説明

クロスメンバ構造

【課題】側突による衝撃力に対するクロスメンバの耐力を向上させることができるようにする。
【解決手段】左右のサイドシル8に結合されるクロスメンバ12が中空部を備えた閉断面形状に形成され、サイドシルの側ほど中央部よりも低くなる傾斜上縁部35を左右に備えているクロスメンバ構造であって、クロスメンバの前壁又は後壁25に、壁面を車体前方又は車体後方に向けて膨出させてあるビード36が形成されており、このビードが、車体幅方向に沿わせて形成され且つ車体上下方向に所定間隔を隔てて配置された一対の横ビード36a,36bと、一対の横ビードの車体横側における端部どうしを一連に接続する接続ビード36cとを備え、接続ビードが、車体正面視で傾斜上縁部に沿わせて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の左右横側の下部に沿って配設された左右のサイドシルに結合されるクロスメンバが、車体幅方向に沿う中空部を備えた閉断面形状に形成され、前記クロスメンバが、前記サイドシルの側ほど中央部よりも低くなる傾斜上縁部を左右に備えているクロスメンバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記クロスメンバ構造は、車体の横側方からの衝突(以下、側突という)による衝撃力をクロスメンバを介して分散させることができるように設けてある。このために、クロスメンバを側突による衝撃力に耐え得るように補強する必要がある。
従来のクロスメンバ構造では、クロスメンバの前壁に、壁面を車体前方又は車体後方に向けて膨出させてある横ビードを車体幅方向の一方向に沿わせて形成して、クロスメンバを側突による衝撃力に耐え得るように補強してある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−247058号公報(図4(A))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、クロスメンバの前壁のうちの横ビードが形成されていない部位に側突による衝撃力が作用すると、その横ビードが形成されていない部位に折れなどの変形が生じ易く、側突による衝撃力に対するクロスメンバの耐力が低下し易い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、側突による衝撃力に対するクロスメンバの耐力を向上させることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、車体の左右横側の下部に沿って配設された左右のサイドシルに結合されるクロスメンバが、車体幅方向に沿う中空部を備えた閉断面形状に形成され、前記クロスメンバが、前記サイドシルの側ほど中央部よりも低くなる傾斜上縁部を左右に備えているクロスメンバ構造であって、
前記クロスメンバの前壁又は後壁に、壁面を車体前方又は車体後方に向けて膨出させてあるビードが形成されており、前記ビードが、車体幅方向に沿わせて形成され且つ車体上下方向に所定間隔を隔てて配置された一対の横ビードと、前記一対の横ビードの車体横側における端部どうしを一連に接続する接続ビードとを備え、前記接続ビードが、車体正面視で前記傾斜上縁部に沿わせて形成されている点にある。
【0006】
本構成のクロスメンバ構造であれば、補強部材を別途追加して設けることなく、側突による衝撃力が一対の横ビードの間の部位に作用しても、その衝撃力を、接続ビードを介して、一対の横ビードに分散して伝達させることができ、一対の横ビードの間の部位で折れなどの変形が生じ難い。
また、接続ビードによりクロスメンバの前壁又は後壁の面剛性が向上するので、騒音や振動の発生も防止することができる。
さらに、接続ビードが、車体正面視で傾斜上縁部に沿わせて形成されているので、クロスメンバの前壁又は後壁の傾斜上縁部に沿う部位を補強してその変形を防止することができる。
したがって、側突による衝撃力に対するクロスメンバの耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】車体の概略側面図である。
【図2】車体の概略平面図である。
【図3】(a)はクロスメンバ構造の車体幅方向中央部における縦断面図、(b)はクロスメンバ構造の車体幅方向端部における縦断面図である。
【図4】(a)は後壁用板材の斜視図、(b)はビードの横断面図である。
【図5】補強部材の斜視図である。
【図6】(a)はクロスメンバ構造の分解斜視図、(b)はクロスメンバ構造の斜視図である。
【図7】(a)は後壁用板材の正面図、(b)はクロスメンバ構造の一部切欠正面図である。
【図8】クロスメンバ構造の平面図である。
【図9】第2実施形態を示す後壁用板材の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、左右略対称に組み立てられた車体Aを有する自動車を示す。
車体Aは、車室1を形成する板金製の車体本体2と、車体本体2を支持する板金製の車体フレーム3と、車体フレーム3の下側前部に支持される板金製のサブフレーム4とを備えている。
サブフレーム4に左右一対の前輪5が支持され、車体フレーム3の後部に左右一対の後輪6が支持されている。
【0009】
車体フレーム3は、車体前後方向に延びる左右一対の前サイドフレーム7と、前サイドフレーム7の横外側方の夫々に配置される左右一対のサイドシル8と、各サイドシル8の後端部から後方に延びる左右一対の後サイドフレーム9とを備えている。
