説明

クロロヒドリンの連続製造方法

【課題】本願発明の目的は、適したクロロヒドリンの連続製造方法を提供することである。
【解決手段】水、塩化水素、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む組成物を提供する。また、グリセロール、グリセロールのエステルまたはこれらの混合物を、クロル化剤および有機酸と、液体反応媒体中で反応させる、ジクロロプロパノールの連続製造方法であって、液体反応媒体の定常状態組成物が、グリセロールのモル数で表した総含量が液体反応媒体の有機部分に対して2モル%を上回りかつ30モル%以下であるグリセロールおよびグリセロールのエステルを含み、水、塩化水素、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む組成物が得られる、製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願の請求項は、いずれも2005年5月20日出願の特許出願FR05.05120および特許出願EP05104321.4、ならびにいずれも2005年11月8日出願の米国仮特許出願60/734659、60/734627、60/734657、60/734658、60/734635、60/734634、60/734637および60/734636の利益を主張するものであり、これらすべての内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、クロロヒドリンの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
クロロヒドリン類は、エポキシドの調製における反応中間体である。例えば、ジクロロプロパノールは、エピクロロヒドリンおよびエポキシ樹脂の調製における反応中間体である(「Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」、Forth Edition、1992、Vol.2、156頁、John Wiley & Sons,Inc.)。
【0004】
既知の方法によれば、特に塩化アリルをハイポクロル化することによって、アリルアルコールをクロル化することによっておよびグリセリンをヒドロクロル化することによってジクロロプロパノールを得ることが可能である。この後者の方法は、ジクロロプロパノールが化石原料からまたは再生可能な原料から出発して得ることができる利点を有し、そして、また化石材料は、例えば石油、天然ガスまたは石炭などの天然の石油化学資源から得られるが、これらは地球上での入手可能性に限りがあることが知られている。
国際出願WO2006/020234には、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素またはそのエステルを、クロロヒドリンへと転換する方法が開示されている。1重量%以下のポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを含む組成物が、開示されている。この組成物は、連続操作に適さない方法の特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許出願FR05.05120
【特許文献2】特許出願EP05104321.4
【特許文献3】米国仮特許出願60/734659
【特許文献4】米国仮特許出願60/734627
【特許文献5】米国仮特許出願60/734657
【特許文献6】米国仮特許出願60/734658
【特許文献7】米国仮特許出願60/734635
【特許文献8】米国仮特許出願60/734634
【特許文献9】米国仮特許出願60/734637
【特許文献10】米国仮特許出願60/734636
【特許文献11】国際出願WO2006/020234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの欠点を有さないクロロヒドリンの連続製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、クロル化剤および有機酸と、液体反応媒体中で反応させる、クロロヒドリンの連続製造方法であって、液体反応媒体の定常状態組成物が、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して1.1モル%を上回りかつ30モル%以下であるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを含む、製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
「ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素」という用語は、2つの異なる飽和炭素原子に付いている少なくとも2つのヒドロキシ基を含有する炭化水素のことを言うものである。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、2〜60個の炭素原子を含んでもよいが、この範囲だけには限定されない。
【0009】
ヒドロキシ官能基(OH)を有するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のそれぞれの炭素は、2つ以上のOH基を有することはできず、sp3混成を有していなければならない。OH基を持っている炭素原子は、第一級、第二級または第三級であればよい。本発明において使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、1つのOH基を持つsp3混成炭素原子を少なくとも2つ含有していなければならない。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、隣接ジオール(1,2-ジオール)または隣接トリオール(1,2,3-トリオール)を、これらの反復単位のより大きな数字で表される隣接順序のものを含めて、含有する任意の炭化水素を含む。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素の定義は、例えば、1,3-、1,4-、1,5-および1,6-ジオール官能基の1つまたは複数をも含む。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、ポリビニルアルコールなどのポリマーであってもよい。例えば、ジェミナルジオールは、この種類のポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素からは除外される。
【0010】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、芳香族部分または、例えば、ハロゲン、イオウ、リン、窒素、酸素、ケイ素およびホウ素型のヘテロ原子を含むヘテロ原子、およびこれらの混合物を含有してもよい。
【0011】
本発明において使用することができるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール(エチレングリコール)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1-クロロ-2,3-プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、2-クロロ-1,3-プロパンジオール(クロロプロパンジオール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、シクロヘキサンジオール類、1,2-ブタンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2,3-プロパントリオール(「グリセロール」または「グリセリン」としても知られている)、およびこれらの混合物を含む。好ましくは、本発明において使用するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、クロロプロパンジオールおよび1,2,3-プロパントリオール、ならびにこれらの2つ以上の混合物を含む。より好ましくは、本発明において使用するポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、例えば、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、クロロプロパンジオールおよび1,2,3-プロパントリオール、ならびにこれらの2つ以上の混合物を含む。1,2,3-プロパントリオールまたはグリセリンが最も好ましい。
【0012】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素中に存在してもよく、および/またはクロロヒドリンを調製する方法の中で生成されてもよく、および/またはクロロヒドリンを調製する方法の前に調製されてもよい。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルの例は、エチレングリコールモノ酢酸、プロパンジオールモノ酢酸、グリセリンモノ酢酸、グリセリンモノステアリン酸、グリセリンジ酢酸およびこれらの混合物を含む。
