説明

クロマトグラフ質量分析データ処理装置

【課題】構造や特徴が類似した複数の化合物を包含する化合物系列についての有益な情報を簡単な操作・作業で取得できるようにする。
【解決手段】クロマトグラフ質量分析により収集したデータに基づいて、保持時間と質量電荷比とを二軸にとり、信号強度を等高線として描いた2次元的な等強度線グラフを作成して表示する(S1)。オペレータがそのグラフ上でマウスのドラッグ操作等により任意の範囲を指定すると(S2)、指定された範囲に含まれるデータを収集し、保持時間毎に質量電荷比軸方向の信号強度を積算し、その積算値に基づいて積算マスクロマトグラムを作成する(S4、S5)。また、質量電荷比毎に保持時間軸方向の信号強度を積算し、その積算値に基づいて積算マススペクトルを作成する(S6、S7)。そして、これらを等強度線グラフと同一画面上に表示する(S8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)などのクロマトグラフ質量分析装置により収集されたデータを処理するクロマトグラフ質量分析データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GC/MSやLC/MSなどのクロマトグラフ質量分析装置では、リテンションタイム(保持時間)、質量電荷比、信号強度という3つのディメンジョンを持つデータが収集され、このデータを処理することにより、特定の質量電荷比についての保持時間と信号強度との関係を示すマスクロマトグラム、特定の保持時間における質量電荷比と信号強度との関係を示すマススペクトル、質量電荷比を限定しない保持時間と信号強度との関係を示すトータルイオンクロマトグラムが作成される。
【0003】
こうして収集されたデータを解析処理するために、従来のこの種の装置では、様々な形態で上記グラフが表示されるようになっている。例えば、特許文献1に記載の装置では、異なる質量電荷比に対する複数のマスクロマトグラムの形状を比較したり波形処理を行ったりするために、多数のクロマトグラムの描線の色を変えて重ね画きしたグラフを表示させたり、或いは、ベースラインを少しずつ縦軸(信号強度軸)方向にずらしながら多数のマスクロマトグラムを重ね描きしたグラフを表示させたりするようにしている。
【0004】
また、上記3つのディメンジョンを持つデータ全体を把握する表示手法として、例えば特許文献2に記載のように、互いに直交する二軸として保持時間と質量電荷比とをとり、信号強度を等高線として示すグラフ(以下「等強度線グラフ」と呼ぶ)が知られている。また、この特許文献2では、等強度線グラフ上に表示したカーソルで任意の保持時間を指定すると、該保持時間におけるマススペクトルが表示され、上記カーソルで任意の質量電荷比を指定すると、該質量電荷比におけるマスクロマトグラムが表示されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−147464号公報
【特許文献2】特開2001−165922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば医農薬品の開発・研究などの分野では、構造や特徴の類似した化合物の系列を調べたいようなことがよくある。こうした化合物系列は、保持時間と質量電荷比とが特定の関係となっている場合が多いが、化合物系列に包含される複数の化合物を選択してその情報を取得したりデータ解析を行ったりすることは、従来の装置では考慮されていない。そのため、こうした解析作業を行うには煩雑な操作が必要であり、作業効率を上げることが困難であった。
【0007】
本発明はこうした点に鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、特定の化合物系列などについての情報を簡単に得ることができ、そうした化合物の解析を効率よく行うことができるクロマトグラフ質量分析データ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明は、試料を成分分離するクロマトグラフと、該クロマトグラフで成分分離された試料を質量分析する質量分析計と、を組み合わせたクロマトグラフ質量分析装置で収集されたデータを処理するクロマトグラフ質量分析データ処理装置において、
a)保持時間と質量電荷比とを平面上の二軸とし、信号強度を等高線又はそれに相当する強度の相違が識別可能な表現で表したグラフを作成して表示画面上に表示するグラフ表示手段と、
b)前記グラフ表示手段により表示されたグラフ上でユーザが任意の範囲を指定するための指定手段と、
