説明

クロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤

【課題】 クロムを含まない燐酸塩をベースとする絶縁処理において、耐蝕性、耐焼鈍性、被膜張力等の優れた方向性電磁鋼板製品と処理剤を提供する。
【解決手段】 次のI)、II)およびIII )を含有するクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。I)燐酸塩 100質量部、II)コロイダルシリカをSiO2固形分に換算して35〜100質量部、III )Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液を、金属元素に換算して0.1〜20質量部。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は方向性電磁鋼板用の絶縁被膜形成技術に関わり、特に、クロムを含有しない処理液を提供すると共に、それを用いて、耐焼鈍性、被膜張力、絶縁性、密着性、耐食性等の優れた絶縁被膜特性を有する製品と絶縁被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は、Siを2〜4%含有する珪素鋼スラブを熱延し、焼鈍した後、1回或いは中間焼鈍を挟む2回以上の冷延を施して最終板厚とし、次いで脱炭焼鈍した後MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、仕上げ焼鈍を行ってゴス方位を持つ二次再結晶を発達させ、さらにS,N等の不純物を除去すると共にグラス被膜を形成し、次いで絶縁被膜剤を塗布し、焼き付けとヒートフラットニング処理を施して最終製品とされる。
【0003】
このようにして得られる方向性電磁鋼板は、主として、電気機器、トランス等の鉄心材料として使用され、磁束密度が高く、鉄損が優れるものが要求される。方向性電磁鋼板がトランス鉄心として用いられる際には方向性電磁鋼板コイルはスリットされ、連続的に解きほどかれながら所定長さに切断され、鉄心加工機によって積み重ね或いは巻き加工されて積み鉄心や巻き鉄心とされる。巻き鉄心の場合には圧縮成型、歪取り焼鈍を経てレーシングと呼ばれる巻き線作業を行ってトランスとされる。
【0004】
このトランス製造工程においては切断、巻き加工、成形作業が容易に行えることが重要である。特に、巻きコア製造においては切断や巻き成型時に絶縁被膜の密着性が優れて発粉等の作業環境を損なわないことや巻き加工性、耐焼鈍性が優れて被膜性能、磁気特性及び作業性を損なわないためにも重要である。
【0005】
方向性電磁鋼板の表面被膜は、通常、最終仕上げ焼鈍中に形成された通常グラス被膜と呼ばれるフォルステライト被膜とその上に処理される絶縁被膜とからなる。この絶縁被膜の形成技術としては、特許文献1に本発明者らによってコロイダルシリカと燐酸塩及びクロム化合物からなる張力被膜が発明され工業化された。また、特許文献2で示される様に第一燐酸塩に粒子径8nm以下の微粒子コロイダルシリカとクロム化合物からなる処理剤が開示された。更に特許文献3では、Al,Mg,Ca,Znの第一燐酸塩とクロム化合物に対し粒径20nm以下のコロイダルシリカと粒径80〜2000nmのコロイダルシリカを混合することにより、絶縁被膜表面に均一な突起効果を得て巻き鉄心加工工程における巻き加工性(滑り性)、耐焼鈍性、被膜張力の向上を実現する技術が示されている。これらにより張力効果と鉄心加工性向上効果が得られ、磁気特性や磁歪特性が優れる方向性電磁鋼板が得られるようになった。
【0006】
これらの絶縁被膜は、燐酸塩による被膜焼き付け処理後における吸湿性や歪取り焼鈍時の被膜焼き付き性等を考慮して、何れもクロム化合物が添加配合されてきた。
【0007】
絶縁被膜中におけるクロム化合物の役割は、燐酸塩或いは燐酸塩とコロイダルシリカ系被膜におけるポーラスな被膜構造を充填する効果と絶縁被膜焼付け後の被膜成分に残留する吸湿性や分解性のある遊離燐酸を固定して安定な燐酸−クロム化合物を形成する効果が相俟って被膜のベタツキや焼鈍時の焼き付性及び被膜張力等を改善する効果をもたらす。処理液に無水クロム酸、クロム酸塩或いは重クロム酸塩を用い6価クロムを含有するこの場合、塗布作業時の作業環境や廃液処理作業の問題がある。更に、焼き付け処理後の被膜においては、Crはほぼ、3価クロムに還元されており有害性は少ないもの、鉄心加工工程における発粉が生じる場合には作業環境を汚染する恐れもある。
【0008】
この対策として、クロム化合物を含有しない絶縁被膜剤の研究もなされてきた。特許文献4には、コロイド状シリカをSiO2で20質量部、燐酸Al 10〜120質量部、硼酸2〜10質量部とMg,Al,Fe,Co,Ni及びZnの、それぞれの硫酸塩のうちから選ばれる何れか1種または2種合計で4〜40質量部とを含有する処理液を300℃以上で焼き付け処理する絶縁被膜形成法が提案されている。
