説明

クロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、およびそれを用いたウイルス用ワクチンの製造方法

【課題】高いウイルス吸着性能と高流速性能とを満足するクロマトグラフィー用充填剤、および当該クロマトグラフィー用充填剤を用いたウイルス用ワクチンの製造方法の提供。
【解決手段】移動相を純水とし、標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量が6000Da以下であり、平均粒子径が30〜200μmの範囲である多孔性粒子に、硫酸化多糖が結合しているクロマトグラフィー用充填剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、およびそれを用いたウイルス用ワクチンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の動物、昆虫細胞や微生物を宿主として製造されるバイオ製剤の伸張が近年著しい。バイオ製剤の生産性は、大容量発酵、高力価発酵により向上しており、それに伴い精製工程も効率化が求められている。特に、クロマトグラフィーを用いたバイオ製剤の製造は、細胞培養法による製造の精製プロセスとして注目されており、精製に使用されるクロマトグラフィー用充填剤には、コスト削減につながる高流速化や高吸着化が望まれている。
【0003】
ウイルス疾病予防に対するワクチンの製造分野においても、従来法に代わる新しい製造法が検討されている。例えば、インフルエンザワクチンの製造分野では、従来の鶏卵法に比べ短期に製品提供ができる利点をもつ細胞培養法が鋭意検討されている。このようなウイルス培養のプロセスの変更に伴い、精製プロセスについても新しい検討が行われている。特に、クロマトグラフィー法は、高純度の製剤を簡便に製造できる手法として注目されている。
例えば、非特許文献1(Biotechnology and Bioengineering 96 (2006)、932-944)は、MDCK細胞培養由来のインフルエンザウイルスの陰イオン交換クロマトグラフィーを用いた精製について報告している。非特許文献2(J. Biotechnology 13 (2007)、309-317)は、レクチンのアフィニティー特性を利用したMDCK細胞培養由来のインフルエンザウイルスのクロマトグラフィーによる吸着について報告している。また、特許文献1(特表平11−51051号公報)は、Vero細胞由来の日本脳炎ウイルスクロマトグラフィー法による工業的製造法の例を開示している。
【0004】
ウイルスの吸着や精製の分野において、硫酸化多糖を利用する試みが鋭意検討されている。例えば、特許文献2(特開昭61−47186号公報)ではインフルエンザウイルスの精製に、特許文献3(特開昭61−47185号公報)では日本脳炎ウイルスの精製に、クロロスルホン酸を用いてセルロース粒子を硫酸エステル化(以下「硫酸化」と言うことがある)した硫酸化セルロースをクロマトグラフィー用ゲルとして利用することが開示されている。
このような硫酸化セルロースは、特許文献4(欧州特許出願公開第1808697号パンフレット)においてもクロマトグラフィー用充填剤として、細胞培養由来のインフルエンザウイルス粒子の濃縮に利用されている。この文献においては、排除限界分子量が2000〜4000Daの細孔性をもつセルロース粒子として硫酸エステル基を活性基にもつチッソ社製セルファインサルフェートが用いられている。
さらに、特許文献5(国際公開第2008−125361号パンフレット)では、セルロース膜の一部をクロロスルホン酸にて硫酸エステル化した膜を用いて、細胞培養由来のインフルエンザウイルス粒子を精製した例が開示されている。また、特許文献6(特表平9−503123号公報)は、硫酸化多糖の硫酸基導入量が1gあたり6μモル程度に制御された、エンベロープ型ウイルスの吸着に好適なゲルの製造法について開示している。
【0005】
また、粒子の表面に多糖を担持させることによりウイルス吸着に好適な材料の開発も進められている。例えば、特許文献7(特開平7−289891号公報)では、デキストラン硫酸を多孔性のポリプロピレン膜に結合させることで、HIVを好適に吸着する材料の例が開示されている。
また、特許文献8(米国特許第6537793号公報)では、アガロース粒子に柔軟なデキストランアームを付与し、さらにイオン交換基を導入したクロマトグラフィー用充填剤によるアデノウイルスの分離例が開示されている。
また、特許文献9(国際公開第2008−039136号公報)においても、硫酸化されたデキストラン繊維をアガロース粒子に付与させたインフルエンザウイルス精製用のクロマトグラフィー用充填剤の開発が報告されている。さらに、該充填剤を用いると、ワクチンの製剤化の際に問題となる宿主細胞由来の核酸とインフルエンザウイルス用ウイルスの分離性を高めることできるとしている。
さらに、特許文献10(特開2001−190273号報)においては、ポリスチレン粒子に水不溶性硫酸化多糖を結合させたウイルス濃縮用粒子が報告されている。
【0006】
上記の引用例のように、硫酸化多糖、特に硫酸化セルロースはHIVやインフルエンザウイルスなどのエンベロップ保有型ウイルスの精製、濃縮分野において利用価値が高い。例えば、クロロスルホン酸などの適当な硫酸化試薬を用いてセルロース粒子に硫酸を導入して得られる硫酸化セルロース粒子は、チッソ株式会社から商標名セルファインサルフェートとして販売されている。このセルファインサルフェートはクロマトグラフィー用充填剤として有用であり、参考文献3において種々のウイルスへの吸着性能が評価されており、また、実際にインフルエンザウイルスの精製分野で実用化されている。
【0007】
しかしながら、セルロース粒子への直接的な硫酸基の導入は、硫酸基による親水化のためにセルロース粒子の軟化を伴うことから、クロマトグラフィーにおいて最も重要な特性の1つである流速特性の低下をもたらす。従って、硫酸基の導入については上限があった。
また、特許文献5の比較例でも示されているように、インフルエンザウイルスの株によっては十分な吸着能力が得られない可能性が指摘されている。インフルエンザウイルスはH型、N型の違いとその組合せにより多種多様なウイルス株が存在する。したがって、インフルエンザワクチンの製造においては、ウイルスの培養状態が株毎に異なり、ワクチンの精製プロセスや条件も株毎に検討する必要に迫られると予想される。ウイルス吸着性能が改善されたクロマトグラフィー用充填剤であれば一定レベルの吸着を担保できることから、個別のプロセス検討といった煩雑性の低減につながることが予想される。
さらに、近年、従来の発育鶏卵にかわる新しい培養細胞を用いたワクチン製造方法が実施されており、ワクチンメーカーからは、宿主細胞由来のタンパク質や核酸を除去した、より純度の高い目的物の取得が望まれている。このように、ワクチン製造に利用されるクロマトグラフィー用充填剤についても、より高い選択性が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11−51051号公報
【特許文献2】特開昭61−47186号公報
【特許文献3】特開昭61−47185号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第1808697号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008−125361号パンフレット
【特許文献6】特表平9−503123号公報
【特許文献7】特開平7−289891号公報
【特許文献8】米国特許第6537793号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2008−039136号パンフレット
【特許文献10】特開2001−190273号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Biotechnology and Bioengineering 96 (2006)、932-944
【非特許文献2】J. Biotechnology 13 (2007)、309-317
【非特許文献3】Bio/technology11(1993)、173-178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、硫酸エステル基をリガントとし、吸着性能や流速性能が改善されたウイルス吸着用クロマトグラフィー用充填剤を提供することである。本発明のもう一つの目的は、本発明のクロマトグラフィー用充填剤を用いたウイルス用ワクチン、特にインフルエンザウイルス用ワクチンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記従来技術の課題について鋭意研究を重ねた。その結果、移動相を純水とし、標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量が6000Da以下であり、平均粒子径が30〜200μmの範囲である多孔性粒子に、硫酸化多糖を結合させることにより、吸着性能や流速性能が改善されたクロマトグラフィー用充填剤が得られることを見出した。また、このクロマトグラフィー用充填剤を用いてウイルス粒子を分離精製する工程を含むウイルス用ワクチンの製造方法であれば、宿主由来の核酸(DNA)等の不純物の、クロマトグラフィー用充填剤への吸着を低減させることが可能となり、非常に効率よくインフルエンザウイルス用ワクチンが得られることを知見した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示したとおりのクロマトグラフィー用充填剤、その製造方法、およびそれを用いたウイルス用ワクチンの製造方法等を提供するものである。
【0013】
本発明は以下の構成を有する。
[1]移動相を純水とし、標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量が6000Da以下であり、平均粒子径が30〜200μmの範囲である多孔性粒子に、硫酸化多糖が結合しているクロマトグラフィー用充填剤。
[2]多孔性粒子と硫酸化多糖が2以上の官能基を有する架橋剤により架橋されている、前記第1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[3]多孔性粒子が40〜120μmの範囲の平均粒子径を有する、前記第1項または第2項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[4]多孔性粒子がセルロース粒子である、前記第1項〜第3項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[5]硫酸化多糖の極限粘度が0.21〜0.90dL/gの範囲である、前記第1項〜第4項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[6]硫酸化多糖が硫酸化セルロース、硫酸化デキストラン、および硫酸化プルランから選ばれた1種以上である、前記第1項〜第5項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
「7」2以上の官能基を有する架橋剤が少なくとも1つ以上のグリシジル基を有する2価以上の架橋剤である、前記第2項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[8]少なくとも1つ以上のグリシジル基を有する2価以上の架橋剤がエピクロロヒドリンである、前記第7項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[9]硫黄含有割合が0.2〜6重量%の範囲である、前記第1項〜第8項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤
[10]下記工程を有することを特徴とする前記第2項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
工程1:多孔性粒子と多糖を2以上の官能基を有する架橋剤により架橋し多糖結合多孔性粒子を得る。