c)前記指定手段により指定された範囲に包含されるデータ又はその範囲に包含されるデータを除外した残りデータについて、保持時間軸及び/又は質量電荷比軸の方向に信号強度の積算を行ってその結果を提示する演算処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
ここでいうクロマトグラフ質量分析装置とは、典型的には、液体クロマトグラフ質量分析装置又はガスクロマトグラフ質量分析装置である。また、質量分析装置は、イオンを質量電荷比に応じて分離して検出可能なものであればよく、その質量分離のための手段は、四重極質量フィルタ、飛行時間型質量分析器など、特に限定されない。
【0010】
また上記「保持時間と質量電荷比とを平面上の二軸とし」たグラフは、例えば、該二軸が直交し信号強度を真上から見た等高線として表した、いわゆる2次元等高線グラフ、或いは、信号強度の高さを斜め方向から見た、いわゆる3次元等高線グラフなど、保持時間、質量電荷比、及び信号強度の3つのディメンジョンが表現できるグラフであれば特にその形式は限定されない。
【0011】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置において、上記指定手段は、例えばマウス等のポインティングデバイスを利用したドラッグ操作などにより、表示されたグラフ上で適宜の形状、大きさの枠を設定することで、該枠で囲まれる領域を上記範囲として指定するものとすることができる。また、例えばグラフ上で観察したい範囲のおおよその関係が一次式などの式で表せることが分かっている場合には、例えばその式を入力するとともにその式からのずれを表すマージン値を入力し(これはデフォルト値でもよい)、それに基づいて上記範囲を設定するようにしてもよい。
【0012】
指定手段により或る範囲が指定され、その範囲に包含されるデータを処理対象とする場合、演算処理手段は、保持時間毎に質量電荷比軸の方向に各データで表される信号強度値を積算し、保持時間毎の積算値を求める。一方の軸に保持時間をとり、他方の軸にこの積算値をとることで、マスクロマトグラムを作成することができる。但し、一般にマスクロマトグラムは或る特定の1つの質量電荷比における保持時間と信号強度との関係を示すものであるが、ここで得られるマスクロマトグラムは殆どの場合、複数の質量電荷比における信号強度の積算値と保持時間との関係を示すものであり、しかも、その複数の質量電荷比は保持時間毎に異なることになる(指定された範囲によっては同じとなる場合もあり得る)。
【0013】
なお、この点で、本発明において上記のように作成されるマスクロマトグラムは従来のマスクロマトグラムとは異なるので、以下の説明では、上記のように作成されるマスクロマトグラムを積算マスクロマトグラムと呼び、従来のマスクロマトグラムと区別する。
【0014】
また、演算処理手段は、質量電荷比毎に保持時間軸の方向に各データで表される信号強度値を積算し、質量電荷比毎の積算値を求める。一方の軸に質量電荷比をとり、他方の軸にこの積算値をとることで、マススペクトルを作成することができる。但し、このマススペクトルも上記積算マスクロマトグラムと同様に従来のマススペクトルとは異なるものであり、殆どの場合、複数の保持時間における(つまり或る時間幅を持った保持時間における)信号強度の積算値と質量電荷比との関係を示すものであり、しかも、その複数の保持時間は質量電荷比毎に異なることになる(指定された範囲によっては同じとなる場合もあり得る)。
【0015】
なお、この点で、本発明において上記のように作成されるマススペクトルは従来のマススペクトルとは異なるので、以下の説明では、上記のように作成されるマススペクトルを積算マススペクトルと呼び、従来のマススペクトルと区別する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析データ処理装置によれば、質量電荷比と保持時間とが特定の関係を示すような1つの化合物系列を含むようにグラフ上でユーザが適切な範囲を指定することにより、この化合物系列に含まれる複数の化合物のピークが現れるような積算マスクロマトグラムや積算マススペクトルが表示画面上に表示される。従って、非常に簡単な操作や作業によって、化合物系列に関する有用な情報を得ることができ、これを利用して定性分析や定量分析も効率良く行うことができる。
【0017】
なお、特定の化合物系列に含まれる化合物が分析の妨害や邪魔になる場合には、指定した範囲に含まれるデータを除外した残りのデータについて、積算マスクロマトグラムや積算マススペクトルを作成するようにすればよい。また、特にこうした目的のために、グラフ上で複数の範囲を同時に指定することができるようにしておくとよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るデータ処理装置を適用するLC/MSの一実施例について図面を参照して説明する。図1は本実施例によるLC/MSの概略構成図である。
