説明

クロマトグラフィシステムおよび用途に用いるためのポリシラザン熱硬化性ポリマー

シリコン、III族金属、IVA族金属、および/またはIVB族金属を含んで成る前駆体材料を、硬化、か焼、および/または熱分解することによって調製することができる、アモルファス(もしくは無定形)非ガラス質セラミック組成物。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
本発明は、シリコン、III族金属、IVA族金属、および/またはIVB族金属を含んで成る前駆体材料を、硬化、か焼および/または熱分解することによって調製することができる、アモルファス(もしくは無定形)非ガラス質セラミック組成物に関する。詳細には、該組成物は、これに接触する成分または流体に対して不可逆的に吸着しないため、いずれの下層(または下にある:underlying)基体に対しても不動態コーティングまたはフィルムとして有効であり得、組成物は、下層基体の表面への流体成分の吸着に対するバリアとして機能する。更に、アモルファス非ガラス質セラミック組成物は、粒状吸着材(または吸着剤)のための非常に有効なマトリックスとして、および/または、そのような吸着材を下層面に付着させるためのフィルムとして機能する。更に、前駆体材料は、ポリシラザン、ポリシロキサンおよび粒状吸着材を含んで成っていてよく、粒状吸着材は、例えば、ピペットチップ(または先端部)での改善された吸着層(または吸着ベッドもしくは吸着床:adsorptive bed)として有効である流体透過性塊を形成している。
【0002】
例えば、クロマトグラフィ用途等の精確な分析技術において、基体をコーティングすることにより、基体を基体と接触するターゲット分析対象物と反応させないようにする能力を有することが、長い間要求されてきた。詳細には、クロマトグラフィ用途では、コーティングが有効であり、流体と接触する容器、導管またはデバイスの表面への流体中の成分の吸着に対するバリアを提供する。ターゲット分析対象物と、容器、導管および/またはデバイスの表面との間の相互作用は、分析結果に影響を及ぼす場合がある。この影響は、非常に少ない量の分析対象物のみを吸着させる、SPME(固相微量抽出)の用途において、より顕著になり得る。米国特許第5192406号には、重合性の水素化ケイ素、シロキサン、シラザン、およびシリコーンポリマーを用いた表面不活性化技術が記載されており、ガラスまたはヒュームドシリカ(または溶融シリカ:fused-silica)CZE(キャピラリーゾーン電気泳動法)キャピラリーカラムを、電気浸透流を排除することなく不活性化する。更に、ガスクロマトグラフィ用のキャピラリーカラムの不活性化も記載されている。しかしながら、ガラスまたはヒュームドシリカカラム以外のクロマトグラフィ装置の部分に対しての議論がなされていない。
【0003】
近ごろ、不動態フィルムを含むシリコンを種々の基体に形成することが、例えば、化学蒸着法(CVD)、プラズマCVD、またはゾル−ゲルを含む湿式化学法等の技術に普及されている。これらの技術は効果的であり得るが、更なる改良が必要とされる幾つかの欠点に悩まされている。
【0004】
化学蒸着法(CVD)を用いてシリコン含有フィルムを形成する方法(例えば、米国特許第6511760号および第6444326号)は、以下の領域の幾分または全てにおいてしばしば悩まされている:(1)気相反応でシリコン粒子を形成することにより装置および基体の汚染を引き起こすため、製品の収量(または歩留まり)が下がること、および/またはポストコーティングによる清浄化を必要とすること;(2)原料のガス状の性質に起因して、一様でない表面において均一なフィルムを得るのが困難であること、および/またはフィルムに酸化物等の望ましくない物質が存在すること;(3)低いフィルム形成速度に起因して生産性が低いこと;(4)例えば、高周波発生器および真空装置等の複雑かつ高価な装置が必要であること;ならびに(5)例えば、ガス状の水素化ケイ素等のガス状原料が高反応性および有毒性であり、気密状態を与えるために特有の取り扱い手順および安全装置を必要とすること。
【0005】
研究者たちは、原料を含む液状水素化ケイ素から不動態フィルムを作製することを試みたが、あまり結果は得られていない。日本特許公開公報(JP−A)第29661号には、冷却された基体においてガス状原料を液化させ、続いて、これを活性水素原子と反応させることによって、シリコンベースの薄膜を形成する方法が挙げられている。この方法は、複雑な装置を含み、また、膜厚を制御するのが非常に困難である。
【0006】
日本特許公開公報(JP−A)第7−767621号には、フィルムを形成する前駆体としての低分子の液状水素化ケイ素が記載されている。しかしながら、記載の方法は、不安定な材料を取り扱うこと、および広い表面積を有する基体に関連する潤湿性の課題に起因して問題を有している。
【0007】
ドイツ特許公開公報(DE−A)第2077710号には、固体の水素化ケイ素ポリマー前駆体が挙げられている。しかしながら、該材料は、一般的な溶媒への難溶性に起因して使用が困難である。
【0008】
更に、米国特許第6503570号に、液状のフィルム形成前駆体としてのシリルシクロペンタシランの合成が記載されている。この材料は、500℃よりも低い温度で分解し、例えば、トルエン、ヘキサン、THFおよびアセトン等の一般的な有機溶媒に容易に溶解する。このアプローチの限界の例として、複雑かつ高価な合成法、および空気中での材料の不安定性が挙げられる。
【0009】
米国特許第5853808号には、クロロエチルシルセスキオキサンを分解して薄いセラミック膜にすることが記載されている。転位反応は、概して、強いUV光の下、高い腐食性を有する塩酸を放出しながら実施する。加えて、高い生産コストが、この種の材料を更に限定する。
【0010】
ゾルゲル技術は、シリカを含むフィルムの形成、および小さい粒子のためのバインダーの用途に広く用いられている。一般に、方法は、金属アルコキシドの酸加水分解を含み、上述の用途に用いられる液状ゾル溶液を形成する。この液状前駆体技術は、例えば、低い溶媒相溶性および基体潤湿性等の制限に悩まされている。更に、一様でないコーティングおよびピンホール形成は、粒状材料の安定な懸濁液を作製できないことと共に重要な問題であり得る。加えて、ゾル溶液は非常に不安定であり、結果として、早期のゲル化および短い貯蔵寿命をもたらすことがある。米国特許第4277525号には、該技術の欠点を無くすための複雑な方法が記載されている。一般には、アルコキシシランとカルボン酸または無水物とを4より大きいpKで混合する。第3の反応体、例えば、メタノール、エタノールまたはエチレングリコール等の一価または二価アルコールを添加する。反応促進剤として、4を超えないpKを有する異なるカルボン酸が記載されている。ゾル形成は、数時間を超えて進行する。発熱反応によってゾルの温度が50℃を超えて上昇しないように、または、ゲル化が起こり得るように、予防措置が必要である。ゾルの調製の複雑さと共に、多量の残存カルボン酸は、幾つかの基体に湿りの問題を引き起こす場合がある。
【0011】
吸着粒子の取り扱いを容易にするために、粒子を塊にして形状物、ビーズにすること、またはこれらの粒子を基体に堆積させることが有用であり得る。使用の際、基体からの層間剥離に抵抗する、粒子の安定な接着性コーティングが、種々の理由で有利であり得る:(1)重量対表面積比を改善すること;(2)所要の吸着剤の全体量を減らすこと;(3)攻撃的な環境から下層基体を保護すること;および(4)基体の幾何学的形状が、吸着剤システムに強度または形を与える必要があること。粒状材料の容易な懸濁化、種々の基体への適切な接着性、液状前駆体およびセラミック形態の両方における高い安定性および不活性さ、吸着剤の有孔性による低い干渉を可能にする結合材が必要とされている。
【0012】
米国特許第5325916号および第6143057号の両方には、微細なゼオライト材料から構成されている吸着構造体の作製に用いる、多種多様の結合材が記載されている。適当なバインダー(または結合材)として、マクロ多孔性クレー、シリカ、アルミナ、金属酸化物およびこれらの混合物が挙げられる。これらのタイプの結合材は、例えば、ゼオライトまたはシリカ等のより耐久性のある吸着剤に限定されることがあり、また、後の多くの有機分子の脱離に必要とされる不活性さを与えない場合がある。
【0013】
更に、米国特許第5599445号には、種々の吸着剤(例として、アルミナ、シリカ、有機ポリマー吸着剤およびゼオライトが挙げられる)のための結合材としてのシロキサンポリマー接着剤の使用が記載されている。揮発性有機物および永久気体を分離するクロマトグラフィ固定相として、吸着フィルムを調製および使用することができる。シロキサン材料を成功裏に使用することができるが、逆に、吸着剤の孔容積に影響を与える。加えて、これらのポリマータイプの材料は、限定された熱安定性を有し、結果として、分解の際に望ましくない揮発性の副生成物を生じる。
【0014】
現在市販されているピペットチップ(または先端部)は、チップの使用の際に、層(またはベッドもしくは床)の割れを示し、従って、十分な容量(またはキャパシティ)が無い。また、幾つかの市販のチップは、チップ壁にのみコーティングを有し、従って、分析対象物(または被分析物)の回収を著しく減少させる制限された容量を有する。
【0015】
本発明は、高分子の化学的性質に起因する、既知の組成物および方法の制限を減少または排除すること、および生産コストを減少させることを目的とし、種々のクロマトグラフィシステムおよび用途での使用を可能にする。
【0016】
発明の概要
本発明の幾つかの要旨は、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るマトリックスに留まっている、および/または、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層面に付着している、粒状吸着材を含んで成る吸着構造体を提供することである。セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成り、窒素または炭素原子によって割り込まれていてよい。更に、セラミック組成物は、様々な温度において特有のバンド領域を有する吸収スペクトルによって特徴づけられていてよい。粒状吸着材は、求核性、求電子性または中性であり、炭素、有機ポリマー、シリカ、ゼオライト、アルミナ、金属またはセラミック粉体を含み、粒子が流体に含まれる分析対象物に接触し易いように、セラミック組成物に留まっている。下層面は、ガラス、金属、プラスチック、木材、繊維、セラミックまたはこれらの組み合わせから成る群から選択され、クロマトグラフィーカラムを含む。
【0017】
本発明の他の要旨は、セラミック組成物が、窒素とシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素が結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来している、吸着構造体を含む。セラミック組成物は、粒状吸着材およびオリゴマーを混合して、セラミック組成物が形成するまで加熱することによって調製することができる。
【0018】
本発明の更なる要旨は、クロマトグラフ法を含み、分析対象物を含む移動性流体相は、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るマトリックスに留まっている、および/または、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層面に付着している粒状吸着材を含んで成る固定相に接触することができ、該セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成っている。固定相は、クロマトグラフィーカラムまたは固相抽出デバイスのための充填物を含んで成ってよく、該充填物は、個別の吸着体を含んで成っている。別法では、または加えて、固定相は、クロマトグラフィーカラムの内面にセラミックフィルムを含んで成ってよく、粒状吸着材がフィルムに留まっているか、またはフィルムを介して内面に付着されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の他の要旨は、管状カラム、ならびに、該カラムの壁にアモルファス非ガラス質セラミック組成物および粒状吸着材を含むフィルムを含んで成るクロマトグラフ分離デバイスを含み、該吸着材は、フィルムに留まっているか、または、フィルムを介して壁に付着している。非ガラス質セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る。
【0020】
本発明の他の要旨は、非ガラス質基体、および基体表面上のコーティングを含んで成る複合物を含み、該コーティングは、複合物と接触する流体中の成分の基体への吸着に対するバリアを提供している。コーティングは、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来するアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成る。非ガラス質セラミックコーティングの調製は、オリゴマーを含んで成る流動性ディスパージョンを基体の表面に適用し、その後ディスパージョンを加熱して、セラミック組成物を形成することを含んで成ってよい。非ガラス質基体は、銅、アルミニウム、スチール、ステンレススチール、ニチノール、ブロンズ、ジルコニウム、チタニウムおよびニッケルから成る群から選択されてよい。
【0021】
本発明の他の要旨は、ガラス基体、および基体表面上のコーティングを含んで成る複合物を含み、該コーティングは、複合物と接触する流体中の成分の基体への吸着に対するバリアを提供している。コーティングは、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来するアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成る。ガラス基体は、例えば、差し込みスリーブ、ウール、シリンジバレル、サンプル瓶、コネクタ(例えば、プレスタイト、カラム、およびシール)、吸着トラップアセンブリ、およびサーマルチューブを含んでよい。
【0022】
本発明の更なる要旨は:
ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る、流体透過性塊;
導管または容器を含んで成る固相吸着デバイスであって、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るバインダーによって内部に捕捉されている粒状吸着材を有する、固相吸着デバイス;ならびに
ポリマーマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊の調製方法であって、溶媒、重合可能なシラザンおよび重合開始剤を含んで成る液体媒体中に粒状吸着材を含むディスパージョンを調製することを含んで成り、該重合可能なシラザンが、ポリシラザンモノマー、ポリシラザンオリゴマーまたはこれらの混合物を含んで成っていること、ならびに重合可能なシラザンを重合して、流体透過性塊を形成することを含んで成る方法
を含む。
【0023】
本発明の更なる要旨は、固相抽出に適合するピペットを含み、該ピペットは、バレルおよびチップ(または先端部)を含んで成り、チップは、ポリシラザンポリマーを含んで成るマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る、流体透過性塊を含む。
【0024】
本発明の他の要旨は、固相抽出に適合するピペットを含み、該ピペットは、バレルおよびチップを含んで成り、チップ内には、ポリシラザンポリマーを含んで成るバインダーによって、粒状吸着材が取り込まれている。
【0025】
本発明の更なる他の要旨は、粒状吸着材を導管または容器の内壁に付着させる方法であって:
導管または容器内に粒状吸着材を含んで成るディスパージョンを確立させることであって、ディスパージョンは溶媒、重合可能なシラザンおよび重合開始剤を含んで成る液体媒体中に吸着材を含み、該重合可能なシラザンは、ポリシラザンモノマー、ポリシラザンオリゴマーまたはこれらの混合物を含んで成っていること;ならびに
重合可能なシラザンを重合して、導管または容器内に吸着材を捕捉するバインダーを形成すること
を含んで成る方法を含む。
【0026】
本発明の更なる要旨は、ターゲット化合物を含む流体媒体を含んで成るサンプルから、ターゲット化合物を分離する方法を含み、該方法は、
吸着層を含む容器または導管にサンプルを引き込むことであって、吸着層は、接着性マトリックスに分散している、または接着性バインダーによって捕捉されている粒状吸着材を含んで成り、該接着性マトリックスまたはバインダーは、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成っていること、ならびに、
ターゲット化合物を吸着材の粒子に吸着させること
を含んで成る。
【0027】
他の目的および特徴は、明らかなものもあり、また、以下に示すものもある。
【0028】
好ましい態様の説明
本発明に従って、ポリシラザンポリマーを硬化、か焼および/または熱分解することにより、非常に有用な特性を有するアモルファス非ガラス質セラミック組成物を調製できることを見出した。得られる組成物は、これに接触し得る流体の成分に対して不可逆的に吸着しないということが分かった。従って、該組成物は、下層基体の表面への流体成分の付着に対してのバリアとして機能する、下層基体に対する不動態コーティングまたはフィルムとして有用であることが分かった。このように、組成物は、流体を含む容器の壁、または流体が通る導管の内壁のためのコーティングとして有用である。セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る。好ましくは、セラミック組成物は、結晶質シリカまたは常套のシリカガラスに比べて、相対的に低いヤング率、相対的に低い曲げ弾性率、および相対的に大きい伸びを有する。従って、組成物は、結晶質シリカおよび常套のシリカガラスに比べて、より高度の可撓性を有する。これらの特性は、下層面への分析対象物の吸着に対するバリアとしてのセラミック組成物の有効性に寄与すると考えられている。本発明のセラミック組成物の相対的により高い可撓性は、分析対象物が通過して基体表面に吸着し得る亀裂を引き起こしかねないひびや破砕を減少する傾向にある。セラミック組成物は、これに由来するポリシラザンポリマーに比べて、概して、より高いヤング率、より高い曲げ弾性率、およびより小さい伸びによって特徴づけられるが、組成物およびその下層基体が運転の間に曝され得る機械的および熱的ストレスに対して完全な状態を保護するのに効果的な特性を維持する。
【0029】
さらに、アモルファス非ガラス質セラミック組成物は、粒状吸着材のための非常に有用なマトリックスとして、および/または該吸着材を下層面に付着させるためのフィルムとして機能するということが分かった。このキャパシティにおいて、組成物は、マトリックスまたはフィルムと接触する流体の成分の基体への吸着に対するバリアとしても同様に機能する。従って、粒状吸着材を吸着構造体に用いて、例えば、固相抽出もしくは微量抽出デバイス、またはオープンクロマトグラフィーのカラム等のように、流体サンプルから分析対象物を選択的に吸着する場合、セラミックの接着性フィルムまたはマトリックスは、粒状吸着材を分析対象物に接近させるが、吸着プロセスの選択性を損ない得る基体への吸着を防止する。
【0030】
更に、本発明によれば、吸着構造体は、凝集体(またはコヒーレント体)を含んで成ってよく、上述のアモルファスセラミック組成物は、粒状吸着材が留まっていてよいマトリックスを含んで成る。この性質を有する個別の凝集体は、例えば、クロマトグラフィーカラムのための充填物としての役割をする。
【0031】
セラミック組成物は、酸素と、シリコン、III族、IVA族またはIVB族原子との結合に主に連結されている、酸素とシリコン、III族、IVA族またはIVB族原子とのネットワークを含んで成る化学構造を有する。いずれの特定の理論にも固執すること無く、III族金属および他のIVA族またはIVB族金属は、シリコン原子と同様に、窒素原子との結合を形成すると考えられている。特に、ゲルマニウムは、シリコンと同様の特性を示す。金属は、3または4の酸化状態を有し、例として、ゲルマニウム、ホウ素、アルミニウム、チタニウムおよびガリウムが挙げられる。アモルファスセラミック組成物は、シリコン酸化物またはゲルマニウム酸化物と同様の一般的な構造を有するが、不動態フィルムまたはマトリックスとしてのユニーク且つ有利な特性に寄与するという意味で、シリカガラスとは構造的に異なる。好ましくは、セラミック組成物は、ゲルマニウムまたはシリコンを含んで成り、シリコンは、特に多種多様の用途において経済的であり、また、有利でもある。
【0032】
様々の好ましい態様において、セラミック組成物の化学構造は、IVA族またはIVB族原子と窒素原子または炭素原子との結合によって、規則的またはランダムに割り込まれていてよい。エネルギー分散分光法を用いたスパッタ深さプロファイリング(profiling)に基づくと(図9)、セラミック組成物には炭素および窒素原子が存在している。例えば、セラミック組成物は、約1〜約2000Åの間の深さにおいて少なくとも30%の炭素原子および少なくとも2%の窒素原子、より典型的には、約1〜約2000Åの間の深さにおいて少なくとも40%の炭素原子、ならびに/または、約1〜約2000Åの間の深さにおいて少なくとも3%の窒素原子を含んでよい。いずれの特定の理論にも固執すること無く、これらの残存している炭素および窒素は、結晶質シリカおよび常套のシリカガラスに比べてある程度の可撓性をセラミック組成物に与えると考えられている。そのような可撓性を与える正確なメカニズムは明確ではない。組成物の可撓性は、いくらかはセラミック組成物内での閉塞、恐らくは非常に微細な閉塞に起因する場合もある。これらの閉塞は、亀裂またはひびが入るいずれの傾向も上回り、伸びる又は曲がる傾向を与える性質を有する組成物においては、脆弱性の原因となることが理論づけられている。従って、セラミック組成物の可撓性は、残存している炭素および窒素原子ならびに/またはいずれの存在する閉塞にも関係する場合がある。
【0033】
本発明のセラミック組成物は、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来している。セラミック組成物を形成するために、オリゴマーおよび粒状吸着材を加熱する。セラミック組成物の特性は、前駆体オリゴマーおよび粒状吸着材が曝される露出温度および時間の両方の影響を受ける。有効な温度範囲まで加熱すると、オリゴマーは架橋ポリマーフィルムとなる(または転化する)。典型的には、架橋ポリマーフィルムは約25℃〜約450℃の間の温度範囲で形成することができる。高温に加熱すると、架橋ポリマーフィルムはセラミック状態となる。典型的には、架橋ポリマーのセラミック状態への転化は、約400℃〜約2200℃のいずれかで起こる。一態様において、架橋ポリマーのセラミック状態への転化は、約400℃より高い温度で起こる。
【0034】
加熱を行う際の雰囲気条件は、形成される架橋フィルムの性質に影響を与える。架橋ポリマーは、空気および不活性雰囲気の両方において、約25℃〜約250℃の温度で典型的には形成するが、特定の雰囲気は、セラミック材料への塊の転化度にかなり影響を与える。熱重量分析(TGA)を用いて、この転化度を測定することができる。図7は、アモルファス非ガラス質フィルムになる際の、ポリシラザンコーティングの重量の減少(または下り勾配)を示す。図は、硬化プロセスの間の残りのフィルム重量を温度の関数としてプロットし、初めの乾燥ポリマーフィルムの重量の百分率として表す。空気下では、セラミック状態への転化の後に、出発材料の重量の約95%が残っている。対照的に、窒素雰囲気下では、セラミック状態への転化の後に、出発材料の重量の約75%のみが残っている。好ましくは、転化は空気中で行う。