【0010】
サイドシル8は、車体Aの左右横側の下部に沿って前車輪5と後車輪6との間に配設され、後サイドフレーム9の前端部がサイドシル8の後端部にスポット溶接などにより結合されている。
【0011】
前サイドフレーム7の前端部どうしを結合する前端部クロスメンバ10と、前サイドフレーム7の前後方向中間部とサイドシル8の前端部とを結合する左右の前部クロスメンバ11と、サイドシル8の後端部にスポット溶接などにより結合される後部クロスメンバ12と、後サイドフレーム9の後端部どうしを結合する後端部クロスメンバ13とが設けられている。
【0012】
車体本体2の下部は、車体前後方向に並設した前フロアパネル14と後フロアパネル15とを有している。前フロアパネル14と後フロアパネル15は、前サイドフレーム7、後サイドフレーム9、前部クロスメンバ11、後端部クロスメンバ13に載置されて、スポット溶接などにより互いに結合されている。
【0013】
前フロアパネル14と後フロアパネル15は、後部クロスメンバ12を介してスポット溶接などにより互いに結合され、左右の側端縁がサイドシル8の内側面にスポット溶接などにより結合されている。
【0014】
車体本体2は、左右両側部から上方に向って突出するフロントピラー2a、センタピラー2bおよびリヤピラー2cを有し、これらにルーフパネル2dが支持されて、車室1が内側に形成されている。
【0015】
車室1の前部にはハンドル16が操向操作自在に支承され、ハンドル16よりも後部には、左右一対のフロントシート17と左右一対のリアシート18とが配設されている。
【0016】
リアシート18の夫々は、左右のリアシート18毎の外側シートレール19aと、左右のリアシート18毎の内側シートレール19bを一体に備えた中央シートレール20とを介して車体Aに支持されている。
【0017】
前フロアパネル14の車体幅方向中央部であって、左右のフロントシート17の間の位置には、上方に向って膨出し、かつ、車体前後方向に沿って延びるトンネル部21を形成して、前フロアパネル14の剛性を高めてある。
【0018】
後部クロスメンバ12が本発明によるクロスメンバ構造を備え、車体幅方向両端部が左右のサイドシル8にスポット溶接などにより互いに結合されている。
後部クロスメンバ12は、図3に示すように、外側シートレール19aを介してリアシート18を支持する外側支持部22aが車体幅方向両端部に設けられ、中央シートレール20を介してリアシート18を支持する内側支持部22bが車体幅方向中央部に設けられている。
【0019】
後部クロスメンバ12は、前壁23を構成する前壁用板材24と、後壁25を構成する後壁用板材26とを、スポット溶接などにより互いに結合して、車体幅方向に沿う中空部27を備えた略平行四辺形の閉横断面形状に形成されている。
尚、前壁23及び後壁25を、前フロアパネル14に対して略垂直の姿勢で取り付けて、上下方向の荷重に対する耐力を高めてあってもよい。
【0020】
後壁用板材26は、図4にも示すように、後壁25の下縁側に前フロアパネル14が車体前方に向けて延設され、後壁25の上縁側に後壁後方延設板部28が車体後方に向けて鍔状に延設されている。
前フロアパネル14が後部クロスメンバ12の下壁29を構成しており、後壁後方延設板部28が後フロアパネル15にスポット溶接などにより結合されている。
【0021】
前フロアパネル14の車体幅方向中央部には、車体前後方向に沿うトンネル部21を形成する下向き凹面部30が、後壁25の車体後方に向けて開口するようにプレス成形されている。
【0022】
前壁用板材24は、図6にも示すように、前壁23の下縁部に車体前方に向けて鍔状に延設された前方延設板部31と、前壁23の上縁部に車体後方に向けて鍔状に延設された前壁後方延設板部32とを備えている。
前方延設板部31が前フロアパネル14にスポット溶接などにより結合されている。
前壁後方延設板部32が後部クロスメンバ12の上壁33を構成しており、後壁後方延設板部28にスポット溶接などにより結合されている。
【0023】
前壁23及び後壁25の夫々は、リアシート18に対する乗り降りが容易になるように、車体正面視で、車体幅方向中央部において車体幅方向と略平行な中央上縁部34と、車体幅方向両端部においてサイドシル8の側ほど中央上縁部34よりも低くなる左右の傾斜上縁部35とを備えている。
【0024】
後壁25には、壁面を車体後方に向けて膨出させてあるビード36がプレス成形により形成されている。
ビード36の横断面形状は、図4(b)に示すように、略全長に亘って、車体後方に向けて立ち上がる一対の側壁部38どうしを接続してある略コの字状又はU字状又はV字状に形成されている。
【0025】
ビード36は、図4,図7に示すように、車体幅方向に沿わせて形成され且つ車体上下方向に所定間隔を隔てて配置された一対の横ビード36a,36bと、その一対の横ビード36a,36bの車体横側における端部どうしを一連に接続する接続ビード36cと、車体幅方向中央部に沿って車体上下方向に形成された縦ビード36dとを備えている。
【0026】
一対の横ビード36a,36bのうちの下側横ビード36bは、車体幅方向両側に亘って一連に連続する左右対称に形成され、上側横ビード36aは、車体幅方向中央部で左右に分離して形成されて、下側横ビード36bの両端部の夫々に対して対を成すように各別に配設されている。