【0009】
特許文献5には、M2+1-x3+x(OH)-2+x-nyn-y・mH2O の一般式で表される平均粒子径1μm以下の固溶型複合水酸化物組成である処理剤が開示されている。また特許文献6には、Ca,Mn,Fe,Mg,Zn,Co,Ni,Cu,B及びAlから選ばれる有機酸塩として、蟻酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩及びサリチル酸塩から選ばれる有機酸塩の1種または2種以上を添加することを特徴とする方向性電磁鋼板用表面処理剤が提案されている。
【0010】
これらは、何れも被膜張力効果を発揮できる技術であり、それなりに効果を発揮している。しかしながら、特許文献4の場合、添加する硫酸塩の硫酸イオンによる焼鈍時の変色や絶縁性、耐蝕性等の問題がある。また、特許文献6は、金属元素を溶解するための有機物による色調の問題や溶液安定性の問題が考えられる。このように、従来のクロム含有絶縁被膜剤に比較すると、総合的には十分に被膜性能が改善されているものとは言い難く、更なる改善が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】特公昭53−28375号公報
【特許文献2】特開昭61−41778号公報
【特許文献3】特開平3−39484号公報
【特許文献4】特公昭57−9631号公報
【特許文献5】特開平7−180064号公報
【特許文献6】特開2000−178760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、クロム化合物を含有しない絶縁被膜剤組成を有することで環境問題を解決すると共に、従来の燐酸塩或いは燐酸塩−コロイダルシリカ系被膜のように、燐酸塩をベースとする絶縁における、クロム化合物を含有しない場合の耐吸湿性、耐焼鈍性、緻密性、被膜張力不良問題を解決する被膜性能の優れた絶縁被膜を有する方向性電磁鋼板と絶縁被膜剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はクロム化合物を含有しない絶縁被膜を有する方向性電磁鋼板と絶縁被膜剤組成として以下の構成を要旨とする。
(1)次のI)、II)およびIII )を含有することを特徴とするクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【0014】
I) 燐酸塩 100質量部
II) コロイダルシリカをSiO2固形分に換算して35〜100質量部
III ) Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液を、該金属元素に換算して0.1〜20質量部
(2) 前記III )のコロイド状化合物の平均粒子径が5〜80nmであって、次のa)またはb)から選ばれるものであることを特徴とする(1)記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【0015】
a) Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩,燐酸塩,炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物
b) Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)を含んでなるコロイド状化合物
(3) 前記III )のコロイド状化合物の分散液が、更にSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上のコロイド物質を含むものである(1)または(2)に記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
(4) 前記III )のコロイド状化合物が、シロキサン結合を有するシリカ系粒子の表面に下記化学式(1)で表される塩基性金属化合物が反応してなる改質シリカ系ゾルを含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【0016】
{M2(OH)n(2a-n)/bm −(1)
{式中、Mはそれぞれ独立に、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる一種または二種の3価及び/または4価の金属カチオン、Xはアニオンであり、aはMの金属カチオンの価数、bは該アニオンの価数を示し、1≦n≦7,n<2aであり、1≦m≦20である。}
