クロス貼り施工方法及びその接着剤

【課題】 施工時間短縮と刺激臭の発生の防止を実現しつつ、壁やパーティションの下地に対し、より均一で強固なクロス貼りを可能とする。
【解決手段】 本願発明は、壁又はパーティションに対してクロス貼りを行う、クロス貼り施工方法において、壁又はパーティションの下地に対して、プライマを塗布することなく、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン及びアクリル共重合樹脂エマルジョンの少なくとも何れか一方の樹脂エマルジョンと、でん粉系接着剤とを、主成分とする接着剤を、クロスに塗り、当該クロスを壁又はパーティションの上記下地に直接貼り付けるものであることを特徴とするクロス貼り施工方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、クロス貼り施工方法及びその接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄板などを下地とする、建物の壁やパーティション(間仕切り)に対して、クロス(壁紙)を貼り付けるために、順に、養生工程、シーラー処理工程、捨て糊塗布工程、パテ塗り工程を経た後、クロス貼り工程を行うのが一般的であった。
上記の養生工程は、枠回り、柱、巾木、見切りなどに、パテや糊などが付着しないようにマスキングテープで覆うことにより、養生する工程である。
上記のシーラー処理工程は、プライマ原液を、ハケや(ペイント)ローラーにて下地全面に均一に塗布する工程であり、1〜2時間の乾燥時間を要する。
上記の捨て糊塗布工程は、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンを原液或いは水で希釈して、ハケやローラーにて、下地全面に均一に塗布する工程であり、2〜3時間の乾燥時間を要する。
上記のパテ塗り工程は、一般に、ケイ砂、石膏及び樹脂などを主成分とする不陸調整パテと呼ばれる練りパテ(カラーパテ)を用いて、目地部、凹部を埋め、下地を平滑化する工程であり、3〜4時間の乾燥時間を要する。
従って、クロス貼り工程に到るまでに、最低でも6時間、通常7時間乃至10時間といった長時間を要するものであった。
また、一般に揮発性を有する成分を含有するプライマは、酢酸エチルやメチルエチルケトン、クロロプレンゴムなどが含まれ、刺激臭を発するものであり、作業者や作業場周辺に居る者に、気分を悪くさせたり、不快感を感じさせたりするものであった。
【0003】
このようなクロス貼り工程に到るまでの工程を短縮する方法として、特許文献1や2に見られるように、上記のクロス貼り工程に到るまでの工程のいくつかを省略して、下貼り紙を塗布した後に、壁やパーティションなどの下地に、クロス貼りを行うものが提案されている。また、上記先行技術(特に特許文献1)は、プライマ処理を施さないことにより、上記の悪臭の問題を回避しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235417号公報
【特許文献2】特許第3560018号公報
【特許文献3】特許第3967732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、クロス貼りの工程に到るまでの時間を短縮できるものではあっても、浮きや剥離を生じさせない、クロスの強固な固定という面では、十分ではなかった。また、下貼り紙を貼る手間が生じた。
特許文献3では、既設の壁紙を利用して、その上に新たな壁紙を貼るものであり、上記下貼り紙を用意する手間はないものの、下地に対してムラなく壁紙が貼れているか、また、下地と新設する壁紙との間に十分な固定強度が確保されているか、疑問であった。また、当然、この引用文献3では、新設する壁やパーティションを対象とするものではない。
上記問題を鑑みて、本願発明は、下地に対してクロスの直張りを、確実に行うことを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本願の請求項1に係る発明は、壁又はパーティションに対してクロス貼りを行う、クロス貼り施工方法について、次の構成を採るものを提供する。