【0019】
液体クロマトグラフ1では、移動相容器2に貯留された移動相が送液ポンプ3により略一定流量で吸引されてカラム5に送給される。所定のタイミングでインジェクタ4から移動相中に分析対象の試料が導入され、移動相に乗ってカラム5に送り込まれる。カラム5を通過する間に、試料に含まれる各種成分は時間方向に分離され、カラム5から順番に溶出する。この溶出した試料成分を含む試料液が質量分析計10に導入される。
【0020】
試料液はエレクトロスプレイノズル12から略大気圧雰囲気であるイオン化室11内に噴霧され、それによって試料液中の成分分子はイオン化され、生成されたイオンは加熱パイプ13を通って低真空雰囲気である第1中間真空室14へと送り込まれる。イオン化室11内ではエレクトロスプレイイオン化のほかに、大気圧化学イオン化などの別の大気圧イオン化法を採用してもよく、それらを併用してもよい。いずれにしてもイオンは第1中間真空室14内に配置された第1イオンレンズ15により収束されつつ、スキマー16の頂部に形成された小孔を通して中真空雰囲気である第2中間真空室17に送り込まれ、第2中間真空室17内に配置されたオクタポール型の第2イオンレンズ18により収束されつつ高真空雰囲気である分析室19に送り込まれる。
【0021】
分析室19では、特定の質量(厳密には質量電荷比m/z)を有するイオンのみが四重極質量フィルタ20の長軸方向の空間を通り抜け、それ以外の質量を持つイオンは途中で発散する。そして、四重極質量フィルタ20を通り抜けたイオンはイオン検出器21に到達し、イオン検出器21ではそのイオン量に応じたイオン強度信号を出力する。このイオン強度信号はA/D変換器22によりデジタル値に変換されてデータ処理部23へと入力され、データ処理部23においてマススペクトル、マスクロマトグラム、トータルイオンクロマトグラムなどの作成、或いは、本実施例に特徴的な積算マスクロマトグラムや積算マススペクトルの作成、それら結果に基づく定性分析や定量分析などが実行される。また、データ処理部23にはデータ記憶部24が付設され、LC/MSで収集されたデータはデータ記憶部24に格納され保存される。
【0022】
また、上記のような質量分析動作を実行するために各部を制御する制御部25には、キーボードやマウスなどの入力部26、LCDディスプレイなどの表示部27が接続されている。なお、データ処理部23や制御部25の実体はパーソナルコンピュータであって、パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理プログラムをコンピュータで実行することにより、データ処理部23や制御部25としての機能が発揮される。
【0023】
上記構成のLC/MSでは、四重極質量フィルタ20に印加する電圧に応じて通過し得るイオンの質量が決まる。従って、四重極質量フィルタ20に印加する電圧を所定の範囲で走査することを試料注入時点から繰り返す(つまりスキャン測定を行う)ことにより、所定の質量範囲のマススペクトルを時間経過に伴って繰り返し取得することができる。こうして、保持時間、質量電荷比、信号強度の3つのディメンジョンを持つデータが収集でき、1つの試料に対して収集されたデータは1つのファイルとしてデータ記憶部24に格納される。
【0024】
次に、本実施例のLC/MSにおいて特徴的なデータ処理について、図2〜図4を参照して説明する。図2はこの特徴的なデータ処理の処理手順を示すフローチャート、図3は表示部27の画面上に表示されるグラフの一例を示す図、図4はデータ処理方法を説明するための概念図である。
【0025】
データ処理部23は、データ記憶部24に格納されている上述したような3つのディメンジョンを持つデータに基づいて、保持時間を横軸に、質量電荷比を縦軸にとり、信号強度を等高線で表した、2次元的な等強度線グラフを作成し、これを制御部25を介して表示部27の画面上に表示する(ステップS1)。図3がこの等強度線グラフである。オペレータはこの等強度線グラフを見て、入力部26のマウス(又は他のポインティングデバイス)のドラッグ操作により解析したい範囲を指定する(ステップS2)。図3では措定された範囲が一点鎖線の枠(ここでは楕円形状)Aで示してあるが、任意の位置に任意の形状の範囲を指定することができ、そうした指定の方法は特に限定しない。
【0026】