【0035】
比較的低温での架橋ポリマーフィルムの形成は、フィルムにダメージを与えることなく、または最小限のダメージのみでフィルムを取り扱い、処理することを有利にも可能にする。また、より低い温度は、より容易な複数のコーティングの適用を可能にする。更に、比較的低温で架橋ポリマーフィルムをセラミック状態とすることによって、より広範囲の基体の使用を可能にする。特に、高温において、クラッキングまたは他のタイプの分解の影響を受けやすい、従って、コーティングに適切でない基体を、本明細書で記載のセラミックのフィルムを用いて比較的低温でコーティングすることができる。更に、架橋ポリマーフィルムからセラミック状態への転化を他の多くの用途に比べてより低い温度で実施することができるため、比較的高価な高温オーブンの代わりに一般の安価なオーブンを用いて転化を実施することができる。
【0036】
本発明の吸着構造体は、約0.1〜約99.8重量%の間で粒状吸着材を含んで成る。粒状吸着材の重量%は、吸着構造体の特定の用途によって変化する。例えば、クロマトグラフィ用途に用いる際、吸着材は典型的には1〜83重量%の範囲である。好ましくは、吸着性コーティングは約20〜約33重量%の間で吸着材を含んで成る。
【0037】
粒状吸着材は、求核性、求電子性または中性であってよい。例えば、粒状吸着材は、炭素、有機ポリマー、シリカ、ゼオライト、アルミナ、金属またはセラミック粉体から選択してよい。本発明の組成物および構造物に有用な好ましい有機ポリマー吸着剤の例として、例えば、スペルコ(Spelco)社(ペンシルベニア州ベレフォンテ)製のXAD(登録商標)という名称で販売されている、多孔性の非イオン性ポリマー吸着材によって構成されているポリ(ジビニルベンゼン)、コポリマーまたはスチレンおよびジビニルベンゼン;ポリスチレン;Amberchrom(登録商標)という名称で販売されている吸着材によって構成されている、多孔性の高度に架橋されたメタクリレートコポリマー樹脂(同様に、スペルコ社製);アクリルエステルコポリマー;アクリロニトリル−ジビニルベンゼンコポリマー;および、芳香族骨格または芳香族ペンダントグループを含んで成る様々なポリマーが挙げられる。種々の他の架橋ポリマー材料を用いることもできる。
【0038】
本発明の実施に有用な炭素吸着材の例として、カーボキセン(Carboxen)1006(登録商標)およびカーボパック(Carbopack)Z(登録商標)(いずれもスペルコ社製)が挙げられる。
【0039】
多孔性吸着材が多くの用途において好ましいが、本発明の粒状吸着材は、実質的に無孔の炭素、有機ポリマーまたは他の求核性材料から構成されていてもよい。
【0040】
概して、粒状吸着材は、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの寸法で変動する。粒状吸着材の粒子寸法分布は、好ましくは、その少なくとも1重量%が、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの粒子寸法を有するようになっている。有利には、吸着材の少なくとも約50重量%が約1ナノメートル〜約10ナノメートルの粒子寸法を有する。いくつかの用途においては、粒状吸着材の粒子寸法分布は、その少なくとも1重量%が約0.1ミクロン〜約10ミクロンの粒子寸法を有するようになっている。
【0041】
好ましくは、粒状吸着材は約0.1〜約4000m/gの間のB.E.T.表面積を有していてよい。ある好ましい態様においては、粒状吸着材は少なくとも100m/gのB.E.T.表面積を有する。ある他の用途、例えば、ピペットチップにおける吸着層として使用するとき、粒状吸着材は、好ましくは、少なくとも1m/g、好ましくは少なくとも35m/gのB.E.T.表面積を有する。典型的には、吸着材は約0.01〜約5cc/gの孔容積を有してよい。多くの態様において、粒状吸着材の孔容積の少なくとも85%は、約2.5Å〜約10000Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている。ある他の用途においては、吸着材の孔容積の少なくとも75%が約100Å〜約300Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている。更なる他の用途においては、吸着材の孔容積の少なくとも75%が約100Å〜約2000Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている。特に好ましい態様において、吸着材は、炭素基準にて、主に0.2〜2.0μmの間の粒子寸法、約0.1〜約3cc/gの間の全孔容積、約0.1〜約2.0cc/gの間のマクロ孔(またはマクロポア)(直径>500Å)、約0.1〜約2.0cc/gの間のメソ孔(またはメソポア)(20〜500Åの直径)、約0.1〜約2.0cc/gの間のミクロ孔(またはミクロポア)(3〜20Åの直径)を有する。黒鉛状炭素は、概して無孔であり、1〜100m/gの範囲の外側表面積を与える。これらは、適切であり得る。カーボパックXの名称でスペルコ社より販売されている有用な黒鉛状炭素は、約250/gのB.E.T.表面積を有し、約0.5cc/g未満の適度のレベルのミクロポロシティ(microporosity)を含んで成る。
【0042】
ゼオライト分子篩から成る吸着材は、典型的には、0.1〜約5ミクロンの間の粒子寸法、約0.3〜約0.7cc/gの間の範囲の平均孔容積、および約5Åの平均孔寸法を有する。ゼオライト分子篩のB.E.T.表面積は、概して、約250〜約400m/gの範囲である。
【0043】
活性アルミナから成る吸着材は、概して、サブミクロンの粒子寸法範囲、即ち、約0.1〜約5ミクロンの間である。活性アルミナは、約2〜約100000Åの範囲の平均孔寸法、約0.25〜約1cc/gの間の孔容積、および約300〜約400m/gの範囲のB.E.T.表面積を有する。
【0044】
活性シリカ吸着材は、約1〜約10ミクロンの間の粒子寸法、約0〜約1000Åの間の平均孔寸法、および約0.5〜約20cc/gの間の孔容積を有する。シリカゲルは、約3〜約500Åの間の範囲の平均孔寸法、および約0.5〜約20cc/gの間の範囲の平均孔容積を有し、1〜約1000の間の典型的な粒子寸法において利用可能である。B.E.T.表面積は、通常は、活性シリカの場合には約20〜約400m/gの間の範囲であり、また、シリカゲルの場合には、約50〜約1300m/gの間の範囲である。
【0045】
乳化および/または懸濁重合によって製造する多孔性の有機ポリマーは、(粒子寸法の割には)分散していなくてよく、換言すると、約1〜約2ミクロンの間の粒子寸法範囲内で、狭く分布していてよい。そのような多孔性重合体は、非常に広い範囲のB.E.T.表面積、例えば、約1〜約1300m/g、一般的には500〜900m/g、最も典型的には700〜800m/gを示す。孔寸法は、約100〜200Åの間の範囲である。孔容積は、概して、約0.2〜約2cc/gの間の範囲である。
【0046】
本開示において、比表面積、全孔容積、孔寸法分布、および全孔容積への寄与(contribution)は、例えば、S.J.GreggおよびK.S.W.SingによるAdsorption Analytical Area and Porosity(アカデミック・プレス、ニューヨーク、1982年)、ならびに、P.A.WebbおよびC.OrrによるAnalytical Methods in Fine Particle Technology(Micromeritics社(ジョージア州、1987年))(これらの全ての開示は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている、窒素ポロシメトリー分析によって決定された値である。ASAP2010ポロシメータ(Micromeritics社(ジョージア州、アメリカ合衆国))、表面積および孔容積測定機器を用いて、本明細書の実施例18ならびに図11Aおよび11Bに記載のデータを得た。比表面積の決定は、既知の重量の固体を、一定温度、例えば、液体窒素の温度、−196℃において、所定の圧力の非特異性吸着ガス(即ち、窒素)に曝露することを含む。平衡の間、ガス分子は、バルクガスを離れて固体の表面に吸着し、バルクガス中の平均分子数の減少を引き起こして、圧力が順に低下する。平衡時の相対圧力(P)は、吸着ガスの飽和圧力(P)の分数として記録する。この圧力減少と、容器および固体サンプルの体積とを組み合わせることによって、吸着されたガスの量(即ち、分子の数)を理想気体の法則の適用によって計算する。これらのデータは、多層吸着に関するブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)式を典型的には適用して、約0.001〜0.05の相対圧力(P/P)において測定する。吸着ガス分子の数が既知であるとき、比表面積は、吸着ガス、窒素の既知の断面積を用いて計算する。ファンデルワールス(Van der Waals)力に起因する物理吸着のみが起こる場合には(即ち、タイプIのラングミュア等温式)、BET式を用いて、観測される圧力変化から表面の決定を行う。孔寸法および孔寸法分布は、P/P=1に近い相対データを得ることによって、即ち、多層吸着および毛管凝縮が起こる型(regime)において計算した。ケルビン(Kelvin)式、およびBarrett,Joyner and Halenda(BJH)によって開発された方法を適用することによって、全孔容積および全孔容積への寄与を得た。
【0047】
図11Aおよび11Bに示すように、密度汎関数理論(DFT)によるプロットは、相対圧力値、P/Pのグラフであり、それぞれの孔径に関して、一連の数式を用いて、相対圧力値を得る。このようにして得たプロットは、オングストロームの孔径と、得られた孔容積(即ち、特定の孔径領域で吸着した窒素の量)値とを関連づけている。
【0048】
図11Aを参照すると、得られたポロシメトリーデータは、表面積がわずかに減少するが、十分量のミクロ孔領域が残存することを示している(第1吸着作用の位置)。また、DFTプロットにおいて分かるように、メソ孔およびマクロ孔の径は大幅に変化していない。図11Bを参照すると、得られたデータは、孔に留まっている2種の接着剤によって少量のミクロポロシティが生成したこと、および該接着剤の存在に起因して少量のメソポロシティが失われたことを示す。しかしながら、吸着作用を実施するための十分量の正常に機能する孔が残存していた。
【0049】
アモルファス非ガラス質セラミック組成物を、ガラスまたは非ガラス材料(例えば、金属、プラスチック、木材、繊維、セラミックまたはこれらの組み合わせ)から成る下層面に適用してよい。広範囲の種々の用途において、下層面は金属またはガラスである。好ましい金属の例として、例えば、銅、アルミニウム、スチール、ステンレス、ニチノール、ブロンズ、ジルコニウム、チタニウム、およびニッケルが挙げられる。該面は、いずれの既知の常套の方法によってもコーティングすることができる、いずれの幾何学的構造を有していてもよい。特に、該面は、管、トランスファ・ラインまたは他の導管、シリンジのバレルの内壁(例えば、サンプル移動もしくはPawliszynによる米国特許第5691206号に記載されているSPMEデバイスに用いられる)、熱もしくは溶液脱着デバイスの内面、クロマトグラフ用フィッティング(例えば、バルブ、T字管、エルボー等)、ダイヤフラム、ロータ、通路、反応もしくは吸着操作を行う容器、攪拌反応容器もしくは吸着作用のための接触器の攪拌機の表面、GCおよびLCカラムおよび装置のハードウェア(例えば、注入材ライナー、入口ディスク、ウール、検出器アセンブリ、例えば、FIDジェット、質量分析アセンブリ、例えば、イオントラップ部)、HPLCカラムハードウェア、サンプルループ、フリット、腐食性固相抽出材用の充填デバイス、通常のハウジングおよびアセンブリ(例えば、ノズル、燃焼/反応チャンバー、スプレーリング、流量制限器等)、MALDIサンプリングプレート、疎水性または化学的なぬれ性(もしくは湿潤性)の変化を必要とする表面、ならびに、SUMMAまたはTOタイプのサンプリングを含む、液体および気体用容器等が挙げられる。好ましい態様において、吸着材の下層面は、流体を内部にて貯蔵または輸送するための導管または容器の内壁である。
【0050】
概して、セラミック組成物は、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの間の厚さを有する。多層のセラミック組成物は、基体面上に与えられていてよい。複数の層を適用することにより、セラミック組成物のクラッキングを減らし、または無くすことができる。
【0051】
セラミック組成物は、フィラー材料を含み、セラミックコーティング厚を増加させることもあり得る。コーティング厚を増加させることにより、有利にも、コーティングの物理的強度を上げ、耐摩耗性を上げ、そして下層基体の更なる保護を提供する。フィラー材料の例として、炭素、金属粉体、セラミック粉体、グラファイト、フレーク、マイカ、ジルコニウム、およびヒュームドシリカ(fused-silica)が挙げられる。好ましい態様において、フィラー材料は、マイカ、ヒュームドシリカまたはジルコニウムである。選択されるフィラー材料は、分析対象物に対して非吸着性である必要があり、好ましくは、セラミック組成物と接触する流体の全成分に対して非吸着性である必要がある。
【0052】
粒状吸着材を基体に接着させるために、シラザンオリゴマーまたはポリマーの溶液において粒子を好ましくは懸濁させ、基体を上述の範囲の温度で懸濁液と接触させる。懸濁液は、溶媒を用いて、または用いずに調製することができる。溶媒を用いるとき、ポリシラザンポリマーの有効な可溶化をもたらし、粒状吸着材を湿らせる本質的にいずれの有機溶媒を反応に用いてもよい。好適に用いることができる有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびメチルイソプロピルケトン等のケトン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルおよびジプロピルエーテル等のエーテル、エチルアセテート、メチルブチレートまたはアミルアセテート等のエステル、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族溶媒、クロロホルム、トリクロロエタンおよびジクロロメタン等のハロゲン化溶媒、ならびに、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等の他の一般的な溶媒である。二硫化炭素およびアクリロニトリル等の非プロトン性溶媒も有用である。好ましくは、用いる溶媒は、最大で約1000℃の温度において、粒状吸着材、好ましくは炭素粒子を湿らせるのに有効である。本発明のこの態様に好ましい溶媒の例として、ペンタンおよびジクロロメタン等が挙げられる。黒鉛状炭素には、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0053】
反応混合物を、実質的に湿気を含まない状態に保つことが望ましい。最も一般的な湿気源であるとき、溶媒は、好ましくは約50ppm以下、より好ましくは約10ppm以下の含水量(または含水率)を有する。好適には、攪拌、または超音波にさらすことにより、ポリシラザンポリマーを溶媒に溶解または分散させる。また、機械的攪拌または超音波処理を好ましくは用いて、溶液中での吸着材の均一な分散を得るのに役立てる。
【0054】
反応体の濃度および比、または、圧力も、限定された決定的なものではない。好適には、溶液またはディスパージョン中のシラザン含有量は、約1〜1000gplの間であってよく、また、反応前のスラリー中の炭素または他の分散している粒状吸着材の濃度は、約1〜約500gpl、通常は、10〜100gplの間の範囲であってよい。吸着剤に対するシラザンの比は、好ましくは約1対20〜約1対1、より好ましくは約1対10〜約1対2、更により好ましくは、約1対5〜約1対2である。35〜80gplの範囲である、より濃縮されたコーティング溶液を用いて、単一のコーティングで多層の炭素を供給することができる。10〜30gplの濃度は、典型的な寸法(例えば、0.2〜1ミクロン)の単層炭素粒子のみを与えるには概して効果的である。それにもかかわらず、多層炭素粒子を有するコーティングは、複数のサイクルでコーティングを適用することによって、そのような比較的希薄な組成物から得ることができる。
【0055】
反応は、周囲圧力で容易に行われるが、高真空(−29.90”Hg)から最大10000psiまでの陽圧の圧力範囲も、反応に悪影響を与えず、許容することができる。シラザン溶液中の粒状吸着材(概して炭素粒子)のスラリーが基体に接触したときに、溶媒が除去される。好ましくは、蒸発によって溶媒を除去するが、該技術分野で既知の他の手段、例えば、昇華等を利用することもできる。
【0056】
粒状材料は、セラミック組成物を含んで成るマトリックスに留まっていてよく、および/またはセラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層基体に付着していてよい。吸着材がセラミックマトリックスに留まっているとき、吸着材の粒子は、マトリックスから露出することによって、またはマトリックスにある孔を介した吸着剤への分析対象物の流れによって、分析対象物に接近することができる。
【0057】
更に、セラミック組成物は、凝集体として形成されていてよい。凝集体は、セラミック組成物によってコーティングされ得るコア塊(または中心塊)を含んで成ってよい。そのような場合、コア塊は、金属、ガラス、炭素およびシリカから選択してよい。好ましいコア塊は、シリカである。吸着構造体は、凝集体を含んで成ってよく、粒状吸着材は、セラミック材料を含んで成るマトリックスに留まっている。上述のように、粒状材料は、セラミックマトリックスから露出していてよい;また、凝集体に接触する流体中の分析対象物は、マトリックスにある孔を通って流れることによって吸着粒子に接近することができる。吸着層は、上述のいずれかの別の構造を有する複数の個別の吸着体から形成されていてよい。そのような吸着層は、例えば、クロマトグラフィーカラムのための充填物として機能してよい。そのようなカラムは、そのような充填物材を含んで成る層を含む管状部材を含んで成ってよい。吸着構造体は、本質的にセラミック組成物から成るモノリシックな塊を含んで成っていてもよい。
【0058】
上述のいずれの様々の態様においても、粒状吸着材が存しているセラミックフィルムは、粒状吸着材が吸着する分析対象物または他のターゲット化合物に対して、実質的に不可逆的に吸着しない。このように、分析対象物は、粒状吸着材によって殆ど全体的に吸着され、これにより、吸着の選択性が増大する。
【0059】
セラミック組成物の正確な化学的性質は、決定されていない。しかしながら、赤外分光およびEDS(エネルギー分散分光)深さ方向分析(またはプロファイリング)によるデータを用いて、ある仮説および特徴付けを行うことができる。例えば、EDS深さ方向分析を用いて(図9参照)、約1〜約2000Åの深さでは、炭素原子は、例示的なセラミック組成物において少なくとも40%の濃度で存在するということが見出された。更に、同じ例の同じ深さ範囲では、窒素原子は、少なくとも4%の濃度で存在することが見出され、また、Si−O結合原子は、少なくとも10%の濃度で存在することが見出された。
【0060】
エネルギー分散分光による深さ方向分析から集められた情報を、IR分光法からの情報と組み合わせて、例示的なセラミック組成物を更に特徴づけることができる。図10は、200℃で10分間、次いで450℃で10分間、前駆体を硬化することによって得られるセラミックフィルムの組成に対するポリシラザン前駆体の組成を示すIRスペクトルを表す。前駆体材料は、Si−NH−Si結合を示す3384cm−1の特性バンド(または特性吸収帯)を有する。このバンドは、最終的なセラミック組成物には殆ど存在せず、そのような結合はもはや存在していないということを示している。同様に、前駆体ポリシラザンフィルムの2136cm−1におけるSi−Hバンドは、最終的なセラミック組成物には存在しない。しかしながら、ポリシラザンフィルムのC−Hバンドがセラミック組成物に残っているが、強度はより小さい。これらの調査結果は、他の研究者達の調査結果と一致している。D.Bahloulらは、熱分解温度が上昇すると、一般式(SiVi−NH)(「Vi」はビニル基である)のサンプルにおいて、強度の低下および吸着バンドの広がりが観察されることを見出した。Pyrolysis Chamistry of Polysilazane Precursors to Silicon Carbonitrile(Djamila Bahloulら、J. Mater. Chem、1997、7(1))第109〜116頁。特に、250℃で熱分解されたポリシラザンサンプルのスペクトルは、3047、1592および1406cm−1のビニル基のバンド強度で減少を示した。また、2135cm−1のSi−H伸縮バンドも減少した。500℃において、N−H(3400、1170cm−1)、Si−H(2130cm−1)およびビニル基(3050、1594、1404cm−1)から生じる吸着バンドがかなり減少した。温度が上昇すると、残りのSi−H、N−HおよびC−H結合が消えた。
【0061】
様々な吸着構造体および本発明の他の態様において有用であるということが分かっている典型的なセラミック組成物は、C−Hに関する約2976c−1mの特性バンドを有する赤外振動吸収スペクトルを示すということが見出された。加えて、この典型的なセラミック組成物は、以下の一連の特性バンド幅(値は、cm−1):Si−Oに関して約1200〜約900、Siに関して約900〜約600、およびSi−Cに関して約900〜約600を有する赤外振動吸収スペクトルを有することが見出された。好ましくは、セラミック組成物は、250℃において以下の一連の特性バンド幅(値はcm−1):ビニル基に関して約3047、1592および1406;ならびにSi−H(伸縮)に関して約2135;ならびに、500℃において以下の一連の特性バンド幅(値はcm−1):N−Hに関して約3400および1170;Si−Hに関して約2130;ならびにビニル基に関して約3050、1594および1404;を含んで成る、赤外振動吸収スペクトルを有し得る。概して、セラミック組成物は、赤外分光法によって測定したとき、250℃でのビニル基の強度が室温での該強度に比べて減少することを示し得る。更に、セラミック組成物は、500℃でのビニルおよびN−H基の吸着バンドが、250℃での該吸着バンドに比べて減少することを示し得る。
【0062】
上記のように、本発明のセラミック組成物は、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来していてよい。オリゴマーは、本明細書に記載のように、粒状吸着材と混合し、そして、有効温度まで加熱してよく、初めに架橋ポリマーフィルムを形成する。より高い有効温度まで加熱する際に、架橋ポリマーは、セラミック組成物となる。ポリマーフィルムとセラミック組成物との転化温度は、上述の通りである。オリゴマーの、ポリマーマトリックスまたはフィルムへの転化、およびその後のセラミック組成物への転化は、空気中または不活性雰囲気下で起こり得る。
【0063】
好ましい態様において、シラザンオリゴマーは、式:
【化1】