(5) 前記化学式(1)におけるアニオンXが、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、有機アニオンの1種または2種以上からなることを特徴とする(4)記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
(6) 前記III )のコロイド状化合物の分散液のpHが0.5〜3の範囲にあり、該金属の酸化物換算で1〜25質量%の金属元素を含有し、該コロイド状化合物の平均粒子径が5〜80nmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
(7) 前記III )のコロイド状化合物の分散液が、更に、Mn,Ni,Co,CuまたはSrから選ばれる一種または二種以上の金属元素を含有する化合物を含むものであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
(8) 前記I)の燐酸塩が、燐酸塩の水溶液であり、該燐酸塩がAlまたはMgの第一燐酸塩の1種又は2種を複合した組成であって、該燐酸塩の水溶液中に含まれる遊離燐酸の含有量が該燐酸塩の15質量%未満であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のクロムを含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燐酸塩−コロイダルシリカをベースとするクロム化合物を含有しない張力被膜の組成において、更に、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物、具体的には、燐酸塩とコロイダルシリカからなるベース液に、Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物の分散液、または前記Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)を含んでなるコロイド状化合物の分散液を添加することにより、焼付け後の被膜の耐蝕性が向上し、歪取り焼鈍時における耐焼き付き性の顕著な改善効果を得ることができる。
【0018】
このうち、特に、Feおよび/またはAlから選ばれる金属元素の水酸化物、酸化物、硫酸塩,燐酸塩,炭酸塩または珪酸塩から選ばれる化合物により、SiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物の分散液を前記ベース液に添加することにより、極めて優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者等は燐酸塩単体及び燐酸塩とコロイダルシリカ及びクロム化合物を主成分とする従来の張力付与型絶縁被膜における無クロム組成化に取り組んだ。即ち、従来組成で、無クロム化を行った燐酸塩と燐酸塩とコロイダルシリカ主成分組成の場合の欠点であった、被膜焼き付け処理後の吸湿性(ベタツキや錆発生)と歪取り焼鈍における焼き付き性、及び被膜ポーラス化による被膜張力減少を改善するための、被膜組成の開発に取り組んだ。
【0020】
その結果、燐酸塩とコロイダルシリカを主成分とする張力付与型被膜成分において、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物を、燐酸塩100質量部に対し金属元素として0.1〜20質量部添加することにより、従来の無クロム化組成が検討された張力付与型の電磁鋼板用絶縁被膜剤における諸問題を解決し、耐蝕性、耐焼鈍性、密着性、滑り性、絶縁性等が優れ、磁気特性と磁歪特性が優れる絶縁被膜剤を提供し、またとその処理方法の完成に成功した。以下、詳細に説明する。
【0021】
本発明剤の適用に当たっては、出発材としては、最終仕上げ焼鈍された方向性電磁鋼板を用い、連続処理焼き付けラインにおいて余剰焼鈍分離剤を除去し、軽酸洗の後、絶縁被膜液を鋼板表面に塗布し、焼き付け処理が行われる。
【0022】
本発明の絶縁被膜の最も特徴とするところは、燐酸塩100質量部とコロイダルシリカ35〜100質量部に対し、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物を、金属元素として0.1〜20質量部を添加するところにある。
【0023】
本発明者らは、絶縁被膜に対してCr代替作用を発揮する化合物について、膨大な研究と実験を行った結果、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物が、被膜のポーラスな構造を充填するのに有効であり、また、遊離燐酸分と容易に結合して、燐酸分の安定化効果をもたらすことを発見した。特にFe化合物は、極めて優れた効果を発揮する。
