説明

クロマトグラフィー媒体用容器

本発明は、クロマトグラフィー媒体用の容器又はバッグ及びかかる容器を使用してクロマトグラフィーカラムを充填する方法に関する。このバッグは、クロマトグラフィー媒体を保存及び/又は輸送するのに使用し得、使用の準備が整ったクロマトグラフィーカラムのチャンバーに直接挿入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラムクロマトグラフィーによる化合物の分離に関する。特に、本発明は、クロマトグラフィー媒体用の容器又はバッグ、及びかかる容器を使用してクロマトグラフィーカラムを充填する方法又はクロマトグラフィー媒体の圧密化された床を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーに使用されるカラムは、通例、担体液体が貫通して流れる多孔質クロマトグラフィー媒体の充填床を封入した管状又は円筒状の本体からなり、分離は担体液体と多孔質媒体の固相とに分配されることによって起こる。円筒状のカラムは一般に「軸方向」カラムといわれ、クロマトグラフィー分離は通例カラムの長さに沿って垂直方向下向きに起こり、一方管状のカラムは一般に「半径方向」カラムといわれ、分離は担体液体が円筒の中心に向かって流れるとき半径方向に起こる。
【0003】
分離プロセスに先立ち、カラム内に導入するべき粒子状媒体から出発することにより床を製造しなければならない。従来の高効率分離を目的とするカラムは、「充填手順」と呼ばれる床の形成方法を利用している。高効率分離において、正確に充填された床は、充填床を含有するカラムの性能に影響する重大な要因である。通例、充填床は、スラリー充填により、すなわち、カラム中にポンプで送られ、注入され、又は吸引されるスラリーといわれる個々の粒子又は繊維の液体中の懸濁液を圧密化することにより製造される。所定容量のスラリーがカラム中に送り込まれたら、さらに圧密化し圧縮する必要がある。
【0004】
軸方向のカラム又は軸方向のクロマトグラフィーにおいて、可動性アダプターをカラムの縦軸に沿ってカラムの底部に向かって、普通一定のスピードで動かすことによって、スラリーを圧縮することができる。この手順の間余分の液体はカラム出口で排出され、一方媒体粒子は媒体粒子が通り抜けることができないほど小さい細孔を有するフィルター材、いわゆる「床支持体」又は「フリット」によって保持される。充填床が最適な圧縮度で圧縮されたら充填プロセスは完了する。
【0005】
軸方向及び半径方向カラムの両者で使用されるカラムにスラリーを充填する別の方法は流動充填方法であり、この場合多孔質構造体の圧縮は主としてカラム全体に高い流量を適用することにより出口床支持体で始まる多孔質構造体を形成することによって達成される。得られる多孔質構造体中の粒子に対する流体抵抗によって、最終的に圧力低下と床の圧縮が生じる。最後に、この圧縮された床は、アダプターを所定の位置に配置することによって閉じ込められる。現在のところ、半径方向カラムを充填するには流動充填方法のみが知られている。
【0006】
その後のクロマトグラフィー分離の効率は、1)充填床の流体の入口と出口における液体の分配及び収集系、2)充填床内の媒体粒子の特別な配向(充填幾何学ともいう)、及び、3)充填床の圧縮に強く依存する。充填床の圧縮が低過ぎると、その床で実行されるクロマトグラフィー分離は「テーリング」を起こし、一般に、かかる不充分に圧縮された床は不安定である。充填床の圧縮が高過ぎると、その床により実行されるクロマトグラフィー分離は「リーディング」を生じ、かかる過度に圧縮された床はスループットと結合能力に影響する可能性があり、一般に、ずっと高い作動圧力となる可能性がある。圧縮が最適であれば、使用中に形成される分離ピークはリーディング又はテーリングがずっと少なく、実質的に対称である。最適な圧縮度はまた、多孔質構造体の良好な長期の安定性を達成することにより、多くのプロセスサイクルを通して最適の性能を保証する上でも決定的に重大である。カラムに必要とされる最適な圧縮度は各々のカラムの大きさ(幅又は直径)、床の高さ、及び媒体の種類に対して実験的に決定される。
【0007】
軸方向のカラムに対して使用される代わりの充填方法は「乾式充填」と呼ばれ、この場合カラムに多孔質媒体の乾燥粒子を満たし、その後液体をカラムに導入する。これは、充填用液体に保存剤を加える必要なく、また輸送中の重量を最小化することなく乾燥したまま顧客に届けることができる予め充填されたカラムにおいて有利である。乾式充填は通例、例えばG Guiochon J Chromatogr A 704(1995)247−268に記載されているように、小さい分子の分離を目的とするシリカ媒体に対して使用されるが、得られるカラム効率はかなり悪い。しかしながら、生体分子の分離において広く使用されているデキストラン又はアガロース系媒体のような膨潤可能なクロマトグラフィー媒体の場合、粒子の膨潤が充填床の性能を悪くするという認識のために乾式充填は避けられている。
【0008】
高い効率のクロマトグラフィー分離に適合した充填床の製造に関する上記背景は、酵素的変換、細胞の処理、又は充填床に付着した細胞の成長及び培養のような生物反応を高い効率で達成することを目的とする充填床又は固定床にも同様にあてはまる。
【0009】
上記カラム及び充填床は、物質、特にタンパク質、抗体及び細胞のような生体分子の安定化のためにも使用し得る。この安定化は、例えば分子の保存及び輸送を改良し容易にし得る。物質、特に生体分子のクロマトグラフィー媒体への結合はその物質の活性及び安定性を、濾過、沈殿又は凍結乾燥のような他の濃縮方法で達成可能な程度以上に維持し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5350513号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】G. Guiochon, J. Chromatogr. A, 704 (1995) 247-268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
カラムを製造し充填するための現行の方法には多くの問題が伴う。一般に、媒体は、大きい容器に入れてオペレーターに出荷され、充填手順の準備の際に慎重に計り取り、カラムに移さなければならない。これは、多量の媒体が使用されず保存されなければならないため、熟練した技術者を必要とするので、時間がかかり無駄が多く費用がかかるプロセスとなる可能性がある。媒体を薬剤及び食品のような認可された製品の調製に使用する場合には、規制条件も満たされなければならない。微生物の負荷を低減するための媒体及び/又はカラムの殺菌及び洗浄はユーザーにとって困難である可能性があることが立証されている。また、カラムは複雑であることが多く、充填手順を実施するのに大きい「フットプリント」を有する。
【0013】
