説明

クロック・データ再生回路及び再生方法並びに局側装置

【課題】バースト信号間の無信号区間に入ったとき、一時的に参照クロック信号と周波数が大きくずれるという現象の発生を防止することができるクロック・データ再生回路及び再生方法並びに当該再生回路を用いた局側装置を提供する。
【解決手段】周波数逓倍部110により、参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号とする他、入力選択部111を用いて入力を選択する。すなわち、データ信号としてのバースト信号が入力されているときは、入力されたバースト信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成し、バースト信号が入力されていないときは逓倍クロック信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側装置と複数の宅側装置とが互いに光ファイバで結ばれるPON( Passive Optical Network )システムにおける、上りバースト信号の受信側である局側装置内で好適に使用可能な、クロック・データ再生( CDR: Clock and Data Recovery )回路及び再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に使用されているPLL方式のクロック・データ再生回路では、アレキサンダー位相比較器等の位相比較器を用いて、入力データ信号と電圧制御型発振器(VCO)の発振するクロック信号との位相比較を行い、双方の位相が等しくなるように電圧制御型発振器の制御電圧をフィードバック制御する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、入力データ信号と、電圧制御型発振器の出力との位相差が±180度を超えると、位相比較器では正常な位相比較ができない。そこで、電圧制御型発振器の発振周波数を、予め入力データ信号の周波数に近い値に初期化しておく必要がある。例えば、位相周波数比較器を用いたフィードバックループを別に設け、電圧制御型発振器の発信周波数を参照クロック信号の周波数に初期化しておくことが考えられる(例えば、特願2008−27652参照。)。
【0004】
位相周波数比較器はクロック信号に合わせて動作可能であり、広い同期範囲を有している。例えば電圧制御型発振器の起動時に、発振周波数と入力データ信号の周波数とが互いに大きく異なる場合に、発振周波数を参照クロック信号に同期させることで、初期化を行うことができる。なお、位相周波数比較器は高速(例えば10GHz)動作に難があるため、分周して得た分周クロック信号の周波数を参照クロック信号の周波数と比較することが好ましい。この分周比は、例えば1/64という大きな比となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−349627号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のクロック・データ再生回路でバースト信号を受信する場合、バースト信号間の無信号区間では、電圧制御型発振器の発振周波数が、次に来るバースト信号の周波数から大きく外れないように、分周クロック信号の周波数を参照クロック信号の周波数に合わせておく必要がある。しかしながら、分周比を大きくすると、分周クロック信号と参照クロック信号とで周波数が同じであっても、位相が大きく異なることがあった。
【0007】
位相が大きく異なると、その差を無くそうとして、電圧制御型発振器の発振周波数が大きく変化し、一時的に参照クロック信号の周波数から大きく外れる。従って、再び電圧制御型発振器の発振周波数が参照クロック信号と同期して安定するまでに長い時間が必要となる。そのため、バースト信号間の無信号区間を長く確保しないと、次のバースト信号が受信できないという問題点があった。
【0008】
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、バースト信号間の無信号区間に入ったとき、一時的に参照クロック信号と周波数が大きくずれるという現象の発生を防止することができるクロック・データ再生回路及び再生方法並びに当該再生回路を用いた局側装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生回路であって、
入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する再生クロック信号生成手段と、参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成する周波数逓倍部と、前記データ信号としてのバースト信号が入力されているときは当該バースト信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与え、バースト信号が入力されていないときは前記逓倍クロック信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与える入力選択部とを備えたものである。