【0013】
「クロロヒドリン」という用語は、本明細書では、別々の飽和炭素原子に付いている少なくとも1つのヒドロキシ基および少なくとも1つの塩素原子を含有する化合物を記述するために使用する。少なくとも2つのヒドロキシ基を含有するクロロヒドリンは、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素でもある。したがって、出発原料および反応生成物がそれぞれクロロヒドリンであることもある。その場合は、「生成物」クロロヒドリンは、出発クロロヒドリンよりも多くクロル化されており、すなわち出発クロロヒドリンより多くの塩素原子およびより少ないヒドロキシ基を有する。好ましいクロロヒドリンは、クロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノールおよびこれらの少なくとも2つの混合物である。ジクロロプロパノールが特に好ましい。より特別に好ましいクロロヒドリンは、2-クロロエタノール、1-クロロプロパン-2-オール、2-クロロプロパン-1-オール、1-クロロプロパン-2,3-ジオール、2-クロロプロパン-1,3-ジオール、1,3-ジクロロプロパン-2-オール、2,3-ジクロロプロパン-1-オールおよびこれらの少なくとも2つの混合物である。
【0014】
本発明によるクロロヒドリンを製造する方法においては、有機酸は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を製造する方法に由来する生成物、すなわち、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素に含まれている不純物、またはこの方法に由来しない生成物でありえる。後者の場合、対象となる生成物は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化剤を用いた反応を触媒するのに用いられる有機酸でありえる。有機酸は、また、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を製造するための方法に由来する有機酸、およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を製造するための方法に由来しない有機酸の混合物でありえる。
【0015】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、クロル化剤を用いた反応に続く段階の前、この段階の間、この段階内の、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と有機酸との間の反応に由来することができる。
【0016】
本発明による方法中のポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、またはこれらの混合物は、化石原料から出発してまたは再生可能な原料から出発して、好ましくは再生可能な原料から出発して得てもよい。
【0017】
化石原料は、例えば石油、天然ガスおよび石炭などの天然の石油化学資源の加工から得た材料を意味する。これらの材料の中でも2個および3個の炭素原子を含有する有機化合物が優先される。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、アリルクロリド、アリルアルコールおよび「合成」グリセリンが特に好ましい。「合成」グリセリンは、一般的に石油化学資源から得たグリセリンを意味する。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がエチレングリコールである場合は、エチレンおよび「合成」エチレングリコールが特に好ましい。「合成」エチレングリコールは、一般的に石油化学資源から得たエチレングリコールを意味する。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がプロピレングリコールである場合は、プロピレンおよび「合成」プロピレングリコールが特に好ましい。「合成」プロピレングルコールは、一般的に石油化学資源から得たプロピレングリコールを意味する。
【0018】
再生可能な材料は、再生可能な天然資源の加工から得た材料を意味する。これらの材料の中でも「天然」エチレングリコール、「天然」プロピレングリコールおよび「天然」グリセリンが優先される。「天然」のエチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンは、例えば糖類の熱化学的方法による転化によって得られ、これらの糖類はバイオマスから出発して「Industrial Bioproducts:Today and Tomorrow」、Energetics,Incorporated for the U.S.Department of Energy,Office of Energy Efficiency and Renewable Energy,Office of the Biomass Program、July 2003、49、52〜56頁に記載されているように得ることができる。これらの方法の1つは、例えば、グルコースの熱化学的転化によって得たソルビトールの接触水素化分解である。もう1つの方法は、例えば、キシロースの水素化によって得たキシリトールの接触水素化分解である。このキシロースは、例えば、トウモロコシ繊維中に存在するヘミセルロースの加水分解によって得てもよい。「再生可能な原料から得たグリセリン」は、特にバイオディーゼル燃料の製造の間に得たグリセリン、あるいは、一般的な動物または植物の油もしくは脂肪のケン化反応、エステル交換反応または加水分解反応などの転化の間に得たグリセリンを意味する。
【0019】
本発明の方法において使用することができる油の中では、パーム油、パーム核油、コプラ油、ババス油、以前のまたは新しい(低エルカ酸)コルザ油、ヒマワリ油、コーン油、ヒマシ油、綿実油、ピーナッツ油、大豆油、アマニ油およびクランベ油などのすべての一般的な油ならびに、例えば、遺伝子組み換えまたは交雑によって得たヒマワリ植物またはコルザ植物から得たすべての油を挙げてもよい。
【0020】
使用済みのフライ用油、様々な動物油、例えば魚油、タロウ、ラードおよびスクエアリンググリスさえも使用することができる。
【0021】
使用される油の中では、例えば重合またはオリゴマー化などの手段によって部分的に改質された油、例えばアマニ油およびヒマワリ油の「スタンド油」、ならびに吹込み植物油なども挙げてよい。
【0022】
特に適切なグリセリンは、動物脂肪の転化の間に得てもよい。もう1つの特に適切なグリセリンは、バイオディーゼル燃料の製造の間に得てもよい。第3の非常に適切なグリセリンは、動物または植物の油もしくは脂肪の、FR2752242、FR2869612およびFR2869613文書に記載されている不均一触媒の存在下での、エステル交換により得てもよい。より具体的には、不均一触媒は、アルミニウムと亜鉛の混合酸化物、亜鉛とチタンの混合酸化物、亜鉛とチタンとアルミニウムの混合酸化物およびビスマスとアルミニウムの混合酸化物から選択され、また不均一触媒は固定床の形態で使用される。この後者の方法は、バイオディーゼル燃料製造のための方法になることができる。
【0023】
本発明に係るクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing chlorohydrin by converting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons」の特許出願に記載されているとおりでよく、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0024】
元素の形態で表した全金属含有量が0.1μg/kg以上〜1000mg/kg以下である、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化剤と反応させる、クロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる。
【0025】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願2頁8行目から4頁2行目に具体的に開示されているものなどの粗製品または精製品でよい。
【0026】