工程2:工程1で得られた多糖結合多孔性粒子を硫酸化試薬と反応させて多糖を硫酸化する。
[11]多孔性粒子が40〜120μmの範囲の平均粒子径を有する、前記第10項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
[12]多孔性粒子がセルロース粒子である、前記第10項または第11項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
[13]多糖が水溶性多糖であり、その極限粘度が0.21〜0.90dL/gの範囲である、前記第10項〜第12項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
[14]多糖がデキストランおよびプルランから選ばれた1種以上である、前記第10項〜第13項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
[15]下記一般式(1)で表される前記第1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
X−O−CH−C(OH)H−CH−NH−CH−Z 式(1)
(式(1)において、Xは平均粒子径が40〜120μmの範囲であるセルロース粒子であり、Xに結合しているOはセルロースの水酸基由来の酸素であり、Zは硫酸化セルロースであり、Zに結合しているCは硫酸化セルロース還元末端のアルデヒド由来の炭素である。)
[16]硫酸化セルロースが、その硫黄含有割合が15重量%以上であり、1重量%水溶液の粘度が15〜300MPa/sec・20℃の範囲である、前記第15項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
[17]前記第1項〜第9項、前記第15項および前記第16項の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤を用いてウイルス粒子を分離精製することを特徴とする、ウイルス用ワクチンの製造方法。
[18]DNAのクロマトグラフィー用充填剤への吸着が抑制された、前記第17項に記載のウイルス用ワクチンの製造方法。
[19]ウイルス粒子がインフルエンザウイルスである、前記第17項または第18項に記載のウイルス用ワクチンの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高いウイルス吸着性能と高流速性能とを満足するクロマトグラフィー用充填剤が得られる。さらには、本発明のクロマトグラフィー用充填剤を用いてウイルス粒子を分離精製する工程を含む、ウイルス用ワクチンの製造方法であれば、非常に効率よくウイルス用ワクチンが得られ、インフルエンザウイルス用ワクチンにおいては特に高い分離精製効率が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ワクチンの製造プロセスを示す図である。
【図2】図2は、標準ポリエチレングリコールと市販セルロース粒子GH25とのKavの関係を示す図である。
【図3】図3は、結合反応2Aの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のクロマトグラフィー用充填剤は、硫酸化多糖と所定の粒径と細孔径をもつ多孔性粒子とが結合した複合体である。
硫酸化多糖は、多孔性粒子の何れの部位に結合していてもよいが、より高いウイルス分離精製能を求める場合、多孔性粒子の細孔内ではなく、粒子表面において結合していることが好ましい。
多孔性粒子における細孔径や硫酸化多糖の分子量や極限粘度の選択によって硫酸化多糖を多孔性粒子表面に効率よく配置できる。その結果、ウイルス粒子の結合に必要な硫酸基を粒子表面に効率よく導入することができる。本発明者らは、このようにしてリガンドとなる硫酸エステル基の密度を高めた結果、インフルエンザウイルスに代表されるウイルスを好適に吸着することができると考えている。
すなわち、本発明においては、多孔性粒子とその排除限界以上の分子量または極限粘度をもつ硫酸化多糖とを組み合わせることが好ましく、さらには、細孔の小さい多孔性粒子と分子量または極限粘度の大きい硫酸化多糖を組み合わせることが一層好ましい。また、硫酸基の導入量の制御によってもウイルス、特にインフルエンザウイルスの吸着性能を改善することができる。また、宿主由来の核酸やタンパク質などの不純物の影響を受けにくくするためには、リガンドである硫酸基の密度を高めることが効果的である。
【0017】
本発明において多孔性粒子と硫酸化多糖との結合反応は特に限定されるものではない。まず、硫酸化セルロース(硫酸化多糖)の還元末端を利用してセルロース粒子(多孔性粒子)に結合させる場合(以下「結合反応1」と言うことがある)を例にとって以下に詳述する。
硫酸化セルロースのセルロース粒子への付加反応では、セルロース粒子にアミノ基を導入した後、中性もしくは弱アルカリ性の水溶液中で硫酸化セルロースと混合し、シッフ塩基を形成させ、ついでジメチルアミンボランなどの還元剤で還元させる方法が好適である。
【0018】
セルロース粒子へのアミノ基の導入は、例えば、セルロース粒子をエピクロロヒドリンなどとアルカリ条件下で反応させた後、これとアンモニア水を反応させることで可能である。これらの方法は、Hermasonら著のImmobilized Affinity Ligand Techniques (Academic Press Inc.1992年) などに記載されている。
【0019】
これらの方法によって得られる、本発明において特に好ましいクロマトグラフィー用充填剤の一態様は、下記一般式(1)で表されるものである。

X−O−CH−C(OH)H−CH−NH−CH−Z 式(1)

式(1)において、Xは平均粒子径が40〜120μmの範囲であるセルロース粒子であり、Xに結合しているOはセルロースの水酸基由来の酸素であり、Zは硫酸化セルロースであり、Zに結合しているCは硫酸化セルロース還元末端のアルデヒド由来の炭素である。
【0020】
Xと結合しているO(酸素)は、下記反応式(1)の通りエピクロロヒドリンの付加反応を経てアンモニア水によってアミノ化される。その後、アミノ基と硫酸化セルロースの還元末端Xと反応させ、シッフ塩基を形成させた後、例えば、ジメチルアミノボランなどの還元剤で安定化することができる。


反応式(1)

一般式(1)で表されるクロマトグラフィー用充填剤は、ウイルス粒子と結合できる性質を有する硫酸化セルロースが、セルロース粒子の表面から還元末端を基点としブラシ状に結合していると推定できる。このように結合した硫酸化セルロース繊維は末端固定のため、自由度が高く、ウイルス粒子、特にインフルエンザウイルス粒子との結合(認識)に優れた効果が期待できる。
【0021】
次いで、本発明において好ましいもう一つの結合反応について説明する。それは2以上の官能基を有する架橋剤による多孔性粒子と硫酸化多糖との結合である(以下「結合反応2」と言うことがある)。この結合は、多孔性粒子と多糖とを結合させ複合体とした後、この複合体を硫酸化剤を用いて硫酸化すること(以下「結合反応2A」と言うことがある)により達成されてもよく、多孔性粒子と硫酸化多糖を結合させること(以下「結合反応2B」と言うことがある)により達成されてもよい。本発明においては硫酸化多糖が高価なものであるため、より安価な製造が期待できることから結合反応2Aが好ましい。さらに、結合反応2Aにおいては、担体となる多孔性粒子が硫酸化される粒子である場合、多孔性粒子にも硫酸基を導入できる。本発明においては、結合反応2Bに較べ硫酸エステル基導入の制御が容易できることからも結合反応2Aが好ましい。
【0022】
なお、多孔性粒子と多糖あるいは硫酸化多糖との結合においては、グリシジル基の反応性を利用するため、溶媒中、アルカリの存在下において行うことが好ましい。特に、多糖が水溶性である場合は、アルカリの存在下において行うことが好ましい。
【0023】
以下結合反応2Aについて、多糖が水溶性多糖であり多孔性粒子がセルロースである場合を例に詳しく説明する。架橋剤は2以上の官能基を有する架橋剤であれば何れの架橋剤を用いてもよく、アルカリ水溶液中でセルロース粒子に活性基を導入し、その後導入された活性基と水溶性多糖を反応させることで水溶性多糖結合セルロース粒子(複合体)を得ることができる。アルカリとしては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが安価で使いやすく、残留しにくい点において好適であり、特に、水酸化ナトリウムが好適である。その際溶媒は水を用いることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる架橋剤は、多官能のものであれば何れの架橋剤であっても用いることができるが、セルロースとの結合が化学的に安定である点、あるいは非特異的吸着防止の観点から、窒素や硫黄などのヘテロ原子をもたないものや、疎水性を示す2重結合や中長鎖アルキル基などを持たないものが好ましい。このような架橋剤の例として、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどのハロゲンとグリシジル基をもつ多官能型架橋剤や、アリルグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル系架橋剤があげられる。そのなかでもエピクロロヒドリンは分子量も小さく、安価で、反応性が高いことから特に好ましく用いることができる。なお、反応効率を上げるために反応混合物中に硫酸ナトリウムなどの無機塩を共存させてもよい。
【0025】
また、特開昭60−77769号公報には、多孔性セルロース粒子に水溶性多糖を結合させる方法として、架橋セルロース粒子にエピクロロヒドリンを反応させてエポキシ基を導入し、これにデキストランやプルランなどの多糖を反応させることにより、セルロース粒子にそれら多糖を結合させることが開示されており、本発明においてはこの方法を採用することができる。
【0026】
上記のようにして得られた水溶性多糖結合セルロース粒子の多糖への硫酸エステル基の付与は、クロロスルホン酸−ピリジン錯体、無水硫酸−ジメチルホルムアミド錯体などの硫酸化試薬と水溶性多糖結合セルロース粒子とを反応させることにより達成される。具体的には、米国特許第4,480,091号パンフレットや特開2006−274245号公報などに開示の通常知られた方法、即ち、ジメチルホルムアミドやピリジンなどの溶媒中で無水硫酸やクロルスルホン酸を反応させ錯体を形成させて、水溶性多糖結合セルロース粒子を硫酸化させる方法が利用できる。
【0027】
硫酸化試薬の使用割合は、目的とする粒子の硫黄含有率や反応条件に従って異なるが、硫酸化試薬の比率(重量)は、セルロース粒子を100とした場合、10〜100の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50の範囲である。反応は、溶媒、硫酸化試薬の種類によっても異なるが、不活性ガス中で、0〜100℃、好ましくは20〜85℃にて、0.5〜24時間である。実施例において用いたクロロスルホン酸−ピリジン錯体を硫酸化試薬に用いる場合は、反応性が高いため反応時間は0.5〜10時間の範囲であることが好ましい。
【0028】
反応終了後、ろ過等により反応液と硫酸基が導入された水溶性多糖結合セルロース粒子を分けることができる。その際、一旦、NaOHなどによる中和処理を経由させても構わない。さらに、硫酸基が導入された水溶性多糖結合セルロース粒子分を純水にて複数回洗浄することで本発明に使用するクロマトグラフィー用充填剤を得ることができる。
【0029】
セルロース粒子としてチッソ株式会社製セルファイン(CELLUFINE)GH25(登録商標)を用いた場合を例とし、結合反応2Aについてさらに詳しく説明する(図3)
水溶性多糖のGH25への結合には、GH25にエポキシ基を導入した後、一旦洗浄回収し、再びアルカリ性の水溶液中で水溶性多糖と混合させる方法が簡便で好適である。この際、予め水溶性多糖は水に溶解したものを調整しておくと操作性と均一な反応の観点から好ましい。
【0030】