別の問題は、従来公知のカラムが、高い価格、複雑さ及び低い柔軟性の故に、保存及び輸送の目的のための物質の安定化に適していないことである。従って、さらなる処理又は使用の前に、クロマトグラフィー媒体への吸着及び脱着のプロセスを通して物質の安定化を達成するための、簡単で費用効率の高い装置及び方法を提供する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、カラムを充填し、保存及び輸送のために物質を安定化する従来技術の方法に伴う上述の問題を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様では、クロマトグラフィー媒体用の可撓性バッグが提供され、前記バッグは第1の液体分配要素及び第2の液体分配要素に取り付けられることによりその中のクロマトグラフィー媒体用の区画を画成する非多孔質材料の外壁を含み、前記第1の液体分配要素は前記第2の液体分配要素に対向しており、また前記バッグは媒体充填口、及び場合により前記外壁に取り付けられそれぞれ第1及び第2の液体分配要素に隣接する第1及び第2のエンドピースを含み、前記エンドピースは両方が担体液体用の入口又は出口を受容するための開口を含み、第1の液体分配要素及び/又は第2の液体分配要素は前記壁に対して溶着又は成型されている。
【0016】
1つの態様では、バッグは管状の構造を有し、さらに内壁を含んでおり、第1の液体分配要素は前記外壁に対して溶着又は成型されており、第2の液体分配要素は前記内壁に対して溶着又は成型されている。好ましくは、このバッグは半径方向のクロマトグラフィーに使用される。
【0017】
別の態様では、バッグは、円筒状の構造を有しており、それぞれ第1及び第2の分配要素に隣接して外壁に取り付けられた第1及び第2のエンドピースを含み、これらのエンドピースはいずれも担体液体のための入口又は出口を受容する開口を含んでいる。
【0018】
さらなる態様では、第1及び第2のエンドピースは外壁に対して溶着又は成型されている。好ましくは、第1及び第2のエンドピースは剛性又は半剛性材料から作成される。適切な材料には不活性金属又はプラスチックがある。1つの態様では、第1の液体分配要素及び第2の液体分配要素はフィルター、メッシュ及びネット(網)からなる群から選択される。好ましくは、分配要素は織った、メッシュ、フィルター及び焼結物である。
【0019】
別の態様では、第1の液体分配要素及び第1のエンドピースは一体化ユニットであり、第2の液体分配要素及び第2のエンドピースは一体化ユニットである。この一体化ユニットは、例えば成型又は機械加工することによって形成し得る。第1のエンドピース部分はポリプロピレンから作成するのが適している。
【0020】
さらなる態様では、バッグは軸方向のクロマトグラフィーに使用される。
【0021】
1つの態様では、バッグはさらに、油圧流体のための入口を有する第2の区画をを含んでいる。
【0022】
別の態様では、壁又はフィルムはプラスチックポリマー材料、特に溶着又は成型用の材料から作成される。ポリエチレン系のプラスチックポリマーが特に適している。従って、適切な壁又はフィルムとしては、例えば、American Renolit Infuflex Barrier 9101(Solmed(登録商標)BF 9101、American Ronolit Crop,La Porte,IN,USA)、American Renolit BF−1400(Solmed(登録商標)BF−1400フィルム、American Renolit Corp,La Porte,IN,USA)、American Renolit 4301(Solmed(登録商標)Granuflex、American Renolit Crop,La Porte,IN,USA)、Mitos Durapure(Mitos Technologies,Phoenixville,PA,USA)及びMillipore Pureflex Process Container Film(Millipore Corp,Billerica,MA,USA)がある。
【0023】
さらなる態様では、バッグはさらに、軸方向及び/又は半径方向における剛性を提供するために半剛性又は剛性ハウジングを壁の周りに含んでいる。
【0024】
1つの態様では、バッグはさらに、湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体を含有する。好ましい態様では、この湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体は無菌である。バッグは放射線、オートクレーブ又は化学殺菌剤による処理によって殺菌することができる。ガンマ線が特に有効である。より穏やかな処理を使用して、微生物の負荷、すなわち媒体中に存在する細菌及び菌類のような微生物の総数を低減することもできる。
【0025】
本発明の第2の態様では、クロマトグラフィーカラムを充填する方法が提供され、この方法は、
a.上述のバッグをクロマトグラフィーカラムのチャンバー中に挿入し、
b.カラムハウジングを閉鎖し、
c.クロマトグラフィー媒体の充填床又は圧密化床又は流動床を形成又は圧縮する
段階を含む。
【0026】
ここで、圧密化床とは、実質的な機械的圧縮がない状態のクロマトグラフィー媒体の床の多孔質構造体と定義される。圧密化床は、例えば、クロマトグラフィー媒体の懸濁液で満たされた軸方向のクロマトグラフィーカラムに下向きの流体流を適用することによって形成される。この結果、多孔質圧密化床は、全てのクロマトグラフィー媒体が落ち着くまでにカラムの出口(フィルター)で形成される。かかる圧密化床は、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸その他の生物学的分子のような化学物質の結合を達成するのに使用することができる。また、圧密化床は細胞と結合するのにも使用することができる。
【0027】
頂部エンドピース/フィルターは、固定され得(ギャップ形成)、又は圧密化床の表面に向けて若しくは近接して移動させてそれぞれ保圧(hold-up)体積及びギャップを低減し得る。
【0028】
本発明の1つの態様は圧密化床用の可撓性容器を提供し、ここで、1以上の可撓性壁が、容器の内部の空間及び圧密化床に流体圧力を適用する際に剛性を提供するための剛性ハウジングによって機械的に支持されている。
【0029】
本発明の別の態様はクロマトグラフィー媒体を含有する可撓性容器を提供し、ここで、その内容物を有する可撓性容器は、クロマトグラフィー媒体に化学物質を負荷(load)した後に凍結することができる。
【0030】
本発明の別の態様はクロマトグラフィー媒体を満たした可撓性容器を提供し、これは、凍結し、解凍し、クロマトグラフィー媒体から圧密化床を形成するのに使用することができ、前記圧密化床に液体を適用することを含むさらなる処理段階にかけることができる。
【0031】
