説明

クロマトグラフ用プログラム

【課題】高速液体クロマトグラフを構成する各機器の設定の煩雑さや複雑さを緩和する、及び検出器から得られたデータ出力の統合化を図る。
【解決手段】コンピュータ80とクロマトグラフ関連機器を構成する各機器間には複数の通信インターフェイスが用いられている。クロマトグラフ関連機器には複数の検出器74、76が含まれ、各検出器から出力されるクロマトグラムの形式が異なっても時間軸を調整して並列して出力される。カラムユニットが直列に配置されている場合には前段と後段の検出器の流路差による検出遅れを補正してクロマトグラムを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロマトグラフ用統合プログラム、特にクロマトグラフから出力される複数のクロマトグラムを統合するプログラムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から混合物中の目的成分の分離分析と分取を行うため、高速液体クロマトグラフ(HPLC)が用いられている。高速液体クロマトグラフで測定することにより、短時間でクロマトグラムが得られる。そして、得られたクロマトグラムにより定性分析、定量分析がなされる。
一般的な高速液体クロマトグラフの構成としては、図6に示されるように、高速液体クロマトグラフ60は、ポンプ62と、オートサンプラ66と、カラムオーブン70と、複数の検出器74、76とを備える。
このように多数の関連機器を接続すると関連機器ごとに通信インターフェイスが異なる場合がある。一例としてコンピュータ80と各機器間の通信インターフェイスは、ATAPI65と、USB69と、SCSI75と、RS−232C77で構成される。
このように高速液体クロマトグラフでは多数の機器が関連機器として使用され、その通信インターフェイスの規格もそれぞれ異なり、コンピュータと各機器間の通信速度も異なる場合がある。
【0003】
さらに、通信インターフェイスだけでなく各機器の設定値等の入力や測定結果を表示するユーザインターフェイスが異なることもある。異なる種類の検出器を複数接続する場合は検出器ごとに別々の形式でクロマトグラムが出力される。出力されるクロマトグラムは二次元だけでなく三次元のものもあり、また同じ二次元のクロマトグラムであっても時間(X軸)のスケールが相違する。
このように複数のクロマトグラムが別々の画面に出力されると操作者はそれぞれのクロマトグラムの時間軸を参考にしながら保持時間やピーク面積等を比較しなければならず、各クロマトグラムを比較するのが煩雑となる。
【0004】
さらに、検出器が複数設けられ、それらの検出器がカラムユニットの後方に直列に接続された場合、検出器のそれぞれに流路差が生じる。例えば、図6では検出器74が流路の前段に接続され、検出器76がその後段に接続されており、検出器74との流路差により検出器76での検出が遅れる。
このようにカラムユニットの後方に検出器が直列に接続された場合、検出器間の流路差による検出遅れを考慮しなければならないので煩雑さがさらに増すことになる。
【0005】
一方、操作用の端末には機器ごとに設定画面が多数表示されるので操作者は機器ごとの設定項目欄に設定値を入力していくことになるが、機器ごとに設定画面を切り替えて設定値を入力するのは煩雑である。
加えて、使用される機器一つをとってみても様々な機種やバージョンが存在する。製造元が異なれば設定方法が大きく異なるものとなり、仮に製造元が同じであってもバージョンが異なれば少なからず設定方法が異なるものとなる。そのため、操作者は機種・バージョンを意識して設定しなければならず煩雑である。
【0006】
さらに、複数のクロマトグラフ関連機器が直列に接続され前段の機器の動作を考慮して後段の機器を設定しなければならない場合がある。個々の設定画面を切り替えればそれぞれの検出器の設定をすることはできるが、各検出器の設定を総合的に管理する手段がないので前段の機器を設定するときに後段の機器の動作への影響を考慮しなくてはならない場合があることが各機器の設定を煩わしくする原因となっていた。例えば、切替バルブの後段にカラムユニットが接続されている場合、切替バルブの動作後、所定のタイミングで検出器の測定波長を変更しなければならず検出器の設定が煩雑となる。
以上のように、高速液体クロマトグラフで使用される検出器から出力されるクロマトグラムの統合や、各機器の設定の煩雑さや複雑さを緩和するための手段が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は主に前記従来技術にみられた各機器の設定(入力)及び検出器からのデータ出力の統合化に関する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高速液体クロマトグラフを構成する各機器の設定の煩雑さや複雑さを緩和すること、さらに検出器から得られたデータ出力の統合化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前記課題について鋭意検討を重ねた結果、機種・バージョンの異なる複数の検出器から出力されるクロマトグラムを見やすくするには、クロマトグラムの時間軸調整やカラムユニット間の流路差による検出遅れの補正などの検出器からの出力を統合する必要があると考えた。
また、各機器の設定の煩雑さや複雑さを緩和するには、液体クロマトグラフで使用される各機器の設定の入力形式を統一する必要があると考えた。そのためには操作者が設定画面から入力した情報を整理し、入力した情報をもとに適切な操作を各機器に行うことによって各機器の設定を行い各機種・バージョンの相違による操作の違いを埋める必要がある。
【0009】
本発明に係るクロマトグラフ統合プログラムによれば、クロマトグラフ関連機器に含まれる複数の検出器から出力されるクロマトグラムを統合するには、各検出器から出力される2次元クロマトグラム又は3次元クロマトグラムの時間軸スケールを統一し並列して表示する。
すなわち、請求項1に記載されているように、
各独立した制御プログラム及び設定ファイルを有するクロマトグラフ関連機器を統合する統合プログラムにおいて、
クロマトグラフ関連機器は、
試料中に含まれる物質の物性の差異を利用して物質を成分ごとに分離するカラムユニットと、
該カラムユニットの後方に接続された2以上の検出器と、を含み、
各クロマトグラフ関連機器はそれぞれの規格の通信インターフェイスを介して制御コンピュータに接続されており、
各検出器の出力情報を所望の単位に変換し、時間軸スケールを統一して2以上の2次元クロマトグラム又は3次元クロマトグラムを並列して表示する出力統合化機構を備えることを特徴としている。
また、請求項2に記載されているように、前記3次元クロマトグラムから特定波長の2次元クロマトグラフを抽出してもよい。
【0010】
カラムユニットの後方に2以上の検出器が直列に接続されているとき前段の検出器と後段の検出器の間に流路差があるため後段の検出器において検出遅れが生じる。この場合、それぞれの検出器から出力されるクロマトグラムを並列して表示する際にこの検出遅れを考慮することが必要となる。そこで、後段の検出器から出力されるクロマトグラムの検出遅れを補正することにした。
