説明

クロマトグラフィーにおける基線モデリング

化学分析の装置および方法は、クロマトグラムを取得すること、クロマトグラムをメディアン濾波してモデル基線を生成することと、モデル基線を平滑化してノイズを低減することと、得られたクロマトグラムから平滑化したモデル基線を減算して実質的に平坦な基線を有する修正クロマトグラムを生成すること、とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年10月25日出願の米国特許仮出願第60/730,095号の優先権を主張するものであり、その全てが参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、化学化合物の分離を含む装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガスおよび液体クロマトグラフィーは、通常化学品の分析および調製に用いられる。典型的なクロマトグラフィー装置は、カラムに保持された固定不活性多孔質材料を用い、対象サンプルを含む液体を多孔質材料に通過させる。典型的な液体クロマトグラフィーシステムは移動相ポンプ、サンプル注入器、カラム、および検出器を含む。ポンプは、注入器、カラム、および検出器を通る経路に沿って移動相流体を動かす。注入器は流体がカラムに入る前にサンプルを移動相流体に導入する。
【0004】
流体に含まれる個別の化学化合物はしばしばカラム中に保持される媒体に対して個別の親和性を有する。その結果、流体がクロマトグラフィーカラム中を移動する際、さまざまな化学化合物はカラム中の固定多孔質材料との相互作用に応じて、カラムの移動にさまざまな異なる時間遅れを生じる。その結果、化合物が媒体中に運ばれる際に化合物は帯に分離し、異なる時間にカラムから溶出する。
【0005】
したがって、サンプル溶液中の異なる化学化合物は、流体がカラムから溶出するときに個別の濃度ピークに分離する。さまざまな分離した化学品は、クロマトグラフィーカラムを出た後に流体が流入する、例えば、屈折計、吸収計、質量分析計、またはいくつかの他の検出装置によって検出することができる。
【0006】
理想的なクロマトグラフィー信号、またはクロマトグラムは、低ノイズで一定の基線応答に位置する良好に解像されたピークを有する。通常、クロマトグラムは理想的ではなく、例えば、融合したピークと傾斜および/または湾曲したノイズの多い基線を含む。
【0007】
液体クロマトグラフィーデータの分析におけるいくつかの問題は、急速な溶媒勾配変化の間の分離の吸収検出に関し、移動相組成物の変化がクロマトグラム基線の湾曲または傾斜を招くことである。基線の傾斜または湾曲はクロマトグラム全体を通して非常に小さなピークの表示を困難にすることがある。
【0008】
一般に、小さなピークを視覚化するためには縦(例えば、吸収)尺度の拡大を必要とする。都合悪いことに、基線の湾曲は時々そのような視覚化を困難にする。例えば、分析者は、明瞭に見るには小さすぎる小さなピークをそのままにして、湾曲した基線の縦の範囲全体が見えるように縦の尺度を調節することができる。あるいは、分析者は、例えば、1群の隣り合うピークは良好に視覚化されるが、他のピークは可視領域の縦の境界の上または下に存在するように縦を拡大することができる。
【0009】
高速クロマトグラフィーシステムは、特に、基線の湾曲または傾斜による困難さを経験し得る。例えば、クロマトグラム基線の湾曲または傾斜を招く移動相組成物の変化は、高速高解像度の非常に高い圧力(例えば、5kpsiを超える)の逆相分離を発生させ、そのようなサンプル分離は、例えば完了するのに僅か1から5分間ほどを必要とする。この時間の間に、移動相は、例えば、ほとんど純水からほとんど純粋なアセトニトリルへ勾配が付く。移動相組成物の変化に関係する基線の傾斜または湾曲の変化は、短期間分離に関連付けられる時間軸の圧縮でより顕著に明瞭になる。
【0010】
理想的には、いくつかのシステムにおいて、そのような勾配効果は、例えば、フローセルおよび/または光学系の設計によって低減される。従来のフローセルに適用された典型的な手法は、フローセルの内壁に衝突する光線が検出器に到達するのを防止することによって勾配により誘起される屈折率効果を低減する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらの解決策は、特に光案内フローセルが用いられるとき、ダイオードアレイおよび微調整可能な単一波長の可視UV吸収検出器の両方について、一般に急速に勾配が起きる間に平坦な基線を保証することができない。さらに、これらの解決策は、高い信号対ノイズの測定に典型的に要求される特徴である長い経路長および高い光学的スループットを提供しながら、より小さな容積のフローセルを用いる高いピーク容量のクロマトグラフィーシステムには一般に適用できない。
【0012】
基線の湾曲または傾斜を除去する従来の代替手法の一つは、フォトダイオードアレイに基づく検出器などの多重波長検出器だけに適している。この手法において、対象の分析物が吸収しないと仮定した波長帯域は参照値と呼ばれる。分離が進むと、分析波長での吸収は参照波長での吸収の変化に対して調節される。この手法は基線効果が全ての波長で同じ時にのみ適用されるのが好ましく、条件はしばしば光案内フローセルの使用を満たさない。溶出する化合物のいずれかが参照波長を吸収するならば大きな誤差が生じる。さらに、参照波長からのノイズが分析信号上のノイズに加わる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、湾曲および/または傾斜(シフトおよび/ドリフトなど)が、部分的にメディアンフィルタの使用によって導かれた平滑化基線を用いることによって、クロマトグラフィーのピークデータの解釈に影響をあまり与えずにクロマトグラムからの除去を実現することから生まれる。さらに、データ処理の間に圧縮および復元を使用することは、平滑化されたメディアンフィルタ誘導の基線モデルを得ることを要求する演算時間を短縮させることができる。本発明の特徴は、特に、高い流体圧力および光案内フローセルに基づく検出器を用いる液体クロマトグラフィーシステムに発生する問題の低減に適している。
