説明

クロロゲン酸類含有物の製造方法

【課題】異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物を簡便な方法で得る。
【解決手段】コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)/水(C)の混合物を、(A)との混合後の(B)/(C)の質量比が70/30〜99.5/0.5となるように接触させた後、固形部を回収し、該固形部からクロロゲン酸類を抽出するクロロゲン酸類含有物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー豆から異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、食品中に含まれる種々の成分の生理作用に関心が高まっており、厚生労働省もそのような生理学的機能や生物学的活動に関与する成分を含有する食品に対して特定保健用食品として許可を与えることとしている。これらの食品は、飲料、ヨーグルト、スープ、味噌汁、ハンバーグなどの惣菜、錠菓・錠剤などの形態で商品化されており、一日1〜2回の摂取が奨められている。
【0003】
生理活性機能を有する素材として、様々な素材が提案されているが、抗酸化作用、血圧降下作用、肝機能改善作用等の生理活性機能を有するものとしてポリフェノール類がある(特許文献1、2)。特に血圧降下作用が注目されており、この作用を有するポリフェノールを配合した商品が特定保健用食品として許可されている。中でも、クロロゲン酸類の血圧降下作用は高く、減塩醤油に配合するという技術がある(特許文献3)。
【0004】
クロロゲン酸類を多く含むものとしてコーヒー豆が挙げられるが、コーヒー豆またはコーヒー豆抽出物にはカフェインが含まれ、また、生コーヒー豆由来のエグ味、青臭い匂いなどの異味・異臭、または焙煎コーヒー豆由来の焦げ臭・苦味があるため、それらを多種多様な飲食品、化粧品等への使用が制限されていた。コーヒー豆またはコーヒー豆抽出物からカフェインを除去する方法としては、一般には活性炭を用いる方法(特許文献4)、異味・異臭を除去する方法としては、微生物を接触せしめる方法(特許文献5)等が知られている。また、各種溶媒による抽出処理に関する技術が数多く提案されている(特許文献6〜8)。
【特許文献1】特開平9-84565号公報
【特許文献2】特開2003−128560号公報
【特許文献3】特開2004−194515号公報
【特許文献4】特開昭57−12952号公報
【特許文献5】特開2004−81053号公報
【特許文献6】特開昭53−145963号公報
【特許文献7】特開平2−265433号公報
【特許文献8】特開昭60−259145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コーヒー豆またはコーヒー豆抽出物から異味を除去する従来の方法のうち、微生物を接触せしめる方法は、処理後の殺菌並びに菌体分離工程等の負荷が課題となっている。また、前記先行文献記載の各種溶媒による抽出処理では、異味・異臭が低減されないという課題がある。
よって、本発明の目的は、コーヒー豆を原料とし、クロロゲン酸類を高濃度で含有しつつ、コーヒー豆由来の異味・異臭の低減された、様々な食品に配合可能な異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、コーヒー豆の処理方法について検討した結果、一定の比率の水混和性溶媒と水の混合物で処理した後の固形部を用いれば、クロロゲン酸類含有量が高く、かつ異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)/水(C)の混合物を、(A)との混合後の(B)/(C)の質量比が70/30〜99.5/0.5となるように接触させた後、固形部を回収し、該固形部からクロロゲン酸類を抽出するクロロゲン酸類含有物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、クロロゲン酸類の損失が少なく、異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物を効率良く、簡便な方法で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に用いられるコーヒー豆(A)としては、モカ、コロンビア、ブラジル等のアラビカ種、ジャワロブスタ、AP−1、ベトナムロブスタ等のロブスタ種、またはそれらの雑種等から得られるコーヒー豆が挙げられる。本発明の方法に用いられるコーヒー豆(A)は、粉砕したものも粉砕していないものも使用することができる。
【0010】