【0024】
本発明で焼き付け処理後の吸湿性や歪取り焼鈍時の鋼板の焼き付き性が阻止される理由は明確ではないが次のように推定される。溶液中に均一分散されたFe,Al,Ga,TiまたはZrの酸化物、水酸化物,硫酸塩,炭酸塩、珪酸塩化合物が、溶液調製〜焼付け過程において分解し、コロイダルシリカ成分のみを添加した場合に生じるポーラスな巣状の欠陥部に充填される。また、強固で安定した燐酸化合物を生成することで、被膜の緻密化、吸湿性の防止及び被膜張力の向上効果をもたらすものと思われる。特に、超微粒子のコロイダル状のものがこの改善効果が大きいのは、反応サイトの増加と濃度の均一化によるものと思われる。
【0025】
次に、本発明の限定理由について述べる。
【0026】
本発明においては、まず、その被膜組成に特徴がある。本発明においてはベース液として、燐酸塩100質量部に対し、コロイダルシリカを35〜100質量部が用いられる。この燐酸塩としては、AlまたはMgの第一燐酸塩が好ましい。リン酸塩に対するコロイダルシリカの割合は,被膜の緻密性や張力効果の発現に重要である。コロイダルシリカが35質量部未満では張力効果が小さくなり、耐食性、絶縁性、密着性等の特性の他、焼鈍時の耐焼き付き性が低下する。一方、100質量部超では被膜にクラックが発生して、耐食性悪化やベタツキ性が生じ、極端な場合、被膜張力の低下が生じる。
【0027】
本発明の特徴は、上記ベース液に対し、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液が金属元素として0.1〜20質量部を添加されることにある。このコロイド状化合物は、それぞれの金属元素として、0.1質量部未満では、燐酸塩被膜中のポーラス構造を形成し易く、吸湿性や焼鈍時の焼き付性を抑える効果が十分でない。一方20質量部超の場合、これらの向上効果が飽和に達し,それ以上、改善されないこと、被膜張力の若干の低下が生じること、被膜の色調がやや不透明化する等の問題から制限される。
【0028】
この重要な役割を有するコロイド状化合物としては、平均粒子径が5〜80nmであって、次のa)またはb)から選ばれるものが使用される。
【0029】
a) Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物、
b) または前記Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)を含んでなるコロイド状化合物
上記a)またはb)のコロイド状化合物は、該コロイド状化合物の分散液として前記ベース液に添加される。該コロイド状化合物の分散液について、例えば、コロイダルシリカの様なポリシロキサン構造を有する微粒子の溶液として調製され、前記燐酸塩およびコロイドシリカに添加されることにより、電磁鋼板用絶縁被膜剤の溶液安定性や前記燐酸塩の安定化、被膜の緻密性を高めることができる。
【0030】
コロイド状化合物の平均粒子径としては、粒子径が80nm以下であることが重要で,好ましくは15nm以下の超微粒子のものが良い。これは、反応面積が増加して,ベース液成分のみの場合に被膜に生じるポーラスな被膜構造への充填作用、および遊離燐酸の安定化に対して優れた効果が得られ、格段に優れた改善効果が得られる。粒径の下限は必ずしも限定されるものではないが、5nm未満でコロイド状とすることは困難なため制限される。
【0031】
Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物については、実質的にシロキサン構造を有するゾル溶液を用いることにより、分散性、安定性に優れた溶液が得られる。これらのコロイド状化合物をベース液に配合すると、非常に均一な分散液を生成するため、均一な被膜構造が得られ,焼付け処理時に、前記、充填作用や遊離燐酸の安定化作用に対し、極めて優れた効果を発揮する。
【0032】
コロイド状化合物としては、a) Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物、または、b) 前記Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)を含んでなるコロイド状化合物があり、どちらにおいても良好な作用効果が得られる。
【0033】
より好適には、コロイド状化合物として、Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物を使用することが好ましい。これらのコロイド状化合物を添加した場合、被膜性能を損なうことなく、絶縁被膜焼き付け処理過程で充填作用をもたらし、焼付け時や歪取り焼鈍過程において、被膜の緻密化や遊離燐酸の固定効果をもたらすことができる。
【0034】
