クロロシラン類中の臭素元素の定量方法およびテトラクロロシランの製造方法

【課題】クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を高精度でかつ迅速に定量できる方法;および、テトラクロロシランの製造方法。
【解決手段】30〜500mLの容器を4個(11,12,13,14)備えた加水分解装置(10)を用いて、(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程と、(b)水溶液をアルカリ性化合物で中和した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭化物イオン濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程、または(b’)誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)を用いて水溶液中の臭素元素濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程とを有する方法によって、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する方法およびテトラクロロシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池等に用いられる高純度シリコンの原料としては、テトラクロロシラン等のクロロシラン類が用いられている。高純度シリコンの原料として用いられるクロロシラン類には高い純度が要求されるため、通常は、蒸留等の精製による高純度化が図られている。
【0003】
しかし、クロロシラン類の原料である工業グレードの塩素ガスや塩化水素中には、塩素ガスや塩化水素の原料となる海水中に含まれていた臭素化合物に由来する臭素元素が、臭素ガス、塩化臭素等の状態で50〜400質量ppm含まれているため、臭素元素を有する不純物が粗クロロシラン類中に混入してくる。そして、臭素元素を有する不純物の中には、蒸留等で除去しにくいものが含まれている(特許文献1参照)。
【0004】
臭素元素を有する不純物が、最終的に得られる高純度シリコンに微量でも含まれると、太陽電池の電気的特性に大きく影響する。そのため、高純度シリコンの原料として用いられるクロロシラン類の製造においては、クロロシラン類に含まれる、臭素元素を有する不純物の量を精度よく測定し、該不純物の量がスペックを満足するように工程管理を行う必要がある。
【0005】
クロロシラン類に含まれる、臭素元素を有する不純物の量の測定方法としては、ガスクロマトグラフを用いる方法が知られている(特許文献1の実施例)。しかし、該方法では、測定の下限値が0.01質量%(100質量ppm)であり、下限値よりも少ない量の不純物は検出されないため、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素の全量を測定できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−30712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を高精度でかつ迅速に定量できる方法;および、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量がスペックを満足するように工程管理できるテトラクロロシランの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法は、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する方法であって、下記工程(a)および下記工程(b)を有することを特徴とする。
(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程。
(b)前記水溶液をアルカリ性化合物で中和した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭化物イオン濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【0009】
また、本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法は、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する方法であって、下記工程(a)および下記工程(b’)を有することを特徴とする。
(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程。
(b’)誘導結合プラズマ質量分析装置(以下、ICP−MSと記す。)を用いて前記水溶液中の臭素元素濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【0010】
本発明のテトラクロロシランの製造方法は、下記工程(I)〜(III)を有することを特徴とする。
(I)ケイ素と塩素ガスとを反応させて、粗テトラクロロシランを得る工程。
(II)蒸留によって粗テトラクロロシランを精製して、精製テトラクロロシランを得る工程。
(III)精製テトラクロロシランの一部をサンプリングし、本発明のクロロシラン類中の臭素元素の定量方法によって、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法によれば、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を高精度でかつ迅速に定量できる。