即ち、この方法は、壁又はパーティションの下地に対して、プライマを塗布することなく、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン及びアクリル共重合樹脂エマルジョンの少なくとも何れか一方の樹脂エマルジョンと、でん粉系接着剤とを、主成分とする接着剤を、クロスに塗り、当該クロスを壁又はパーティションの上記下地に直接貼り付けるものである。
尚、パーティションには、間仕切りの他、扉も含む。
また、本願の請求項2に係る発明では、上記本願の請求項1の発明に係るクロス貼り施工方法にあって、次の構成を採るものを提供する。
即ち、下地は、金属製下地、塗装下地、塩化ビニル下地、ラワン合板、ポリ合板、ケイカル板、石膏ボードの何れかであり、クロスは、布クロス又はビニールクロスであり、
上記のでん粉系接着剤は、アミノールを主成分とし、上記のエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンは、プラゾールSSを主成分とし、上記のアクリル共重合樹脂エマルジョンは、パラダインコンタクトセメントNo.1を主成分とする。
更に、本願の請求項3に係る発明では、上記本願の請求項2に係る発明にあって、上記の金属製下地は、鉄板、ステンレス、アルミニウム製の何れかであることを特徴とするクロス貼り施工方法を提供する。
本願の請求項4に係る発明では、上記本願の請求項3に係る発明にあって、上記の金属下地は、SECC、SPCC、SGCCの何れかであることを特徴とするクロス貼り施工方法を提供する。
本願の請求項5に係る発明では、上記本願の請求項4に係る発明にあって、上記の金属下地は、SECCであり、接着剤は、アミノール10重量部に対し、樹脂エマルジョンを1重量部以上20重量部以下含むものであることを特徴とするクロス貼り施工方法を提供する。
本願の請求項6に係る発明では、上記本願の請求項2に係る発明にあって、上記の塗装下地は、焼付粉体塗装であって下地研磨処理を施したものと、水性アクリル塗装下地と、ペンキ塗装下地と、メラミン焼付塗装下地の何れかであることを特徴とするクロス貼り施工方法を提供する。
本願の請求項7に係る発明では、壁又はパーティションに対して、当該壁又はパーティションの下地に直接、布クロス又はビニールクロスを貼るのに用いられる、クロス直貼り用接着剤であって、次の構成を採るものを提供する。
即ち、この接着剤は、プラゾールSS及びパラダインコンタクトセメントNo.1の少なくともいずれか一方を含有する樹脂エマルジョンと、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に溶かしたアミノールとを、主成分とするものであり、アミノール10重量部に対して、上記樹脂エマルジョンを1重量部以上20重量部以下含有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の各発明は、壁やパーティションに対して、養生工程、捨て糊塗布工程といったクロス貼りの工程に至るまでの工程を不要として、クロス貼りを行うための工程全体の所要時間を短縮した。このようにクロス貼りに至るまでの工程を排除し、また、先行技術のような別途の裏紙を不要とするため、作業者に熟練者を要しない。また、プライマを排除して、刺激臭の発生を抑制した。
特に、本願発明は、上記施工時間短縮と刺激臭の発生の防止を実現しつつ、下地に対し、より均一で強固なクロス貼りを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願発明の実施の形態を説明する。
(本願発明の概要)
本願発明は、壁又はパーティションの下地に対し、プライマを塗布することなく、壁やパーティションが設置された現場において、接着剤にて、直接クロス貼りを行う、クロス貼りの施工方法である。
クロスには、一般的な布クロスやビニールクロスを用いる。布クロスには、裏面が紙製の織物壁装材である一般的なものを採用することができる。ビニールクロスには、裏面が紙製の一般的な壁紙ビニールクロスを採用することができる。