【0014】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、クロマトグラムのピークから抽出することのできる有意義なデータに与える影響を最小にして、クロマトグラムの基線の湾曲および/または傾斜の低減を提供する。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、実時間のバックグラウンドモデリング、検出器チャンネルの並列実行、演算効果の向上、および/またはクロマトグラム分析中のエッジ効果の取り扱いに対する法則を提供する。
【0015】
したがって、一例示的実施形態において、本発明は化学分析の方法を特徴とする。方法は、メディアンフィルタをクロマトグラムに適用して、第1近似基線を提供するクロマトグラムを得ることを含む。典型的にクロマトグラはデータ点を有し、各々保持時間およびUVに基づく検出器によって提供される吸収値などの1つ以上の大きさの値に関連付けられる。メディアンフィルタはクロマトグラフィーのピークを除去して第1基線近似を生成する。次いで、基線近似は平滑化されて、ノイズ成分を減少させる。クロマトグラムから平滑化された基線モデルを減算すると、クロマトグラムから基線の傾斜および/または湾曲を除去し、したがって、クロマトグラフィーのピークおよび実質的に平坦な基線を有する修正されたクロマトグラムを提供する。
【0016】
クロマトグラムのデータは、濾波の前、収集の後またはその間に圧縮される。次いで、基線近似の平滑化の後で、元のクロマトグラムからモデル基線を減算する前に、場合によってデータの復元が行われる。いくつかの代替の実行において、圧縮および復元は修正されたクロマトグラム、そうでなければ取得されるクロマトグラムに少しの影響でまたは影響せずに処理を加速し演算時間を短縮するために用いられる。
【0017】
いくつかの実施形態において、メディアンフィルタがクロマトグラムの動作部分に適用されて新しい基線が作られる。これらの実施形態のいくつかにおいて、メディアンフィルタの使用によって得られた第1の近似基線は2次多項式など低次の多項式を第1の近似基線の動作部分に当てはめることによって平滑化される。次いで、平滑化された基線を元のクロマトグラムから減算して、実質的に平坦な基線を有する修正されたクロマトグラムを生成することができる。いくつかの場合には、メディアンフィルタおよび/または平滑化フィルタの濾波パラメータの適切な選択は、保持時間、領域、および/または溶出ピークの高さを顕著に観察可能に変化させない。実時間、すなわちデータが収集される際にクロマトグラムを表示するいくつかの実施形態において、基線補正を施した修正されたクロマトグラムは、フィルタ幅に関する時間の遅れで表示される。
【0018】
他の例示的実施形態において、本発明は化学分析のための装置を特徴とする。装置は、例えば、上述の方法の1つを実行するように構成された制御ユニットを含む。
【0019】
図面において、同じ参照符号は異なる図を通して一般に同じ部品を指す。また、図面は必ずしも尺度をもたず、かわりに一般に本発明の原理を説明する際に強調される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本明細書中の用語「クロマトグラフィー」などは、化学化合物の分離に用いられる装置および/または方法を指す。クロマトグラフィー装置は典型的には圧力および/または電気的力および/または磁力の下で流体および/またはイオンを動かす。本明細書における用語「クロマトグラム」は、文脈に応じてクロマトグラフィー手段によって導かれるデータまたはデータの代表を指す。クロマトグラムは一組のデータ点を含むことができ、その各々は2つ以上の値から構成され、それらの値の1つはしばしばクロマトグラフィー保持時間値であり、残りの値は典型的に強度または大きさの値に関連付けられ、これはサンプル成分の量または濃度に相当する。
【0021】
本発明は、クロマトグラフィーデータの生成および解析をサポートする。本発明のいくつかの実施形態は、サンプル化合物を分離する単一モジュールを含む装置を含むが、他の実施形態は複数のモジュールを含む。例えば、本発明の原理は液体クロマトグラフィー装置ならびに液体クロマトグラフィーと質量分析計の両方のモジュールを含む装置に適用可能である。いくつかの複数モジュールに基づく実施形態において、クロマトグラフィーモジュールは、エレクトロスプレイイオン化インタフェースなどの適切なインタフェースを用いることによって質量分析計モジュールに流体連絡される。いくつかの適切なインタフェースは、時によりイオン形態の分離された材料を生成または保持する。サンプル流体の流れは、典型的に気化、イオン化され、質量分析計モジュールの入口オリフィスに送達される。
【0022】
