説明

クロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法

【課題】 明色性を低下させることなく、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】 1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いて、ポリオレフィンをラジカル発生剤存在下、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルを用いて塩素化及びクロロスルホン化させ、反応時に副生した塩化水素及び/又は亜硫酸ガスを反応系外に除去する工程の際、初期の温度が95〜115℃で、かつ、工程終了時の温度が50〜100℃であることを特徴とするクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホン化ポリオレフィンは、ポリオレフィンを溶媒に溶解又は懸濁させ、塩素化及びクロロスルホン化することによって製造され、機械的強度、耐摩耗性、耐熱性、耐油性、耐候性、耐オゾン性、難燃性等に優れることから、ゴムホース、電線の被覆、ゴムロール、エスカレーターの手摺り、搬送用ベルト等幅広い用途に使用されている。近年では、それらの用途に求められる物性がさらに厳しくなっており、各性能の向上が大きな課題となっている。一方、クロロスルホン化ポリオレフィンを製造する際に使用する溶剤は、四塩化炭素が主流であったが、1990年6月に行なわれた「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の改定で、四塩化炭素が規制対象物質とされ、さらに発がん性も懸念されるため、四塩化炭素を商業生産用に使用するのは困難となった。そのため、様々な溶剤においてクロロスルホン化ポリオレフィンの製造検討がなされてきた。
【0003】
以前我々は、明色性、低温特性を向上させるため、溶剤として1,1,2−トリクロロエタンを用い、塩素化及びクロロスルホン化反応後のクロロスルホン化ポリオレフィン溶液から、塩化水素及び/または亜硫酸ガスを反応系外に除去する工程において、工程中の温度を90℃以下に制御することを特徴とするクロロスルホン化ポリオレフィンの製造法(特許文献1)を提出した。
【0004】
上記記載の方法で製造されたクロロスルホン化ポリオレフィンは明色性と低温特性に優れるが、除去する工程中の温度を90℃以下に制御すると、塩素化及びクロロスルホン化反応後のクロロスルホン化ポリオレフィン溶液から、塩化水素及び/または亜硫酸ガスを反応系外に除去する工程に時間がかかり生産性の低下を招いてしまう。また、貯蔵安定性、耐熱老化性の改善は図れなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−157647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した内容を鑑みてなされたものであり、その目的は、明色性を低下させることなく、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いて、ポリオレフィンをラジカル発生剤存在下、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルを用いて塩素化及びクロロスルホン化させ、反応時に副生した塩化水素及び/又は亜硫酸ガスを反応系外に除去する工程の際、初期の温度が95〜115℃で、かつ、工程終了時の温度が50〜100℃であることを特徴とするクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法である。
【0008】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の製造方法で使用する溶剤は1,1,2−トリクロロエタンである。
【0010】
塩素化及びクロロスルホン化を行なう反応は、ラジカル発生剤を触媒として、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルを、溶剤に溶解又は懸濁したポリオレフィンと反応させる。塩化スルフリルを添加する場合には必要に応じて助触媒としてのピリジン、キノリン等のアミノ化合物が添加される。
【0011】
反応温度は塩素化反応及びクロロスルホン化反応が進行するものであれば特に限定するものではなく、例えば、40〜150℃が好ましく、適度な塩素化反応が進行するために60〜130℃がさらに好ましい。
【0012】
反応圧力は塩素化反応及びクロロスルホン化反応が進行すれば特に限定するものではなく、例えば、0〜1.0メガパスカルが好ましく、適度な塩素化及びクロロスルホン化反応が進行するために0〜0.7メガパスカルがさらに好ましい。
【0013】
本発明の製造方法で使用するラジカル発生剤は塩素化反応が進行するものであれば特に限定するものではなく、例えば、アゾ系化合物、有機化酸化物等が挙げられる。アゾ系化合物としては、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、有機化酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化t−ブチル、過安息香酸t−ブチル等が挙げられる。これらのうち、取り扱い上安定性が高いため、好ましくはアゾ化合物であり、適度な塩素化及びクロロスルホン化反応が進行するため、さらに好ましくはα,α’−アゾビスイソブチロニトリルである。
【0014】
原料であるポリオレフィンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)等のエチレンホモポリマー、コポリマー等が挙げられる。
【0015】
塩素化及びクロロスルホン化反応の終了後、反応溶液中に残存する塩化水素及び/又は亜硫酸ガスは窒素を導入することによって除去される。また、減圧下において塩素化水素及び/又は亜硫酸ガスの除去を行なっても何等問題ない。その除去工程の際、初期の温度が95〜115℃であることが必須であり、かつ、塩化水素及び/又は亜硫酸ガスの除去工程中に反応系の温度を下げていき、工程終了時の温度が50〜100℃であることが必須である。
【0016】
これらの温度制御の理由は、初期の温度を95℃未満にすると、貯蔵安定性、耐熱老化性、生産性が劣ってしまい、115℃を超えると得られるクロロスルホン化ポリオレフィンの白色度が悪化してしまう。また、工程終了時の温度が50℃未満になると生産性、作業性が著しく低下してしまい、100℃を超えると得られるクロロスルホン化ポリオレフィンの白色度が悪化してしまうからであり、これらの温度制御により、白色度を低下させることなく、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンの製造が可能となる。
【0017】
初期の温度は、95〜105℃であることが好ましく、さらに、工程終了時の温度は、70〜90℃であることが、白色度と生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性の両方に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンの製造が可能となるので好ましい。また、初期温度と終了温度の温度差は特に限定するものではないが、温度制御の安定性や生産性の向上のため、40℃以下となることが好ましく、20℃以下がさらに好ましい。
【0018】
除去工程の初期温度及び工程終了時の温度が上記温度範囲内であれば、工程中に反応系中の温度を下げる方法にはよらず、どのような方法であっても問題ない。例えば、初期温度から終了時の温度まで直線的に下げる方法、反応初期の低下速度を早くして末期を緩やかに低下させる方法、反応初期の低下速度を緩やかにして末期を早く低下させる方法、適当な温度で定値を取りながら段階的に温度を下げていく方法等がある。
【0019】