また、コーヒー豆(A)としては、クロロゲン酸類の含量ならびに焦げ臭・苦味の少なさという観点から、生コーヒー豆または低焙煎のコーヒー豆であることが好ましい。具体的には、焙煎後のL値(明度)が30以上、更に35以上の焙煎コーヒー豆を用いることが好ましく、特に未焙煎の生コーヒー豆を用いることが好ましい。本発明でいうL値(明度)とは、コーヒー豆の色相から判断した焙煎度の指標であり、例えば、色差計Spectro Color Meter SE2000(日本電色工業(株))を用いて測定することができる。
【0011】
本発明に用いられるコーヒー豆(A)は、クロロゲン酸類を1種以上含有するものである。クロロゲン酸類には、異性体、類縁体が存在し、純粋な異性体、類縁体またはそれらの混合物が含まれる。本発明において、クロロゲン酸類とは、具体的に、3−カフェオイルキナ酸、4−カフェオイルキナ酸、5−カフェオイルキナ酸(クロロゲン酸)、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3−フェルリルキナ酸、4−フェルリルキナ酸、5−フェルリルキナ酸及び3−フェルリル−4−カフェオイルキナ酸等を言う。その他にカフェ酸、フェルラ酸等が含まれていても良い。クロロゲン酸類含有物とは、これらから選択される1種又は2種以上を含有するものをいう。
【0012】
クロロゲン酸類はコーヒー豆中に2質量%(以下、単に「%」で示す)以上、更に4%以上、特に8%以上含有されることが、その後の処理工程等の負荷が低減する点から好ましい。
【0013】
本発明で用いる水混和性有機溶媒(B)とは、水と任意の割合で相溶する有機溶媒を指し、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、アセトニトリル、ならびにこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。これらのうち、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ならびにこれらの2種以上の混合物が抽出率の点から好ましく、特に食品への使用を考慮するとエタノールが好ましい。
【0014】
本発明においては、異味・異臭の除去効果及びクロロゲン酸類の回収率向上の観点から、コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物を混合した後の水混和性有機溶媒(B)/水(C)の質量比を70/30〜99.5/0.5の範囲に調整することが必要であるが、好ましくは80/20〜99/1、より好ましくは90/10〜98/2、更に90/10〜97/3、特に91/9〜96/4、殊更92/8〜95/5の範囲に調整することが好ましい。この場合、(A)中にも(C)が含まれる場合があるため、(B)と(C)の混合物を(A)に接触させるに際し、予め(A)中の(C)の含有量を測定しておき、混合する(B)/(C)の質量比を決定することが好ましい。(A)中に含まれる(C)の量は、通常0.5〜20%、更に1〜15%、特に2〜12%、殊更5〜11%であることが好ましい。
【0015】
コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させる方法は、両者を容器に入れ、振盪により混合、マグネチックスターラーまたは攪拌羽根等により攪拌等することが好ましい。
【0016】
本発明においては、クロロゲン酸類の回収率向上、異味・異臭の除去の観点から、コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させている際の(A)、(B)及び(C)全体中のクロロゲン酸類含量が0.5%以上であることが好ましく、更に0.8%以上、特に1.2%以上の範囲に調整することが好ましい。上記範囲に調整する方法は、コーヒー豆(A)中のクロロゲン酸類、(B)及び(C)の含量をあらかじめ計測しておき、処理時にクロロゲン酸類の量が所定の範囲に入るように(B)と(C)の混合物の使用量を調整することが好ましい。
【0017】
ここで、異味・異臭とは、焙煎コーヒー豆由来の焦げ臭や苦味、ならびに生コーヒー豆由来のエグ味や青臭み等をいう。焙煎コーヒーは特有の焦げ臭や苦味を有しており、その嗜好性は高いものの、焙煎コーヒー豆そのものやその抽出物を他の食品等へ配合する際にはその味と香りが違和感を与えるため、食品の種類によっては好ましくない場合がある。また生コーヒー豆は特有のエグ味や青臭みを有するため、生コーヒー豆そのものやその抽出物をそのまま食品等へ配合したのでは、その独特の味と香りが障害となる。
【0018】
コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させる場合の温度は、処理時間や処理効率及びクロロゲン酸類の回収率の観点から25〜90℃とすることが好ましく、更に45〜70℃とすることが、クロロゲン酸類の回収率向上、異味・異臭の除去効率の点から好ましい。なお、処理時間は処理温度との兼ね合いにより適宜設定することが好ましい。
【0019】
水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物により接触処理されたコーヒー豆は、ろ過等の固液分離手段により液相を除去し、固形部を回収する。必要であれば回収された固形部を液体で洗浄することが好ましい。洗浄する液体は、クロロゲン酸の回収率向上の点から、水混和性有機溶媒(B)、または接触処理に使用した水混和性有機溶媒(B)と水(C)との混合物が好ましい。
【0020】
回収された固形部はそれ自体異味・異臭が低減されており、その固形部から抽出して得られるクロロゲン酸類含有物は、クロロゲン酸類を高濃度で含有し、かつ異味・異臭が低減されている。クロロゲン酸類含有物の製造方法は、水または水と水混和性有機溶媒との混合物等により、カラム抽出、撹拌抽出等の方法により前記固形部から抽出することができる。水混和性有機溶媒と水との混合物を用いる場合には、水混和性有機溶媒/水の質量比が70/30未満であることが好ましい。抽出の際、水または水と水混和性有機溶媒との混合物等にあらかじめアスコルビン酸ナトリウム等の有機酸または有機酸塩類を添加しても良い。抽出方法としては、水または水と水混和性有機溶媒との混合物等に前記回収された固形部を入れ、加熱・撹拌し、抽出液を回収する方法や(バッチ法)、前記回収された固形部を充填したカラムに高温・加圧条件下で水または水と水混和性有機溶媒との混合物等を通液させて抽出する方法(カラム法)等が挙げられる。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法を併用してもよい。その抽出物は、クロロゲン酸濃度を高めるために蒸発濃縮等してペースト状としたり、噴霧乾燥、凍結乾燥等して粉末状としてもよい。
【0021】
本発明の方法によれば、コーヒー豆から異味・異臭を除去すると共に、ある程度カフェインも除去することができる。その程度は、カフェイン/クロロゲン酸質量比を、本発明の方法で処理する前の80〜90%とすることができる。更に脱カフェインする場合には、別途、前記で得られたクロロゲン酸類含有物を、水混和性溶媒(B)/水(C)の混合物の溶液とした状態にて活性炭と接触させることが好ましい。このときクロロゲン酸類含有物溶液中の(B)/(C)の比が5/95以上、70/30未満であることが、カフェイン除去効率の点から好ましい。
【0022】
別途脱カフェインの操作を行う場合、クロロゲン酸類含有物に(B)と(C)を添加する際、クロロゲン酸類の抽出効率を上げるために撹拌状態で滴下するのが好ましい。(B)と(C)の混合物の滴下終了後は、10〜120分程度の熟成時間を設けると更に好ましい。これらの処理は、10〜60℃で行うことができ、特に10〜50℃、更に10〜40℃で行うのが好ましい。
【0023】
別途脱カフェインの操作を行う場合、用いる活性炭としては、一般に工業レベルで使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ZN−50(北越炭素社製)、クラレコールGLC、クラレコールPK−D、クラレコールPW−D(クラレケミカル社製)、白鷲AW50、白鷲A、白鷲M、白鷲C、白鷺WH2C(日本エンバイロケミカルズ社製)などの市販品を用いることができる。活性炭の細孔容積は0.01〜0.8mL/gが好ましく、特に0.1〜0.7mL/gが好ましい。また、比表面積は800〜1300m2/g、特に900〜1200m2/gの範囲のものが好ましい。なお、これらの物性値は窒素吸着法に基づく値である。活性炭の使用量は、クロロゲン酸類含有物の固形部100部に対して5〜50部、特に10〜30部添加するのが、カフェインの除去効率、濾過効率の点から好ましい。
【0024】
別途脱カフェインの操作を行う場合、活性炭で処理すると同時に、又はこれに替えて酸性白土又は活性白土で処理することが、異味・異臭の除去の点から好ましい。酸性白土又は活性白土は、ともに一般的な化学成分として、SiO2、Al23、Fe23、CaO、MgO等を含有するものであるが、SiO2/Al23質量比が3〜12、特に4〜9であるのが好ましい。またFe23を2〜5%、CaOを0〜1.5%、MgOを1〜7%含有する組成のものが好ましい。活性白土は天然に産出する酸性白土(モンモリロナイト系粘土)を硫酸などの鉱酸で処理したものであり、大きい比表面積と吸着能を有する多孔質構造をもった化合物である。酸性白土を更に、酸処理することにより比表面積が変化し、脱色能の改良及び物性が変化することが知られている。