したがって、いくつかの実施形態は、データ点の組から構成されるクロマトグラムを生成し、その各々は保持時間の値(液体クロマトグラフィーモジュールから導かれる)と1つ以上の強度の値に関連付けられる。強度値は例えば、液体クロマトグラフィーモジュール中の光学検出器、および質量分析計モジュール(典型的に質量対電荷比の値)中の質量分析器の使用によって、溶離剤の観察から得られる。
【0023】
典型的なクロマトグラフィーの基線は、検出器の除くことのできない物理的に非理想的な性質を反映する固有の高周波ノイズ、およびクロマトグラフィーシステム、例えば、フローセルと溶媒相との相互作用に起因する基線の傾斜と湾曲の2つの顕著な成分を有する。本発明のいくつかの実施形態は、固有の高周波検出器ノイズを変化なく残し、重なり合うクロマトグラフィーピークを不変のままに残して、平滑な湾曲(例えば、溶媒のフローセルとの相互作用に起因する)を減算する。
【0024】
図1は、例えば、クロマトグラムからの基線のドリフトおよび湾曲の除去をサポートする化学分析の方法100のフロー図である。方法100は、メディアンフィルタをデータ点に適用120して第1近似基線を提供するクロマトグラム(RSで示される)の取得を含む。メディアンフィルタは、クロマトグラフィーピークおよび/または少なくとも1つの湾曲または傾斜の特徴をクロマトグラムから除去して第1近似基線を生成する。次いで、第1近似基線は、平滑化130されて第1近似基線のノイズ成分を低減する。次いで、クロマトグラムからの平滑化された基線の減算150は、クロマトグラフィーのピークを含み実質的に平坦な基線を有する修正されたクロマトグラム(FSで示される)を与える。クロマトグラムの取得は、場合によってメディアンフィルタの適用120、導かれた基線の平滑化130、および/またはクロマトグラムからの平滑化された基線の減算150前か同時に行われる。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態において、データ点は液体クロマトグラフィーモジュールまたは装置の検出器から導かれる。知られている検出器を含んで、任意の適切な検出器を用いることができる。いくつかの適切な検出器は、液体クロマトグラフィー技術の当業者に知られているように、例えば、紫外線(UV)吸収検出器および蒸発光散乱検出器(ELSD)を含む。この場合、クロマトグラムのデータ点は、各々保持時間とUV系検出器によって与えられる吸収値など1つ以上の大きさの値に関連付けられる。したがって、便宜的に、以下の説明はUV吸収検出器を含む実施例に関するが、当業者であれば、本発明の代替の実行において代替の検出器が使用可能であることを理解する。
【0026】
いくつかの実施形態は、比較的高い圧力(例えば、1〜2kps、5kpsi以下、または10kpsi以下、またはそれ以上)および比較的小さな容積(例えば、0.5μLから15μLまで)のフローセルを有する光案内に基づく検出器を用いることによってクロマトグラフィー信号を有利に発生する。方法100は、例えば、これらの条件下で発生し得る基線の湾曲を低減する。
【0027】
UV吸収検出器から導かれるクロマトグラムにおいて、基線の傾斜および/または湾曲は典型的にクロマトグラフィー装置、分離方法、および/または環境条件の特性の組み合わせによって決定される。これらの特性は、例えば、溶媒組成物、フローセル光学系、フォトダイオードアレイの応答および/または電子部品、および/またはそのようなシステムが時に示すあらゆる熱感受性を含む。分析者は典型的に傾斜または湾曲の測定不可能な平坦なクロマトグラフィー基線を望む。場合によって、無勾配(isocratic)分離で熱的に平衡させた検出器が用いられるとき、そのような理想的な性能に近づくことができる。
【0028】
当業者であれば理解するように、光案内されたフローセル(「LGFC」)を用いるいくつかの検出器は極めて低い検出器ノイズを提供する。しかし、勾配分離との相互作用はしばしば望ましくない湾曲基線をもたらす。基線湾曲が十分浅くて、保持時間、ピーク高さ面積、または幅などクロマトグラフィーピークの主要特性の解釈に与える影響が少なくても、湾曲はしばしば視認性を混乱させる。そのような湾曲の除去または低減はしばしばクロマトグラムの視認性と解釈を向上させる。
【0029】
ステップ120に適したメディアンフィルタは、場合によって、強度値が真の基線値から離れたデータ点の集合を真の基線を表すデータ点に置き換える、外れ値(outlier)のフィルタであると考えられる。したがって、クロマトグラフィーピークは、場合によって、外れ値として処理され、実際に、メディアンフィルタの適用120は、ピークをクロマトグラム中のピークに隣接する基線部分から導かれたデータ点に置き換える。
【0030】
平滑化ステップ130は、メディアン濾波ステップ120によって与えられる基線への第1近似を平滑化する。平滑化130は場合によって、減算150後の修正信号に悪影響を与え得る高周波ノイズを基線から実質的に除去する。平滑化130は、場合によって、多項式の使用に基づくフィルタなどの知られているフィルタを含んで、任意の適切なフィルタの使用によって達成される。以下に説明するように、適切な平滑化フィルタの一例はアポダイズされたSavitzky−Golayの2次多項式を用いることである。Savitzky−Golay多項式平滑化フィルタは、信号処理技術の当業者には知られている。
【0031】
クロマトグラムの基線モデル中の高周波ノイズの存在は、バックグラウンドの減算のため修正後のクロマトグラムのノイズ特性を変化させる可能性があり、したがって、そのようなノイズはクロマトグラム中のピークの観察される特性に影響を与える可能性がある。
【0032】
