説明

クロロプレンラテックス及びその製造方法

【課題】 従来のクロロプレンラテックスのコンタクト性を損なうことなく、良好な耐熱接着強度を示すクロロプレンラテックスを提供する。
【解決手段】 クロロプレン100重量部に対して2,3−ジクロロブタジエン9〜130重量部である、クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含有し、該共重合体のDSC測定曲線において、37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在することを特徴とするクロロプレンラテックス、及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着物性が良好であり、特に、高温雰囲気下での接着強度が良好であるクロロプレンラテックス及びその製造方法に関するものである。なお、本発明における高温雰囲気下とは、80℃を指す。
【背景技術】
【0002】
接着剤には、初期強度、耐熱強度、耐水強度等の接着強度が要求される。特に、工場等のラインでは高温にて加熱乾燥された状態で貼り合わされるため、貼り合せの直後に剥がれないよう高温における初期耐熱強度が要求される、一方、現場等では常温乾燥にて貼り合せをおこなうことが多く、塗布後に貼り合せるまでの時間もまちまちであることから作業幅が要求される。
【0003】
クロロプレンゴム等をベースとした溶剤系接着剤は、その良好な作業性や接着物性から各種用途に用いられてきた。しかし、使用される有機溶剤は地球環境や作業者の健康に悪影響を与え、時には作業場の火災等を引き起こす危険性を有している。そのため、脱溶剤の要求が高まっている。
【0004】
脱溶剤化の手法の一つとして、ラテックス系接着剤による代替が考えられている。
【0005】
クロロプレンラテックスとしては各種のものが知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4)。
【0006】
しかし、特許文献1,2に示されるように、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を用いた場合、その保護コロイド性から優れたラテックスの安定性を示す一方で、期待される接着物性が得られず、特に耐水接着強度が低くなる。一方、特許文献3,4に示されるように、ロジン酸の金属塩からなる乳化剤を用いた場合耐水性の問題は無く、耐熱接着強度はクロロプレンゴムを高分子量化し、ゲル分を含有させることで高くできるが、コンタクト性の低下を伴い、また、その強度も溶剤系の接着剤と比較すると不十分である。
【0007】
溶剤系の接着剤と比較すると水系接着剤の接着物性は依然として不十分であり、特に耐熱接着強度はその差が大きいため、コンタクト性を低下させることなくこれを向上させることはきわめて重要である。
【0008】
【特許文献1】特開平6−287360号公報
【特許文献2】特開平11−335491号公報
【特許文献3】特公昭51−39262号公報
【特許文献4】特開昭51−136733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、従来のクロロプレンラテックスのコンタクト性を損なうことなく、良好な耐熱接着強度を示すクロロプレンラテックス及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラテックス中にクロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含み、結晶化した該共重合体のDSC測定曲線において、37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在するクロロプレンラテックスを用いることで、良好なコンタクト性と耐熱接着強度を示すことを見出し本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、クロロプレン100重量部に対して2,3−ジクロロブタジエン9〜130重量部である、クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含有し、該共重合体のDSC測定曲線において、37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在することを特徴とするクロロプレンラテックス、及びその製造方法である。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含有するものである。クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含有することで、耐熱接着強度を向上できる。
【0013】
クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体におけるクロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの含有量は、クロロプレン100重量部に対して2,3−ジクロロブタジエン9〜130重量部であり、好ましくは9〜110重量部であり、さらに好ましくは9〜50重量部であり、最も好ましくは9〜20重量部である。2,3−ジクロロブタジエンが9重量部未満の場合や130重量部を超える場合は、50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在せず、コンタクト性の低下や、耐熱強度の不足が生じる。
【0014】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体のDSC測定曲線において、37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在するものである。37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在することにより、良好な耐熱接着強度とコンタクト性を有するものである。
【0015】
ここに、DSCにおける吸熱ピークは、ラテックス中よりゴム分を取り出し測定する。
【0016】
本発明のクロロプレンラテックスの固形分は、特に限定するものではないが、増粘剤配合時の増粘性や、塗布・乾燥後の接着剤量を確保により、良好な接着物性を得るために50%以上であることが好ましい。
【0017】
本発明のクロロプレンラテックスは、良好な安定性と接着物性を得るため、乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等があげられ、アニオン系乳化剤としては、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩の高分子化合物などのカルボン酸塩からなる乳化剤、アルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸からなる乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの硫酸エステル塩等があげられ、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール等があげられる。これらのうち、より良好な安定性と接着物性を得るため、アニオン系乳化剤が好ましく、そのなかでも、ロジン酸のアルカリ金属塩が好ましい。