本発明のテトラクロロシランの製造方法によれば、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量がスペックを満足するように工程管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例で用いた粗テトラクロロシランの加水分解装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<クロロシラン類中の臭素元素の定量方法>
本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法は、工程(a)および工程(b)を有する方法、または工程(a)および工程(b’)を有する方法である。
(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程。
(b)前記水溶液をアルカリ性化合物で中和した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭素イオン濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
(b’)ICP−MSを用いて前記水溶液中の臭素元素濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【0014】
(クロロシラン類)
クロロシラン類は、下式(1)で表わされる無機クロロシラン類である。
SiCl2n+2−x ・・・(1)。
ただし、nは1〜3の整数であり、xは0以上(2n+2)未満の整数である。
【0015】
クロロシラン類としては、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシラン等が挙げられ、高純度シリコンの原料として有用である点から、テトラクロロシランが好適である。
【0016】
クロロシラン類の製造方法としては、ケイ素(金属シリコン)と、塩素ガス(分子状塩素)または塩化水素とを反応させて粗クロロシラン類を得る方法、または該粗クロロシラン類を精製して精製クロロシラン類を得る方法が挙げられる。
【0017】
(臭素元素を有する不純物)
クロロシラン類に含まれる、臭素元素を有する不純物
としては、下式(2)で表わされる無機ブロモクロロシラン類が挙げられる。
SiBrCl2n+2−x−y ・・・(2)。
ただし、nは1〜3の整数であり、xは0以上(2n+1)未満の整数であり、yは1以上(2n+2)未満の整数であり、x+yは1以上(2n+2)未満の整数である。
【0018】
(工程(a))
クロロシラン類と水とを反応させて、クロロシラン類が加水分解した反応生成物を含む水溶液を得る。
クロロシラン類を加水分解することで、クロロシラン類に不純物として含まれるブロモクロロシラン類も加水分解する。加水分解により、ブロモクロロシラン類に含まれる臭素元素を、臭化物イオン(Br)に100%転換させる。
【0019】
テトラクロロシランの加水分解反応は、下式で表される。
SiCl+2HO→SiO+4HCl
SiCl+4HO→Si(OH)+4HCl
【0020】
ブロモクロロシラン類がSiHBrClの場合の加水分解反応は、下式で表される。
SiHBrCl+2HO→HSi(OH)+HBr+2HCl
HSi(OH)は、縮合反応によりゲル化して、HSi(OH)−O−SiH(OH)等となることもある。
【0021】
水の量は、クロロシラン類に対して1.8〜20倍(質量基準)が好ましく、2〜10倍(質量基準)がより好ましい。クロロシラン類を効率よく加水分解させるため、クロロシラン類と水との接触回数は、適宜選択することができ、1回で行ってもよく、2回以上で行ってもよい。
水としては、超純水製造装置を用いて得られた超純水が好ましい。水の比抵抗は、15.0MΩcm以上が好ましく、18.0MΩcm以上がより好ましく、18.2MΩcm以上が特に好ましい。
反応容器としては、あらかじめ希硝酸で洗浄したフッ素樹脂製の容器が好ましい。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。
反応温度は、1〜60℃が好ましく、5〜30℃がより好ましい。
【0022】
(工程(b))
工程(a)で得られた反応生成物を含む水溶液をアルカリ性化合物で中和した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭化物イオン濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する。
【0023】
イオンクロマトグラフには、水溶液中の臭化物イオンを分離するため、陰イオン分離カラムを用いる。陰イオン分離カラムには酸性水溶液を入れることが好ましくないため、アルカリ性化合物で中和する必要がある。中和後の水溶液のpHは、5〜9が好ましい。
アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。アルカリ性化合物は、水溶液の状態で用いることが好ましい。
【0024】
イオンクロマトグラフは、送液ポンプ、陰イオン分離カラム、検出器を直列に接続したものである。必要に応じて、陰イオン分離カラムと検出器との間にサプレッサを接続してもよい。
【0025】
陰イオン分離カラムとしては、多量の塩化物イオンから微量の臭化物イオンを分離する点から、高交換容量カラムが好ましい。高交換容量カラムとしては、Dionex社製のAS9HC、AS10、AS11HC、AS15、AS18、AS19、AS20等が挙げられる。
溶離液としては、水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0026】
検出器としては、汎用的な電導度検出器で充分であるが、ポストカラム吸光度検出器を用いてもよい。
