説明

クローン病およびクローン病に関連する症状の治療のためのオピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬の組合せの使用

本発明は、クローン病を治療するためのオピオイド作動薬および拮抗薬の組合せの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物における胃腸系の障害を治療する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
クローン病は、腸が炎症を起こすようになり、多くの場合、腹部けいれんおよび下痢の再発を引き起こす炎症性腸疾患(「IBD」)の2つの主要なタイプのうちの1つを表す。IBDの2つ目の主要なタイプは、潰瘍性大腸炎である。
【0003】
クローン病は、限局性腸炎、肉芽腫性回腸炎および回結腸炎を含むことができ、腸壁の慢性炎症を特徴とする。クローン病のほとんどの症例は30歳前に発症し、その大多数が14歳から24歳の間に発症している。
【0004】
一般に、この疾患は小腸の最下部(回腸)および大腸を侵すが、消化管のいずれの部分にも発生する可能性がある。典型的には、腸壁の全層が侵される。
【0005】
クローン病の初期症状は、慢性下痢、けいれん性の腹痛、発熱、食欲不振および体重減少である。クローン病に関連する合併症は、腸閉塞、異常な連結路(瘻)および膿瘍の発症を含む。クローン病を有する人では、大腸の癌になるリスクが増加する。
【0006】
多くの場合、クローン病は、胆石、栄養素の吸収不足、アミロイドーシス、関節炎、上強膜炎、アフタ性口内炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、強直性脊椎炎、仙腸骨炎、ブドウ膜炎および原発性硬化性胆管炎などの他の障害を伴う。
【0007】
クローン病に関連するけいれんおよび下痢の症状は、ジフェノキシレートまたはロペラミドなどの抗コリン作用薬によって緩和されうる。一般に、薬物は食前に内服される。
【0008】
広域スペクトル抗生物質は、クローン病の炎症性症状を治療するために投与されることが多い。したがって、抗生物質メトロニダゾールは、疾患が大腸を侵す場合または肛門周囲に膿瘍および瘻を引き起こす場合に投与されることが多い。しかし、メトロニダゾールを長期間使用すると、神経を損傷し、結果として腕および脚にチクチクする感覚を生じる可能性がある。
【0009】
スルファサラジンおよび化学的に関連する薬物は、特に大腸における軽度の炎症を抑えることができる。しかし、これらの薬物は、突然の重症の再燃にはあまり効果がない。
【0010】
プレドニゾロンなどのコルチコステロイド薬は、発熱および下痢を軽減し、腹痛および圧痛を緩和する。長期間のコルチコステロイド療法は、血糖レベルの上昇、感染症のリスクの増加、骨粗鬆症、水分貯留および皮膚の脆弱性などの重篤な副作用を生じる可能性がある。
【0011】
アザチオプリンおよびメルカプトウリン(mercaptopurine)などの薬物は、免疫系を調節することができ、他の薬剤に反応しない患者におけるクローン病に使用されることが多い。これらの薬物は通常、恩恵をもたらす前に3から6カ月を必要とし、アレルギー反応、膵炎および白血球数の減少などの重篤な副作用を引き起こす可能性がある。
【0012】
クローン病によって腸が閉塞する場合または膿瘍もしくは瘻が治癒しない場合には、腸の病巣部を切除するために、手術が必要になることがある。しかし、手術によって疾患は治癒せず、腸が再結合された場所に炎症が再発する傾向がある。半数近くの症例において再手術が必要である。The Merck Manual of Medical Information 528〜530ページ(R.Berkow編、1997年)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、クローン病を治療するためにまたはその主要な症状のいくつかを少なくとも緩和するために使用することができる剤形が、絶えず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、クローン病を治療するために使用することができる医薬剤形を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、クローン病に関連する症状を治療するために使用することができる医薬剤形を提供することである。
【0016】
さらに、本発明の目的は、クローン病に関連する主要な症状としての疼痛を治療するために使用することができる医薬剤形を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、クローン病およびクローン病に関連する症状を治療する方法を提供することである。
【0018】
本発明のこれらのおよび他の目的は、続く説明から明らかとなるが、独立請求項の主題によって達成される。本発明の好ましい実施形態のいくつかは、従属請求項に提示されている。
【0019】
一実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物におけるクローン病を治療するためのおよび/またはクローン病に関連する症状を治療するための、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬または薬学的に許容される塩と組み合わせて含む医薬剤形に関する。