基線ノイズは、典型的にあらゆる検出器の取り除くことのできない特性であり、一般に、常に或るレベルでクロマトグラムに存在する。基線ノイズは、検出器に固有の非理想的特性から発生する。紫外線/可視(UV/Vis)検出器において、ノイズは典型的にショットノイズおよび/またはガウス統計を有するJohnsonの熱ノイズを含む。質量分析計において、ノイズは典型的にポアソン統計を有する計数ノイズを含む。基線ノイズは典型的に高周波成分によって支配され、すなわち、振幅の変動はクロマトグラフィーピークの幅の間に多数回発生する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、メディアン濾波され平滑化されたモデルの基線を元のクロマトグラムから減算することは高周波基線ノイズを増加も減少もさせない。したがって、モデル基線は長期間に横たわる傾斜および湾曲だけを含む。
【0034】
平滑化された基線を減算してクロマトグラムの下地に横たわる高周波ノイズを不変に保つことが望ましい。したがって、モデル基線の減算の結果としてピークの統計的特性化は変化しない。例えば、高周波基線ノイズの程度は変化しない。
【0035】
本発明のいくつかの方法が実質的に基線の傾斜またはドリフトのないクロマトグラムに適用されるとき、修正されたクロマトグラムは元のクロマトグラムに対して実質的に不変である。例えば、高さ、面積、および幅のピーク特性、ならびに下地に横たわる高周波基線ノイズは不変である。
【0036】
近似基線の平滑化130を通して高周波モデル基線ノイズの部分または全てを除去することによって、元のクロマトグラムから平滑基線を減算150した後に修正クロマトグラムに残る基線は、直線に近いが元のクロマトグラムに存在したものと同じパターンの下地の高周波基線ノイズを有することが望ましい。クロマトグラフィー信号からの平滑モデルの基線の減算150はピークパラメータを残し、修正クロマトグラムの下地基線ノイズは実質的に不変である。
【0037】
フィルタ窓幅
いくつかの代替の実施形態において、方法100は、ステップ120および130のために、予備選択されたまたは保持時間値の範囲に関連して可変の窓幅を有するメディアンフィルタおよび平滑化フィルタを用いる。これらの実行において、メディアンフィルタ(ステップ120参照)の挙動および平滑フィルタ(ステップ130参照)の挙動は、部分的に窓の幅に応じて調節可能なパラメータを用いて制御される。これらのパラメータは、次に説明する2つの代替の方法など、任意の適切な方法で選択される。
【0038】
第1の代替として、メディアンフィルタ窓の幅は、クロマトグラフィーピーク幅の少なくとも2倍に設定され、平滑化フィルタ窓の幅はこのピーク幅の少なくとも4倍に設定される。したがって、クロマトグラフィーピークの幅は場合によって連続的なデータ点の数で表される。あるいは、例えば、ピーク幅は時間幅として表され、したがって、データ点の数に関する窓幅は、検出器のサンプリングレートを乗じた時間単位の幅に相当する。好ましくは、場合によって、ピーク幅は最も広い幅のピークに基づき、および/またはピーク高さの5%の全幅に等しい。当業者には知られているように、場合によって他の適切なピーク幅の寸法が用いられる。
【0039】
ピークのない基線の部分が十分に窓幅内にあるならば、一般にメディアンフィルタは適切にクロマトグラフィーピークを除去する。平滑化フィルタは場合によって本質的に全ての高周波ノイズを近似基線から除去するように選択され、下地の湾曲したクロマトグラフィー基線に相当する本質的に平滑な湾曲を生成する。ピークの幅の上で、この平滑な湾曲は本質的に実際直線性がある。
【0040】
第2の代替として、フィルタの窓幅はピーク幅に応じて決定されず、幅はクロマトグラフィーの運転時間に関連する。例えば、幅は、サンプルデータ点に関するクロマトグラフィーの運転時間のフラクションとして規定される。例えば、メディアンフィルタ窓の幅は運転時間の約10%であるのが適切であり、平滑化フィルタ窓の幅は運転時間の約20%であるのが適切である。これらの窓の幅は、例えば、クロマトグラフィーピーク幅が運転時間の5%以下であり、分離のピーク容量が20:1以上であるのが適切である。これらのフィルタ窓の幅の値はほとんどの勾配分離を収容するのに十分大きく、クロマトグラムの下地基線の湾曲を実質的に辿るモデル基線を形成するには十分狭い。フィルタの窓幅の決定において、クロマトグラムの予想される最も広いピーク幅を適切に用いることができる。
【0041】
窓幅選択の法則は場合によって化学処理システムのデータ分析部品にハードコード化される。したがって、使用者(またはシステム部品)は場合によってフィルタ窓の幅を選択する必要がない。
【0042】
いくつかの実施形態において、メディアンフィルタは移動メディアンフィルタである。移動メディアンフィルタの「ランク」rは場合によってフィルタ窓の半幅に相当する。すなわち、
W=1+2r
式中、Wはデータ点数のメディアンフィルタ幅であり、rは半幅である。
【0043】
メディアンフィルタはクロマトグラムの連続する点に適用され、各点はフィルタによって与えられる新しい値に置き換えられ、各濾波された点は濾波される点の中心に位置する窓内部の点のメディアン強度を有する点に置き換えられる。一組の点のメディアンは組の中央点であり(または他の適切な定義)、組中の等しい数の点が中間点よりも大きいかまたは小さい値を有する。
【0044】
窓の幅に関して、窓が奇数のデータ点を含むことが便利である。したがって、いくつかの実施形態において、H=(W−1)/2で定義される半窓幅は偶数である。
【0045】