実験の結果では、上記コロイド状化合物の中で、SiO2ゾル,Al23ゾル等を前記金属元素(Fe,Al,Ga,TiまたはZr)を含有する化合物で改質してなるコロイド状化合物を添加した場合が、液の安定性、作業性等が優れ、また被膜特性の向上効果が大きいことがわかった。これは、この様な金属元素を含有するコロイド状化合物が遊離燐酸との反応性に優れ、また被膜中に容易に充填され、被膜表面を緻密化するためと推定される。
【0035】
また、本発明におけるコロイド状化合物として、最も顕著な効果を示したのは、酸化物、または水酸化物を含有する場合であり、特に、Feの酸化物、またはFeの水酸化物によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物により優れた被膜性能が得られた。
【0036】
前記コロイド状化合物が、シロキサン結合を有するシリカ系粒子の表面に塩基性金属化合物が反応してなる改質シリカ系ゾルを含む場合、該塩基性金属化合物としては、下記式(1)で表される塩基性金属化合物が用いられる。
【0037】
{M2(OH)n(2a-n)/bm −(1)
式中、Mはそれぞれ独立に、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる一種または二種の3価及び/または4価の金属カチオン、Xはアニオンであり、aはMの金属カチオンの価数、bは該アニオンの価数を示し、1≦n≦7、n<2aであり、1≦m≦20である。上記のとおりこの塩基性化合物は同一化合物においてMが1種または2種の元素の金属カチオンを含んでいてもよい。なかでもFe3+を含む化合物は、好適に用いることが出来る。Fe3+を含む2種以上の金属カチオンからなる場合の組み合わせとしては、Al−Fe,Ti−Fe,Zr−Fe等があげられる。
【0038】
Xはアニオンであり、例えば、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、有機アニオン等があげられる。具体的には、{Al2(OH)1(SO42.54,{Fe2(OH)1(SO42.54,Zr2(OH)1(SO43.54,Al2(OH)2(SO424,{Fe2(OH)2(SO424,{Fe2(OH)1(SO42.56,{Fe2-XAlx(OH)1(SO42.54 (0<x<2)等の他、前記(SO4)を他の前記アニオンに置換した化合物などがあげられる。
【0039】
また、式中、mは1≦m≦20、好ましくは2≦m≦10の範囲にある。mが20を超えるとシリカ系粒子表面への結合が起こりにくくなり、また、表面電荷が付与できないために得られる改質シリカ系ゾルが不安定であったり、凝集することがある。
【0040】
Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物の調製方法としては、酸性金属塩の水溶液、例えば、ポリ硫酸鉄水溶液の中に、粒径5〜80nmのコロイダルシリカを徐々に攪拌しながら添加することにより、Feを含有するコロイド状化合物を調製する方法を挙げることができる。
【0041】
前記コロイド物質とFe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物の混合比は、コロイド物質の固形分1.0質量部に対し、これらの金属を含有する化合物を金属酸化物に換算して0.01〜7.0質量部の範囲が良く、特に、1.0〜4.0質量部の範囲が好ましい。
【0042】
また、前記コロイダル物質と前記Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物を混合し、反応させた得られたコロイド状化合物については、固形分濃度(酸化物換算)は、1〜25質量%の範囲の分散液であることが望ましく、特に2〜20質量%の範囲の分散液であることが好ましい。このようなコロイド状化合物の分散液のpHは0.5〜3の範囲とするのが好ましく、この範囲外では母液の安定性を損ね、ゲル化が生じる場合があり、また焼付け後の被膜の外観に影響する。
【0043】
また、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液にさらにMn,Ni,Co,Cu,またはSrから選ばれる一種または二種以上の金属元素を含有する化合物を配合しても構わない。これらを添加することで、耐食性や歪取り焼鈍時の耐焼き付き性が向上する。
【0044】
ベ−ス液に使用する燐酸塩中の遊離燐酸は固形分割合で15%未満であることが重要である。ここで遊離燐酸とは、Al23,MgO,Al(OH)3,Mg(OH)2等を燐酸と混合してAl(H2PO43,Mg(H2PO42を生成した後の燐酸塩溶液中の未反応H3PO4である。遊離燐酸量が15%超になると,コロイダルシリカや他のコロイダルシリカを混合した溶液の安定性が低下し、また焼き付け後の被膜表面平滑度の減退や被膜透明度を減退させるため制限される。好ましくは10%未満とすることで、上記のような問題が生じにくく、優れた被膜特性と作業性が得られる。
