説明

クロロプレンゴム連続気泡体及びその製造方法

【課題】気泡の均一な発泡倍率10〜20倍のクロロプレンゴム連続気泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】クロロプレンゴムに加硫剤及び発泡剤、軟化剤、充填剤、補強剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を密閉金型中に充填率75〜95%で充填して加圧下に加熱した後除圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下にて140〜170℃で加熱発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させる連続気泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレンゴム連続気泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴム発泡体は、自動車部品、建築分野等で、緩衝材、防音材、断熱材、シール材などの様々な分野で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭53−26863号公報
【特許文献2】特許第3181549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既存のクロロプレンゴム発泡体は独立気泡であり、シール用途に用いる場合発泡体を圧縮して使用するが、独立気泡のため圧縮に大きな力が必要になる。
【0005】
本発明者らは、2段発泡における1次発泡の密閉金型充填量及び常圧下における加熱温度を調整することにより、気泡の均一な発泡倍率10〜20倍のクロロプレンゴム連続気泡体及びその製造方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクロロプレンゴム連続気泡体は、クロロプレンゴムに加硫剤及び発泡剤、軟化剤、充填剤、補強剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を密閉金型中に充填率75〜95%で充填して加圧下に加熱した後除圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下にて140〜170℃で加熱発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化して得られるものである。
【0007】
本発明に係るクロロプレンゴム連続気泡体において、発泡性架橋性組成物の密閉金型に対する充填率が75〜95%であることが好ましい。
充填率とは、金型体積に対する仕込む発泡性架橋性組成物の体積である。
充填率(%)=(発泡性架橋性組成物の体積/金型体積)×100
充填率が75%未満の場合は、ガス抜けが起こり発泡体が得られない。
95%を超える場合は、脱泡が出来ず連続気泡体が得られない。
【0008】
本発明に係るクロロプレンゴム連続気泡体において、常圧下における加熱温度は140〜170℃であることが好ましい。
加熱温度が140℃未満の場合は、発泡剤が分解せず発泡体が得られない。
170℃を越える場合は、ガス抜けが起こり発泡体が得られない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、連続気泡構造で気泡の均一な発泡倍率10〜20倍のクロロプレンゴム連続気泡体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明でいうクロロプレンゴムとは、クロロプレンの重合によって得られる合成ゴム(CR)である。
【0011】
本発明でいう加硫剤とは、ジチオカルバミン酸塩のジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸第二鉄等、ポリアミン系化合物、ポリカルボン酸又はその酸無水物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、高級脂肪酸金属塩、シアヌール酸類、尿素類、グアニジン類、イミダゾール類、硫黄又は硫黄供与性化合物等である。
【0012】
本発明でいう発泡剤とは、ニトロソ系化合物のジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリニトロトリメチルトリアミン等;アゾ系化合物のアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等;ヒドラジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジッド等;スルホニルセミカルバジッド系化合物のp,p‘−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、トルエンスルホニルセミカルバジッド等である。
【0013】
本発明でいう軟化剤とは、プロセスオイル、可塑剤、パラフィンワックス、流動性パラフィン等のゴムとの相性の良いものである。
【0014】
本発明でいう充填剤とは、クレー、炭酸カルシウム等が、補強剤としてはカーボンブラック、シリカ、タルクその他常用のゴム配合剤等を必要に応じて添加することができる。
【0015】
本発明において、発泡助剤を発泡剤の種類に応じて添加することが出来る。発泡助剤としては、尿素を主成分とした化合物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物、サリチル酸、ステアリン酸等を主成分とする高級脂肪酸あるいは高級脂肪酸の金属化合物等がある。
【0016】
本発明のクロロプレンゴム連続気泡体の製造方法は、用いた加硫剤や発泡剤、などによる発泡温度や架橋温度などにより、従来公知の方法及び適宜の条件で行うことができる。特に好ましい方法及び条件を下記に記述する。
【0017】
クロロプレンゴム100重量部に加硫剤及び発泡剤、軟化剤、充填剤、補強剤を添加し、これをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機等によって練和する。次いで、得られた発泡性樹脂組成物を密閉金型に対する充填率が75〜95%の状態で仕込み、加圧下に加熱した後除圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下にて140〜170℃で加熱発泡させて発泡体を得る。
【0018】
以上のようにして得られた気泡体(いわゆる独立気泡体)は、次いで例えば等速二本ロール等により圧縮変形を加えることによって気泡膜は破壊され、気泡が連通化されて連続気泡体が得られる。等速二本ロールの表面に無数の小さい針を設けるか、又は等速二本ロールの前及び/又は後に無数の小さい針を設けたロールを配置して、該気泡体の表面に無数の小孔を開けることによって、気泡の連通化を促進させることができる。この方法によって得られる連続気泡体は、ASTM−D2856に準拠した空気比較式比重計1000型(東京サイエンス(株)製)を用いて測定した連続気泡率が100%又は100%に近いものである。
【実施例1】
【0019】
クロロプレンゴム(商品名:スカイプレンB−30、東ソー株式会社製)100重量部、ハイスチレンゴム(商品名:JSR0061、JSR株式会社製)20重量部、硫黄(商品名:レノグランS−80、バイエル株式会社製)1.0重量部、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(商品名:セルラーD、永和化成工業株式会社製)6.0重量部、カーボンブラック30重量部、軟化剤5重量部、炭酸カルシウム44重量部、タルク11.5重量部、クレー27重量部、酸化マグネシウム4重量部、尿素5.5重量部からなる組成物を140℃に加熱された、プレス内の金型(22×200×200mm)に充填率90.0%で仕込み、100kg/cmの圧力で25分間加熱し、中間発泡体(38×320×320mm)を生成した。
【0020】
次いで、中間発泡体を金型(50×500×500mm)の略中央に載置し、160℃で30分間加熱して取り出し、発泡体(50×500×500mm)を得た。
【0021】
得られた発泡体をロール間隔20mmに設定した等速二本ロールの間を5回通化させて気泡膜を破壊させ、気泡の連通化を行った。
【0022】
得られた発泡体は見掛け密度が160kg/m、連続気泡率が98%の気泡が均一なクロロプレンゴム連続気泡体であった。
【実施例2】
【0023】
プレス内金型の充填率を75%に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体を得た。
得られた発泡体は、見掛け密度152kg/m、連続気泡率が98%の気泡が均一なクロロプレンゴム連続気泡体であった。
【実施例3】
【0024】
プレス内金型の充填率を95%に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体を得た。
得られた発泡体は、見掛け密度166kg/m、連続気泡率が98%の気泡が均一なクロロプレンゴム連続気泡体であった。
比較例1
【0025】
プレス内金型の充填率を70%に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡させたが、ガス抜けにより発泡体が得られなかった。
比較例2
【0026】
プレス内金型の充填率を100%に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体を得た。
得られた発泡体を等速二本ロールにより連続気泡化しようとしたが、脱泡できず連続気泡体が得られなかった。
【0027】
【表1】