等強度線グラフ上では、類似した構造を持つ複数の化合物に対応したスポットが、例えば図3中に右上がり傾斜の線Bに沿って出現する。従って、これら化合物を包含する化合物系列を選択的に解析したい場合に、線Bに沿ったスポットを囲むように枠Aを指定すればよい。
【0027】
上記のようにオペレータが等強度線グラフ上で範囲を指定した上で解析の実行を指示すると、指示を受けたデータ処理部23は、指定された範囲に含まれるデータをデータ記憶部24から収集する(ステップS3)。いま、説明を簡単にするために図4に示す概念図で考える。指定された範囲が保持時間ではt1〜t7の範囲、質量電荷比ではm1〜m8の範囲に広がっており、図4中に示すD11〜D87の全部で34個のデータが含まれるものとする。図中、例えばD11と記載されたデータは、保持時間t1、質量電荷比m1、そして信号強度D11という3つのディメンジョンを持つデータであると考える。
【0028】
上記のように指定された範囲に含まれるデータが収集されたならば、データ処理部23では、まず各保持時間毎に質量電荷比軸方向、つまり縦軸方向に信号強度を積算する(ステップS4)。即ち、例えば保持時間t1においては質量電荷比軸方向にD11、D21、D31の3個のデータが存在するから、この3個のデータの信号強度を積算して保持時間t1における積算値Da1を求める。保持時間t1の次の保持時間t2においては質量電荷比軸方向にD12、D22、D32、D42、D52の5個のデータが存在するから、この5個のデータの信号強度を積算して保持時間t2における積算値Da2を求める。このように同様にして、保持時間t3〜t7における積算値Da3〜Da7を順に求める。
【0029】
そして、こうして求めたDa1〜Da7で表される積算値(信号強度の積算値)について、保持時間を横軸として積算マスクロマトグラムを作成する(ステップS5)。この積算マスクロマトグラムは、保持時間がt1〜t7の範囲に限定されたものであり、しかも或る1つの質量電荷比に対するものではなく、複数の質量電荷比で且つ保持時間毎に異なる(同じ場合もあり得る)質量電荷比に対する信号強度を示すものである。上述のように或る1つの化合物系列を指定するように枠Aを設定すれば、積算マスクロマトグラムにはその化合物系列に含まれる化合物に対応したピークが出現する。
【0030】
またデータ処理部23は、各質量電荷比毎に保持時間軸方向、つまり横軸方向に信号強度を積算する(ステップS6)。即ち、例えば質量電荷比m1においては保持時間軸方向にD11、D12、D13の3個のデータが存在するから、この3個のデータの信号強度を積算して質量電荷比m1における積算値Db1を求める。質量電荷比m1の次に大きな質量電荷比m2では保持時間軸方向にD21、D22、D23、D24の4個のデータが存在するから、この5個のデータの信号強度を積算して質量電荷比m2における積算値Db2求める。このように同様にして、質量電荷比m3〜m8における積算値Db3〜Db8を順に求める。
【0031】
そして、こうして求めたDb1〜Db8で表される積算値(信号強度の積算値)について、質量電荷比を横軸として積算マススペクトルを作成する(ステップS7)。この積算マススペクトルは、質量電荷比がm1〜m8の範囲に限定されたものであり、しかも或る1つの保持時間に対するものではなく、複数の保持時間で且つ質量電荷比毎に異なる(同じ場合もあり得る)保持時間に対する信号強度を示すものである。上述のように或る1つの化合物系列を指定するように枠Aを設定すれば、積算マススペクトルにはその化合物系列に含まれる化合物に対応したピークが出現する。
【0032】
こうして作成した積算マスクロマトグラム及び積算マススペクトルを表示部27の画面上に表示する(ステップS8)。例えば、図5に示すように、1つの表示画面(ウインドウ)内に等強度線グラフ41を配置し、その下方に、等強度線グラフ41と同一の保持時間軸スパンで以て積算マスクロマトグラム42を配置し、等強度線グラフ41の右方に等強度線グラフ41と同一の質量電荷比軸スパンで以て積算マススペクトル43を配置するものとすることができる。このような表示により、オペレータは着目している化合物系列に包含される各化合物に関する有益な情報を得ることができ、必要に応じてそうした積算マスクロマトグラムや積算マススペクトルを用いて定性分析・定量分析を行うこともできる。
【0033】
なお、ステップS4、S5の処理とステップS6、S7の処理とはその順序は特に問わず、可能であれば同時並行的に行ってもよい。
【0034】