【0010】
上記のように構成されたクロック・データ再生回路では、バースト信号が入力されているときは当該バースト信号が再生クロック信号生成手段に入力として与えられ、再生クロック信号が生成される。一方、バースト信号が入力されていないときは、参照クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号と再生クロック信号との位相同期を図るので、再生クロック信号を分周して参照クロック信号に初期化するという分周を用いた処理をしなくてよい。すなわち、分周に起因して発生しやすい、再生クロック信号の周波数が一時的に大きくずれるという現象の発生を防止することができる。
【0011】
(2)一方、他の視点からの本発明は、入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生回路であって、
位相比較器を含み、入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する再生クロック信号生成手段と、位相周波数比較器を含み、出力信号となるべき再生クロック信号を分周して得た分周クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数に近づくように再生クロック信号を生成する再生クロック信号初期化手段と、前記参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成する周波数逓倍部と、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲外にあるときは前記再生クロック信号初期化手段により再生クロック信号を生成させ、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあるときは前記再生クロック信号生成手段により再生クロック信号を生成させる切替制御部と、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあって前記データ信号としてのバースト信号が入力されている状態では当該バースト信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与え、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあってバースト信号が入力されていない状態では前記逓倍クロック信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与える入力選択部とを備えたものである。
【0012】
上記のように構成されたクロック・データ再生回路では、バースト信号が入力されているときは当該バースト信号が再生クロック信号生成手段に入力として与えられ、再生クロック信号が生成される。一方、バースト信号が入力されていないときは、参照クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号と再生クロック信号との位相同期を図るので、再生クロック信号を分周して参照クロック信号に初期化するという分周を用いた処理をしなくてよい。すなわち、分周に起因して発生しやすい、再生クロック信号の周波数が一時的に大きくずれるという現象の発生を防止することができる。一方、起動時等で、再生クロック信号の周波数が、本来の周波数より大きくずれている場合には、再生クロック信号初期化手段を動作させ、同期範囲の広い位相周波数比較器を活用することができる。
【0013】
(3)また、上記クロック・データ再生回路において、データ信号相当の周波数とは、データ信号が1/0交番信号であるとしたときの周波数であることが好ましい。
この場合、エッジ数(1/0変化)が多く確保されるので、迅速な同期が可能になる。
【0014】
(4)また、上記(2)、(3)のクロック・データ再生回路は、再生クロック信号を出力する電圧制御型発振器と、再生クロック信号の周波数を監視するモニタ部とを備えたものであってもよい。
この場合、起動直後等で、電圧制御型発振器の出力する再生クロック信号の周波数が安定しない状態を、モニタ部によって検出することができる。また、モニタ部で周波数がずれた異常なバースト信号の受信を検出した場合には、再生クロック信号の周波数が所定範囲から外れる前にバースト信号への位相同期を中断し、逓倍クロックへの位相同期に切り替えることで、電圧制御型発振器の発振周波数を安定させ、次に来る正常なバースト信号を確実に受信することができる。
【0015】
(5)また、上記(2)、(3)のクロック・データ再生回路は、再生クロック信号を出力する電圧制御型発振器と、電圧制御型発振器の制御電圧を監視するモニタ部とを備えたものであってもよい。
