
次に、本実施例で用いるマンドレル21の詳細な形状について説明する。本実施例では、第2の環状流路62は、内側を図6(b)に示すような楕円形状とした。また、一対の溝61において、断面積は約86mm2であり、半径は8mmであり、流れ方向に沿った流路長さは約35mmである。第3の環状流路63は、内側の円の直径が約16.8mmであり、外側の円の直径が30mmであり、流路の長さは約10.5mmである。また、溝65の半径は5.3mmである。第2の環状流路62は、内側が長軸の長さが26.8mm、短軸の長さが25.6mm、半径が12.8mmであり、外側は直径が30mmである円であり、流路の長さは約4.1mmである。第3の環状流路63は、内側と外側がほぼ真円であり、断面積の最大値が約505mm2であり、容積が約18600mm3である。そして、上述した各流路の容積の合計は、約32cm3である。
成形の条件は、下記のように設定した。
【0042】
押出し本数:導電性ゴムローラ2000本連続押出し
芯金:全長252mm、外径φ6.0mm
導電性ゴムローラ:押出し外径 平均φ8.7狙い
押出し機:三葉製作所製φ70mm、L/D20
スクリュー回転数:8.0rpm
ダイス径:φ8.8mm
押出し速度(1本の押出しに必要な時間):5秒
本実施例では、上記の未加硫のゴム組成物11を押出し機1で押出し加工すると同時に(並行して)、連続的に芯金13をクロスヘッドダイ20のマンドレル21の芯金ガイド穴31通過させることによって、芯金13の外周にゴム組成物11を被覆させる。そして、先行する芯金13の後端部と後続の芯金13の先端部との間を切断刃8で切断することによって、1本の導電性ゴムローラ12が成形される。その後、導電性ゴムローラ12を170℃で30分間熱風炉に投入して加硫を行う。加硫後の導電性ゴムローラの両端部10mmを突切り加工を行って芯金13を露出させ、ゴム部を直径8.5mmまで研磨して形状を整え、導電性ゴムローラを作製した。
【0043】
(実施例2)
本実施例における導電性ゴムローラは、第2の環状流路62を、図5(b)に示すように、外側と内側がほぼ真円な環状流路とした。この第2の環状流路62において、内側の円の直径が26.8mmであり、外側の円の直径が30mmであり、流路の長さは約4.1mmである。それ以外は、実施例1と同様にして製造する。
【0044】
(比較例1)
本比較例においては、図7に示す従来のクロスヘッドダイ120を使用して、実施例1と同様のゴム組成物11から導電性ゴムローラを押出し成形した。なお、図7では、図1に示すクロスヘッドダイ20と同様の構成要素については同じ符号を付している。
【0045】
図7に示すクロスヘッドダイ120において、マンドレル121の外周面には、一対のプリランド162付きマニホールド161が形成されている。マニホールド161は、展開部流路151を構成している。プリランド162の幅は約3mmである。展開部流路151の流路に垂直な断面の面積は、約710mm2である。また、クロスヘッドダイ120では、展開部流路151に後続して環状流路152が形成されている。環状流路152は、長さが90mmで断面積の最大値が1725mm2のテーパ形状である。なお、環状流路152を構成するマンドレル121の外周には、らせん状の溝153が形成されている。導電性ゴムローラの成形条件は、実施例1と同じである。なお、本比較例のクロスヘッドダイ120における流路の容積は、約330cm3である。
【0046】
(評価)
各実施例および比較例1で製造された導電性ゴムローラについて、押出し本数が400本間隔で、周方向の電流値を測定し、以下のように、電気抵抗のムラを計算した。具体的には、円柱状の金属ドラムに両端500g荷重で導電性ゴムローラを当接させ、金属ドラムを回転させた状態で、導電性ゴムローラと金属ドラムとの間に200Vの電圧を印加し、測定周期50msecで電流を測定する。そして、電流値の最大値を最小値で除算した値によって電気抵抗のムラを評価する。
【0047】
以上の実施例および比較例における測定結果をそれぞれ下記の表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
┌────┬─┬──┬──┬──┬──┬──┐
押出し本数│50│400│800│1200│1600│2000│
├────┼─┼──┼──┼──┼──┼──┤
実施例1 1.42│1.42│1.43│1.43│1.47│1.46│
├────┼─┼──┼──┼──┼──┼──┤
実施例2 1.46│1.45│1.46│1.49│1.51│1.50│
├────┼─┼──┼──┼──┼──┼──┤
比較例1 1.48│1.58│1.66│1.68│1.72│1.77│
└────┴─┴──┴──┴──┴──┴──┘
表1より、導電性ゴムローラの周方向における電気抵抗のムラに関して、各実施例で製造された導電性ゴムローラは、押出し本数が増えても安定した数値とすることが可能であった。よって、各例実施例のクロスヘッドダイで導電性ゴムローラを成形すると、周方向における電気抵抗のムラを小さくできると考えられる。