上記説明では、マウス等のポインティングデバイスを用いて2次元的な等強度線グラフ上でグラフィカルに解析対象とする範囲を指定するようにしていたが、別の方法によって分析対象とする範囲を設定できるようにしてもよい。その一例としては、保持時間と質量電荷比との関係を示す関数、例えば1次式を入力部26であるキーボードから入力するようにしてもよい。但し、例えば1次式ではグラフ上で一直線となるから、この1次式を中心に適当に範囲を広げるように、その幅をマージン値等で入力設定するようにするとよい。例えば、保持時間RTと質量電荷比m/zとの関係が、
m/z=A・RT+B
でA、Bとして適宜の値を入力するようにし、さらにm/z方向に幅を持たせるために例えばm/zのマージン値をΔと設定すればよい。このような設定により、例えば図6に示すように等強度線グラフ上に帯状の枠Cが設定され、この枠Cで囲まれる範囲に含まれるデータについて、上述のような処理が実行されて積算マスクロマトグラムと積算マススペクトルとが求まる。
【0035】
また、上記実施例では等強度線グラフ上で指定した(例えば枠A、枠Cで囲んだ)範囲に包含されるデータを利用して積算マスクロマトグラム及び積算マススペクトルを作成していたが、これとは逆に、枠Aや枠Cで囲まれる範囲を除いたデータを用いて、積算マスクロマトグラムと積算マススペクトルを作成するようにしてよい。これは、例えば比較的信号強度が大きな複数の化合物のピークが妨害になっているときに、これを排除して目的とする化合物のピークを観察したいような場合に有用である。
【0036】
もちろん、等強度線グラフ上で任意の位置及び任意の大きさの範囲を指定する方法は、上記記載の方法に限定されない。また、指定できる範囲は1つのみならず、任意の数だけ指定できるようにすることができる。
【0037】
また、上記実施例はいずれも一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜修正や変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。例えば、上記実施例はLC/MSに本発明を適用していたが、GC/MSでも同様に適用が可能である。また、質量分析装置は、四重極型に限るものではなく、飛行時間型、イオントラップ型など、いずれの質量分析装置でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例によるLC/MSの概略構成図。
【図2】本実施例のLC/MSにおける特徴的なデータ処理の処理手順を示すフローチャート。
【図3】本実施例のLC/MSにおいて表示部の画面上に表示される等強度線グラフの一例を示す図。
【図4】本実施例のLC/MSにおけるデータ処理方法を説明するための概念図。
【図5】等強度線グラフ、積算マスクロマトグラム及び積算マススペクトルの表示形式の一例を示す図。
【図6】別の範囲指定方法により等強度線グラフ上に設定された範囲の一例を示す図。
【符号の説明】
【0039】
1…液体クロマトグラフ
2…移動相容器
3…送液ポンプ
4…インジェクタ
5…カラム
10…質量分析計
11…イオン化室
12…エレクトロスプレイノズル
13…加熱パイプ
14…第1中間真空室
15…第1イオンレンズ
16…スキマー
17…第2中間真空室
18…第2イオンレンズ
19…分析室
20…四重極質量フィルタ
21…イオン検出器
22…A/D変換器
23…データ処理部
24…データ記憶部
25…制御部
26…入力部
27…表示部
41…等強度線グラフ
42…積算マスクロマトグラム
43…積算マススペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を成分分離するクロマトグラフと、該クロマトグラフで成分分離された試料を質量分析する質量分析計と、を組み合わせたクロマトグラフ質量分析装置で収集されたデータを処理するクロマトグラフ質量分析データ処理装置において、
a)保持時間と質量電荷比とを平面上の二軸とし、信号強度を等高線又はそれに相当する強度の相違が識別可能な表現で表したグラフを作成して表示画面上に表示するグラフ表示手段と、
b)前記グラフ表示手段により表示されたグラフ上でユーザが任意の範囲を指定するための指定手段と、
c)前記指定手段により指定された範囲に包含されるデータ又はその範囲に包含されるデータを除外した残りデータについて、保持時間軸及び/又は質量電荷比軸の方向に信号強度の積算を行ってその結果を提示する演算処理手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8570(P2009−8570A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171321(P2007−171321)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】