【0045】
本発明の電磁鋼板用絶縁被膜剤は、連続ラインでコーテイングロール等を用いて塗布量を制御して、鋼板へ塗布後、350℃以上で焼き付け処理が行われる。塗布量としては、適用される鋼板厚みや製品の使用目的により決められる。本発明の被膜剤の場合には、2〜10g/m2であれば被膜性能、外観は勿論のこと磁気特性、磁歪特性の優れた方向性電磁鋼板が得られる。
【0046】
絶縁被膜剤の塗布焼付け条件は、特に限定するものではないが、コーテイングロール等を用いて塗布後の焼付けに際しては、350℃以上の温度で焼き付けが行われる。これは、焼き付け温度が350℃未満では、第一燐酸塩と添加する、Fe,Al,Ga,TiまたはZrの酸化物,水酸化物、硫酸塩,炭酸塩、珪酸塩化合物との反応が十分に進まないため、ベタツキ等の減少が生じることによる。
【0047】
磁気特性の改善のため、製品にレーザー等の磁区細分化処理を行った後に被膜形成する場合には、焼き付け温度は350〜450℃の温度域が好ましい。しかし、通常の方向性電磁鋼板のように焼き付け処理時に熱膨張差を利用して十分な張力効果と耐蝕性、耐焼鈍性を得るためには、750℃〜900℃での焼き付け処理が必要である。
【0048】
この際の焼付け処理時の雰囲気としては、N2或いはH2+N2雰囲気、好ましくはH2=1%以上で露点が35℃以下の雰囲気とすると、表面外観の優れた絶縁被膜が形成される。これは添加剤のFe,Al等の酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩化合物の溶液中成分が安定な燐酸化合物を形成できることの他に、酸化反応が生じると化合物の形態が変化し、安定な燐酸塩形成反応を阻害するので、これを抑制するような低酸化性雰囲気が好ましいものと考えられる。
【0049】
本発明剤の適用に際しては、仕上げ焼鈍でグラス被膜を形成した材料の他、焼鈍分離剤にグラス被膜形成阻止剤を用いてグラス形成を阻止した鋼板や酸洗によりグラス被膜を除去した、いわゆるグラスレス材に適用してもよい。
【実施例1】
【0050】
最終仕上げ焼鈍を行ったグラス被膜を有する板厚0.23mmの高磁束密度方向性電磁鋼板コイルからサンプルを切り出し、水洗後850℃×4Hrの歪取り焼鈍を行った。その後、2%−H2SO4水溶液中で85℃、15秒間の軽酸洗を行って試験用サンプルを調製した。この鋼板表面に、表1に示すように、燐酸塩として固形分50%の第一燐酸アルミニウム水溶液(〔表1〕、〔表3〕、〔表5〕においては「50%第一燐酸Al」と表記する。)、およびコロイダルシリカとして商品名「カタロイド−SN」(触媒化成工業株式会社製、酸性ゾル、粒子径11nm、シリカ濃度20%)からなるベース液に、更に金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液(添加剤)として、30℃のポリ硫酸鉄水溶液(Fe23に換算した固形分濃度15%)の中に商品名「カタロイド−SN」を、Fe23/SiO2質量比が1.8となるように30分かけて添加し、30℃×60分で反応させて得られた、Feを含有するコロイド状化合物の分散液(Fe23/SiO2質量比:1.8)を、表1に示す添加量にて配合し、電磁鋼板用絶縁被膜剤を調製した。なお、平均粒子径の測定は、動的光散乱法による粒子径分布測定装置(Particle Sizing Systems社製:NICOMP MODEL380)を使用した。
【0051】
この電磁鋼板用絶縁被膜剤をコーテイングロールを用いて乾燥、焼き付け後の質量で5g/m2になるよう塗布し、850℃×30秒間の焼き付け処理を行った。この後、この製品板からサンプルを切り出し被膜特性の調査を行った。結果を表2に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
この試験の結果、ベース液にFeを含有するコロイド状化合物の分散液を添加した場合(実施例1の本発明1〜5)は、同分散液を添加しない場合(実施例1における比較例1)に比較して、焼き付け後被膜の吸湿性がCr化合物添加の場合と同様に顕著に改善され、外観が良く、耐蝕性が顕著に改善された。又、遊離燐酸分によると考えられる、歪取り焼鈍における耐焼付き性も顕著に改善され、被膜張力も従来のクロム化合物を含有する場合(実施例1における比較例4)に比し遜色のない被膜特性が得られた。又、添加量が少ない場合には、ベタツキ性防止、耐焼き付き姓防止効果が弱く、多過ぎる場合には、外観、被膜張力のほか液安定性等の面で劣る結果となった。