GH25へのエポキシ基の導入は、GH25とエピクロロヒドリンをアルカリ条件下で反応させることで可能である。これらの方法は、Hermasonら著のImmobilized Affinity Ligand Techniques のp181-183、(Academic Press Inc.1992年) などに記載されている。
【0031】
GH25への結合量は、使用する水溶性多糖の仕込み濃度とエポキシ基の導入量を、それぞれにあるいは同時に調整することにより制御することができる。GH25は15〜20重量%に溶解したものを用いることが好ましく、エポキシ基の導入量はGH25の乾燥重量あたり100〜300μmol/乾燥gの範囲であることが好ましい。エポキシ基の導入量はエピクロロヒドリンの反応系への仕込み量により制御できる。上記の導入量とするためには、例えば、反応温度30℃、アルカリ濃度3重量%の条件の下、GH25とエピクロロヒドリンの仕込み比を3〜10mol/molの範囲にすればよい。
【0032】
上記のようにして得られた水溶性多糖が表面に結合したGH25への硫酸基の導入は、例えば、特開昭61−47185号公報や特開平7−196702などに記載の方法に従って実施することができる。特に、ピリジン中で硫酸化剤としてクロロスルホン酸を用いる反応は、クロロスルホン酸の仕込み比率の調製により硫酸基導入量を容易に変えることができ好ましい。
硫酸基の多孔性セルロース粒子への導入量は、培養条件や目的精製物に対する親和度や電荷量に応じて適宜選択すればよい。インフルエンザウイルスの吸着・精製の場合、例えば、得られるクロマトグラフィー用充填剤に対して0.2〜6重量%の硫黄含量割合が好適である。
【0033】
本発明のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法は、前述の結合反応1および結合反応2に限定されるものではないが、大別して、多孔性粒子に結合させる多糖が、1)硫酸化多糖である場合(結合反応1および結合反応2B、以下この2つを併せて「製造方法I」と言うことがある)と、2)先ず多糖を結合させその後硫酸化する場合(結合反応2A、以下「製造方法II」と言うことがある)とがある。
【0034】
本発明に用いる多孔性粒子は、クロマトグラフィー用充填剤として実績のあるものであれば種類を問わず、例えば、シリカゲル、メタクリルゲル、アガロースゲル、セルロースゲルなどが利用できる。特に、ウイルス精製のクロマトグラフィー用充填剤として実績があり、さらに、アルカリ耐性などの点で化学的に安定性の高いセルロースを造粒して得られたセルロース粒子は本発明の多孔性粒子に好適である。
【0035】
本発明に用いる多孔性粒子の平均粒子径は30〜200μmの範囲であり、好ましくは40〜120μmの範囲であり、より好ましくは50〜100μmの範囲である。
粒子径は、例えば、JIS標準ふるいなどを用いての分級操作により所望の範囲に調整することができる。特に、目開き45μm(線径0.03mm)と目開き106μm(線径0.075mm)の篩を用いて分級操作を行うことが好ましい。
多孔性粒子の平均粒子径は、走査電子顕微鏡又は光学顕微鏡を用いて撮影した任意の200個の粒子についてその長径を測定し、その平均を算出したものである。
【0036】
なお、本発明に用いる多孔性粒子の真球度(短径/長径)は特に制限されないが、0.8〜1.0の球状の形態を有するものが好ましい。
【0037】
本発明に好適に用いられる多孔性セルロース粒子の製造方法は特に限定されず、例えば、特公昭55−39565号公報や特公昭55−40618号公報などに開示の酢酸セルロースからセルロース粒子を製造する方法、あるいは特公昭63−62252号公報などに開示のチオシアン酸カルシウム塩を用いた溶液からセルロースを造粒する方法などを挙げることができる。
さらに、セルロース粒子の物理的安定性を高めるため、架橋剤を用いて粒子を構成するセルロースの間を架橋することが好ましい。架橋方法は、通常、セルロースの架橋に用いられる方法であれば特に限定されない。架橋剤としては、エピクロロヒドリンなど多官能化合物を例示することができる。
【0038】
本発明に用いる多孔性粒子は、移動相として純水を使用し、標準ポリエチレングリコールを用いて測定した排除限界分子量が6000Da以下である。排除限界分子量は、多孔性粒子に開いている穴(以下「細孔」と言うことがある。)の大きさを表す指標である。6000Da以下である理由について確定的なことは言えないものの、この値以下であれば、リガンドとして結合させる硫酸化多糖が、多孔性粒子内に進入し難く、多孔性粒子表面に確実に留まることができるためであると考えている。
【0039】
排除限界分子量は、より詳しくは、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて細孔内に侵入できない分子のうち最も小さい分子量を言い、種々の分子量の化合物を用いて溶出体積との関係を調べることにより測定することができる。排除限界分子量の測定方法として、具体的には、L.Fischer著生物化学実験法2「ゲルクロマトグラフィー」第1版、7−17頁(東京化学同人)などに記載されている方法を挙げることができる。本発明における具体的な測定方法は、実施例にて示したとおりである。
なお、本発明において、排除限界分子量の測定に使用するポリエチレングリコールは、例えば、POLYMERLABORATORIES社製の標準ポリエチレングリコール、PEG−19000、PEG−8650、PEG−4120、PEG−590、PEG−220など(何れも商品名)が好ましく用いられる。
【0040】
本発明において多孔性粒子として好ましく用いられるセルロース粒子は、市販品を用いることができる。例えば、前述のチッソ社製非架橋球状セルファインGH25(商品名)は、上記排除限界分子量に関する要件、更には平均粒子径に関する要件を満たしており、特に好ましく本発明に使用することができる。さらに、該GH−25を架橋反応により硬化させ、上記要件を満たすようにしてもかまわない。
【0041】
本発明において排除限界分子量は、多孔性粒子が本来的に有するものでなくても構わない。例えば、上記特公昭63−62252号公報に記載された方法で得られる細孔径の大きい(排除限界分子量の大きい)セルロース粒子に、エピクロロヒドリンなどの多価架橋剤を介してデキストランやプルランなどの水溶性高分子を付加することにより、細孔内をゲル状化させ、その結果として本発明で特定する排除限界分子量の値を示すに至ったものでも本発明に使用することができる。
【0042】
なお、前述の製造方法IIの場合であって、多孔性粒子が硫酸化試薬と反応するものである場合には、多孔性粒子も多糖と共に硫酸化され得る。また、製造方法Iの場合であっても、硫酸化多糖との結合反応に供する多孔性粒子は硫酸化された多孔性粒子であってもよい。本発明において硫酸化された多孔性粒子は、硫酸化されたセルロースやアガロース粒子であることが好ましい。
【0043】
硫酸化多糖は、多糖の水酸基を硫酸化したものであり、多糖の種類や硫酸化の方法は特に限定されるものではない。
製造方法Iに使用する硫酸化多糖は還元末端を持ち、所定の粘度に調製可能なものであれば限定されるものではなく、セルロース、デキストラン、プルラン、ジェラン、カードランなどを硫酸化することで入手できる。特に、粘度調整が容易で安価なデキストランやセルロースを硫酸化したものが好ましい。
製造方法IIに使用する多糖は、安価で、所定の粘度に調製できるものであれば種類は問わないが、水溶性の高いものが安価で安全な水溶媒を利用できる点でさらに好ましく、これに従えばデキストランやプルランが特に好ましい。
さらに、製造方法Iのうち、結合反応2Bに使用することができる硫酸化多糖は硫酸化されていればその多糖の種類を問わない。安価に調達できる点で、特に、デキストラン、プルランおよびセルロースを硫酸化したものが好ましい。
また、セルロースの起源は限定されるものではなく、綿花やパルプや酢酸菌発酵由来などの何れのセルロースであっても、本発明に使用することができる。デキストランは乳酸菌醗酵由来のものなどが使用でき、プルランは黒色酵母由来のものなどが使用できる。さらに、多糖の精製度を高めたものや、低分子化するため硫酸などの酸加水分解をして用いても構わない。
【0044】
多糖の硫酸化には、例えば、米国特許第4,480,091号パンフレットや特開2006−274245号公報などに開示の通常知られた方法、即ち、ジメチルホルムアミドやピリジンなどの溶媒中で硫酸化剤にクロロスルホン酸を作用させる方法が利用できる。
【0045】
特に、低粘度型の硫酸化セルロースの合成には、特開2006−274245号公報、段落番号0026〜0028に記載された方法、即ち、セルロースをピリジン、ジメチルスルホキシド、あるいはジメチルホルムアミド等の溶媒で膨潤させ、硫酸化剤としてクロルスルホン酸、ピペリジン−N−硫酸、無水硫酸−ジメチルホルムアミド錯体、三酸化硫黄−ピリジン錯体、三酸化硫黄−トリメチルアミン錯体、あるいは硫酸−トリメチルアミン複合体等を滴下する方法が好ましい。
【0046】
その際の硫酸化剤の使用量は、目的とする硫酸化多糖の硫酸化率(または硫黄含有率)及び反応条件に従って異なるが、多糖の水酸基1に対し1.2〜3当量の割合で用いるのが適当である。反応は、溶媒、硫酸化剤の種類によっても異なるが、不活性ガス中で、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜85℃にて、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは0.5〜10時間行う。
【0047】
反応後、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、あるいはアセトン等を反応液に加え、上記反応により生成した硫酸化多糖を沈殿させる。または、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、あるいはアセトン等の中に反応液を滴下し、当該硫酸化多糖を沈殿させてもよい。
はたまた、反応液に蒸留水を加えて反応を停止し、次いで、水酸化ナトリウム等のアルカリで中和し、これをろ過または遠心分離し、固形分を蒸留水に溶解し、この溶解液にエタノール、イソプロピルアルコール、あるいはアセトン等を加えて、当該硫酸化多糖を沈殿させてもよく、前述の溶解液をエタノール、イソプロピルアルコール、あるいはアセトン等の中に滴下し、当該硫酸化多糖を沈殿させてもよい。
前述のようにして沈殿させた硫酸化多糖を回収し、乾燥することによって本発明に使用する硫酸化多糖を得ることができる。
【0048】
硫酸化多糖は、上記のような方法により製造してもよく、あるいは、市販品を使用してもよい。例えば、硫酸化セルロースの市販品として、関東化学社より販売されているアクロス社製セルロースサルフェート(商品名、高粘度型)や和光純薬社より販売されているデキストラン硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0049】
前述のように、硫酸基の多孔性粒子表面への効率的な導入には、多孔性粒子の細孔径、および多糖あるいは硫酸化多糖の分子量、または分子量に依存する粘度や極限粘度の影響を受ける。本願発明に必須の多孔性粒子は、移動相を純水とし、標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量が6000Da以下のものである。この多孔性粒子に好ましい多糖または硫酸化多糖は、その分子量が多孔性粒子の排除限界分子量以上のものであることが好ましい。結合反応1に用いる硫酸化多糖の粘度(硫酸化多糖を1重量%水溶液とした際の粘度)は特に限定されるものではないが、硫酸化多糖が硫酸化セルロースである場合には、15〜300Mpa/sec・20℃の範囲であることが好ましい。また、結合反応2に用いる多糖あるいは硫酸化多糖における粘度も特に限定されるものではないが、その極限粘度が0.21〜0.90dL/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.40〜0.90dL/gの範囲である。粘度(硫酸化多糖を1重量%水溶液とした際の粘度)または極限粘度がこの範囲であれば、多糖または硫酸化多糖を多孔性粒子表面に効率よく配置でき、その結果、ウイルス粒子の結合に必要な硫酸エステル基を粒子表面に効率よく導入することができる。