上記の接着剤は、(D)樹脂エマルジョンと、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に溶かした(A)でん粉系接着剤とを、主成分とするものである。この水溶液に用いる水は、水道水を使用することができる。
上記(D)樹脂エマルジョンは、(B)エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン及び(C)アクリル共重合樹脂エマルジョンの少なくとも何れか一方を含む。
下地において、サビの発生を考慮する必要がない場合や、サビ抑制効果が得られない場合は、(A)のでん粉系接着剤を、水で溶かせばよく、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液に溶かさずに実施すればよい。
【0009】
(接着剤の詳細)
(A)でん粉系接着剤には、でん粉、溶媒として水、保存剤とを成分とするものを採用する。特に、保存剤は、でん粉系接着剤全体100%中、0.2重量%以下とし、安息香酸ナトリウム及びTBZ(Thiabendazole)を主成分とするものを採用することができる。でん粉系接着剤には、特に、ペースト状で、摂氏20度の環境において比重を1.00〜1.20とし、摂氏20度の環境でpHを4〜8とするものを採用するのが好ましい。
でん粉接着剤には、ホルムアルデヒドや、その他の空気を汚染する揮発性有機化合物を含有しないものを採用する。
このようなでん粉系接着剤として、市販のアミノール(登録商標/ヤヨイ化学工業株式会社/富山県高岡市下麻生4649)が適する。
【0010】
(B)エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンには、合成樹脂成分としてエチレン・酢酸ビニル樹脂47〜51重量%と、溶剤として水49〜53重量%、防腐剤・防カビ剤を主成分とするその他の成分0.1重量%以下の、合計100%のものを採用する。エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンには、特に、ペースト状で、摂氏20度の環境下において比重1.05〜1.15とし、摂氏20度の環境でpH3.5〜4.5とするものを採用するのが好ましい。
このエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンには、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンを含有しないものを採用する。
このようなエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンとして、市販のプラゾールSS(登録商標/ヤヨイ化学工業株式会社)が適する。
【0011】
(C)アクリル共重合樹脂エマルジョン、即ちアクリル樹脂系水性エマルジョン(化学名)には、アクリル共重合樹脂を主成分とする固形成分45〜55重量%と、水45〜55重量%とを有し、これらの合計を100%とするものを採用する。特に、摂氏20度の環境においてpH7〜8とするものを採用するのが好ましい。
このようなアクリル樹脂系水性エマルジョンとして、市販のパラダインコンタクトセメントNo.1(商標/矢沢化学工業株式会社/群馬県邑楽郡邑楽町大字中野130)が適する。
【0012】
前記の炭酸水素ナトリウムとしては、99%以上の純度のものを採用するのが好ましい。このような炭酸水素ナトリウムとして、MSDS No.S‐0050‐08(品番/大和薬品工業株式会社/大阪市鶴見区今津北1丁目10番30号)が適する。
【0013】
(クロス貼りの対象とする下地)
クロス貼りを行う壁又はパーティションの下地として、金属製下地、塗装下地、塩化ビニル板(以下必要に応じて塩ビ板と表記する。)であって研磨処理(下地研磨処理)がなされたもの、ラワン合板、ポリ合板、ケイカル板、又は、石膏ボードを対象とすることができる。
【0014】
(各下地について)