【0025】
酸性白土又は活性白土の比表面積は、酸処理の程度等により異なるが、50〜350m2/gであるのが好ましく、pH(5%サスペンジョン)は2.5〜8、特に3.6〜7のものが好ましい。例えば、酸性白土としては、ミズカエース#600(水澤化学社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
酸性白土又は活性白土は、クロロゲン酸類含有物の固形部100部に対して5〜50部、特に10〜30部添加するのが、カフェイン除去効率、ろ過工程におけるケーク抵抗の点から好ましい。
【0027】
クロロゲン酸類含有物を(B)と(C)の混合物に溶解した溶液と活性炭及び/又は酸性白土又は活性白土との接触処理は、バッチ式、カラムによる連続処理等のいずれの方法で行っても良い。一般には、粉末状の活性炭及び/又は酸性白土又は活性白土を添加、攪拌し、カフェインを選択的に吸着後、ろ過操作によりカフェインを除去した濾液を得る方法、あるいは顆粒状の活性炭等を充填したカラムを用いて連続処理によりカフェインを選択的に吸着する方法が採用される。
【0028】
活性炭及び/又は酸性白土又は活性白土と接触させた後のクロロゲン酸類含有物の溶液から、水混和性有機溶媒(B)及び水(C)が減圧蒸留などの方法を用いて留去される。また、クロロゲン酸類含有物は、液状でも固体状でもいずれでも良いが、凍結乾燥やスプレードライなどの方法によって粉末化しても良い。なお、コーヒー豆を別途脱カフェインの操作をした場合には、その後、本発明の方法により異味・異臭の低減されたクロロゲン酸類含有物とすることが好ましい。
【0029】
本発明の方法により得られたクロロゲン酸類含有物は、該含有物の乾燥固形分あたりクロロゲン酸類を10〜60%、好ましくは15〜45%、更に好ましくは20〜30%と豊富に含むため、各種食品に配合して、血圧降下作用を有する食品、血圧降下作用を有する旨表示された食品、血圧が高めの方に適していますと表示された食品等とするのに最適である。食品としてはゼリー、ケーキなどの菓子類、ジュース、コーヒー、お茶類、スポーツドリンク、スープ等の飲料、味噌、醤油、つゆ、たれ等の調味料等が挙げられるが、吸収効率が良く、血圧降下作用を有効に発揮する点から液状食品が好ましく、更に、同様の点から飲料、調味料等の毎日摂取する食品が好ましい。食品中へのコーヒー豆の配合量は、一食分あたり10〜5000mg、更に50〜2000mgとすることが血圧降下作用を有効に発揮する点から好ましい。
【0030】
また、本発明で得られるクロロゲン酸類含有物は、異味・異臭が低減されて風味が良好なため、各種食品に配合しても食品の品質に影響を与えることがない。そのため、上記食品の中でも味の淡白な飲料や食品の美味しさに微妙な影響を与える調味料等にも好ましく配合することができる。
【実施例】
【0031】
〔クロロゲン酸類含有量及びカフェイン含有量の測定方法〕
クロロゲン酸類含有量及びカフェイン含有量の測定方法は次の通りである。
【0032】
(分析機器)
HPLC(島津製作所(株))を使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通り。ディテクター:SPD−M10A、オーブン:CTO−10AC、ポンプ:LC−10AD、オートサンプラー:SIL−10AD、カラム:Inertsil ODS−2(内径4.6mm×長さ250mm)
【0033】
(分析条件)
サンプル注入量:10μL、流量:1.0mL/min、紫外線吸光光度計検出波長:325nm(クロロゲン酸類)、270nm(カフェイン)、溶離液A:0.05M酢酸3%アセトニトリル溶液、溶離液B:0.05M酢酸100%アセトニトリル溶液
【0034】
(濃度勾配条件)
時間 溶離液A 溶離液B
0分 100% 0%
20分 80% 20%
35分 80% 20%
45分 0% 100%
60分 0% 100%
70分 100% 0%
120分 100% 0%
【0035】
(クロロゲン酸類のリテンションタイム)
3−カフェオイルキナ酸(3−CQA):16.8min、
5−カフェオイルキナ酸(5−CQA):19.8min、
4−カフェオイルキナ酸(4−CQA):21.5min、
3−フェリルキナ酸(3−FQA):22.2min、
5−フェリルキナ酸(5−FQA):26.1min、
4−フェリルキナ酸(4−FQA):27.2min、
3,5−ジカフェイルキナ酸(3,5−diCQA):33.5min、
3,4ジカフェイルキナ酸(3,4−diCQA):33.8min、
4,5−ジカフェイルキナ酸(4,5−diCQA):36.0min
ここで求めたarea%から5−CQAを標準物質とし、質量%を求めた。
