説明

クロメン−4−オン誘導体

本発明は、式(Ia)〜(Ic)の化合物から選択される化合物、ならびに化粧品および皮膚用のその調合および使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚もしくは毛髪の一般的状態のケア、保護または改善、ヒトの皮膚もしくはヒトの毛髪の時間および/または光誘発の老化プロセスに対する予防、および皮膚病の予防および/または治療のためのクロメン−4−オン誘導体、その調製および使用に関する。本発明はさらに、有効含量のそのようなクロメン−4−オン誘導体を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚はある種の老化プロセスに曝される。あるものは固有のプロセス(経年老化)に起因し、あるものは外的要因(環境、例えば光による老化)に起因する。さらに、皮膚の様相の一時的、さらには継続的変化、例えば座瘡、脂っぽい皮膚または乾燥した皮膚、角化症、酒さ、光感受性、炎症性、紅斑性、アレルギー性または自己免疫反応性の反応、例えば皮膚病および光線皮膚症が起こる可能性がある。
【0003】
外的要因には、特に太陽光または類似スペクトルを有する人工的放射源および、放射線によって生成する可能性がある化合物、例えば未特定の反応性光分解生成物(これは遊離基であってもイオン性であってもよい)が含まれる。これらの要因には、タバコの煙およびそこに存在する反応性化合物、例えばオゾン、遊離基例えばヒドロキシル遊離基、一重項酸素および皮膚の生来の生理または形態を妨げる他の反応性酸素もしくは窒素化合物も含まれる。
【0004】
これらの要素の影響は、とりわけ、皮膚細胞のDNAおよび皮膚の強度に関与する細胞外マトリックスのコラーゲン、エラスチンまたはグリコサミノグリカン分子に直接損傷をもたらすことになる。さらに、マトリックス分解性酵素の活性化によって終結する信号伝達鎖に影響を及ぼす可能性がある。これらの酵素の重要な代表例はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP、例えばコラゲナーゼ、ゼラチナーゼおよびストロメライシン)である。その活性はTIMPによってさらに調節される(マトリックスメタロプロテイナーゼの組織阻害物質)。
【0005】
上記の老化プロセスによってもたらされるものは、皮膚の薄層化、表皮と真皮のより弱い絡み合いならびに細胞および供給血管の数の減少である。これは小じわおよびしわの形成をもたらし、皮膚は革状になり、色素欠陥が起こる可能性がある。
【0006】
この同じ要素は毛髪にも作用し、そこでは同様に損傷が起こる。毛髪は脆くなり、弾性や光沢がなくなる。毛髪の表面構造が損傷を受ける。
【0007】
上記プロセスまたはその類似プロセスに対処するか、またはその有害な結果を低減もしくは撤回させる特性を有する化粧品または皮膚用ケア製品は、しばしば以下の特異的な特性−遊離基除去性、抗酸化性、炎症阻止性または湿潤性に優れている。これらは、とりわけ、マトリックス分解性酵素の活性を阻止または低減するか、またはコラーゲン、エラスチンまたはプロテオグリカンの新規の合成を調節する。
【0008】
化粧品組成物における抗酸化剤または遊離基捕捉剤の使用は、それ自体よく知られている。したがって、日焼け止め調合物での抗酸化性ビタミンEの使用は一般的である。それでも、達成されるその効果は、期待されている効果には全く及ばない。
【0009】
ビタミンAおよびビタミンA誘導体、例えばレチノイン酸、レチノールおよびレチノールエステルは上皮細胞の分化に作用し、したがって、皮膚の状態を損なう多くの現象の予防および治療に用いられる。例えば、座瘡、乾癬、老人性角化症、皮膚の変色およびしわに対する使用が記載されている(例えば、WO93/19743およびWO02/02074参照)。
【0010】
しかし、レチノールおよび誘導体の皮膚刺激性の影響も文献に記載されている(例えばWO94/07462)。これらの副作用はレチノールの使用を狭い限られた領域に限定するものであり、過剰投与を避ける必要がある。したがって、レチノールに似た作用範囲を有するが、上記した副作用を有していないか、それを有していても少なくとも僅かでしかない活性な成分が必要とされている。
【0011】
老化プロセスおよび有害な環境影響に対するヒトの皮膚およびヒトの毛髪の予防的治療のための活性な成分の必要性が絶えず増大しているため、本発明の目的は、すでに始めに述べた効果を示し十分に酸化および光安定性であり、容易に調合できる新規な活性な成分を提供することであった。それにより調製された組成物はさらに、皮膚に対する刺激作用の可能性ができるだけ低く、皮膚の保水性によい影響をできるだけ持ち、皮膚の弾性を保持または増大させ、したがって皮膚の滑らかさを増進させるものでなければならない。さらに好ましくは、皮膚に施用して、心地よい皮膚の感触をもたらさなければならない。
【0012】
驚くべきことに、ある種のクロメン−4−オン誘導体(クロモン誘導体)が、上記の側面を有する活性な成分として適することを見出した。
【0013】
構造的に関連する化合物の適用例は、以下の文献で知られている。
【0014】
薬剤組成物および化粧品組成物において、二価の亜鉛と一緒に、特定の2−(アルキル)カルボキシル−または2−(アルキル)フェニル−置換クロメン−4−オン誘導体を使用することは、EP−A−0304802に開示されている。この組成物は皮膚の治療、特にアトピー性湿疹を含む皮膚病に適する。
【0015】
EP−A−0424444は、化粧品における皮膚老化に効くクロモンカルボン酸の塩の使用を開示している。この化合物はUV−フィルターの作用を示し、動物実験によれば以下の効果が得られている。すなわち、皮膚の束縛脂質の割合が増大し、皮膚における可溶性コラーゲンの割合が増大し、線維形成性プロテアーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼの影響に対する皮膚の抵抗性が増大する。
【0016】
米国特許第6,019,992号は、4−クロマノンを含む、老化、乾燥またはしわの寄った皮膚の治療に適する化粧品組成物を開示している。この特許では、4−クロマノンは細胞分化を促進し、ケラチノサイト培養における脂質生成を刺激することが示されている。
【0017】
EP−A−1216692は化粧品組成物中における2−メチル−2−(β−カルボキシエチル)クロマン誘導体の使用を開示している。前記組成物は、皮膚および毛髪の老化プロセスに対する予防と、乾燥した皮膚、しわの形成および色素欠陥に対する予防に特に適する。
【0018】
クロモン誘導体、例えばクロモン、7−ヒドロキシクロモン、7−メトキシクロモン、5,7−ジヒドロキシ−2−メチルクロモン、3−メチル−2−ブテニルオキシクロモン、3−アセチル−5,7−ジヒドロキシ−2−メチルクロモン、5−ヒドロキシクロモン、n−ペンチル7−メトキシクロモン−2−カルボキシレート、n−ウンデシル5−メトキシクロモン−2−カルボキシレート、5−ヒドロキシ−7−メトキシ−2−メチルクロモン、7−メトキシクロモン−2−カルボン酸、n−ペンチルクロモン−2−カルボン酸、5−メトキシクロモンおよびクロモン−2−カルボン酸などを含む局所施用の組成物が日本国特許出願JP05/301813に開示されている。このクロモン誘導体は、皮膚の過剰色素沈着を低減する皮膚許容性チロシナーゼ阻害物質として作用する。
【0019】
特開平09−188608号公報は、白髪に対する活性な成分としての、特に5,7−ジヒドロキシクロモン、7−メトキシクロモン、5−ヒドロキシ−7−メトキシ−2−メチルクロモンおよび5−ヒドロキシ−2−メチルクロモンなどの置換クロモン誘導体の使用を開示している。その作用は、着色色素形成細胞の活性化およびメラニン形成の増進である。
【0020】
アミノプロパノール誘導体と組み合わせて、2−位がC115−アルキルで置換され、7−位にH、OHまたはアルコキシ置換を有するクロモン誘導体を含む皮膚老化に対する組成物が特開平10−194919号公報に開示されている。
【0021】
例えば2−(1−エチルペンチル)クロモン、5,7−ジヒドロキシクロモン、7−メトキシクロモン、5−ヒドロキシ−7−メトキシ−2−メチルクロモンおよび5−ヒドロキシ−2−メチルクロモンなどの置換クロモン誘導体、ならびに−10℃以上の融点を有する芳香族化合物を含む化粧品組成物が特開平10−114640号公報に開示されている。このクロモン誘導体は、化粧品調合物中への芳香族化合物の添加を容易にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明は式Ia〜Icの化合物から選択される化合物に関する。
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、
− H、−C(=O)−R7および−C(=O)−OR7
− 直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、
− 直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニル基、直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が鎖の第1級または第2級炭素原子に結合していてよく、さらにアルキル鎖が酸素で中断されてもよい基、および/または
− C3〜C10−シクロアルキル基および/またはC3〜C12−シクロアルケニル基であって、その環がそれぞれ−(CH2n−基(n=1〜3)で架橋されていてもよい基
から選択され、
3はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、
4はHまたはOR8を表し、
5およびR6は、同一でも異なっていてもよく、
− −Hおよび−OH、
− 直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、
− 直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニル基、
− 直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が鎖の第1級および第2級炭素原子に結合していてよく、さらにアルキル鎖が酸素で中断されてもよい基
から選択され、
7はH、直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、ポリヒドロキシル化合物、例えば好ましくはアスコルビン酸基またはグリコシド基を表し、
8はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、
基R1およびR2の一方はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、他方の基は−C(=O)−R7、−C(=O)−OR7または直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、R7がHである場合、基R3およびR4の少なくとも一方はHではない)。
【0025】
本発明の目的のためには、「式Ia〜mの化合物」という表現は基本的に、式Ia〜mのそれぞれの化合物の塩も包含する。その好ましい塩には、特にアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩ならびにアンモニウム塩が含まれるが、ナトリウム塩およびカリウム塩が特に好ましい。
【0026】
本発明によれば、式Id〜Imの化合物から選択される化合物である式Iaの化合物が特に好ましい。
【0027】
【化2】