【0020】
一実施形態では、オピオイド作動薬は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドール、ヒドロコドンおよびそれらの塩を含む群から選択することができる。
【0021】
ブプレノルフィンは、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬とみなすことができる。一実施形態では、本発明による医薬剤形は、ブプレノルフィンを、少なくとも1種のオピオイド作動薬としておよび少なくとも1種のオピオイド拮抗薬として含まないことがあるが、ブプレノルフィンを、少なくとも1種のオピオイド作動薬として少なくとも1種の他のオピオイド拮抗薬と組み合わせて含むことがある。
【0022】
一実施形態では、本発明による医薬剤形は、ブプレノルフィンを含まなくてよい。
【0023】
オピオイド拮抗薬は、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソナジネン(naloxonazinene)、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン(ketylcyclazocine)、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソール、6−β−ナルトレキソールおよびそれらの塩を含む群から選択することができる。
【0024】
一実施形態では、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬は、医薬剤形の中で遊離塩基として存在する。
【0025】
好ましい実施形態のうちの1つでは、オピオイド作動薬および/またはオピオイド拮抗薬は、医薬剤形の中で、それらの薬学的に許容される塩の形で、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸水素塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フマル酸塩またはコハク酸塩の形態で存在する。
【0026】
好ましい実施形態のうちの1つでは、医薬剤形はいわゆる制御放出剤形であり、持続放出剤形が特に好ましい。これらの実施形態のうちの1つでは、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩は、剤形から持続された様式で放出される。
【0027】
一実施形態では、持続放出特性は、拡散マトリックス、侵食性マトリックスまたは拡散および侵食性マトリックスの特性を組み合わせたマトリックスでありうるマトリックスによって本質的にもたらされる。
【0028】
好ましい実施形態では、拡散マトリックスは、オピオイド作動薬および拮抗薬の放出またはそれらの薬学的に許容される塩の放出に本質的に影響を及ぼす成分として、少なくとも1種の疎水性ポリマー成分および/または少なくとも1種の脂肪族アルコールを含むことができる。疎水性ポリマーは、例えば疎水性セルロースエーテルであってよく、好ましくはエチルセルロースであってよい。脂肪族アルコールとして、1つは、例えばラウリルアルコール、ミレスチルアルコール(myrestyl alcohol)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、セリルアルコールおよび/またはセチルアルコールを使用することができる。
【0029】
代わりとしてまたは追加として、医薬剤形の持続放出特性は、コーティングによって達成することができる。そのようなコーティングは、例えばポリマーから、好ましくはエチルセルロースおよび/またはアクリルポリマー樹脂から作ることができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、医薬剤形は、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩の即時放出相を含んでよい。これはまた、医薬剤形を全体として制御放出剤形、好ましくは持続放出剤形とみなすことができる場合の事例でありうる。
【0031】
本発明による剤形は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤および/または散剤として調剤することができる。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明による剤形は、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも12時間または少なくとも24時間の治療有効性をもたらす。したがって、それらは1日3回、1日2回または1日1回のみ投与されうる。
【0033】
そのより好ましい実施形態のうちの1つでは、本発明は、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む、クローン病を治療するための医薬剤形に関する。オキシコドンおよびナロキソンの特に好ましい薬学的に許容される塩は、それらの塩酸塩である。
【0034】
そのような剤形は、5から160mgの間のオキシコドンまたはその薬学的に許容される塩および2.5から40mgのナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0035】