(式中、
は、水素、ビニル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アセトキシ、ハロ、ヒドロキシアルキル、ジメトキシアミノ、オキシム、イソシアネート、CHQ−(OCHCHOH、
【化2】

から成る群から選択し、
は、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状−(CH−O−CH、および、必要に応じてC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで置換されたアリールから成る群から選択する;
QはC1−8アルキルであり;および
nは1〜約20である)
を有する繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーである。
【0064】
好ましくは、Rは、水素、ビニル、アルコキシ、ヒドロキシおよびアルキルから成る群から選択する。より好ましくは、Rは、少なくとも1の繰り返しユニットにおいてビニル基である。
【0065】
好ましくは、Rは、水素、ビニル、アルキル、アリールおよびフルオロアルキルから成る群から選択する。より好ましくは、Rは、水素またはメチルである。
【0066】
上のいずれかの態様において、nは、好ましくは2〜約12、より好ましくは3〜約8、そして最も好ましくは3〜約6である。
【0067】
好適には、オリゴマーは、約6〜約10環原子を有し、そして少なくとも1のビニル置換基を有する環状シラザンを含んで成る。1の特に好ましい態様において、オリゴマーは、式:
【化3】

(式中、Rは、Hまたは−CH=CHであり、nは、1〜20である)
を有する。
【0068】
本発明による、環状シラザンの調製方法は、米国特許第6329487号において見つけることができ、その全ては、ここで参照することにより本明細書に組み込まれる。米国特許第6329487号に記載の通り、環状シラザンは、例えばメチルジクロロシラン等の出発化合物から調製することができる。初めのアンモノリシス(または加アンモニア分解)の間、シリコン−塩素結合はアンモノリシスを受け、これによりジアミノシランを生成し、さらに、いくらかのSi−N構造ユニットを含む直鎖状分子に転化される。この反応を以下に示す。
【化4】

【0069】
直鎖構造体は、溶解している、イオン化したハロゲン化アンモニウム塩を含む液状無水アンモニア中で安定している。このイオン化かつ溶解しているハロゲン化アンモニウム塩は、Si−H結合のロスを引き起こして、直鎖ポリマーに新たなシリコン−塩素結合を生成させる酸触媒として作用する。この直鎖構造体は、以下に示すように、無水アンモニア溶液と接触して小さな環を形成し、環状化することができると理論づけられる。
【化5】