【0028】
本発明の変更形態では、置換基R1、R2、R4〜R6のうちの少なくとも2つがHでないことを特徴とする化合物が特に好ましい。
【0029】
本発明によれば、化合物が、R1およびR2の一方の置換基が−C(=O)−R7または−C(=O)−OR7を表すことを特徴とすることがさらに好ましい。
【0030】
所望の特性プロファイルに関してはさらに、化合物は、R3がHを表し、R4がOHを表し、さらに基R5およびR6の少なくとも1つが好ましくはOHを表すことを特徴とすることが好ましいことが分かった。
【0031】
本発明による好ましい化合物の他のグループでは、R5およびR6はHを表す。
【0032】
本発明はさらに、上記の基を含む式Ia〜mの少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの別のスキンケア成分と、局所施用に適した少なくとも1種の担体とを含む組成物、ならびに皮膚または毛髪の一般的状態のケア、保護または改善のための上記化合物の使用に関する。
【0033】
式Ia〜mの化合物、または少なくとも1つの式Ia〜mの化合物を含む組成物の本発明による好ましい使用は、特に、ヒトの皮膚またはヒトの毛髪の時間および/または光誘発の老化プロセスに対する予防、特に、乾燥した皮膚、しわの形成および/または色素欠陥に対する予防、および/または皮膚に対する紫外線の有害な影響の低減または防止のため、ならびに、しわ、小じわ、粗い皮膚または大きな毛穴の皮膚などの皮膚むらに対する予防、あるいはその低減のための使用である。
【0034】
式Ia〜mの化合物または少なくとも1つの式Ia〜mの化合物を含む組成物の、本発明での好ましい使用はさらに、早期皮膚老化の予防および/または防止、特に、皮膚の光誘発または老化誘発によるしわの予防および/または防止、色素沈着および光線性角化の低減、ならびに正常な皮膚老化または皮膚の光誘発の老化に伴うすべての疾患の予防および/または治療、および、分化および細胞増殖に関係する欠陥のある角質化を伴う皮膚病の予防および/または治療、特に、尋常性座瘡、面皰、多形性座瘡、酒さ、結節状座瘡、集簇性座瘡、加齢性座瘡、副作用として現れる座瘡、例えば日光性座瘡、薬物関連座瘡または職業性座瘡の治療、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病、掌蹠角化症、白板症、白板症様状態、皮膚および粘膜(口腔)湿疹(苔癬)の治療、欠陥のある角質化に付随し、かつ炎症性および/または免疫アレルギー性成分を有する他の皮膚病、特に皮膚、粘膜および指や足指の爪に関係するすべての形態の乾癬、ならびに乾癬性リウマチおよび皮膚アトピー、例えば湿疹もしくは呼吸性アトピーの治療、またガム質の肥大の治療、および、ウイルス由来であってよい真皮もしくは表皮のすべての良性または悪性の増殖物、例えば尋常性疣贅、扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、口腔乳頭腫症、乳頭腫症およびUV放射線によって引き起こされる可能性がある増殖物、特に基底細胞上皮腫および有棘細胞上皮腫の予防および/または治療のための使用である。
【0035】
本発明は、上記使用に適した組成物の調製のための式Ia〜mの化合物の使用にも関する。
【0036】
この組成物は通常、局所的に使用できる組成物、例えば、化粧品調合物または皮膚用調合物か、あるいは食品または補助食品である。この場合、組成物は、化粧品または皮膚用に、あるいは食品に適した担体、および所望の特性プロファイルに応じて任意選択で適切な別の構成成分を含む。
【0037】
組成物中における式Ia〜mのクロメン−4−オン誘導体の本発明による使用は、とりわけ、UV放射線によって、または反応性の化合物により引き起こされるプロセスによって直接的もしくは間接的に引き起こされる損傷、例えば皮膚老化、皮膚の水分の損失、皮膚の弾性の損失、しわもしくは線の形成または色素欠陥もしくはそばかすの形成に対する保護を提供する。
【0038】
本発明はさらに、皮膚の様相の望ましくない変化、例えば、座瘡または脂っぽい皮膚、角化症、光感受性、炎症性、紅斑性、アレルギー性もしくは自己免疫反応性の反応などの予防のための上記組成物の使用に関する。
【0039】
しかし、本発明による化合物および組成物は、過敏性の皮膚および炎症を受けた皮膚を和らげるため、ならびに、コラーゲン、ヒアルロン酸およびエラスチン合成の予防的調節、DNA合成の鼓舞(特に欠陥のある、または機能低下した皮膚状態の場合)、細胞再生および皮膚再生を増進させ、DNA、脂質および/またはタンパク質のための皮膚自体の保護および修復機構を増進させるマトリックス分解性酵素、特にMMPの転写および翻訳の調節のためにも役立つことが好ましい。
【0040】
式Ia〜mの好ましい化合物は、上記の意味で、これらの部類の化合物の代表的なものの作用可能性が特に高いので、R3がHを表し、R4がOHを表すことを特徴とする。さらに、基R5およびR6の少なくとも1つがOHを表す場合、これらの好ましい化合物は、上記特性に加えて抗酸化剤の可能性をさらに有する。したがって、これらは、組成物中において同時に抗酸化剤としても機能する。
【0041】
他の好ましい式Ia〜mの化合物は、R5およびR6がHを表すことを特徴とする。この場合、基R3およびR4は自由にアクセス可能であり、推測されるように、上記効果に関与する酵素との相互作用に有利である。
【0042】
同様に、好ましい式Ia〜mの化合物は、基R1およびR2のうちの一方はHを表し、その他方の基は−C(=O)−R7、−C(=O)−OR7または直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基を表すことを特徴とする。
【0043】
さらに、本発明において好ましい化合物は、組成物中に添加する上で、
− モノ−および/またはオリゴグリコシル基は、本発明で用いる化合物の水への溶解性を向上させ、
− 直鎖または分枝のC1〜C20−アルコキシ基、特に長鎖アルコキシ官能基、例えばエチルヘキシルオキシ基は化合物のオイルへの溶解性を増大させる;
すなわち、置換基の適切な選択によって、本発明による化合物の親水性または親油性を増大させることができる利点を有する。
【0044】
使用できるグリコシド基は特にモノ−またはオリゴ糖基である。ヘキソシル基、特にラムノシル基およびグルコシル基が好ましい。しかし、他のヘキソシル基、例えばアロシル、アルトロシル、ガラクトシル、グロシル、イドシル、マンノシルおよびタロシルも有利に使用することができる。ペントシル基を使用することも有利である。グリコシル基はα−またはβ−グリコシド結合によって基本構造に結合していてよい。好ましい二糖は例えば6−O−(6−デオキシ−α−L−マンノピラノシル)−β−D−グルコピラノシドである。
【0045】
しかし、本発明の同様に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、組成物マトリックスにやや可溶性であるかまたは不溶性である式Ia〜mの化合物も含むことができる。この場合、この化合物は化粧品組成物中に細かく分割された状態で分散していることが好ましい。
【0046】
式Ia〜mの化合物は、本発明では一般に0.01重量%〜20重量%の量、好ましくは0.1重量%〜10重量%の量、特に好ましくは1重量%〜8重量%の量で使用する。当業者には、組成物の目的とする作用に応じて量を選択するのに何の困難もない。
【0047】
したがって、組成物が1種以上の別の抗酸化剤を含むと、酸化的ストレスに対するか、または遊離基の影響に対する保護作用をさらに改善することができる。当業者は、適当に迅速な、または時間遅延された作用を有するそうした抗酸化剤を選択するのに何の困難もない。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の別のスキンケア成分は1種以上の抗酸化剤および/またはビタミンである。
【0049】
上記理由により、この組成物はレチノール誘導体を含まないことが特に好ましい。
【0050】
専門文献によって知られている、抗酸化剤として使用可能な多くの証明ずみの物質がある。例えばアミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびその誘導体、D,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシンおよびその誘導体などのペプチド(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えばα−カロテン、β−カロテン、リコピン)およびその誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポ酸およびその誘導体(例えばジヒドロリポ酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えばチオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミンならびにそのグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチルおよびラウリル、パルミトイル、オレイル、γ−リノレイル、コレステリルおよびそのグリセリルエステル)およびその塩、ジラウリルチオジプロピオナート、ジステアリルチオジプロピオナート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)、ならびに非常に低い許容用量(例えばpモルからμモル/kg)のスルホキシミン化合物(例えばブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサーおよびヘプタチオニンスルホキシミン)、さらには(金属)キレート剤(例えばα−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、胆緑素、EDTA、EGTAおよびその誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体、ビタミンCおよび誘導体(例えばパルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸アセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンE酢酸塩)、ならびにベンゾイン樹脂のコニフェリル安息香酸塩、ルチン酸およびその誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアイアレチン酸、トリヒドロキシブチロフェノン、ケルセチン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、亜鉛およびその誘導体(例えばZnO、ZnSO4)、セレニウムおよびその誘導体(例えばセレノメチオニン)、スチルベンおよびその誘導体(例えばスチルベンオキシド、トランス−スチルベンオキシド)がある。
【0051】
抗酸化剤の混合物も同様に本発明の化粧品組成物での使用に適する。公知でありかつ市販されている混合物は、例えば、活性構成成分として、レシチン、L−(+)−パルミチン酸アスコルビルおよびクエン酸(例えばオキシネックス(登録商標)AP)、天然トコフェロール、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、L−(+)−アスコルビン酸およびクエン酸(例えばオキシネックス(登録商標)K リキッド)、天然資源からのトコフェロール抽出物、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、L−(+)−アスコルビン酸およびクエン酸(例えばオキシネックス(登録商標)L リキッド)、DL−α−トコフェロール、L−(+)−パルミチン酸アスコルビル、クエン酸およびレシチン(例えばオキシネックス(登録商標)LM)またはブチルヒドロキシトルエン(BHT)、L−(+)−パルミチン酸アスコルビルおよびクエン酸(例えばオキシネックス(登録商標)2004)を含む混合物である。この種の抗酸化剤は通常、この種の組成物において式Ia〜mの化合物と、1000:1〜1:1000、好ましくは100:1〜1:100の範囲の比で使用する。
【0052】
本発明による組成物は、他の構成成分としてビタミンを含むことができる。本発明による化粧品組成物は好ましくは、ビタミンB、塩化チアミン塩酸塩(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ニコチンアミド、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、ビタミンE、DL−α−トコフェロール、トコフェロールE酢酸塩、トコフェロール水素スクシネート、ビタミンK1、エスクリン(ビタミンP活性構成成分)、チアミン(ビタミンB1)、ニコチン酸(ナイアシン)、ピリドキシン、ピリドキサル、ピリドキサミン(ビタミンB6)、パントテン酸、ビオチン、葉酸およびコバラミン(ビタミンB12)、特に好ましくはビタミンCおよびその誘導体、DL−α−トコフェロール、トコフェロールE酢酸塩、ニコチン酸、パントテン酸およびビオチンから選択されるビタミンおよびビタミン誘導体を含む。ビタミンは通常、式Ia〜mの化合物と1000:1〜1:1000、好ましくは100:1〜1:100の範囲の比で使用する。
【0053】
抗酸化作用を有するフェノールのうち、その幾つかが天然で存在するポリフェノールは、薬剤、化粧品または栄養物領域の応用分野で特に興味深いものである。例えば、主に植物染料として知られているフラボノイドまたはバイオフラボノイドは、しばしば抗酸化剤としての潜在能力を有する。K.Lemanska,H.Szymusiak,B.Tyrakowska,R.Zielinski,I.M.C.M.Rietjens;Current Topics in Biophysics 2000年、24(2)、101〜108頁は、モノおよびジヒドロキシフラボンの置換パターンの影響を取り上げている。そこでは、ケト官能基に隣接するOH基、または3’,4’−位もしくは6,7−位もしくは7,8−位にOH基を含むジヒドロキシフラボンは抗酸化特性を有するが、幾つかの場合、他のモノおよびジヒドロキシフラボンは抗酸化特性を有していないことが確認されている。
【0054】
ケルセチン(シアニダノール、シアニデノロン1522、メレチン、ソホレチン、エリシン、3,3’,4’,5,7−ペンタヒドロキシフラボン)はしばしば特に有効な抗酸化剤として言及されている(例えばC.A.Rice−Evans,N.J.Miller,G.Paganga,Trends in Plant Science 1997年、2(4)、152〜159頁)。K.Lemanska,H.Szymusiak,B.Tyrakowska,R.Zielinski,A.E.M.F.Soffers,I.M.C.M.Rietjens;Free Radical Biology&Medicine 2001年、31(7)、869〜881頁は、ヒドロキシフラボンの抗酸化作用のpH依存性を検討している。ケルセチンは、全pH範囲にわたって検討された構造の中で最も大きな活性を示している。
【0055】
適切な抗酸化剤はさらには、先のDE10244282.7に記載と同様の式IIの化合物である
【0056】
【化3】