本発明によるクロロヒドリンを製造する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物は、本願出願と同日にSOLVAY SAが出願した名称「Process for preparing a chlorohydrin by chlorinating a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に開示しているように、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含量が5g/kg以下であり、この出願の内容を参照により本明細書に援用する。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムから選択することができ、アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選択することができる。
【0027】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量は、5g/kg以下、しばしば1g/kg以下、とりわけ0.5g/kg以下、ある種の事例では0.01g/kg以下である。グリセリンのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量は、一般的に0.1μg/kg以下である。
【0028】
本発明による方法においては、アルカリ金属は一般的にはリチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムであり、しばしばナトリウムおよびカリウム、頻繁にはナトリウムである。
【0029】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のリチウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0030】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のナトリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0031】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のカリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0032】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のルビジウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0033】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のセシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0034】
本発明による方法においては、アルカリ土類金属元素は一般的にはマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムであり、しばしばマグネシウムおよびカルシウム、頻繁にはカルシウムである。
【0035】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のマグネシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0036】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のカルシウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0037】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のストロンチウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0038】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のバリウム含有量は、一般的に1g/kg以下、しばしば0.1g/kg以下、とりわけ2mg/kg以下である。この含有量は、一般的には0.1μg/kg以上である。
【0039】
本発明による方法においては、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、一般的に塩の形態、しばしば塩化物、硫酸塩およびこれらの混合物の形態で存在する。最もしばしば遭遇するのは塩化ナトリウムである。
【0040】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、クロル化剤は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願4頁25行目から6頁2行目に記載されているとおりでよい。
【0041】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、クロル化剤は、可能であるならば、SOLVAY SAのWO2005/054167出願4頁30行目から6頁2行目に記載されているとおり塩化水素でよい。
【0042】
クロル化剤は、塩酸水溶液でも好ましくは無水である塩化水素でもよいことを特に挙げる。
【0043】
塩化水素は、例えば、塩化ビニルの製造などの有機クロル化合物を熱分解する方法、4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)もしくはトルエンジイソシアネート(TDI)の製造、金属の酸洗い法、または、硫酸もしくはリン酸などの無機酸と塩化ナトリウム、塩化カリウム、もしくは塩化カルシウムなどの金属塩化物との反応などに由来してもよい。
【0044】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法の有利な一実施形態においては、クロル化剤は、気体塩化水素または塩化水素の水溶液、あるいはこれら2つの組合せである。
【0045】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法においては、塩化水素は、塩化アリル製造プラントおよび/またはクロロメタン製造プラントおよび/または塩素化分解プラントおよび/または塩素化合物の高温酸化プラントから得た、塩化水素の水溶液でよく、または好ましくは気体塩化水素でよく、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin by reacting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbons with a chlorinating agent」の特許出願に記載されているとおりであり、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0046】
クロル化剤が、以下の化合物の少なくとも1つを含む、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素から、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルから、またはこれらの混合物から、そしてクロル化剤から、クロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる:窒素、酸素、水素、塩素、有機炭化水素化合物、有機ハロゲン化合物、有機酸素化合物および金属。
【0047】
飽和または不飽和の脂肪族および芳香族炭化水素およびこれらの混合物から選択される有機炭化水素化合物を特に挙げる。
【0048】
アセチレン、エチレン、プロピレン、ブテン、プロパジエン、メチルアセチレンおよびこれらの混合物から選択される不飽和脂肪族炭化水素、メタン、エタン、プロパン、ブタンおよびこれらの混合物から選択される飽和脂肪族炭化水素、ならびにベンゼンである芳香族炭化水素を特に挙げる。
【0049】
クロロメタン、クロロエタン、クロロプロパン、クロロブタン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、モノクロロプロペン、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、クロロブタジエン、クロロベンゼンおよびこれらの混合物から選択される有機塩素化合物である有機ハロゲン化合物を特に挙げる。
【0050】
フルオロメタン、フルオロエタン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンおよびこれらの混合物から選択される有機フッ素化合物である有機ハロゲン化合物を特に挙げる。
【0051】
アルコール、クロロアルコール、クロロエーテルおよびこれらの混合物である有機酸素化合物を特に挙げる。
【0052】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、銅、鉛、ヒ素、コバルト、チタン、カドミウム、アンチモニー、水銀、亜鉛、セレン、アルミニウム、ビスマスおよびこれらの混合物から選択される金属を特に挙げる。