【0070】
概して、本発明のシラザンおよびポリシラザンは、米国特許第6329487号に記載されている方法によって調製することができる。特に、少なくとも1つのSi−H結合を好ましくは有する少なくとも1つのハロシランを、シリコン−ハロゲン化物結合に対して少なくとも2倍の、好ましくは少なくとも約5〜約10倍の化学量論量の液状無水アンモニアに導入する。無水アンモニアを、十分な温度および/または圧力で保ち、プロセスの間、液化状態に保つ。アンモノリシスプロセスの間、副産物として生成するハロゲン化アンモニウム塩を液状無水アンモニア溶液中で保持する。ハロゲン化アンモニウム塩は、無水液体アンモニア中で実質的にイオン化および溶解されていて、そして、例えば、本発明に有用なシラザンおよびポリシラザン化合物を触媒作用によって調製するための酸性環境を提供する。
【0071】
吸着構造体の一調製において、オリゴマーおよび粒状吸着材を含んで成る流動性のディスパージョンを調製することができる。次いで、ディスパージョンを基体表面に適用し、有効温度まで加熱して、セラミック組成物を形成することができる。いずれの既知の適用手段によってディスパージョンを適用してもよい。特に、ディスパージョンを、スプレー、ブラシ、スピンもしくはディップ(もしくは浸漬)コーティングまたはこれらの組み合わせによって適用してよい。更に、単層または多層を含んで成るコーティングの適用において、静電(または帯電もしくはスタティック)コーティング法またはダイナミックコーティング法を用いることができる。スタティック法において、シラザンポリマー溶液中の粒状吸着材のスラリー、好ましくは炭素粒子を基体表面へのウェットコーティングとして適用し、熱および/または真空の適用によって溶媒を除去する。炭素粒子の濃度および溶液の粘度に応じて、1のコーティングサイクルにおいて1〜約20個の炭素粒子の厚さのコーティングを得ることができる。ダイナミックコーティング法によって、不活性ガス圧力下でコーティングすべき管状カラムを介して貯蔵器からスラリーを押し進める。スラリーの塊は、内側のカラム壁に付着しているフィルムを残して気相の前方に動く。塊が前方に動くと、スラリーの環状の遷移セグメントは、おおよそ円錐形の内面を有し、塊と、壁に堆積している湿った安定した円筒状フィルムとの中間にある塊の後ろを、壁に沿って動く。安定なフィルムの厚さは、壁と、該遷移セグメントの内側の円錐形表面との間の角度の関数である。より厚いフィルムは、スラリー中の高い炭素濃度、および塊と基体との間の比較的急な角度の両方(即ち、スラグの前面が基体に遭遇する前進角、および遷移セグメントと基体との間の後退角の両方)に関連していること、更に、角度の急勾配は、ガス圧に伴って直接変動するということが見出された。
【0072】
別の調製では、オリゴマーを含んで成る凝集性前駆体塊を加熱することによって、セラミックマトリックス組成物を形成する。前駆体塊は、粒状吸着材およびオリゴマーを含んで成るディスパージョンから形成することができる。加熱すると、前駆体塊は、セラミック組成物を含んで成るマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る凝集体を生成する。別法では、オリゴマーを含んで成る凝集性の前駆体塊の表面上に、粒状吸着材を適用することができる。結果として生成する、オリゴマーと粒状吸着材との組み合わせは、その後に加熱して、構造体を含んで成る凝集体を形成し、吸着材を有するセラミック組成物は、セラミック組成物表面上に分散している。
【0073】
上述の一般的なタイプの吸着性コーティングおよび構造体は、クロマトグラフ分離法に用いることができる。そのような分離法によって、分析対象物を含む移動性流体相は、粒状吸着材(アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るマトリックスに留まっている、および/またはアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層面に付着している)を含んで成る固定相に接触する。セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る。セラミック組成物の性質は、上記と同様である。この態様の固定相は、クロマトグラフィーカラムまたは固相抽出デバイスのためのフィラー材料から構成されていてよい。充填物は、本明細書に記載のように、セラミック組成物のマトリックスに留まっている粒状吸着材を有する個別の吸着体から構成されていてよい。別法では、固定相は、クロマトグラフィーカラムの内面にセラミックフィルムを含んで成り、粒状吸着材がフィルムに留まっている、および/またはフィルムを介して内面に付着している。好ましくは、セラミック組成物は、移動相に含まれている分析対象物に対して不可逆的に吸着せず、より好ましくは、分散媒以外の移動相のいずれの成分に対しても不可逆的に吸着しない。より好ましくは、セラミック組成物は、分散媒に対しても不可逆的に吸着しない。
【0074】
本発明は、GC(ガスクロマトグラフ法)、液体クロマトグラフ法、PLOT(多孔質層開管法)、Maldi(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)、TLC(薄層クロマトグラフ法)およびSPME(固相微量抽出法)を含むクロマトグラフ法を対象とする。実施するクロマトグラフ法のタイプに応じて、セラミック組成物の形態が変化し得る。例えば、セラミック組成物は、上述のように、フィルムまたは吸着層の形態であってよい。例えば、高分子量の分析対象物をクロマトグラフィによって分離する必要がある場合には薄膜が好ましく、フィルムまたは低表面積の吸着層への分析対象物の強い吸着を最小にする。低分子量/低沸点の分析対象物を分析する必要がある場合には高表面積の多孔質固体が好ましく、分析対象物を効果的に分離する。
【0075】
本発明の他の態様において、管状カラム、およびカラム壁にコーティングを含んで成るクロマトグラフ分離デバイスを対象とする。コーティングは、アモルファス非ガラス質セラミック組成物および粒状吸着材を含んで成るフィルムである。吸着材は、フィルムに留まっており、および/またはフィルムを介して壁に付着している。セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る。
【0076】
上述の容器、導管、デバイスおよび他の態様において、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を基体に適用し、容器に貯蔵され又は導管もしくはデバイスを介して運ばれる流体中の成分の表面上への吸着に対するバリアを提供することができる。セラミック組成物は、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来している。例えば、フィルムまたは薄層等のコーティングは、基体の表面を不動態化するのに効果的であり、その機能は、主に、不動態化して、容器または導管の壁への分析対象物のロスを防ぐことであり、コーティングは、粒状吸着材を含んでいない。コーティングは、オリゴマーを含んで成る溶液または流動性のディスパージョンを基体の表面に適用し、そして該溶液または該ディスパージョンを加熱することにより調製して、セラミック組成物を形成することができる。他の態様と同様に、オリゴマーを架橋ポリマーフィルムとする(または転化する)のに効果的な温度まで加熱することができる。この架橋ポリマーフィルムを、セラミック状態となる更なる高温まで更に加熱してよい。両方の転化の温度範囲は上述の通りである。
【0077】
基体の表面に不動態コーティングを適用することによって、上述のように、コーティングされた表面は、これに接触する流体に含まれている分析対象物に吸着しない。結果として、基体との相互作用によっては、分析対象物は殆ど失われない。特に、非常に少ない量の分析対象物を吸着するSPMEの用途に関しては、コーティングされていない表面との相互作用によるほんの少しの分析対象物のロスも、分析結果に影響を与える場合がある。SPMEは本明細書に記載の技術の重要な用途であるが、これに限定されない。図8aおよび8bは、例えば、トレースレベルの水および二硫化炭素のガスクロマトグラフ(GC)分析を示す。図8aのクロマトグラムを与えるプロセスにおいては、ポリシラザン不動態コーティングによって処理したステンレススチール製トランスファ・ラインを介して、サンプルを供給した。図8bのクロマトグラムを生ずるプロセスにおいては、ステンレススチール製トランスファ・ラインを処理していない。グラフの比較から、ポリシラザン処理した管は、水および二硫化炭素分析対象物の分離および検出をもたらす分析カラム内での活性化合物の移動に対し、十分に不活性であることが明らかである。
【0078】
表面の不動態化のためにコーティングを用いる態様において、下層面は実質的にガラス製であり、該面は、例えば差し込みスリーブ、ウール、シリンジバレル、サンプル瓶、コネクタ(たとえば、プレスタイト、カラム、およびシール)、吸着トラップアセンブリ、およびサーマルチューブを含んで成る。
【0079】
表面の不動態化のためにコーティングを用いる好ましい態様において、下層基体は、実質的に非ガラス製である。非ガラス製基体は、金属、プラスチック、ウール、繊維、セラミックまたはこれらの組み合わせから成る群から選択してよい。好ましい非ガラス製基体は、金属である。別法では、非ガラス製基体は、銅、アルミニウム、スチール、ステンレススチール、ニチノール、ブロンズ、ジルコニウム、チタニウムおよびニッケルから成る群から選択してよい。コーティングを、いずれの形の表面に適用することもできる。特に、コーティングを、非ガラス製導管または容器に適用することができる。
【0080】
表面の不動態化のためにコーティングを用いるこれらの態様において、コーティングすべき基体は、分析対象物を含む流体と接触し得るデバイスおよびフィッティングの内壁または他の作業面を含む。そのようなデバイスおよびフィッティングの例として、管、トランスファ・ライン、パイプ、バルブ、フィッティングおよびレギュレータ(例えば、フリット、ダイヤフラム、ロータ、通路等)、GCおよびLCカラム、および装置のハードウェア(例えば、GC注入材ライナー、入口ディスク、ウール)、GC検出器アセンブリ(例えば、FIDジェット、質量分析アセンブリ、例えば、イオントラップ部)、HPLCカラムハードウェア(hardware)、サンプルループならびにフリットが挙げられる。他の表面の例として、腐食性の固相抽出材のための充填デバイス、SPMEアセンブル、一般的なハウジングおよびアセンブル(例えば、ノズル、燃焼/反応チャンバー、スプレーリング、流量制限器等)、MALDIサンプリングプレートが挙げられる。不動態コーティングに適し得る更なる表面の例として、疎水性または化学的な湿潤性への変化を必要とする任意の表面、SUMMA(スマ)またはTOタイプのサンプリングキャニスターを含む、液体および気体用容器等が挙げられる。
【0081】
必要に応じて、不動態コーティングは、下層面の疎水性/親水性を変える働きをする。本発明のそのような態様において、セラミックフィルムの表面を被覆(または誘導体化)して、下層面の特性を変える。ある用途において、MALDIサンプルスライドの表面を疎水性表面に変えて、スライド表面に水ベースのサンプルを適用する際に、幾何学的構造が保存されるようにする。詳細には、サンプルがスライドの表面で玉のようになり、より濃縮されたサンプルおよび改善されたレーザー分析を可能にする。
【0082】
本発明は、更に、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るマトリックスに分散し得る粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊を対象とする。流体透過性塊は、約5〜約20μリットル/秒の透過率を有し得る。好ましくは、マトリックスは、粒状吸着材によって吸着される分析対象物または他のターゲット化合物に対して、実質的に不可逆的に吸着しない。概して、粒状吸着材は、上述のそれらの中から選択することができる。有利には、流体透過性塊は、粒状吸着材の少なくとも40重量%を含んでよい。好ましくは、流体透過性塊は、約50〜約75重量%の粒状吸着材を含む。粒状吸着材のB.E.T表面積は、少なくとも1m/g、好ましくは少なくとも約35m/gであってよい。更に、粒状吸着材の濃度は、その表面積が流体透過性塊の少なくとも約0.1m/ccであるようになっていてよい。更に、吸着材は、約0.01〜約0.05cc/gの孔容積を有してよい。典型的には、粒状吸着材の孔容積の少なくとも85%が、約2.5Åと約10000Åとの間の孔寸法を有する孔から構成されていてよい。好ましくは、ペプチドおよびプロテインの吸着/脱離のために、約200〜300Åの孔寸法を有する無極性の吸着剤を選択する必要がある。粒状吸着材は、求められる分析対象物の性質によって決定する。多くの用途において、C18から誘導体化されるシリカが好ましい。当業者は、適当な粒状吸着材を容易に決定することができる。
【0083】
本態様のポリシラザンポリマーとポリシロキサンポリマーとの組み合わせは、流体透過性塊がピペットのチップ(または先端部)にある場合、ピペットチップの調製において、特に良好な性質を有する。ピペットチップは、例えば、ポリオレフィン、アクリレート、メタクリレート、ステンレススチールまたはテフロン(登録商標)等の、いずれの適当な材料から構成されていてもよい。好ましい材料は、ポリプロピレンである。チップは、テーパー状であってもなくてもよい。しかしながら、ピペットチップをテーパー状にすることにより、分析対象物のより少ないロスをもたらす、より良好な液滴生成を与えることができる。更に、ピペット開口部の粒子寸法は液滴生成に影響を及ぼす。例えば、約350ミクロン〜約750ミクロンのチップオリフィスは、流体の最後の液滴を含む優れた液滴生成をもたらし、これにより、分析対象物をロスさせるいずれの機会をも低減させる。
【0084】
ポリシラザンおよびポリシロキサンポリマーの両方の使用は、いずれか1つのみの使用とは対照的に、優れた吸着特性を与える。ポリシラザンおよびポリシロキサンの混合物の好適な吸着特性は、流体透過性塊(吸着層)が、ピペットチップの壁に付着することを可能にする。更に以下に記載のように、バインダーポリマーおよび粒状吸着剤を含むディスパージョンを溶媒媒体に導入することによって、吸着性塊をチップに形成することができる。シロキサンのみでも接着剤として効果的に作用するが、硬化したポリシロキサンは流体サンプルに対する透過性が不十分であり、従って、層に含まれる吸着剤粒子への分析対象物の接近を抑制する。有孔性を与える目的でディスパージョン中のシロキサン濃度を下げると、接着剤は層の中間/内部セクションを破壊する傾向を有し、この場合、流体サンプルは、吸着剤粒子へのアクセスを得るよりもむしろ層を通ってチャンネルを形成し得る。一方で、シラザンは、単独で先端部でのフローを効果的に維持しながら、吸着層の中間/内部セクションの完全な状態を保つために効果的に機能するが、ピペットチップ壁への層の付着が効果的でない。加えて、シラザンの使用は、シロキサン接着剤に安定性を付加し(即ち、膨張を排除し)、分析対象物を含む流体の、層を介するフローを改善する。改善されたフローは、吸着層の間隙空間を広げる、接着性結合のわずかな収縮から生じると考えられている。従って、シロキサンおよびシラザンポリマーの組み合わせは、(1)層の中間/内部セクションでの層の破損を排除し、これによりチップを安定させ、(2)効果的なチップフローを可能にし、(3)チップの不活性さによって分析対象物の回収を改善し、(4)吸着剤によって生じる接着性の妨害が殆ど無いか、または無いため、結合能力を拡大し、および(5)接着性結合の結合強度に起因したピペットチップ壁への層の付着を改善する働きをする接着剤を提供することによって、これらの障害を克服するのに機能する。
【0085】
シラザンの化学構造は、本明細書において上述した通りである。好ましいシラザンは、約200〜約2000000、より好ましくは約200〜約600の分子量を有するオリゴマーまたはポリマーである。
【0086】
ポリシラザン繰り返しユニットの一般的な化学構造は、以下の式によって表すことができる:
【0087】
【化6】

式中、
は、水素、置換された又は置換されていないヒドロカルビル、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、または、−O−Si≡部であり;そして、
は、水素、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状の−(CH−O−CH、および必要に応じてC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで置換されたアリールである。
【0088】
好ましくは、RおよびRのうち1つは、ポリシロキサン繰り返しユニットの約1%〜約10%、より好ましくは、約3〜約8%が水素である。
【0089】
シロキサンは、例えば、−OH、−(CHCN、−C−OHまたは−C−NHを含み得る。
概して、ピペットチップの用途に用いるポリシロキサンチップは、好ましくは約400000〜約800000の分子量を有する長鎖ポリマーである。主に有用なポリシロキサンは、およそ600000の分子量を有する。鎖は、粒状吸着材の周りに巻き付くための十分な長さ(即ち、C18シリカ)を有する必要があり、また、十分な表面接触を有して、ポリオレフィン、アクリレート、メタクリレート、ステンレススチール、またはテフロン(登録商標)ピペットチップ壁と共有結合し、そして、吸着層全体を安定させる。好ましいシロキサンは、1−10%のSi−H基を有するポリジメチルシロキサン(およそ600000Mw)である。
【0090】
米国特許第5599445号(その全体は、本明細書に組み込まれる)には、顆粒状、粒状、または繊維状の吸着材と基体との、改善された結合手段が記載されている。概して、吸着性炭素またはポリマー体とシロキサンポリマーとの間の直接のC−Si結合が、吸着剤を基体(例えば、ガラス等)に接着させる有利な手段を提供することが開示されている。好ましくは、シロキサンは、以下の式を有する:
【0091】
【化7】