【0057】
{式中、R1〜R10は同一でも異なっていてもよく、
− H
− OR11
− 直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、
− 直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニル基、
− 直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルキル基(ただし、ヒドロキシル基は鎖の第1級および第2級炭素原子に結合していてよく、さらにアルキル鎖は酸素によって中断されてもよい)、および/または
− C3〜C10−シクロアルキル基および/またはC3〜C12−シクロアルケニル基(ただし、上記環はそれぞれ−(CH2n−基(n=1〜3)で架橋されていてもよい)
から選択され、
− すべてのOR11は互いに独立して、
− OH
− 直鎖または分枝のC1〜C20−アルコキシ基、
− 直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニルオキシ基、
− 直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルコキシ基(ただし、ヒドロキシル基は上記鎖の第1級および第2級炭素原子に結合してもよく、さらにアルキル鎖は酸素によって中断されてもよい)、および/または
− C3〜C10−シクロアルコキシ基および/またはC3〜C12−シクロアルケニルオキシ基(ただし、上記環はそれぞれ−(CH2n−基(n=1〜3)で架橋されていてもよい)
− モノ−および/またはオリゴグリコシル基
であり、
ただし、R1〜R7の少なくとも4つの基はOHであり、上記分子は少なくとも2対の隣接する−OH基を含むか、あるいは、R2、R5およびR6はOHであり、基R1、R3、R4およびR710はHである}。
【0058】
上記の利点に加えて、少なくとも1種の抗酸化剤を含む本発明による組成物の利点は、特に抗酸化作用および良好な皮膚容認性である。さらに、ここで述べる化合物は、無色であるかまたは弱い着色しか有しておらず、したがって、組成物が僅かだけ変色するかまたは全く変色しない結果となることが好ましい。特別の利点は、DPPH分析での遊離基(EC50)を捕捉する高い能力、時間遅延された作用(TEC50>120分)、したがって普通から高位に至る抗遊離基効率(AE)によって明らかである式Ia〜mの化合物の特別の作用範囲である。さらに、式Ia〜mの化合物は分子内での抗酸化特性と分子のUV−Aおよび/またはUV−B領域でのUV吸収とを結合させる。したがって、基R1〜R4のうちの少なくとも2つの隣接する基がOHであり、基R5〜R7のうちの少なくとも2つの隣接する基がOHであることを特徴とする少なくとも1つの式IIの化合物を含む組成物も好ましい。特に好ましい組成物は、基R1〜R4のうちの少なくとも3つの隣接する基がOHであり、好ましくは基R1〜R3がOHであることを特徴とする少なくとも1つの式IIの化合物を含む。
【0059】
式Ia〜mの化合物が、皮膚上での遊離基捕捉剤としてその積極的な作用を特によく発現できるようにするために、式Ia〜mの化合物を皮膚層中により深く浸透させることが好ましい。この目的のために、幾つかの可能性が利用できる。第1に式Ia〜mの化合物は、外皮層を通って表皮層の中に浸透するのに十分な親油性を有することができる。他の可能性として、外皮層を通して式Ia〜mの化合物を輸送することができる相当する輸送剤、例えばリポソームも組成物に含めることができる。最後に、式Ia〜mの化合物の全身への輸送も考えられる。こうして組成物は、例えば経口投与に適する形で設計される。
【0060】
式IIの化合物を、カプセル化された形態、例えば、セルロースまたはキチンカプセルとして、ゼラチンまたはワックスマトリックス中に入れて、またはシクロデキストリンでカプセル化して投与することも有利である。
【0061】
式Ia〜mの好ましい化合物は、酵素阻害物質としても作用すると考えられる。これらはおそらくタンパク質キナーゼ、エラスターゼ、アルドースレダクターゼおよびヒアルロニダーゼを阻害し、それによって、血管外筒の基礎物質の健全性を維持させることができる。さらにこれらは多分、カテコールO−メチルトランスフェラーゼを非特異的に阻害し、利用可能なカテコールアミンの量を増大させ、したがって血管強度を高める。さらに、これらは、AMPホスホジエステラーゼを阻害して、その基礎物質に血小板凝集の阻害性を与えると考えられる。
【0062】
これらの特性により、本発明による組成物は一般に、免疫性保護と、DNAおよびRNAの保護に適する。特に、この組成物は、酸化的攻撃、遊離基、および放射線特にUV放射線起因の損傷に対するDNAおよびRNAの保護に適する。本発明による組成物の他の利点は、細胞保護、特に上記影響に起因する損傷に対するランゲルハンス細胞の保護である。すべてのこれらの使用、およびそれに応じて使用できる組成物の調製のための式Ia〜mの化合物の使用も明らかに本発明の課題である。
【0063】
特に、本発明による好ましい組成物は、分化および細胞増殖に影響を及ぼす角質化の欠陥に付随する皮膚病の治療、特に、尋常性座瘡、面皰、多形性座瘡、酒さ、結節状座瘡、集簇性座瘡、加齢誘発座瘡、副作用として現れる座瘡、例えば日光性座瘡、薬物誘発座瘡または職業性座瘡などの治療、角質化の他の欠陥、特に魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病、掌蹠角化症、白板症、白板症様状態、皮膚および粘膜(口腔)(苔癬)の疱疹の治療、角質化の欠陥に付随し、炎症性および/または免疫アレルギー性成分を有する他の皮膚病、特に皮膚、粘膜および指や足指の爪に影響を及ぼすすべての形態の乾癬、ならびに乾癬性リウマチおよび皮膚アトピー、例えば湿疹もしくは呼吸性アトピー、またはガム質の肥大の治療のためにも適しており、さらに、これらの化合物を、角質化の欠陥に付随しない幾つかの炎症のため、ウイルスに由来する可能性がある真皮もしくは表皮のすべての良性または悪性の増殖物、例えば尋常性疣贅、扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、口腔乳頭腫症、フロリダ乳頭腫症、およびUV放射線によって引き起こされる可能性がある、増殖物、特に基底細胞上皮腫および有棘細胞上皮腫の治療、水疱性皮膚炎およびコラーゲンに影響を及ぼす疾患などの他の皮膚病の治療、ある種の目の疾患、特に角膜疾患の治療、老化に伴う光誘発性の皮膚老化を克服またはそれと闘うため、色素沈着および光線性角化を低減させるため、正常な老化または光誘発の老化に伴うすべての疾患の治療、局部的にまたは全身的に施用されたコルチコステロイドによって引き起こされる表皮および/または真皮の萎縮ならびに他のすべてのタイプの皮膚萎縮の創傷/瘢痕を防止するかまたは治癒させるため、創傷治癒の欠陥を防止するかまたは治療するため、妊娠による皮膚線条の防止または除去のためかまたは創傷治癒の促進のため、座瘡中の高脂漏症、または脂漏症などの獣脂生成の欠陥と闘うため、癌様状態または前癌状態、特に前骨髄球性白血病と闘うかまたはそれを防止するため、関節炎などの炎症性疾患の治療、皮膚または身体の他の部位のすべてのウイルス性疾患の治療、脱毛症の防止または治療、免疫成分を有する身体の他の部位の皮膚病の治療、動脈硬化症または高血圧症など循環器疾患および非インスリン依存性糖尿病の治療、ならびに、UV放射線によって引き起こされる皮膚の問題の解決のために使用することが可能である。
【0064】
本発明による特に好ましい組成物は、式Ia〜mの化合物の他にUVフィルターも含む。
【0065】
式Ia〜mの化合物と一緒に、UV−Aフィルターとして特に好ましいジベンゾイルメタン誘導体を使用すると、さらに別の利点がもたらされる。すなわち、式Ia〜mの化合物の存在によってUV−感受性ジベンゾイルメタン誘導体はさらに安定化する。したがって、本発明はまた、組成物中でのジベンゾイルメタン誘導体の安定化のための式Ia〜mの化合物の使用にも関する。
【0066】
原則として、全てのUVフィルターは、式Ia〜mの化合物と組み合わせるのに適する。その生理的認容性がすでに確認されているUVフィルターが特に好ましい。UV−AフィルターとUV−Bフィルターの両方として、専門文献で知られている多くの確認物質が存在する、例えば
ベンジリデンカンファー誘導体、例えば3−(4’−メチルベンジリデン)−dl−カンファー(例えばユーソレックス(登録商標)6300)、3−ベンジリデンカンファー(例えばメキソリル(登録商標)SD)、N−{(2および4)−[(2−オキソボーン−3−イリデン)メチル]−ベンジル}アクリルアミド(例えばメキソリル(登録商標)SW)、N,N,N−トリメチル−4−(2−オキソボーン−3−イリデンメチル)アニリニウムメチルサルフェート(例えばメキソリル(登録商標)SK)または(2−オキソボーン−3−イリデン)トルエン−4−スルホン酸(例えばメキソリル(登録商標)SL)のポリマー、
ベンゾイルもしくはジベンゾイルメタン、例えば1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン(例えばユーソレックス(登録商標)9020)または4−イソプロピルジベンゾイルメタン(例えばユーソレックス(登録商標)8020)、
ベンゾフェノン、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(例えばユーソレックス(登録商標)4360)または2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびそのナトリウム塩(例えばウビヌル(登録商標)MS−40)、
メトキシ桂皮酸エステル、例えばオクチルメトキシシンナメート(例えばユーソレックス(登録商標)2292)またはイソペンチル4−メトキシシンナメート、例えば異性体の混合物として(例えばネオヘリパン(登録商標)E1000)、
サリシレート誘導体、例えば2−エチルヘキシルサリシレート(例えばユーソレックス(登録商標)OS)、4−イソプロピルベンジルサリシレート(例えばMegasol(登録商標))または3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリシレート(例えばユーソレックス(登録商標)HMS)、
4−アミノ安息香酸および誘導体、例えば4−アミノ安息香酸、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(例えばユーソレックス(登録商標)6007)またはエトキシ化エチル4−アミノベンゾエート(例えばウビヌル(登録商標)P25)、
フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、例えば2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸ならびにそのカリウム、ナトリウムおよびトリエタノールアミン塩(例えばユーソレックス(登録商標)232)、2,2−(1,4−フェニレン)ビスベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸およびその塩(例えばネオヘリパン(登録商標)AP)または2,2−(1,4−フェニレン)ビスベンズイミダゾール−6−スルホン酸;ならびに、
他の物質、例えば、
− 2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート(例えばユーソレックス(登録商標)OCR)、
− 3,3’−(1,4−フェニレンジメチレン)ビス(7,7−ジメチル−2−オキソビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−1−イルメタンスルホン酸およびその塩(例えばメキソリル(登録商標)SX)、
− 2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2’−エチルヘキシル−1’−オキシ)−1,3,5−トリアジン(例えばウビヌル(登録商標)T150)、および
− ヘキシル2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート(例えばウビヌル(登録商標)UVA Plus,BASF)である。
【0067】
上記目録で挙げた化合物は単なる例と見なすべきものである。他のUVフィルターを使用することも当然可能である。
【0068】
これらの有機UVフィルターは、一般に0.5重量%〜10重量%、好ましくは1重量%〜8重量%の量で化粧品調合物に添加する。
【0069】
別の適切な有機UVフィルターは、例えば、
− 2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(2−メチル3−(1,3,3,3−テトラメチル−1−(トリメチルシリルオキシ)ジシロキサニル)プロピル)フェノール(例えばSilatrizole(登録商標))、
− 2−エチルヘキシル4,4’−[(6−[4−((1,1−ジメチルエチル)アミノカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ジイミノ]ビス(ベンゾエート)(例えばユバソーブ(登録商標)HEB)、
− α−(トリメチルシリル)−ω−[トリメチルシリル]オキシ]ポリ[オキシ(ジメチル[および約6%のメチル[2−[p−[2,2−ビス(エトキシカルボニル)ビニル]フェノキシ]−1−メチレンエチル]および約1.5%のメチル[3−[p−[2,2−ビス(エトキシカルボニル)ビニル]−フェノキシ]プロペニル]および0.1%〜0.4%の(メチル水素)シリレン]](n≒60)(CAS No.207574−74−1)
− 2,2’−メチレンビス(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール)(CAS No.103597−45−1)
− 2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸モノ−ナトリウム塩)(CAS No.180898−37−7)、
− 2,4−ビス{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(CAS No.103597−45−,187393−00−6)、および
− 2−エチルヘキシル4,4’−[(6−[4−((1,1−ジメチルエチル)アミノカルボニル)フェニルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ジイミノ]ビス(ベンゾエート)(例えばユバソーブ(登録商標)HEB)である。
【0070】
他の適切なUVフィルターには、先のDE10232595.2に相当するメトキシフラボンもある。
【0071】
有機UVフィルターは一般に0.5重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜15重量%の量で化粧品調合物に添加する。
【0072】
無機UVフィルターは、二酸化チタン、例えばコーティングされた二酸化チタン(例えばユーソレックス(登録商標)T−2000、ユーソレックス(登録商標)T−AQUA)、酸化亜鉛(例えばSachtotec(登録商標))、酸化鉄および酸化セリウムも含むものからなる群のものである。これらの無機UVフィルターは一般に0.5重量%〜20重量%、好ましくは2重量%〜10重量%の量で化粧品組成物に添加する。
【0073】
UVフィルター特性を有する好ましい化合物は、3−(4’−メチルベンジリデン)−dl−カンファー、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルメトキシシンナメート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリシレート、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸ならびにそのカリウム、ナトリウムおよびトリエタノールアミン塩である。
【0074】
1以上の式Ia〜mの化合物を別のUVフィルターと組み合わせることによって、UV放射線の有害な影響に対する保護作用を最適化することができる。
【0075】
最適化された組成物には、例えば有機UVフィルターの4’−メトキシ−6−ヒドロキシフラボンと、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオンおよび3−(4’−メチルベンジリデン)−dl−カンファーの組合せが含まれる。この組合せは広範囲の保護作用の増大をもたらし、これを、二酸化チタン微粒子などの無機UVフィルターを加えることによって補うことができる。
【0076】
前記UVフィルターはすべて、カプセル化の形態で使用することもできる。特に、有機UVフィルターをカプセル化の形態で用いることが有利である。詳しくは、以下の利点をもたらす。
− UVフィルターの溶解性とは関係なく、カプセル壁の親水性にできる。したがって、例えば、疎水性UVフィルターを、純粋に水性の組成物中に組み込むことも可能である。さらに、疎水性UVフィルターを含む組成物を使用した際の脂っぽい印象(これは不快と見なされることが多い)が抑えられる。
− ある種のUVフィルター、特にジベンゾイルメタン誘導体は、化粧品組成物中で光安定性が僅かしか減少しない。これらのフィルターのカプセル化または光安定性をこれらのフィルターに付与する化合物、例えば桂皮酸誘導体などのカプセル化によって、組成物全体の光安定性を増大させることができる。
− 有機UVフィルターによる皮膚浸透およびヒトの皮膚への直接施用の際の付随する刺激作用の可能性が文献に繰り返し論じられている。本明細書で提案する相当物質のカプセル化によってこの影響が抑えられる。
− 一般に、個々のUVフィルターまたは他の構成成分のカプセル化によって、個々の組成構成要素の互いの相互作用によって引き起こされる組成物の問題、例えば結晶化プロセス、沈澱および凝集体生成などを回避することが可能である。その理由は相互作用が抑えられるからである。
【0077】
したがって、本発明によれば、上記UVフィルターの1種以上は複数はカプセル化された形態であることが好ましい。ここで、カプセルは肉眼で見ることができないほど非常に小さいことが有利である。上記効果を実現するためには、カプセルが十分に安定であり、カプセル化された活性な成分(UVフィルター)が、僅かな量だけしか、または全く環境へ放出されないことがさらに必要である。
【0078】
適切なカプセルは、無機ポリマーまたは有機ポリマーの壁を有することができる。例えば、米国特許第6,242,099B1号は、キチン、キチン誘導体またはポリヒドロキシル化ポリアミンの壁を有する適切なカプセルの製造を記載している。本発明で特に好ましく使用できるカプセルは、国際特許出願WO00/09652、WO00/72806およびWO00/71084に記載されているゾル−ゲルプロセスで得られる壁を有する。ここではやはり、その壁がシリカゲル(シリカ;未確定のシリコンオキシドヒドロキシドで構築されたカプセルが好ましい。相当するカプセルの製造は、例えば引用した特許出願から当業者に周知であり、その内容も明らかに本出願の課題に属する。
【0079】
カプセルは、カプセル化UVフィルターが上記量で組成物中に確実に存在する量で、本発明による組成物中に存在することが好ましい。
【0080】
皮膚保護またはスキンケア活性のある構成成分は、原則として当業者に知られているいずれの活性な成分であってもよい。
【0081】
本発明の実施形態では、特に好ましい活性構成成分はピリミジンカルボン酸および/またはアリールオキシムである。
【0082】
ピリミジンカルボン酸は好塩性微生物中で生成し、これらの生物体の浸透度調節の役割を果たす(E.A.Galinski等、Eur.J.Biochem,149(1985年)135〜139頁)。ピリミジンカルボン酸の中で特にここで挙げるべきものは、エクトイン((S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)およびヒドロキシエクトイン((S,S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)ならびにその誘導体である。これらの化合物は、水溶液および有機溶媒中で酵素および他の生体分子を安定化させる。さらに、これらは塩、極端なpH値、界面活性剤、尿素、塩化グアニジニウムおよび他の化合物などの変性状態に対して、特に酵素を安定化させる。
【0083】
エクトインおよびヒドロキシエクトインなどのエクトイン誘導体は医薬品において有利に使用することができる。特に、ヒドロキシエクトインは、皮膚病の治療用の医薬品の製造のために使用することができる。ヒドロキシエクトインおよび他のエクトイン誘導体の他の応用分野は一般に、例えばトレハロースが添加物として使用される分野である。したがって、ヒドロキシエクトインなどのエクトイン誘導体は、乾燥酵母および細菌体中での保護剤として使用することができる。グリコシル化されていない薬剤として活性なペプチドおよびタンパク質などの薬剤製品、例えばt−PAは、エクトインまたはその誘導体で保護することもできる。
【0084】
化粧品用途のうち、特に挙げるべきものは、老化した、乾燥したまたは炎症を起こした皮膚のケアのためのエクトインおよびエクトイン誘導体の使用である。すなわち、欧州特許出願EP−A−0671161は、特に、エクトインおよびヒドロキシエクトインを、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング製品、口紅、ルージュ、メークアップ、ケアクリームおよび日焼け止め剤組成物などの化粧品組成物中で使用することを記載している。
【0085】
本明細書では、以下の式IIのピリミジンカルボン酸の使用が好ましい。
【0086】
【化4】