接続ビード36cは、車体正面視で傾斜上縁部35に沿わせて形成されている。
【0027】
縦ビード36dは、下側横ビード36bに交差する状態で、下端部が下向き凹面部30の車体後方側端部から立ち上がり、上端部が前壁後方延設板部32の上面に開口するように形成されている。
【0028】
図3(a)に示すように、前壁23の後面の車体幅方向中央部には、車体上下方向に沿わせて形成された左右一対の補強ビード37aを備えた板金製の補強部材37が、スポット溶接などにより一体に接合されている。
補強部材37は、中央シートレール20を介してリアシート18を支持する内側支持部22bを構成する。
【0029】
補強部材37は、図5に示すように、補強ビード37aが形成された補強板37bと、補強板37bの上端側に車体後方に向けて延設された上側フランジ37cと、補強板37bの下端側に車体前方に向けて延設された下側フランジ37dとを一体に備えている。
【0030】
補強ビード37aは、下端側が下側フランジ37dから立ち上がるように形成され、かつ、上端側が上側フランジ37cの上面側に開口するように形成されている。中央シートレール20は、前壁後方延設板部32を挟んで、上側フランジ37cに形成してある左右のねじ孔37eにビス止めされている。
【0031】
図6,図7(b)に示すように、上壁33は、前壁23における中央上縁部34に沿って車体後方に向けて延設されている車体幅方向中央部の中央上壁33aと、前壁23における左右の傾斜上縁部35に沿って車体後方に向けて延設されている傾斜上壁33bとを備えている。
【0032】
傾斜上壁33bは、中央上壁33aの左右両側の夫々に対してサイドシル8の側ほど低くなるように屈曲して連続している。
また、前壁23が上壁33の前縁に対して下向きに屈曲して連続している。
【0033】
外側シートレール19aを介してリアシート18を支持する外側支持部22aは、図3(b),図6,図7(b)に示すように、後部クロスメンバ12の車体幅方向両端部に形成された、上壁33と前壁23との夫々に対して屈曲して連続する傾斜壁39に設けてある。
【0034】
図8に示すように、傾斜壁39は、上壁33との屈曲部40と前壁23との屈曲部41とが、中央上壁33aと傾斜上壁33bとの屈曲部42よりも車体幅方向中央側に位置する交点Bで交わるように形成されている。
【0035】
外側支持部22aは、傾斜壁39の裏面に、ねじ孔を形成してある板金製のブラケット43をスポット溶接などにより接合して構成してあり、外側シートレール19aをブラケット43にビス止めしてある。
【0036】
〔第2実施形態〕
図9は、本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、接続ビード36cが、車体正面視で車体横側に向けて突出する横U字状に配置して形成されている。
【0037】
本実施形態によれば、側突による衝撃力が、一対の横ビード36a,36bの間の部位に作用しても、その衝撃力を、接続ビード36cを介して、一対の横ビード36a,36bに効率良く伝達させることができるだけでなく、側突により一対の横ビード36a,36bの間の部位に作用した衝撃力を、接続ビード36cを介して、一対の横ビード36a,36bに車体幅方向に沿う軸力として作用させ易く、ビード36が変形し難い。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0038】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるクロスメンバ構造は、ビード36(横ビード36a,16b、接続ビード36c、縦ビード36d)が、壁面を車体前方に向けて膨出させるようにプレス成形されていてもよい。
2.本発明によるクロスメンバ構造は、クロスメンバ12の前壁23にビード36がプレス成形により形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0039】
A 車体
8 サイドシル
12 クロスメンバ
23 前壁
25 後壁
27 中空部
35 傾斜上縁部
36 ビード
36a 横ビード
36b 横ビード
36c 接続ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の左右横側の下部に沿って配設された左右のサイドシルに結合されるクロスメンバが、車体幅方向に沿う中空部を備えた閉断面形状に形成され、
前記クロスメンバが、前記サイドシルの側ほど中央部よりも低くなる傾斜上縁部を左右に備えているクロスメンバ構造であって、
前記クロスメンバの前壁又は後壁に、壁面を車体前方又は車体後方に向けて膨出させてあるビードが形成されており、
前記ビードが、車体幅方向に沿わせて形成され且つ車体上下方向に所定間隔を隔てて配置された一対の横ビードと、前記一対の横ビードの車体横側における端部どうしを一連に接続する接続ビードとを備え、
前記接続ビードが、車体正面視で前記傾斜上縁部に沿わせて形成されているクロスメンバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173506(P2011−173506A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38878(P2010−38878)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】