説明

クロック信号伝送線路の信号振幅減衰防止方法

【目的】プリント基板上での超高周波クロック信号の振幅減衰を容易に防止する。
【構成】絶縁基板上に、波動インピーダンスが異なる複数本のクロック信号伝送ライン2,4を直列接続し、前記信号伝送ラインどうしの隣接接続点で、プラス反射のミスマッチングによる増幅作用が行われる方向に、元クロック信号の供給源1を設け、前記信号伝送ラインに、前記元クロック信号よりも振幅の大きな大振幅クロック信号を得るようにしてなり、前記信号伝送ラインから前記増幅後のクロック信号を取り出して、集積回路のクロック信号として使用するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超高周波クロック信号伝送線路のクロック信号振幅減衰防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、プリント基板(30cm×30cm以上の場合)上の信号伝送ラインにおいて、100MHZ〜1GHZ(あるいはそれ以上)のクロック信号を伝送しようとすると、他信号線とのクロストークや、信号輻射による信号振幅減衰が激しくなり、上記基板領域でのクロック信号伝送が実用化できなくなることがある。
【0003】この問題点を改善するには、クロック信号伝送ラインの差動伝送化や他の手段も考えられるが、いずれにしても、これらの手段では、コストが増大するなどの欠点があり、あまり適切なものとはいえなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、プリント基板上での超高周波クロック信号の振幅減衰を容易に防止できるクロック信号伝送線路の信号振幅減衰防止方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用】本発明は、絶縁基板上に、波動インピーダンスが異なる複数本のクロック信号伝送ラインを直列接続し、前記信号伝送ラインどうしの隣接接続点で、プラス反射のミスマッチングによる増幅作用が行われる方向に、源クロック信号の供給源を設け、前記信号伝送ラインに、前記増幅作用によって前記源クロック信号よりも振幅の大きな大振幅クロック信号を得るようにしてなり、前記信号伝送ラインから増幅後のクロック信号を取り出して、集積回路のクロック信号として使用するようにしたことを特徴とする。
【0006】即ち本発明は、信号伝送ラインの波動インピーダンスが小さいほうから大きい方向に信号が移動するときのプラス反射現象を用いて、クロック信号を増幅することにより、伝送されるクロック信号の振幅減衰を防止するものである。ここで、上記プラス反射現象とは、波動インピーダンスの異なる伝送ラインの接続点を信号が通過するときの反射分が、前記接続点に到着した信号の振幅に加算されることを意味している。
【0007】
【実施例】以下図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は、同実施例の構成説明図である。この図において1は、ECL(Emitter CoupledLogic)等の信号駆動用デバイス、2は、プリント基板などの絶縁基板3上に設けられる長さL1 の同軸状の信号伝送ライン、4は、同長さL2 の同軸状の信号伝送ライン、RFは終端整合用抵抗で、これらの構成は、基板3上で直列接続されている。5は、クロック信号取り出し点で、例えば受信用IC(集積回路)に取り出される。
【0008】上記信号駆動用デバイス1は、100MHZ以上の超高周波のクロック信号Sを信号伝送ライン2に供給する。信号伝送ライン2は、波動インピーダンスZ1が例えば50Ωである。信号伝送ライン4は、波動インピーダンスZ2 が例えば75Ωである。終端整合用抵抗RFは、インピーダンスZ3 が例えば150Ωである。
【0009】上記構成にあっては、クロック信号Sの伝送方向から見れば、信号伝送ライン2から4を通過するとき、波動インピーダンスは75/50=1.5倍となり、信号伝送ライン3から整合抵抗RFのラインを通過するとき、150/75=2倍となり、従って、共にミスマッチングによるプラス反射が行われ、このことは、見かけ上、増幅作用が行われたことになる。