【0087】
式中、R1は基HまたはC18−アルキルであり、R2は基HまたはC14−アルキルであり、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ互いに独立して、H、OH、NH2およびC14−アルキルからなる群の基である。R2がメチルまたはエチル基であり、R1またはR5およびR6がHであるピリミジンカルボン酸の使用が好ましい。ピリミジンカルボン酸であるエクトイン((S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)およびヒドロキシエクトイン((S,S)−1,4,5,6−テトラヒドロ−5−ヒドロキシ−2−メチル−4−ピリミジンカルボン酸)の使用が特に好ましい。本発明による組成物はこの種のピリミジンカルボン酸を最大で15重量%の量含むことが好ましい。このピリミジンカルボン酸は式Ia〜mの化合物に対して100:1〜1:100の比で用いることが好ましく、1:10〜10:1の比で用いることが特に好ましい。
【0088】
アリールオキシムの中では、HMLO、LPOまたはF5としても知られている2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシムを使用することが好ましい。化粧品組成物での使用のその適切性が、例えばDE−A−4116123に記載されている。それによれば、2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシムを含む組成物は、炎症を伴う皮膚病の治療に適する。この種の組成物は、例えば乾癬、様々な形態の湿疹、刺激性および中毒性皮膚炎、UV皮膚炎ならびに皮膚および外皮付属物の他のアレルギー性および/または炎症性疾患の治療に使用できることが知られている。式Ia〜mの化合物に加えて、さらにアリールオキシム、好ましくは2−ヒドロキシ−5−メチルラウロフェノンオキシムを含む本発明による組成物は、驚くほどの適切な抗炎症性を示す。この組成物は0.01重量%〜10重量%のアリールオキシムを含むことが好ましく、0.05重量%〜5重量%のアリールオキシムを含むことが特に好ましい。
【0089】
組成物で使用できるすべての化合物または成分は、公知であるかまたは市販されているか、あるいは公知の方法で合成することができる。式Ia〜mの新規な化合物の調製を以下で説明する。
【0090】
式Ia〜mの1種以上の化合物を、従来の方式で化粧品組成物または皮膚用組成物中に添加することができる。適切な組成物は、例えばクリーム、ローションまたはゲルの形態、あるいは皮膚に噴霧することができる溶液として外部使用するためのものである。内部使用に適したものは、カプセル、コーティングした錠剤、粉末、錠剤状液剤または液剤などの投与形態である。
【0091】
挙げることができる本発明の組成物の使用形態は、例えば液剤、懸濁剤、エマルジョン、PITエマルジョン、ペースト剤、軟膏、ゲル剤、クリーム、ローション、粉剤、石鹸、界面活性剤含有クレンジング調製物、油剤、エアロゾル剤および噴霧剤である。他の使用形態の例は、スティック、シャンプーおよびシャワー組成物である。所望する通常の任意の担体、補助剤、望むなら他の活性な成分を組成物に添加することができる。
【0092】
好ましい補助剤は、保存剤、抗酸化剤、安定剤、可溶化剤、ビタミン、着色剤および臭気改良剤からなる群から選ばれる。
【0093】
軟膏、ペースト剤、クリームおよびゲル剤は、通常の担体、例えば動物性および植物性油脂、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0094】
粉剤および噴霧剤は、通常の担体、例えばラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの混合物を含むことができる。噴霧剤はさらに、通常の噴射剤、例えばクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルを含むことができる。
【0095】
液剤およびエマルジョンは、溶媒、可溶化剤および乳化剤などの通常の担体、例えば水、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコール、オイル、特に綿実油、ピーナッツ油、小麦胚芽油、オリーブ油、ひまし油およびゴマ油、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールならびにソルビタンの脂肪酸エステルまたはこれらの混合物を含むことができる。
【0096】
懸濁剤は、通常の担体、例えば液体希釈剤、例えば水、エタノールまたはプロピレングリコール、懸濁剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルおよびポリオキシエチレンソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天ならびにトラガカント、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0097】
石鹸は、通常の担体、例えば脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸モノエステルの塩、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオン酸塩、ラノリン、脂肪族アルコール、植物油、植物抽出物、グリセロール、糖類、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0098】
界面活性剤含有クレンジング製品は、通常の担体、例えば脂肪族アルコールサルフェートの塩、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオン酸塩、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物油および合成オイル、ラノリン誘導体、エトキシ化グリセロール脂肪酸エステル、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0099】
フェイスオイルおよびボディオイルは、通常の担体、例えば脂肪酸エステル、脂肪族アルコール、シリコーンオイルなどの合成オイル、植物油およびオイル状植物抽出物などの天然オイル、パラフィンオイルまたはラノリンオイルあるいはこれらの混合物を含むことができる。
【0100】
別の一般的な化粧品の使用形態には、また口紅、リップケアスティック、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、ルージュ、パウダーメークアップ、乳液メークアップおよびワックスメークアップ、ならびに日焼け止め剤、日焼け前および日焼け後用の調合物もある。
【0101】
本発明による好ましい組成物の形態は特にエマルジョンを含む。
【0102】
本発明によるエマルジョンは有利であり、例えば前記油脂、オイル、ワックスおよび他の脂肪質物質、ならびに水およびこの種の組成物に通常使用される乳化剤を含む。
【0103】
脂質相は以下の物質群から有利に選択することができる。
− 鉱物油、鉱物性ワックス、
− カプリン酸またはカプリル酸のトリグリセリドなどのオイル、さらに例えばひまし油などの天然オイル、
− 油脂、ワックスならびに他の天然および合成脂肪質物質、好ましくは低炭素数を有するアルコール、例えばイソプロパノール、プロピレングリコールもしくはグリセロールとの脂肪酸のエステル、または低炭素数を有するアルカン酸もしくは脂肪酸との脂肪族アルコールのエステル、
− シリコーンオイル、例えばジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンおよびその混合形態。
【0104】
本発明の目的のためには、エマルジョン、オレオゲルまたはハイドロディスパージョンもしくはリポディスパージョンのオイル相は、3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸と、3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルコールのエステルからなる群、あるいは、芳香族カルボン酸と、3〜30個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルコールのエステルからなる群から有利に選択される。次いで、この種のエステルオイルは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n−ブチル、ラウリン酸n−ヘキシル、オレイン酸n−デシル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノニルイソノナノエート、パルミチン酸2−エチルヘキシル、ラウリン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、エルカ酸エルシルならびにこの種のエステルの合成品、半合成品および天然品(例えばホホバオイル)の混合物からなる群から有利に選択することができる。
【0105】
オイル相はさらに、分枝および非分枝炭化水素およびワックス、シリコーンオイル、ジアルキルエーテルからなる群、または飽和および不飽和、分枝および非分枝アルコールおよび脂肪酸トリグリセリド、特に8〜24個、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のトリグリセロールエステルからなる群から有利に選択することができる。脂肪酸トリグリセリドは、例えば合成オイル、半合成オイルおよび天然オイル、例えばオリーブ油、ひまわり油、大豆油、ピーナッツ油、菜種油、アーモンド油、パーム油、ココナッツ油、パーム核油等からなる群から有利に選択することができる。
【0106】
これらの種類のオイル成分とワックス成分との所望の任意の混合物も、本発明のために有利に使用することができる。オイル相の唯一の脂質成分として、ワックス、例えばパルミチン酸セチルを有利に使用することもできる。
【0107】
オイル相は、2−エチルヘキシルイソステアレート、オクチルドデカノール、イソトリデシルイソノナノエート、イソエイコサン、2−エチルヘキシルココエート、C1215−アルキルベンゾエート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドおよびジカプリルエーテルからなる群から有利に選択することができる。
【0108】
特に有利なものは、C1215−アルキルベンゾエートと2−エチルヘキシルイソステアレートの混合物、C1215−アルキルベンゾエートとイソトリデシルイソノナノエートの混合物、ならびにC1215−アルキルベンゾエート、2−エチルヘキシルイソステアレートおよびイソトリデシルイソノナノエートの混合物である。
【0109】
炭化水素のうち、パラフィンオイル、スクアランおよびスクアレンは、本発明の目的のために有利に使用することができる。
【0110】
さらに、オイル相は、ある含量の環状もしくは直鎖シリコーンオイルも有利に含むことができ、またすべてこの種のオイルからなることもできる。しかし、1種以上のシリコーンオイルに加えて、ある含量の他のオイル相成分を追加的に使用することが好ましい。
【0111】
本発明で使用するシリコーンオイルは、有利にはシクロメチコン(オクタメチルシクロテトラシロキサン)である。しかし、他のシリコーンオイル、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、ポリジメチルシロキサンまたはポリ(メチルフェニルシロキサン)の使用も本発明の目的のために有利である。
【0112】
シクロメチコンとイソトリデシルイソノナノエートならびにシクロメチコンと2−エチルヘキシルイソステアレートの混合物も特に有利である。
【0113】
本発明による組成物の水相は、低炭素数を有するアルコール、ジオールまたはポリオールおよびそのエーテル、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルもしくはモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノメチルもしくはモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテルおよび類似産物、さらに低炭素数を有するアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、1,2−プロパンジオールまたはグリセロール、および特に、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、多糖類およびその誘導体からなる群から有利に選択することができる1種以上の増粘剤、例えばヒアルロン酸、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、特に有利にはポリアクリレート、好ましくはいわゆるカルボポール、例えばカルボポールグレード980、981、1382、2984もしくは5984からなる群からのポリアクリレートを、それぞれのケースで独立して、または組み合わせて任意選択で有利に含む。
【0114】
特に、上記溶媒の混合物が使用される。アルコール系溶媒の場合、水を追加の構成成分としてもよい。
【0115】
本発明によるエマルジョンは有利であり、例えば前記油脂、オイル、ワックスおよび他の脂肪質物質、ならびに水およびこの種の調合物に通常使用される乳化剤を含む。
【0116】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は親水性界面活性剤を含む。
【0117】
その親水性界面活性剤は好ましくはアルキルグルコシド、アシルラクチレート、ベタインおよびココナッツアンホアセテートからなる群から選択される。
【0118】
アルキルグルコシドはそれ自体、以下の構造式
【0119】
【化5】