【0018】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレンラテックス単独でも良いが、複数のクロロプレンラテックスを混合したものでも良い。混合する場合は、全体に対する2,3−ジクロロブタジエンの割合が9〜60重量%となるように混合することが好ましい。また、2,3−ジクロロブタジエンの割合が9重量%以下や60重量%以上のラテックスに対し、2,3−ジクロロブタジエンを9重量%以上含むラテックスや、2,3−ジクロロブタジエンを含まないラテックスを混合し、上記の量となるよう調製することも可能である。
【0019】
本発明のクロロプレンラテックスは、クロロプレン単量体と2,3−ジクロロブタジエン単量体を乳化重合することによって製造することができる。
【0020】
乳化重合は、上記の単量体、及び乳化剤を、重合開始剤、連鎖移動剤等と共に乳化し、所定温度にて行い、所定の転化率で重合停止剤を添加すれば良い。必要に応じてクロロプレンと共重合可能な他の単量体を更に1種類以上含んでも良い。重合方法としては特に制限のあるものではなく、例えば、クロロプレン単量体と2,3−ジクロロブタジエン単量体、又はクロロプレン単量体と2,3−ジクロロブタジエン単量体とクロロプレンと共重合可能なその他の単量体をラジカル共重合すればよい。また、重合中に各単量体を追加しても良い。
【0021】
50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在するクロロプレンラテックスを得るため、重合初期から2,3−ジクロロブタジエン単量体を仕込む場合の使用量は、クロロプレン単量体100重量部に対して60〜130重量部であり、好ましくは75〜110重量部である。また、重合中に2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する場合は、重合転化率が60〜86%において2,3−ジクロロブタジエン単量体9〜50重量部を下式を満たすように追加するものであり、好ましくは9〜20重量部を下式を満たすように追加する。
【0022】
(100−C)×0.6≦X≦(100−C)×1.35
(式中、Xは追加する2,3−ジクロロブタジエン単量体の重量部を表し、Cは重合転化率を表す。)
これらの条件を外れると、50〜100℃の間には吸熱ピークが存在しない。
【0023】
クロロプレンと共重合可能な他の単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、シトラコン酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸等のカルボキシル基を含有する単量体、2,3−ジクロロ−1,3ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノメタクリレート等があげられる。
【0024】
乳化剤は、一般的に乳化重合に用いるものであれば特に限定するものではなく、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等があげられ、アニオン系乳化剤としては、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩の高分子化合物などのカルボン酸塩からなる乳化剤、アルカンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸からなる乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩などの硫酸エステル塩等があげられ、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール等があげられる。アルカリ金属塩としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムなどがあげられる。これらのなかでも、重合の安定性や接着物性の観点からアニオン系乳化剤が好ましく、そのなかでもロジン酸のアルカリ金属塩が好ましい。使用量は特に限定するものではないが、通常これらを単量体100重量部に対して3〜7重量部使用する。
【0025】
また、ラテックス安定性の面から、ナフタレンスルホン酸塩とホルムアルデヒドの縮合物などの安定剤を併用するのが一般的である。安定剤の量は特に限定するものではない。
【0026】
重合開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
【0027】
連鎖移動剤としては、例えば、アルキルメルカプタン、ハロゲン炭化水素、アルキルキサントゲンジスルフィド、硫黄等の分子量調節剤等があげられ、これらのうち、臭気及び作業性の面からn−ドデシルメルカプタンが好ましい。通常これらは重合する単量体と共に混合し反応を行うが、反応中に単独で追加しても良い。使用量は特に限定するものではないが、乳化剤にロジン酸のアルカリ金属塩を用いる場合は通常これらを単量体100重量部に対して0.01〜0.3重量部使用する。
【0028】
重合温度は特に限定するものではないが、好ましくは10〜50℃の範囲である。
【0029】
重合終了時期は特に限定するものでないが、生産性、及び良好な接着物性を得るため、単量体の転化率が80〜95%まで重合を行うことが好ましい。
【0030】
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6−t−ブチル−4−メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
【0031】
また、ラテックスの安定性を更に良好にするため、重合中、及び重合終了後に上記の乳化剤のうち1種類以上を添加しても良い。
【0032】
本発明のクロロプレンラテックスは、単独でも接着剤として使用可能であるが、粘着付与樹脂や架橋剤を添加したクロロプレンラテックス組成物とすることで接着物性が向上する。
【0033】
粘着付与樹脂としては特に限定するものではなく、例えば、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン誘導体樹脂、石油系炭化水素等があげられ、例えば、重合ロジン、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、アルキルフェノール樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール、水添ロジン、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、石油樹脂、クマロン樹脂等が使用される。
【0034】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、ポリアジリジン化合物、ポリオキサゾリン化合物等、クロロプレンラテックスに均一に混合できる多官能性化合物であれば何ら制限はなく使用できる。
【0035】