【実施例2】
【0055】
実施例1と同様に最終仕上げ焼鈍を行った板厚0.23mmの高磁束密度方向性電磁鋼板コイルからサンプルを切り出し、水洗後850℃×4Hrの歪取り焼鈍を行った。その後、2%−H2SO4水溶液中で75℃×15秒間の軽酸洗を行った。この鋼板に、表3に示すように複合燐酸塩(第一燐酸アルミニウムと第一燐酸マグネシウムからなる。)と粒子径を変更した各コロイダルシリカからなるベース液に金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液(添加剤)として商品名「カタロイド SA−300」(触媒化成工業株式会社製、アルカリ性ゾル、粒子径9nm、シリカ濃度20%)を脱アルカリしたものを、Fe23/SiO2質量比が2.0となるように、25℃のポリ硫酸鉄水溶液(Fe23に換算した固形分濃度7.5%)へ60分かけて添加した後、50℃×60分反応させて得られたFeを含有するコロイド状化合物の分散液(Fe23/SiO2質量比:2.0)を表3に示す添加量にて配合し、電磁鋼板用絶縁被膜剤を調製した。
【0056】
この溶液を実施例1と同様にコーテイングロールにより、乾燥、焼き付け後の質量で5.0g/m2になるよう塗布し、850℃×30秒間の焼き付け処理を行った。この後、この製品板からサンプルを切り出し被膜特性の調査を行った。結果を表4に示す。
【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
この試験の結果、実施例1における比較例1の場合と同様に、Feを含有するコロイド状化合物の分散液を含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤を用いて実施例1と同様に試験を行なった場合(実施例2における比較例1)、耐蝕性と耐焼鈍性が非常に劣る結果であった。一方、Feを含有するコロイド状化合物の分散液をベース液に添加してなる電磁鋼板用絶縁被膜剤を使用した場合(実施例2における本発明1〜5)においては、本発明1,2,3のようにベースコロイダルシリカとして粒子径の小さいものを使用した場合、添加効果が非常に大きく、従来のCr化合物添加の場合と同等以上の耐焼付き性、耐蝕性、被膜張力の改善効果が得られた。また、本発明4、5のようにベ−スコロイダルシリカの粒子径が大きいものを使用した場合でも、改善効果は見られるものの、その効果の程度は、粒子径が大きくなるにつれて低下する傾向が見られた。
【実施例3】
【0060】
実施例1、2と同様に最終仕上げ焼鈍を行った板厚0.23mmの高磁束密度方向性電磁鋼板コイルからサンプルを切り出し、水洗後850℃×4Hrの歪取り焼鈍を行った。その後、2%−H2SO4水溶液中で75℃×15秒間の軽酸洗を行った。この鋼板に、表5に示すように複合燐酸塩(実施例2で用いたものと同様)に粒子径9nmのコロイダルシリカを添加したベース液に、金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液(添加剤)として、実施例2において使用したのと同様に、粒子径を5〜100nmの範囲で種々変更したアルカリ性コロイド(アルカリ性ゾル:粒子径5〜100nm、20%濃度)を脱アルカリしたものを、Fe23/SiO2質量比が2.0となるように、25℃のポリ硫酸鉄水溶液(Fe23に換算した固形分濃度7.5%)へ60分かけて添加した後、50℃−60分反応させて得られたFeを含有するコロイド状化合物の分散液を表5に示す添加量にて配合し、電磁鋼板用絶縁被膜剤を調製した。
【0061】
この溶液を実施例1と同様にコーテイングロールにより、乾燥、焼き付け後の質量で5.0g/m2になるよう塗布し、850℃×30秒間の焼き付け処理を行った。この後、この製品板からサンプルを切り出し被膜特性の調査を行った。結果を表6に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
この試験の結果、実施例1における比較例1や実施例2における比較例1の場合と同様に、Feを含有するコロイド状化合物の分散液を含まない電磁鋼板用絶縁被膜剤を用いて実施例1と同様に試験を行なった場合(実施例3における比較例1)、耐蝕性と耐焼鈍性が非常に劣る結果であった。