【0120】
(式中、Rは4〜24個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基であり、
【0121】
【数1】

【0122】
は最大で2の平均グルコシル化度を表す)
で特徴づけられるアルキルグルコシドからなる群から有利に選択される。
【0123】

【0124】
【数2】

【0125】
は本発明で使用するアルキルグルコシドのグルコシド化の程度を表し、次式で定義される。
【0126】
【数3】

【0127】
式中、p1、p2、p3...piはモノ−、ジ−、トリ−...i倍グルコシル化生成物の割合を重量%で表す。本発明で有利な生成物は、1〜2、特に有利には1.1〜1.5、非常に有利には1.2〜1.4、特に1.3のグルコシル化度を有するものである。
【0128】
値DPについては、調製の結果として、アルキルグルコシドが一般にモノ−およびオリゴグルコシドの混合物の形態であるということを考慮に入れる。本発明によれば、比較的高いモノグルコシドの含量、一般に40重量%〜70重量%程度が有利である。
【0129】
本発明の目的のために特に有利に使用されるアルキルグリコシドは、オクチルグルコピラノシド、ノニルグルコピラノシド、デシルグルコピラノシド、ウンデシルグルコピラノシド、ドデシルグルコピラノシド、テトラデシルグルコピラノシドおよびヘキサデシルグルコピラノシドからなる群から選択される。
【0130】
有効含量の本発明で使用の活性成分によって特徴づけられる天然もしくは合成の原料および補助剤、または混合物、例えばプランタレン(登録商標)1200(ヘンケルKGaA)、オラミックス(登録商標)NS10(セピック)を使用することも同様に有利である。
【0131】
アシルラクチレートはそれ自体、下記構造式
【0132】
【化6】

【0133】
(式中、R1は1〜30個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基であり、M+は、アルカリ金属イオンからなる群、および1種以上のアルキルおよび/または1種以上のヒドロキシアルキル基で置換されているアンモニウムイオンからなる群から選択されるか、あるいはアルカリ土類金属イオンの2分の1の当量に相当する)
で特徴づけられる物質の群から有利に選択される。
【0134】
例えば、ナトリウムイソステアリルラクチレート、例えばアメリカンイングレディエン社の製品のパシオニック(登録商標)ISLが有利である。
【0135】
ベタインは、構造式
【0136】
【化7】