この場合、起動直後等で、電圧制御型発振器の出力する再生クロック信号の周波数が安定しない状態を、モニタ部によって検出することができる。また、再生クロック信号の周波数と対応した制御電圧の監視により、簡易に、再生クロック信号の周波数を概ね等価的に監視することができる。また、発振周波数を調べるのに再生クロックをカウントする場合と比べると、高速に、発振周波数を検出することができる。
【0016】
(6)一方、本発明は、光ファイバを介して複数の宅側装置と接続され、当該宅側装置が送信したデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生する局側装置であって、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のクロック・データ再生回路を備えたものでもある。
この場合、局側装置において再生クロック信号を生成するに当たって、一時的に周波数が大きくずれるという現象の発生を防止することができるので、再生クロック信号は迅速に安定し、確実に次のバースト信号を受信することができる。
【0017】
(7)また、本発明は、入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生方法であって、
参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成し、前記データ信号としてのバースト信号が入力されているときは当該バースト信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成し、バースト信号が入力されていないときは前記逓倍クロック信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成することを特徴とする。
【0018】
上記のようなクロック・データ再生方法では、バースト信号が入力されているときは当該バースト信号と位相が同期するように再生クロック信号が生成される。一方、バースト信号が入力されていないときは、参照クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号と再生クロック信号との位相同期を図るので、再生クロック信号を分周して参照クロック信号に初期化するという分周を用いた処理をしなくてよい。すなわち、分周に起因して発生しやすい、再生クロック信号の周波数が一時的に大きくずれるという現象の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のクロック・データ再生回路及び再生方法によれば、バースト信号の無信号区間に入ったとき、再生クロック信号の周波数が一時的に大きくずれるという現象の発生を防止することができる。その結果として再生クロック信号は迅速に安定し、確実に次のバースト信号を受信することができる。また、かかるクロック・データ再生回路を含む局側装置は、宅側装置からの上りバースト信号を確実に受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る局側装置を含む、PONシステムの概略構成図である。
【図2】局側装置のPON側受信部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】バースト信号及び切替信号を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るクロック・データ再生回路の内部構成を示すブロック図である。
【図5】位相比較器の一例として、アレキサンダータイプの位相比較器を示す回路図である。
【図6】位相周波数比較器の一例を示す回路図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るクロック・データ再生回路の内部構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るクロック・データ再生回路の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
《PONシステムの全体構成》
図1は、本発明の一実施形態に係る局側装置を含む、PONシステムの概略構成図である。
図において、局側装置1は複数の宅側装置2に対する集約局として設置され、宅側装置2はそれぞれPONシステムの加入者宅に設置されている。
局側装置1に接続された伝送路である1本の光ファイバ3(幹線)は光カプラ4を介して複数の光ファイバ(支線)5に分岐しており、分岐した各光ファイバ5の終端に、それぞれ宅側装置2が接続されている。
【0022】
局側装置1はさらに、上位ネットワーク6と接続され、宅側装置2はそれぞれのユーザネットワーク7と接続されている。
なお、図1では3個の宅側装置2を示しているが、1つの光カプラ4から例えば32分岐して32個の宅側装置を接続することが可能である。また、図1では、光カプラ4を1個だけ使用しているが、光カプラを縦列に複数段設けることにより、さらに多くの宅側装置2を局側装置1と接続することができる。