クロロプレンラテックスを主成分とする接着剤の粘度は、各種増粘剤、例えば、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルアルコール、疎水化セルロース、会合型ノニオン界面活性剤等の水溶性ポリマー、及びカルボキシル基含有ポリマーから構成されるアルカリ可溶型の増粘剤、ヘクトライト等のシリケート化合物等の配合により所望の粘度に調整できる。
【0036】
クロロプレンラテックス組成物には、その他必要に応じて、例えば、増粘剤、老化防止剤、防腐剤、凍結防止剤、造膜助剤、可塑剤、クレー、pH調節剤等の添加剤を含有したものでも良い。
【発明の効果】
【0037】
本発明のクロロプレンラテックスは、上記の通りすることにより従来のクロロプレンラテックスのコンタクト性を損なうことなく、良好な耐熱接着強度を示す接着剤を提供することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。ポリマーのDSC、接着剤配合物のコンタクト性および耐熱接着強度は以下の方法・条件で測定した。
【0039】
<DSC測定>
ラテックスをドライアイス/メタノール冷媒にて凍結後真空乾燥してゴムを取り出し、そのゴムを5℃以下で48時間以上保管して結晶化させた後に、DSC(SEIKO I&E製 示差操査熱量計DSC200)の測定を行った。測定は−100℃から200℃まで、5℃/分の昇温速度で行った。
【0040】
<コンタクト性(室温接着強度)>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に刷毛で接着剤組成物を約250g/m塗布した後に室温で30分乾燥し、ハンドローラーを用いて圧着した。150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。貼り合わせ直後にテンシロン型引っ張り試験機を用いて室温雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りを行い、接着強度の測定を行なうことでコンタクト性を評価した。
【0041】
<耐熱接着強度>
9号帆布2枚(約150mm×60mm)それぞれの片面に刷毛で接着剤組成物を約250g/m塗布した後に70℃で3.5分乾燥し、ハンドローラーを用いて圧着した。150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。耐熱接着強度の測定は試験片を貼り合わせ直後に60℃および80℃の雰囲気下にて5分間状態調整を実施した後に、テンシロン型引っ張り試験機を用いて80℃の雰囲気下にて100mm/minの剥離速度で180°方向の引っ張りにて行った。
【0042】
実施例1
表1で示した割合のクロロプレン単量体、2,3−ジクロロブタジエン単量体、n−ドデシルメルカプタン、ロジン酸カリウム(商品名:ロンヂスK−25、荒川化学工業(株))、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中15℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が約90%となった時点で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスAを得た。
【0043】
【表1】

ラテックスA中のポリマーのDSC測定の結果、41℃、および68℃に吸熱ピークがあった。また、ラテックス100重量部に対し、樹脂エマルジョン、金属酸化物、増粘剤を配合して接着剤組成物を作製し、そのコンタクト性(室温接着強度)、および耐熱接着強度を測定した。配合を表2に、結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

実施例2
使用するクロロプレン単量体および2,3−ジクロロブタジエン単量体の量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1に従って重合を実施してラテックスBを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0046】
実施例3
表1で示した割合のクロロプレン単量体、n−ドデシルメルカプタン単量体、ロジン酸カリウム(商品名:ロンヂスK−25、荒川化学工業(株))、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中15℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が70%となった時点で2,3−ジクロロブタジエン単量体をクロロプレン単量体100重量部に対し20重量部追加し、追加した2,3−ジクロロブタジエンも含めた全体の重合転化率が約90%となった時点で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整しラテックスCを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0047】
実施例4
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を80%に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスDを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0048】
実施例5
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を85%に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスEを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0049】
実施例6
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を85%に、追加する量をクロロプレン単量体100重量部に対し10重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスFを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0050】
実施例7
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を80%に、追加する量をクロロプレン単量体100重量部に対し15重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスGを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0051】
実施例8
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を65%に、追加する量をクロロプレン単量体100重量部に対し35重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスHを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0052】
実施例9