すなわち、請求項3に記載されているように、
前記2以上の検出器は前記カラムユニットの後方に直列に接続されており、
前記出力統合化機構は、直列に接続された前段の検出器と後段の検出器の流路差による検出遅れの補正を行うのが好適である。
【0011】
コンピュータには多数のクロマトグラフ関連機器が接続されるが、それらの初期設定をするときは、通常、別々に設定画面を立ち上げてそれぞれに設定を入力しなければならない。
本発明にかかるクロマトグラフ統合プログラムを利用して複数のクロマトグラフ関連機器の設定項目を一画面に表示することができる。それにより操作者は設定画面を切り替えずに各クロマトグラフ関連機器の設定を行えるので好適である。
一方、それぞれのクロマトグラフ関連機器の機種やバージョンは異なることが多く、機種・バージョン毎に入力フォーマットが異なることがある。機種やバージョンが異なる場合でも設定項目欄を同様のフォーマットに表示し、操作者がそれを意識しないで各機器の設定ができるようにするのが好適である。
すなわち、本発明は請求項4に記載されているように、
前記統合プログラムは、各機器の設定項目を一つの設定項目欄にまとめて表示するためのユーザインターフェイスを表示するユーザインターフェイス表示機構と、
前記2以上の機器をそれぞれ制御コンピュータに接続することにより、各機器の機種・バージョンを判別し、各機器に必要な設定項目を選定し、前記ユーザインターフェイス表示機構に設定項目に関する情報を提供する機種・バージョン判別機構と、をさらに備えるのが好適である。
また、請求項5に記載されているように、
前記統合プログラムは、各機器の機種・バージョンがそれぞれ異なる場合であっても、前記制御プログラムにより前記ユーザインターフェイス上では各機器の設定を所望の単位で入力できるものとし、各機器の設定項目に対応させるため前記ユーザインターフェイスに入力された情報を単位換算して各機器の設定を行う設定単位統合化機構を有するのが好適である。
【0012】
複数のクロマトグラフ関連機器が直列に接続されており、これらの動作が連動する場合は各機器の設定を統合するのが好ましい。連動する複数の機器の設定を統合するためにはユーザインターフェイスの設定項目欄に機器の動作タイミングを設定する項目として応答時間の項目をさらに設けるのが好適である。この応答時間を設定しておけば、前段の機器の動作タイミングの開始又は終了するタイミングを基点として応答時間経過後に後段の機器を動作させることが可能である。
すなわち、請求項6に記載されているように、
前記ユーザインターフェイス表示機構によりユーザインターフェイスとして表示される設定項目欄に各クロマトグラフ関連機器間の動作タイミングの制御に関する設定項目をさらに設け、連動する機器の該動作タイミングを設定することによりある機器の動作に対して他方の機器が適切に応答するように、ある機器の動作が開始又は終了するタイミングを基点として該動作タイミングの制御に関する設定項目に入力された情報に従い、他方の機器の動作タイミングに関する設定を行うのが好適である。
【0013】
また、操作者により設定項目欄に入力された設定情報を各機器に反映するためには、何らかの方法で各機器に設定情報を反映しなければならない。
本発明に係る統合プログラムは、以下の方法により設定を反映している。
例えば、請求項7に記載されているように、
各検出器の設定プログラムを起動し、各クロマトグラフ関連機器のユーザインターフェイスを立ち上げて、該ユーザインターフェイス上で設定情報を入力することにより各検出器の設定を行うのが好適である。
例えば、請求項8に記載されているように、
各検出器の設定ファイルを直接書き換えることにより各検出器の設定を行うのが好適である。
例えば、請求項9に記載されているように、
各機器の設定画面にてキーボード操作と同様の操作をすることにより、各機器の設定項目欄に設定値を入力していき、各機器の設定を行うのが好適である。
【発明の効果】
【0014】
クロマトグラフ関連機器としてカラムユニットの後方に2以上の検出器が接続され、それぞれの検出器から出力される各クロマトグラムは時間軸をもとに並列して表示される。本発明に係るクロマトグラフ統合プログラムが用いられることにより2次元及び3次元のクロマトグラムの時間軸のスケールが調整される。
このときカラムユニットの後方に検出器が直列につながっている場合がある。そのような場合でもその前段の検出器と後段の検出器との流路差を考慮し、検出遅れとして後段の検出器から出力されたクロマトグラムを補正する。
【0015】
また、本発明にかかるクロマトグラフ統合プログラムを用いて設定項目欄に入力された設定情報を一度テンポラリ領域に保存し、該設定情報に基づいて制御プログラムが各機器の設定をすることにした。それにより各機器の製造元が異なることにより機種の相違がある場合や、製造元が同じであっても製造時期が異なるためバージョンの相違することにより設定方法が異なる場合であっても、設定画面はそれほど変化せず同じフォーマットで入力することができる。操作者は設定の際に機種・バージョンの相違を意識する必要がなく、設定項目欄を埋めるだけで各機器の設定をすることが可能となった。
さらに、制御コンピュータに接続された機器の機種・バージョンを自動で判別することにした。その機種・バージョン情報をもとに各機器で必要な設定項目を抽出し、これらを設定項目欄としてユーザインターフェイス上に列挙したことにより、異なる機種・バージョンの機器を測定で用いても操作者は一目で必要な設定項目を確認することができる。
接続する装置を一部変更した場合であっても、機種・バージョンの相違により設定項目欄中の設定項目数の増減や設定値の単位などの多少の変更はあるものの、その変更を最小限に抑え、ほぼ同じ手順で全ての機器の設定ができるので設定時の煩雑さが軽減される。
【0016】
さらに、クロマトグラフ関連機器が直列に接続されている場合においても設定項目欄に応答時間の項目を別途設けることにしたので後段の機器の動作に関する設定をする場合に前段の機器との関係を意識して設定する必要はなくなり設定時の煩雑さが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のクロマトグラフ統合プログラムの各機器の設定をするときの処理構造を示した図である。
【図2】本発明のクロマトグラフ統合プログラムの処理手順をフローチャートにして示した図である。
【図3】本発明に係る機種・バージョン判別機構により接続された機器に関する情報を機種・バージョン表示画面に表示した様子を示した図である。
【図4】本発明に係るユーザインターフェイス表示機構により各機器の設定項目をまとめて表示したときの設定画面を示した図である。
【図5】PDA検出器を制御コンピュータに接続したときの通常の(本発明のクロマトグラフ統合プログラムを用いない場合の)設定画面を示した図である。
【図6】クロマトグラフ関連機器の構成、制御プログラムの処理構造、及びクロマトグラフ関連機器と主処理手段の通信インターフェイスを示した図である。
【図7】出力される複数のクロマトグラムを経過時間を軸として並列して表示したときの様子を示した図である。