【0023】
図1において、各宅側装置2から局側装置1への上り方向には、波長λuの光信号が送信される。逆に、局側装置1から宅側装置2への下り方向には、波長λdの光信号が送信される。例えば、PONの一種であるGE−PONの規格として、IEEE規格802.3ah−2004のClause60があり、この場合、これら上り方向及び下り方向の波長λu及びλdは、以下の範囲の値とすることができる。
1260nm≦λu≦1360nm
1480nm≦λd≦1500nm
【0024】
また、本実施形態では、光信号における上り方向通信の伝送レートRu[Gbps]が1種類の場合を想定しており、Ruの値は例えば1.25である。
一方、下り方向通信の伝送レートRd[Gbps]も1種類であり、Rdの値は例えば1.25である。
【0025】
《局側装置の概略構成》
図1に示すように、局側装置1は、PON側送信部1s及びPON側受信部1rと、これらに対する通信制御を行う制御部1cとを備えている。
局側装置1のPON側送信部1sは、電気光変換素子を内部に含み、宅側装置2に対するデータ送信を時分割多重された下り光信号DOとして光ファイバ3に送出する。この下り光信号DOは、光カプラ4で分岐されて各宅側装置2で受信される。各宅側装置2は、自身宛の下り光信号DOに含まれるデータのみを受信処理する。
【0026】
また、局側装置1のPON側受信部1rは、光電気変換素子を内部に含み、各宅側装置2から光ファイバ5に送出された上り光信号UOを受信する。局側装置1の制御部1cは、各宅側装置2からの上り光信号UOが光カプラ4において合波された時に、それらが衝突しないように送信タイミングを時分割で多重制御する。
具体的には、各宅側装置2は、自身のユーザネットワーク7から上りデータを受信すると、一旦自身のキューにデータを蓄積し、そのキューに溜まったデータ量をレポート(Report)フレームに記して局側装置1に送信する(送信要求)。
【0027】
局側装置1の制御部1cは、上記レポートフレームを受信すると、そのレポートフレームのデータ量と他の宅側装置2の使用帯域から、当該宅側装置2に割り当てるべき上りデータの送信時間長と送信開始時刻を算出し(動的帯域割当)、その算出値をゲート(Gate)フレームに記して当該宅側装置2に送信する(送信許可)。
上記ゲートフレームを受信した宅側装置2は、そのゲートフレームの指示に従って、指定された送信開始時刻に指定された送信時間長で上りデータを送信する。このため、図1に示すように、各宅側装置2が送出した上り光信号UOは、それぞれガードタイムを挟んで時間軸上に配列されたものとなる。
【0028】
図3に示すように、上り光信号UOを光電変換した上りバースト信号BSには、先頭部分の同期信号BS1と、それ以降のデータ信号BS2とが含まれており、同期信号BS1は、例えば、GPON(ITU−T G.984.2)の規格では、1と0の値が交互に現れる1/0交番の信号パターンになっている。本実施形態の局側装置1でも同期信号BS1の信号パターンとして、1/0交番の信号パターンを扱うものとする。
【0029】
局側装置1の制御部1cは、宅側装置2による上り送信のタイミングを時分割で多重制御するために、宅側装置2からの上り光信号UOを自身が受信するタイミングと、上り光信号UOのバースト中に含まれる同期信号BS1(図3参照)の受信期間とを把握している。
一方、局側装置1から各宅側装置2までの伝送距離はそれぞれ相違しており、光カプラ4は単に上り光信号UOを合波する受動素子であるから、局側装置1が受信する各上り光信号UOのレベル及び受信タイミングもそれぞれ相違している。
【0030】
このため、局側装置1のPON側受信部1rには、各上り光信号UOにそれぞれ同期して受信処理すべく、後述するクロック・データ再生回路10が設けられている。
なお、図示していないが、本実施形態のPON側受信部1rは、上記クロック・データ再生回路10で再生された再生データDSに対して前方誤り訂正を行って復号する、FEC機能を有する物理層の復号部を備えている。
【0031】
《局側装置のPON側受信部》
図2は、局側装置1のPON側受信部1rの内部構成を示すブロック図である。
本実施形態のPON側受信部1rは、ROSA( Receiver Optical Sub-Assembly )8と、ポストアンプ9と、クロック・データ再生回路10とを備えている。
【0032】
ROSA8は、宅側装置2からの上り光信号UOを受信する光デバイスである。このROSA8は、光コネクタ(図示せず)と、フォトダイオード81と、プリアンプ82とを有し、光コネクタはフォトダイオード81に光学的に結合されている。
フォトダイオード81は、上り光信号UOを電流信号に変換する光検出器であり、その出力端にプリアンプ82が接続されている。プリアンプ82は、フォトダイオード81で生成された電流信号を所定のゲインで増幅し、電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプよりなる。