検出器で検出する塩化物イオンのピークと臭化物イオンのピークは、適宜、グラジェント条件を変更することで、分離させることができる。
【0027】
標準液の臭化物イオンのピークとの比較から、工程(a)で得られた反応生成物を含む水溶液中の臭化物イオン濃度を求める。
ついで、水溶液中の臭化物イオン濃度(質量ppm)と、工程(a)で水と反応させたクロロシラン類(試料)の質量とから、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素の量(mol/試料1g)を算出する。
【0028】
イオンクロマトグラフによる水溶液中の臭化物イオン濃度の測定の下限値は数10ppbレベルであり、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素の定量の下限値は40質量ppb(5×10−10mol/試料1g)程度となる。
【0029】
(工程(b’))
ICP−MSを用いて、工程(a)で得られた反応生成物を含む水溶液中の臭素元素濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する。
【0030】
工程(a)で得られた反応生成物を含む水溶液は、生成したSiO微粒子を含むため、あらかじめ微粒子除去の前処理が必要である。前処理の方法としては、SiO微粒子を沈降分離または遠心分離した後の上澄み液を、0.5μmフィルタで吸引ろ過または加圧ろ過する方法が挙げられる。
【0031】
ICP−MSは、エアロゾル化した水溶液をプラズマ(ICP)内で分解し、測定対象元素(臭素元素等)をイオン化し、発生したイオン(Br等)を質量分析部(MS)にて質量電荷比に基づいて分離し、質量スペクトルを得るものである。
【0032】
得られた質量スペクトルを分析することによって、工程(a)で得られた反応生成物を含む水溶液中の臭素元素濃度を求める。
ついで、水溶液中の臭素元素濃度(質量ppm)と、工程(a)で水と反応させたクロロシラン類(試料)の質量とから、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素の量(mol/試料1g)を算出する。
【0033】
ICP−MSによる水溶液中の臭化物イオン濃度の測定の下限値はppbレベルであり、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素の定量の下限値は20質量ppb(3×10−10mol/試料1g)程度となる。
【0034】
(作用効果)
以上説明した本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法にあっては、不純物を含むクロロシラン類を加水分解して水溶液化し、不純物に由来する臭素元素が臭化物イオンとして水溶液に溶解した状態としている。このため、イオンクロマトグラフまたはICP−MSを用いて臭化物イオンまたは臭素元素濃度をppbレベルで高精度に測定できる。その結果、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素の量を高精度でかつ迅速に定量できる。
【0035】
<テトラクロロシランの製造方法>
本発明のテトラクロロシランの製造方法は、下記工程(I)〜(IV)を有する方法である。
(I)ケイ素と塩素ガスとを反応させて、粗テトラクロロシランを得る工程。
(II)蒸留によって粗テトラクロロシランを精製して、精製テトラクロロシランを得る工程。
(III)精製テトラクロロシランの一部をサンプリングし、本発明のクロロシラン類中の臭素元素の定量方法によって、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
(IV)必要に応じて、工程(III)で定量された、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量が、規定値(スペック)を超えた場合、再度、蒸留によって精製テトラクロロシランを精製する工程。
【0036】
(工程(I))
粗テトラクロロシランは、ケイ素(金属シリコン)と塩素ガス(分子状塩素)または塩化水素とを反応させて得られる。
たとえば、粉末状のケイ素を充填した流動床反応器に塩素ガスを導入し、粉末状のケイ素に塩素ガスを接触させる。
Si+2Cl→SiCl
ケイ素としては、二酸化ケイ素を還元して得られる工業用シリコン(純度:90〜99.9質量%程度)が挙げられる。
塩素ガスとしては、海水を電気分解して得られる工業グレードの塩素ガス(純度:98〜99.999質量%程度)が挙げられる。
反応温度は、350〜600℃が好ましい。
【0037】
(工程(II))
蒸留によって粗テトラクロロシランを精製して、精製テトラクロロシランを得る。
蒸留に用いる蒸留塔としては、段数が数十段の蒸留塔が好ましく、理論段数が10〜50段の蒸留塔がより好ましい。蒸留塔の材質は、金属製でもよく、ガラス製、石英製でもよい。
【0038】
粗テトラクロロシランに含まれる主な不純物は、トリクロロシラン(HSiCl)である。HSiClの沸点は32℃であり、テトラクロロシラン(SiCl)の沸点:57℃よりもはるかに低いため、HSiClは蒸留によって充分に分離除去できる。
一方、粗テトラクロロシランに含まれる、臭素元素を有する不純物としては、HSiBrClが知られている。HSiBrClの沸点(58〜60℃)は、SiClの沸点に近いため、HSiBrClは、得られる精製テトラクロロシランにも微量ながら含まれる。
【0039】
(工程(III))
工程(II)で得られた精製テトラクロロシランは、貯留タンク等に一旦貯留される。
貯留された精製テトラクロロシランの一部をサンプリングし、本発明のクロロシラン類中の臭素元素の定量方法によって、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する。