【図8】複数の検出器からの様々な形式で表示されるクロマトグラムの処理を示した説明図である。
【図9】複数の検出器から出力される複数のクロマトグラムを並列して表示したときの説明図である。
【図10】各機器から出力される測定結果が複数の画面に表示される様子を示した従来例(上部)と、本発明により一つの画面に測定結果を表示される様子(下部)を示した模式図である。
【図11】各検出器から出力されるクロマトグラムを縦方向に並べ、遅延時間について説明した図である。
【図12】各クロマトグラムのX軸(経過時間)のスケール調整を行っている様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1には本発明の一実施形態にかかるクロマトグラフ統合プログラムの概略構成が示されている。
同図に示す統合プログラム10は、接続された各機器の設定項目欄をまとめて表示する設定画面(ユーザインターフェイス)12と、設定画面に入力された情報を設定情報として各機器の設定が完了するまで一時的に保存するテンポラリ領域14と、記録された設定情報を機器ごとに参照し設定情報の入力を行う制御プログラム16と、制御コンピュータ20に接続されたポンプ・オートサンプラ・検出器等の機種やバージョンを判別する機種・バージョン判別機構18と、各機器の機種・バージョンに対応する設定項目をまとめて設定画面に表示するためのユーザインターフェイス表示機構19と、を備える。
【0019】
機種・バージョン判別機構18は、制御コンピュータ20に接続された機器の機種やバージョンを判別し、各機種の設定に必要な設定項目はユーザインターフェイス表示機構19により設定項目欄として設定画面12上に機器ごとにまとめて表示される。設定項目欄に入力された情報は設定情報としてテンポラリ領域14に一時的に保存される。そして、制御プログラム16は各機器のテンポラリ領域14を参照し、設定情報を各機種の設定に反映させる。
【0020】
図2には本発明にかかるクロマトグラフ統合プログラムの処理手順を表したフローチャートが示されている。クロマトグラフ統合プログラム10は、機種・バージョン判別機構18により現在接続されている各機器の機種・バージョンを調べる(S10)。次に、各機器の機種・バージョン情報に基づき各機器の設定に必要な設定項目に関する情報が機種・バージョン判別機構により選定され、この情報はユーザインターフェイス表示機構19に送られる。ユーザインターフェイス表示機構19は各機器の設定に必要な設定項目を設定画面12上にまとめて設定項目欄として表示する(S12)。操作者により設定項目欄に設定値が入力されると(S14)、この設定値は設定情報としてテンポラリ領域14に保存される(S15)。制御プログラム16はテンポラリ領域14を参照し(S16)、テンポラリ領域14に保存された設定情報に基づいて各機器の設定を行う(S18)。
【0021】
次に、フローチャートで示した各処理手順についてより詳細に説明する。
図3には機種・バージョン表示画面30が示されている。この画面には、機種・バージョン判別機構18により調べられた現在接続されている各機器の機種・バージョン情報が示される。
機種・バージョンごとに必要な設定項目に関する情報は、ファイル、もしくはデータベース等に記録されている。機種・バージョン判別機構が該データベースを検索し、個々の機器の設定に必要な情報をユーザインターフェイス表示機構19に提供する。そして、ユーザインターフェイス表示機構19は、設定画面12に各機器の設定項目欄を表示する。
【0022】
クロマトグラフを構成する各機器の種類は機器の種類表示欄34に一覧表示される。これらの機器のうち制御コンピュータに接続されている機器は接続状態表示ボックス32が塗りつぶされ、接続されていない機器は白抜きで表示される。さらに、制御コンピュータに機器が接続されている場合はその機種の名称が機種名表示欄36に表示される。
例えば、図3の機種・バージョン表示画面30によれば、オートサンプラは接続状態表示ボックス32が塗りつぶされて表示されていることから接続状態にあり、機種名表示欄36より機種名が「AS−2059」であることが確認できる。一方、カラムオーブンは接続状態表示ボックス32が塗りつぶされていないので、接続されていないことになる。
なお、接続状態となっているが機種・バージョンが未登録の機種で判別できない場合は、接続状態表示ボックス32が塗りつぶされ、機種名表示欄36には「不明」と表示される。
【0023】
設定画面の表示について説明する。
図4には各機器の設定画面40が表示されている。設定画面40には接続される機器数だけタブが表示され、操作者はタブを選択することにより各機器の設定をすることができる。
機種・バージョンが異なることにより表示される設定項目も異なる。各機器の設定に必要な情報を収集するために、事前に機種・バージョン判別機構18がデータベース等を検索し、ユーザインターフェイス表示機構19が機種・バージョンの設定項目に関する情報を受け取る。ユーザインターフェイス表示機構19は機種・バージョンに対応した設定項目を設定画面40に表示する。
例えば、現在、図4ではPDA検出器のタブ42aが選択されており、それに対応した設定項目が列挙されている。実際のPDA検出器において感度の設定が「LOW−NORMAL−HIGH」の三段階の設定ができる仕様となっているので、ラジオボタンを選択することにより設定できるようになっている。
一方、機種又はバージョン間で設定項目欄に入力すべき単位が一致しない場合でも、設定画面では同じ単位で入力できるようにしてもよい。例えば、図4ではサンプリング間隔の単位がヘルツ(Hz)で設定できる仕様となっているが、実際の装置ではミリ秒(msec)で設定する仕様となっている。これは、設定画面40上では他の機種・バージョンと統一するために単位をヘルツ(Hz)で入力できようにしている。そして、実際に各機器に設定を反映するときには単位換算がなされる。
そのようにして設定の入力形式を統一することにより機種・バージョンが異なる場合であっても、操作者は仕様の相違をほとんど意識することなく設定することができる。
なお、単位換算は制御プログラム16により事後的にテンポラリ領域に保存された設定情報の単位を換算してから各機器の設定がなされる。
【0024】
また、タブを選択することで他の機器を入力に切り替えられる。例えば、図4では、ポンプを設定するときは42bのタブ、オートサンプラを設定するときは42cのタブ、カラムオーブンを設定するときは42dのタブ、UV検出器を設定するときは42eのタブ、FL検出器を設定する場合は42fのタブをそれぞれ選択することにより設定画面40に各機器の設定項目欄が表示される。このように各機器の設定をするときに設定画面を逐一切り替える必要がないので操作者の負担が軽減される。
【0025】
制御プログラム16の操作について説明する。制御プログラム16は、設定画面40に入力された各機器の設定情報を各機器に反映する。設定情報を反映する時は、テンポラリ領域14を参照した後、各機器にある設定ファイルを直接書き換えてもよいし、各機器で表示される設定画面を立ち上げて、各機器のユーザインターフェイスを利用して設定してもよい。