【0050】
一方、比較例で製造された導電性ゴムローラは、押出本数が増加するにつれて、周方向における電気抵抗のムラが大きくなっていることがわかる。これは、比較例1のクロスヘッドダイ120には、ゴム組成物11の2つの流れが合流するマニホールド161の終端部に、実施例1、2のクロスヘッドダイ20に設けられた溝65のような乱流を発生させる構造が設けられていないからだと考えられる。
【0051】
以上の結果より、本発明のクロスヘッドダイ20により、周方向における電気抵抗のムラが小さい導電性ゴムローラを成形することができる。
【0052】
なお、流路の圧力損失を考慮すると、芯金13の直径の範囲は4〜10mmが望ましく、導電性ゴムローラ12の外径の範囲は7mm〜16mmが望ましい。
【符号の説明】
【0053】
21 マンドレル
22 外ダイ
50 供給口
57 外ダイ穴
60 第1の環状流路
62 第2の環状流路
65 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部から下端部まで内部を軸方向に貫通した円形状の外ダイ穴と、前記外ダイ穴を囲む壁部を前記軸方向に交差する方向に貫通し、ゴム組成物を前記外ダイ穴に供給する供給口と、が形成された外ダイと、前記軸方向に内部を貫通し、芯金が流れる芯金ガイド穴が前記外ダイ穴の中心軸とほぼ同軸に形成され、前記外ダイ穴に設置されたマンドレルと、を有し、前記芯金ガイド穴から前記外ダイの前記下端部に向かって流出した前記芯金が、前記ゴム組成物により被覆された導電性ゴムローラを成形するクロスヘッドダイにおいて、
前記マンドレルが、マニホールド部と、前記マニホールド部の下面から前記軸方向の下側に延びた先端部と、を有し、前記マニホールド部が、外周面に、前記芯金ガイド穴の中心軸と前記供給口の中心軸を含む平面に対して対称な形状に形成された一対の溝であって、前記供給口に対向し、前記ゴム組成物が前記供給口から流入する入口と、前記入口から前記外周面の周方向に離れるとともに前記入口よりも前記軸方向の下側の位置で前記芯金ガイド穴の中心軸を挟んで互いに対向し、前記入口から流入した前記ゴム組成物が前記軸方向の下側に流出する2つの出口と、を有する一対の溝と、前記下面に前記芯金ガイド穴の中心軸に対して対称に形成され、前記2つの出口の各々に連通する半円状の溝と、を有し、
前記先端部の外周面と前記外ダイ穴の内周面との隙間に形成され、前記2つの出口および前記半円状の溝と連通し、前記2つの出口から流出した前記ゴム組成物が、前記周方向に流れる第1の環状流路と、
前記隙間の、前記第1の環状流路よりも前記軸方向の下側に形成され、前記第1の環状流路よりも断面積が小さい第2の環状流路と、をさらに有することを特徴とするクロスヘッドダイ。
【請求項2】
前記第2の環状流路の外側が円形であり、前記第2の環状流路の内側が楕円形である、請求項1に記載のクロスヘッドダイ。
【請求項3】
上端部から下端部まで内部を軸方向に貫通した円形状の外ダイ穴と、前記外ダイ穴を囲む壁部を前記軸方向に交差する方向に貫通した供給口と、が形成された外ダイと、
内部を前記軸方向に貫通し、前記外ダイ穴の中心軸とほぼ同軸に形成された芯金ガイド穴と、前記芯金ガイド穴の中心軸と前記供給口の中心軸を含む平面に対して対称な形状に形成された一対の溝が外周面に形成され、前記芯金ガイド穴の中心軸に対して対称な形状に形成された半円状の溝が下面に形成されたマニホールド部と、前記マニホールド部の前記下面から前記軸方向の下側に延びた先端部とを有するマンドレルと、を用いて、芯金がゴム組成物により被覆された導電性ゴムローラを製造する方法において、
前記ゴム組成物を前記供給口から前記外ダイ穴に供給し、供給された前記ゴム組成物を、前記供給口に対向した入口から、前記入口から前記外周面の周方向に離れるとともに前記入口よりも前記軸方向の下側の位置で前記芯金ガイド穴の中心軸を挟んで互いに対向する2つの出口まで流し、前記2つの出口から流出したゴム組成物を、前記先端部の外周面と前記外ダイ穴の内周面との隙間に形成された第1の環状流路に沿って、前記周方向に流し、前記第1の環状流路を通過した前記組成物を、前記隙間の、前記第1の環状流路よりも前記軸方向の下側に形成され、前記第1の環状流路よりも断面積が小さい第2の環状流路に沿って流す第1の工程と、
前記第1の工程と並行して、前記芯金を前記芯金ガイド穴に流す第2の工程と、
前記芯金ガイド穴から流出した前記芯金を、前記ゴム組成物により被覆する第3の工程と、を有することを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171281(P2012−171281A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37143(P2011−37143)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】