方法100の実時間実行の一つにおいて、N番目の点が取得されると、メディアンフィルタは(N−H)番目のメディアン濾波された値を出力する。
【0046】
上述のように、いくつかの実施形態において、メディアンフィルタの窓幅は最も広いピークの幅の少なくとも2倍であることが望ましく、平滑フィルタの幅は最も広いピークの少なくとも4倍であることが望ましい。多くの場合、これらの値よりも広い窓幅のフィルタはピークパラメータを変化させない。これらの値よりも狭い窓幅を有するフィルタは一般に歪んだピークになる。
【0047】
次に図2A、図2B、図3A、図3B、図4A、および図4Bを参照すれば、メディアンおよび平滑化フィルタの挙動の実施例が説明される。図2Aは例示クロマトグラムの収集された状態のグラフである(縦軸はUV検出器から導かれた吸収単位(AU)に相当し、水平軸はサンプル運転の保持時間に相当する)。図2Bは、同じクロマトグラムであるが縦軸を拡大して実施例クロマトグラムの湾曲を強調している。
【0048】
図3Aおよび図3Bは、図2Bのクロマトグラムからメディアン濾波され平滑化されたモデル基線の展開を示す。図3Aは、メディアン濾波(ステップ120参照)によって図2Bのクロマトグラムから得られた近似基線のグラフである。図3Bは、図3Aの近似基線に平滑化フィルタ(ステップ130参照)を適用して得られた平滑化された近似基線のグラフである。
【0049】
図3Bは、図3Aのメディアン濾波された近似基線からの高周波の除去を示す。本実施例において、平滑化フィルタはメディアンフィルタを通すことによって高周波ノイズが除去され、実質的に検出器ノイズアーチファクトのないモデル平滑基線が残る。
【0050】
図4Aは、図2Aおよび図2B(尺度は図2Aと同じ)の得られたクロマトグラムから図3Bの平滑化されたモデル基線を減算150した後の修正クロマトグラムのグラフである。図4Bは、同じ修正クロマトグラムであるが、図2Bおよび図3Bと同様に、縦軸を拡大してグラフ化し、得られたクロマトグラムからの湾曲の除去を強調している(図2Bと比較されたい)。
【0051】
次に図5を参照すれば、本実施例のアポダイズされたSavitzky−Golayの2次多項式平滑フィルタがより詳細に説明される。平滑化フィルタを近似基線中の連続点に適用して(ステップ120参照)、各点を新しい値に置き換える。本実施例において、各点は平滑化される点に中心を置く窓内部の点の重み付け平均で置き換えられる。各点に適用された重み付け値は、平滑化フィルタの係数に相当する。本実施例に用いられるものなど、いくつかの適切な平滑化フィルタでは、これらの値の和は1である。
【0052】
アポダイズされたSavitzky−Golayフィルタは、データを2次多項式湾曲に当てはめるとき、データにコシヌソイド形状の重み付け関数を適用することによって得られる。コシヌソイド形状の重み付け関数は、最も高い重みを当てはめ窓の中心に与え、重みの値はフィルタ境界で対称的にゼロになる。本実施例は、奇数の点を有する窓幅を用いるのが便利である。
【0053】
図5は本実施例のアポダイズされたSavitzky−Golayの2次多項式を示すグラフである。フィルタ係数の値(和が1になる)がフィルタ数(任意の単位)に対してプロットされ、本実施例では483個のフィルタ係数が存在する。典型的な移動平均フィルタに関して、各出力データ点はフィルタをデータ点の窓に適用することによって得られ、各データ点は相当するフィルタ係数の1つに関連付けられる。各出力データ点は、フィルタの係数を相当するデータ点の値に乗じ、次いで積を総計することによって得られる。次いで、フィルタ係数は一時に1つのサンプル点ごとに段階的に進み、各ステップで新しいフィルタ出力を生成する。
【0054】
クロマトグラムのデータ点のオーバーサンプリングが本実施例に用いられる。したがって、当分野で知られるように、オーバーサンプリングが本実施例で用いられて窓中の483個のオーバーサンプリングされたデータ点を提供する。
【0055】
そのようなフィルタの各出力点が、2次多項式をフィルタ幅に相当するデータの窓に当てはめることによって等しく得られる値を与えることは、2次多項式フィルタの知られた特性である。フィルタ出力は、フィルタ窓の中心に当てはめた値に等しい。
【0056】
本発明の一実施形態のアポダイズされたSavitzky−Golayフィルタは、データ窓への重み付け最小二乗当てはめから得られるものに等しい結果を与える係数を有する。本実施形態の重み付け(アポダイジング)関数は、中心に最大を有しフィルタ端部で滑らかにゼロになるコシヌソイドである。重み付け(アポダイゼーション)の結果はフィルタ係数が端部近くで減衰値を有することであり、これはメディアンフィルタで導かれた基線から高周波リップルをさらに除去するのを助ける。
【0057】
データ圧縮
任意の圧縮および復元ステップ110、140はそれぞれ濾波ステップ120、130に先行し、後に続く。次に説明するように、場合によって、圧縮および復元ステップ110、140は運転数を低減し、従って演算の期間を低減する。
【0058】
一例示的実施形態において、データ取得パラメータの大部分または全てを決定するためにピーク幅が用いられ、これはサンプリングレート、およびフィルタ幅パラメータを含む。例えば、サンプリングレートはピーク幅(例えば、ピーク高さの5%での全幅として測定される)に約15個のデータ点を提供するように選択されることが適している。本実施例において、メディアンフィルタは少なくとも30個のデータ点を含むように選択され、平滑化フィルタは少なくとも60個のデータ点を含むように選択される。
【0059】