式中、
Rは、水素、置換された又は置換されていないヒドロカルビル、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、またはO−Si≡部である;
、R、R、R、R、R、RおよびRは、水素、置換された又は置換されていないヒドロカルビル、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、およびO−Si≡部から成る群から独立して選択する;そして、
m+nは、ポリマーの平均分子量が、約80000〜約2百万の間、好ましくは約250000〜約500000の間であるようにする。
【0092】
からRのうち少なくとも1つが水素であることが概して好ましく、ポリシロキサンは、少なくとも2のヒドロシリル官能基を有する。そのような構造体を有して、ポリマーは、炭素吸着材の表面の炭素(熱的に安定な=C−Si=結合を与える)、および、ガラス表面のシラノール基(ポリシロキサンがガラスに束縛されているSi−O−Si結合を与える)と反応することができる。2のヒドロシリル官能基は、上記の反応に必要な最小限であるが、背骨部の(または中軸の)シリコン原子においてRからRの置換基の約1%〜約10%が水素であることが概して好ましい。
【0093】
多くの適切なシロキサンポリマーは極性溶媒に非混和性であるが、シラザンポリマーは、通常、極性および無極性溶媒の両方に混和性である。無極性のシロキサンを無極性のシラザンと共に用いることは、粒状吸着材、即ちC18シリカのポアに分析対象物を有利に押し進めることができ、ここで、吸着/脱離作業が実施される。典型的には、溶媒は、接着剤の分散を助け、接着剤が吸着粒子のポアを閉塞しないようにする。特定の理論に拘束されることなく、溶媒の迅速な蒸発は、シロキサンをポアから引き出す駆動力であると考えられている。
【0094】
溶媒の選択は、大部分は、密度およびシロキサンとの混和性に基づいている。溶媒は、所望の密度(約1.4〜約2.2g/mリットル)を有する。この密度を有するいずれの無極性溶媒(即ち、クロロホルム、四塩化炭素、ペンタクロロエタン)であっても十分である。好ましくは、溶媒の密度は、接着剤および開始剤の添加後、生じる溶液またはディスパージョンの密度が40〜60μmのシリカ粒子の密度に匹敵するように、約1.6〜約2.0g/mリットルである。好ましい溶媒は、ペンタクロロエタンである。ペンタクロロエタンは、有効な密度(1.685g/mリットル)、低い蒸気圧(懸濁液を扱うとき、急に蒸発しない)、および透明さ(懸濁液の挙動をモニターし易い)に関する利点を有する。
【0095】
有効温度まで加熱すると、シラザンおよびシロキサンは、それ自体で、また、互いに架橋する。一般に、シロキサンポリマーのSi−H基は、シラザンオリゴマーのビニル基、Si−H基およびN−H基と反応する。更に、シラザンおよびシロキサンは、それ自体と反応する能力を有する。結果として、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、アクリレート、メタクリレート、ステンレススチールまたはテフロン(登録商標)ピペットチップ壁と結合し、また、粒状吸着材を物理的に捕捉するクモの巣状タイプの構成物を作り出す。架橋は、実質的に反応しない基が分析対象物(例えばプロテイン等)と相互作用するのに役立つように、シラザンとシロキサンとの実質的に100%の結合を完成させる効果を有する。
【0096】
シラザンおよびシロキサンが架橋してシラザン/シロキサンマトリックスを効果的に形成する温度範囲は、約25℃〜250℃である。ピペットチップにおけるプラグとして吸着層を調製するとき、温度範囲は、より典型的には約60℃〜約250℃である。
【0097】
接着剤の架橋を達成するために、また、溶媒を除去するために、ピペットチップを、好ましくはオーブン内に設置し、最も好ましくは約12℃/min〜約20℃/minの速度で約130℃〜約145℃まで加熱する。ランプ速度(または傾斜速度)は、溶媒の蒸発速度を決定づける。概して、本発明の態様に関しては、蒸発速度が高くなるに連れ、形成される間隙空間が大きくなる。好ましいランプ速度は、約16℃/minである。約12℃/minより低い速度では、加熱プロセスの間、接着性の構造体で形成される間隙孔は小さく、従って流量が制限される。対照的に、約20℃/minより高いランプ速度は、粒子の移動をもたらすことができ、これにより、マクロチャンネル(大きい間隙孔)を作り出す。溶媒および他のバリアブルに依って、吸着層の分裂が、約24℃/minより高いランプ速度で蒸発することによって起こり得る。
【0098】
図3は、使用前の本発明のマイクロピペットチップの形態を示し、図4は使用後の形態を示す。写真から明らかである球状の粒子は、吸着層部を形成する、シリカベースの吸着粒子を表す。吸着層は、使用前と使用後では実質的に同じ状態であることに注目すべきである。従って、同様の市販のピペットチップとは異なり、プレウェットまたは吸着プロセスの間に、砕けたり割れたりしないということが結論づけられる。本発明のピペットチップは、サンプルが吸着層およびチップを通って速く流れるのを可能にする、多く(約100)の間隙空間チャンネルを有する。生じた分散流は、優れた吸着粒子/分析対象物接触も可能にし、従って容量(またはキャパシティ)を大きくする。いくつかの場合において、容量は、市販されているピペットチップの容量の3倍である。更に、本出願のピペットチップにおけるシリカの量は、おおよそ約300〜約600ssgであり、当該技術分野で一般に用いられているチップのシリカの量よりも多い。本発明を表す写真は、(a)30〜75μmの吸着粒子が、優れた流れをもたらす均一かつ有効な間隙空間を提供すること;(b)本発明の接着剤は、重大な破損の無い吸着層を提供すること、そして(c)シリカの量を増やすことができるため、容量が増加することを示す。吸着性プラグは、あるとしてもごくわずかの「マクロチャンネル」を含んで成り、その存在は、分析対象物と吸着粒子との間の十分な接触を妨害して、層を通る流体サンプルの迅速な流れをもたらし得る。層は、そのようなマクロチャンネルを実質的に含まないことが好ましい。吸着粒子の望ましくないバイパスは、層を形成する間の部分的な破損からも生じ得るということ、また、上述の方法によってチップに吸着性塊を形成する際に、実質的に避けられるべき結果であることに注目されたい。このように、チップに形成されるプラグは、高い吸着能を有し、例えば、サンプルの調製または分析を損ない得る汚染物には曝されない。
【0099】
チップにおいて吸着性のプラグを調製するのに用いる懸濁液は、約1.5%〜5%、好ましくは約1.8%〜約2.5%のシロキサン、約2%〜約7.5%の間、好ましくは約2%〜約3%の間のシラザン、約0.01%〜約1%の間、好ましくは約0.02%〜約0.75%の間の開始剤、および約5%〜約30%の間、好ましくは約6%〜約20%の間の吸着材を好ましくは含んで成る。種々な態様において、ポリシロキサン含有量は60〜100mg/mリットルの範囲、ポリシラザン含有量は60〜400mg/mリットルの範囲であり、そして、溶媒は懸濁液の全重量の約75%〜85%を示す。典型的な、特に有利な懸濁液は、375mg/mリットルのC18−シリカ、70mg/mリットルのシロキサン、好ましくは、ポリジメチルシロキサン、84mg/mリットルのポリシラザン、および4.0mg/mリットルの開始剤、好ましくはジクミルペルオキシドをおおよそ含んで成る。ポリシラザンポリマーに対するポリシロキサンポリマーの比は、約0.5対1.0〜約10.0対約1.0であり、より好ましくは、約1.2対約1〜約5対約1である。例えば、初めの懸濁組成物は、約70mg/mリットルのポリシロキサンおよび約84mg/mリットルのポリシラザンを含んで成ってよい。
【0100】
懸濁液を、種々な雰囲気において硬化させることができるが、空気(即ち、酸素)下で硬化させるのが好ましい。シラザンの重量減少が最小であるため空気が好ましく、上述のように、2種のポリマー接着剤はシラザンを殆ど再構成せずに、2種のポリマーと効果的に反応する。溶媒の適当な選択により、初めの懸濁液は、少なくとも4時間、そしてしばしば少なくとも48時間、安定な状態を保つことができる。
【0101】
ポリシラザン/ポリシロキサンマトリックスの透過率は、個々の成分のいずれかから形成されているマトリックスの透過率に対して優れていることが見出された。改善された透過率は、加熱の間に全ての吸着性塊が収縮した結果であると理論づけられる。シラザンは、シロキサンおよび粒状吸着材の周りにポリマー/固い接着性フィルムを形成する。硬化プロセスの間に、シラザンは、間隙空間からシロキサンを物理的に引き出し、粒子の周りの接着性部分に接触すると考えられている。両方の接着剤は、分析対象物を含む水/液体サンプルを透過することができない。
【0102】
マトリックスの他の特性として、シラザン無しではポリシロキサンの膨張が起こるが、シラザンの存在下では、ほんのわずかな膨張が起こるという事実が挙げられる。このようにして組み合わせることにより、ポリシロキサンのみの存在下で起こる全体の膨張を減らす。
【0103】
本態様のピペットチップへの適用において、ポリシラザン/ポリシロキサンマトリックスは十分量で存在して、サンプルの流れを制限することなく安定な吸着層を生成させる必要がある。間隙チャンネルは、粒状吸着材の孔へのサンプル分析対象物のアクセスを可能にし、また、層を介してのサンプルの効果的な移動を可能にする。本発明に記載のマトリックスは吸着層に効果的に付着するが、粒状吸着材の孔の吸着表面への分析対象物のアクセスを妨害せず、吸着剤が多孔質であって、吸着剤の孔へのアクセスも保護するという利点を有する。吸着剤の孔の閉塞を最小にすることにより、結果として、ターゲット分析対象物が吸着粒子の内部の吸着面に接触する機会を増やし、また、ターゲット分析対象物の回収を増やす。内面へのアクセスを保護することにより、無孔の吸着剤を用いる場合にも回収を高める。
【0104】
ピペットプラグのための吸着剤の選択を左右する考察は、上述の態様のいずれかで議論した考察と同様である。従って、粒状吸着材の例として、求核性、求電子性または中性材料が挙げられる。典型的な粒状吸着材は、炭素、有機ポリマー、シリカ、ゼオライト、アルミナ、金属またはセラミックポリマーから選択することができる。更に、吸着材として、スチレン、DVB(ジビニルベンゼン)、イオン交換樹脂、酵素、および相互作用的/生物学的反応性物質(即ち、結合抗体、抗原等)が挙げられる。好ましい態様において、粒状吸着材は、C18−シリカである。
【0105】
本態様における、粒状吸着材の粒子寸法分布は、その少なくとも50重量%が、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの粒子寸法を有するようになっている。好ましくは、粒状吸着材の約95重量%が約5〜約75ミクロンの粒子寸法を有する。粒状吸着材の約95重量%が約40〜約60ミクロンの粒子寸法を有することが更に好ましい。
【0106】
シラザンおよびシロキサンを架橋するための開始剤の選択は、架橋基の性質および所望の架橋方法によって左右される。過酸化物は、例えば、ビニル官能性ポリマーに対して有効な量で用いてよい。ビニル官能性ポリマーの反応性は、2つの主要な型において活用される。ビニル末端ポリマーは、更なる硬化系において用いられる。結合を形成する化学反応は、以下の化学式に従って進行する、プラチナ触媒によるヒドロシリル化である。
【化8】

【0107】
ビニル基とメチル基との間のフリーラジカルカップリング反応を引き起こす過酸化物を含む、過酸化物活性の硬化系において、ビニルメチルシロキサンコポリマーおよびビニルのT構造の流体を最もよく用いる。メチル基の間、また、架橋部位とメチル基との間では同時かつ連続反応が起こる。初めの架橋反応を以下の式に示す。
【化9】

【0108】
本発明の好ましい態様において、過酸化物で活性化した硬化を経て架橋を開始する。当業者は、種々の過酸化物が本明細書に記載の架橋反応に適切であり得ることを理解できるであろう。より好ましい態様において、開始剤は、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、1,1−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノールペルオキシ)ヘキサンから選択される過酸化物である。図6は、流体ポリシラザンオリゴマーの架橋ポリマーへの転化に関する、種々の過酸化物を用いたときの硬化時間(分)と温度(℃)との関係を示す。最も好ましい態様において、開始剤はジクミルペルオキシドである。
【0109】
ビニル基に加え、架橋プロセスにおいて他の官能基を含んでいてよい。例えば、水素化物(Si−H)官能基は、主に3種類の反応(一般的な反応は後に示す):ヒドロシリル化、脱水素によるカップリングおよび水素化物移動;を経験する。これらの一般的な反応は互い及びそれ自体のシロキサンおよびシラザンを架橋する役割を果たすことができる。
【0110】
以下の一般的な反応に従って、ヒドロシリル化を行うことができる。
【化10】

【0111】
例えば、水素化物官能性シロキサンによる、ビニル官能性シロキサンのヒドロシリル化は、2つの要素、RTVsおよびLTVsに用いられる追加の硬化の化学反応の基礎である。反応に好ましい触媒はプラチナ錯体である。
【0112】
脱水素によるカップリングは、以下の一般的な反応に従って起こり得る。
【化11】

【0113】
脱水素化によるカップリングにおいて、ヒドロキシ官能性物質は、例えば、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ジブチルジラウリルスズ、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄または種々の他の金属塩触媒の存在下、水素化物官能性シロキサンと反応する。
【0114】
還元(水素化物移動)は、以下の一般的な反応に従って行うことができる。
【化12】

【0115】
還元反応は、ジブチルスズオキシドを用いて、Pdによって触媒作用を及ぼすことができる。反応条件を選択することにより、化学選択的還元(例えば、ケトンおよびアルデヒドの存在下でのアリルの還元)を引き起こす。
【0116】
シラノール(Si−OH)官能性ポリマーは、シロキサンまたはシラザンが、弱酸および塩基の両条件下で濃縮し易いようにすることができる。低分子量のシラノール流体は、動力学的に制御された、クロロシランの加水分解によって一般に製造する。より高分子量の流体は、低分子量のシラノール流体と環状物とを平衡に保つこと、加圧下での水を用いての環状物の平衡重合、または例えばメトキシ基等の加水分解可能なエンドキャップを含む重合法によって調製することができる。当業者には理解されているように、そのような湿気硬化等の方法を、このタイプの官能基に用いることができる。一般的な湿気硬化システムは、アセトキシ、エノキシ、オキシム、アルコキシおよびアミン官能基を含み、また、以下の一般的な反応に示すように進行することができる。
【化13】

【化14】

【0117】
更に、アミノ官能性シリコーン(即ち、Si−CHCHCHNH)は、これらの化学反応性、水素結合形成能、および、特にジアミンの場合にはキレート能に起因する広範囲の用途を有する。更なる反応により、アルコキシ基の形でアミノアルキル基に組み込むことができる。
【0118】
エポキシ官能性シリコーン
【化15】

は、アミンを用いた架橋反応を経験する。環の、ひずんだエポキシシクロヘキシル基は、エポキシプロポキシ基よりも高い反応性を有し、また、例えば、セルロース誘導体等のプロトン表面を有する求核剤との熱的または化学的に引き起こされる反応を経験する。エポキシシクロヘキシル官能性シロキサンは、以下の一般的な反応:
【化16】

に従って、弱いドナー触媒の存在下、UV露光によって重合することができる。
【0119】
カルビノール(炭素に結合されているヒドロキシル基)末端の官能性シロキサンは、加水分解できない転移(transition)基によってシロキサン背骨部に結合している1級ヒドロキシル基を含む。しばしば、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの転移ブロックを用いる。カルビノール官能性ポリジメチルシロキサンを反応させて、ポリウレタン、エポキシ、ポリエステルおよびフェノールにすることができる。
【0120】
メタクリレートおよびアクリレート官能性シロキサン(以下に示す)は、
【化17】

メタクリレートおよびアクリレートと概して同じ反応を経験し、最も顕著なのは、ラジカル誘導による重合である。これらの官能基も、また、UV硬化系でしばしば用いられる。
【0121】
シロキサンまたはシラザンにおいて置換基として存在し得る他の官能基として、イソシアネート、カルボキシレート、メルカプト、クロロアルキル、およびアルデヒドが挙げられる。
【0122】
J.Fluid.Mech370,79(1998)に従って、他の式が用いられてきたが、吸着層のアスペクト比は、以下の式によって決定されるように、層の長さを層の中間点における平均層半径で割ることによって測定する。
【0123】
【数1】