1つの態様では、バッグは乾燥したクロマトグラフィー媒体を含有しており、前記充填床は液体を加えて前記媒体を膨潤させることにより形成され、液体中の膨潤体積Vsはカラムチャンバーの約105〜120%となる。本明細書で使用する場合用語「膨潤体積(Vs)」とは、液体中に懸濁し平衡化した粒子の部分試料の沈殿体積を意味する。この沈殿体積は、粒子の部分試料を懸濁させ、24時間以下の間平衡化させ、必要であれば粒子を再懸濁させ、粒子を沈殿(堆積)させ、その沈殿体積をメスシリンダーのような目盛付き容器で測定することによって測定することができる。
【0032】
別の態様では、バッグは湿潤媒体を含有し、カラムハウジングは剛性であり、充填床はバッグの軸方向の圧縮によって形成又は圧縮される。
【0033】
さらなる態様では、カラムは油圧チャンバーを含み、充填床は前記チャンバーに油圧流体を満たすことにより形成又は圧縮される。この油圧チャンバーは可撓性バッグであり得る。1つの態様では、バッグは第2の区画を含んでいてもよく、充填床は前記第2の区画に油圧流体を満たすことにより形成又は圧縮される。
【0034】
場合により、カラムは可動性ピストン又はアダプターを含み、充填床は前記ピストン又はアダプターの軸方向の移動により形成又は圧縮される。
【0035】
1つの態様では、湿潤媒体を含有するバッグはカラムチャンバー内の剛性コアを覆って配置され、充填床はバッグの半径方向の圧縮により形成又は圧縮される。好ましくは、充填床はカラムハウジングの半径方向の圧縮により形成又は圧縮される。1つの態様では、カラムハウジングの半径方向の圧縮はハウジングの外側の半径方向のバンドを締め付けることによって行われる。
【0036】
別の態様では、湿潤媒体の体積圧縮は5〜20%である。好ましくは体積圧縮は7.0〜15%である。
【0037】
さらなる態様では、本方法はさらに、ガンマ線のような放射線でカラムを殺菌することを含む。同様な処理を使用して微生物の負荷を低減することができる。
【0038】
1つの態様では、クロマトグラフィー媒体の圧密化又は流動床を形成する方法は、さらに、d)化学物質又は細胞を前記圧密化床又は流動床上に負荷し、e)保存及び/又は輸送のために前記バッグを前記クロマトグラフィーカラムの前記チャンバーから取り出す段階を含む。好ましい態様では、化学物質はタンパク質、抗体、ペプチド、オリゴペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される。
【0039】
別の態様では、本方法はさらに、バッグを保存及び/又は輸送する段階を含む。バッグは−20℃〜20℃の温度で保存及び/又は輸送される。
【0040】
さらなる態様では、本方法はさらに、バッグをクロマトグラフィーカラムに戻し、前記化学物質又は細胞を前記圧密化床又は流動床から溶出する段階を含む。好ましい態様では、化学物質はタンパク質、抗体、ペプチド、オリゴペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される。
【0041】
本発明の第3の態様では、本発明の第1の態様によるバッグの、湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体上に負荷された化学物質又は細胞を保存及び/又は輸送するための使用が提供される。1つの態様では、バッグはセ氏−20°〜20℃の温度で保存及び/又は輸送される。
【0042】
本発明の第4の態様では、上述の可撓性バッグを含むクロマトグラフィーカラムが提供される。
【0043】
本発明の第5の態様によると、上述のクロマトグラフィーカラムの、化学物質又は細胞を分離又は精製又は処理するための使用が提供される。好ましい態様では、化学物質はタンパク質、抗体、ペプチド、オリゴペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1a及び1bは、軸方向の圧縮により充填することができる半剛性(semi-ridged)ハウジングを有する本発明の溶着されたバッグ(10)の一実施形態の概略断面図を示す。
【図2】図2a〜cは、半径方向の圧縮により充填することができる本発明によるバッグを含有するカートリッジの概略部分平面図である。
【図3】図3a〜cは、半径方向の圧縮により充填することができる本発明のバッグを含有するカラムの構成要素を示す説明図である。図3d及びeは、構成要素が互いに嵌め込まれ作動する様子を示している。
【図4】図4a〜cは、低温保存実験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1a及び1bは、カラム(20)内に配置された本発明の溶着されたバッグ(10)の一実施形態の概略断面図を示す。このバッグ(10)は非多孔質材料の壁(12)に溶着された第1(13)及び第2の(14)液体分配要素から構成される。分配要素(13、14)は、クロマトグラフィー媒体が通り抜けるには小さ過ぎるが液体に対しては多孔質である細孔を有するフィルターとして機能する床支持体又はフリット又はネット又は焼結物である。非多孔質材料又はフィルムはプラスチックポリマー製であり、ポリエチレン系のものが溶着又は成型に特に適している。例えば、適切なフィルムには、American Renolit Infuflex Barrier 9101(Solmed(登録商標)BF 9101;American Ronolit Crop,La Porte,IN,USA)、American Renolit BF−1400(Solmed(登録商標)BF−1400フィルム;American Renolit Corp,La Porte,IN,USA)、American Renolit 4301(Solmed(登録商標)Granuflex,American Renolit Crop,La Porte,IN,USA)、Mitos Durapure(Mitos Technologies,Phoenixville,PA,USA)及びMillipore Pureflex Process Container Film(Millipore Corp,Billerica,MA,USA)がある。
【0046】
バッグはまたクロマトグラフィー媒体充填ポート(16)も含んでおり、これを通して乾燥した又は湿潤媒体又はスラリーがバッグ(10)に加えられる。図1bに示した実施形態では、バッグ(10)はポート(16)を介して媒体(図示せず)を受容する1つの区画(11)を有している。図1a又は1bには示してないが、バッグ(10)はまた、外壁(12)に取り付けられていて、それぞれ分配要素(13、14)の各々に隣接する第1及び第2のエンドピースも含んでいる。これらのエンドピースは、バッグ(10)からの担体液体の漏出を防止すると共に担体液体の入口(25)及び出口(26)を受容するための開口を有する剛性又は半剛性材料から作成される。一実施形態では、開口は、担体液体の入口(25)又は出口(26)を受容する弾力のある隔膜(図示せず)の形態をしている。エンドピースの製造に適した材料には不活性金属及びポリプロピレンのようなプラスチックがある。好ましくは、エンドピースは外壁(12)に対して溶着又は成型される。
【0047】