【0050】
結合反応1に用いる硫酸化多糖の粘度は、JIS Z 8803「液体の粘度−測定方法」単一円筒型回転粘度計の方法に準じて実施することができる。純水で硫酸化多糖の1重量%水溶液を調整し、この水溶液の粘度を、20℃にてB型粘度計(東機産業社)の円盤に働く液体の粘性抵抗トルクを測ることによって求めることが可能である。
また、結合反応2に用いる多糖および硫酸化多糖の極限粘度は、日本薬局方14版に収載された一般測定法における粘度測定法、第1法「毛細管粘度計法」にしたがって、数個の異なる濃度の高分子溶液の粘度を求めて粘度の濃度依存性を測定し、得られた直線の濃度を0に外挿することにより求めることができる。本発明において極限粘度は、この日本薬局方14版に収載された一般測定法における粘度測定法、第1法「毛細管粘度計法」で求めた値である。
【0051】
なお、デキストランの極限粘度は、重量平均分子量と下記の関係式を満たすことが知られていることから、デキストランの極限粘度を、重量平均分子量から求めることもできる。
極限粘度(η)=9×10−4×重量平均分子量(Mw)0.5
【0052】
重量平均分子量を目安にする場合、本発明に使用する多糖または硫酸化多糖の重量平均分子量は、70kDa以上がより好ましく、150kDa以上がさらに好ましい。また、多糖または硫酸化多糖の重量平均分子量は、500kDa以下がより好ましい。
【0053】
本発明において多孔性粒子に結合される硫酸化多糖の硫黄含有割合は特に限定されるものではない。前述の製造方法Iの場合においては、結合法が安価なアルカリ水系のために硫酸化多糖も水溶性が高いほど結合が容易となる。セルロースなどの水に溶けにくい多糖を用いる場合、水に易溶化させるには15重量%以上の硫酸化が必要である。また、多糖の水酸基に導入された硫酸基は本発明のクロマトグラフィー用充填剤のリガンドとして機能することから、リガンド密度をあげることで効果的にウイルス粒子などの目的物質を吸着することができる。さらに、リガンドである硫酸エステル基を増やすことで、逆の負の電荷をもつ宿主由来の核酸の吸着を電気的な反発により低減させる効果も期待される。多糖を構成する単糖一つあたりに1分子の硫酸基が導入されていることが好ましい。従って、結合反応の操作性と性能の観点から、当該硫黄含有割合は12重量%以上であることが好ましく、より好ましくは15重量%以上である。この場合、多孔性粒子に結合させた時の、即ち、クロマトグラフィー用充填剤とした時の当該硫黄含有割合は、本発明のクロマトグラフィー用充填剤に対して0.2〜6重量%範囲であることが、吸着性能の発揮の点で好ましい。
製造方法II場合においては、硫酸基を高導入していくことは、前述のクロマトグラフィー用充填剤における吸着性能の点で好ましいが、多孔性粒子が硫酸化されるものである場合、硫酸基のあまりの高導入化は充填剤の軟化をもたらす。実用的な、流速性能を維持する必要があることから、当該硫黄含有割合は本発明のクロマトグラフィー用充填剤に対して0.2〜6重量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
硫酸化多糖中の硫黄含有割合は、イオンクロマトグラフィー法により求めることができる。具体的な測定条件等は、後述の実施例に記載したとおりである。
【0055】
本発明において硫酸化多糖は、塩の形態であってもよい。特に、硫酸化セルロースの場合を例に取れば、保存安定性が高い点、製造工程上安価にできる点で、ナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。
【0056】
本発明のクロマトグラフィー用充填剤は、具体的には上記の製造方法Iあるいは製造方法IIにより得ることができるものの、硫酸化多糖の多孔性粒子への結合率は比較的低くさらに硫酸化多糖は高価であることから、製造方法Iに較べ製造方法IIの方が安価にできる。さらに、製造方法IIでは多孔性粒子が多糖の場合、粒子側にも硫酸エステル基を導入することができることから、リガンドの分布を広くあるいは密にしたクロマトグラフィー用充填剤をより容易に得ることができる。
製造方法IIの具体的態様は特に限定されるものではないが、本発明においては、下記の2工程を有するものであることが好ましい。
工程1:多孔性粒子と多糖を2以上の官能基を有する架橋剤により架橋し、
多糖結合多孔性粒子を得る。
工程2:工程1で得られた多糖結合性多孔性粒子を硫酸化試薬と反応させて
多糖を硫酸化する。
【0057】
本発明のクロマトグラフィー用充填剤は硫酸化多糖を含むためインフルエンザウイルスやHIV、日本脳炎ウイルス、肝炎ウイルスなどエンベロップを有すウイルスの吸着、回収に好適に利用することができる。
【0058】
本発明のクロマトグラフィー用充填剤のインフルエンザウイルスに対する吸着性能は、例えば、特開昭61−47168号公報や欧州特許出願公開第1808697号パンフレットに記載の方法で評価できる。評価に用いるインフルエンザウイルスは、A、B型、発育鶏卵由来、MDCK細胞などの培養細胞由来のインフルエンザウイルスが利用でき、利用されるインフルエンザウイルスはホルマリンやβプロピオンラクトンを用いた不活化処理の有無を問わない。但し、精製度や回収度の改善のためには、インフルエンザウイルス溶液をフィルトレーションや除核酸処理などの前処理をすることが好ましい。
特に宿主細胞由来の核酸のワクチン製剤からの除去は重要である。一般に核酸はその構造により負電荷を帯びている。よって、本発明のクロマトグラフィー用充填剤のリガンドである硫酸基と電気的に反発する関係にある。こういった理由から宿主細胞由来の核酸の、本発明のクロマトグラフィー用充填剤への非特異的な吸着を低減させるためには、リガンド密度を上げることが効果的である。当該目的に有効な硫黄含有割合は0.2重量%以上であることが好ましい。
【0059】
本発明のクロマトグラフィー用充填剤に吸着されたインフルエンザウイルスは、高濃度のNaClなどの塩溶液を用いることで、イオン交換的に溶出回収が可能である。回収されたインフルエンザウイルスは、赤血球凝集試験など通常の方法でヘマグルチニンタイター(HA価)として評価できる。ウイルス評価法は国立予防衛生研究所学友会編 改定二版 ウイルス実験学各論(丸善)などに記載されている。
【0060】
インフルエンザウイルスのクロマトグラフィーを用いた精製方法は、例えば、特開昭61−47186号公報や欧州特許出願公開第1 808 697号パンフレットなどに記載されており、当該分野では周知である。本発明のクロマトグラフィー用充填剤も、図1のプロセスフローの如く特開昭61−47186号公報や欧州特許出願公開第1 808 697号パンフレット記載の方法と同様にして、鶏卵あるいは細胞培養を宿主として増幅されたいずれかのインフルエンザウイルスの精製に用いることができる。
特に、本発明のクロマトグラフィー用充填剤にインフルエンザウイルスが効率よく吸着するよう、塩や宿主由来の核酸やタンパク質などの不純物を除去する工程を必要に応じて追加してもかまわない。このような方法は、一般的なクロマトグラフィーでタンパク質を精製する周知の方法に従うことが可能である。
また、インフルエンザウイルスをワクチン成分にする方法は、国際公開01/21151パンフレットや国際公開02/28422パンフレットなどにおいて公知である。このようにして得られたインフルエンザウイルスのヘマグルチニンを含むタンパク質成分の精製にも、本発明のクロマトグラフィー用充填剤は利用できる。例えば、図1の工程で得られた精製ウイルス液から、エーテルや界面活性剤を用いて、ウイルス粒子を破壊する。その可溶化画分から、通常のクロマトグラフィーでタンパク質を精製する周知の方法に従い、且つ本発明のクロマトグラフィー用充填剤を用い、ワクチン成分を精製することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれらに制限されるものではない。また、以下の実施例において「%」は、特段の説明が無い限り「重量%」を意味する。
1.測定方法
実施例において使用する測定方法は以下の通りである。
<排除限界分子量>
ゲル分配係数Kavの測定
(1)使用機器及び試薬
カラム : エンプティカラム1/4×4.0mm
I.D×300mm、10F(東ソー)
リザーバー : パッカ・3/8(東ソー)
ポンプ : POMP P−500 (Pharmacia)
圧力計 : AP−53A(KEYENCE)
【0062】
(2)カラム充填法
カラムとリザーバーを接続しカラム下部にエンドフィッティングを接続する。Kavを測定するゲルを減圧濾過した湿ゲルの状態で15g計りとり、50mLビーカーへ入れた。そこへ超純水20mL加え軽く攪拌し、ゲルが超純水中に分散した状態でリザーバーの壁を伝わらせるようにカラムへゆっくり加えた。ビーカーに残ったゲルは少量の超純水ですすぎゆっくりとカラムへ加えた。その後リザーバーの上部ぎりぎりまで超純水を加えリザーバーの蓋をした。リザーバー上部へアダプターを接続しポンプで超純水を送液した。送液ラインの途中に圧力計を接続しておき圧力をモニターした。圧力が0.3MPaになるまで流速を上げ、その後30分超純水を流しながら充填した。充填が終わったらポンプを止めアダプターとリザーバーの蓋を外した。次にリザーバーの中の超純水をピペットで吸いだした後リザーバーを外し、カラムからはみ出したゲルを除きエンドフィッティングを接続した。
【0063】
(3)Kav測定装置
システム : SCL−10APVP(SHIMAZU)
ワークステーション : CLASS−VP(SHIMAZU)
RI検出器 : RID−10A(SHIMAZU)
ポンプ : LC−10AT(SHIMAZU)
オートインジェクター : SIL−10ADVP(SHIMAZU)
【0064】
(4)Kav測定サンプル
1.PEG-19000 (SCIENTIFIC POLYMER PRODUCTS)分子量19700
2.PEG-8650(POLYMER LABORATORIES)分子量8650
3.PEG-4120(POLYMERLABORATORIES)分子量4120
4.PEG-590(POLYMERLABORATORIES)分子量590
5.PEG-220(POLYMERLABORATORIES)分子量220
【0065】
(5)Kav導出式
Kav=(Ve−V)/(Vt−V
[式中、Veはサンプルの保持容量(mL)、Vtは空カラム体積(mL)、VはデキストランT2000保持容量(mL)である。]
【0066】
(6)測定結果
本実施例において用いた多孔性粒子セルファインGH25のゲル分配係数Kavの結果を図2に示した。図2の結果から、本発明に用いたGH25の標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量は3000Daであった。
【0067】
<平均粒子径>
スライドグラスに湿潤セルロース粒子を取り、光学顕微鏡を用いて倍率100倍で撮影した写真から任意に200粒子の長径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0068】
<粘度>
JIS Z 8803「液体の粘度−測定方法」単一円筒型回転粘度計の方法に準じて実施した。即ち、硫酸化セルロースを純水で1%水溶液を調整し、この水溶液の粘度を、20℃にてB型粘度計(東機産業社)の円盤に働く液体の粘性抵抗トルクを測ることによって求めた。
<極限粘度>
多糖の極限粘度は、日本薬局方14版に収載された一般測定法における粘度測定法、第1法「毛細管粘度計法」にしたがって、数個の異なる濃度の高分子溶液の粘度を求めて粘度の濃度依存性を測定し、得られた直線の濃度を0に外挿することにより求めた。
【0069】
<硫黄含有割合>