【0040】
(工程(IV))
工程(III)で定量された、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量が、規定値を超えた場合、貯留タンク等に貯留された精製テトラクロロシランを高純度シリコン等の原料として用いることが難しいため、再度、蒸留によって精製テトラクロロシランを精製する。
【0041】
蒸留は、工程(II)で用いた蒸留塔を用い、工程(II)と同様に行えばよい。
精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量の規定値は、1ppm以下とすることが好ましい。
【0042】
(用途)
精製テトラクロロシランは、太陽電池用高純度シリコン、半導体用高純度シリコン、合成石英等の原料として用いられる。
【0043】
太陽電池用高純度シリコンは、たとえば、亜鉛還元法(特開平11−92130号公報等)によって製造される。
SiCl+2Zn→Si+2ZnCl
また、太陽電池用高純度シリコンは、冶金法でも製造できる。
【0044】
半導体用高純度シリコンは、たとえば、シーメンス法によって製造される。
Si+3SiCl+2H→4SiHCl
SiHCl+H→Si+3HCl
【0045】
合成石英は、たとえば、火炎加水分解法(特開昭48−86918号公報等)によって製造される。
SiCl+O→SiO+2Cl
【0046】
(作用効果)
以上説明した本発明のテトラクロロシランの製造方法にあっては、クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素の量を高精度に定量できる本発明のクロロシラン類中の臭素元素の定量方法によって、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素を定量しているため、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量がスペックを満足するように工程管理できる。
【実施例】
【0047】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
例1、2、4、5は実施例であり、例3は比較例である。
【0048】
(イオンクロマトグラフ)
イオンクロマトグラフ:Dionex社製、DX−500、
カラム:AG11HC+AS11HC、
溶離液ジェネレーター:EG40、
グラジェント条件:メーカー推奨条件に準じる。たとえば、KOH:1mmol/L(1〜8min)→1〜30mmol/L(8〜28min)→30〜60mmol/L(28〜38min)→1mmol/L(38〜45min)。
サプレッサ:ASRS、
検出器:電導度検出器、
標準液:関東化学社製、イオンクロマトグラフ用標準液Br−1000質量ppmを適宜希釈して使用、
超純水:ミリポア社製超純水製造装置(極微量元素分析タイプ)を用いて得られた比抵抗18.2MΩcm以上の超純水。
【0049】
(ICP−MS)
ICP−MS:サーモサイエンティフィック社製、ElementII、
定量法:試料液を導入して検量線法により定量、
標準液:関東化学社製イオンクロマトグラフ用標準液Br−1000質量ppmを適宜希釈して使用、
超純水:ミリポア社製超純水製造装置(極微量元素分析タイプ)。
【0050】
(ガスクロマトグラフ)
ガスクロマトグラフ:GLサイエンス社製、GC390B、
検出器:TCD、
カラム:Silicone DC―550、25% Celite 545AW 60〜80メッシュ。
カラム長さ:3m、
キャリアガス:ヘリウム。
【0051】
〔例1〕
(粗テトラクロロシランの製造)
ケイ素(添川理化学社製、純度:98質量%)と、塩素ガス(海水を電気分解して得られたもの、純度:99.4質量%以上)とを450℃で反応させて、粗テトラクロロシランを得た。
【0052】
(粗テトラクロロシランの加水分解)
図1に示す、30〜500mLの容器を4個備えた加水分解装置10を用いて、下記のようにして粗テトラクロロシランと超純水とを反応させ、反応生成物を含む水溶液を得た。
50mLの第1容器11内の粗テトラクロロシラン(15g)に窒素ガスを吹き込み、粗テトラクロロシランを気化させた。
気化された粗テトラクロロシランを窒素ガスとともに500mLの第2容器12内に吹き込み、第2容器12内の超純水(50g)と反応させた。
第2容器12内で反応しなかった粗テトラクロロシランを窒素ガスとともに500mLの第3容器13内に吹き込み、第3容器13内の超純水(50g)と反応させた。
第3容器13内で反応しなかった粗テトラクロロシランを窒素ガスとともに500mLの第4容器14内に吹き込み、第4容器14内の超純水(50g)と反応させた。
第4容器14からは窒素ガスが排出された。
粗テトラクロロシランと超純水とを反応させる間は、第2容器12、第3容器13および第4容器14を、チラーにて5℃に制御された水浴15にて冷却した。
【0053】
超純水としては、ミリポア社製超純水製造装置を用いて製造されたものを用いた。
容器としては、あらかじめ希硝酸で洗浄したフッ素樹脂(PFA)製のものを用いた。
窒素ガスとしては、フィルタ(富士フィルム社製、孔径:0.01μm、微粒子補足率:99.999999%)を介したものを用いた。
窒素ガスの吹き込み量は、70mL/分とした。
得られた水溶液は165gであり、粗テトラクロロシランの回収率は99.99%であった。
【0054】
反応生成物を含む水溶液の上澄み液の10mLを、水酸化ナトリウム/アンモニア水溶液(水酸化ナトリウム:5mol/L、アンモニア:5mol/L)の5mLで中和して、0.5μmフィルタ(ミリポア社製、親水性PTFE製フィルタ)でろ過した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭化物イオン濃度を測定したところ、21.7質量ppmであった。