【0053】
クロル化剤を少なくとも部分的に、塩化アリルを調製する方法および/またはクロロメタンを調製する方法および/または塩素化分解の方法および/または塩素化合物を800℃以上の温度で酸化する方法から得る方法をより特別に挙げる。
【0054】
本発明による製造方法の特に有利な一実施形態においては、塩化水素は、塩化水素の水溶液であり、気体塩化水素を含有しない。
【0055】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のクロル化剤との反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の6頁3〜23行目に記載されているとおりの反応器中で行ってもよい。
【0056】
反応条件下でクロル化剤、特に塩化水素に対して耐性のある材料で製作または被覆されたプラントを特に挙げる。とりわけ、ガラスライニングされた鋼またはタンタルで製作されたプラントを挙げる。
【0057】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のクロル化剤との反応は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in corrosion-resistant apparatus」の特許出願に記載されているとおりの、クロル化剤に対して耐性のある材料で製作または被覆された装置中で行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0058】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、塩化水素を含むクロル化剤と反応させ、そして、クロル化剤に対して耐性のある材料で製作または被覆された装置中で行う少なくとも1つの他のステップを、このステップが実現される条件下で行なう段階を含む、クロロヒドリンの調製方法を特に挙げる。より詳しくは、ガラスライニングされた鋼、金およびタンタルなどの金属材料および高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカンおよびポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)、ポリスルホンおよびポリスルフィド、ならびに非含浸および含浸グラファイトを挙げる。
【0059】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物とクロル化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の6頁28行目〜8頁5行目に記載されているとおりの触媒の存在下で行ってもよい。
【0060】
200℃以上の大気圧における沸点を有するカルボン酸またはカルボン酸誘導体、特にアジピン酸またはアジピン酸の誘導体に基づく触媒を特に挙げる。
【0061】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物とクロル化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の8頁6行目〜10頁10行目に記載されているとおりの触媒濃度、温度および圧力において、この出願に記載されているとおりの滞留時間で行ってもよい。
【0062】
20℃以上〜160℃以下の温度、0.3bar以上〜100bar以下の圧力および1h以上〜50h以下の滞留時間を特に挙げる。
【0063】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物とクロル化剤の反応は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の11頁12行目〜36行目に記載されているとおりの溶媒の存在下で行ってもよい。
【0064】
塩素化された有機溶媒、アルコール、ケトン、エステルまたはエーテル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と混和性の非水性溶媒、例えばクロロエタノール、クロロプロパノール、クロロプロパンジオール、ジクロロプロパノール、ジオキサン、フェノール、クレゾールおよびクロロプロパンジオ-ルとジクロロプロパノールの混合物など、または反応の重質生成物、例えば少なくとも部分的に塩素化されたおよび/またはポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル化されたオリゴマーを特に挙げる。
【0065】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素またはこれらの混合物のクロル化剤との反応は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin in a liquid phase」の出願に記載されているとおりの、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素以外の重質化合物を含む、液相の存在下で行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0066】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、1barの絶対圧力下において、1barの絶対圧力におけるクロロヒドリンの沸点よりも少なくとも15℃高い沸点を有する、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素以外の重質化合物を含む液相の存在下において、クロル化剤と反応させるクロロヒドリンの調製方法を特に挙げる。
【0067】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のクロル化剤との反応は、液体の反応媒体中で行う。この液体反応媒体は、単一相媒体でも複数相媒体でもよい。
【0068】
液体反応媒体はすべて、反応温度において溶解または分散している固体化合物、溶解または分散している液体化合物および溶解または分散している気体化合物で構成されている。
【0069】
反応媒体は、反応物質、触媒、溶媒、ならびに反応物質、溶媒および触媒中に存在する不純物、さらに、反応中間体、反応の生成物および副生成物を含む。
【0070】
反応物質は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルおよびクロル化剤を意味する。
【0071】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素中に存在する不純物の中では、カルボン酸、カルボン酸塩、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素と脂肪酸のエステル、エステル交換に使用されるアルコールと脂肪酸のエステル、ならびにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩および塩化物などの無機塩を挙げる。
【0072】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、挙げることができるグリセリン中の不純物は、カルボン酸、カルボン酸塩、モノ、ジおよびトリグリセリドなどの脂肪酸エステル、エステル交換に使用されるアルコールと脂肪酸のエステルならびにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の硫酸塩および塩化物などの無機塩などである。
【0073】
反応中間体の中では、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモノクロロヒドリンおよびそれらのエステルおよび/またはポリエステル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルおよび/またはポリエステルならびにポリクロロヒドリンのエステルを挙げてもよい。
【0074】
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合は、挙げることができる反応中間体は、グリセリンモノクロロヒドリンおよびそのエステルおよび/またはポリエステル、グリセリンのエステルおよび/またはポリエステル、ならびにジクロロプロパノールのエステルなどである。
【0075】
したがって、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルは、それぞれの事例において、反応物質、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素の不純物、または反応中間体であり得る。
【0076】