硫黄含有割合は、イオンクロマトグラフィー法にしたがい、次に記載の方法によって求めた。60℃で16〜20時間真空乾燥したサンプルを乳鉢ですりつぶし、更に、105℃にて2時間乾燥した。この乾燥試料0.05gに2Mの塩酸2.5mlを加え、110℃にて16時間加水分解した。氷冷後、上澄液を1ml採取し、2Mの水酸化ナトリウム水溶液で中和し、25mlにメスアップした。カラムに横河電機社製ICS−A−23を用い、オーブン温度40℃、溶離液に3mM NaCO溶液、除去液に15mM 硫酸をそれぞれ1ml/minの流量の条件で使用し、横河電機社製IC7000イオンクロマトアナライザーを用いて分析し、さらに後述の標準溶液から作成した検量線を基にSO濃度を求めた。ブランク値は乾燥試料を加えずに同様に操作し時の値とした。SO標準液(関東化学社製 陰イオン混合標準液IV)より2μg/ml液を本測定法の標準溶液とし、更に段階希釈し、同様の条件でイオンクロマトアナライザーにて分析し、検量線を作成した。硫黄含有割合は下記式にて求めた。なお、X試料、XブランクはSO標準液による検量線から求めた濃度(x10−4%)である。
硫黄含量(x10−4%)
=(X試料−Xブランク)x25x2.5x0.3333/0.05
【0070】
<リゾチーム溶出量>
クロマトグラフィー用充填剤を吸着バッファー(0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)−0.15M NaCl)でけん濁、平衡化した後、けん濁液2mLを内径0.5cmのカラムに充填し、同吸着バッファー40mLを流速40mL/hで通液した。続いて、この充填カラムに吸着バッファーを溶媒として3.33mg/mLに調整したリゾチーム(生化学工業社製)溶液30mLを、流速60mL/hの流速で1時間、循環通液した後、吸着バッファー20mLで洗浄した。次いで、50mLの溶出バッファー(0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)−0.6M NaCl)を用い、流速50mL/hの条件でリゾチームを溶出させた。溶出バッファーを対照として、280nmの吸光度(A)を測定した。標準液には、前述のリゾチーム溶液を溶出バッファーで10倍希釈したものを用いた。
溶出量(mg/mL−ゲル)
=0.333×25×(280nm溶出液の吸光度/280nm標準液の吸光度)
【0071】
<HA価>
丸底96穴(縦8×横12列)プレートに生理食塩水50μLを加え、サンプル50μLを1番目のウェルに加えて混合して2倍希釈した後、希釈液50μLを横隣のウェルに加えよく混合した。同様にして2倍希釈系列を12番目のウェルまで調整した。コントロールとしては、1から12番目のウェルを生理食塩水のみとした。サンプル及びコントロールに0.5%鶏赤血球浮遊液50μLを加え混合した後、室温で30分以上静置し、放置後赤血球の凝集状態を判定した。判定はプレートを傾斜させた際、底に沈んだ赤血球が容易に流れ出す時を凝集陰性とし、流れでない時を凝集陽性とし、凝集陽性を示すウイルスの最大希釈倍率をHA価とした。
【0072】
<流速性能>
内径2.2cmx高さ20cmのポリカーボネート製カラム(東京理化製)にクロマトグラフィー用充填剤を20cm高さで充填した。このカラムに24℃の純水を通液し、その際のカラム入口とカラム出口の圧力を測定した。なお、通液は初期においては、20mL/分以下の流速から始めて、その後流量を段階毎に増加させ、3分から5分通液を継続した後、圧力を測定した。圧力はカラム入口の圧力からカラム出口の圧力を差し引いて求めた。線速度は、下記の式により算出した。
線速(cm/時間)=測定時の流量(mL/時間)/カラム断面積(cm
【0073】
<エポキシ基量>
エポキシ基量は、特開2000−321267に記載の方法に準じて測定した。まず、測定するゲル約10gを500mlの純水で15分間洗浄後、吸引ろ過して水を良く切り、測定サンプルを得た。ここで、本サンプル約1gを赤外水分計を用いて含水率を測定しておく。次いで、50ml蓋付三角フラスコ3本に測定サンプルを1.00gずつ分取した。これに1.3Mチオ硫酸ナトリウム3mlを加え、30℃で1時間振盪させた。ここにフェノールフタレイン溶液を1〜2滴加え、0.01M塩酸で滴定し、エポキシ基量を算出した。
エポキシ基量(μmol/g−wet)=0.01×f×A×10
f:塩酸のファクター
A:0.01M塩酸の滴定量(ml)
エポキシ基量(μmol/g−dry)
=エポキシ基量(μmol/g−wet)×含水率
【0074】
<HA価を指標とする10%DBC量の測定>
試作した各充填剤を水に分散させ減圧下で攪拌しながら脱気した。脱気した後、φ3×50mmのカラムにクロマトグラフィー用充填剤を充填し、カラムをBiologic LPシステム(バイオ・ラッド社製)に取り付け、カラム容量の10倍以上の0.01Mリン酸バッファー、pH7.4を流し平衡化した。その後、アドバンテック社セルロースアセテート製のメンブレンフィルター(製品名 DISMIC-25cs)でろ過したH7N7株の試験ウイルス液11mLを、カラムへの通液を開始すると同時にカラムからの流出液を1mLずつ回収した。この流出液の1mL画分の50μLを使用し、HA価を測定した。さらに、試験ウイルス液50μLのHA価の1/10に到達する直前の画分までの総液量(μL)を求めた。本測定系に於ける10%DBCは以下のようにして求めた。
10%DBC(HA価/ml-gel)
=(総液量 x 1/50 x 試験ウイルス液50μLのHA価)/カラム容量(ml-gel)
【0075】
2.試験インフルエンザウイルスの作製
接種ウイルスとして、A/PR/8/1934(H1N1)株、および、A/duck/Hokkaido/Vac−2/04(H7N7)株を選び、それぞれの保存ウイルス原液を、滅菌ブイヨン培地(日水製薬製、1000U/mLのペニシリンと1mg/mLのストレプトマイシンを含む)で1000倍に希釈して接種用の希釈ウイルス液を2種類得た。
上記のH1N1およびH7N7のウイルス株毎に、10日齢発育鶏卵の腹膜腔内に希釈ウイルス液を接種し、37℃、2日間培養した後、4℃で16時間放置した。鶏卵より漿尿液を回収し、不活化のため0.1%のβプロピオンラクトンを添加し、2種類の試験ウイルス液を作成した。H1N1は1ロットの、H7N7株は単位体積当たりのHA価の異なる3ロットをそれぞれ作製し、本実施例ウイルス吸着試験に使用した。
【0076】
3.クロマトグラフィー用充填剤の製造<結合反応1>
(1)硫酸化多糖Aの合成
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた3Lのセパラブルフラスコ(反応容器)に、結晶セルロース(旭化成株式会社製 商品名 セオラスPH101)、平均重合度242)180g及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)160mLを投入し、一晩攪拌した。次いで、これに、氷冷下18%−無水硫酸−DMF錯体1221gを35分かけて投入した後、この反応容器を20℃の恒温槽に浸け、20分かけて昇温させ20℃で6時間反応させた。
反応終了後、反応液を5℃まで氷冷し、氷冷しながら超純粋水1220mLを75分かけて徐々に投入し、続いて、1Nの水酸化ナトリウム溶液を反応液のpHが7になるまで徐々に投入した。生じた沈殿をろ別し、ろ液を20Lのイソプロピルアルコール中に投入して沈殿物を得た。さらに沈殿物をろ別し、40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースナトリウム塩(硫酸化多糖A)を得た。得られた硫酸化セルロースナトリウム塩の収量は130gであり、20℃の純水に対する溶解度は15g/L、硫黄含量は14.0%、粘度は18.4mPa・sであった。
【0077】
(2)硫酸化多糖Bの合成
温度計、滴下ロート、攪拌装置、及び窒素ガス導入管を備えた2L(リットル)のセパラブルフラスコ(反応容器)に、日本薬局方脱脂綿(発売元:ピップトウキョウ株式会社)5.0g及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)350mLを投入し、一晩攪拌し充分にDMFを浸潤させた。次に、この反応容器を10℃の恒温槽に浸け、18%−無水硫酸−DMF錯体123gを1時間かけて投入し、さらに10℃の恒温槽に浸けたまま、4日間反応させた。
反応終了後、反応液を5℃まで氷冷し、氷冷しながら水1000mLを75分かけて徐々に投入し、続いて、1Nの水酸化ナトリウム溶液を反応液のpHが7になるまで徐々に投入した。生じた沈殿物をろ別し、ろ液を1000mLのイソプロピルアルコール中に投入して沈殿物を得た。さらに沈殿物をろ別後、40℃で8時間減圧乾燥し、硫酸化セルロースナトリウム塩(硫酸化多糖B)を得た。得られた硫酸化セルロースナトリウム塩の収量は13gであった。硫黄含量は16.0%であった。粘度は45.7mPa・sであった。
【0078】
(3)製造例1(多孔性粒子と硫酸化多糖の結合)
1)多孔性粒子のエポキシ化
出発原料の多孔性粒子としてセルファインGH25(チッソ社製、セルロース粒子)を使用した。この多孔性粒子は、粒子径が44〜105μmで、平均粒子径が67μmであった。また、標準ポリエチレングリコールとKavの関係は図2であり、これより求めた排除限界分子量は約3000Daであった。
750g(含水率2.89)のセルファインGH25を、6415mLの水とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。よく撹拌を行いながら内部温度を30℃に調整し、20%NaOH水溶液1344gを添加した。1時間撹拌後、エピクロロヒドリン1482gを添加して2時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、エポキシ化された多孔性粒子(エポキシ活性化湿潤ゲル)757gを得た。エポキシ活性化湿潤ゲル1.0gを1.3Mチオ硫酸ナトリウム溶液3.0mLとともに30℃に温度設定した振騰機で1時間振騰し、0.1mol・L塩酸で滴定することによりエポキシ量を定量した。その結果、エポキシ量は308.6mol/g(乾燥)であった。
【0079】
2)エポキシ活性化湿潤ゲルのアミノ化
上記で得られたエポキシ活性化湿潤ゲル650gを、975mLの25%アンモニア水とともに攪拌機付き反応器に仕込んだ。よく攪拌を行いながら、内部温度を35〜40℃に調製し、2時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、アミノ化したエポキシ活性化湿潤ゲル(アミノ化湿潤ゲル)653gを得た。このアミノ化湿潤ゲルの含水率を、50℃の真空乾燥機で一晩乾燥した粒子の重量減より求めた結果、当該含水率は3.28%であった。また、ケルダール法により求めた窒素含有割合は4500ppmであった。
【0080】
3)硫酸化多糖Aの結合
アミノ化湿潤ゲル80gを、160mLの0.02Mリン酸緩衝溶液(pH7.0)とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を50℃に調整し1時間撹拌した。次いで、これに硫酸化多糖Aを0.61g添加し、50℃で48時間反応を行った。その後、ジメチルアミンボラン2.44gを添加し72時間反応を行った後、反応液を濾過した。残った白色固体を水で十分に洗浄した後、15分間吸引乾燥を行い、硫酸化多糖結合湿潤ゲル80gを得た。
【0081】
4)残アミノ基保護
その硫酸化多糖結合湿潤ゲル80gを5.3mol/L酢酸ナトリウム溶液400mLとともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を0℃に調整し、よく撹拌を行いながら無水酢酸を100mL滴下した後30分間反応を行った。内部温度を室温まで昇温した後、無水酢酸をさらに100mL滴下し30分間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤77gを得た。乾燥ゲルにおける硫黄含有割合は0.23%であり、リゾチーム溶出量は0.9mg/mL−gelであった。
【0082】
(4)製造例2(多孔性粒子と硫酸化多糖の結合)
1)硫酸化多糖Bの結合