【0124】
「L」は、層の長さであり、「r1」は、第1半径測定値であり、「r2」は、第2半径測定値である。r1は、層の頂部で測定してよいが、r2は、層の底部、ピペット口(orifice)に最も近いところ(図1参照)で測定する。半径は、概して、ミクロンで測定する。上述の式に従って測定すると、ピペットチップのアスペクト比は、約2〜約40のいずれでもあり得る。より低いアスペクト比は保持時間を減らすことができるが、所望の分析対象物を拘束するために殆ど吸着材を利用することができないため、吸着が減少することがある。一方で、より高いアスペクト比は、接触時間、および、吸着剤と分析対象物との間の接触に利用できる表面を増加させるため有益であり得る。このように、いくらかの用途では、アスペクト比は、好ましくは少なくとも11、より好ましくは少なくとも15、さらにより好ましくは少なくとも20である。いくらかのピペットチップの用途では、アスペクト比は、好ましくは約10〜約25の間である。いくらかの他の用途では、アスペクト比は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも5である。更なる他の用途では、アスペクト比は、約2〜約12の間、より好ましくは約3〜約8の間である。典型的な態様において、本明細書に記載のピペットチップは、約350〜約750μmのチップ口を有し、また、チップ口における粒子の総面積割合(チップ口の平面上に粒子の第1層を投影することによって得られる断面積)は、約90〜約93%である(図2参照)。更に、チップ口における空隙スペースの総面積割合は、一般に約7〜約10%である。
【0125】
ピペットチップは、本発明による流体透過性吸着塊の好ましい用途を示すが、他の有利な用途も存在する。他の有用な構造体として、ウェル(またはくぼみ:well)、複数のウェルアレイ、プラスチックおよびガラスのキャビティ、ならびにサンプル調製デバイスが挙げられる。固相吸着デバイスは、粒状吸着材を中に留まらせて有するマトリックスを含んで成る吸着性コーティングを有するファイバ(または繊維)を含んで成ってよい。例えば、そのようなコーティングを、米国特許第5691206号(Pawliszyn、その全ての開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている、固相微量抽出デバイスのファイバ上に与えることができる。マトリックスは、上述の、アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成る。必要に応じて、Pawliszyn特許に記載のシリンジバレルの内部、ならびに/またはファイバを取り囲むハウジングの内部および外部は、同様または類似のセラミックから構成される不動態コーティングを有していてよい。
【0126】
更なる別法により、固相吸着デバイスは、容器または導管内に含まれる流体透過性吸着層を含んで成ってよい。より詳細には、固相吸着デバイスは、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るバインダーによって内部に捕捉されている、粒状吸着材を有する導管または容器を含んで成ってよい。固相吸着デバイスは、バインダーおよび粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊を含んでよい。典型的には、流体透過性塊は、約5〜約10μリットル/秒の透過率を有する。更に、本発明は、粒状吸着材を少なくとも0.2g/ccの濃度で含む吸着領域を有する、本態様の固相吸着材を対象とする。好ましい態様において、粒状吸着剤は、約0.2〜約0.5g/ccの間の濃度で存在する。一態様において、吸着領域は、領域内の吸着材の表面積が、少なくとも約10m/ccであるようになっている。
【0127】
本発明は、更に、ポリマーマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊の調製方法であって:
溶媒、重合可能なシラザンおよび重合開始剤を含んで成る液体媒体に粒状吸着材を含んで成るディスパージョンを調製することであって、該重合可能なシラザンは、ポリシラザンモノマー、ポリシラザンオリゴマーまたはこれらの混合物を含んで成っていること;ならびに
重合可能なシラザンを重合すること
を含んで成り、流体透過性塊を形成する方法を対象とする。
【0128】
本発明は、また、ターゲット化合物を含む流体媒体から該化合物を分離する方法も対象とし、該方法は:
吸着層を含む容器または導管内にサンプルを引き込むことであって、吸着層は、接着性マトリックスに分散している、または接着性バインダーによって捕捉されている粒状吸着材を含んで成っていること;ならびに
ターゲット化合物を、吸着材の粒子に吸着させること
を含んで成る。接着性マトリックスまたはバインダーは、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成る。
【0129】
以下の実施例によって本発明を説明する。
【実施例1】
【0130】
1/8”(インチ)厚のアルミニウムクーポンを、石鹸および水を用いて十分に洗浄し、スチールウールパッドを含め、いずれの表面デブリも除去した。次いで、アルミニウムサンプルを蒸留水ですすぎ、200℃のオーブンに約10分間置いた。熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を、タッチアップスプレーガン(Badger Model 400)に詰め込んだ。アルミニウムクーポンをオーブンから取り出し、直ちにスプレーして、その表面に均一な加硫コーティングを作製した。次いで、サンプルをオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で10分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。光学顕微鏡を用いて拡大して観察すると、フィルムは層間剥離の跡が無く、均一で、クラックは見られなかった。
【実施例2】
【0131】
3/4”の銅管を、石鹸および水を用いて十分に洗浄し、スチールウールパッドを含め、いずれの表面デブリも除去した。次いで、銅サンプルを蒸留水ですすぎ、200℃のオーブンに約10分間置いた。熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を、タッチアップスプレーガン(Badger Model 400)に詰め込んだ。ヘリウムパージ容器を備えたオーブンから銅管を取り出し、直ちにスプレーして、その表面に均一な加硫コーティングを作製した。次いで、サンプルを立位でオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で10分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。光学顕微鏡を用いて拡大して観察すると、フィルムは層間剥離の跡が無く、均一で、クラックは見られなかった。
【実施例3】
【0132】
内径4mmのHPLCカラムを、塩化メチレンを用いて十分に洗浄し、空気で乾燥させた。コーティング溶液として、熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を調製した。糸くずの出ないアプリケータを該溶液に浸漬して動かし、余剰の物質を除去した。アプリケータを用いてカラムの内面に塗布し、結果として、薄くて均一なコーティングをもたらした。次いで、カラムを立位でオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で10分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。コーティングを、分解しない低いpHの移動相条件に付した。
【実施例4】
【0133】
酸洗浄したホウケイ酸塩ウール(10g)を、熱硬化性ポリシラザン(1g)、ジクミルペルオキシド(0.02g)およびペンタン(500mリットル)を含む溶液に飽和させた。窒素パージで乾燥する前に、余剰の溶液をウールから除去した。ウールを移動させて、200℃で10分間、次いで450℃で10分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。この処理したウールをガスクロマトグラフィ差し込みスリーブに充填するとき、農薬の分解が大幅に減少することが見出された。
【実施例5】
【0134】
スチール粉体分散デバイスの表面を、塩化メチレンで十分に洗浄し、空気で乾燥させた。コーティング溶液として、熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を調製した。糸くずの出ないアプリケータを該溶液に浸漬して動かし、余剰の物質を除去した。アプリケータを用いてカラムの内面に塗布し、結果として、薄くて均一なコーティングをもたらした。デバイスをオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で30分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。コーティングを、分解することなく、長時間、硝酸銀を含む粉体に付した。
【実施例6】
【0135】
一般にHPLCカラムに用いられるステンレススチールフリット(孔寸法2μm)を、塩化メチレンを用いて十分に洗浄し、空気で乾燥させた。コーティング溶液として、熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を調製した。円筒形のガラス瓶を用いて、複数のフリットをコーティング溶液に沈めた。余剰の溶液を静かに移し、瓶を窒素パージで洗い流して、フリットの孔から余剰の溶液を取り除いた。フリットをオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で30分間のオーブンランプによって、プレセラミック状態まで更に硬化させた。ペプチド物質の分析のためにフリットを内径4mmのHPLCカラムの調製に用い、結果として通常の移動相流量および優れた表面不活性をもたらした。
【実施例7】
【0136】
熱硬化性ポリシラザン(1g)、ジクミルペルオキシド(0.02g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を、シリンジのプランジャーを利用して引くことによって、10μリットルのハミルトンシリンジニードルの内側をコーティングした。プランジャーを押圧して溶液を排出し、プランジャーを取り除いて、軽い窒素をバレルの全長にわたってパージして、余剰の溶液を除去した。小さなバレルヒーターにおいて400℃の温度で25分間シリンジニードルを懸濁する前に、ニードルの外側を浸漬コーティングした。シリンジは、上の処理の後に、完全に使用できる状態であることが分かった。
【実施例8】
【0137】
2〜3μm、6〜2000Åの孔寸法のカーボキセン(Carboxen)1006(スペルコ社製)(4g)、熱硬化性ポリシラザン(1g)、およびジクミルペルオキシド(0.08g)の無溶媒懸濁液を調製して勢いよく振った。この調製物の数滴をガラス顕微鏡スライドに置いた。ニチノールファイバを液滴に水平に通し、次いで、スライドのきれいなセクションで転がして、余剰の物質を除去した。コーティングされたファイバを工業用ヒートガンによって約15秒間加熱して、重合バインダーの作製においてポリシラザン材料を硬化させた。次いで、ファイバを追加で3回、再コーティングして、吸着体が包埋されている40μmの層を作製した。不活性ガスパージが備えられている小さなバレルヒーターでファイバを懸濁させ、400℃で10分間、プレセラミック状態まで硬化させた。ファイバは、吸着剤の孔の閉塞の跡無しに、種々の有機化合物を抽出して取り除くことが分かった。ポリシラザンバインダーはクラッキングを阻止し、ニチノールワイヤからの層間剥離の跡を示さなかった。
【実施例9】
【0138】
5μm、120Åの孔寸法のシリカゲル(Diasogel)(5g)を、熱硬化性ポリシラザン(1g)、ジクミルペルオキシド(0.02g)およびペンタン(50mリットル)を含む溶液20mリットルに飽和させた。余剰の溶媒をドラフトで蒸発させた。シリカをオーブンに置き、200℃で10分間、次いで450℃で30分間、オーブンランプによって、プレセラミック状態に変えた。シリカゲルをオクタデシルシランと化学的に結合させて、HPLCカラムの調製に用いた。標準の逆相テストミックスは、対照標準のオクタデシルシランHPLCカラムのそれとほぼ同等のクロマトグラフィーを示した。ポリシラザンコーティングされた材料に含まれている炭素も同等であることが分かった。
【実施例10】
【0139】
1〜10μm、500〜600Åの孔寸法のカーボパック(Carbopack)Z(スペルコ社製)(670mg)、熱硬化性ポリシラザン(3g)、ジクミルペルオキシド(0.06g)およびペンタン(15mリットル)を含む懸濁液を調製し、勢いよく振った。20〜30μmの厚さにファイバをコーティングするのに用いられるBadger400タッチアップスプレーヤに懸濁液を詰め込んだ。不活性ガスパージが備えられた小さなバレルヒーターにおいてファイバを懸濁し、400℃で10分間、プレセラミック状態になるまで硬化させた。ファイバは、吸着剤の孔の閉塞の跡が無く、種々のアロクロール同族体を抽出して取り除くことが分かった。ポリシラザンバインダーはクラッキングを阻止し、ステンレススチールワイヤによる閉塞の跡を示さなかった。
【実施例11】
【0140】
2〜3μm、6〜2000Åの孔寸法のカーボキセン1006(スペルコ社製)(250mg)、熱硬化性ポリシラザン(500mg)、ジクミルペルオキシド(25mg)および塩化メチレン(1mリットル)を含む溶液を調製し、勢いよく振った。長さ15cm、内径0.25mmの石英ガラス管の1端に栓をし、200℃に加熱された環状炉内へとゆっくりと上昇させた。次いで、ガスクロマトグラフインジェクションポートに管を接続させて、ヘリウムパージしながら360℃で10分間加熱した。石英ガラス管の内部には、捕捉されている拘束された粒子の柔軟な層をもたらした。
【実施例12】
【0141】
50μm、200Åの孔寸法のオクタデシルシリル化シリカ(スペルコ社製)、熱硬化性ポリシラザン、ポリジメチルシロキサン、およびジクミルペルオキシドを含むクロロホルム懸濁液を調製し、勢いよく振った。懸濁液をピペットチップ内に引き、0℃の凍結乾燥機に約10分間置き、次いで145℃のオーブンに移して加硫処理した。ポリシラザン添加剤は、凍結乾燥条件下において重力によるシリカ粒子の沈殿を防止する一方で、結晶化することが分かった。この方法を用いて調製した層は、種々の生物分子に、一貫した溶媒流量、機械的安定性および高い抽出効率を提供した。
【実施例13】
【0142】
特殊鋼を分配するデバイス(tool steel-dispensing device)の表面をサンドブラストで磨き、酸化物および表面の不純物を除去した。窒素パージによってデバイスをきれいに吹いて、コーティングの前にデブリを取り除いた。熱硬化性ポリシラザン(5g)、3μmのジルコニウム粉体(1g)を塩化メチレン(5mリットル)中に含む懸濁液を、コーティング用に調製した。懸濁液を勢いよく振り、次いで、糸くずの無いアプリケータを用いて分配デバイスにブラシコーティングした。デバイスをオーブンに置き、30分間で450℃まで迅速に加熱し、次いで、ゆっくり冷却した。生じたコーティングは、酸性シリカ粉体に更なる耐酸化性および耐侵食性を与えた。
【実施例14】
【0143】
長さ15メートル、内径0.53mmの316ステンレススチール管を、ペンタン(50mリットル)に溶解した熱硬化性ポリシラザン(10g)、ジクミルペルオキシド(0.2g)から構成されるコーティング溶液を用いて洗い流した。洗い流しは、およそ4p.s.i.の窒素圧であった。管を30分間パージさせ、次いで、200℃で10分間、そして450℃で30分間、オーブンに置いた。コーティングされたカラムは、ガスクロマトグラフインジェクションポートシステムと、不活性メチルシリコーンキャピラリーカラム(ヘリウムイオン化モードのPDD(パルス放電光イオン化)検出器に接続されている)との間のトランスファ・ラインとしての不活性試験を行った。微量の硫黄ガスおよび水蒸気がキャピラリーカラムに吸着すること無く移動した。結果を図8に示す。
【実施例15】
【0144】
ペンタン(50mリットル)に溶解している熱硬化性ポリシラザン(1g)、ジクミルペルオキシド(0.02g)の溶液を、臭化カリウムサンプルプレートにコーティングした。空気で満ちたオーブンにおいて200℃および450℃で熱処理した後、フィルムの赤外線スペクトルを記録した。シラザン、シリコン水素化物およびビニル官能基に関連する吸収バンドは、高温での硬化の後に消滅した。結果を図10に示す。
【実施例16】
【0145】
熱硬化性ポリシラザン(2.5g)、ジクミルペルオキシド(0.05g)およびペンタン(50mリットル)から成る溶液を調製した。糸くずのないアプリケータを用いて、1/16”のステンレススチール製パネルに単層コーティングを適用した。空気中、パネルを200℃で10分間、次いで450℃で30分間加熱した。EDSを用いて、生じたコーティング表面のスパッタプロフィールは、主にシリコンおよび酸素セラミックマトリックスに残存する炭素および窒素種を含む約3000Åのセラミック層を示した。結果を図9に示す。
【実施例17】
【0146】
ポリジメチルシロキサンシロキサン(70mg/mリットル)、熱硬化性ポリシラザン(84mg/mリットル)、ジクミルペルオキシド(4.0mg/mリットル)およびペンタクロロエタンを、7mリットル瓶に入れ、ボルテックスミキサーを用いて1.0時間混合した。次いで、この混合物を、50〜60μm、200Åの孔のシリカ(375mg/mリットル)を含む別の7mリットル瓶に加え、ボルテックスミキサーで15分間混合した。生じた懸濁液を、5〜10℃で夜通し冷却した。次いで、懸濁液をボルテックスミキサーで10分間混合した後、30分間で室温に到達させた。
【0147】
引き容積(draw volume)を3μリットルにセットしている10(または20μリットル)のピペッターを用いて、ピペットチップを調製した。3.0μリットルの懸濁液を各チップ内に引いた。これらのチップを棚に置き、オーブンで、16℃/minで145℃まで加熱し、145℃で10分間持続させた。オーブンを60℃未満に冷却して、チップを取り除いた。
【実施例18】
【0148】
カーボキセン1006のサンプルのDFTプロット(図11A)を以下のようにして作成した。初めに、ポロシメトリーを用いて結合していないカーボキセン1006をテストした。結合しているカーボキセン1006は、ジクロロメタンに懸濁している炭素および接着剤の懸濁液を用いて100mリットルビーカーで調製した。接着剤に対する炭素の比は、1:4であった。次いで、炭素粉体が自由に流れるまで対流式オーブンにおいて常温で懸濁液を乾燥させ、次いで、350℃で粉体を結合させた。次いで、生じた炭素/接着剤塊をポロシメトリーによってテストした。
【0149】
実施例17に記載した懸濁プロセス(即ち、70mg/mリットルのシロキサン、84mg/mリットルのシラザン、および375mg/mリットルの300Å、C18結合シリカ)を用いて、シリカサンプルのDFTプロットを作成したが、充填チップの代わりに懸濁液を100ミリリットルのビーカーに入れ、145℃で10分間結合させた。結合シリカ塊を、塊をくずにして捨てる(またはスクラッピング)/移動させることによって、ビーカーから取り除き、ポロシメトリーを用いて分析した。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、ピペットチップに用いる吸着層の形で流体透過性塊を有するピペットの概略縦断面図である。
【図2】図2は、ピペットチップに用いる吸着層の形で流体透過性塊を有するピペットの概略端面図である。
【図3】図3は、吸着層の形で流体透過性塊を有する、使用前のピペットチップの形態を示す写真である。
【図4】図4は、図3に記載の塊の使用後の写真である。
【図5】図5は、物質P、ペプチドに関するフローおよび回収データを示すグラフである。
【図6】図6は、流体ポリシラザンオリゴマーの架橋ポリマーへの転化に関し、選択した過酸化物(開始剤)に対する、硬化時間と温度との関係を示すグラフである。
【図7】図7は、異なる周囲条件において、架橋ポリマーからセラミック材料への転化度を高温で測定するのに用いられる熱重量分析(TGA)を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例14に記載のように、ポリシラザンで処理された316SSトランスファ・ラインを通ってクロマトグラフィーカラムに送られたサンプルのクロマトグラフ分析(図8A)と、処理されていない316SSラインを通ってカラムに送られた同一のサンプルの分析(図8B)との比較を示す。
【図9】図9は、実施例16に記載のように、エネルギー分散分光法(EDS)を用いた、シリコン、炭素、窒素、クロム、鉄および酸素の深さ方向分析である。
【図10A】図10Aは、実施例15に記載のように、シリコン窒化物の不動態コーティングの赤外分光分析を示す。
【図10B】図10Bは、実施例15に記載のように、シリコン窒化物の不動態コーティングの赤外分光分析を示す。
【図11A】図11Aは、実施例18に記載のように、コーティングされていない、およびコーティングされたカーボキセン1006の、孔幅に対する微分細孔容積を示すグラフである。
【図11B】図11Bは、実施例18に記載のように、コーティングされていない、およびコーティングされた300Åのシリカの、孔幅に対する微分細孔容積を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るマトリックス中に留まっている、および/またはアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層面に付着している粒状吸着材を含んで成る吸着構造体であって、該セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る吸着構造体。
【請求項2】
セラミック組成物は、結晶質シリカまたは常套のシリカガラスに比べて、相対的に低いヤング率、相対的に低い曲げ弾性率、および相対的に大きい伸びを有する、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項3】
セラミック組成物は、これに由来するシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る組成物に比べて、より高いヤング率、より高い曲げ弾性率、およびより小さい伸びを有する、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項4】
セラミック組成物は、酸素とIVA族またはIVB族原子との結合によって主に連結されている、酸素とIVA族またはIVB族原子とのネットワークを含んで成る化学構造を有する、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項5】
セラミック組成物の化学構造は、IVA族またはIVB族原子と窒素原子または炭素原子との結合によって、規則的またはランダムに割り込まれている、請求項4に記載の吸着構造体。
【請求項6】
セラミック組成物は、シリコン酸化物またはゲルマニウム酸化物を含んで成る、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項7】
約0.1〜約99.8重量%の間で、粒状吸着材を含んで成る、請求項1〜6のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項8】
粒状吸着材は、求核性である、請求項1〜7のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項9】
粒状吸着材は、求電子性である、請求項1〜7のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項10】
粒状吸着材は、中性である、請求項1〜7のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項11】
粒状吸着材は、炭素、有機ポリマー、シリカ、ゼオライト、アルミナ、金属またはセラミック粉体から成る群から選択される、請求項1〜7のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項12】
粒状吸着材の粒子寸法分布は、粒状吸着材の少なくとも1重量%が、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの粒子寸法を有するようになっている、請求項11に記載の吸着構造体。
【請求項13】
吸着材の少なくとも約50重量%は、約1ナノメートル〜約10ナノメートルの粒子寸法を有する、請求項12に記載の吸着構造体。
【請求項14】
粒状吸着材の粒子寸法分布は、粒状吸着材の少なくとも1重量%が約0.1ミクロン〜約10ミクロンの粒子寸法を有するようになっている、請求項11に記載の吸着構造体。
【請求項15】
粒状吸着材の少なくとも約95重量%は、約40〜約60ミクロンの粒子寸法を有する、請求項12に記載の吸着構造体。
【請求項16】
粒状吸着材は、少なくとも約100m/gのB.E.T.表面積を有する、請求項11に記載の吸着構造体。
【請求項17】
粒状吸着材は、約0.1〜約4000m/gの間のB.E.T.表面積を有する、請求項11に記載の吸着構造体。
【請求項18】
粒状吸着材は、0.01〜約5cc/gの孔容積を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項19】
吸着材の孔容積の少なくとも85%は、約2.5Å〜約10000Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている、請求項1〜18のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項20】
粒状吸着材は、無孔である、請求項1〜17のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項21】
ガラス、金属、プラスチック、木材、繊維、セラミックまたはこれらの組み合わせから成る群から選択される下層面を覆うセラミック組成物のコーティングを含んで成る、請求項1〜20のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項22】
下層面は、金属またはガラスである、請求項21に記載の吸着構造体。
【請求項23】
セラミック組成物のコーティングは、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの間の厚さを有する、請求項1〜21のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項24】
セラミック組成物を含んで成り、およびその中に留まっている粒状吸着材を有する凝集体を含んで成り、吸着材の粒子が、塊に接触し得る流体に含まれる分析対象物に接触し易くなっている、請求項1〜20のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項25】
凝集体は、セラミック組成物でコーティングされているコア塊を含んで成る、請求項24に記載の吸着構造体。
【請求項26】
凝集体は、セラミック組成物で覆われているコア塊を含んで成る、請求項24に記載の吸着構造体。
【請求項27】
本質的にセラミック組成物から成るモノリシックな塊を含んで成る、請求項24に記載の吸着構造体。
【請求項28】
請求項24〜26のいずれかに記載の吸着構造体をそれぞれ含んで成る、複数の個別体。
【請求項29】
請求項28の個別体を含んで成る、吸着層。
【請求項30】
充填物層を含む管状部材を含んで成るクロマトグラフィーカラムであって、充填物は、請求項29に記載の個別体層を含んで成る、クロマトグラフィーカラム。
【請求項31】
セラミック組成物のフィルムまたはマトリックスから露出している吸着材粒子を含んで成る、請求項1〜30のいずれかに記載の構造体。
【請求項32】
セラミック組成物は、粒状吸着材によって吸着される分析対象物または他のターゲット化合物に対して実質的に不可逆的に吸着しない、請求項1〜31のいずれかに記載の構造体。
【請求項33】
下層面は、流体を内部にて貯蔵または輸送するための導管または容器の内壁である、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項34】
セラミック組成物は、C−Hに関する約2976cm−1の特性バンドを有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項35】
セラミック組成物は、以下の一連の特性バンド幅(値はcm−1):
Si−Oに関して約1200〜約900;Siに関して約900〜約600;およびSi−Cに関して約900〜約600
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項36】
セラミック組成物は、250℃において以下の一連の特性バンド幅(値はcm−1):
ビニル基に関して約3047、1592および1406;ならびにSi−H(伸縮)に関して約2135
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項37】
セラミック組成物は、500℃において以下の一連の特性バンド幅(値はcm−1):
N−Hに関して約3400および1170;Si−Hに関して約2130;ならびにビニル基に関して約3050、1594および1404
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項38】
セラミック組成物は、赤外分光法によって測定したとき、250℃でのビニル基の強度が、常温での該強度に比べて減少している、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項39】
セラミック組成物は、赤外分光法によって測定したとき、500℃でのビニルおよびN−H基の吸着バンドが、250℃での該吸着バンドに比べて減少している、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項40】
セラミック組成物の化学構造は、エネルギー分散分光法を用いたスパッタ深さプロファイリングによって測定したとき、1〜約2000Åの間の深さにおいて、少なくとも40%の炭素原子を含んで成る、請求項1〜33のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項41】
セラミック組成物の化学構造は、エネルギー分散分光法を用いたスパッタ深さプロファイリングによって測定したとき、1〜約2000Åの間の深さにおいて、少なくとも3%の窒素原子を含んで成る、請求項1〜40のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項42】
セラミック組成物の化学構造は、エネルギー分散分光法を用いたスパッタ深さプロファイリングによって測定したとき、1〜約2000Åの間の深さにおいて、少なくとも30%の炭素原子および少なくとも2%の窒素原子を含んで成る、請求項1〜35のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項43】
セラミック組成物は、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来している、請求項1に記載の吸着構造体。
【請求項44】
構造体の調製は:
粒状吸着材およびオリゴマーを含んで成る混合物を調製すること;ならびに
混合物を加熱して、セラミック組成物を形成すること
を含んで成る、請求項43に記載の吸着構造体。
【請求項45】
構造体の調製は:
粒状吸着材およびオリゴマーを含んで成る流動性ディスパージョンを、基体の表面に適用すること;ならびに
表面でディスパージョンを加熱して、セラミック組成物を形成すること
を含んで成る、請求項44に記載の吸着構造体。
【請求項46】
オリゴマーを架橋ポリマーフィルムとするのに効果的な温度まで、ディスパージョンを加熱し;および架橋ポリマーフィルムを、更に高温で加熱して、セラミック状態とする、請求項45に記載の吸着構造体。
【請求項47】
オリゴマーを架橋ポリマーフィルムとするのに効果的な温度は、約25℃〜450℃の間である、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項48】
架橋ポリマーフィルムをセラミック状態とするのに効果的な温度は、約400℃より高い、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項49】
架橋ポリマーフィルムをセラミック状態とするのに効果的な温度は、約400℃〜2200℃の間である、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項50】
架橋ポリマーフィルムへの転化、および/またはセラミック状態への転化を空気中で行う、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項51】
架橋ポリマーフィルムへの転化、および/またはセラミック状態への転化を不活性雰囲気下で行う、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項52】
オリゴマーを架橋または重合させて、吸着材を中に留まらせて有するプレセラミックポリマーフィルムを形成し;およびその後、プレセラミックフィルムを加熱してセラミックフィルムを形成する、請求項46に記載の吸着構造体。
【請求項53】
セラミックフィルムは、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る、請求項52に記載の吸着構造体。
【請求項54】
オリゴマーは、式:
【化1】