典型的には、これらの剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを、オキシコドン:ナロキソンが5:1、4:1、3:1、好ましくは2:1の重量比で含む。
【0036】
特に好ましい実施形態では、剤形は、10mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および5mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩、20mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および10mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩、または40mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および20mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩を含むことができる。
【0037】
オキシコドンおよびナロキソンまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む上記の剤形は、言うまでもなく、制御放出剤形として、好ましくは持続放出剤形として調剤することもできる。この目的のために、剤形は、例えば以上に言及されているようなマトリックスベースのおよび/またはコーティングベースの持続放出剤形でありうる。
【0038】
その好ましい実施形態のうちの1つでは、そのような持続放出剤形は、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を、以下のインビトロ溶出速度で、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の40〜65重量%、
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を放出する。
【0039】
本発明による、オキシコドンおよびナロキソンまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬剤形は、少なくとも12時間の治療有効性をもたらすことが好ましい。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明による、オキシコドンおよびナロキソンまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬剤形は、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約1から約17時間に、約2から約15時間に、約3から約8時間にまたは約4から約5時間に平均tmaxをもたらす。
【0041】
そのような剤形はまた、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約100ng・h/mLから約600ng・h/mL、約400ng・h/mLから約550ng・h/mLまたは約450から約510ng・h/mLの平均AUCt値をもたらすことができる。
【0042】
さらに別の実施形態では、そのような剤形は、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約5ng/mLから約50ng/mL、約30ng/mLから約40ng/mLまたは約35ng/mLの平均Cmaxをもたらす。
【0043】
本発明は、その最も好ましい実施形態のうちの1つでは、クローン病を治療するための医薬剤形であって、前記医薬剤形が、オキシコドン塩酸塩およびナロキソン塩酸塩を2:1の重量比で含み、オキシコドン塩酸塩は10から40mgの量で存在しており、ナロキソン塩酸塩は5から20mgの量で存在しており、前記医薬剤形が、持続放出拡散マトリックスをベースとすることが好ましい持続放出剤形であり、前記持続放出剤形が、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を、以下のインビトロ溶出速度で、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でオキシコドンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
4時間でオキシコドンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の70〜95重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でナロキソンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でナロキソンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の70〜95重量%および
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を放出する医薬剤形に関する。
【0044】
本発明はまた、クローン病によって苦しめられているヒト対象を、上記の剤形の1種を投与することによって治療する方法に関する。
【0045】