【0010】図2は、図2の構成の増幅作用を示すもので、デバイス1から送出された信号Sは、振幅がd1 で、伝送ライン2を通過するのに要する伝送時間がt1 である。信号Sが、伝送ライン2を通過するときにプラス反射が生じ、この時のミスマッチングによる増副作用で、信号Sの振幅は増大して、d2 となる。この状態で信号Sが伝送ライン4を通過するのに要する伝送時間はt2 である。終端5に信号Sが達したときにもプラス反射が生じ、この時のミスマッチングによる増幅作用で、信号Sの振幅は増大して、d3 となる。この振幅のクロック信号Sを例えば終端5で取り出し、受信用ICで、例えばそのシステムクロック信号として使用するものである。
【0011】図3は、図2の過程を経た信号の終端特性を示すものである。ここで、終端特性eは、信号Sの元波形の振幅d1 に、上記プラス反射による利得gを加えたものとなり、信号Sが、上記のような超高周波にかかわらず、高振幅を維持できることが分かるものである。逆に、図3の横軸を、信号Sの周期(周波数の逆数)としてみれば、周期がより大(周波数が小)のほうが、hの部分として示すような振幅劣化がなくて済むものである。
【0012】図4は、上記信号Sに対応するクロック信号を示す。ここでSaは、図1の信号駆動用デバイス1から出力された元クロック信号波形を示す。この図4を見て分かることは、信号Sの振幅の方が、信号Saの振幅より大に維持できることである。このことは、信号伝送ライン2、4の各接続点で、超高周波信号のプラス反射を利用していることに起因する。またクロック信号は、周期及び振幅が常に一定であってかつ超高周波であることにより、小周期を常に維持でき、したがって、クロック信号Sの振幅が一定化できることである。もっとも、初めの第1発目に生じたクロック信号S1 の振幅のみは、過渡現象に起因して、振幅大となっているが、このS1 が生じる瞬間は、これを得るスイッチONの瞬間に相当するから、何らの問題にもならないものである。
【0013】なお、本発明は上記実施例に限られず、種々の応用が可能である。例えば、上記実施例では、信号伝送ラインのクロック信号振幅を、源クロック信号の振幅よりかなり大きい状態で取り出すようにしたが、本発明の主旨は、超高周波クロック信号の振幅減衰を、信号伝送ラインのインピーダンスのミスマッチングによる増副作用で最小限にとどめ、前記超高周波クロック信号を受けて動作する受信装置の信号閾値の安全性を確保することにあり、上記のような増副作用がなされても、クロック信号は、その伝搬途中で減衰するものであるから、このことから考えて、増幅後の信号振幅が、図4のように信号Saの振幅よりも常に大きく保持する必要もない(例えば信号Saの振幅の80%以上に保持できれば良い)ものである。また実施例では、信号反射によるステップ応答が、2段となる伝送信号ラインについて説明したが、そのステップ応答は5段以内とすることが望ましい。また本発明にあっては、クロック信号伝送ラインの終端を解放状態としてもかまわない。また実施例では、クロック信号の取り出しを、クロック信号伝送ラインの終端部で行ったが、他の任意の部分から行ってもよい。また実施例では、信号伝送ラインに同軸線を用いたが、単線型の印刷ラインとか、ストリップラインなどを用いてもよい。
【0014】
【発明の効果】以上説明したごとく本発明によれば、絶縁基板上での超高周波クロック信号の振幅減衰を容易に防止できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を説明するためのクロック信号伝送ラインの構成図。
【図2】同構成の信号特性図。
【図3】同構成の信号特性図。
【図4】同構成の信号波形図。
【符号の説明】
1…クロック信号供給源、2、4…信号伝送ライン、3…絶縁基板、5…クロック信号取り出し点(信号伝送ラインの終端)、RF…終端整合用抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】絶縁基板上に、波動インピーダンスが異なる複数本のクロック信号伝送ラインを直列接続し、前記信号伝送ラインどうしの隣接接続点で、プラス反射のミスマッチングによる増幅作用が行われる方向に、源クロック信号の供給源を設け、前記信号伝送ラインに、前記増幅作用によって前記源クロック信号よりも振幅の大きな大振幅クロック信号を得るようにしてなり、前記信号伝送ラインから、増幅後のクロック信号を取り出して、集積回路のクロック信号として使用することを特徴とするクロック信号伝送線路の信号振幅減衰防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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