【実施例4】
【0028】
常圧下での加熱温度を140℃に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体を得た。
得られた発泡体は、見掛け密度162kg/m、連続気泡率が98%の気泡が均一なクロロプレンゴム連続気泡体であった。
【実施例5】
【0029】
常圧下での加熱温度を170℃に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体を得た。
得られた発泡体は、見掛け密度158kg/m、連続気泡率が98%の気泡が均一なクロロプレンゴム連続気泡体であった。
比較例3
【0030】
常圧下での加熱温度を130℃に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡させたが発泡剤が分解せず発泡体が得られなかった。
比較例4
【0031】
常圧下での加熱温度を180℃に変えた以外は、実施例1と同じ配合及び同じ発泡条件で発泡体させたが、ガス抜けにより発泡体が得られなかった。
【0032】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明の方法によれば、柔らかく、圧縮応力が低く汚染性が無く、物性に優れ、気泡の均一な発泡倍率10〜20倍のクロロプレンゴム連続気泡体を簡単に製造できる。本発明の方法によって製造されたクロロプレンゴム連続気泡体は、緩衝材、防音材、断熱材、シール材等に適用できる。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレンゴムに加硫剤及び発泡剤、軟化剤、充填剤、補強剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱した後除圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下にて加熱、発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させてなるクロロプレンゴム連続気泡体。
【請求項2】
発泡性架橋性組成物の密閉金型に対する充填率が75〜95%であることを特徴とする請求項1記載のクロロプレンゴム連続気泡体。
【請求項3】
常圧下の加熱温度が140〜170℃であることを特徴とする請求項1及び2記載のクロロプレンゴム連続気泡体。
【請求項4】
クロロプレンゴムに加硫剤及び発泡剤、軟化剤、充填剤、補強剤等を添加混練した発泡性架橋性組成物を密閉金型中に充填して加圧下に加熱した後除圧して中間発泡体を得、得られた中間発泡体を常圧下にて加熱、発泡させて発泡体を生成させ、次いで機械的変形を加えて気泡を連通化させるクロロプレンゴム連続気泡体の製造方法。
【請求項5】
発泡性架橋性組成物の密閉金型に対する充填率が75〜95%であることを特徴とする請求項4記載のクロロプレンゴム連続気泡体の製造方法。
【請求項6】
常圧下の加熱温度が140〜170℃であることを特徴とする請求項4及び5記載のクロロプレンゴム連続気泡体の製造方法。


【公開番号】特開2013−72052(P2013−72052A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213799(P2011−213799)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000177380)三和化工株式会社 (21)
【Fターム(参考)】