反応の副生成物は、クロロヒドリンおよび水を意味する。水はクロル化反応で形成された水および/または例えばSOLVAY SAの出願WO2005/054167の2頁22〜28行目から3頁20〜25行目、5頁7〜31行目および12頁14〜19行目に記載されているように、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素および/またはクロル化剤によって工程に導入された水であり得る。
【0077】
副生成物の中では、例えば部分的に塩素化および/またはエステル化されたポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のオリゴマーを挙げることができる。
【0078】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンである場合は、挙げることができる副生成物は、例えば、部分的に塩素化および/またはエステル化されたグリセリンのオリゴマーである。
【0079】
本方法の様々な段階で、例えば、クロロヒドリンを調製する段階中およびクロロヒドリンを分取する段階中に、反応中間体および副生成物が形成されることがある。
【0080】
したがって、液体反応媒体は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、溶液または気泡形態の分散体のクロル化剤、触媒、溶媒、反応物質中、溶媒中および触媒中に存在する、溶解している塩または固体の塩などの不純物、例えば、反応中間体、反応の生成物および副生成物を含有することがある。
【0081】
本発明によるクロロヒドリンを調製する方法は、連続方法である。連続方法は、一般的に、反応混合物の構成の濃度が時間の経過により変化する過程での操作期間(一時的な期間と称される)、および、その後の、反応混合物の濃度が時間の経過により実質的に更に変化しない過程での操作期間(定常状態と称される)を呈する。
【0082】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、液体反応媒体は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して1.1モル%を上回りかつ30モル%以下である、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを含む定常状態組成を有する。前記合計が、しばしば2.0モル%より大きく、頻繁に5モル%以上である。前記合計は、しばしば液体反応媒体の25モル%以下、頻繁に15モル%以下、特に10モル%以下である。
【0083】
液体反応媒体の有機部分は、全ての、液体反応媒体の有機化合物、すなわち、分子が少なくとも1個の炭素原子を含む化合物からなる。
【0084】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、液体反応媒体は、クロロヒドリンのモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して10モル%以上でありかつ98モル%以下である、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンのエステルを含む定常状態組成を有する。前記合計が、しばしば50モル%以上であり、頻繁に25モル%以上である。前記合計は、しばしば80モル%以下、頻繁に75モル%以下、特に65モル%以下、より特には55モル%以下である。
【0085】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、液体反応媒体は、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して0.1モル%以上でありかつ20モル%以下である、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマーおよびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマーのエステルを含む定常状態組成を有する。前記合計が、しばしば1モル%以上であり、特には5モル%以上である。前記合計は、しばしば液体反応媒体の15モル%以下、頻繁に10モル%以下、特に8モル%以下である。
【0086】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、クロロヒドリンは、モノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンの混合物とすることができる。クロロヒドリンは、好ましくは、モノクロロプロパンジオールおよびジクロロプロパンジオールの混合物である。
【0087】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、クロロヒドリンが、モノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンの混合物である場合は、定常状態の液体反応媒体の組成物は、モノクロロヒドリンのモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して11モル%以上でありかつ85モル%以下である、モノクロロヒドリンおよびモノクロロヒドリンエステルを含む。前記合計が、頻繁に15モル%以上であり、特に25モル%以上である。前記合計は、しばしば液体反応媒体の75モル%以下、頻繁に60モル%以下、特に45モル%以下である。
【0088】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、クロロヒドリンが、モノクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンの混合物である場合は、定常状態の液体反応媒体の組成物は、ジクロロヒドリンのモル数で表した量の合計が液体反応媒体の有機部分に対して0.5モル%以上でありかつ79モル%以下である、ジクロロヒドリンおよびジクロロヒドリンエステルを含む。前記合計が、頻繁にジクロロヒドリンおよびそのエステルの1モル%以上であり、特に5モル%以上である。前記合計は、しばしば液体反応媒体の55モル%以下、頻繁に45モル%以下、特に35モル%以下である。
【0089】
本発明によるクロロヒドリンを連続調製する方法においては、エステルは、クロロヒドリンを調製する段階の間の、クロロヒドリン、グリセリン、ポリヒドロキシ化された炭化水素のクロル化オリゴマー、および有機酸の反応に由来することができる。有機酸は、前記で定義する。
【0090】
本発明は、更に、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマー、およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマーのエステルを含む液体組成物であって、
(a)液体組成物の有機部分における、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモル数で表した、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素およびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルの総含量が、液体組成物の1.1モル%を上回りかつ30モル%以下である、
(b)液体組成物の有機部分における、クロロヒドリンのモル数で表した、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルの総含量が、液体組成物の10モル%以上でありかつ98モル%未満である、
(c)液体組成物の有機部分における、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のモル数で表した、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマーおよびポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化オリゴマーのエステルの総含量が、液体組成物の0.1モル%以上でありかつ20モル%未満である
組成物を提供する。
【0091】
本発明は、更に、有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オール量の合計が800g/kg以上である、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む組成物を提供する。
【0092】
有機部分は、前記で定義する。
【0093】
この液体組成物は、水および塩化水素を含んでよい。
【0094】
本発明による方法においては、反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY SAのWO2005/054167出願の12頁1行目〜16頁35行目および18頁6行目〜13行目に記載されているとおりの方法によって行ってよい。これらの他の化合物は、上記で挙げたものであり、消費されなかった反応物質、反応物質中に存在する不純物、触媒、溶媒、反応中間体、水および反応の副生成物を含む。