場合によって、分析者はピークからかなり多くのデータ点を収集するようにかなり高いサンプリングレートでデータを得ることを選択する。例えば、ピークから150データ点が収集されるならば、適切な実行の一つはメディアンフィルタ幅用に300点を必要とし、平滑化フィルタ幅用に600点を必要とする。
【0060】
一般に、平滑化ステップ130を実行するために必要な乗算動作の数は、本実施例において、サンプリングレートの二乗で増加する。各平滑化された点を得るためにはさらに多くの点を平滑化しさらに多くの点を処理しなければならない。より高いサンプリングレートは必ずしもモデル基線の精度を高めず、したがって、不必要な演算負荷を招く。
【0061】
この負荷を軽減するためには、圧縮ステップ110の一実施例において、圧縮ファクタFに相当するデータ点の数を平均して、得られたクロマトグラフィー信号から10分の1を取った(decimated)クロマトグラムを生成する。したがって、例えば、より小さな(圧縮された)クロマトグラムを生成するために平均化によって10個のデータ点が結合され、ここから(ステップ120、130によって)モデル基線か得られる。次いで、モデル基線は直線補間によって復元140され、次いで点ごとの減算150が可能になる。
【0062】
ピーク幅についての情報に依存せず、運転時間に基づく一実施例において、最大ピーク容量が決定され、ピークあたり控え目な目標レートとして20データ点が選択される。本実施例において、10の値ではなく、圧縮ファクタFは、
F=ceil(N/C
であり、式中、Nはクロマトグラム毎のデータ点の総数であり、Cは最大ピーク容量であり、Sは目標サンプリングレートであり、ceil関数は、知られているように、整数値へ切り上げる。図示ではC=200、およびS=20である。
【0063】
実時間分析および表示
説明したように、メディアン濾波ステップ120は、後処理フィルタとして取得後のデータに適用され、またはデータが収集される際に実時間でデータに適用される。データが収集される際にクロマトグラムが実時間で表示されるならば、基線補正された修正クロマトグラムは一般にフィルタ窓幅の関連した量だけ遅れる。
【0064】
実時間実行の一実施例において、検出器から導かれる各データ点は記憶され、次いでメディアン濾波されるデータの窓に含まれる。メディアン濾波によって生成された各新しい出力データ点は記憶され、次いで場合によって平滑化フィルタによって用いられる。次いで、平滑化フィルタの適用の後、各出力データ点は、場合によって対応する元の生データ点から減算されて修正クロマトグラムデータ点を生成する。
【0065】
修正クロマトグラムのデータ点は、クロマトグラムの生データ点が受け取られるのと同じ速度で安定して生成される。フィルタ窓の幅は、入力と出力クロマトグラムのタイミングの遅れ時間を決定する。一般に、遅れはフィルタ幅の総計の半分である。
【0066】
上述のように、例えば、モデル平滑化基線を元のクロマトグラムから点ごとに減算することによって、基線補正されたクロマトグラムが得られる。したがって、実時間実行の実施例において、減算ステップ150は任意選択的にモデル基線のN番目のデータ点が決定されると元のN番目のデータ点の修正値を出力する。
【0067】
検出器
本発明のさまざまな実施形態は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器、微調整可能なUV(TUV)検出器、およびまたはELSDなど、知られている光学検出器を含んで、1つ以上の適切な光学検出器から得たデータを用いる。いくつかの実施形態において、クロマトグラムのデータ点は、各々並列のデータの流れに関連付けられた大きさの値を含む。例えば、本発明の一実施形態は、512素子PDA系検出器などのアレイ型検出器を含む。PDA中の各ピクセルから導かれたデータの各流れの時間経過は、場合によって独立に処理される。したがって、各基線の湾曲は他とは独立に除去される。
【0068】
適切なTUV検出器の一つは、光案内フローセルを用いて80Hz以上のデータレートをサポートする二重波長紫外線/可視(UV/Vis)検出器である。そのようなTUVまたは他の検出器は、場合によって単一のデータチャンネルを提供する。
【0069】
クロマトグラフィー技術の当業者にとって知られているように、ELSDはUV/Visに僅かしか応答せず、質量分析計で十分イオン化しない化合物の検出の助けになる。それらの化合物は、例えば、砂糖、抗生物質、抗ウィルス物質、生体分子、および天然物質を含む。
【0070】
エッジ効果の取り扱い
本発明のいくつかの実施形態は、フィルタエッジ効果の問題の可能性を低減する。例えば、上述の実施形態において、メディアンフィルタと平滑化フィルタの両方は、濾波されるデータ点の中心のデータ点の窓を入力として取る。取得したクロマトグラムの第1および最後のデータ点、および場合によって隣のデータ点は、特別の法則が関与しないかぎり濾波されない。一つの適切な法則は、第1データ点の前および最後のデータ点の後に、フィルタの動作を可能にする十分な数のデータ点を加えることによってクロマトグラムを補うことである。メディアンフィルタについては、データ点はHデータ点によって補われ、平滑フィルタについてはHデータ点によって補われる。
【0071】
第1の取得された点dの前に点d−iを得るために、一つの適切な法則は、
−i=d−(d−d)=2d−d
であり、式中、dはクロマトグラムの第1点であり、dはi番目の点であり、d−iは反映された点である。
【0072】