単独のPDA検出器の設定画面の具体例を図5に示した。
図4と図5を比べると設定項目の順番が異なるが、これはユーザインターフェイス表示機構18により図4の表示を他の機種等と統一させるために図5の設定項目欄の順番を変更して設定画面40を表示したことによる。
図4の設定項目欄に入力された情報を図5の実際の装置の設定画面にて反映する場合は、制御プログラム16はショートカットを利用する等してキーボードを操作するように操作し、設定順序を変更して設定を行うことにしてもよい。つまり、タブ操作により設定項目欄を切り替えながら適切な位置に適切な設定値を入力する。
【0026】
なお、各機器の設定ファイルに直接入力する場合も各機器の設定ファイルの保存形式に沿った内容に書き換えられる。例えば、ある機器の設定ファイルにおいて設定値を「コンマ(,)」により区切る形式でファイル保存されている場合は、制御プログラム16は設定値の順序を整列してからコンマで区切って設定ファイルを作成し、該機器の設定ファイルを更新する。
【0027】
以上のように、クロマトグラフ統合プログラム10は各機器の設定ファイルとは別途にテンポラリ領域14を設け、制御プログラムにより各機器の設定方法に合わせてテンポラリ領域14に記録された情報を各機器の設定に反映することとした。これにより各機器の設定画面の構成が独特であっても概ね表示形式を統一することができ、操作者は機種・バージョンの相違を意識することなく設定することができる。これにより、操作感に一体感を出すことができ、操作者の作業負担が軽減される。
また、他の機器を入力するときの設定項目の切り替えはタブを選択することで行え、設定画面を機器ごとに切り替える必要がない。
【0028】
以上のように、各機器の設定の入力が統合されることにより入力を容易にし、操作者の負担を軽減できる。
ところが、ある機器が動作を開始もしくは終了するタイミングで他の機器が動作を開始することがあり、この場合、後者の機器の設定が煩雑となる。前者の機器の動作の開始もしくは終了のタイミングを基点として、後者の機器の動作がそのタイミングと同時もしくは一定時間が経過した後に開始されなくてはならず、操作者はそのことを考慮して後者の機器の動作の開始タイミングを設定しなければならないためである。
そこで、本発明に係る統合プログラムが表示する設定項目欄中に各機器間の動作タイミングに関する設定項目を設けることにした。一例として、「応答時間」という設定項目を新たに設ければ、ある機器が何らかの動作を開始もしくは終了した時点から「応答時間」が経過した後、他の機器の動作を開始することが可能となる。それにより、前者の機器の動作のタイミングを考慮する必要がなくなり、後者の機器の設定が容易となる。
例えば、クロマトグラフ上の切替バルブを切り替えた3.0秒後に、UV(紫外)検出器の測定波長を変更する場合が挙げられる。通常、切替バルブの切り替えのタイミングから3.0秒後にUV検出器の測定波長を変更するよう、切替バルブの切替タイミングを考慮してUV検出器を設定する。
ところが、本発明においてはクロマトグラフ統合プログラム10に「応答時間」という設定項目を設けたのでUV検出器の設定の際にこのようなことを考慮する必要がなく、設定が容易となる。UV検出器の「応答時間」を3.0秒に設定することにより切替バルブの切り替え動作後、3.0秒後にUV検出器の測定波長を変更するよう設定される。
このように、各機器の動作タイミングを統合化し制御することで操作者の設定時の負担軽減に大きく貢献している。
【0029】
次に、出力データの統合に関して説明する。図6には本発明の一実施形態にかかる高速液体クロマトグラフの概略構成が示されている。同図に示す高速液体クロマトグラフ60は、移動相溶媒の送液を行う送液手段62と、試料の注入を行う試料注入手段66と、混合物の分離を行う分離手段70と、分離手段70で分離された成分の検出を行う検出器(1)74、検出器(2)76と、コンピュータ80とを備える。検出器(1)74、検出器(2)76はそれぞれ異なる種類の検出器を設置することができ、本実施形態においては検出器(1)をPDA検出器、検出器(2)を蛍光(FL)検出器とする。
また、コンピュータ80は、主処理手段90と、記憶手段92と、入出力制御手段86と、表示手段82と、入力手段88とを備える。
【0030】
本実施形態において特徴的なことは、高速液体クロマトグラフ用プログラム94により、高速液体クロマトグラフ60の各装置に関する情報の入力画面及び出力画面であるユーザインターフェイス84を、各装置間で統一することを、コンピュータ80に実現させたことである。高速液体クロマトグラフ用プログラム94を、記憶手段92に記憶している。
【0031】
この結果、本実施形態においては、コンピュータ80の入出力制御手段86が、表示手段82の画面に、送液手段62、試料注入手段(オートサンプラ)66、分離手段70、検出器(1)74、及び検出器(2)76に関する情報の入力画面及び出力画面であるユーザインターフェイス84を表示している。
【0032】
本実施形態において、ユーザインターフェイス84は、検出器(1)74及び検出器(2)76の各装置の動作制御に関する情報の入力画面を統一している。また、ユーザインターフェイス84は、検出器(1)74及び検出器(2)76で得られた測定データの出力画面を統一している。
【0033】
本実施形態においては、コンピュータ80が高速液体クロマトグラフ用プログラム94のデータ表示機能を実行すると、表示手段82にデータ表示画面が表示され、一のデータ表示画面には、検出器(1)74及び検出器(2)76で得られた測定データが表示される。
また、本実施形態においては、コンピュータ80が高速液体クロマトグラフ用プログラム94の解析結果表示機能を実行すると、表示手段82に解析結果表示画面が表示され、一の解析結果表示画面には、検出器(1)74及び検出器(2)76で得られた測定データに基づく解析結果が表示される。
【0034】
また、コンピュータ80は、検出器(1)74及び検出器(2)76からの通信と、検出器以外の各装置からの通信、例えば送液手段62、試料注入手段66、分離手段70、紫外可視検出器76からの通信とを統合し、ユーザインターフェイス84での表示情報とすることで、プログラム上で一つの情報のように見せる。本実施形態は、各装置間で見た目を統一したユーザインターフェイス84により、同じ試料から得られた二次元クロマトグラムと三次元クロマトグラムとに一体感をもたせて表示させる。
また、コンピュータ80は、同じ試料を測定して得られた検出器(1)74からの信号と、検出器(2)76からの信号とを統合し、一つのデータセット96として、記憶手段92に保存している。
【0035】
なお、本実施形態においては、送液手段62が、送液ポンプ64を含む。
また、試料注入手段66は、オートサンプラよりなり、送液手段62より送出される移動相中に試料を自動注入する。
分離手段70は、分離カラム72、カラムオーブン68を含む。カラムオーブン68は、カラム72を内装する。
検出器74(1)及び検出器(2)76は、分離カラム72の出口に直列に接続されている。
【0036】
また、本実施形態において、主処理手段90は、CPU、ROMを含む。