本発明は、ヒトにおけるクローン病を治療するための医薬剤形の製造における、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0046】
「クローン病の治療」または「クローン病を治療する」という表現は、その疾患自体のみの治療に限定されているものと解釈されるべきではない。これらの表現は、クローン病に関連する、例えば、けいれん性の腹痛、上強膜炎またはブドウ膜炎などの疼痛、けいれん、慢性下痢などの下痢、便秘、膨満、嘔吐、悪心、痒み、および発熱、成長遅延、食欲不振、体重減少などの全身症状のような任意の症状の治療も含むという意味において使用される。さらに、クローン病は、血清反応陰性脊椎関節症などのリウマチ性疾患によって誘発される症状または皮膚、血液および内分泌系の疾患に現れる症状に関連している可能性がある。また、それは、卒中、ミオパシー、頭痛およびうつ病などの神経系の合併症を伴う可能性がある。また、いわゆる「小腸細菌異常増殖症候群」は、クローン病に関連する症状でありうる。
【0047】
したがって、1つの好ましい実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物におけるクローン病に関連する症状を治療するための、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬または薬学的に許容される塩と組み合わせて含む医薬剤形に関する。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、ヒトまたは動物におけるクローン病に関連する主要な症状としての疼痛を治療するための、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬または薬学的に許容される塩と組み合わせて含む医薬剤形に関する。
【0049】
上記の好ましい医薬剤形の製造が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物がクローン病を治療するために使用することができるという知見に基づいている。
【0051】
本発明の実施形態のいくつかをさらに詳細に説明する前に、以下の定義を紹介する。
【0052】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」および「an」は、その状況が明らかに他のものを規定しない限り、それぞれの複数形も含む。
【0053】
本発明の文脈において、「約」および「およそ」という用語は、当業者であれば問題となっている特徴の技術的な効果をさらに確実にするためのものと理解する、レベルまたは間隔の正確さを表す。数値に関しては、用語は典型的に±10%、好ましくは±5%の偏差を示す。
【0054】
「含む(comprising)」という用語は、限定していないことが理解されるべきである。しかし、本発明の目的のために、「からなる(consisting of)」という用語は、「含む(comprising)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下の本明細書において、ある群が少なくともある特定の数の実施形態を含むことを定義される場合、これは、これらの実施形態のみからなることが好ましい群を包含することも意味される。
【0055】
以上に言及されているように、本発明は、ヒト対象におけるクローン病を治療するための、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩を含む医薬製剤に関する。
【0056】
本発明はまた、ヒトまたは動物におけるクローン病を治療するための医薬剤形の製造における、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0057】
第3の態様では、本発明は、ヒト対象におけるクローン病を治療する方法であって、前記対象に、オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することによる方法に関する。
【0058】
本発明による医薬剤形は、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩を、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて含むため、前記医薬剤形は、有利なことに、前記少なくとも1種の作動薬および前記少なくとも1種の拮抗薬の同時投与が可能となる。したがって、本発明の剤形がヒト対象に投与される場合、少なくとも1種の作動薬および少なくとも1種の拮抗薬は、逐次的にではなく同時に投与される。
【0059】