次に図6を参照すれば、本発明のいくつかの実施形態はLCおよび/またはMSモジュールを含むクロマトグラフィーシステムなどの化学処理システムである。これらの実施形態のいくつかは、制御ユニットを含む。これらのいくつかの実施形態において、制御ユニットはデータ通信技術に知られたものなど、ワイヤおよび/またはワイヤレス手段によってシステムの他の構成要素とデータ通信される。制御ユニットは、例えば、処理データを受け取り、例えば他の構成要素に制御信号を与える。制御ユニットは記憶構成要素を含みおよび/または記憶構成要素と通信する。
【0073】
図6は、本発明の他の代替の実施形態による高圧クロマトグラフィー装置500のブロック図である。装置500は、分離カラム510、溶媒貯蔵器550、溶媒ポンプ540、サンプル注入器560、検出器580、ポンプ540を貯蔵器550に接続する配管500A、ポンプを注入器560に接続する配管500B、カラム510を注入器560に接続する配管500C、カラム510を検出器580に接続する配管500D、および制御モジュール570を含む。
【0074】
配管500B、500C、500Dは場合によってナノフロークロマトグラフィーに適した、例えば、約20μm〜約40μmの範囲内の内径を有する。配管500B、500C、500Dの各部分は、場合によって所望の異なる内径を有する。
【0075】
好ましい実行において、検出器580は比較的小さな容積の流体を収容する光案内フローセルを用いる。適切な検出器の一つは、国際公開第2002/071029号、Gilbyの「Fluorescence Detector Geometry」に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
いくつかの代替の実行において、装置500は知られている高圧クロマトグラフィー装置に基づくが、上述の方法の特徴を実行するように修正される。適切な市場で入手可能な装置の一つは、nanoACQUITY UPLC(商標)システム(Waters Corporation、Milford、Massachusettsから入手可能)である。
【0077】
例えば、パーソナルコンピュータ、またはワークステーションを含む制御モジュール570はデータを受け取り、および/または制御信号をワイヤおよび/またはワイヤレス通信によって例えば、ポンプ540、注入器560、および/または検出器580に与える。制御モジュール570は、例えば、サンプル分析の自動化をサポートする。さまざまな代替の実施形態において、制御モジュール570は、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェア(例えば、用途特定の集積回路など)を含み、所望であればユーザーインタフェースを含む。場合によって、例えば、1つ以上のマイクロプロセッサがモジュール570の機能を使用可能にするソフトウェアを実行する。いくつかの実施形態において、ソフトウェアは、汎用装置上および/または機能的に本明細書に述べた特定のプロセッサ上で動作するように設計される。
【0078】
カラム540は任意の適切な固定媒体を収容する。例えば、場合によって媒体は、当業者に知られた粒子状媒体などのナノフロークロマトグラフィーのための適切な任意の媒体を収容する。いくつかの適切な媒体は、約1μm〜約5μmの範囲の粒子直径を有するシリカまたは混成吸着剤を含む。
【0079】
いくつかの実施形態において、粒子状媒体は、例えば、BEH Technology(商標)Acquity UPLC(商標)1.7μmカラム(Waters Corporation、Milford、Massachusettsから入手可能)などに見出される混成粒子を含む。他の実施形態は3μmまたは5μmなどの大きな粒子を含む。これらの実施形態のいくつかはトラップカラムを含む。適切なカラムは25cm以下またはそれ以上の長さであり、例えば20μm〜300μmの範囲、例えば、75μm、100μmまたは150μmの内径を有する。
【0080】
ポンプユニット540は少なくとも約5,000psiまたは10,000psiまたはそれ以上の圧力で溶媒のナノフローを提供するように構成される。ポンプユニットは、Acquity UPLC(商標)液体クロマトグラフィー装置(Waters Corporation、Milford、Massachusettsから入手可能)などの知られているポンプ構成要素を含んで、任意の適切なポンプ構成要素を含む。
【0081】
当業者であれば、請求項に記載の本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたものの変更、修正、および他の実施形態を想起する。したがって、本発明は前述の例示的説明によってではなく、請求項の精神と範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態による化学分析の方法のフロー図である。
【図2A】例示的クロマトグラムのグラフである。
【図2B】図2Aのクロマトグラムであるが縦軸を拡大したグラフである。
【図3A】本発明の一実施形態によって図2Bのクロマトグラムから得られた第1近似基線のグラフである。
【図3B】図3Aの基線を平滑化することによって導かれた平滑化されたモデル基線のグラフである。
【図4A】図2Aおよび図2Bの得られたクロマトグラムから図3Bの平滑化されたモデル基線を減算して得られた修正クロマトグラムのグラフである。
【図4B】図4Aの修正クロマトグラムであるが縦軸を拡大したグラフである。