一実施形態(図示せず)では、エンドピースと分配要素は単一のユニットとして一体化されていてもよく、適切な材料としてはポリプロピレンのような半可撓性プラスチックが挙げられ得る。このユニットは機械加工又は成型によって製造することができる。
【0048】
バッグの構成要素に剛性又は半剛性材料を使用することによって、充填床の形成又は圧縮が可能になる。好ましくは、バッグ及びその構成要素は、米国食品医薬品局のような薬剤の製造に関する規制当局により認可されている生物学的及び化学的に不活性な材料から作製される。
【0049】
バッグ(10)はまた、バッグ(10)の第1の区画(11)に隣接して、以下に記載するように油圧チャンバーとして機能して第1の区画(11)を圧縮する第2の区画(17)も含み得る。他の実施形態では、第2の区画(17)は油圧チャンバーとして機能する第1の区画(11)に隣接する別個のバッグであり得る。
【0050】
図1a及び1bで、バッグ(10)はカラム(20)ハウジング(22)及び蓋(21)により包囲されており、これらの構成要素の少なくとも1つは半剛性又は剛性である。バッグ(10)はポート16を介してクロマトグラフィー媒体の乾燥した粉末又は湿潤スラリーで満たされる。カラム(20)は使用前に媒体を満たす際にガンマ線照射により殺菌してもよいし、或いは、バッグは媒体を投入する際にガンマ線照射又はオートクレーブ処理により殺菌した後保存するか又はユーザーに向けて出荷してもよい。
【0051】
クロマトグラフィー分離用の媒体床を調製するには、ユーザーが、クロマトグラフィーカラム(20)のチャンバー中に、バッグ(10)の壁がチャンバー内にきつく嵌るようにカラムハウジング(22)及び蓋(21)に近接してバッグ(10)を挿入し、一実施形態では、流動充填方法を使用して床(図示せず)を圧縮する。その後、充填されたカラムは使用前にガンマ線により殺菌することもできよう。
【0052】
別の実施形態では、第2の区画又は油圧チャンバー(17)に口(24)を介して油圧流体を満たし、床の安定性を維持するために媒体を含有するバッグ(10)の第1の区画(11)を軸方向に圧縮することができる。代わりに、第1の区画(11)はカラムチャンバー内に存在するピストン又はアダプターにより機械的に圧縮することができる。
【0053】
ここで、化合物を含有する担体液体を(入口25を介して)バッグ10中に入れ、クロマトグラフィー媒体を通して流すことによって、タンパク質のような化合物の分離が生じ得、溶離剤は出口26で収集される。また、口26が入口として機能し、溶離剤が口25で収集されるように担体流を反対にすることができる。
【0054】
別の実施形態では、ユーザーは、軸方向のクロマトグラフィーカラム(20)のチャンバー中に、バッグが剛性ハウジングにより閉じ込められるようにカラムハウジング(22)及び蓋(21)に近接してバッグ(10)を挿入し、カラムを垂直の方向に配置して、圧密化床が形成されるようにバッグに液体を適用する。下向きの方向に流れを適用することにより圧密化床を形成するとき、圧密化床の上方にギャップが形成され得る。
【0055】
別の実施形態では、カラムの保圧体積を低減し、及び/又は圧密化床を機械的に安定化するために、バッグの壁を動かして、圧密化床の上方に形成された前記ギャップを低減する。
【0056】
使用の際には、化学物質(例えば、タンパク質、ペプチド、抗体、核酸又はこれらの混合物)又は細胞(又は細胞混合物)を含有する液体試料を圧密化床の上に載せ、平衡化させる。次に、バッグをカラムから取り出し、低温(例えば−20℃)で保存して、化学的、光化学的又は生物学的不安定性による化学物質又は細胞の損失又は破壊を最小にし得る。或いは、バッグを低温(例えば、−20℃)で別の位置に輸送してもよい。低温で保存及び/又は輸送の後、バッグを4℃以上の作動温度に平衡化し得、半剛性又は剛性カラムに入れ、化学物質又は細胞をクロマトグラフィー媒体から溶出し得る。或いは、クロマトグラフィー媒体に載せた化学物質又は細胞を、4℃以上の温度の剛性又は半剛性カラム内でバッグを平衡化させ元に戻した後、化学的又は生物学的反応のような処理に付してもよい。この処理段階の生成物はその後カラムから溶出し得る。
【0057】
一実施形態では、図1の軸方向のカラムは円筒形状に設計される。別の実施形態では、円筒形状で見られる円から外れた、卵形又は長方形の形状のような断面の形状を有する軸方向のカラムが設計される。カラムを閉じ込める剛性ハウジングの形状はそれに適合させる。例えば、カラムは、入口及び出口側に適切な分配系を配置した2Dピローバッグ又は3D長方形バッグの形状に合うように作成することができよう。別の実施形態では、カラムとバッグの断面はエンドピース間の軸方向の位置により変化し得、例えばエンドピースでは長方形又は卵形で、カラムの中央では円形又は卵形であり得る。
【0058】
別の実施形態では、剛性ハウジングは図1に示したような取り外し可能な蓋を有する代わりにカラム及びハウジングの側面で開閉される。別の実施形態では、剛性ハウジングはバッグに挿入された後一緒に取り付けられる2以上の壁部分からなる。
【0059】
図2a、b及びcは、半径方向の圧縮により充填することができる本発明によるバッグ(210)の概略部分平面図である。このバッグ(210)は本質的に管状であり、中空コア又は中心(230)を有する。図示した実施形態では、バッグ(210)の外部(212)及び内部(219)の壁は、バッグの外部から内部への(又は流れの方向に応じて逆の方向の)担体液体の通過を許容する溶着された対向する液体分配要素(213、214)を有する。図示した実施形態では、バッグ(210)は、バッグ(210)の壁(212、219)に対して半径方向の圧縮力をかけることができる半剛性壁(222)を有する。バッグの外側又は外部の壁(212)は、媒体を満たしたバッグ(210)の、半剛性壁(222)の半径方向の力に応答した穏やかな圧縮を可能にする刻み目(215)を有する。バッグ(210)はかかる穏やかな圧縮の下で安定であり、保存したりユーザーに輸送したりし得る(図2a)。
【0060】
床の充填は、図2b中の矢印で示されるようにバッグ(210)の壁(222)に対して半径方向の機械的圧縮を作用させることによって達成される。図2cから分かるように、バッグ(210)にかけられた半径方向の力が刻み目(215)を閉め、バッグを通して伝達され、その内部の媒体を圧縮する。
【0061】
別の実施形態では、床の穏やかな圧縮は上記流動充填方法を用いて達成される。
【0062】
図3a、b及びcは、本発明のバッグ310を用いる半径方向カラムの構成要素を示す。図3aは、円筒状の剛性コア(340)をスタンド(342)及び固定蓋(344)と共に示す。蓋344は溶離剤用の出口ポート(346)と媒体充填ポート(348)に対応する孔又はコネクターを有する。図3bは、通例半剛性プラスチックシート(351)で構成される外側の円筒状シェル(350)を示しており、このシートは図3cに示した半径方向流バッグ310の回りを包み、それを半径方向に圧縮するのに使用することができる。図示した実施形態では、シート(351)の長さはバッグ310の外周より大きくて、その結果重なり354ができ、圧縮中のシート(351)の直径の変化が可能になる。シートの襞のような他の機能的な設計も、この目的を達成するのが可能である。シェル(350)は担体液体入口(325)に対応する孔又はコネクター(352)を有する。