【0033】
プリアンプ82の後段には、ポストアンプ9が接続されており、このポストアンプ9の出力端子がクロック・データ再生回路10の入力端子に接続されている。
すなわち、プリアンプ82の出力信号は、ポストアンプ9においてさらに増幅されたあと、後段のクロック・データ再生回路10に入力される。この他、クロック・データ再生回路10には切替信号と、参照クロック信号とが入力される。切替信号は、制御部1c(図1)から、図3に示すタイミングで与えられる。
【0034】
《クロック・データ再生回路:第1実施形態》
図4は、本発明の第1実施形態に係るクロック・データ再生回路10の内部構成を示すブロック図である。図において、クロック・データ再生回路10は、ポストアンプ9(図2)からの入力データ信号と、参照クロック信号と、切替信号とを入力信号とし、これらに基づいて、再生クロック信号及び再生データ信号を出力する。
【0035】
このクロック・データ再生回路10は、位相比較器101、チャージポンプ102、ローパスフィルタ103、電圧制御型発振器(VCO又はVCXO)104、位相周波数比較器105、分周器106、切替制御部107、リタイミング回路108、及び、モニタ部109を備えている。また、位相比較器101より前段に、スイッチからなる入力選択部111が設けられている。入力選択部111には、入力データ信号の他、PLL回路からなる周波数逓倍部110の出力が与えられる。
【0036】
周波数逓倍部110の逓倍数は、例えば、分周器106の分周比の逆数/2である。参照クロック信号は、周波数逓倍部110を通ることによって、周波数が逓倍された逓倍クロック信号となる。入力選択部111は、切替信号に基づいて、2つの入力(入力データ信号/逓倍クロック信号)のいずれか一方を選択出力することができる。なお、逓倍クロック信号の周波数は、入力データ信号相当の周波数、すなわち、入力データ信号が1/0交番信号であるとしたときの周波数であることが好ましい。この場合、エッジ数(1/0変化)が多く確保されるので、迅速な同期が可能になる。
【0037】
図5は、位相比較器101の一例として、アレキサンダータイプの位相比較器を示す回路図である。図において、この位相比較器101は、4つのフリップフロップFF1〜FF4と、EORゲート1011,1012を備えており、これらは図示のように接続されている。アレキサンダータイプの位相比較器では、クロック信号CKの立ち上がりが、データ信号Dinの立ち上がりに対して進んでいるか遅れているかに基づいて、アップ信号又はダウン信号を出力することができる。
【0038】
図4に戻り、入力選択部111が、入力データ信号を出力する状態であるとすると、位相比較器101は、入力データ信号と、電圧制御型発振器104からフィードバックされる信号との位相とを比較し、その比較結果に基づいてアップ信号又はダウン信号を出力する。例えば、フィードバックされて来た信号の位相が入力データ信号の位相よりも遅れている場合はアップ信号 が出力され、進んでいる場合はダウン信号が出力される。チャージポンプ102は、位相比較器101からのアップ信号又はダウン信号に対応してチャージポンプ電流を生成する。ローパスフィルタ103は、チャージポンプ102が生成したチャージポンプ電流を積分することで、電圧制御型発振器104の制御電圧を生成する。電圧制御型発振器104は、制御電圧に応じて発振周波数を制御し、再生クロック信号を出力する。
【0039】
すなわち、上記位相比較器101、チャージポンプ102、ローパスフィルタ103、及び、電圧制御型発振器104は、フィードバックによる制御ループ1を構成するものであり、また、入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する再生クロック信号生成手段10Aを構成している。
入力選択部111が、周波数逓倍部110からの入力信号を出力する場合も同様に、再生クロック信号生成手段10Aは、入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する。
【0040】
一方、電圧制御型発振器104の出力する再生クロック信号は、分周器106(分周比は例えば1/64)を介して位相周波数比較器105において、参照クロック信号と比較される。すなわち、位相周波数比較器105、チャージポンプ102、ローパスフィルタ103、電圧制御型発振器104及び分周器106は、フィードバックによる制御ループ2を構成するものであり、また、これらは、再生クロック信号の周波数を分周して得た分周クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数に近づくように再生クロック信号を生成する再生クロック信号初期化手段10Bを構成している。
【0041】