【図5】アポダイズされたSavitzky−Golayの2次多項式フィルタのグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による高圧クロマトグラフィー装置のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々保持時間の値と少なくとも1つの大きさの値を有するデータ点に関連付けられたクロマトグラムを取得することと、
クロマトグラムからデータ点をメディアン濾波することによって少なくとも1つのクロマトグラフィーピークを除去してモデル基線を提供することと、
モデル基線を平滑化してモデル基線のノイズ成分を低減することと、
得られたクロマトグラムから平滑化されたモデル基線を減算して少なくとも1つのクロマトグラフィーピークおよび実質的に平坦な基線を有する修正クロマトグラムを生成すること、とを含む化学分析の方法。
【請求項2】
クロマトグラムの取得が、光案内フローセルを含む検出器からの光学的吸収データを収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
平滑化が平滑化フィルタを適用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
平滑化フィルタの適用が平滑化フィルタの窓幅を選択することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
幅が最も広いと予想されるクロマトグラフィーピーク幅の少なくとも約4倍である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ピーク幅が、約5%ピーク高さで求められる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ピーク幅が、サンプル運転時間の約20%と関連している、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
平滑化フィルタが、多項式平滑化フィルタを実行する係数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
平滑化フィルタの適用が、エッジ効果を低減するモデル基線クロマトグラムの濾波されたデータ点を補うことを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
ノイズ成分が、高周波ノイズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのクロマトグラフィーピークを除去する前に、得られたクロマトグラムを圧縮することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
クロマトグラムの取得が、フォトダイオードアレイに基づく検出器から光学的吸収データを収集することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
メディアン濾波が、エッジ効果を低減することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
エッジ効果の低減が、クロマトグラムのデータ点を補うことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
減算が、点ごとの減算を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
減算が、実時間で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
データ点のメディアン濾波がデータ点取得の間の濾波を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
データ点のメディアン濾波が、全データ点の取得後の濾波を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法を実行するように構成された制御ユニットを含む、化学処理装置。
【請求項20】
光案内フローセルを含む検出器を含むクロマトグラフィーモジュールと、
少なくとも1つのプロセッサおよび複数の命令を記憶するための少なくとも1つのメモリを含み、少なくとも1つのプロセッサによって実行されるとき、
各々、検出器から導かれる保持時間の値と少なくとも1つの大きさの値を有するデータ点に関連付けられるクロマトグラムを取得するステップと、
クロマトグラムからデータ点をメディアン濾波することによって少なくとも1つのクロマトグラフィーピークを除去してモデル基線を提供するステップと、
モデル基線を平滑化してモデル基線のノイズ成分を低減するステップと、
得られたクロマトグラムから平滑化されたモデル基線を減算して少なくとも1つのクロマトグラフィーピークおよび実質的に平坦な基線を有する修正クロマトグラムを形成するステップと、が実行される検出器と通信する制御ユニットとを含む、化学処理のための装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−513985(P2009−513985A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538154(P2008−538154)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/060217
【国際公開番号】WO2007/051117
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)