水溶液中の臭化物イオン濃度と、加水分解させた粗テトラクロロシラン(試料)の質量とから、粗テトラクロロシランに含まれていた不純物に由来する臭素元素の量を算出したところ、4.2×10−6mol/試料1gであった。
【0055】
〔例2〕
例1と同様にして粗テトラクロロシランを得た後、例1と同様にして粗テトラクロロシランの加水分解を行い、反応生成物を含む水溶液を得た。得られた水溶液は165gであり、粗テトラクロロシランの回収率は99.99%であった。
【0056】
反応生成物を含む水溶液の上澄み液を0.5μmフィルタでろ過し、測定用水溶液を得た。ICP−MSを用いて測定用水溶液中の臭素元素濃度を測定したところ、31.7質量ppmであった。
水溶液中の臭素元素濃度と、加水分解させた粗テトラクロロシラン(試料)の質量とから、粗テトラクロロシランに含まれていた不純物に由来する臭素元素の量を算出したところ、4.2×10−6mol/試料1gであった。
【0057】
〔例3〕
例1と同様にして粗テトラクロロシランを得た。
ガスクロマトグラフを用いて粗テトラクロロシランを分析したところ、臭素化合物のピークは現れなかった。
【0058】
〔例4〕
テトラクロロシラン(トリケミカル研究所社製、純度:99.9999質量%以上)に、試薬のテトラブロモシラン(SiBr)を添加し、50モルppmのSiBrを不純物として含む粗テトラクロロシランを調製した。該粗テトラクロロシランを用いた以外は、例1と同様にして粗テトラクロロシランの加水分解を行い、反応生成物を含む水溶液を得た。
【0059】
例1と同様にして水溶液中の臭化物イオン濃度を測定したところ、6.1質量ppmであった。
水溶液中の臭化物イオン濃度と、加水分解させた粗テトラクロロシラン(試料)の質量とから、粗テトラクロロシランに含まれていたSiBrに由来する臭素元素の量を算出したところ、1.2×10−6mol/試料1g(SiBrのモル数に換算すると50モルppm)であった。
【0060】
〔例5〕
例1と同様にして粗テトラクロロシランを得た後、30段の蒸留塔にて蒸留を行い、留出部より精製テトラクロロシランを得た。例1と同様にして精製テトラクロロシランの加水分解を行い、反応生成物を含む水溶液を得た。得られた水溶液は165gであり、精製テトラクロロシランの回収率は99.99%であった。
【0061】
反応生成物を含む水溶液の上澄み液を0.5μmフィルタでろ過し、測定用水溶液を得た。ICP−MSを用いて測定用水溶液中の臭素元素濃度を測定したところ、0.15質量ppmであった。
水溶液中の臭素元素濃度と、加水分解させた精製テトラクロロシラン(試料)の質量とから、精製テトラクロロシランに含まれていた不純物に由来する臭素元素の量を算出したところ、2×10−8mol/試料1gであった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法によれば、太陽電池等に用いられる高純度シリコンの原料であるテトラクロロシランの製造において、テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素の量がスペックを満足するように工程管理できる。
【符号の説明】
【0063】
10 加水分解装置
11 第1容器
12 第2容器
13 第3容器
14 第4容器
15 水浴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する方法であって、
下記工程(a)および下記工程(b)を有する、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法。
(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程。
(b)前記水溶液をアルカリ性化合物で中和した後、イオンクロマトグラフを用いて水溶液中の臭化物イオン濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【請求項2】
クロロシラン類に含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する方法であって、
下記工程(a)および下記工程(b’)を有する、クロロシラン類中の臭素元素の定量方法。
(a)クロロシラン類と水とを反応させて、反応生成物を含む水溶液を得る工程。
(b’)誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて前記水溶液中の臭素元素濃度を測定し、クロロシラン類に含まれていた不純物に由来する臭素元素を定量する工程。
【請求項3】
下記工程(I)〜(III)を有する、テトラクロロシランの製造方法。
(I)ケイ素と塩素ガスとを反応させて、粗テトラクロロシランを得る工程。
(II)蒸留によって粗テトラクロロシランを精製して、精製テトラクロロシランを得る工程。
(III)精製テトラクロロシランの一部をサンプリングし、請求項1または2に記載のクロロシラン類中の臭素元素の定量方法によって、精製テトラクロロシランに含まれる不純物に由来する臭素元素を定量する工程。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−220837(P2011−220837A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90445(P2010−90445)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】