製造例1で得られたアミノ化湿潤ゲル12gを、24mLの0.02Mリン酸緩衝溶液(pH7.0)とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を50℃に調整し1時間撹拌した後、硫酸化多糖Bを0.421g添加し、50℃で48時間反応を行った。これに、ジメチルアミンボランを0.42g添加し72時間反応を行った後、反応液を濾過した。残った白色固体を水で十分に洗浄した後、15分間吸引乾燥を行い、硫酸化多糖結合湿潤ゲル12.5gを得た。
【0083】
2)残アミノ基保護
その硫酸化多糖結合湿潤ゲル12.5gを5.3mol/L酢酸ナトリウム溶液62.5mLとともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を0 ℃に調整し、よく撹拌を行いながら無水酢酸を15.6mL滴下した後30分間反応を行った。内部温度を室温まで昇温した後、無水酢酸さらに15.6mLを滴下し、30分間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、残った白色固体を水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤12.0gを得た。乾燥ゲルにおける硫黄含有割合は0.13%であった。また、リゾチーム溶出量は1.8mg/mL−gelであった。
【0084】
(5)製造例3(多孔性粒子と硫酸化多糖の結合)
1)アクロス社製硫酸化セルロースの結合
製造例1で得られたアミノ化湿潤ゲル20gを、40mLの0.02Mリン酸緩衝溶液(pH7.0)とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を50℃に調整し1時間撹拌した。市販の硫酸化セルロース(アクロス社製、粘度241.0mPa・s)2.11gを添加し、50℃で48時間反応を行った。これにジメチルアミンボラン0.7gを添加し72時間反応を行った後、反応液を濾過した。残った白色固体を水で十分に洗浄した後、15分間吸引乾燥を行い、硫酸化多糖結合湿潤ゲル18.5gを得た。
【0085】
2)残アミノ基保護
その硫酸化多糖結合湿潤ゲル18.5gを5.3mol/L酢酸ナトリウム溶液62.5mLとともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を0 ℃に調整し、よく撹拌を行いながら無水酢酸を23mL滴下した後30分間反応を行った。内部温度を室温まで昇温した後、さらに無水酢酸23mLを滴下し、30分間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤18.4gを得た。乾燥ゲルにおける硫黄含有割合は0.23%であった。また、リゾチーム溶出量は2.80mg/mL−gelであった。
【0086】
(6)製造例4(多孔性粒子と硫酸化多糖の結合)
1)アクロス社製硫酸化セルロースの結合
製造例1で得られたアミノ化湿潤ゲル80.0gを、160mLの0.02Mリン酸緩衝溶液(pH7.0)とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を50℃に調整し1時間撹拌した。市販の硫酸化セルロース(アクロス社製、粘度241.0mPa・s)7.0gを添加し、50℃で48時間反応を行った。これにジメチルアミンボラン2.8gを添加し72時間反応を行った後、反応液を濾過した。残った白色固体を水で十分に洗浄した後、15分間吸引乾燥を行い、硫酸化多糖結合湿潤ゲル83.3gを得た。
【0087】
2)残アミノ基保護
その硫酸化多糖結合湿潤ゲル83.3gを5.3mol/L酢酸ナトリウム溶液416mLとともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。内部温度を0 ℃に調整し、よく撹拌を行いながら無水酢酸を104mL滴下した後30分間反応を行った。内部温度を室温まで昇温した後、さらに無水酢酸104mLを滴下し、30分間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤83.3gを得た。乾燥ゲルにおける硫黄含有割合は0.03%であった。
【0088】
4.ウイルス吸着試験1
(1)製造例1のクロマトグラフィー用充填剤と製造例3のクロマトグラフィー用充填剤との比較
充填剤として、製造例1のクロマトグラフィー用充填剤と製造例3のクロマトグラフィー用充填剤を用いた。
各充填剤を水に分散させ減圧下で攪拌しながら脱気した。脱気した後、φ3×50mmのカラムにクロマトグラフィー用充填剤を充填し、カラムをBiologic LPシステム(バイオ・ラッド社製)に取り付け、カラム容量の10倍以上の0.01Mリン酸バッファー、pH7.4を流し平衡化した。その後、アドバンテック社セルロースアセテート製のメンブレンフィルター(製品名 DISMIC-25cs)でろ過したH7N7株の試験ウイルス液8mL(使用時の総HA価:40960)のカラムへの通液を開始すると共に、カラムからの流出液を1mLずつ回収した。
上記試験ウイルス液の通液終了後、0.01Mリン酸バッファー、0.19MNaCl,pH7.2の通液を開始し、非吸着画分を洗い流した。非吸着画分の洗浄が終了した後、0.01Mリン酸バッファー,3MNaCl,pH7.0の通液を開始し、カラムに吸着しているウイルスが完全に溶出されるまで通液を実施した。溶出終了後、回収した流出液のHA価を測定し吸着量を求めた。その結果、ウイルス吸着量は、製造例1のクロマトグラフィー用充填剤を用いた場合には21000HA/mL−gelであり、製造例3のクロマトグラフィー用充填剤を用いた場合には25720HA/mL−gelであった。吸着量(HA価)は、下記の式から求めた。
吸着量 = 通液した総HA価 − 非吸着画分の総HA価
【0089】
(2)製造例3のクロマトグラフィー用充填剤と市販セルファインサルフェートとの比較
充填剤として、製造例3のクロマトグラフィー用充填剤と市販セルファインサルフェート(チッソ社製、硫黄含有割合:0.09%)を用い、試験ウイルスとして、試験ウイルスをH1N1株とし、試験ウイルス液を2mL(使用時の総HA価:81920)とした以外は、前述のウイルス吸着試験に準じて試験を実施した。その結果、製造例3のクロマトグラフィー用充填剤を用いた場合には64840HA/mL−gelであり、市販セルファインサルフェート(チッソ社製)を用いた場合には64800HA/mL−gelと同じ吸着性能を有す結果であった。
【0090】
5.流速性能の比較
ほぼ同じ硫黄含有割合のセルファインサルフェートと製造例4で得られたクロマトグラフィー用充填剤の流速性能を比較した。
製造例4で得られたクロマトグラフィー用充填剤(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合は0.03%)の流速性能を前述の測定方法に従って測定した。この充填剤のカラム入口の圧力からカラム出口の圧力を差し引いた値が0.3MPaとなった時の流速性能は、線速2200cm/hであった。一方、セルファインGH25に対し、乾燥ゲルにおける硫黄含有割合が0.02%となるように直接硫酸化したセルロース粒子の同条件での流速性能は、線速700cm/hであった。同等の硫黄含量に対し、本発明によって製造されたクロマトグラフィー用充填剤は約3倍の流速性能を示した。尚、前述の0.02%硫酸化ゲルは次のようにして製造した。
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン295gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸3.00gを、滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいたGH25の乾燥重量45g(含水率0.38%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液43.6gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤110g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:0.02%)を得た。
【0091】
表1に上記試験の結果をまとめた。製造例3のクロマトグラフィー用充填剤は市販硫酸化セルファインと同等の吸着性能を示していた。また、本発明によって製造されたクロマトグラフィー用充填剤は同硫黄含量では、市販硫酸化セルファインの3倍の流速性能を示したことから、発明の硫酸化セルロースをリガンドとするセルロース粒子は、効率よくウイルスを吸着し、かつ高流速で使用できるものであった。
【0092】
【表1】

【0093】
6.クロマトグラフィー用充填剤の製造<結合反応2A>
(1)エポキシ活性化湿潤ゲルの製造(参考例1−3)、および当該ゲルと多糖との複合体の製造(参考例4−12)
1)参考例1
出発原料の多孔性粒子としてセルファインGH25(チッソ社製、セルロース粒子)を使用した。850g(含水率3.68)のセルファインGH25を、5750mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。よく撹拌を行いながら内部温度を30℃に調整し、20%NaOH水溶液1225gを添加した。1時間撹拌後、エピクロロヒドリン1319gを添加して2時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、エポキシ化された多孔性粒子(エポキシ活性化湿潤ゲル)847gを得た。このエポキシ基量は313μmol/g−dryであった。
【0094】
2)参考例2
1000g(含水率5.38)のセルファインGH25を、4320mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。よく撹拌を行いながら内部温度を30℃に調整し、20%NaOH水溶液987.5gを添加した。1時間撹拌後、エピクロロヒドリン318gを添加して2時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、エポキシ化された多孔性粒子(エポキシ活性化湿潤ゲル)755gを得た。このエポキシ基量は105μmol/g−dryであった。
【0095】
3)参考例3
1000g(含水率5.38)のセルファインGH25を、4320mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込んだ。よく撹拌を行いながら内部温度を30℃に調整し、20%NaOH水溶液987.5gを添加した。1時間撹拌後、エピクロロヒドリン106gを添加して2時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、エポキシ化された多孔性粒子(エポキシ活性化湿潤ゲル)720gを得た。このエポキシ基量は17.3μmol/g−dryであった。
【0096】
4)参考例4
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)28.0gを、155.5mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例1で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率3.61)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.3gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子121gを得た。
【0097】
5)参考例5
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)44.4gを、155.5mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例1で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率3.61)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.3gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子117gを得た。