【0063】
図3cは本発明のバッグ(310)を示す。バッグは中空コア330がある管状の構造を有する。第1の液体分配要素(313)及び第2の液体分配要素(314)はそれぞれバッグ(310)の外部(312)及び内部(319)の壁に溶着される。媒体入口ポート(316)は、図3cに矢印で示されているように、通例スラリーの形態である媒体をバッグに満たすのに使用される。担体液体は入口325を介してバッグに入り、媒体床(図示せず)を通って流れ、出口(326、矢印参照)を介して出て行く。
【0064】
半径方向流カラム(360)は、剛性コア(340)を覆ってバッグ(310)を挿入し、バッグの外壁の周りに円筒状のシェル(350)を巻き付け、蓋(344)を所定の位置に固定することによって製造される(図3d)。バッグに入口ポート316を介して媒体スラリーを満たし、出口326又は325を介して過剰の媒体を取り出した後、入口ポート(316)をシールする。次に、バッグ内の媒体を、入口325を介してカラムに入りポート326を介して出て行く担体液体で平衡化し得る。一実施形態では、床は上記流動充填方法によって圧縮される。
【0065】
別の実施形態では、外側のシェル(350)を半径方向に圧縮してバッグ内にクロマトグラフィー媒体の充填床を形成する。半径方向の圧縮は、重なり354を引っ張ってバッグを剛性コアに対して締め付け圧縮する(図3e)といったような多くの方法で行うことができる。クランプで締め付けたり半径方向のバンドを堅く締めたりといったような他の圧縮手段も可能である。外側のシェル350が圧縮されたら、所定の位置に固定して(例えば、タイバンド370を使用して)媒体の充填床を安定化する。これで、カラムはタンパク質及び/又はペプチドのような化学物質のクロマトグラフィー分離に使用する準備ができた。分離又は精製しようとする化学物質(複数でもよい)を含有する試料を担体液体に溶解し、カラムにかける。担体液体は入口325及び第1の分配要素313を介してバッグに入り、媒体床(図示せず)に分配されて分離が起こり、第2の要素314を通り抜けて出口ポート326でカラムを出て行く。カラムは流れの方向を逆転することにより逆の方向に作動してもよいことが理解されるであろう。
【実施例】
【0066】
低温保存実験
以下に詳述する実験は、2010年8月5日に出願された「Stabilization and Storage Media and Method」と題する本出願人による同時係属中の米国特許出願第61/370878号に十分に記載されている。その開示内容はその全体が、国内法が許容する場合、援用によって、具体的に記載されているのと同様に本明細書の内容の一部をなす。
【0067】
一般に、タンパク質(例えば抗体)を溶液中に保存すると経時的に凝集を起こすことが知られている。入念に設計された緩衝液環境中で遅くて制御された凍結速度でタンパク質溶液を凍結することにより、凝集を低減することができるが、保存後の凝集体含有量は不可避的に高くなる。そこで、いろいろなゲル媒体を用いて標的のタンパク質を結合又はカプセル化することにより、代わりの保存アプローチを使用して実験を行った。
【0068】
初期二量体含有量が低いヒトポリクローナルIgGの溶液中又はゲル媒体上の保存
最初に、ヒトポリクローナルIgGの単量体画分(1%二量体)を、VIVASPIN(商標)6限外濾過ユニットを用いて121.5AU(A280nm)に濃縮し、0.2μmシリンジフィルターで濾過した。各種の実験用捕獲(capture)保存ヒドロゲル媒体、及び対照(非捕獲SEC)媒体(上記材料参照)を96ウェルフィルタープレート(MULTITRAP(商標)プレート)に分配した。ヒトポリクローナルIgGの濃縮された単量体画分を抗体試料として用いてMULTITRAP(商標)プロトコルに従った。並行して、抗体試料を、その後の−20℃の溶液中の保存のためのいろいろな「ゲル媒体」として用いた各種の緩衝液と混合した。6.7μlの抗体溶液をそれぞれ13.3μlの各緩衝液と混合した。
【0069】
試料、及びゲル媒体の平衡化/洗浄のために用いた緩衝液は使用したいろいろな媒体に典型的な吸着捕獲緩衝液であった。
・「pH5 IEX」=20mMの酢酸Na、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH5.0
・「pH9 IEX」=20mMのNa−グリシン、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH9.0
・「PBS」=10mMのリン酸Na、2.7mMのKCl、0.14MのNaCl、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH7.4
・「pH5 HIC」=25mMの酢酸Na、0.5mMのEDTA、0.75M(NH42SO4、pH5.0。
【0070】
各種のクロマトグラフィーゲル媒体を96−ウェルのMULTITRAP(商標)プレートに入れて保存した。MULTITRAP(商標)プレートを冷蔵庫内に4週間4〜8℃で保存する(プロトコルインキュベーション時間)一方、溶液中の抗体試料を6回の凍結/解凍サイクルを含めて4週間−20℃で保存した。全ての試料を三回実験したが、3つのアニオン交換ゲル媒体、CAPTO(商標)Q、Q SEPHAROSE(商標)FF及びQ SEPHAROSE(商標)XLは単一の試料として実験した。4週間のインキュベーション又は保存後、非結合抗体(フロースルー)(ゲル濾過SEC媒体SEPHADEX(商標)G−50及びSUPERDEX(商標)200)、又は結合した後溶出した抗体(ゲル濾過媒体を除く全ての媒体)を収集した。使用した溶出及びストリップ緩衝液は次の通り。
・溶出緩衝液:「3.3×PBS」=30mMのリン酸Na、8.1mMのKCl、0.42MのNaCl、pH7.4(試料及びゲル媒体の平衡化/洗浄に使用した緩衝液が「pH5 IEX」及び「pH9 IEX」であった試料)、
・溶出緩衝液:0.1MのNa−グリシン pH2.9(試料及びゲル媒体の平衡化/洗浄に使用した緩衝液が「PBS」であった試料)、
・溶出及びストリップ緩衝液:20mMのTris−HCl pH7.5(試料及びゲル媒体の平衡化/洗浄に使用した緩衝液が「pH5 HIC」であった試料)、
・ストリップ緩衝液:10mMのNaOH、1MのNaCl(試料及びゲル媒体の平衡化/洗浄に使用した緩衝液が「pH5 IEX」及び「pH5 HIC」であった試料)、
・ストリップ緩衝液:0.5Mの酢酸(試料及びゲル媒体の平衡化/洗浄に使用した緩衝液が「PBS」及び「pH9 IEX」であった試料)。