本発明の文脈において、「オピオイド作動薬」という用語は、当技術分野において知られているものとして使用される。本発明の目的のために、それは「オピオイド鎮痛薬」という用語と同等であると考えられる。典型的には、医薬活性剤は、それが世界保健機関(WHO)の解剖治療化学分類(ATC分類)によるオピオイド鎮痛薬のClass NO2Aに属する場合、オピオイド鎮痛薬またはオピオイド作動薬であると考えられる。好ましくは、オピオイド作動薬は、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、プロポキシフェン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジンおよびそれらの誘導体、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドール、ヒドロコドンを含む群から選択することができる。本発明による使用可能な鎮痛薬のさらなる例には、メペリジン、オキシモルホン、アルファプロジン、アニレリジン、デキストロモラミド、メトポン、レボルファノール、フェナゾシン、エトヘプタジン、プロピラム、プロファドール、フェナンプロミド、チアンブテン、フォルコデイン、コデイン、ジヒドロコデイノン、フェンタニール、3−trans−ジメチルアミノ−4−フェニル−4−trans−カルボエトキシ−A’−シクロヘキセン、3−ジメチルアミノ−O−(4−メトキシフェニル−カルバモイル)−プロピオフェノンオキシム、(−)β−2’−ヒドロキシ−2,9−ジメチル−5−フェニル−6,7−ベンゾモルファン、(−)2’−ヒドロキシ−2−(3−メチル−2−ブテニル)−9−メチル−5−フェニル−6,7−ベンゾモルファン、ピリニトラミド、(−)α−5,9−ジエチル−2’ヒドロキシ−2−メチル−6,7−ベンゾモルファン、エチル1−(2−ジメチルアミノエチル)−4,5,6,7−テトラヒドロ−3−メチル−4−オキソ−6−フェニル−インドール−2−カルボキシレート、1−ベンゾイルメチル−2,3−ジメチル−3−(m−ヒドロキシ−フェニル)−ピペリジン、N−アリル−7α(1−R−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−6,14−エンド−エタノテトラヒドロノルオリパビン、(−)2’−ヒドロキシ−2−メチル−6,7−ベンゾモルファン、ノルアシルメタドール、フェノペリジン、α−d1−メタドール、α−1−メタドール、β−d1−アセチルメタドール、α−1−アセチルメタドールおよびβ−1−アセチルメタドールが挙げられる。本発明による好ましいオピオイド作動薬は、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、モルヒネ、コデイン、ジヒドロコデイン、オキシモルホンおよびフェンタニールである。オピオイド作動薬のオキシコドンが特に好ましい可能性がある。
【0060】
ブプレノルフィンは、混合性オピオイド作動薬/拮抗薬として分類することができる。しかし、本発明に関しては、ブプレノルフィンはオピオイド作動薬のみとみなされうることを留意することが重要である。したがって、一実施形態では、本発明による医薬剤形は、ブプレノルフィンを、混合性オピオイド作動薬/拮抗薬という意味において、少なくとも1種のオピオイド作動薬としておよび少なくとも1種のオピオイド拮抗薬として含まないことがあるが、ブプレノルフィンを、少なくとも1種のオピオイド作動薬のみとして含むことがある。別の実施形態では、本発明による医薬剤形は、ブプレノルフィンを全く含まなくてよい。
【0061】
本発明によると、「オピオイド拮抗薬」は、オピオイド作動薬の効果を打ち消すような化合物を含む。そのような化合物は、WHOのATC分類中に見つけることもできる。本発明によるオピオイド拮抗薬は、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソネアジネン(naloxoneazinen)、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソールおよび6−β−ナルトレキソールを含む群から選択することができる。オピオイド拮抗薬のナロキソンが特に好ましい可能性がある。
【0062】
オピオイド作動薬および拮抗薬は、本発明の医薬剤形の中で遊離塩基として存在しうる。しかし、オピオイド作動薬または拮抗薬は、その薬学的に許容される塩の形態で存在することもある。そのような塩には、例えば塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸水素塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩などが含まれる。医薬活性剤はまた、リチウム、ナトリウムおよびカリウムを含むアルカリ金属の金属塩などの塩基付加塩として存在しうる。医薬活性化合物は、言うまでもなく、遊離塩基の誘導体の形でも存在しうる。そのような誘導体には、例えばエステルが含まれる。
【0063】
オキシコドンがオピオイド作動薬として使用され、ナロキソンがオピオイド拮抗薬とみなされる場合、その塩酸塩を使用することが好ましい可能性がある。
【0064】
本発明の好ましい実施形態のうちの1つでは、医薬剤形は、オピオイド作動薬および/または拮抗薬の制御放出を確実にするように調剤することができる。それ故、そのような剤形を、制御放出(CR)医薬剤形と呼ぶことができる。
【0065】
「制御放出剤形」という用語は、典型的には、医薬剤形が即時放出(IR)医薬剤形ではないことを強調するために使用される。経口即時放出医薬剤形は、典型的には、短い投与時間内に実質的にすべての医薬活性剤を放出する。IR剤形は投与後30分以内に医薬活性剤の70重量を放出することが、当技術分野において一般に認められている定義である。放出は、典型的には、以上に言及されているようなヨーロッパ薬局方パドル試験を使用して測定される。
【0066】