【0137】
(式中、R2は1〜30個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基である)
によって特徴づけられる物質からなる群から有利に選択される。
【0138】
2は特に有利には6〜12個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基である。
【0139】
例えば、カプラミドプロピルベタイン、例えばTh.ゴールドシュミットAGの製品テゴ(登録商標)ベタイン810が有利である。
【0140】
本発明の目的のために有利なココナッツアンホアセテートは、例えば、ミラノールケミカル社からミラノール(登録商標)ウルトラC32の製品名で市販されているナトリウムココナッツアンホアセテートである。
【0141】
本発明による組成物は有利には、親水性界面活性剤が、それぞれ組成物の全重量ベースで0.01重量%〜20重量%、好ましくは0.05重量%〜10重量%、特に好ましくは0.1重量%〜5重量%の濃度で存在することを特徴とする。
【0142】
使用に際しては、化粧品組成物および皮膚用組成物を、化粧品に一般的な方式により十分な量で皮膚および/または毛髪に施用する。
【0143】
本発明による化粧品組成物および皮膚用組成物は様々な形態で存在してよい。したがって、これらは、例えば液剤、水を含まない組成物、油中水(W/O)型もしくは水中油(O/W)型のエマルジョンまたはマイクロエマルジョン例えば水中油中水(W/O/W)型の多重エマルジョン、ゲル、固形スティック、軟膏またはエアロゾルであってよい。エクトインを、例えばコラーゲンマトリックスおよび他の通常のカプセル化材料中にカプセル化した形態、例えば、ゼラチン、ワックスマトリックス中のセルロースカプセル化物として、またはリポソームでカプセル化して投与することも有利である。特に、DE−A4308282に記載のワックスマトリックスは好都合であることが証明されている。好ましいのはエマルジョンである。O/W型エマルジョンが特に好ましい。エマルジョン、W/O型エマルジョンおよびO/W型エマルジョンは従来の方法で得ることができる。
【0144】
使用できる乳化剤は、例えば公知のW/O型エマルジョンおよびO/W型乳化剤である。本発明による好ましいO/Wエマルジョンでは、他の通常の共乳化剤を使用することが有利である。
【0145】
本発明において有利である共乳化剤は、O/W型乳化剤が飽和基RおよびR’を有する限り、例えば、主に11〜16のHLB値、特に有利には14.5〜15.5のHLB値を有する物質からなる群からのO/W型乳化剤である。O/W型乳化剤が、不飽和基Rおよび/またはR’を有するか、またはイソアルキル誘導体である場合、そうした乳化剤の好ましいHLB値はより低いかまたはより高くてもよい。
【0146】
脂肪族アルコールエトキシレートを、エトキシ化ステアリルアルコール、セチルアルコール、セチルステアリルアルコール(セテアリルアルコール)からなる群から選択することが有利である。特に好ましいのは以下のもの、すなわち、ポリエチレングリコール(13)ステアリルエーテル(ステアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)ステアリルエーテル(ステアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)ステアリルエーテル(ステアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)ステアリルエーテル(ステアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)ステアリルエーテル(ステアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)ステアリルエーテル(ステアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)ステアリルエーテル(ステアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)ステアリルエーテル(ステアレス−20)、ポリエチレングリコール(12)イソステアリルエーテル(イソステアレス−12)、ポリエチレングリコール(13)イソステアリルエーテル(イソステアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)イソステアリルエーテル(イソステアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)イソステアリルエーテル(イソステアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)イソステアリルエーテル(イソステアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)イソステアリルエーテル(イソステアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)イソステアリルエーテル(イソステアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)イソステアリルエーテル(イソステアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)イソステアリルエーテル(イソステアレス−20)、ポリエチレングリコール(13)セチルエーテル(セテス−13)、ポリエチレングリコール(14)セチルエーテル(セテス−14)、ポリエチレングリコール(15)セチルエーテル(セテス−15)、ポリエチレングリコール(16)セチルエーテル(セテス−16)、ポリエチレングリコール(17)セチルエーテル(セテス−17)、ポリエチレングリコール(18)セチルエーテル(セテス−18)、ポリエチレングリコール(19)セチルエーテル(セテス−19)、ポリエチレングリコール(20)セチルエーテル(セテス−20)、ポリエチレングリコール(13)イソセチルエーテル(イソセテス−13)、ポリエチレングリコール(14)イソセチルエーテル(イソセテス−14)、ポリエチレングリコール(15)イソセチルエーテル(イソセテス−15)、ポリエチレングリコール(16)イソセチルエーテル(イソセテス−16)、ポリエチレングリコール(17)イソセチルエーテル(イソセテス−17)、ポリエチレングリコール(18)イソセチルエーテル(イソセテス−18)、ポリエチレングリコール(19)イソセチルエーテル(イソセテス−19)、ポリエチレングリコール(20)イソセチルエーテル(イソセテス−20)、ポリエチレングリコール(12)オレイルエーテル(オレス−12)、ポリエチレングリコール(13)オレイルエーテル(オレス−13)、ポリエチレングリコール(14)オレイルエーテル(オレス−14)、ポリエチレングリコール(15)オレイルエーテル(オレス−15)、ポリエチレングリコール(12)ラウリルエーテル(ラウレス−12)、ポリエチレングリコール(12)イソラウリルエーテル(イソラウレス−12)、ポリエチレングリコール(13)セチルステアリルエーテル(セテアレス−13)、ポリエチレングリコール(14)セチルステアリルエーテル(セテアレス−14)、ポリエチレングリコール(15)セチルステアリルエーテル(セテアレス−15)、ポリエチレングリコール(16)セチルステアリルエーテル(セテアレス−16)、ポリエチレングリコール(17)セチルステアリルエーテル(セテアレス−17)、ポリエチレングリコール(18)セチルステアリルエーテル(セテアレス−18)、ポリエチレングリコール(19)セチルステアリルエーテル(セテアレス−19)、ポリエチレングリコール(20)セチルステアリルエーテル(セテアレス−20)である。
【0147】
脂肪酸エトキシレートを以下の群、すなわち、ポリエチレングリコール(20)ステアレート、ポリエチレングリコール(21)ステアレート、ポリ−エチレングリコール(22)ステアレート、ポリエチレングリコール(23)ステアレート、ポリエチレングリコール(24)ステアレート、ポリエチレングリコール(25)ステアレート、ポリエチレングリコール(12)イソステアレート、ポリエチレングリコール(13)イソステアレート、ポリエチレングリコール(14)イソステアレート、ポリエチレングリコール(15)イソステアレート、ポリエチレングリコール(16)イソステアレート、ポリエチレングリコール(17)イソステアレート、ポリエチレングリコール(18)イソステアレート、ポリエチレングリコール(19)イソステアレート、ポリエチレングリコール(20)イソステアレート、ポリエチレングリコール(21)イソステアレート、ポリエチレングリコール(22)イソステアレート、ポリエチレングリコール(23)イソステアレート、ポリエチレングリコール(24)イソステアレート、ポリエチレングリコール(25)イソステアレート、ポリエチレングリコール(12)オレエート、ポリエチレングリコール(13)オレエート、ポリエチレングリコール(14)オレエート、ポリエチレングリコール(15)オレエート、ポリエチレングリコール(16)オレエート、ポリエチレングリコール(17)オレエート、ポリエチレングリコール(18)オレエート、ポリエチレングリコール(19)オレエート、ポリエチレングリコール(20)オレエートから選択することがさらに有利である。
【0148】
有利に使用できるエトキシ化アルキルエーテルカルボン酸またはその塩はナトリウムラウレス−11カルボキシレートである。有利に使用できるアルキルエーテルサルフェートはナトリウムラウレス−14サルフェートである。有利に使用できるエトキシ化コレステロール誘導体はポリ−エチレングリコール(30)コレステリルエーテルである。ポリエチレングリコール(25)ソヤステロールも好都合であることが示されている。有利に使用できるエトキシ化トリグリセリドはポリエチレングリコール(60)月見草グリセリドである。
【0149】
ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステルを、ポリエチレングリコール(20)グリセリルラウレート、ポリエチレングリコール(21)グリセリルラウレート、ポリエチレングリコール(22)グリセリルラウレート、ポリエチレングリコール(23)グリセリルラウレート、ポリエチレングリコール(6)グリセリルカプレート/カプリネート、ポリエチレングリコール(20)グリセリルオレエート、ポリエチレングリコール(20)グリセリルイソステアレート、ポリエチレングリコール(18)グリセリルオレエート/ココエートからなる群から選択することがさらに有利である。
【0150】
ソルビタンエステルを、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノラウレート、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノイソステアレート、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノオレエートからなる群から選択することも同様に好都合である。
【0151】
任意選択ではあるが、本発明の目的のために有利であるW/O型乳化剤は以下のものである。
【0152】
8〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のモノグリセロールエステル、8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のジグリセロールエステル、8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルコールのモノグリセロールエーテル、8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルコールのジグリセロールエーテル、8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のプロピレングリコールエステル、ならびに8〜24個の炭素原子、特に12〜18個の炭素原子の鎖長を有する飽和および/または不飽和、分枝および/または非分枝アルカンカルボン酸のソルビタンエステルである。
【0153】
特に有利なW/O型乳化剤は、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノオレエート、ジグリセリルモノステアレート、ジグリセリルモノイソステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールモノイソステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノラウレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノイソオレエート、スクロースジステアレート、セチルアルコール、ステアリルアルコ−ル、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、イソベヘニルアルコール、セラキルアルコール、キミルアルコール、ポリエチレングリコール(2)ステアリルエーテル(ステアレス−2)、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノカプリネートおよびグリセリルモノカプリレートである。
【0154】
本発明の好ましい組成物は、老化プロセスに対して、また酸化的ストレスすなわち、例えば日光、熱または他の影響によって生じるような遊離基による損傷に対して、ヒトの皮膚を保護するのに特に適する。その関連では、これらの組成物は、こうした用途で通常用いられる様々な投与形態で存在する。例えば、これらは、特に、クリームもしくは乳液(O/W型、W/O型、O/W/O型、W/O/W型)の形態などのローションまたはエマルジョンの形態、オイル状アルコール系、オイル状水性もしくは水性アルコール系のゲルまたは溶液の形態、固形スティックの形態で、あるいはエアロゾルとして調合されてよい。
【0155】
組成物は、例えば増粘剤、柔軟剤、保湿剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、消泡剤、香料、ワックス、ラノリン、噴射剤、組成物自体もしくは皮膚を着色する染料および/または顔料、ならびに化粧品で通常使用される他の成分などのこの種の組成物で通常使用される化粧品補助剤を含むことができる。
【0156】
使用する分散剤または可溶化剤は、オイル、ワックスもしくは他の脂肪質物質、低級モノアルコールもしくは低級ポリオールまたはその混合物であってよい。特に好ましいモノアルコールまたはポリオールには、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロールおよびソルビトールが含まれる。
【0157】
本発明の好ましい実施形態は、式Ia〜mの化合物とは別に、水の存在下で、例えば脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、特に、脂肪酸のトリグリセリド、ラノリン、天然および合成オイルまたはワックスならびに乳化剤を含む保護クリームまたは乳液の形態のエマルジョンである。
【0158】
他の好ましい実施形態は、天然もしくは合成オイルおよびワックス、ラノリン、脂肪酸エステル、特に脂肪酸のトリグリセリドをベースとしたオイル状ローション、あるいは低級アルコール例えばエタノール、またはグリセロール例えばプロピレングリコール、および/またはポリオール、例えばグリセロール、ならびにオイル、ワックスおよび脂肪酸エステル例えば脂肪酸のトリグリセリドをベースとしたオイル状アルコール系ローションである。
【0159】
本発明による組成物は、エタノール、プロピレングリコールまたはグリセロールなどの1種もしくは複数の低級アルコールまたはポリオール、およびケイ質土壌などの増粘剤を含むアルコール系ゲルの形態であってもよい。オイル状アルコール系ゲルは天然もしくは合成オイルまたはワックスも含む。
【0160】
固形スティックは、天然または合成ワックスおよびオイル、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、ラノリンならびに他の脂肪質物質からなる。
【0161】
組成物をエアロゾルとして調合する場合、一般にアルカン、フルオロアルカンおよびクロロフルオロアルカンなどの通常の噴射剤を使用する。
【0162】
化粧品組成物は、色合いの変化、脱色または機械的性質の傷みを防止すべく、光化学的損傷に対して毛髪を保護するためにも使用することができる。この場合、適切な調合物はリンスアウトシャンプー、ローション、ゲルまたはエマルジョンの形態であり、この組成物は、シャンプーの前後、着色もしくは脱色の前後、パーマネントウェーブをかける前後に施用する。毛髪をスタイリングもしくはトリートメントするためのローションまたはゲルの形態、ブラッシングまたはブローウェイビングするためのローションまたはゲル形態、ヘアーラッカー、パーマネントウェーブ用組成物、毛髪用の着色剤または漂白剤の形態の組成物を選択することも可能である。式Ia〜mの化合物の他に、光保護特性を有する組成物は、この種の組成物で使用される様々な補助剤、例えば界面活性剤、増粘剤、ポリマー、柔軟剤、保存剤、泡安定剤、電解質、有機溶媒、シリコーン誘導体、オイル、ワックス、アンチグリース剤、組成物自体または毛髪を着色する染料および/または顔料、またはヘアーケアに通常使用される他の構成成分を含むことができる。
【0163】
さらに、本発明は、上記の基を含有する少なくとも1つの式Ia〜mの化合物を、化粧品用または皮膚用に、あるいは食品として適する担体と混合することを特徴とする組成物の調製方法に関し、かつ、組成物調製のための式Ia〜mの化合物の使用に関する。
【0164】
本発明による組成物は、当業者によく知られている技術の助けを得て調製することができる。
【0165】
混合によって、式Ia〜mの化合物の担体中での溶解、乳化または分散をもたらすことができる。
【0166】
本発明で好ましい方法では、式Ia〜mの化合物は、塩基性条件下で無水物または塩化アシルを用いて、相当する置換されたo−ヒドロキシアセトフェノンの環化によって調製する。続いてアシル保護基を取り外すことができる。この反応は、Kelly,T;Kim M.H.;J.Org.Chem.1992年、57、1593〜97頁と同様にして実施することができる。あるいは、フリーのヒドロキシル基をアシル化し、続いて塩基性条件下でBaker−Venkatamaran転移を行い、続いて酸性条件下で閉環させる。相当する反応(所望する化合物にそれを適用しても当業者に全く問題とならない)がWO2002/060889に開示されている。
【0167】
環系または官能基の誘導についての通常の反応によって、式Ia〜mの他の誘導体を得ることができる。この種の合成の当業者は、そうした反応、例えば、酸化、還元、エステル交換、エーテル化に必要な反応条件を、有機反応に関する一般的文献から容易に見出すことができよう。
【0168】
式Ia〜mの化合物は、組成物への安定化効果を有することができることも指摘されている。相当する製品に使用した場合、後者はその製品もより長期に安定であり、その外観は変化しない。特に、構成成分、例えばビタミンの効力は、長期間にわたる施用の場合でも長期間の保存の場合でも保持される。これは、とりわけ、紫外線の影響に対する皮膚の保護のための組成物の場合、これらの化粧品がUV放射線による特に強いストレスに曝されるので特に有利である。
【0169】
式Ia〜mの化合物の好ましい効果によって、化粧品組成物または薬剤組成物での使用について特に適合性が大きくなる。
【0170】
式Ia〜mの化合物の特性は、食品での使用、あるいは補助食品または機能食品として使用に同様に好ましいものと見なすべきである。食品のためのさらに行われる説明は、補助食品および機能食品にも同様に適用される。
【0171】
1以上の本発明による式la〜mの化合物で強化された食品には、動物による消費またはヒトによる消費に適したすべての材料、例えばビタミンおよびそのプロビタミン、油脂、ミネラルまたはアミノ酸が含まれる。(食品は固形物であっても、液体すなわち飲料品の形態であってもよい)。
【0172】
したがって、本発明はさらに、式Ia〜mの化合物のヒトまたは動物の栄養物のための食品添加物としての使用と、食品または補助食品であり、かつ対応する担体を含む組成物に関する。
【0173】
1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化できる食品は、例えば糖、単一の植物種の無糖ジュース、スカッシュまたはピューレ、例えば無糖リンゴジュース(例えば異なる種類のリンゴジュースの混合物も)、グレープフルーツジュース、オレンジジュース、リンゴの甘煮、アプリコットスカッシュ、トマトジュース、トマトソース、トマトピューレ等の単一の天然資源から得られる食品でもある。1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化できる食品の他の例は、単一の植物種からのとうもろこしまたはシリアル、およびこの種の植物種から産出される材料、例えばシリアルシロップ、ライ麦粉、小麦粉またはオート麦ぬかである。この種の食品の混合物も、1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化するのに適する。例えば、複合ビタミン調製物、ミネラル混合物または甘味ジュースである。1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化できる食品の別の例として、食品組成物、例えば加工シリアル、ビスケット、混合飲料物、ヨーグルトなどの特に子供用の加工食品、ダイエット食品、低カロリー食品または動物用飼料を挙げることができる。
【0174】
したがって、1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化できる食品には、炭水化物、脂質、タンパク質、無機元素、微量元素、ビタミン、水、または植物および動物の活性代謝産物の食用に適したすべての組合せが含まれる。
【0175】
1以上の本発明による式Ia〜mの化合物で強化できる食品は、好ましくは経口で、例えば食事、丸剤、錠剤、カプセル剤、粉末剤、シロップ剤、液剤または懸濁剤の形態で投与する。
【0176】
1以上の式Ia〜mの化合物で強化できる本発明による食品は、当業者によく知られている技術により調製することができる。
【0177】
その作用のため、式Ia〜mの化合物は医薬品構成成分としても適する。式Ia〜mの化合物は、例えば、皮膚の炎症およびアレルギーの予防的治療、ある場合は、ある種の癌を防止するために使用することができる。式Ia〜mの化合物は、特に皮膚の炎症、アレルギーおよび刺激作用の治療用の医薬品の調製のために特に適する。さらに、静脈強壮剤、キュパローズ阻害剤、化学的、物理的または光線性紅斑の阻害剤、過敏性皮膚の治療薬剤、充血除去剤、乾燥剤、やせ薬、しわ取り剤、細胞外マトリックスの成分の合成刺激剤、皮膚弾性を改善するための強化剤、および老化防止剤として作用する医薬品を調製することができる。さらに、この関連で好ましい式Ia〜mの化合物は、抗アレルギー性、抗炎症性および抗刺激性作用を示す。したがって、これらは、炎症またはアレルギー反応の治療用の医薬品の調製に適する。
【0178】
本発明を実施例でさらに詳細に説明する。本発明は、特許請求の範囲のすべてにわたって実施することができ、ここに示す実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0179】
実施例1:2−エトキシカルボニル−7−ヒドロキシクロモンの調製
【0180】
【化8】