施工対象とする金属下地としては、鉄板(鋼板)である、SPCC、SECC、SGCCを挙げることができる。但し、サビの発生のしにくさの面では、SECC及びSGCCが優れる。また、コスト面では、SECC及びSPCCが優れる。従って、サビと経済性の両観点からは、SECCの下地をクロス貼りの施工対象とするのが最も好ましい。
【0015】
金属下地として、上記以外に、アルミニウム下地(以下必要に応じてアルミ下地と表記する。)や、ステンレス(SUS)下地を、クロス貼りの施工対象とすることができる。
【0016】
塗装下地として、焼付粉体塗装下地、水性アクリル塗装下地、ペンキ塗装下地、メラミン焼付塗装下地を、クロス貼りの施工対象とすることができる。
塗装下地として、焼付粉体塗装下地については、特に下地研磨処理を施したものを施工対象とするのが好ましい。下地研磨処理を施していない焼付粉体塗装下地では、接着剤において上記各成分の配合比率の選択の幅が著しく制限されるからである。メラミン焼付塗装の場合下地研磨処理を行わなくてもよいが、この場合も下地研磨処理を行うことにより、接着剤において上記各成分の配合比率の選択の幅が広がるので好ましい。
【0017】
ポリ合板についても、下地研磨処理を行ったものと行っていないものの双方を施工の対象とすることができるが、下地研磨処理を行わないと接着剤において各成分の配合比率の選択の幅が制限されるため、下地研磨処理を行うのが好ましい。
ケイカル板については、シーラー処理を行わないものを施工対象とするのが適切である。
下地については、一般的に表面の摩擦抵抗が大きいものほど、クロス貼りの固定強度が確保し易い。このため、上記の接着剤にて、クロスの直貼りに適さない下地であっても、サンドペーパーをかけるなど表面の研磨処理を行うことで、表面を毛羽立たせることによって、クロスの直貼りが可能となる場合もある。
【0018】
(下地と接着剤の成分比率との間に認められる関係)
この接着剤の主成分は、上記の(A)でん粉系接着剤と、(D)樹脂エマルジョンである。金属下地全般を施工対象とする場合、(D)樹脂エマルジョンは、(B)エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンと、(C)アクリル共重合樹脂エマルジョンの双方を含有するものとするのが好ましい。
具体的には、(A)にアミノール、(B)にプラゾールSS、(C)にパラダインコンタクトセメントNo.1を用いるものとして、以下具体的に説明する(以下、A〜Dの記号について成分名を付記せずに記載する場合、煩雑を避けるため、括弧を省略する)。
【0019】
上記の金属下地全般を施工対象とする場合、Aを10重量部に対してDを2重量部以上20重量部以下とする。上記の金属下地全般を施工対象とする場合、特に、Aを10重量部に対しDはB,C双方からなるものとし当該B,C夫々を1重量部10重量部以下とする。SECCのみを対象とする場合、A10重量部に対して、B,C何れも0.5重量部以上10重量部以下とするのが好ましい。B,Cの何れについても、10重量部を超えるとそれ以上固着強度等の効果が得られないにも拘わらず粘度が増して取り扱いに難くなる。
A10重量部に対してDが1重量部以下の場合、SPCC及びSGCCでは、浮きが生じると共に下地に対するクロスの十分な固着強度が得られず、特に、SGCCとステンレス下地では、A10重量部に対してBが1重量部含まれていたとしてもCが全く含まれていない場合、浮きが生じると共に下地に対するクロスの十分な固着強度が得られないからである。
また、アルミ下地の場合は、A10重量部に対して、Cが1重量部含まれていたとしてもBが全く含まれない場合、浮きが生じると共に下地に対するクロスの十分な固着強度が得られない。このため、金属下地全般を施工対象とする場合、上記の通り、特に、A10重量部に対してB,C夫々を1重量部以上10重量部以下とするのが好ましい。この場合も、上限を超えると、効果のそれ以上の向上が見られないのに対し粘度が増大して取り扱い難いものとなる。
【0020】