制御放出剤形は、剤形が身体のある特定の部位、すなわち、胃または胃腸管に到達した後、活性剤のみを放出する医薬剤形を指すことができる。追加としてまたは代わりとして、それは、長期間にわたって活性剤を放出する医薬剤形を指すことができる。後者の場合には、制御放出剤形は、持続放出剤形と呼ばれている。
【0067】
医薬剤形からの医薬活性剤の部位特異的な制御放出は、例えば、剤形が人体を通過していく際に出会う液体のpH値に依存して放出されることによって達成されうる。そのようなpH依存性放出によって、剤形は活性剤を胃の中ではなく胃腸管の中でのみ放出することができうる。
【0068】
「持続放出」という用語は、医薬活性化合物が長期間にわたって剤形から放出されることを指すが、必ずしも確定した場所で放出されるとは限らない。
【0069】
言うまでもなく、上記の原則を組み合わせることができる。例えば、医薬剤形は、活性剤が胃腸管の中でのみ放出されることを確実にするために、腸溶性コーティングを含むことができる。しかし、胃腸を通過する間の放出は、持続放出の特性を示しうる。
【0070】
一般に、本発明の文脈において、持続放出は、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬が、少なくとも2時間の期間にわたって医薬剤形から放出されることを意味する。言うまでもなく、剤形からの医薬活性剤の放出は、少なくとも4時間、少なくとも6時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間または少なくとも14時間の期間にわたって行われうる。放出は、以上に言及されているようなヨーロッパ薬局方パドル試験によって測定することができる。
【0071】
インビトロ放出データの文脈における、ヨーロッパ薬局方パドル試験または米国薬局方バスケット試験への言及は、測定の方法のみに言及しているが、仮にそのような評価アプローチがこれらの薬局方に言及されていても、測定されたデータを評価する方法については全く言及していない。したがって、他に指示されていない限り、示された放出値は、例えば6つの測定値の平均値に合致しない。
【0072】
本発明の好ましい実施形態は、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の持続放出を提供する、上記のような医薬剤形およびそれらの使用に関する。
【0073】
持続放出特性は、異なる製剤アプローチによって達成することができる。例えば、医薬剤形は、持続放出マトリックスを含むことができ、その中に医薬活性剤が剤形の持続放出性を達成するために組み込まれる。
【0074】
別の実施形態では、コーティングアプローチは、医薬剤形の持続放出特性を確実にするために使用されうる。
【0075】
活性剤の持続放出を達成するためのこれらのアプローチ、すなわち、マトリックスの使用またはコーティングの使用は、言うまでもなく、組み合わせることもできる。当業者は、剤形の持続放出を達成するための他の技術的なアプローチをさらに承知しており、これには、例えば浸透圧によって推進力を得る持続放出剤形が含まれる。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明は、作動薬および/またはオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の持続放出を達成するためのマトリックスを含む医薬剤形を企図する。この目的のために、マトリックスは、剤形内に存在するかなりの量のオピオイド作動薬および拮抗薬を含んでよい。典型的には、マトリックス系が使用される場合、オピオイド作動薬またはオピオイド拮抗薬などの医薬活性剤は、マトリックス形成物質の至る所に分散される。
【0077】
マトリックス形成物質は、侵食性マトリックス、拡散マトリックスまたは侵食性もしくはおよび拡散マトリックスの特性を組み合わせたマトリックス系を達成するために選択することができる。持続放出マトリックスに包含するのに適した物質には、以下のものが含まれる。
(a)ゴム糊、セルロースエーテル、アクリル樹脂およびタンパク質由来の物質などの親水性または疎水性ポリマー。これらのポリマーのうちで、セルロースエーテル、特にアルキルセルロースが好ましい。調製物は、好都合なことに、1%から80%(重量で)の間の1種または複数種の親水性または疎水性ポリマーを含むことができる。
(b)脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸のグリセリルエステル、鉱物油および植物油ならびにワックスなどの、消化可能な、長鎖の(C〜C50、特にC12〜C40)、置換または非置換の炭化水素。25から90℃の間の融点を有する炭化水素が好ましい。これらの長鎖炭化水素物質のうちで、脂肪(脂肪族)アルコールが好ましい。調製物は、好都合なことに、60%(重量で)までの少なくとも1種の消化可能な、長鎖の炭化水素を含むことができる。
(c)ポリアルキレングリコール。調製物は、60%(重量で)までの1種または複数種のポリアルキレングリコールを含むことが適切でありうる。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明において記載されているような医薬剤形は、医薬剤形からのオピオイド作動薬および拮抗薬の持続放出を達成するための拡散マトリックスを使用する。
【0079】
この目的のために、拡散マトリックスは、疎水性ポリマーおよび/またはC12〜C36脂肪族アルコールから作ることができる。
【0080】