【0181】
最初に、ナトリウム(7.6g、330ミリモル)をAr雰囲気下で導入し、エタノール(500ml)を徐々に滴下する。混合物をさらに約1時間撹拌してナトリウムを完全に溶解させ、続いて氷浴で室温まで冷却する。60mlのEtOH中に溶解した2’,4’−ジヒドロキシアセトフェノン(10g、66ミリモル)およびシュウ酸ジエチル(36ml、266ミリモル)(褐色〜橙色の透明溶液)を滴下する。溶液を70℃で2時間撹拌する。透明溶液を氷/水浴で0℃に冷却し、約50mlのHCl(c=32%)でpH13からpH4へ調節する。次いで、エタノールの一部を減圧下で懸濁液から除去する。残留した懸濁液を300mlの氷水に加え、CH2Cl2で抽出し、水相をCH2Cl2で2回、振とうさせて抽出し、有機相を一緒にしてこれを脱イオン水で3回、飽和NaCl溶液で1回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発乾燥させる。収率:29.1gの赤褐色のスラリー状固形物。
【0182】
100mlの酢酸と1mlの濃硫酸を粗生成物に加え、混合物を撹拌しながら2時間還流させ、冷却させ、その過程で沈澱した固形物を吸引ろ過器でろ別し、少量のCH3COOHで洗浄し、続いて中性になるまで脱塩水で洗浄し、真空乾燥器中で40℃、200ミリバールで終夜乾燥する。
【0183】
収率:10.1g=理論量の65.6%の淡いピンク色の粉末固形物。
トルエンとメタノールの混合物からの再結晶化を実施。
【0184】
収率:6.6g=理論量の42.9%のベージュ色の微細結晶(HPLC=100%)。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):1.35(t,3H)、4.37(q,2H)、6.84(s,1H)、6.9(d,1H)、6.96(dd,1H)、7.9(d,1H)、11.0(bs,1OH)。
MS(m/e):234(M+
実施例2:7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロモン−2−カルボン酸の調製
【0185】
【化9】

【0186】
最初に、2−エトキシカルボニル−7−ヒドロキシクロモン(14.5g、62ミリモル)を50℃でエタノール(400ml)中に導入して溶解させ、脱塩水(200ml)中に溶解した炭酸ナトリウム(20g、190ミリモル)を滴下する。混合物を撹拌しながら80℃で3時間還流させる。冷却後、混合物を2N HClで酸性化する。沈澱した白色固形物を吸引してろ別し、中性になるまで洗浄し乾燥する。
【0187】
収率K1:6.5g=理論量の50.9%のほぼ白色の粉末
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):6.8(s,1H)、6.9(d,1H)、6.95(dd,1H)、7.9(d,1H)、11.0(bs,1OH)、14.5(bs,1COOH)
MS(m/e):206(M+
実施例2a:1−エチルヘキシル7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロモン−2−カルボキシレートの調製
1−エチルヘキシルアルコールを用いて、実施例2からの酸をエステル交換してエステルを得る。
1H NMR(300MHz)、CDCl3中δ(ppm):0.79〜0.88(m,6H)、1.18〜1.37(m,8H)、1.65(ddd,1H)、7.02〜7.06(m,1H+2H 芳香族)、8.02(d,1H 芳香族)
実施例3:5,7−ジヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボン酸の調製
ステップ1:
【0188】
【化10】

【0189】
最初に、ピリジン中に溶解した2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンをアルゴン雰囲気下で導入し、少量の4−(ジメチルアミノ)ピリジン(触媒量)を導入する。次いでエチルクロロホルミルホーメートを徐々に滴下する。すべてを添加し終わったら、油浴を用いて装置を80℃に加熱し、この温度で2時間撹拌する。
【0190】
装置を室温まで冷却し、暗褐色の懸濁液を約200mlの氷水に加え、200mlのCH2Cl2を加え、混合物を抽出する。水相を50mlのCH2Cl2でさらに2回、振とうさせて抽出し、黒色の有機相を一緒にし、50mlの脱塩水で2回、2モルのHCl(ピリジンフリー)で3回、飽和NaCl溶液で1回洗浄して透明な黒褐色の有機相が得られ、これをNa2SO4で乾燥する。有機相を、CH2Cl2/EEE(5:1)中にスラリー化させた少量のシリカゲル#7734を有するガラスろ過器(glass frit)に通し、ろ過ケーキを約250mlのCH2Cl2/EEE(5:1)ですすぎ、溶液をロータリーエバポレータで蒸発させる。収率:8.5gの黄色固形物。この固形物をそのまま次のステップで使用する。
ステップ2:
【0191】
【化11】

【0192】
最初に、エタノール中に溶解したステップ1からの2−エトキシカルボニル−7−エトキシオキサリルオキシ−4−オキソ−4H−クロメン−5−イルエチルオキサレートを室温で導入し、脱塩水に溶解したNa2CO3を滴下する。続いて、混合物を70℃に加熱し、この温度でさらに4時間撹拌する。冷却後、100mlの酢酸エチルを反応混合物に加え、これを1N HClで若干酸性化させる。水相を分離して抽出する。有機相を一緒にして脱塩水で3回、飽和NaCl溶液で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過してロータリーエバポレータで蒸発させる。再結晶化によって0.4gの黄色微細結晶を得る(HPLC=98.4%)。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):6.2(d,1H)、6.4(d,1H)、6.8(s,1H)、11.1(bs,1OH)、12.5(bs,1OH)
MS(m/e):222(M+
実施例4:1−エチルヘキシル5,7−ジヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロメン−2−カルボキシレートの調製
1−エチルヘキシルアルコールを用いて、実施例3からの酸をエステル交換してエステルを得る。
実施例5:5,7−ジアセトキシ−3−アセチル−2−メチルクロメン−4−オンの調製
【0193】
【化12】

【0194】
最初に、無水酢酸中に溶解した2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンを導入し、酢酸ナトリウムを加える。懸濁液を撹拌しながら10時間還流させる。続いて反応混合物を約300mlの氷水中に注ぎ、酢酸エチル(EA)で2回抽出し、有機相を一緒にして脱塩水で3回洗浄する。残留する溶液をNa2HCO3溶液でさらに洗浄する。有機相をNa2SO4で乾燥し、ろ過してロータリーエバポレータで蒸発させる。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):7.1(d,1H)、7.4(d,1H)
MS(m/e):318(M+
実施例6:3−アセチル−5,7−ジヒドロキシ−2−メチル−4H−1−ベンゾピラン−4−オンの調製
【0195】
【化13】

【0196】
最初に、50mlのテトラヒドロフラン中に溶解した2.5gの2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンをアルゴン雰囲気下、室温で導入し(黄色溶液)、50℃に昇温した7.5gの炭酸カリウムを加え、混合物をこの温度で1時間撹拌放置した。次いで2mlの塩化アセチルを50℃で徐々に滴下した。その間に懸濁液は淡黄色になった。すべてを滴下し終わったら、混合物を加熱して還流させ、4時間還流下で沸騰させた。その4時間の間で、懸濁液は黄色から橙色に変色した。加熱浴と撹拌の電源を切り、橙色の懸濁液を冷却させた。撹拌しながら脱塩水を加え、次いで混合物を25%HClで注意深く酸性化させた(発泡はほとんどないか、または全くない)。次いで透明な黄味の溶液を分離ロート中に移し、EEEで抽出した。続いて水相をEEEで1回抽出し、有機相を一緒にして脱塩水で2回、飽和NaCl溶液で1回すすぎ、Na2SO4で乾燥し、ろ過してロータリーエバポレータで蒸発させた。
収率:3gの淡橙色の固形物=理論量の95%。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):2.4(s,3H)、2.5(s,3H)、6.25(d,1H)、6.37(d,1H)、12.5(s,1OH)、12.8(s,OH)
MS(m/e):234(M+
実施例7:5,7−ジヒドロキシ−2−エチルペンチルクロメン−4−オンの調製
【0197】
【化14】

【0198】
第1ステップ:
2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(5g、26.3ミリモル)を90mlのトルエンに加え、70mlの脱塩水中に溶解した14gの炭酸カリウムと1gのテトラ−n−ブチルアンモニウム水素サルフェートをその溶液に加える。2−エチルヘキサノイルクロリド(20.5ml、119.7ミリモル)を、強力に撹拌しながら2相の混合物に10分間にわたって滴下する。続いて2相の混合物を撹拌しながら70℃で5時間加熱する。
【0199】
続いて上部の暗赤色の有機相を分離し、水相をジクロロメタンで2回、振とうさせて抽出し、有機相を一緒にして飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過してロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
M(R):19.3g
第2ステップ:
19.3gの第1ステップからの生成物を600mlのTHF中に溶解し、水酸化リチウム(4.4g、183.7ミリモル)を加える。続いて混合物を5.5時間還流させる。赤褐色の反応溶液を約800gの氷+100mlの濃HClに注加し、ジクロロメタンで数回抽出し、一緒にした橙色の有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
M(R):17.2g
第3ステップ:
17.2gの第2ステップからの生成物を200mlの酢酸中に溶解し、2mlの濃硫酸を加える。続いて、混合物を撹拌しながら7時間還流させる。赤褐色の濁った溶液を約500gの氷上に注加し、沈澱した赤褐色の固形物を吸引ろ過器でろ別してジクロロメタンにとり、水性のろ液と一緒にジクロロメタンで数回、振とうさせて抽出し、一緒にした有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
m(R):18.4gの残留物、TLC:1スポット
その残留物を少量のメタノール中に溶解し、脱塩水を加える。その際、ベージュ色の固形物が沈澱し、これを小さな吸引ろ過器でろ別する。
m(K):1.65gのベージュ色固形物
ろ液を再度蒸発させ、100mlのヘプタンを蒸留残留物に加え、その際沈澱した固形物を吸引ろ過器でろ別する。
m(K2):2.27gの淡褐色の固形物
m(K tot.):3.92gは、使用した2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンの量に対して理論収率の52.3%である。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):0.9(m,6H)、1.15〜1.3(m,4H)、1.55〜1.65(m,4H)、2.45(q,1H)、6.17(s,1H)、6.2(d,1H)、6.35(d,1H)、10.75(bs,OH)、12.85(s,OH)。
MS(m/e):276(M+
実施例8:5,7−ジヒドロキシ−3−(2−メトキシアセチル)−2−メトキシメチルクロメン−4−オンの工程
【0200】
【化15】