一方、金属下地のうちSECCのみを対象とする場合や、金属下地以外では、水性アクリル塗装下地、ペンキ塗装下地、下地研磨処理を施したメラミン焼付塗装下地、下地研磨処理を施した塩ビ板、ラワン合板、下地研磨処理されたポリ合板、ケイカル板、石膏ボードのみを施工対象とする場合、A10重量部に対して、BとCとが等分に含有されるのであれば、A10重量部に対して、Dは1重量部以上20重量部とすることができ、また、A10重量部に対して、DについてBとCのいずれか一方を含有するものであっても、Dを1重量部以上とすることで、均一で確実なクロス貼りを行うことができる。
前述の、SPCC、SECC、SGCC、アルミ下地、ステンレス下地、下地研磨処理済の焼付粉体塗装下地、下地研磨未処理の焼付粉体塗装下地、水性アクリル塗装下地、ペンキ塗装下地、メラミン焼付塗装下地、下地研磨処理済塩ビ板、ラワン合板、下地研磨未処理のポリ合板、下地研磨処理済のポリ合板、ケイカル板、及び、石膏ボードの全般に対応する必要がある場合、A10重量部に対して、BとCの双方が10重量部含まれている必要がある。
下地研磨未処理の焼付粉体塗装下地を施工対象としない場合、即ち、SPCC、SECC、SGCC、アルミ下地、ステンレス下地、下地研磨処理済の焼付粉体塗装下地、水性アクリル塗装下地、ペンキ塗装下地、メラミン焼付塗装下地、下地研磨処理済塩ビ板、ラワン合板、下地研磨未処理のポリ合板、下地研磨処理済のポリ合板、ケイカル板、及び、石膏ボードを施工対象とする場合、Aの10重量部に対して、Bを1重量部以上、Cを2重量部以上とすることによって、均一で強固なクロス貼りの効果を得ることができる。
特に、金属下地と塗装下地とを施工対象とする場合、Aの10重量部に対して、B及びCを夫々1重量部以上とするのが理想的であり、このような成分比率とすることにより、塩ビ板、ラワン合板、下地研磨処理済みのポリ合板、ケイカル板、石膏ボードの施工においても、浮きを抑え固着強度を十分に確保することができる。
但し、上記の含有比率の範囲に本願発明の接着剤を限定するものではない。
【0021】
(施工手順)
この施工方法は、次のa)〜e)の各工程を順次遂行する。
a)接着剤の形成工程
接着剤は、壁やパーティションのある現場において、上記の(D)樹脂エマルジョンと、水又は炭酸水素ナトリウムの水溶液に溶かしたでん粉接着剤と、混合して形成する。
この接着剤の形成について、具体的には、樹脂エマルジョンを構成する(B)にプラゾールSSや(C)パラダインコンタクトセメントNo.1と、(A)アミノールの基材を、同一容器内で攪拌し、このとき粘度調整に水で希釈し適切な粘度と接着性能が発揮できる分量にする。
当該混合接着剤の粘度は、20000CPS〜30000CPSの範囲内に調整する。
攪拌により、混合する成分比率は、例えばA:B:C=10:1:1などA10重量部に対して、B,Cを夫々1重量部以上とする。この場合、当該混合接着剤の塗布量を、下地に応じて1平方メートルあたり45〜55グラムとするのが好ましい。但し接着剤の成分比率や塗布量について、このような数値範囲に限定するものではない。
b)接着剤塗布工程
壁紙の糊付けに一般的に利用される周知の糊付け装置を用いて、上記現場において、クロス裏面全体に、上記接着剤を均一に塗布する。周知の糊付け装置を用いる他、起毛ローラーにより、クロス裏面に、上記接着剤を塗布してもよい。
c)熟成工程
クロス裏面へ接着剤を塗布して、そのまま放置することにより、5〜10分熟ませる。
d)クロス貼り工程
接着剤を熟れさせた後、クロスを、プライマが施されていない壁面又はパーティションの下地に、直接貼り付ける。
クロスの貼り付けの際、エアの膨れや皺を毛足の短いブラシで掃き伸ばすように下地へクロスを貼り込む。このとき、必要に応じてプラスティック製の平ベラなどでクロス表面を撫でて余分な接着剤を、下地とクロスの間から外部へかき出す。
e)乾燥工程
乾燥時間は気温と下地素材によって調整すればよいが、おおよそ常温即ち摂氏20度程度で、7時間〜12時間で乾燥する。
気温または室温が10度未満である場合、乾燥時間を著しく長く必要とすることがあるので、その場合、空調や暖房などにて室温を高める調節を行うことにて対応することができる。