また、記憶手段92は、ハードディスクを含む。
また、表示手段82は、ディスプレイ、プリンタを含む。
また、入力手段88は、キーボード、マウスを含む。
【0037】
そして、主処理手段90は、記憶手段92が接続されると共に、入出力制御手段86を介して、表示手段82と入力手段88とが接続されている。
また、主処理手段90は、検出器(1)74(PDA検出器)より出力されてくる三次元のデータを受け取り、また、検出器(2)76より出力されてくる二次元のデータを受け取り、これらのデータを解析処理するデータ処理の機能と、各装置62,66,70,74,76の動作を制御する機能とを併せもっている。これらの機能は、主処理手段90に組み込まれる種々のプログラムを実現することにより達成される。
【0038】
本実施形態にかかる高速液体クロマトグラフ60は概略以上のように構成され、その作用を以下に説明する。
すなわち、本実施形態においては、高速液体クロマトグラフ60を構成する各装置の動作制御及びデータ収集の統合化を図るため、表示手段82の画面に表示されるユーザインターフェイス84の見た目を、検出器(1)74と、検出器(2)76と、各検出器以外の各装置62,66,70との間で統一している。
【0039】
この結果、本実施形態においては、統一したユーザインターフェイス84により、同じ試料より得られた二次元クロマトグラムと三次元クロマトグラムのそれぞれに一体感をもたせて表示させることができる。
本実施形態においては、検出器(1)74、検出器(2)76よりの通信と、検出器以外の各装置62,66,70よりの通信とを統合し、高速液体クロマトグラフ用プログラム94の上で一つの情報のように見せることができる。
本実施形態においては、検出器74(1)よりの信号と、検出器(2)76よりの信号を統合し、一つのデータセット96として、記憶手段92に保存することができる。
【0040】
この結果、本実施形態においては、分析者に操作性に関する一体感を与え、検出器(1)74を含む高速液体クロマトグラフ60を、一つの(同じ)システムを使用していると強く意識させ、分析者が感じている不自然さを払拭すると共に、データに統一性を持たせることができる。
【0041】
なお、従来、高速液体クロマトグラフを構成する各装置の動作制御及びデータ収集を統合するためには、転送手段、通信手段等のハードウェアを統一することが常套手段であったのに対し、本実施形態では、高速液体クロマトグラフを構成する各装置に関する情報の入力画面及び表示画面であるユーザインターフェイス84の見た目を、各装置間で統一している。
この結果、本実施形態では、従来方式、つまり転送手段等のハードウェアを統一する手法では、極めて困難であった、高速液体クロマトグラフを構成する各装置の動作制御及びデータ収集の更なる向上を図ることができる。
【0042】
以下、前記本実施形態の作用について具体的に説明する。
<通信>
前記情報の入力後、ユーザインターフェイス84からの情報の各装置への通信を開始する。
また、本実施形態においては、コンピュータ80が、検出器(1)74及び検出器(2)76や、他のクロマトグラフ関連機器同士の通信を統合しているので、プログラム94の上で一つの情報のように見せることができる。
【0043】
<測定>
送液ポンプ64により、移動相を一定流量で分離カラム72に流しておき、オートサンプラ66より移動相中に試料液を注入して分離カラム72に送り込む。注入された試料が分離カラム72を通過する間に、試料中の各成分は異なる保持時間をもって分離される。
【0044】
<各検出器からのデータ収集>
分離カラム72からの溶出成分を、検出器(1)74、及び検出器(2)76で検出し、クロマトグラムを得る。
ここで、検出器(1)74はPDA検出器であり、分離カラム72から溶出した各成分を所定時間間隔毎に波長方向に分散して検出する。この検出信号は、主処理手段90へ送られる。検出器(1)74で得られるデータは、時間、強度、及び波長を含む三次元のデータである。
また、検出器(2)76は蛍光検出器であり、蛍光波長のクロマトグラムを所定時間間隔毎に検出する。この検出信号は、主処理手段90へ送られる。蛍光検出器76で得られるデータは、時間、強度を含む二次元のデータである。
【0045】
ここで、本実施形態においては、コンピュータ80が検出器(1)74からの測定データの収集と、検出器(2)76からの測定データの収集とを行っている。
このために本実施形態においては、コンピュータ80が、検出器(1)74からの信号と、検出器(2)76からの信号とを、一つのデータセット96として、記憶手段92に保存している。
この結果、本実施形態においては、検出器(1)74及び検出器(2)76で得られた測定データに統一感を持たせることができる。
【0046】
<解析、情報の表示>
前記データの収集後、解析を行い、その解析結果を表示手段82の画面に表示する。
ここで、本実施形態においては、コンピュータ80が、統一したユーザインターフェイス84により、同じ試料から得られた二次元クロマトグラムと三次元クロマトグラムの時系列を調整して一体感をもたせて、解析結果を表示している。
この結果、本実施形態においては、分析者に操作性に関する一体感を与え、検出器(1)74を含む高速液体クロマトグラフ60を、同じシステムで使用していると強く意識させ、分析者が感じている不自然さを払拭すると共に、データに統一性を持たせることができる。
【0047】
以下、前記本実施形態の作用について、より具体的に説明する。
本実施形態において、ユーザインターフェイス84は、各装置に共通の、装置構成設定画面、条件設定画面、データ表示画面、及び解析結果表示画面を含む。本実施形態にかかる高速液体クロマトグラフ用プログラム94は、装置構成設定機能、条件設定機能、データ表示機能、及び解析結果表示機能を含む。
【0048】
(データ収集時のモニター)
検出器が複数接続されていれば、複数のクロマトグラムが出力される。また、中には、ひとつの検出器から、複数の二次元クロマトグラムを出力するものもある。それらを区別するために、通常は、数字、アルファベット等により、データチャンネルを付ける。
図7、図8に示したように、本実施形態においては、二つの方法で二次元クロマトグラムが出力される。一つは、PDA検出器を除く各検出器より収集した二次元クロマトグラムである。これを以下、(直接)測定した二次元クロマトグラム102と呼ぶ。もう一つは、PDA検出器により得られた三次元のデータ(三次元クロマトグラム104)から、ある特定の波長を選択して抽出した二次元クロマトグラムである。これを以下、(PDAデータから)抽出した二次元クロマトグラム105と呼ぶ。
【0049】
さらに、三次元クロマトグラム104の全体を表示する方法についても、画面の横方向にX軸(経過時間)、縦方向にY軸(波長)を示し、強度は色により表示する等高線表示(例、106)や、画面上に立方体を描き、X軸(経過時間)、Y軸(波長)、Z軸(強度)をそれぞれプロットする3D表示がある。