【0095】
水/クロロヒドリン/クロル化剤混合物の、クロル化剤の損失を最小限に抑える条件下での共沸蒸留、続くデカンテーションによるクロロヒドリンの単離による分離を特に挙げる。
【0096】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の単離は、SOLVAY SAの名義で2005年5月20日に出願された欧州特許05104321.4出願に記載されている種類の方法によって行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。液相から塩形態のものを分離することを意図された少なくとも1つの分離操作を含む分離方法が特に好ましい。
【0097】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化剤と反応させることによってクロロヒドリンを調製する方法において、使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物が少なくとも1つの固体または溶解している金属塩を含み、金属塩の一部分を除去することを意図された分離操作を含む方法を特に挙げる。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化剤と反応させることによってクロロヒドリンを調製する方法において、使用されるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物が少なくとも1つの塩化物および/または硫酸ナトリウムおよび/または硫酸カリウムを含み、金属塩の一部分を除去することを意図された分離操作がろ過操作である方法をより特別に挙げる。(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を反応混合物中のクロル化剤と反応させ、(b)連続的または周期的に、反応混合物の少なくとも水およびクロロヒドリンを含む画分を取り出し、(c)段階(b)において得られた画分の少なくとも一部分を蒸留段階に導入し、(d)蒸留段階の還流比を前記蒸留段階に水を提供することによって制御する、クロロヒドリンを調製する方法も特に挙げる。(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を反応混合物中の塩化水素と反応させ、(b)連続的または周期的に、反応混合物の少なくとも水およびクロロヒドリンを含む画分を取り出し、(c)段階(b)において得られた画分の少なくとも一部分を蒸留段階に導入し、このとき蒸留段階へ導入される画分中の塩化水素濃度および水の濃度の間の比が、蒸留の温度および圧力での塩化水素/水2の成分共沸組成物における塩化水素/水濃度比よりも小さい、クロロヒドリンを調製する方法をとりわけ挙げる。
【0098】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、クロロヒドリンおよび他の化合物の、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のクロル化から得られる反応混合物からの分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0099】
以下の段階を含むクロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる:(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、クロル化剤および有機酸と、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンのエステルを含む混合物をもたらすように反応させ、(b)(a)で得られた混合物の少なくとも一部分に段階(a)に続いて1つまたは複数の処理を行い、さらに(c)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を、少なくとも部分的にポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルを形成するように20℃以上の温度でクロロヒドリンのエステルと反応させるために、段階(a)に続く段階の少なくとも1つに加える。ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素がグリセリンであり、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである方法をより特別に挙げる。
【0100】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物のクロル化から得た反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0101】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、反応器中に導入される液体流の全体の重量に対して50重量%未満のポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を含有する1つまたは複数の液体流を供給される反応器中のクロル化剤と反応させることによってクロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる。以下の段階を含む方法を特に挙げる:(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化剤と、少なくとも1つのクロロヒドリン、水およびクロル化剤を含有する混合物を与えるように、反応させ、(b)段階(a)で形成された混合物の少なくとも一部分を取り出し、さらに(c)段階(b)で取り出した部分に蒸留および/またはストリッピングの操作を施し、その際、段階(b)で取り出した部分から、水およびクロロヒドリンを含有し、段階(b)から取り出した部分と比較して低下したクロル化剤含有量を示す混合物を分離するために、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素を加える。
【0102】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素またはこれらの混合物のクロル化から得た反応混合物からのクロロヒドリンおよび他の化合物の分離は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for converting polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon into chlorohydrins」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。以下の段階を含むクロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる:
(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物を、クロロヒドリン、クロロヒドリンエステルおよび水を含有する混合物をもたらすように、クロル化剤と反応させる、
(b)段階(a)で得られた混合物の少なくとも一部分に、水、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮された部分をもたらすように、蒸留および/またはストリッピング処理を施す、
(c)段階(b)で得られた部分の少なくとも一部分に、少なくとも1つの添加物の存在下で、クロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルが濃縮されており、40重量%未満の水を含有する部分を得るように、分離操作を施す。
【0103】
分離操作は、より詳しくは、デカンテーションである。
【0104】
本発明によるクロロヒドリンを製造する方法においては、他の化合物の分離および処理は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing a chlorohydrin by chlorinating a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon」の出願に記載されているとおりの方法によって行うことができる。1つの好ましい処理は、反応副生成物の画分を、高温酸化に施すことからなる。
【0105】