尚、下地近辺に対し、必用に応じて、各工程遂行前に、前処理工程として、シーラー処理を行えばよい。但し、不要であれば、シーラー処理を行わずに実施することも可能である。
【実施例】
【0022】
対象とする各下地に対して、クロス貼りに用いる接着剤中の、(A) でん粉系接着剤(壁紙施工用接着剤)と、(B)エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン(壁紙施工用合成樹脂接着剤)と、(C) アクリル共重合樹脂エマルジョンの比率を変えて、試験を行った結果を表1に示す。
試験は、布クロスにて縦23cm横14cmの試験片を形成した。この布クロスは、表側から順に布と防水紙と裏紙とが積層されて1枚の壁紙を構成する一般的なものである。
クロス裏面において、上辺、下辺、左辺、右辺の端から2cm以内の範囲については、接着剤を塗布せず、当該範囲の内側に均一に接着剤を塗布した。
即ち、この試験片の裏面の上記範囲に対して、接着剤の成分比率以外について、上記a)〜e)の各工程を実施した。e)乾燥工程における乾燥時間は、7時間とした。
【0023】
【表1】

【0024】
表1の丸印と三角印にて示す例が、本願発明の実施例であり、表1のバツ印にて示す例が比較例である。
表1中「A10:B1:C1」等の、A,B,Cの横の数値は、A,B,C夫々の重量(単位グラム)を示す。
表1に示す通り、SPCC、SECC、SGCC、SGCC(ゼロスパン)、アルミ下地、ステンレス下地、下地研磨処理済の焼付粉体塗装下地、下地研磨未処理の焼付粉体塗装下地、水性アクリル塗装下地、ペンキ塗装下地、下地研磨未処理のメラミン焼付塗装下地、下地研磨処理済のメラミン焼付塗装下地、下地研磨処理済塩ビ板、ラワン合板、下地研磨未処理のポリ合板、下地研磨処理済のポリ合板、ケイカル板、及び、石膏ボードの夫々の施工対象について、A10グラムに対し、第1の接着剤はB0.5グラムとC0.5グラム、第2の接着剤はB0.5グラムとC1グラム、第3の接着剤はB1グラムとC0.5グラム、第4の接着剤はB0グラムとC1グラム、第5の接着剤はB1グラムとC0グラム、第6の接着剤はB1グラムとC1グラム、第7の接着剤はB2グラムとC1グラム、第8の接着剤はB1グラムとC2グラム、第9の接着剤はB2グラムとC2グラム、第10の接着剤はB3グラムとC3グラム、第11の接着剤はB5グラムとC5グラム、第12の接着剤はB10グラムとC10グラム、含有する。
【0025】
表1に略記した下地の内容については、次の通りである。
(金属下地)
1.SPCC
SPCC鋼板: JIS G3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯
2.SECC
SECC鋼板: JIS G 3313 電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
3.SGCC
SGCC鋼板(レギュラースパングル): JIS G 3302 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
4.SGCC(ゼロスパングル)
SGCC鋼板(ゼロスパングル):JIS G 3302 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯
5.アルミ下地
アルミニウム板: JIS A1050P(アルマイトメッキ処理)
6.ステンレス下地
ステンレス板 : JIS SUS430 鏡面処理
【0026】
(塗装下地)
7.焼付粉体塗装(未処理)
焼付粉体塗装鋼板(下地鋼板種別SPCC)
8. 焼付粉体塗装(下地研磨処理)
焼付粉体塗装鋼板(下地鋼板種別SPCC)塗装面#240番ペーパー研磨処理
9.水性アクリル塗装下地
水性アクリル塗装(水性アクリルエマルジョンペイント)ケイカル板下地ローラー塗装
10.ペンキ塗装下地
ペンキ下地塗装(油性ペイント塗装)鋼板下地ローラー塗装
11.メラミン焼付塗装(未処理)
メラミン焼付塗装(下地鋼板種別SPCC)