疎水性ポリマーに関しては、疎水性セルロースエーテルおよび特にエチルセルロースの使用が好ましい可能性がある。
【0081】
脂肪族アルコールに関しては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルステアリルアルコール、セリルアルコールおよび/またはセチルアルコールの使用が特に考えられる。ステアリルアルコールの使用が特に好ましい。特に好ましい実施形態は、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の持続放出性が、エチルセルロースなどの疎水性ポリマーおよび脂肪族アルコールから作られる拡散マトリックスによって提供される医薬剤形に関する。例えばエチルセルロースおよびステアリルアルコールの前述の組合せから作られうる、本発明の好ましい実施形態のいくつかのいくつかのマトリックスは、実質的に膨潤不可能な拡散マトリックスである。
【0082】
「実質的に膨潤不可能な拡散マトリックス」という用語は、マトリックスが実質的に非侵食性であるということ、すなわち、マトリックスのサイズが流体との接触時に顕著には増加しないということを示す。典型的には、実質的に膨潤不可能な拡散マトリックスの体積は、水溶液との接触時の体積が、最大100%まで、好ましくは最大75%まで、より好ましくは最大50%まで、さらに好ましくは最大25%まで、最も好ましくは最大10%までまたは最大5%まで増加する。
【0083】
医薬剤形は、疎水性ポリマーを含み、エチルセルロースなどの疎水性セルロースエーテルが持続放出(膨潤不可能な)拡散マトリックスを提供するための唯一の成分または成分の1つとして好ましく、5から20%重量の間の、好ましくは6から15重量%の間の、より好ましくは7から10重量%の間の量のそのようなポリマーを使用する。約8重量%の量が特に好ましい可能性がある。百分率は、医薬剤形の総重量に対するマトリックス形成物質の量を示す。
【0084】
医薬剤形は、持続放出拡散マトリックスを提供するための唯一の成分または成分の1つとして脂肪族アルコールを含み、10から40重量%の間の、好ましくは15から35重量%の間の、より好ましくは17から25重量%の間の量の脂肪族アルコールをマトリックス中に使用する。約20重量%の量が特に好ましい可能性がある。これらの百分率は、この場合も、剤形の総重量に対する脂肪族アルコールの量を示す。
【0085】
医薬剤形が、放出に影響を与える構造単位としてマトリックスを含む場合、医薬剤形は、形およびサイズという点から見て、マトリックスと実質的に同一であってよい。
【0086】
当業者は、そのような持続放出マトリックスが、他の薬学的に許容される成分、および賦形剤、滑沢剤、充填剤、結合剤、流動化剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、pH調整剤、粘着防止剤などの医薬分野における従来の添加剤を含んでもよいことをさらに承知している。これらの添加剤は、典型的には、医薬剤形の全体的な放出挙動に実質的な影響を全く与えない。
【0087】
充填剤の典型例には、ラクトース、グルコース、サッカロース、デンプンおよびそれらのヒドロール状態、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウムなどのカルシウム塩が含まれる。顆粒化助剤には、とりわけポビドンが含まれる。流動化剤および滑沢剤には、とりわけ高分散シリカ、タルカム、酸化マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムが含まれる。マトリックスベースの剤形は、例えば化粧品用コーティングを含んでよい。
【0088】
以上に言及されているように、医薬剤形の持続放出特性は、剤形からの活性剤の放出を抑制するフィルムコーテイングによって達成されてもよい。この目的のために、医薬剤形は、オピオイド作動薬および/またはオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩に関連する担体を含むことができる。例えば、本発明者は、医薬活性剤が上におよび/または中に配置されているノンパレイユビーズ、砂糖ビーズなどを使用することができる。次いで、そのような活性を伴う担体は、持続放出特性をもたらすコーティングで上塗りされうる。適した制御放出コーティング物質が含まれる。当業者であれば、持続放出特性を達成するために使用することができる他の製剤原則を承知している。
【0089】
医薬剤形を持続放出剤形とみなすことができるかどうかという疑問に関しては、剤形の全体としての放出挙動を考慮しなければならないということが理解されるべきである。したがって、持続放出剤形は、活性剤の持続放出特性をもたらす、医薬活性剤を有するマトリックスを含むことができ、その上に、剤形の投与後に即時放出される活性剤の層が配置される。そのような即時放出相は治療効果を速く達成することができうるが、治療効果が単に即時放出剤形のみの場合に維持されるよりも長い期間にわたって維持されるように、持続放出マトリックスは、活性剤が長期間にわたって放出されることを確実にする。
【0090】
このことは、仮に剤形が即時放出相を含むとしても、剤形はやはり持続放出特性をもたらすものとみなすことができるということを説明している。
【0091】