この再生クロック信号初期化手段10Bは、位相同期のための、いわば粗調整を行うものであり、再生クロック信号生成手段10Aとは別の手法で再生クロック信号を生成する。両手段(10A,10B)は、構成要素が一部共通するが、制御ループ1,2で同時に再生クロック信号が生成されることはなく、択一的な動作となる。
なお、位相周波数比較器105は、同期範囲が広く、再生クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数と大きくずれた状態からでも同期できるという特徴がある。
【0042】
図6は、位相周波数比較器105の一例を示す回路図である。図において、この位相周波数比較器105は、一対のリセット付きDFF(D−フリップフロップ)1051,1052と、アンドゲート1053とを備え、これらが、図示のように接続されている。端子A,Bの一方には参照クロック信号が、他方には分周クロック信号(分周されたクロック信号)がそれぞれ与えられる。これらの2信号の立ち上がりのずれに応じて、出力端子QA,QBの一方からアップ信号、他方からダウン信号を出力することができる。
【0043】
なお、周波数の一例を挙げると、入力データ信号は10.3125Gbps、逓倍クロック信号は5.15625GHz(10.3125Gbpsの1/0交番信号に相等)、再生クロック信号の周波数は10.3125GHz、参照クロック信号や、分周器106の出力する分周クロック信号の周波数は、161.132812MHzである。すなわち、分周器106の分周比は1/64、周波数逓倍部110の逓倍数は32である。
【0044】
前述のように、上記制御ループ1による再生クロック信号生成手段10Aと、制御ループ2による再生クロック信号初期化手段10Bとは、制御ループとしては択一的に動作する。この択一の制御を行っているのが、切替制御部107である。切替制御部107は、制御部1c(図1)から受けた切替信号に基づいて、チャージポンプ102及び入力選択部111にそれぞれ切替信号を送ることができる。チャージポンプ102は、切替信号に応じて、いずれか1つの制御ループ(1又は2)を有効に動作させる。また、入力切替部111は、切替信号に応じて、いずれか一方の入力信号を位相比較器101に与える。モニタ部109は、再生クロック信号の周波数を監視して、所定範囲内(例えば10.3125GHzを中心とした実用的正常範囲)にあるか、又は、範囲外であるかを、切替制御部107に知らせる機能を有している。
【0045】
上記のように構成されたクロック・データ再生回路10において、例えば起動時には、電圧制御型発振器104の発振周波数(再生クロック信号の周波数)が、入力データ信号や逓倍クロック信号の周波数とは大きくずれている。この場合、同期可能範囲の狭い位相比較器101では所望の再生クロック信号を立ち上げることはできない。そこで、切替制御部107は、モニタ部109からの通知により再生クロック信号の周波数が所定範囲外であると認識した場合、制御ループ2(再生クロック信号初期化手段10B)を動作させるようチャージポンプ102を制御する。これにより、同期範囲の広い位相周波数比較器105を用いて、再生クロック信号を分周した分周クロック信号の周波数が、参照クロック信号の周波数に近づくよう、再生クロック信号を生成することができる。
【0046】
次に、再生クロック信号の周波数が所定範囲内となった後は、入力データ信号としてのバースト信号が、入力されているか、入力されていない(すなわちバースト信号間の無信号区間)かによって、制御が異なる。
バースト信号が入力されているか否かは、切替信号により切替制御部107に通知される。そこで、切替制御部107は、バースト信号が入力されているときは、制御ループ1(再生クロック信号生成手段10A)を動作させ、また、入力選択部111に対しては入力データ信号を通過させる。これにより、入力されたバースト信号と位相が同期するように再生クロック信号が生成される。また、この再生クロック信号に基づいて、リタイミング回路108において入力データ信号のリタイミング処理が行われ、再生データ信号となる。
【0047】
一方、バースト信号が入力されていないとき、すなわちバースト信号間の無信号区間に入ったときは、切替制御部107は、制御ループ1(再生クロック信号生成手段10A)の動作を継続しつつ、入力選択部111に対しては周波数逓倍部110を経た逓倍クロック信号を通過させる。これにより、逓倍クロック信号と位相が同期するように再生クロック信号が生成され、次のバースト信号を迎える準備が行われる。
【0048】
以上のように、上記クロック・データ再生回路10では、バースト信号が入力されているときは当該バースト信号が再生クロック信号生成手段10Aに入力として与えられ、再生クロック信号が生成される。一方、バースト信号が入力されていないときは、参照クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号と再生クロック信号との位相同期を図るので、再生クロック信号を分周して参照クロック信号に初期化するという分周を用いた処理をしなくてよい。すなわち、分周に起因して発生しやすい、再生クロック信号の周波数が一時的に大きくずれるという現象の発生を防止することができる。