除去工程で得られた溶液から溶剤を取り除いて、生成物(クロロスルホン化ポリオレフィン)を分離する方法には、水蒸気蒸留、ドラムドライヤー、ベント付き押出機が知られており、これらの方法により両者を分離させる。溶剤の分離を短時間に行い、さらに焼けゴムの発生を防止するため、分離の際の温度は100〜190℃であることが好ましく、さらに好ましくは150〜180℃である。
【0020】
本発明の製造方法により得られるクロロスルホン化ポリオレフィンには、例えば先に述べたような原料ポリオレフィンの種類に従い、クロロスルホン化ポリエチレン、クロロスルホン化エチレン・プロピレン共重合体、クロロスルホン化エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0021】
本発明によって得られた生成物(クロロスルホン化ポリオレフィン)は従来のゴム又は樹脂と同様に配合と混練を行い、加硫物又は未加硫物で使用される。
【0022】
最終用途には既存のクロロスルホン化ポリオレフィンと同様に、自動車用ホース、ガスホース、産業用ホース、エスカレーター手摺、電線、レジャーボート、ルーフィング、ポンドライナー、ロール、ベルト、ブーツ、パッキン、シート、引き布、接着剤、塗料、シーラント等が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法により、白色度を低下させることなく、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れたクロロスルホン化ポリオレフィンが製造可能となる。
【実施例】
【0024】
次に実施例にもとづき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例より何等の制限を受けるものではない。
【0025】
なお、これらの実施例で用いた値は以下の測定方法に準拠して得られたものである。
【0026】
クロロスルホン化ポリオレフィンの塩素量及び硫黄量は、燃焼フラスコ法にて測定した。
【0027】
生成したクロロスルホン化ポリオレフィンの白色度は目視により確認し、白いを「○」、やや黄変するを「△」、褐色を「×」とした。
【0028】
このクロロスルホン化ポリオレフィンのムーニー粘度測定はJIS K6300(2008年度版)に準拠し、L形ローターで、100℃の条件でムーニー粘度を測定した。
【0029】
<加硫ゴムの常態物性>
作成したゴム組成物は、JIS K6253(2008年度版)に準拠してデュロメーター硬さ計を用いて23℃にて硬度(Hs)を測定し、JIS K6251(2008年度版)に従い、引張強さ(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。
【0030】
<貯蔵安定性試験>
生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを60℃ギヤオーブン中で40日間静置した後、ムーニー粘度、塩素及び硫黄量の測定を行なった。ゴム組成物の常態物性変化及び、耐熱老化試験はJIS K6257(2008年度版)に準拠し、150℃、70時間の条件で測定を行なった。
【0031】
実施例1
20リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを15kgと、メルトインデックス6.7g/10分、密度0.953g/ccの高密度ポリエチレンを2.25kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.35g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に10リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を除去した。ラジカル発生剤として10.0gのα,α―アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン1.0kgに溶解した。この溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、6.0kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することにより反応を行なった。この間約4時間を要したが、反応容器の圧力を0.2メガパスカルに保った。
【0032】
反応終了後、圧力を常圧に戻し、反応器の温度を100℃にしてから、窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガス及び塩化水素ガスを取り除く脱酸工程を行なった。この工程を2.5時間かけて行なう間に、反応器温度を100℃から80℃へ下げた。脱酸工程終了後、この溶液をベント付押出機にて、165℃の条件で溶剤からクロロスルホン化ポリエチレンを分離した。生成物は白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.1重量%の塩素と、1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は51であった。
【0033】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作製し、常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が低下することなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れていた。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

実施例2
原料のポリオレフィンをメルトインデックス1.0g/10分、密度0.952g/ccの高密度ポリエチレンに変え、実施例1と同様に塩素化及びクロロスルホン化反応を行なった。脱酸工程を95℃から開始し、3.0時間かけて70℃へ下げるように行なった。その後、実施例1と同様にして生成物を分離した。生成物は乳白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは34.9重量%の塩素と1.0重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は104であった。
【0036】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作製し、常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が低下することなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れていた。
【0037】
実施例3
原料のポリオレフィンをメルトインデックス2.5g/10分、密度0.923g/ccの線状低密度ポリエチレン(エチレン・ブテン共重合体)に変え、塩化スルフリルの添加量を5.0kgに変えた以外は実施例1と同様に塩素化及びクロロスルホン化反応を行なった。脱酸工程を115℃から開始し、2.0時間かけて90℃へ下げるように行なった。その後、実施例1と同様にして生成物を分離した。生成物は白黄色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは31.0重量%の塩素と0.8重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は45であった。
【0038】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が悪化することなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れていた。
【0039】
実施例4