12.メラミン焼付塗装(下地研磨処理)
メラミン焼付塗装(下地鋼板種別SPCC)塗装面#240番ペーパー研磨処理
【0027】
(その他下地)
13.塩ビ板
塩化ビニル板#150番ペーパー研磨処理
14.ラワン合板
ラワン合板
15.ポリ合板(研磨未処理)
ポリエステル合板(下地ラワン合板)
16. ポリ合板(研磨処理)
ポリエステル合板(下地ラワン合板)加工面#150番ペーパー研磨処理
17. ケイカル板(シーラー処理なし)
ケイカル板(珪酸カルシウム板)下地吸い込み止めシーラー処理なし。
18. 石膏ボード(下地紙)
石膏ボード
【0028】
通常、クロスが下地に対して密着不良であると、下地から浮いている「浮き」が生じる。当該浮きが生じるものは、均一な固着がなされておらず、また、固定強度にムラがあり、全体として固定強度は低くなる。
上記の各接着剤を用いて下地に貼り付けた布クロスの試験片を下地が引き剥がして布クロスが有する裏紙の下地に対する残留状態を視認する、剥離試験を行った。
上記の丸印で示す実施例は、視認により上記の浮きが認められず、なお且つ、剥離試験により布クロスの裏紙の下地に残る面積比率について試験片の接着剤塗布面積の100%〜95%と良好であった。また、表1中三角印で示す実施例は、視認により浮きが認められず、なお且つ、剥離試験による布クロスの裏紙の下地に残る面積比率について試験片の接着剤塗布面積の95%〜80%であり実用に耐えるものであった。表1中比較例であるバツ印のものは、視認により浮きが認められ、なお且つ、剥離試験による布クロスの裏紙の下地に残る面積比率について試験片の接着剤塗布面積の80%未満となった。
【0029】
表1によって、「下地と接着剤の成分比率との間に認められる関係」の欄に述べた、下地と接着剤の成分比率の理想的な範囲に含まれるものは、実施例として良好な結果を得ていることが確認できる。
一方、上記「下地と接着剤の成分比率との間に認められる関係」の欄で述べた理想的な範囲内に含まれないものであっても、実施例として良好な結果を得ているものが表1において確認できる。
例えば、アルミ下地では、A10重量部(グラム)に対して、B,Cの夫々を0.5重量部(グラム)以上1重量部(グラム)以下とする範囲では良好な結果が得られることが分かる。
また、ステンレス下地においても、A10重量部(グラム)に対して、B,Cの夫々を0.5重量部(グラム)以上1重量部(グラム)以下とする範囲に加えて、Cが含まれなくてもCが1重量部(グラム)含まれるものでは、良好な結果を得ていることが表1から確認できる。
【0030】
(総括)
表1に示す、今回実験した調合比率及び下地仕様について得られた結果を総括する。
1)接着性能を確保する上で、一部の下地(下地研磨未処理の、焼付粉体塗装及びポリ合板)を除いて、全般に、A即ちアミノール10重量部に対して、B即ちプラゾールSS及びC即ちパラダインコンタクトセメントNo.1の夫々を1重量部以上とするのが理想的である。
2)B及びCの調合比率が0即ちDが0の値の場合、接着能力はいずれの下地に対しても接着不十分もしくは接着不良となる。
3)A10重量部に対して、B,C夫々の含有量を、1〜10重量部の範囲で調整したところ、B,C何れも1重量部を超える範囲においては、1重量部で得られる良好な接着性能以上の著しい接着性の変化は無く粘度が増すだけである。即ち、A10重量部に対してB及びCについて1重量部確保すれば、十分な接着性能が得られる。但し、A10重量部に対してB及びCについて1重量部を超える範囲に増量しても、接着性能が低下するなどの問題はない。
4)上記3)から、A10重量部に対して、B及びCの値を1重量部を上回るものとしてもコストが増加だけであり、接着性能について有益な結果を生み出すものではないことが分かる。
5)各調合比率のpHの値は、A10重量部に対して、B,C夫々の値が2重量部の場合中性、B,C夫々の値が2重量部より小さい場合アルカリ性、B,Cの値が2重量部を超える値の場合酸性となる。サビが発生しやすい下地の場合、このようなpHと各成分の含有比率の関係を考慮することができる。例えば、サビの発生しやすい下地において、酸性とならないように成分調整を行えばよい。