これまで、図6の検出器(2)76等から出力される測定した二次元クロマトグラムを各検出器専用のプログラムの画面に表示し、図6の検出器(1)74のPDA検出器から抽出した二次元クロマトグラムと三次元クロマトグラムを専用プログラムの画面に表示していた。このようにそれぞれ分けて表示していたものを、本実施形態においては、一つの画面に収めている。
【0050】
本実施形態において、ユーザインターフェイス84は、各装置に共通のデータ表示画面を含む。一のデータ表示機能の実行を指示するのみで、一のデータ表示画面が開く。一のデータ表示画面には、検出器(1)74で得られた測定データと、検出器(2)76で得られた測定データとが表示される。
【0051】
本実施形態は、従来方式、つまり検出器(1)74で得られた測定データの表示画面と検出器(2)76で得られた測定データの表示画面とを別操作で開くものや、検出器(1)74で得られた測定データと検出器(2)76で得られた測定データとを別画面(別ウインドウ)に表示するものと比較して、見た目や操作の統一感の向上が図られている。
【0052】
例えば、図7に示されるように、表示手段の画面には、ユーザインターフェイスの一例であるデータ収集時データ表示画面100が表示されており、画面の上部から、測定した二次元クロマトグラム102、抽出した二次元クロマトグラム105、三次元クロマトグラム104(図8)の等高線表示106をそれぞれ縦方向に並べることにより、一つの分析システムから測定した全てのデータを、一括モニターしているような印象を分析者に強く与えることができる。
【0053】
ここで、測定した二次元クロマトグラムと、抽出した二次元クロマトグラム、及び三次元クロマトグラムとでは、データポイント間隔(データ取込間隔)が異なる場合がある。このため各クロマトグラムの表示を縦方向に並べたときにクロマトグラム同士の長さがずれてしまうことが想定される。そこで、同図に示されるように各データ、例えば測定したクロマトグラム102、抽出したクロマトグラム105、三次元クロマトグラムの等高線表示106において、X軸(経過時間,横軸)のスケールを揃えることにより一体感をより与えることが可能になる。
なお、本実施形態では、色使い、フォント、描画方法などを統一することによるデザイン上の一体感を出す工夫もしている。
【0054】
(データ収集の統合)
本実施形態ではデータの収集に際してもコンピュータ80が、図8に示されるように検出器(1)74より得られた三次元クロマトグラム105と、検出器(2)76より得られた測定した二次元クロマトグラム102とを高速液体クロマトグラフ用プログラム94により一つの集合体として扱っている。
【0055】
(各検出器から出力されるデータ保存)
さらに、本実施形態では、前述のようにして収集された三次元クロマトグラム104より抽出した二次元クロマトグラム105を抽出し、これらのクロマトグラム102、104、105を全て一つの試料から得られた測定データセット96として扱う。
このデータセット96を一元管理し、ハードディスクやデータベース等の記憶手段92に保存する。
【0056】
(データ解析)
本実施形態において、ユーザインターフェイスは、各検出器に共通の、解析結果表示画面を含む。一の解析結果機能の実行を指示するのみで、解析結果表示画面が開かれる。一の解析結果表示画面には、PDA検出器(検出器(1))で得られた測定データに基づく解析結果と、PDA検出器以外の検出器(検出器(2)等)で得られた測定データに基づく解析結果とが表示される。
本実施形態は、従来方式、つまりPDA検出器で得られた測定データに基づく解析結果の表示画面と他の検出器で得られた測定データに基づく解析結果の表示画面とを別操作で開くものや、PDA検出器で得られた測定データに基づく解析結果と他の検出器で得られた測定データに基づく解析結果とを別画面(別ウインドウ)に表示するものと比較し、見た目や操作の統一感の向上が図られている。
【0057】
また、分析者はデータを開くとき、個々の分析により得られた測定データセットにより識別するので、一つの分析により得られた測定した二次元クロマトグラム、抽出した二次元クロマトグラム、三次元クロマトグラムを一括して取り扱うことができる。すなわち、本実施形態では、測定したデータを解析するプログラムに関しても、一つの画面に集約している。
保存されていたデータを表示する画面、つまり本実施形態のユーザインターフェイスの一例である保存データ表示画面も、例えば、図7に示されているように画面の上部から、測定した二次元クロマトグラム102、抽出した二次元クロマトグラム105、三次元クロマトグラムの等高線表示106をそれぞれ縦方向に並べ、X軸(経過時間)のスケールを揃えるようにすれば、一つの分析システムから測定した全てのデータを一目できる。全ての縦方向に並べたクロマトグラム上で、同期して動くカーソルを表示すれば、ピークの位置を直接比較することができる。
マウス操作、メニュー操作、ボタン操作、キー操作も統一し、メニューやツールボタンも統合することでさらに統一感が増す。
ピーク検出については、通常、チャンネルが異なれば、クロマトグラム全体の強度や形状が異なる。このため、同じピーク検出パラメータで異なるチャンネルを処理できる可能性はあまり多くないかもしれないが、ピーク検出処理をさせたくない時間帯(注入から非保持成分の溶出時間まで等)は、全てのチャンネルでほぼ等しい。このため、各チャンネルのクロマトグラムの強度にさほど大きな差がなければ、ピーク検出パラメータを共有でき、便利である。
さらには、図9に示されるような解析結果表示画面84d(ユーザインターフェイス)では、ピーク検出、同定、検量線により定量値を計算し、それを同じ成分(ピーク)の計算結果を、測定したクロマトグラム102a、102bと抽出したクロマトグラム105a,105bとを併せてチャンネル毎に並べ表示することもできる。この場合のピーク同定、検量線作成(定量計算)用のメソッドも、測定した二次元クロマトグラムと抽出した二次元クロマトグラムの両方が扱えるようにし、統一している。
印刷レポートも、測定した二次元クロマトグラム、抽出した二次元クロマトグラム、三次元クロマトグラムを、同一用紙内に印刷することができるようにし、一つの試料から得られた測定データの一覧が見てとれるようにする。
【0058】
以上、説明したように従来方式では、例えば図10(A)に示されるように、ユーザが3つの画面120、122、124を見比べていたのに対し、本実施形態では、同図(B)に示されるようにユーザが1つの画面(ユーザインターフェイス)の内容84e,84f,84gを切り替えている。
この結果、本実施形態は、従来方式に比較し、分析者に操作性に関する一体感を与え、複数の検出器を含む高速液体クロマトグラフを、ひとつのシステムを使用していると強く意識させ、分析者が感じている不自然さを払拭すると共に、データに統一性を持たせることができる。
【0059】
更なる統合化
なお、本実施形態においては、高速液体クロマトグラフのPDA検出器と他の検出器との更なる統合を図るためには、下記のような検出器の接続位置、クロマトグラムの出力順番、クロマトグラム出力時のスケール調整を考慮することが非常に好ましい。
【0060】
(1)検出器の接続位置
本実施形態においては、カラムユニットの後方に直列に接続されたPDA検出器と他の検出器との統合を図るためには、検出器の接続位置による同一ピークの保持時間のずれを補正することも非常に重要である。