【0049】
一方、起動時等で、再生クロック信号の周波数が安定せず、本来の周波数より大きくずれている場合には、再生クロック信号初期化手段10Bを動作させ、同期範囲の広い位相周波数比較器105を活用することができる。なお、モニタ部109の存在によって、起動直後等で、電圧制御型発振器の出力する再生クロック信号の周波数が安定しない状態を確実に検出することができる。
【0050】
また、故障した宅側装置から周波数がずれたバースト信号を受信した場合、当該バースト信号を再生クロック信号生成手段10Aの入力として与え続けると、電圧制御型発振器104の発振周波数が外れていく可能性がある。このような状態をモニタ部109で検出した場合には、電圧制御型発振器104の発振周波数が所定範囲から外れる前に、再生クロック信号生成手段10Aの入力を、参照クロック信号の周波数を逓倍した逓倍クロック信号に切り替えてやればよい。これにより、電圧制御型発振器104の発振周波数が所定範囲から外れることを防止でき、他の正常な宅側装置からのバースト信号を確実に受信することができる。
【0051】
かかるクロック・データ再生回路10を備えた局側装置1(図1)は、再生クロック信号を生成するに当たって、一時的に周波数が大きくずれるという現象の発生を防止することができるので、再生クロック信号は迅速に安定し、確実に次のバースト信号を受信することができる。
【0052】
《クロック・データ再生回路:第2実施形態》
図7は、本発明の第2実施形態に係るクロック・データ再生回路10の内部構成を示すブロック図である。図4との違いは、モニタ部109に対する入出力である。すなわち、このモニタ部109は、分周器106の出力と、参照クロック信号とを受け取るよう接続されており、分周クロック信号の周波数と参照クロック信号の周波数とを監視する。また、モニタ部109の出力は、切替制御部107に付与される。
【0053】
この場合、モニタ部109は、例えばクロック・データ再生回路10の起動直後で再生クロック信号の発振周波数が安定しないとき、分周クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数に近づいて安定するまでは、切替制御部107による制御ループの選択動作を抑制して、再生クロック信号初期化手段10Bを動作させる。分周クロック信号の周波数が安定すると、モニタ部109は、切替制御部107に対して制御ループ1の選択を許可(enable信号出力)して、再生クロック信号生成手段10Aを動作させる。
【0054】
このようにして、起動直後等において電圧制御型発振器104の出力する再生クロック信号の周波数が安定しない(大きくずれている)ときには、同期範囲の広い再生クロック信号初期化手段10Bを動作させて、分周クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数に近づくよう、再生クロック信号を生成することができる。なお、監視する周波数が第1実施形態より低い点で、モニタ部109の設計が容易である。
【0055】
《クロック・データ再生回路:第3実施形態》
図8は、本発明の第3実施形態に係るクロック・データ再生回路10の内部構成を示すブロック図である。図4との違いは、モニタ部109に対する入力の違いにある。すなわち、図8におけるモニタ部109は、クロック・データ再生回路10への入力(制御電圧)を受け取るよう接続されている。また、モニタ部109の出力は、切替制御部107に与えられる。
【0056】
このモニタ部109は、周波数ではなく電圧を監視している。すなわち、このモニタ部109は、電圧制御型発振器104の制御電圧が所定範囲内にある場合にのみ、切替制御部107に対して制御ループ1の選択を許可し、再生クロック信号生成手段10Aを動作させることができる。制御電圧が所定範囲内になければ、切替制御部107に対して制御ループ1の選択は許可されず、制御ループ2の再生クロック信号初期化手段10Bが動作する。
【0057】
このような構成によれば、再生クロック信号の周波数と対応した制御電圧の監視により、簡易に、再生クロック信号の周波数を概ね等価的に監視することができる。また、制御電圧が所定範囲内にある場合にのみ、周波数が初期化されているものとして、切替制御部107による動作選択を許可することができる。なお、再生クロック信号を監視する場合、発振周波数を調べるのに再生クロックをカウント(積分)する必要があるが、制御電圧を監視する場合には、制御電圧が発振周波数に対応するため、高速に発振周波数を検出することができる。
【0058】
《その他》
なお、上記各実施形態に係るクロック・データ再生回路10における分周器106は、分周比を1/64とするものであるが、これは一例であり、分周比は、位相周波数比較器105の動作可能速度を考慮して選択することができる。
【0059】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 局側装置