(式中、
は、水素、ビニル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アセトキシ、ハロ、ヒドロキシアルキル、ジメチルアミノ、オキシム、イソシアネート、CHQ−(OCHCHOH、
【化2】

から成る群から選択され、
は、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状−(CH−O−CH−)、およびC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで必要に応じて置換されたアリールから成る群から選択され;
Qは、C1−8アルキルであり;および
nは、1〜約20である)
を有する繰り返しユニットを含んで成る、請求項43〜53のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項55】
オリゴマーは、式:
【化3】

(式中、Rは、Hまたは−CH=CHであり、nは、1〜20である)
を有する、請求項54に記載の吸着構造体。
【請求項56】
コーティングの調製は、スプレー、ブラシ、スピンまたはディップコーティングによってディスパージョンを適用することを更に含んで成る、請求項45に記載の吸着構造体。
【請求項57】
ディスパージョンは、粒状吸着材を約0.1重量%〜約83重量%の間で含んで成る、請求項45に記載の吸着構造体。
【請求項58】
構造体の調製は:
オリゴマーを含んで成る凝集性前駆体塊を形成すること;および
該前駆体塊を加熱して、セラミックマトリックス組成物を形成すること
を含んで成る、請求項44に記載の吸着構造体。
【請求項59】
粒状吸着材およびオリゴマーを含んで成るディスパージョンから凝集性前駆体塊を形成し、該前駆体塊を加熱して、粒状吸着材がセラミック組成物を含んで成るマトリックスに分散している構造体を含んで成る凝集体を作製する、請求項58に記載の吸着構造体。
【請求項60】
オリゴマーを含んで成る凝集性前駆体塊の表面に粒状吸着材を適用し、その後、該オリゴマーおよび該粒状吸着材より得られる組み合わせを加熱して、吸着材を有するセラミック組成物がセラミック組成物表面上に分散している構造体を含んで成る凝集体を形成する、請求項58に記載の吸着構造体。
【請求項61】
粒状吸着材は、凝集体が接触し得る流体に含まれる分析対象物に接触し易い、請求項58〜60のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項62】
構造体は、セラミック組成物でコーティングされたコア塊を含んで成る、請求項60または61に記載の吸着構造体。
【請求項63】
構造体は、セラミック組成物に包埋されているコア塊を含んで成る、請求項60または61に記載の吸着構造体。
【請求項64】
凝集体は、本質的にセラミック組成物から成るモノリシックな塊を含んで成る、請求項60または61に記載の吸着構造体。
【請求項65】
請求項66のいずれかに記載の吸着構造体をそれぞれ含んで成る、複数の個別体。
【請求項66】

【請求項67】

【請求項68】
セラミック組成物は、C−Hに関する約2976cm−1の特性バンドを有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項69】
セラミック組成物は、以下の一連の吸着バンド幅(値はcm−1):
Si−Oに関して約1200〜約900;Siに関して約900〜約600;およびSi−Cに関して約900〜約600
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項70】
セラミック組成物は、250℃において以下の一連の吸着バンド幅(値はcm−1):
ビニル基に関して約3047、1592および1406;ならびにSi−H(伸縮)に関して約2135
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項71】
セラミック組成物は、500℃において以下の一連の吸着バンド幅(値はcm−1):
N−Hに関して約3400および1170;Si−Hに関して約2130;ならびにビニル基に関して約3050、1594および1404
を有する赤外振動吸収スペクトルを有する、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項72】
セラミック組成物は、赤外分光法によって測定したとき、250℃でのビニル基の強度が、常温での該強度に比べて減少している、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項73】
セラミック組成物は、赤外分光法によって測定したとき、500℃でのビニルおよびN−H基の吸着バンドが250℃での該吸着バンドに対して減少している、請求項43〜67のいずれかに記載の吸着構造体。
【請求項74】
アモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るマトリックスに留まっている、および/またはアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成るフィルムを介して下層面に付着している粒状吸着材を含んで成る固定相に、分析対象物を含む移動性流体相を接触させることを含み、該セラミック組成物は、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成る、クロマトグラフ方法。
【請求項75】
固定相は、クロマトグラフィーカラムまたは固相抽出デバイスのための充填物を含んで成り、該充填物は、セラミック組成物のマトリックスに留まっている粒状吸着材を有する、個別の吸着体を含んで成る、請求項74に記載のクロマトグラフ法。
【請求項76】
固定相は、クロマトグラフィーカラムの内面にセラミックフィルムを含んで成り、粒状吸着材は、フィルム中に留まっているか、またはフィルムを介して内面に付着している、請求項74に記載のクロマトグラフ法。
【請求項77】
セラミック組成物は、移動相に含まれている分析対象物に対して不可逆的に吸着しない、請求項74〜76のいずれかに記載のクロマトグラフ法。
【請求項78】
セラミック組成物は、移動相のキャリア流体以外のいずれの成分に対しても不可逆的に吸着しない、請求項77に記載のクロマトグラフ法。
【請求項79】
セラミック組成物は、キャリア流体に対して不可逆的に吸着しない、請求項78に記載のクロマトグラフ法。
【請求項80】
管状カラム、ならびに、カラムの壁にアモルファス非ガラス質セラミック組成物および粒状吸着材を含むフィルムを含むコーティングを含んで成るクロマトグラフ分離デバイスであって、該吸着材は、フィルムに留まっているか、またはフィルムを介して壁に付着しており、該セラミック組成物が、シリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素を含んで成るクロマトグラフ分離デバイス。
【請求項81】
非ガラス質基体および基体の表面上にコーティングを含んで成る複合物であって、コーティングは、複合物と接触する流体の成分の基体への吸着に対するバリアを提供し、コーティングは、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来するアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成る複合物。
【請求項82】
複合物の調製は:
オリゴマーを含んで成る流動性ディスパージョンを基体の表面に適用すること;および
ディスパージョンを表面で加熱して、セラミック組成物を形成すること
を含んで成る、請求項81に記載の複合物。
【請求項83】
オリゴマーを架橋ポリマーフィルムとするのに効果的な温度までディスパージョンを加熱し;および、セラミック状態とするのに効果的なより高い温度まで架橋ポリマーフィルムを加熱する、請求項82に記載の複合物。
【請求項84】
オリゴマーを架橋ポリマーフィルムとするのに効果的な温度は、約25℃〜450℃の間である、請求項83に記載の複合物。
【請求項85】
架橋ポリマーフィルムをセラミック状態とするのに効果的な温度は、約400℃よりも高い、請求項83に記載の複合物。
【請求項86】
架橋ポリマーフィルムをセラミック状態とするのに効果的な温度は、約400℃〜2200℃の間である、請求項83に記載の複合物。
【請求項87】
架橋ポリマーフィルムへの転化および/またはセラミック状態への転化を、空気中で行う、請求項83に記載の複合物。
【請求項88】
架橋ポリマーフィルムへの転化および/またはセラミック状態への転化を、不活性雰囲気下で行う、請求項83に記載の複合物。
【請求項89】
請求項83〜88のいずれかに記載の複合物であって、オリゴマーは、式:
【化4】