【0098】
6)参考例6
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)63.0gを、155.5mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例1で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率3.61)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.3gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子116gを得た。
【0099】
7)参考例7
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)29.0gを、135.8mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例2で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル150g(含水率4.31)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.9gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子147g(含水率3.90)を得た。
【0100】
8)参考例8
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)46.0gを、135.8mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例2で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル150g(含水率4.31)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.9gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子145g(含水率4.99)を得た。
【0101】
9)参考例9
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)65.2gを、135.8mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例2で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル150g(含水率4.31)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液17.9gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子142g(含水率4.83)を得た。
【0102】
10)参考例10
化粧品用プルラン(株式会社林原社製、極限粘度0.73dL/g)54.48gを、118.5mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込みプルランが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例3で製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率4.16)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液15.0gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、プルラン化された多孔性粒子114.6g(含水率4.10)を得た。
【0103】
11)参考例11
高分子デキストランEH(名糖産業株式会社製、分子量20万相当、極限粘度0.42dL/g)60.0gを、142.9mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込み高分子デキストランEHが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例1と同様に製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率3.75、エポキシ基量297μmol/g−dry)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液16.5gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、デキストラン化された多孔性粒子116.7gを得た。
【0104】
12)参考例12
高分子デキストランEH(名糖産業株式会社製、分子量20万相当、極限粘度0.42dL/g)42.4gを、142.9mLの純水とともに撹拌機付き反応器に仕込み高分子デキストランEHが完全に溶解するまで撹拌した後、参考例1と同様に製造したエポキシ活性化湿潤ゲル120g(含水率3.75、エポキシ基量297μmol/g−dry)を、反応器内に加えた。良く撹拌しながら内部温度を30℃に調整し、1時間撹拌後、45%NaOH水溶液16.5gを添加して18時間反応を行った。反応終了後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。30分間吸引乾燥を行い、デキストラン化された多孔性粒子117.8gを得た。
【0105】
(2)参考例4〜12の硫酸化
1)製造例5
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン200gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸5.99gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例4で製造したプルラン化された多孔性粒子30.5g(含水率0.48%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液40.9gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤110.8g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:2.4%)を得た。
【0106】
2)製造例6
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン201gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸6.02gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例5で製造したプルラン化された多孔性粒子30.6g(含水率0.45%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液41.1gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤105.3g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:1.1%)を得た。
【0107】
3)製造例7
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン206gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸6.17gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例6で製造したプルラン化された多孔性粒子31.4g(含水率0.70%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液42.1gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤102.62g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:0.8%)を得た。
【0108】
4)製造例8
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン218gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸6.54gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例7で製造したプルラン化された多孔性粒子33.4g(含水率0.56%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液44.7gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤135.1g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:2.1%)を得た。
【0109】
5)製造例9
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン205gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸6.14gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例8で製造したプルラン化された多孔性粒子31.2g(含水率0.56%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液41.9gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤132.9g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:2.1%)を得た。
【0110】
6)製造例10
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン213gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸6.39gを滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例9で製造したプルラン化された多孔性粒子32.5g(含水率0.48%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液43.6gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤127.4g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:1.4%)を得た。
【0111】
7)製造例11
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン172gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸5.17gを、滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例10で製造したプルラン化された多孔性粒子26.3g(含水率0.40%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液35.3gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤98.8g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:1.0%)を得た。
【0112】
8)製造例12