すなわち、一般的には、表示手段の画面に、測定した二次元クロマトグラムと抽出した二次元クロマトグラムとを縦方向に並べて表示した場合、検出ピークの保持時間に、ずれが生じる場合がある。なお、ここでの保持時間とは試料導入点からピークの頂上までにかかった時間をいう。
これは、各二次元クロマトグラムはそれぞれ異なる検出器からの測定データに基づくものであり、これらの検出器はカラムユニットの後方で直列に接続されている。そのため、各検出器間で流路差が生じることによる。カラムユニットにより分離された成分(ピーク)は、カラムユニットから排出された後、直列に接続された各検出器を通過していく。このとき、前段の検出器を通過する時間と比べるとその後段にある検出器を通過する時間は遅延するのが通常である。
【0061】
これに対し、本実施形態では、コンピュータは各検出器でのピークの保持時間のずれを補正して同定を行うために、予め内部標準物質などの保持時間の指標となり得る成分を含む試料を測定して、ピーク同定テーブル98(図6)を作成しておく。つまり、コンピュータが標準物質の保持時間に基づいて、同一成分の各検出器での保持時間のずれを補正する。
コンピュータが、標準物質の保持時間に基づいて、PDA検出器で得られたクロマトグラフ上での保持時間と、他の検出器で得られたクロマトグラフ上での保持時間とを比較し、各検出器間での保持時間のずれを求める。
すなわち、本実施形態では、送液手段で移動相溶媒を流しておき、高速液体クロマトグラフの全ての検出器及びPDA検出器の全ての抽出した測定波長で検出することのできる内部標準物質などの保持時間の指標となり得る成分を含む試料を試料注入手段より注入し、分離手段からの内部標準物質を各検出器で検出し、各検出器のデータを収集するように、各装置の動作制御を、コンピュータに実行させている。
ここで、コンピュータは各検出器のデータに基づいて得られたクロマトグラムからそれぞれ内部標準物質に対応するピークの頂点を検出し、各検出器間の遅延時間を自動計算する。
そして、コンピュータは求められた各検出器間の遅延時間に基づいて各装置の制御及びデータ収集を行っており、例えば、各検出器でのピーク同定時間を管理している。
【0062】
本実施形態では、同一成分の同定時間を各検出器に設定する際、最も前方に接続した検出器で検出された保持時間(同定時間)のみ入力することにより、コンピュータが、他の検出器(チャンネル)での同定時間を、算出した遅延時間で補正することにより、自動的に求めている。
この結果、本実施形態では、コンピュータにより、最も前方に接続した検出器で検出された保持時間(同定時間)を基準に、他の検出器での同定時間を制御することができる。
したがって、本実施形態では、各検出器の制御及びデータ収集の統括的な管理を、コンピュータに、より確実に実現させることができる。
【0063】
(2)クロマトグラムの出力順番
また、本実施形態においては、PDA検出器と他の検出器との更なる統合を図るため、コンピュータが、表示手段の画面に、各検出器で得られたクロマトグラムを縦方向に並べて出力する際に、検出器の接続順に各クロマトグラムを並べることが非常に好ましい。
例えば図11(A)に示されるように、分離カラム72の後段に、PDA検出器74、蛍光検出器(FL)76b、示差屈折率検出器(RI)76cが直列に接続されている場合、コンピュータは、同図(B)に示されるように、PDA220nmの二次元クロマトグラム105a、PDA280nmの二次元クロマトグラム105b、蛍光検出器(FL)の二次元クロマトグラム102a、示差屈折率検出器(RI)の二次元クロマトグラム102bを、表示手段の画面に縦方向に並べて出力している。
【0064】
このように本実施形態においては、コンピュータが、各クロマトグラムを縦方向に並べて画面表示する際に、チャンネル番号ではなく、対象となる検出器の接続順に並べることにより、溶出ピークの位置から、各検出器間の遅延時間を算出することができる。遅延時間を算出するために測定試料に全ての検出器(及び全ての抽出した測定波長)で検出することができる内部標準物質を含め、コンピュータに各検出器間の遅延時間を自動計算させるのが好適である。
例えば同図(B)に示されるように、溶出ピークPの位置からPDA検出器での保持時間と蛍光検出器(FL)での保持時間とのずれ時間a、例えばPDA検出器での保持時間と示差屈折率検出器(RI)での保持時間とのずれ時間bを求めることができる。また、溶出ピークPの位置から、蛍光検出器(FL)での保持時間と示差屈折率検出器(RI)での保持時間とのずれ時間cを求めることができる。
【0065】
これによる利点は、ピーク同定テーブルを作成する際、全てのチャンネルもしくは複数のチャンネルで検出される同じ成分(ピーク)の同定時間を入力するときに、目的成分(目的ピーク)に関して、最も前方に接続した検出器(PDA)で検出された保持時間(同定時間)のみ入力することにより、コンピュータに、他の検出器(チャンネル)での同定時間を、算出した遅延時間で補正させることにより、自動的に求めさせることができる。
【0066】
例えば同図(C)に示されるようなピーク同定テーブルでは、目的成分(目的ピーク)に関して、最も前方に接続した検出器で検出された保持時間(同定時間)のみを入力する。
同図では、ピーク1に関して、PDAで検出された保持時間(同定時間)=2.000のみを入力する。また、同図では、ピーク2に関して、FLで検出された保持時間(同定時間)=5.000のみを入力する。
【0067】
この結果、各ピークの各検出器での同定時間は、以下の通りとなる。
ピーク1のFL検出器での同定時間は、2.000+a
ピーク1のRI検出器での同定時間は、2.000+b
ピーク2のRI検出器での同定時間は、5.000+c
【0068】
(3)スケールの調整
また、本実施形態においては、PDA検出器と他の検出器の更なる統合を図るためには、クロマトグラムの出力時、スケールの調整を行うことも非常に好ましい。
すなわち、測定した二次元クロマトグラム、抽出した二次元クロマトグラム、及び三次元クロマトグラムでは、データ取込間隔が異なる場合がある。データ取込間隔が異なるクロマトグラム同士を縦方向に並べると、データポイントの数が異なるため、X軸(経過時間)方向のスケールを合わせることができない。スケールを合わせることができないと、縦方向に並べてもスケールがばらばらであり並べる意味がない。
【0069】
これに対し、本実施形態においては、コンピュータが、スケールを調整するための、データ保存機能と、スケール調整機能とを備える。
【0070】
(i)保存されるデータ
本実施形態においては、コンピュータが、各検出器からの測定データを、少なくとも一の共通するデータ項目を含む表にして記憶手段に記憶している。
本実施形態では、例えば図12(A)に示されるように、チャンネルA,Bからの各クロマトグラムデータは、保持時間(経過時間)を共通項目としており、データポイントID、保持時間(経過時間)、強度の三項目のデータを表にして保存している。
【0071】
(ii)スケール調整