ラテックスCとラテックスEを50:50の比でブレンドしてラテックスを調製し、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0053】
実施例10
表1に示すように、2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加しない以外は、実施例1に従い重合を行いラテックスIを得て、ラテックスAとラテックスIを30:70の比でブレンドしてラテックスを調製し、DSC測定および接着強度の測定を実施した。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0054】
実施例11
ラテックスCとラテックスIを30:70の比でブレンドしてラテックスを調製し、DSC測定および接着強度の測定を実施した。結果を表3に示す。表3の結果より、接着強度は良好な値であった。
【0055】
比較例1
ラテックスI単独についてDSC測定および接着強度の測定を実施した。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、耐熱接着強度も低かった。
【0056】
【表4】

比較例2
表1に示すように、クロロプレン単量体の代わりに2,3−ジクロロブタジエン単量体を用いて重合を行いラテックスJを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、接着強度も低かった。
【0057】
比較例3
表1で示した割合のクロロプレン単量体、2,3−ジクロロブタジエン単量体、n−ドデシルメルカプタン、ロジン酸カリウム(商品名:ロンヂスK−25、荒川化学工業(株))、ナフタレンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物(商品名:デモールN、花王(株))、ハイドロサルファイトナトリウム、及び純水を攪拌機付き10Lオートクレーブ中15℃で重合を行った。重合は窒素雰囲気下で0.35重量%の過硫酸カリウム水溶液を連続的に滴下して行い、重合転化率が約90%となった時点で重合停止剤として2,6−ターシャリーブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し重合を停止した。その後、減圧下で未反応単量体の除去及び濃縮によりラテックスの固形分を55%に調整し、ラテックスKを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、耐熱接着強度も低かった。
【0058】
比較例4
表1で示した割合に2,3−ジクロロブタジエン単量体を変更した以外は、実施例1に従って重合を行いラテックスLを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、室温接着強度が低くコンタクト性が悪かった。
【0059】
比較例5
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を88%に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスMを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、室温接着強度が低くコンタクト性が悪かった。
【0060】
比較例6
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する量をクロロプレン100重量部に対して5重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスNを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、耐熱接着強度が低かった。
【0061】
比較例7
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する量をクロロプレン100重量部に対して60重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスOを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、接着強度が低かった。
【0062】
比較例8
2,3−ジクロロブタジエン単量体を追加する重合転化率を50%に、追加する量をクロロプレン100重量部に対して15重量部に変更した以外は実施例3に従って重合を実施してラテックスPを得て、DSC測定および接着強度の測定を行った。結果を表4に示す。DSC測定の結果、50〜100℃の間にピークは無く、耐熱接着強度が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン100重量部に対して2,3−ジクロロブタジエン9〜130重量部である、クロロプレンと2,3−ジクロロブタジエンの共重合体を含有し、該共重合体のDSC測定曲線において、37〜45℃の間の吸熱ピークの他に50〜100℃の間に一本以上の吸熱ピークが存在することを特徴とするクロロプレンラテックス。
【請求項2】
固形分が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のクロロプレンラテックス。
【請求項3】
アニオン系乳化剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクロロプレンラテックス。
【請求項4】
アニオン系乳化剤が、ロジン酸のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項3に記載のクロロプレンラテックス。
【請求項5】
クロロプレン単量体100重量部と2,3−ジクロロブタジエン単量体60〜130重量部を用いて共重合を開始することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
【請求項6】
クロロプレン単量体100重量部を用いて重合を開始し、その後重合転化率が60〜86%において2,3−ジクロロブタジエン単量体9〜50重量部を下式を満たすように追加することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスの製造方法。
(100−C)×0.6≦X≦(100−C)×1.35
(式中、Xは追加する2,3−ジクロロブタジエン単量体の重量部を表し、Cは重合転化率を表す。)
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とするクロロプレンラテックス組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載のクロロプレンラテックスを含有することを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−6902(P2010−6902A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166108(P2008−166108)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】