6)但し、防錆処理を施したSPCC鋼板は、調合により接着剤をアルカリ性としても、サビの抑制効果は認められなかった。一方、表面を防錆処理していないSPCC鋼板については、調合の如何に拘わらず接着剤で施工すること自体サビを発生させる原因になる為、施工の対象としては不向きである。
7)各種焼付塗装下地およびその他下地の表面が平滑である場合即ち摩擦係数が比較的低い場合、表面に対する接着性能は著しく低いものとなるが、前述の通り、塗装表面に対してサンドペーパーをかけるなどの研磨処理を施し、表面の摩擦抵抗を増加させることにより、このような表面研磨を施さない場合と比較して、接着性は良好となる。
但し、下地が防錆処理を施されたSPCCの場合、研磨を行い過ぎると、防錆層を損ない、水分との接触によるサビの発生を招来する可能性あるため注意が必要である。
従って、下地に対する研磨処理は、防錆層を損なわない、あくまで表面に細かい傷をつける程度でよく、A10重量部に対し、B及びCの夫々を1重量部とするようことで、十分な接着性能は確保できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁又はパーティションに対してクロス貼りを行う、クロス貼り施工方法において、
壁又はパーティションの下地に対して、プライマを塗布することなく、
エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン及びアクリル共重合樹脂エマルジョンの少なくとも何れか一方の樹脂エマルジョンと、でん粉系接着剤とを、主成分とする接着剤を、クロスに塗り、
当該クロスを壁又はパーティションの上記下地に直接貼り付けるものであることを特徴とするクロス貼り施工方法。
【請求項2】
下地は、金属製下地、塗装下地、塩化ビニル下地、ラワン合板、ポリ合板、ケイカル板、石膏ボードの何れかであり、
クロスは、布クロス又はビニールクロスであり、
上記のでん粉系接着剤は、アミノールを主成分とし、
上記のエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンは、プラゾールSSを主成分とし、
上記のアクリル共重合樹脂エマルジョンは、パラダインコンタクトセメントNo.1を主成分とするものであることを特徴とする請求項1記載のクロス貼り施工方法。
【請求項3】
上記の金属製下地は、鉄板、ステンレス、アルミニウム製の何れかであることを特徴とする請求項2記載のクロス貼り施工方法。
【請求項4】
上記の金属下地は、SECC、SPCC、SGCCの何れかであることを特徴とする請求項3記載のクロス貼り施工方法。
【請求項5】
上記の金属下地は、SECCであり、
接着剤は、アミノール10重量部に対し、樹脂エマルジョンを1重量部以上20重量部以下含むものであることを特徴とする請求項4記載のクロス貼り施工方法。
【請求項6】
上記の塗装下地は、焼付粉体塗装であって下地研磨処理を施したものと、水性アクリル塗装下地と、ペンキ塗装下地と、メラミン焼付塗装下地の何れかであることを特徴とする請求項2記載のクロス貼り施工方法。
【請求項7】
壁又はパーティションに対して、当該壁又はパーティションの下地に直接、布クロス又はビニールクロスを貼るのに用いられる、クロス直貼り用接着剤であって、
プラゾールSS及びパラダインコンタクトセメントNo.1の少なくともいずれか一方を含有する樹脂エマルジョンと、アミノールとを、主成分とするものであり、
アミノール10重量部に対して、上記樹脂エマルジョンを1重量部以上20重量部以下含有するものであるクロス直貼り用接着剤。




【公開番号】特開2012−87587(P2012−87587A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237340(P2010−237340)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(510281988)株式会社フリート (1)