2 宅側装置
3,5 光ファイバ
10 クロック・データ再生回路
10A 再生クロック信号生成手段
10B 再生クロック信号初期化手段
101 位相比較器
104 電圧制御型発振器
105 位相周波数比較器
106 分周器
107 切替制御部
109 モニタ部
110 周波数逓倍部
111 入力選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生回路であって、
入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する再生クロック信号生成手段と、
参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成する周波数逓倍部と、
前記データ信号としてのバースト信号が入力されているときは当該バースト信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与え、バースト信号が入力されていないときは前記逓倍クロック信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与える入力選択部と
を備えたことを特徴とするクロック・データ再生回路。
【請求項2】
入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生回路であって、
位相比較器を含み、入力された信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する再生クロック信号生成手段と、
位相周波数比較器を含み、出力信号となるべき再生クロック信号を分周して得た分周クロック信号の周波数が参照クロック信号の周波数に近づくように再生クロック信号を生成する再生クロック信号初期化手段と、
前記参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成する周波数逓倍部と、
前記再生クロック信号の周波数が所定範囲外にあるときは前記再生クロック信号初期化手段により再生クロック信号を生成させ、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあるときは前記再生クロック信号生成手段により再生クロック信号を生成させる切替制御部と、
前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあって前記データ信号としてのバースト信号が入力されている状態では当該バースト信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与え、前記再生クロック信号の周波数が所定範囲内にあってバースト信号が入力されていない状態では前記逓倍クロック信号を前記再生クロック信号生成手段に入力として与える入力選択部と
を備えたことを特徴とするクロック・データ再生回路。
【請求項3】
前記データ信号相当の周波数とは、データ信号が1/0交番信号であるとしたときの周波数である請求項1又は2に記載のクロック・データ再生回路。
【請求項4】
前記再生クロック信号を出力する電圧制御型発振器と、前記再生クロック信号の周波数を監視するモニタ部とを備えた請求項2又は3記載のクロック・データ再生回路。
【請求項5】
前記再生クロック信号を出力する電圧制御型発振器と、当該電圧制御型発振器の制御電圧を監視するモニタ部とを備えた請求項2又は3記載のクロック・データ再生回路。
【請求項6】
光ファイバを介して複数の宅側装置と接続され、当該宅側装置が送信したデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生する局側装置であって、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のクロック・データ再生回路を備えた局側装置。
【請求項7】
入力されたデータ信号に基づいてクロック信号及びデータ信号を再生するクロック・データ再生方法であって、
参照クロック信号の周波数をデータ信号相当の周波数に逓倍して逓倍クロック信号を生成し、
前記データ信号としてのバースト信号が入力されているときは当該バースト信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成し、バースト信号が入力されていないときは前記逓倍クロック信号と位相が同期するように再生クロック信号を生成する
ことを特徴とするクロック・データ再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−258678(P2010−258678A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105220(P2009−105220)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】