(式中、
は、水素、ビニル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アセトキシ、ハロ、ヒドロキシアルキル、ジメチルアミノ、オキシム、イソシアネート、CHQ−(OCHCHOH、
【化5】

から成る群から選択され、
は、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状−(CH−O−CH−)、および必要に応じてC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで置換されたアリールから成る群から選択され;
Qは、C1−8アルキルであり;ならびに
nは、1〜約20である)
を有する繰り返しユニットを含んで成る複合物。
【請求項90】
請求項89に記載の複合物であって、オリゴマーは、式:
【化6】

(式中、Rは、HまたはCH=CHであり、nは1〜20である)を有する複合物。
【請求項91】
セラミック組成物の調製は、スプレー、ブラシ、スピンまたはディップコーティングによってディスパージョンを適用することを更に含んで成る、請求項82に記載の複合物。
【請求項92】
セラミック組成物は、結晶質シリカまたは常套のシリカガラスに比べて、相対的に低いヤング率、相対的に低い曲げ弾性率、および相対的に大きい伸びを有する、請求項81に記載の複合物。
【請求項93】
セラミック組成物は、酸素とIVA族またはIVB族原子との結合によって主に連結されている、酸素とIVA族またはIVB族原子とのネットワークを含んで成る化学構造を有する、請求項81に記載の複合物。
【請求項94】
セラミック組成物の化学構造は、IVA族またはIVB族原子と窒素原子または炭素原子との結合によって規則的またはランダムに割り込まれている、請求項93に記載の複合物。
【請求項95】
セラミック組成物は、シリコン酸化物またはゲルマニウム酸化物を含んで成る、請求項81に記載の複合物。
【請求項96】
セラミック組成物は、フィラー材料を含んで成る、請求項81〜95のいずれかに記載の複合物。
【請求項97】
フィラー材料は、炭素、金属粉体、セラミック粉体、グラファイト、フレークおよびヒュームドシリカから成る群から選択される、請求項96に記載の複合物。
【請求項98】
基体は、金属、プラスチック、木材、繊維、セラミックまたはこれらの組み合わせから構成されている、請求項81〜95のいずれかに記載の複合物。
【請求項99】
基体は、金属である、請求項98に記載の複合物。
【請求項100】
セラミック組成物は、約1ナノメートル〜約100ミリメートルの間の厚さを有する、請求項81〜99のいずれかに記載の複合物。
【請求項101】
基体は、導管または容器である、請求項81〜100のいずれかに記載の複合物。
【請求項102】
基体は、ファイバである、請求項81〜100のいずれかに記載の複合物。
【請求項103】
コーティングはフィルムを含んで成る、請求項81〜102のいずれかに記載の複合物。
【請求項104】
ガラス基体、および基体の表面上にコーティングを含んで成る複合物であって、該コーティングは、複合物と接触する流体の成分の基体への吸着に対するバリアを提供し、該コーティングは、窒素がシリコン、III族金属、IVA族金属、IVB族金属、およびこれらの組み合わせから成る群から選択される元素と結合している繰り返しユニットを含んで成るオリゴマーに由来するアモルファス非ガラス質セラミック組成物を含んで成り、該ガラス基体は、差し込みスリーブ、ウール、シリンジバレル、サンプル瓶、コネクタ(例えば、プレスタイト、カラムおよびシール等)、吸着トラップアセンブリ、およびサーマルチューブから成る群から選択される複合物。
【請求項105】
非ガラス物質の調製は:
オリゴマーを含んで成る流動性ディスパージョンを物質の表面に適用すること;
表面でディスパージョンを加熱して、セラミック組成物を形成すること;および
セラミック組成物を被覆して、疎水性または親水性表面を形成すること
を含んで成る、請求項81に記載の非ガラス物質。
【請求項106】
ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊。
【請求項107】
約5〜約20μリットル/秒の透過率を有する、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項108】
マトリックスは、粒状吸着材によって吸着される分析対象物または他のターゲット化合物に対して実質的に不可逆的に吸着しない、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項109】
導管または容器内に含まれ、マトリックスが導管または容器の内壁に付着している、請求項106〜108のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項110】
粒状吸着材を少なくとも約40重量%で含む、請求項106〜109のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項111】
粒状吸着材を約50〜約75重量%の間で含む、請求項110に記載の流体透過性塊。
【請求項112】
粒状吸着材のB.E.T.表面積は、少なくとも約1m/gである、請求項106〜111のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項113】
粒状吸着材のB.E.T.表面積は、少なくとも約30m/gである、請求項112に記載の流体透過性塊。
【請求項114】
吸着材の濃度は、その表面積が、塊1ccあたり少なくとも約0.1であるようになっている、請求項106〜112のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項115】
バレルおよびチップを含んで成るピペットであって、チップは、請求項106〜114のいずれかに記載の透過性塊を含むピペット。
【請求項116】
チップは、テーパー状になっている、請求項115に記載のピペット。
【請求項117】
透過性塊のアスペクト比は、少なくとも約11である、請求項115に記載のピペット。
【請求項118】
ポリシロキサンポリマーは、繰り返しSi−H基を約1%〜約10%の間隔で含む、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項119】
ポリシロキサンポリマーは、極性溶媒に対して非混和性である、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項120】
ポリシラザンポリマーは、極性および無極性溶媒に対して混和性である、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項121】
ポリシロキサンポリマーは、式:
【化7】

(式中、
は、水素、置換されている又は置換されていないヒドロカルビル、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、またはO−Si≡部であり;そして
は、水素、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状−(CH−O−CH−)、および必要に応じてC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで置換されたアリールである)
のシロキサン繰り返しユニットを含んで成る、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項122】
ポリシラザンポリマーは、式:
【化8】

(式中、
は、水素、ビニル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、メルカプト、アセトキシ、ハロ、ヒドロキシアルキル、ジメチルアミノ、オキシム、イソシアネート、CHQ−(OCHCHOH、
【化9】

から成る群から選択され、
は、メタクリル、C1−20アルキル、C2−20アルケニル、フルオロアルキル、カルボニル、カルビノール、グリシジル、直鎖、分枝または環状−(CH−O−CH、および必要に応じてC1−6アルキル、フルオロ、クロロ、シアノまたはアリールで置換されたアリールから成る群から選択され;
Qは、C1−18アルキルであり;および
nは、1〜約20である)
を有するシラザン繰り返しユニットを含んで成る、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項123】
オリゴマーは、式:
【化10】

(式中、Rは、HまたはCH=CHであり、nは1〜20である)
を有する、請求項122に記載の流体透過性塊。
【請求項124】
粒状吸着材は、求核性である、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項125】
粒状吸着材は、求電子性である、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項126】
粒状吸着材は、中性である、請求項106〜114のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項127】
粒状吸着材は、炭素、有機ポリマー、シリカ、ゼオライト、アルミナ、金属またはセラミック粉体から成る群から選択される、請求項124に記載に流体透過性塊。
【請求項128】
粒状吸着材は、C18シリカである、請求項127に記載の流体透過性塊。
【請求項129】
粒状吸着材の粒子寸法分布は、その少なくとも50重量%が、約1ナノメートル〜約1ミリメートルの粒子寸法を有するようになっている、請求項124〜128のいずれかに記載の流体透過性塊。
【請求項130】
粒状吸着材の少なくとも約95重量%は、約5〜約75ミクロンの粒子寸法を有する、請求項129に記載の流体透過性塊。
【請求項131】
粒状吸着材の少なくとも約95重量%は、約40〜約60ミクロンの粒子寸法を有する、請求項129に記載の流体透過性塊。
【請求項132】
粒状吸着材は、0.01〜約5cc/gの孔容積を有する、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項133】
粒状吸着材は、0.1〜約2cc/gの孔容積を有する、請求項132に記載の流体透過性塊。
【請求項134】
粒状吸着材は、無孔である、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項135】
粒状吸着材の孔容積の少なくとも85%は、約2.5Å〜約10000Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項136】
粒状吸着材の孔容積の少なくとも95%は、約20Å〜約500Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている、請求項135に記載の流体透過性塊。
【請求項137】
粒状吸着材の孔容積の少なくとも85%は、約100Å〜約300Åの間の孔寸法を有する孔から構成されている、請求項135に記載の流体透過性塊。
【請求項138】
粒状吸着材は、約1μm〜約100μmである、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項139】
ポリシラザンポリマーに対するポリシロキサンポリマーの比は、約0.5対1.0〜約10.0対1.0である、請求項106に記載の流体透過性塊。
【請求項140】
ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成るバインダーによって内部に捕捉されている粒状吸着材を有する導管または容器を含んで成る、固相吸着デバイス。
【請求項141】
流体透過性塊を内部に含み、流体透過性塊は、その内部に分散している粒状吸着材を有するバインダーを含んで成る、請求項140に記載の固相吸着デバイス。
【請求項142】
流体透過性塊は、約5〜約10μリットル/秒の透過率を有する、請求項141に記載の固相吸着デバイス。
【請求項143】
少なくとも約0.2g/ccの濃度で吸着材を含む吸着領域を含んで成る、請求項140〜142のいずれかに記載の固相吸着デバイス。
【請求項144】
吸着領域は、約0.2〜約0.5g/ccの間の濃度で吸着材を含む、請求項143に記載の固相吸着デバイス。
【請求項145】
粒状吸着材のB.E.T.表面積は、少なくとも約1m/gである、請求項140〜144のいずれかに記載の固相吸着デバイス。
【請求項146】
粒状吸着材のB.E.T.表面積は、少なくとも約30m/gである、請求項145に記載の固相吸着デバイス。
【請求項147】
バインダーに捕捉されている粒状吸着材を含んで成る吸着領域を含んで成り、吸着領域における吸着材の濃度は、該領域内の吸着材の表面積が少なくとも約10m/ccであるようになっている、請求項140〜145のいずれかに記載の固相吸着デバイス。
【請求項148】
バレルおよびチップを含んで成るピペットであって、チップは、請求項140〜147のいずれかに記載の、バインダーに捕捉されている粒状吸着材を含んで成る吸着領域を含んで成るピペット。
【請求項149】
チップは、テーパー状である、請求項148に記載のピペット。
【請求項150】
吸着領域のアスペクト比は、少なくとも約12である、請求項148に記載のピペット。
【請求項151】
固相抽出に適合するピペットであって、ピペットは、バレルおよびチップを含んで成り、チップは、ポリシラザンポリマーを含んで成るマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊を含む、ピペット。
【請求項152】
固相抽出に適合するピペットであって、ピペットは、バレルおよびチップを含んで成り、粒状吸着材が、ポリシラザンポリマーを含んで成るバインダーによってチップ内に捕捉されている、ピペット。
【請求項153】
ポリマーマトリックスに分散している粒状吸着材を含んで成る流体透過性塊の調製方法であって:
溶媒、重合可能なシラザンおよび重合開始剤を含んで成る液体媒体であって、重合可能なシラザンが、ポリシラザンモノマー、ポリシラザンオリゴマーまたはこれらの混合物を含んで成る液体媒体において、粒状吸着材を含んで成るディスパージョンを調製すること;
重合可能なシラザンを重合して、流体透過性塊を形成すること
を含んで成る方法。
【請求項154】
重合を、約150℃より低い温度で実施する、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
ディスパージョンを、約40℃より低い温度から約130℃〜約160℃の間の温度まで、約10℃/分〜約22℃/分の間の速度で加熱する、請求項153に記載の方法。
【請求項156】
ディスパージョンを、約40℃より低い温度から約130℃〜約160℃の間の温度まで、約14℃/分〜約18℃/分の間の速度で加熱する、請求項153に記載の方法。
【請求項157】
ディスパージョンは、初めに、無溶媒基準にて約25〜約75重量%の間の吸着材を含む、請求項153〜155のいずれかに記載の方法。
【請求項158】
溶媒は、約1.6〜2.0g/mリットルの密度を有する、請求項153に記載の方法。
【請求項159】
溶媒は、無極性である、請求項153に記載の方法。
【請求項160】
溶媒は、ペンタクロロエタン、クロロホルムおよび四塩化炭素から成る群から選択される、請求項158に記載の方法。
【請求項161】
溶媒は、ディスパージョンの全体重量の約76%を示す、請求項153に記載の方法。
【請求項162】
ディスパージョンは、60〜100mg/mリットルのポリシロキサンを含んで成る、請求項153に記載の方法。
【請求項163】
ディスパージョンは、60〜400mg/mリットルのポリシラザンを含んで成る、請求項153に記載の方法。
【請求項164】
ディスパージョンは、約1.5〜5%のシロキサン;約2〜7.5%のシラザン;約0.01〜1.0%の重合開始剤;および約5〜30%の粒状吸着材を含んで成る、請求項153に記載の方法。
【請求項165】
重合開始剤は、ジクミルペルオキシドである、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
粒状吸着材は、C18シリカである、請求項164に記載の方法。
【請求項167】
導管または容器の内壁に粒状吸着材を付着させる方法であって:
導管または容器内に粒状吸着材を含んで成るディスパージョンを提供することであって、ディスパージョンは、溶媒、重合可能なシラザンおよび重合開始剤を含んで成る液体媒体中に吸着材を含み、該重合可能なシラザンは、ポリシラザンモノマー、ポリシラザンオリゴマーまたはこれらの混合物を含んで成っていること;ならびに
重合可能なシラザンを重合して、導管または容器内に吸着材を捕捉するバインダーを形成すること
を含んで成る方法。
【請求項168】
ターゲット化合物を含む流体媒体を含んで成るサンプルからターゲット化合物を分離する方法であって:
吸着層を含む容器または導管内にサンプルを引き込むことであって、吸着層は、接着性マトリックスに分散している又は接着性バインダーによって捕捉されている粒状吸着材を含んで成り、該接着性マトリックスまたはバインダーは、ポリシラザンポリマーおよびポリシロキサンポリマーを含んで成っていること;ならびに
ターゲット化合物を、吸着材の粒子に吸着させること
を含んで成る方法。
【請求項169】
ターゲット化合物を、吸着材の粒子に吸着させた後に、流体媒体を吸着層から排出する、請求項168に記載に方法。
【請求項170】
ターゲット化合物を、吸着層から脱離させる、請求項169に記載の方法。
【請求項171】
ターゲット化合物の脱離は、層を脱離流体に接触させることを含んで成る、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
ターゲット化合物の脱離は、吸着層を加熱してターゲット化合物を揮発させることを含んで成る、請求項170に記載の方法。
【請求項173】
ターゲット化合物の脱離は、吸着層に接触する雰囲気の圧力を下げることを含んで成る、請求項170に記載の方法。
【請求項174】
バレルおよびチップを含んで成るピペットであって、チップが吸着層を含んでいるピペットにサンプルを引き込む、請求項168〜173のいずれかに記載の方法。
【請求項175】
チップは、テーパー状になっている、請求項174に記載のピペット。
【請求項176】
吸着層のアスペクト比は、少なくとも約12である、請求項174に記載のピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【公表番号】特表2007−534460(P2007−534460A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541405(P2006−541405)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/038832
【国際公開番号】WO2005/052544
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(598169572)シグマ−アルドリッチ・カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】Sigma−Aldrich Co.
【Fターム(参考)】