一方、Feを含有するコロイド状化合物の分散液ベース液に添加してなる電磁鋼板用絶縁被膜剤を使用した場合(実施例3における本発明1〜5)においては、本発明1、2、3のようにFeを含有するコロイド状化合物として、粒子径の小さいものを使用した場合には添加の効果がより大きく、従来のCr化合物添加の場合と同等以上の耐焼付き性、耐蝕性、被膜張力の改善効果が得られた。また、本発明4,5のようにFeを含有するコロイド状化合物の粒子径が大きいものを添加した場合、改善効果はかなり見られるものの、粒子径が小さい場合に比較して、効果の程度は粒子径が大きくなるほど低下する傾向が見られた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】(a),(b),(c)は歪取り焼鈍における被膜の焼き付き性を評価する方法とその順序を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のI)、II)およびIII )を含有することを特徴とするクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
I) 燐酸塩 100質量部
II) コロイダルシリカをSiO2固形分に換算して35〜100質量部
III ) Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有するコロイド状化合物の分散液を、該金属元素に換算して0.1〜20質量部
【請求項2】
前記III )のコロイド状化合物の平均粒子径が5〜80nmであって、次のa)またはb)から選ばれるものであることを特徴とする請求項1記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
a) Fe,Al,Ga,TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩,燐酸塩,炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を改質して得られるコロイド状化合物
b) Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)を含んでなるコロイド状化合物
【請求項3】
前記III )のコロイド状化合物の分散液が、更にSiO2,Al23,ZrO2 またはTiO2から選ばれる1種または2種以上の酸化物からなるコロイド物質を含むものである請求項1または請求項2に記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【請求項4】
前記III )のコロイド状化合物が、シロキサン結合を有するシリカ系粒子の表面に下記化学式(1)で表される塩基性金属化合物が反応してなる改質シリカ系ゾルを含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
{M2(OH)n(2a-n)/bm −(1)
{式中、Mはそれぞれ独立に、Fe,Al,Ga,TiまたはZrから選ばれる一種または二種の3価及び/または4価の金属カチオン、Xはアニオンであり、aはMの金属カチオンの価数、bは該アニオンの価数を示し、1≦n≦7,n<2aであり、1≦m≦20である。}
【請求項5】
前記化学式(1)におけるアニオンXが、ハロゲンイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、有機アニオンの1種または2種以上からなることを特徴とする請求項4記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【請求項6】
前記III )のコロイド状化合物の分散液のpHが0.5〜3の範囲にあり、該金属の酸化物換算で1〜25質量%の金属元素を含有し、該コロイド状化合物の平均粒子径が5〜80nmの範囲にあることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【請求項7】
前記III )のコロイド状化合物の分散液が、更に、Mn,Ni,Co,CuまたはSrから選ばれる一種または二種以上の金属元素を含有する化合物を含むものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。
【請求項8】
前記I)の燐酸塩が、燐酸塩の水溶液であり、該燐酸塩がAlまたはMgの第一燐酸塩の1種又は2種を複合した組成であって、該燐酸塩の水溶液中に含まれる遊離燐酸の含有量が該燐酸塩の15質量%未満であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のクロムを含有しない電磁鋼板用絶縁被膜剤。

【図1】
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【公開番号】特開2007−23329(P2007−23329A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206215(P2005−206215)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】