(カフェインのリテンションタイム)
19.4min
ここで求めたarea%から試薬カフェインを標準物質とし質量%を求めた。なお、カフェイン除去効果については、カフェイン/クロロゲン酸類の質量比で評価を行った。
【0036】
〔クロロゲン酸類回収率の測定方法〕
生豆に含まれるクロロゲン酸類含量を100%とし、本発明の方法により製造されたコーヒー豆中に回収できたクロロゲン酸類の回収率、及びその後の抽出操作により製造されたコーヒー豆抽出物として回収できたクロロゲン酸類の回収率を評価した。すなわち、最終的に回収したクロロゲン酸類の総量を、生豆に含有されていたクロロゲン酸類の含量で除することにより、クロロゲン酸類の回収率を算出し、以下の基準で評価した。
A:クロロゲン酸類の回収率が 60%以上、100%未満
B:クロロゲン酸類の回収率が 45%以上、60%未満
C:クロロゲン酸類の回収率が 30%以上、45%未満
D:クロロゲン酸類の回収率が 15%以上、30%未満
E:クロロゲン酸類の回収率が 0%以上、15%未満
【0037】
〔焙煎コーヒー豆のL値の測定方法〕
焙煎したコーヒー豆10gをハイカットコーヒーミル((株)カリタ)を用い、ダイヤル1にて粉砕し、色差計Spectro Color Meter SE2000(日本電色工業(株))にて測定を行った。なお、1サンプルについて3回測定を行い、その平均値をL値とした。
【0038】
実施例1
粉砕した生コーヒー豆(ベトナム産ロブスタ種G−1生豆、クロロゲン酸類含量9%)175g、及びエタノールと水の混合溶媒(表1に示したエタノール/水質量比)525gを混合し、60℃にて3時間振盪することにより接触させ、ヌッチェろ過(2号ろ紙使用)にて液部を除去後、そのままヌッチェを吸引しながら99.5%エタノール350gにて固形部をケーキ洗浄した。更に、固形部を525gの水と共に98℃、2時間、水中で撹拌することにより抽出を行い、再度ヌッチェ濾過(2号ろ紙使用)することにより可溶性画分を回収した。回収画分はエバポレーターで乾燥固形分55%程度まで濃縮し、本発明の方法によるクロロゲン酸類含有物I−(1)、(2)を得た。なお、乾燥固形分の含量は、回収画分を120℃、3時間乾熱乾燥した際に残存した質量%をいうが、本発明においては予め固形分含量とBrix値との相関を求め、操作中はBrix計にて測定した。
【0039】
比較例1
実施例1で使用した粉砕した生コーヒー豆500gを、5Lの98℃の熱水で4時間攪拌・抽出した。冷却後、固液分離を行い、抽出液を固形分濃度が20%になるまで40℃にて減圧濃縮を行った後、噴霧乾燥することでクロロゲン酸類含有物IIを調製した。クロロゲン酸類の含量は38.1%であった。
【0040】
〔官能評価〕
実施例1により得られたクロロゲン酸類含有物について、それぞれクロロゲン酸類濃度1600mg/Lの水溶液を調製し、口に含んだ時の香味の強さを官能にて評価した。なお、本発明の方法により製造されたクロロゲン酸類含有物の評価は、それぞれのサンプルについて本発明の方法を採らないクロロゲン酸類含有物(比較例1)をコントロールとし、下記評価基準に基づいて行った。
【0041】
〔生コーヒー豆由来のエグ味・青臭みの評価基準〕
A:無味・無臭
B:エグ味・青臭みが低減されている
C:エグ味・青臭みはコントロールと同等である
【0042】
【表1】

【0043】
表1の結果から明らかなように、本発明の方法を使用することにより、異味・異臭が低減されたクロロゲン酸類含有物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)/水(C)の混合物を、(A)との混合後の(B)/(C)の質量比が70/30〜99.5/0.5となるように接触させた後、固形部を回収し、該固形部からクロロゲン酸類を抽出するクロロゲン酸類含有物の製造方法。
【請求項2】
コーヒー豆が、生コーヒー豆またはL値30以上の焙煎コーヒー豆である請求項1記載のクロロゲン酸類含有物の製造方法。
【請求項3】
コーヒー豆(A)に対し、水混和性有機溶媒(B)と水(C)の混合物を接触させている際の(A)、(B)及び(C)の全体中に含まれるクロロゲン酸類の含量が0.5質量%以上である請求項1又は2に記載のクロロゲン酸類含有物の製造方法。
【請求項4】
水混和性溶媒(B)がアルコール類である請求項1〜3のいずれか1項に記載のクロロゲン酸類含有物の製造方法。

【公開番号】特開2007−277154(P2007−277154A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105502(P2006−105502)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】