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン183gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸5.48gを、滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例11で製造したデキストラン化された多孔性粒子27.87g(含水率0.63%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液37.4gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤99.8g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:0.9%)を得た。
【0113】
9)製造例13
滴下ロート、冷却コンデンサー、撹拌子、温度計を取り付けた500mlセパラブルフラスコを十分に窒素置換した後、脱水ピリジン180gを反応器内に加え窒素シールし、5℃まで冷却した。次いで、クロロスルホン酸5.39gを、滴下ロートを用いて5分かけて滴下し、5〜10℃で1時間撹拌した後、反応器内の温度を65±2℃まで昇温した。次に、予め真空減圧乾燥機にて80℃、13Paで水分が1%以下になるまで減圧乾燥しておいた参考例12で製造したデキストラン化された多孔性粒子27.40g(含水率0.52%)を反応器内に加え、4時間反応させた。次に、反応器内温度を25℃に冷却し、20%水酸化ナトリウム水溶液36.8gを加え、30分間攪拌後、反応を停止した。一晩静置後、反応液を濾過し、濾液が中性になるまで水で十分に洗浄した。15分間吸引乾燥を行い、クロマトグラフィー用充填剤102.6g(乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:1.6%)を得た。
【0114】
7.ウイルス吸着試験2
(1)ウイルス吸着試験:製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を用いたウイルス吸着試験
充填剤として、製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を用いた。
製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を水に分散させ減圧下で攪拌しながら脱気した。脱気した後、φ3×50mmのカラムにクロマトグラフィー用充填剤を充填し、カラムをBiologic LPシステム(バイオ・ラッド社製)に取り付け、カラム容量の10倍以上の0.01Mリン酸バッファー、pH7.4を流し平衡化した。その後、アドバンテック社セルロースアセテート製のメンブレンフィルター(製品名 DISMIC-25cs)でろ過したH7N7株の試験ウイルス液10mL(使用時の総HA価:51200)を、カラムへの通液を開始すると同時にカラムからの流出液を1mLずつ回収した。
上記試験ウイルス液の通液が終了後、0.01Mリン酸バッファー、0.19MNaCl,pH7.2の通液を開始し、非吸着画分を洗い流した。非吸着画分の洗浄が終了した後、0.01Mリン酸バッファー,3MNaCl,pH7.0の通液を開始し、カラムに吸着しているウイルスが完全に溶出されるまで通液を実施した。溶出終了後、回収した流出液のHA価を測定し、10%DBC量を求めた。その結果、10%DBC量は38608HA/mL−gelであった。
【0115】
(2)製造例5〜8、および10〜12のクロマトグラフィー用充填剤を用いたウイルス吸着試験
充填剤として製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を製造例5〜12のクロマトグラフィー用充填剤にそれぞれ替えた以外は前述のウイルス吸着試験に準じて試験を実施した。その結果、製造例5、6、7、11および12のクロマトグラフィー用充填剤を用いた場合の10%DBC量は41514HA/mL−gel、製造例8および10を用いた場合は55352HA/mL−gelであった。
【0116】
(3)対照実験1(市販セルファインサルフェート)
製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を市販セルファインサルフェート(対照充填剤、チッソ社製、乾燥ゲルにおける硫黄含有割合:0.09%)に替えた以外は前述のウイルス吸着試験に準じて試験を実施した。その結果、市販セルファインサルフェートのクロマトグラフィー用充填剤を用いた場合の10%DBC量は27676HA/mL−gelであった。
製造例5〜12の本発明のクロマト用充填剤は表2に示した通りいずれも10%DBCの比較においてインフルエンザウイルスを効率よく吸着し、さらに市販のセルファインサルフェートに比べ10%DBC HA価/mlで表されるウイルス吸着比で1.4〜2倍の値を示した。
【0117】
8.ウイルス精製に伴う核酸吸着評価
本実施例の核酸量はinvitrogen社から市販されているQuant−iT PicoGreen dsDNA Reagent and Kitsを用いて行った。
核酸吸着実験
充填剤として、製造例13のクロマトグラフィー用充填剤を用いた。
試作した充填剤を水に分散させ減圧下で攪拌しながら脱気した。脱気した後、φ8×20mmのカラムにクロマトグラフィー用充填剤を充填し、カラムをBiologic LPシステム(バイオ・ラッド社製)に取り付け、カラム容量の10倍以上の0.01Mリン酸バッファー、pH7.4を流し平衡化した。その後、アドバンテック社セルロースアセテート製のメンブレンフィルター(製品名 DISMIC-25cs)でろ過したH7N7株の試験ウイルス液8mL(使用時の総HA価:92160、総核酸量11210ng)を、カラムへの通液を開始すると同時にカラムからの流出液を1mLずつ回収した。ウイルス液の通液が終了後、0.01Mリン酸バッファー、0.19MNaCl,pH7.2の35ml通液をし、非吸着画分を洗い流した。非吸着画分の洗浄が終了した後、0.01Mリン酸バッファー,3MNaCl,pH7.0の25mlにてウイルスを溶出させた。溶出終了後、回収した流出液の核酸量を定量した。その結果、溶出画分中に含まれる核酸総量は935ngで、総HA価は77440であった。
【0118】
(2)対照実験2(市販セルファインサルフェート)
製造例9のクロマトグラフィー用充填剤を市販セルファインサルフェート(チッソ社製、硫黄含有割合:0.09%)に替えた以外は前述の核酸吸着実験に準じて試験を実施した。その結果、市販セルファインサルフェートの溶出画分中の核酸総量は1474ngであり、総HA価は80080であった。
本結果から、本発明のクロマトグラフィー用充填剤を用いることで、対照とする市販セルファインサルフェートに対し、ウイルス吸着はほぼ同等を示しているが、約63%の核酸の低減化を図ることができた。
【0119】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相を純水とし、標準ポリエチレングリコールを用いた時の排除限界分子量が6000Da以下であり、平均粒子径が30〜200μmの範囲である多孔性粒子に、硫酸化多糖が結合しているクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項2】
多孔性粒子と硫酸化多糖が2以上の官能基を有する架橋剤により架橋されている、請求項1に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項3】
多孔性粒子が40〜120μmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1または2に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項4】
多孔性粒子がセルロース粒子である、請求項1〜3の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項5】
硫酸化多糖の極限粘度が0.21〜0.90dL/gの範囲である、請求項1〜4の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項6】
硫酸化多糖が硫酸化セルロース、硫酸化デキストラン、および硫酸化プルランから選ばれた1種以上である、請求項1〜5の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項7】
2以上の官能基を有する架橋剤が少なくとも1つ以上のグリシジル基を有する2価以上の架橋剤である、請求項2に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項8】
少なくとも1つ以上のグリシジル基を有する2価以上の架橋剤がエピクロロヒドリンである、請求項7に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項9】
硫黄含有割合が0.2〜6重量%の範囲である、請求項1〜8の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤
【請求項10】
下記工程を有することを特徴とする請求項2に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
工程1:多孔性粒子と多糖を2以上の官能基を有する架橋剤により架橋し多糖結合多孔性粒子を得る。
工程2:工程1で得られた多糖結合多孔性粒子を硫酸化試薬と反応させて多糖を硫酸化する。
【請求項11】
多孔性粒子が40〜120μmの範囲の平均粒子径を有する、請求項10に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
【請求項12】
多孔性粒子がセルロース粒子である、請求項10または11に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
【請求項13】
多糖が水溶性多糖であり、その極限粘度が0.21〜0.90dL/gの範囲である、請求項10〜12の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
【請求項14】
多糖がデキストランおよびプルランから選ばれた1種以上である、請求項10〜13の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤の製造方法。
【請求項15】
下記一般式(1)で表される請求項1に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
X−O−CH−C(OH)H−CH−NH−CH−Z 式(1)
(式(1)において、Xは平均粒子径が40〜120μmの範囲であるセルロース粒子であり、Xに結合しているOはセルロースの水酸基由来の酸素であり、Zは硫酸化セルロースであり、Zに結合しているCは硫酸化セルロース還元末端のアルデヒド由来の炭素である。)
【請求項16】
硫酸化セルロースが、その硫黄含有割合が15重量%以上であり、1重量%水溶液の粘度が15〜300MPa/sec・20℃の範囲である、請求項15に記載のクロマトグラフィー用充填剤。
【請求項17】
請求項1〜9、請求項15および請求項16の何れか1項に記載のクロマトグラフィー用充填剤を用いてウイルス粒子を分離精製することを特徴とする、ウイルス用ワクチンの製造方法。
【請求項18】
DNAのクロマトグラフィー用充填剤への吸着が抑制された、請求項17に記載のウイルス用ワクチンの製造方法。
【請求項19】
ウイルス粒子がインフルエンザウイルスである、請求項17または18に記載のウイルス用ワクチンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−220992(P2011−220992A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141451(P2010−141451)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】