【0201】
ステップ1:
10gの2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン(52.6ミリモル)をアルゴン雰囲気下で装置に導入し、500mlのジクロロメタン中に溶解し(淡黄色溶液)、50mlのピリジンを加える。次いで30mlのメトキシ塩化アセチル(327.6ミリモル)を徐々に滴下する。その間、温度は23℃から30℃へ上昇する。続いて淡黄色の溶液を還流下で4時間さらに撹拌する。
TLC(CH2Cl2/MeOH:9/1):AMなし、AMの前後に1スポットずつ
溶液を、約500gの氷と約20mlの32%HCl水溶液(pH=3)上に移し、続いてジクロロメタンで数回抽出する。黄色の有機相を飽和NaCl溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
m(R):27.08gの橙色オイル状残留物
残留物をジクロロメタン/メタノール(9/1)中に溶解し、最小限の精製を行うため、10cmシリカゲル層(#7734)を通してろ過し、ろ液をロータリーエバポレータで蒸発させる。
m(R2):25gの黄色オイル状残留物
ステップ2:
R2を100mlのピリジン中に溶解し、50℃に加熱し、次いで8gの水酸化カリウム(142.5ミリモル)を加え、橙色の懸濁液を50℃でさらに1.5時間加熱する。
【0202】
続いて橙色〜褐色の粘性混合物を酢酸溶液でpH=3に調節し、酢酸エチルで数回抽出し、橙色の有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
m(R):19gの橙色オイル状残留物
ステップ3:
Rを100mlの氷酢酸中に溶解し、3.6mlの濃硫酸を加える。続いて混合物を還流下で2時間沸騰させる。
【0203】
冷却された赤味を帯びた懸濁液を約300gの氷上に注加する。その間、赤褐色の濁った溶液が形成される。
【0204】
溶液を酢酸エチルで数回抽出し、赤色の有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ロータリーエバポレータで蒸発させて乾燥する(浴温度:50℃)。
m(R):9.4gの赤褐色のオイル状残留物
残留物には酢酸臭が残っているので、これをジクロロメタンと酢酸エチルの中に溶解し、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和する。その際、黄土色の固形物が形成され、それを吸引してろ別し、真空乾燥器中で45℃で乾燥する。
m(K):1.6gの淡褐色の固形物、2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノンベースで理論量の10.1%。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):3.3(s,3H)、3.32(s,3H)、4.37(s,2H)、4.45(s,2H)、6.24(d,1H)、6.37(d,1H)、12.23(bs,1OH)、12.67(s,1OH)
MS(m/e):294(M+
実施例9:7−イソプロピル−4−オキソ−4H−クロモン−3−カルバルデヒドの調製
【0205】
【化16】

【0206】
7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロモン−3−カルバルデヒド(2g、10.5ミリモル)をN,N−ジメチルホルムアミド(25ml)中にN2雰囲気下で溶解し、炭酸カリウム(1.8g、13ミリモル)およびヨウ化カリウム(50mg)を加え、混合物を室温で1時間撹拌する。次いで2−ブロモプロパン(2ml、21ミリモル)を徐々に滴下し、混合物を55℃で2時間加熱する。さらに2mlの2−ブロモプロパンを加え、混合物を55℃でさらに2.5時間撹拌する。室温で12時間撹拌後、反応混合物を60mlの脱塩水中に導入し、希薄HClで酸性化し、150mlのEAで抽出する。水相をEAでさらに2回抽出する。一緒にした有機相を150mlの脱塩水で2回、飽和NaCl溶液で1回、振とうさせて抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥してろ過し、溶媒をストリッピングする。精製のため、粗生成物を10mlの溶出液(CH2Cl2/MeOH 9.5/0.5)中に溶解し、250gのシリカゲル#109385でろ過する。収率:281mg=理論量の11.52%。(HPLC含量):89.3%)。
1H NMR(300MHz)、DMSO中δ(ppm):1.3(d,6H)、4.9(m,1H)、7.1(dd,1H)、7.3(d,1H)、8.85(s,1H)、10.1(s,1H)。
実施例10:L−アスコルビル6−[5,7−ヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロモン−2−カルボキシレート]の調製
【0207】
【化17】

【0208】
最初に、95〜97%硫酸(10ml)中に溶解した、5,7−ジヒドロキシ−4−オキソ−4H−クロモン−2−カルボン酸(400mg、1.8ミリモル)をアルゴン雰囲気下で導入し、55℃に加温する。各100mgに10分割されたL−(+)−アスコルビン酸を徐々に導入する。その間、温度は最大で75℃に保持する。続いて混合物をその温度で12時間撹拌する。
【0209】
反応混合物を氷浴で冷却し、50mlの氷水中に導入し、EAを加え、混合物をセライト(Celite)でろ過し、水相を分離して少量のEAで再度抽出し、有機相を一緒にして、中性になるまで約20mlの脱塩水で4回洗浄(各回ごとに飽和NaCl溶液で1回洗浄)し、Na2SO4で乾燥し、ろ過してロータリーエバポレータで蒸発させる。
収率:250mg
HPLC−ESI−MSは[M+H]+=365.1を示す。
実施例11:組成物
実施例1〜3による化合物を含む化粧品組成物のための調合物を以下の例で示す。市販の化合物のINCI名称も示す。
【0210】
UV−パール、OMCはINCI名称を有する組成物を表す:水(EUについて:Aqua)、エチルヘキシルメトキシシンナメート、シリカ、PVP、クロルフェネシン、BHT;この組成物はメルクKGaA,ダルムシュタットからユーソレックス(登録商標)UV パール(商標)OMCの名称で市販されている。
【0211】
表で示す他のUV パール製品はそれぞれ、示したUVフィルターでOMCを置き換えた類似組成物である。
【0212】
【表1】

【0213】
【表2】

【0214】
【表3】

【0215】
【表4】

【0216】
【表5】

【0217】
【表6】

【0218】
【表7】

【0219】
【表8】

【0220】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia〜Icの化合物から選択される化合物
【化1】


(式中、
1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、
H、−C(=O)−R7および−C(=O)−OR7
直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、
直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニル基、直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルキル基であって、ヒドロキシル基が鎖の第1級および第2級炭素原子に結合していてよく、またアルキル鎖が酸素で中断されてもよい基、および/または
3〜C10−シクロアルキル基および/またはC3〜C12−シクロアルケニル基であって、その環がそれぞれ−(CH2n−基(n=1〜3)で架橋されていてもよい基
から選択され、
3はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、
4はHまたはOR8を表し、
5およびR6は、同一でも異なっていてもよく、
−Hおよび−OH、
直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、
直鎖または分枝のC3〜C20−アルケニル基、
直鎖または分枝のC1〜C20−ヒドロキシアルキル基であって、前記ヒドロキシル基が鎖の第1級および第2級炭素原子に結合していてよく、さらに前記アルキル鎖が酸素で中断されてもよい基
から選択され、
7はH、直鎖または分枝のC1〜C20−アルキル基、ポリヒドロキシル化合物、例えば好ましくはアスコルビン酸基またはグリコシド基を表し、
8はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、
基R1およびR2の一方はHまたは直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、他方の基は−C(=O)−R7、−C(=O)−OR7または直鎖もしくは分枝のC1〜C20−アルキル基を表し、R7がHである場合、基R3およびR4の少なくとも一方はHではない)。
【請求項2】
式Iaの化合物が式Id〜Imの化合物
【化2】


から選択される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
置換基R1、R2、R4〜R6のうちの少なくとも2つがHとは異なることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1およびR2の一方の置換基が−C(=O)−R7または−C(=O)−OR7を表すことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
3がHを表し、R4がOHを表し、さらに基R5およびR6の少なくとも一方が好ましくはOHを表すことを特徴とする前記請求項の少なくとも一項に記載の化合物。
【請求項6】
5およびR6がHを表すことを特徴とする請求項1から4の少なくとも一項に記載の化合物。
【請求項7】
皮膚または毛髪の一般的状態のケア、保護または改善のための、式IaからImの少なくとも1つの化合物、または請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物を含む組成物の使用。
【請求項8】
ヒトの皮膚またはヒトの毛髪の時間および/または光誘発の老化プロセスに対する予防、特に乾燥した皮膚、しわの形成および/または色素欠陥の予防、および/または紫外線の皮膚に対する悪影響の低減または防止のための、式IaからImの少なくとも1つの化合物、または請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物を含む組成物の使用。
【請求項9】
しわ、小じわ、粗い皮膚または大きな毛穴の皮膚などの皮膚むらに対する予防またはその低減のための、式IaからImの少なくとも1つの化合物、または請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物を含む組成物の使用。
【請求項10】
早期皮膚老化の予防および/または防止、特に、皮膚の光誘発または老化誘発によるしわの予防および/または防止、色素沈着および光線性角化の低減、ならびに正常な皮膚老化または皮膚の光誘発の老化に伴うすべての疾患の予防および/または治療に適する組成物の調製のための請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項11】
分化および細胞増殖に関係する欠陥のある角質化を伴う皮膚病の予防および/または治療、特に、尋常性座瘡、面皰、多形性座瘡、酒さ、結節状座瘡、集簇性座瘡、加齢性座瘡、副作用として現れる座瘡、例えば日光性座瘡、薬物関連座瘡または職業性座瘡の治療、角質化の他の欠陥、特に、魚鱗癬、魚鱗癬様状態、ダリエ病、掌蹠角化症、白板症、白板症様状態、皮膚および粘膜(口腔)湿疹(苔癬)の治療、欠陥のある角質化に付随し、かつ炎症性および/または免疫アレルギー性成分を有する他の皮膚病、特に皮膚、粘膜および指や足指の爪に関係するすべての形態の乾癬、ならびに乾癬性リウマチおよび皮膚アトピー、例えば湿疹もしくは呼吸性アトピーの治療、またガム質の肥大の治療にも適する組成物の調製のための請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項12】
ウイルス由来であってよい真皮もしくは表皮のすべての良性または悪性の増殖物、例えば尋常性疣贅、扁平疣贅、疣贅状表皮発育異常症、口腔乳頭腫症、乳頭腫症およびUV放射線によって引き起こされる可能性がある増殖物、特に基底細胞上皮腫および有棘細胞上皮腫の予防および/または治療に適する組成物の調製のための請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物の使用。
【請求項13】
請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの少なくとも1つの化合物と、少なくとも1つの他のスキンケア成分と、局所施用に適する少なくとも1種の担体とを含む組成物。
【請求項14】
式IaからImの1種以上の化合物を、0.01重量%〜20重量%の量、好ましくは0.1重量%〜10重量%の量で含むことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの他のスキンケア成分が、好ましくはビタミンCおよびその誘導体、DL−α−トコフェロール、トコフェロールE酢酸塩、ニコチン酸、パントテン酸およびビオチンから選択される1種以上の抗酸化剤および/またはビタミンである組成物であって、該組成物が好ましくはレチノール誘導体を含まないことを特徴とする前記請求項の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項16】
好ましくは、3−(4’−メチルベンジリデン)−dl−カンファー、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン、4−イソプロピルジベンゾイルメタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルメトキシシンナメート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルサリシレート、2−エチルヘキシル4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチルヘキシル2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸、ならびにそのカリウム、ナトリウムおよびトリエタノールアミン塩からなる群から選択される1種以上のUVフィルターを含む前記請求項の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの他のスキンケア成分がピリミジンカルボン酸および/またはアリールオキシム、好ましくはエクトインであることを特徴とする前記請求項の少なくとも一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの化合物を、化粧品または皮膚用に、あるいは食品として適する担体と混合することを特徴とする組成物の調製方法。
【請求項19】
請求項1から6の少なくとも一項に記載の基を含む式IaからImの化合物の製造方法であって、該製造は、適切な無水物または適切な塩化アシルを用いて、対応して置換されたo−ヒドロキシアセトフェノンを環化させて実施することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2007−502787(P2007−502787A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523547(P2006−523547)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008043
【国際公開番号】WO2005/019197
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】