以下の段階を含むクロロヒドリンを調製する方法を特に挙げる:(a)アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含量が5g/kg以下であるポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された炭化水素のエステルまたはこれらの混合物、クロル化剤、および有機酸を、少なくともクロロヒドリンおよび副生成物を含む混合物を得るように反応させ、(b)段階(a)で得られた混合物の少なくとも一部分を、段階(a)に続いて1つまたは複数の処理を施し、そして、(c)段階(a)に続く少なくとも1つの段階が、800℃以上の温度での酸化からなる。後に続く段階において、段階(a)で得られた混合物の一部を除去し、その除去の間に、800℃以上の温度で、この部分を酸化させる方法を特に挙げる。また、段階(b)の処理が、相分離、濾過、遠心、抽出、洗浄、蒸発、ストリッピング、蒸留および吸着操作、またはこれらの少なくとも2つの組み合わせから選択される分離操作である方法を、特に挙げる。
【0106】
本発明による方法において、クロロヒドリンがモノクロロプロパノールである場合には、一般的に、異性体である1-クロロプロパン-2-オールおよび2-クロロプロパン-1-オールを含む混合化合物の形態で得られる。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特別には50%超える2つの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、とりわけ90重量%未満の2つの異性体を含有する。混合物の他の成分は、クロロプロパノール調製方法に由来する化合物、残留反応物質、反応副生成物、溶媒および、特に水などであり得る。
【0107】
異性体である1-クロロプロパン-2-オールおよび2-クロロプロパン-1-オールの質量比は、0.01以上、好ましくは0.4以上である。この比は、一般的に99以下、好ましくは25以下である。
【0108】
本発明による方法において、クロロヒドリンがモノクロロエタノールである場合には、一般的に、2-クロロエタノール異性体を含む混合化合物の形態で得られる。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特別には50%超えるこの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、とりわけ90重量%未満のこの異性体を含有する。混合物の他の成分は、クロロエタノール調製方法に由来する化合物、残留反応物質、反応副生成物、溶媒および、特に水であり得る。
【0109】
本発明による方法において、クロロヒドリンがモノクロロプロパンジオールである場合には、一般的に、異性体1-クロロプロパン-2,3-ジオールおよび2-クロロプロパン-1,3-ジオールを含む混合化合物の形態で得られる。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特別には50%超える2つの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満、好ましくは95重量%未満、とりわけ90重量%未満の2つの異性体を含有する。混合物の他の成分は、クロロプロパンジオール調製方法に由来する化合物、残留反応物質、反応副生成物、溶媒および、特に水などであり得る。
【0110】
異性体である1-クロロプロパン-2,3-ジオールおよび2-クロロプロパン-1,3-ジオールの間の質量比は、0.01以上、好ましくは0.4以上である。この比は、一般的に99以下、好ましくは25以下である。
【0111】
本発明による方法において、クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合には、一般的に、異性体1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む混合化合物の形態で得られる。この混合物は、一般的に1重量%を超える、好ましくは5重量%を超える、特別には50%超える2つの異性体を含有する。この混合物は、一般的に99.9重量%未満の2つの異性体を含有する。混合物の他の成分は、ジクロロプロパノール調製方法に由来する化合物、残留反応物質、反応副生成物、溶媒および、特に水などであり得る。
【0112】
1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オール異性体の間の質量比は、0.01以上、しばしば0.4以上、頻繁には1.5以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは7.0以上、とりわけ優先されるのは20.0以上である。この比は、一般的に99以下、好ましくは25以下である。
【0113】
本発明は、また、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールおよび他の有機化合物を含む組成物であって、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総量が、有機化合物の総量に対して、800g/kg以上である組成物を提供する。前記量が、しばしば850g/kg以上、頻繁に900g/kg以上、特に950g/kg以上、具体的に975g/kg以上、特に具体的に985g/kg以上である。この組成物は、また、水および塩化水素を含んでよい。
【0114】
本発明による方法で得られるクロロヒドリンは、増加された量のハロゲン化されたケトン、特に本出願人の名義で2005年5月20日出願のFR05.05120に記載されているとおりクロロアセトンを含むことがあり、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。ハロゲン化ケトンの含有量は、本発明による方法で得たクロロヒドリンを、水の存在下で共沸蒸留することによってまたはクロロヒドリンをこの出願の4頁1行目〜6頁35行目に記載されているとおりの脱塩化水素処理することによって低下させてもよい。
【0115】
その過程でハロゲン化ケトンが副生成物として形成され、形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部分を除去する少なくとも1つの処理を含む、エポキシドを調製する方法を特に挙げる。クロロヒドリンを脱塩化水素化することによってエポキシドを調製する方法であり、エポキシドの少なくとも一部分がポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化すること、脱塩化水素の処理および形成されたハロゲン化ケトンの少なくとも一部分を除去することを目的とする水/ケトンの混合物の共沸蒸留による処理によって調製される方法、および形成されるハロゲン化ケトンがクロロアセトンであるエピクロロヒドリンを調製する方法をより特別に挙げてもよい。
【0116】
本発明による方法で得られたクロロヒドリンは、エポキシドを生成させるために、いずれもSOLVAY SAの名義で出願されたWO2005/054167およびFR05.05120の特許出願に記載されているとおりに脱塩化水素反応をさせてもよい。
【0117】
「エポキシド」という用語は、本明細書において、炭素-炭素結合上に架橋されている少なくとも1つの酸素を含む化合物を記載するために使用される。一般的に言えば、炭素-炭素結合の炭素原子は隣接しており、化合物は水素原子およびハロゲンなどの炭素原子および酸素原子以外の原子を含有してもよい。好ましいエポキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリジドール、エピクロロヒドリンおよびこれらの少なくとも2つの混合物である。
【0118】
クロロヒドリンの脱塩化水素化は、本発明と同日にSOLVAY SAの名義で出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a polyhydroxylated aliphatic hydrocarbon and chlorinating agent」の出願に記載されているとおりに行うことができ、この出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0119】
ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物とクロル化剤の間の反応から得られる1kg当たりに少なくとも10gのクロロヒドリンを含有する反応混合物に、中間の処理をすることなく続く化学反応をさせるエポキシドを調製する方法を特に挙げる。
【0120】
以下の段階を含むエポキシドの調製も挙げる:
(a)ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化剤および有機酸と、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステル、水、クロル化剤および有機酸を含有する反応混合物中にクロロヒドリンおよびクロロヒドリンエステルを形成し、反応混合物が反応混合物1kg当たりに少なくとも10gのクロロヒドリンを含有するように、反応させる、