【0071】
溶出は、二段階で、最初に溶出緩衝液で、次にストリップ緩衝液で行った。後者は、通例バイオプロセシングで、溶出緩衝液で溶出しなかったあらゆる残留タンパク質を除去し、そして可能な追加の用途のためのカラムを調製するのに使用される。各々の試料の両方の溶出画分をそれぞれ分析した。溶液中、SEC対照媒体上又は結合媒体上に保存した全ての試料をSECによって分析した。結果を表1A〜1Dに示す。
【0072】
【表1】

これらのゲル媒体上に保存した全ての試料は、−20℃で溶液中に試料を保存する場合と比べて抗体二量体含有量が少なかった。出発材料は1.0%の二量体を含有し、保存用ゲル媒体としてCAPTO(商標)MMCを使用する再現の2つはこの初期二量体含有量レベルより少ない二量体を含有していた。
【0073】
【表2】

親和性ゲル媒体上に保存した試料は、−20℃で溶液中に試料を保存した場合と比べて少ない抗体二量体を含有していた。しかしながら、非捕獲SEC媒体上の保存ではより高いレベルの二量体が得られた。出発材料は1.0%の二量体を含有しており、nタンパク質A又はMABSELECT(商標)を保存用ゲル媒体として使用すると、初期二量体含有量より少ない二量体含有量であった。
【0074】
【表3】

HICゲル媒体からの全体の回収率は、おそらく吸着緩衝液中の低過ぎる伝導率(塩濃度)を使用することに起因する抗体の結合がよくないために悪い。HICゲル媒体への結合を促進するために、より高い濃度の(NH42SO4が必要であった。得られた結果は、ゲル媒体への結合が溶液中の保存と比べて保存中より少ない二量体を与えることを示し、CAPTO(商標)Phenyl高置換度(より高いリガンド濃度)媒体の場合、二量体含有量は1.0%(出発材料中のレベル)未満であった。
【0075】
【表4】

CAPTO(商標)Adhereゲル媒体上に保存した試料は、−20℃で溶液中に試料を保存した場合と比べて少ない抗体二量体含有量を有していた。二量体含有量は、出発材料で見られたと同様に1.0%未満であった。他のゲル媒体上の保存では、溶液中での保存とほぼ同じレベルの二量体タンパク質が得られた。
【0076】
高い初期二量体含有量を有するヒトポリクローナルIgGの溶液中又はゲル媒体上での保存
ポリクローナルヒトIgG(GAMMANORM(登録商標)165mg/ml)を次の平衡化/洗浄緩衝液で30mg/mlに希釈した。
・20mM酢酸Na、0.02%(w/v)Na−アジド、pH5.0
・20mM Na−グリシン、0.02%(w/v)Na−アジド、pH9.0
・10mMリン酸Na、2.7mM KCl、0.14M NaCl、0.02%(w/v)Na−アジド、pH7.4
・50mM酢酸Na、1mM EDTA、1.5M (NH42SO4、pH5.0。
【0077】
1.5Mの(NH42SO4を含有する第4の緩衝液溶液と抗体溶液を混合すると幾らかのタンパク質が沈殿した。これらの出発材料の吸光度を(清澄化した溶液で)測定した。
【0078】
【表5】

SPINTRAP(商標)カラムを40μlの次のゲル媒体(すなわち200μlの20%ゲルスラリー)で充填し、SPINTRAP(商標)プロトコルに従って平衡化した。
・CAPTO(商標)MMC混合モード媒体、20mMの酢酸Na、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH5.0
・CAPTO(商標)Sカチオン交換媒体、20mMの酢酸Na、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH5.0
・CAPTO(商標)Adhere混合モード媒体、20mMのNa−グリシン、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH9.0
・CAPTO(商標)Qアニオン交換媒体、20mMのNa−グリシン、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH9.0
・MABSELECT(商標)、親和性媒体、10mMのリン酸Na、2.7mMのKCl、0.14MのNaCl、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH7.4
・SEPHADEX(商標)G−50、対照SEC媒体、10mMのリン酸Na、2.7mMのKCl、0.14MのNaCl、0.02%(w/v)のNa−アジド、pH7.4
・CAPTO(商標)Phe hs、フェニルリガンドを含有するHIC媒体、50mMの酢酸Na、1mMのEDTA、1.5Mの(NH42SO4、pH5.0
・pH HIC 6%、pH応答性ポリマー系のHIC媒体、50mMの酢酸Na、1mMのEDTA、1.5Mの(NH42SO4、pH5.0
・pH HIC 16%、pH応答性ポリマー系のHIC媒体、50mMの酢酸Na、1mMのEDTA、1.5Mの(NH42SO4、pH5.0。
【0079】
平衡化後、40μlの試料を各々のカラムに加えた(照合緩衝液(matching buffer))。結合抗体を含有する各ゲル媒体の3つのSPINTRAP(商標)カラムをそれぞれ室温(+20℃)で、冷蔵庫(+4〜8℃)内に、及び冷凍庫(−20℃)内に保存した。並行して、各種の緩衝液を含有する溶液中の抗体の部分試料をSPINTRAP(商標)カラムと同じ温度でも保存した。
【0080】
24〜26日間のインキュベーション時間の後60μlの照合緩衝液を全てのSPINTRAP(商標)カラムに加えた。フロースルー(非結合性画分)を収集し、吸光度(A280nm)を測定した。
【0081】
各種のゲル媒体を洗浄した後、400μlの次の溶出緩衝液で溶出した。
・CAPTO(商標)MMC、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0
・CAPTO(商標)S、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0
・CAPTO(商標)Adhere、0.5Mの酢酸
・CAPTO(商標)Q、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0
・MABSELECT(商標)、0.5Mの酢酸
・SEPHADEX(商標)G−50、溶出しない、フロースルー画分を収集した
・CAPTO(商標)Phe hs、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0
・pH HIC 6%、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0
・pH HIC 16%、20mMのリン酸Na、1MのNaCl、pH7.0。
【0082】
溶出した画分の吸光度(A280nm)を測定した。溶液中に保存した全ての試料及び各種のゲル媒体からのフロースルー/溶出画分をSECにより分析した。抗体回収率と二量体含有率を表2A〜4Dにまとめて示す。
【0083】
【表6】