本実施形態においては、コンピュータが、共通項目のデータに基づき、フォトダイオードアレイ検出器に関する情報の表示画面と他の検出器に関する情報の表示画面とに統一感を与えるため、記憶手段に記憶されている各検出器データを、表示手段の画面に表示している。
本実施形態では、コンピュータが、例えば同図(B)に示されるように、各クロマトグラムを画面に縦方向に並べて画面表示する際、各クロマトグラムのX軸(経過時間)のスケールが一致するように、各クロマトグラムのX軸(経過時間)のスケールを調整している。
このようにしてコンピュータが、各クロマトグラムを画面に縦方向に並べて画面表示することにより、各クロマトグラムの比較を適切に及び容易に行うことができる。
このように本実施形態では、コンピュータが、各検出器間において共通する項目である保持時間(経過時間)のデータに基づいて、保存時及び表示時の各データを相関させることができるので、データ収集の統合化を確実に行うことができる。
【0072】
<検出器の種類>
なお、本実施形態では、前記フォトダイオードアレイ検出器(PDA)と同様に、質量分析検出器(MS)を扱うこともできる。
【符号の説明】
【0073】
10 クロマトグラフ統合プログラム
12 設定画面
14 テンポラリ領域
16 制御プログラム
18 機種・バージョン判別機構
19 ユーザインターフェイス表示機構
20 制御コンピュータ
30 機種・バージョン表示画面
32 接続状態表示ボックス
34 機器の種類名表示欄
36 機器名表示欄
40 設定画面
42a PDA検出器設定タブ
42b ポンプ設定タブ
42c オートサンプラ設定タブ
42d カラムオーブン設定タブ
42e UV検出器設定タブ
42f FL検出器設定タブ
50 本実施例で使用されたPDA検出器の設定画面
60 高速液体クロマトグラフ
62 送液手段
64 送液ポンプ
66 試料注入手段
68 カラムオーブン
70 分離手段
72 分離カラム
74 PDA検出器
76 PDA検出器以外の検出器
80 コンピュータ
82 表示手段
84 ユーザインターフェイス
86 入出力制御手段
88 入力手段
90 主処理手段
92 記憶手段
94 高速液体クロマトグラフ用プログラム
96 データセット
98 同定テーブル
100 データ収集時データ表示画面
102 測定した二次元クロマトグラム
104 三次元クロマトグラム
105 抽出した二次元クロマトグラム
106 等高線表示
110 SCSI
112 RS232
120 装置コントロールモニター画面
122 HPLCデータ測定解析画面
124 PDA検出器測定解析画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各独立した制御プログラム及び設定ファイルを有するクロマトグラフ関連機器を統合する統合プログラムにおいて、
クロマトグラフ関連機器は、
試料中に含まれる物質の物性の差異を利用して物質を成分ごとに分離するカラムユニットと、
該カラムユニットの後方に接続された2以上の検出器と、を含み、
各クロマトグラフ関連機器はそれぞれの規格の通信インターフェイスを介して制御コンピュータに接続されており、
各検出器の出力情報を所望の単位に変換し、時間軸スケールを統一して2以上の2次元クロマトグラム又は3次元クロマトグラムを並列して表示する出力統合化機構を備えることを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムにおいて、
前記3次元クロマトグラムから特定波長の2次元クロマトグラフを抽出したことを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプログラムにおいて、
前記2以上の検出器は前記カラムユニットの後方に直列に接続されており、
前記出力統合化機構は、直列に接続された前段の検出器と後段の検出器の流路差による検出遅れの補正を行うことを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のプログラムにおいて、
前記統合プログラムは、各機器の設定項目を一つの設定項目欄にまとめて表示するためのユーザインターフェイスを表示するユーザインターフェイス表示機構と、
前記2以上の機器をそれぞれ制御コンピュータに接続することにより、各機器の機種・バージョンを判別し、各機器に必要な設定項目を選定し、前記ユーザインターフェイス表示機構に設定項目に関する情報を提供する機種・バージョン判別機構と、をさらに備えることを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記統合プログラムは、各機器の機種・バージョンがそれぞれ異なる場合であっても、前記制御プログラムにより前記ユーザインターフェイス上では各機器の設定を所望の単位で入力できるものとし、各機器の設定項目に対応させるため入力された情報を単位換算して各機器の設定を行う設定単位統合化機構をさらに備えることを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項6】
請求項1〜5に記載のプログラムにおいて、
前記ユーザインターフェイス表示機構によりユーザインターフェイスとして表示される設定項目欄に各クロマトグラフ関連機器間の動作タイミングの制御に関する設定項目をさらに設け、連動する機器の該動作タイミングを設定することによりある機器の動作に対して他方の機器が適切に応答するように、ある機器の動作が開始又は終了するタイミングを基点として該動作タイミングの制御に関する設定項目に入力された情報に従い、他方の機器の動作タイミングに関する設定を行うことを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項7】
請求項4〜6に記載のプログラムにおいて、
前記統合プログラムは、各検出器の設定プログラムを起動し、各クロマトグラフ関連機器のユーザインターフェイスを立ち上げて、該ユーザインターフェイス上で設定情報を入力することにより各検出器の設定を行うことを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項8】
請求項4〜7に記載のプログラムにおいて、
前記統合プログラムは、各検出器の設定ファイルを直接書き換えることにより各検出器の設定を行うことを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。
【請求項9】
請求項4〜6に記載のクロマトグラフ統合プログラムにおいて、
前記統合プログラムは、各機器の設定画面にてキーボード操作と同様の操作をすることにより、各機器の設定項目欄に設定値を入力していき、各機器の設定をすることを特徴とするクロマトグラフ統合プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−237635(P2012−237635A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106519(P2011−106519)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)