(b)段階(a)で得られた反応混合物の少なくとも一部分(この部分は段階(a)で得られた反応混合物と同じ組成を有する)に、段階(a)に続く段階の1つまたは複数の処理を施す、
(c)少なくとも部分的にクロロヒドリン、クロロヒドリンエステル、クロル化剤および有機酸と、エポキシドおよび塩を形成するように、反応させる。
【0121】
本発明によってクロロヒドリンを調製する方法は、SOLVAY SAの名義で本出願と同日に出願された標題「Process for preparing an epoxide starting from a chlorohydrin」の出願に記載されているとおりのエポキシドの調製の全体的計画の中に統合することができ、この出願を参照により本明細書に援用する。
【0122】
エポキシドは少なくとも部分的にクロロヒドリンを脱塩化水素化する方法によって調製されたものであり、クロロヒドリンは少なくとも部分的にポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素のエステルまたはこれらの混合物をクロル化する方法によって調製されたものである、形成されたエポキシドの精製の少なくとも1つの段階を含む、エポキシドを調製する方法を特に挙げる。
【0123】
本発明による方法においては、ポリヒドロキシ化された脂肪族炭化水素は、好ましくはグリセリンであり、クロロヒドリンは、好ましくはジクロロプロパノールである。
クロロヒドリンがジクロロプロパノールである場合は、本発明による方法にはジクロロプロパノールの脱塩化水素化によるエピクロロヒドリンの調製が続き、エピクロロヒドリンをエポキシ樹脂の製造において使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、本発明を実施できるプラントの詳細図を示す。
【0125】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0126】
本発明による実施例は、図1の図表によるプラントにおいて実施した。攪拌装置を備えた反応器(4)に、20kg/hのグリセリン流(1)および47.2kg/hの33%濃塩酸流(2)を連続的に供給した。触媒として作用するアジピン酸を、管路(3)を介して、反応器に導入した。反応器を、125℃、大気圧下、625lの反応液体体積で、動かした。蒸留塔(6)には、管路(5)を介して、反応器(4)で産生した気体を供給した。蒸気が、管路(7)を介して、塔(6)から引き出され、コンデンサー(8)へと導入された。コンデンサー(8)からの蒸気は、管路(9)を介して、相分離器(10)へと導入し、相分離器内で、水相および有機相に分離した。分離した水相の画分は、分離に十分な還流を維持するために、管路(11)を介して、塔(6)の上部へと再循環させた。より少ない揮発性化合物は、塔内で濃縮され、管路(12)を介して反応器(4)へと再循環させた。ジクロロプロパノールの産生物は、管路(13)を介して引き出されたジクロロプロパノール飽和水相、および管路(14)を介して引き出された水飽和有機相からなっていた。少量の塩化水素を含むジクロロプロパノールの完全な産生により、99.6重量%の有機純度が得られた。
【0127】
反応混合物の画分を、反応器(4)において一定の液体体積を維持するために、一定間隔で、管路(15)を介して、引き出した。
【0128】
全体の定常状態の触媒含量は、反応混合物のkg当り、アジピン酸と組み合わせた、1.87molの弱酸およびエステル官能基であった。
【0129】
反応混合物の有機部分の構成は、35.5モル%のジクロロプロパノールおよびそのエステル、48.5モル%のモノクロロプロパンジオールおよびそのエステル、5.5モル%のグリセリンおよびそのエステル、9.1モル%のジグリセロールおよびクロル化ジグリセロール、および1.4モル%の酸を含む。
【符号の説明】
【0130】
1 グリセリン流
2 濃塩酸流
3、5、7、9、11、12、13、14 管路
4 反応器
6 蒸留塔
8 コンデンサー
10 相分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、塩化水素、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む組成物を含む組成物であって、有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量が900g/kg以上である、組成物。
【請求項2】
有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量が900g/kg以上である、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールを含む組成物であって、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量に対して、2,3-ジクロロプロパン-1-オールが1重量%以上でありかつ4.8重量%以下である、組成物。
【請求項3】
有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量が950g/kg以上である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量が975g/kg以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
有機部分に対して、1,3-ジクロロプロパン-2-オールおよび2,3-ジクロロプロパン-1-オールの総含量が985g/kg以上である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
グリセロール、グリセロールのエステルまたはこれらの混合物を、クロル化剤および有機酸と、液体反応媒体中で反応させる、ジクロロプロパノールの連続製造方法であって、液体反応媒体の定常状態組成物が、グリセロールのモル数で表した総含量が液体反応媒体の有機部分に対して2モル%を上回りかつ30モル%以下であるグリセロールおよびグリセロールのエステルを含み、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物が得られる、製造方法。
【請求項7】
定常状態の液体反応媒体の組成物が、ジクロロプロパノールのモル数で表した総含量が液体反応媒体の有機部分に対して10モル%以上でありかつ98モル%以下であるジクロロプロパノールおよびジクロロプロパノールエステルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
定常状態の液体反応媒体の組成物が、グリセロールのモル数で表した総含量が液体反応媒体の有機部分に対して0.1モル%以上でありかつ20モル%以下であるグリセロールのクロル化オリゴマーおよびグリセロールのクロル化オリゴマーのエステルを含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
グリセロール、グリセロールのエステル、またはこれらの混合物が、再生可能な原料から出発して得られる、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
クロル化剤が、気体塩化水素である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
有機酸が、グリセロール、グリセロールのエステルまたはこれらの混合物中に存在する不純物である、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
有機酸が、クロル化反応の触媒として使用される、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
グリセロール、ジクロロプロパノール、およびグリセロールのクロル化オリゴマーのエステルが、有機酸と、グリセロール、ジクロロプロパノール、およびグリセロールのクロル化オリゴマーとの反応に由来する、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ジクロロプロパノールの脱塩化水素化によるエピクロロヒドリンの製造が続く、請求項6から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
エピクロロヒドリンが、エポキシ樹脂の製造に使用される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−214483(P2012−214483A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133852(P2012−133852)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【分割の表示】特願2008−511728(P2008−511728)の分割
【原出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】