CAPTO(商標)S上の保存の結果は二量体含有率が大幅に低下し、抗体回収率は高い。CAPTO(商標)MMCでは、保存後の二量体含有率が溶液中の保存と比較してやや低く、低めの温度で良好な回収率である。
【0084】
【表7】

CAPTO(商標)Adhere上の保存は、溶液中の保存と比べてずっと改良された結果が得られる。回収率は非常に高く、単量体IgGの100%より高い回収率で示されるように二量体から単量体への変換が可能である。CAPTO(商標)Q上の保存の結果は、溶液中での保存と比べて二量体含有率が少ないが、回収率は80%未満であった。
【0085】
【表8】

MABSELECT(商標)上の保存は溶液中の保存と比べてずっと改良された結果を示す。回収率は非常に高く、単量体IgGの100%より高い回収率で示されるように二量体から単量体への変換が可能である。SEPHADEX(商標)G−50上での保存の結果は溶液中での保存と比べてやや低い二量体含有率を示すが、おそらく非結合特性のために全てのゲル媒体で最も高いタンパク質回収率を有する。
【0086】
【表9】

HICゲル媒体の場合、標的の沈殿に起因して比較のための出発材料がなかった。出発材料の吸光度(A280nm)は28.5AUであり、一方他の出発材料では40AUを越えていた。清澄化後のタンパク質回収率はpH HIC 6%及びpH HIC 16%ゲル媒体で良好であった。他のゲル媒体と比べて、保存後の二量体含有率は低い範囲であり、凝集の安定化又は低減に対する正の効果を示した。
【0087】
全ての保存条件に対する結果をグラフとして図4A〜Cに示す。CAPTO(商標)Adhere又はMABSELECT(商標)上の保存は、保存後非常に低いレベルの二量体又は凝集体と単量体IgGの高い回収率を示し、保存中二量体レベルを低下する媒体の明白な能力を反映している。CAPTO(商標)Adhere又はMABSELECT(商標)上の保存は、保存後非常に低いレベルの二量体又は凝集体と単量体IgGの高い回収率を示し、保存中二量体レベルを低減する媒体の明白な能力を反映している。
【0088】
GAMMANORM(登録商標)(165mg/ml)の希釈直後の初期二量体含有率は使用した緩衝液に応じて6.9〜24.6%であった。いろいろな温度で3.5週間保存後、二量体含有率は各種の溶液で少し低かった。
【0089】
緩衝液の組成、pH、塩含有率及び種類は、タンパク質濃度と比較してより速く、またより高い程度で平衡に影響を及ぼすようである。pH5.0での低塩緩衝液中のGAMMANORM(登録商標)の保存の結果は、pH7.4又はpH9.0での保存と比べて、希釈直後と3.5週間保存後のいずれも二量体含有率がずっと低い。
【0090】
温度の効果はあまり明らかではない。
【0091】
これらの実験によると、GAMMANORM(登録商標)の溶液中最良の保存条件は、20mMの酢酸Na、0.02%のNa−アジド中pH5.0、+20℃での保存のようである。
【0092】
しかしながら、二量体含有率に対する最も顕著な効果は、抗体を結合媒体上、殊にCAPTO(商標)Adhere及びMABSELECT(商標)上に保存したときに観察された。ただし、これらのゲル媒体上の保存はそれぞれpH9.0及びpH7.4で行った。この効果は非常に大きく、単量体IgGの回収率を計算したとき、その結果はCAPTO(商標)Adhere及びMABSELECT(商標)上に保存した試料で100%より高かった。しかし、総タンパク質回収率は98%(SEPHADEX(商標)G−50、非結合媒体)より高くなることはなかった。
【0093】
このように、結合媒体上に保存することは以下のような幾つかの利益を有し得る。
1.凝集に対するIgGの安定化(減速動力学)
2.IgG二量体の除去(洗練)
3.単量体形成の促進(単量体/二量体平衡の逆転)。
【0094】
低い初期二量体含有率の出発材料をゲル媒体上に保存すると、安定化及び洗練の利益が得られるであろう。高い初期二量体含有率で始めると、二量体の量の低減及び単量体の割合の上昇という利益も得られるであろう。
【0095】
非結合媒体から得られた結果では、二量体含有率が全く又は少ししか低下しない。低い初期二量体含有率で出発する第1の実験では、非結合性ゲル媒体(SUPERDEX(商標)200及びSEPHADEX(商標)G−50)上での保存の結果、溶液中での保存と比べて少し多い二量体が得られた。高い初期二量体含有率で出発すると、SEPHADEX(商標)G−50での保存では、溶液中の保存と比べて少し少ない二量体が得られた。しかしながら、全体の二量体含有率は、捕獲ゲル媒体での保存と比べて常にそれより高かった。
【0096】
当業者には理解されるように、本発明の可撓性バッグは、粒子状材料をカラムチャンバー内に導入し、その材料を充填床、膨張床、圧密化床又は流動床として流体と接触させて分離又は反応プロセスを達成する分離又は反応ユニットの調製に使用し得る。
【0097】
様々な態様及び好ましい実施形態に従って本発明を説明して来たが、本発明の範囲は単にそれに限定されるとは考えられず、また本出願人は全ての変形及び等価物も特許請求の範囲内に入ることを意図しているものと理解されたい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー媒体用の可撓性バッグであって、前記バッグは第1の液体分配要素及び第2の液体分配要素に取り付けられることによりクロマトグラフィー媒体用の区画を画成する非多孔質材料の外壁と(前記第1の液体分配要素は前記第2の液体分配要素に対向している)、媒体充填口とを含んでおり、場合により、前記外壁に取り付けられ、それぞれ第1及び第2の液体分配要素に隣接する第1及び第2のエンドピースを含んでおり、前記エンドピースは両方が担体液体用の入口又は出口を受容する開口を含んでおり、第1の液体分配要素及び/又は第2の液体分配要素が前記壁に溶着又は成型されている、前記バッグ。
【請求項2】
前記バッグが管状の構造を有し、さらに内壁を含んでおり、第1の液体分配要素が前記外壁に溶着又は成型され、第2の液体分配要素が前記内壁に溶着又は成型されている、請求項1記載のバッグ。
【請求項3】
半径方向のクロマトグラフィーに使用するための、請求項2記載のバッグ。
【請求項4】
バッグが円筒状の構造を有し、外壁に取り付けられ、それぞれ第1及び第2の分配要素に隣接する第1の及び第2のエンドピースを含み、前記両方のエンドピースが担体液体用の入口又は出口を受容するための開口を含んでいる、請求項1記載のバッグ。
【請求項5】
第1及び第2のエンドピースが外壁に溶着又は成型されている、請求項4記載のバッグ。
【請求項6】
第1及び第2のエンドピースが剛性又は半剛性材料製である、請求項4又は請求項5記載のバッグ。
【請求項7】
第1の液体分配要素及び第2の液体分配要素がフィルター、メッシュ、ネット及び焼結物からなる群から選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項8】