脱酸工程の脱酸工程の温度を110℃から開始し、4.0時間かけて60℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた生成物は白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.2重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は52であった。
【0040】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作製し、常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が低下することなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れていた。
【0041】
実施例5
脱酸工程の脱酸工程の温度を100℃から開始し、2.0時間かけて90℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた生成物は白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.0重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は50であった。
【0042】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作製し、常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が低下することなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れていた。
【0043】
比較例1
脱酸工程の温度を110℃に維持し、1.8時間かけて行なった以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた生成物は褐色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは34.7重量%の塩素と1.0重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は50であった。
【0044】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が大きく低下し、貯蔵安定性、耐熱老化性に劣っていた。
【0045】
比較例2
脱酸工程の温度を70℃に維持し、4.0時間かけて行なった以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた生成物は乳白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.5重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は52であった。
【0046】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に劣っていた。
【0047】
比較例3
脱酸工程の温度を120℃から開始し、1.5時間かけて110℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた組成物は褐色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは34.5重量%の塩素と1.0重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は50であった。
【0048】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度が大きく低下した。
【0049】
比較例4
脱酸工程の温度を120℃から開始し、4.5時間かけて40℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた組成物は褐色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.3重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は51であった。
【0050】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。白色度、生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に劣っていた。
【0051】
比較例5
脱酸工程の温度を90℃から開始し、4.5時間かけて60℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた組成物は乳白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.4重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は52であった。
【0052】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に劣っていた。
【0053】
比較例6
脱酸工程の温度を80℃から開始し、5.0時間かけて40℃へ下げた以外は実施例1と同様の方法にて反応を行い、生成物を得た。得られた組成物は乳白色の色相を有しており、分析の結果このクロロスルホン化ポリオレフィンは35.6重量%の塩素と1.1重量%の硫黄を含むことがわかった。このクロロスルホン化ポリオレフィンの生ゴムムーニー粘度は52であった。
【0054】
この生成したクロロスルホン化ポリオレフィンは表1に示す配合に従って配合、混練し、160℃×20分加硫してゴム組成物を作成し常態物性の測定を行なった。また、生成したクロロスルホン化ポリオレフィンを用いて貯蔵安定性の試験を行なった。得られた結果はまとめて表2に示す。生産性、貯蔵安定性、耐熱老化性に劣っていた。
【0055】
この表から明らかな様に、耐熱老化性の物性測定において、引っ張り強さ変化及び硬さ変化、ムーニー粘度変化が小さく、熱により老化しないことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンは、明色性を低下させることなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れるものであり、本発明のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法は、生産性及び明色性を低下させることなく、貯蔵安定性、耐熱老化性に優れるクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,2−トリクロロエタンを溶剤として用いて、ポリオレフィンをラジカル発生剤存在下、塩素と亜硫酸ガス、塩素と塩化スルフリル、亜硫酸ガスと塩化スルフリル、塩化スルフリル単独、又は塩素と亜硫酸ガスと塩化スルフリルを用いて塩素化及びクロロスルホン化させ、反応時に副生した塩化水素及び/又は亜硫酸ガスを反応系外に除去する工程の際、初期の温度が95〜115℃で、かつ、工程終了時の温度が50〜100℃であることを特徴とするクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。
【請求項2】
除去する工程で得られた溶液からクロロスルホン化ポリオレフィンを分離する際に、温度を100〜190℃に制御することを特徴とする請求項1に記載のクロロスルホン化ポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2012−67258(P2012−67258A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215556(P2010−215556)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】