第1の液体分配要素及び第1のエンドピースが一体化ユニットであり、第2の液体分配要素及び第2のエンドピースが一体化ユニットである、請求項1又は請求項7記載のバッグ。
【請求項9】
軸方向のクロマトグラフィーに使用するための、請求項4乃至請求項8のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項10】
前記バッグがさらに、油圧流体用の入口を有する第2の区画を含んでいる、請求項1及び請求項4乃至請求項9のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項11】
壁がプラスチックポリマー材料から作成されている、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項12】
さらに、壁の周りに半剛性又は剛性ハウジングを含み、軸方向及び/又は半径方向の剛性を提供する、請求項4乃至請求項11のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項13】
バッグがさらに湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体を含有する、請求項1乃至請求項12のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項14】
前記湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体が無菌である、請求項13記載のバッグ。
【請求項15】
バッグが放射線及び/又はオートクレーブ処理により殺菌されている、請求項1乃至請求項14のいずれか1項記載のバッグ。
【請求項16】
クロマトグラフィーカラムを充填する方法であって、前記方法は、
a.請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載のバッグをクロマトグラフィーカラムのチャンバー中に挿入し、
b.カラムハウジングを閉鎖し、
c.クロマトグラフィー媒体の充填床又は圧密化床又は流動床を形成又は圧縮する
段階を含む方法。
【請求項17】
前記バッグが乾燥したクロマトグラフィー媒体を含有し、液体を加えて前記媒体を膨潤させてカラムチャンバーの約105〜120%の液体中膨潤体積Vsを与えることによって前記充填床を形成する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
バッグが湿潤媒体を含有し、カラムハウジングが剛性であり、バッグの軸方向の圧縮により充填床を形成又は圧縮する、請求項16記載の方法。
【請求項19】
カラムが油圧チャンバーを含んでおり、前記チャンバーに油圧流体を満たすことにより充填床を形成又は圧縮する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記油圧チャンバーが可撓性バッグである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
バッグが第2の区画を含んでおり、前記第2の区画に油圧流体を満たすことにより充填床を形成又は圧縮する、請求項18記載の方法。
【請求項22】
カラムが可動性ピストン又はアダプターを含んでおり、前記ピストン又はアダプターの軸方向の移動により充填床を形成又は圧縮する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
湿潤媒体を含有する請求項2記載のバッグをカラムチャンバー内の剛性コアを覆って配置し、バッグの半径方向の圧縮により充填床を形成又は圧縮する、請求項16記載の方法。
【請求項24】
カラムハウジングの半径方向の圧縮により力をかける、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記カラムハウジングの半径方向の圧縮を、ハウジングの外側の半径方向のバンドを締め付けることによって行う、請求項24記載の方法。
【請求項26】
湿潤媒体の体積圧縮が5〜20%である、請求項16及び請求項18乃至請求項25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
さらに、カラムを放射線で殺菌することを含む、請求項16乃至請求項26のいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
クロマトグラフィー媒体の圧密化床又は流動床を形成するためのものであり、方法がさらに、
d.化学物質又は細胞を前記圧密化床又は流動床上に負荷し、
e.保存及び/又は輸送のために、前記クロマトグラフィーカラムの前記チャンバーから前記バッグを取り出す
段階を含む、請求項16記載の方法。
【請求項29】
さらに、バッグを保存及び/又は輸送する段階を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
−20℃〜20℃の温度でバッグを保存又は輸送する、請求項29記載の方法。
【請求項31】
さらに、バッグをクロマトグラフィーカラムに戻し、前記化学物質又は細胞を前記圧密化床又は流動床から溶出する段階を含む、請求項28乃至請求項30のいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
前記化学物質がタンパク質、抗体、ペプチド、オリゴペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、オリゴ糖及び多糖からなる群から選択される、請求項28乃至請求項31のいずれか1項記載の方法。
【請求項33】
湿潤又は乾燥クロマトグラフィー媒体上に負荷された化学物質又は細胞を保存又は輸送するための、請求項13乃至請求項15のいずれか1項記載のバッグの使用。
【請求項34】
化学物質又は細胞を−20℃〜20℃の温度で保存又は輸送するための請求項33記載のバッグの使用。
【請求項35】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の可撓性バッグを含んでなるクロマトグラフィーカラム。
【請求項36】
化学物質又は細胞を分離、精製又は処理するための請求項35記載のクロマトグラフィーカラムの使用。
【請求項37】
前記化学物質がタンパク質である、請求項36記載のクロマトグラフィーカラムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515251(P2013−515251A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545152(P2012−545152)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/007830
【国際公開番号】WO2011/076386
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】