好ましい実施形態では、本発明は、オピオイド作動薬および/またはオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩の持続放出を提供するのみならず、活性剤が独立した不変の様式で放出されることも確実にすることができる。
【0092】
独立した放出とは、少なくとも2つの活性化合物が存在すると仮定すれば、一方の化合物の絶対量の変化は、他方の化合物の放出プロフィールに影響を及ぼさず、その化合物の量は変化しないことを意味する。このことは、例えば、10mgオキシコドンおよび5mgナロキソンを有するオキシコドン/ナロキソンの組合せに関して観察される場合のオキシコドンの放出プロフィールは、仮に同じ製剤形態を有する対応する調製物が10mgオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む場合でも、実質的には変化しないことを意味する。言うまでもなく、比較とは、典型的には、実質的に等しい組成の調製物がそれらの放出プロフィールに関して比較される状況を指す。実質的に等しい組成の剤形は、異なる量の活性化合物を有するが、その他の点では、放出挙動に本質的に影響を及ぼす、組成物の成分に関して、基本的には同じである。例えば10mgオキシコドンおよび5mgナロキソンを含む調製物が、10mgオキシコドンおよび10mgナロキソンを含む調製物と比較される場合、ただし両方の調製物が同じ総重量を有するならば、放出挙動に典型的に影響を及ぼさない製剤中の成分によってナロキソン量における差異が置換される場合には、オキシコドンに関して実質的に同じ放出プロフィールをもたらす。そのような成分は、ラクトースなどの充填剤でありうる。特定の時点における放出が、2つの調製物の間で20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の相違がある場合、1つの化合物についての放出プロフィールは、実質的に同じであると考えられる。この比較のために、本発明者は、考えられる各含量についての6つの剤形の測定によって得られるような、その特定の時点における平均放出値を考える。
【0093】
本発明の文脈において、不変の放出とは、仮に医薬剤形内のその活性剤の絶対量が変化しても、活性剤の放出プロフィールが実質的に同じであるということを意味する。したがって、例えば10mgのオキシコドンおよび5mgのナロキソンを含む剤形が、20mgのオキシコドンおよび5mgのナロキソンを含む剤形と比較される場合、オキシコドンの放出は、どちらの場合でも実質的に同じである。
【0094】
独立した放出の問題に関しては、言うまでもなく、これは実質的に同じ組成の組成物が比較されることを暗示しており、活性剤の量におけるいずれの変化も、医薬剤形の放出挙動に本質的に影響を及ぼさない成分によって置き換えられることを意味する。活性剤の量が2つの組成物の間で異なるような活性剤の放出プロフィールは、この場合も、確定した時点における放出値が、2つの組成物について20%を超える、好ましくは15%を超える、より好ましくは10%を超える、最も好ましくは5%を超える相違がない場合、実質的に同じであると考えられる。この比較のために、本発明者は、考えられる各含量についての6つの剤形の測定によって得られるような、その特定の時点における平均放出値を考える。
【0095】
当業者は、本発明による、オピオイド作動薬または拮抗薬またはそれらの薬学的に許容される塩を含む剤形は、噴霧造粒または押出成形を含む異なる製造方法によって製造することができることを承知している。押出成形による製造は、連続工程が可能である場合には、本発明の文脈において好ましい可能性がある。
【0096】
1つの好ましい実施形態では、医薬調製物またはその予備段階は、少なくとも2つのスクリューを備える同方向または異方向回転押出機を用いた溶融押出によって製造される。これらの押出機は、混練する要素を備えることもある。
【0097】
一般に、押出成形は、医薬品製造技術において確立された製造工程であり、当業者には知られている。当業者は、押出成形工程中、供給速度、スクリュー速度、異なる押出機区域(使用可能な場合には)の加熱温度、含水量などの種々のパラメータが、所望の特性を有する製品を製造するために変化されうることを承知している。実施例部分は、押出成形によって製造されている、本発明による調製物の多数の例を提供している。
【0098】
前述のパラメータは、使用される特定のタイプの押出機によって決まる。押出成形中、本発明の製剤の成分が溶融する加熱域の温度は、特に異方向回転2軸スクリュー押出機(Leistritz ZSE Micro 18 GGLなど)が使用される場合、約40から約120℃の間、好ましくは約50から約100℃の間、より好ましくは約50から約90℃の間、さらに好ましくは約60から約80℃の間でありうる。当業者は、すべての加熱域を加熱しなければならないわけではないことをよく承知している。特に、成分が混合される供給装置の後方は、約25℃に冷却されることが望ましい。押出機のダイの温度はまた、恐らく好ましい値である約60℃を有する約50から約80℃の範囲に調節され、下げられうる。ノズルのバールは、例えば約1から10バールの範囲であってよい。スクリュー速度は、特に異方向回転2軸スクリュー押出機(Leistritz Micro 18 GGLなど)が使用される場合、約100から約500回転/分(rpm)の間、好ましくは約100から約250rpmの間、より好ましくは約100から約200rpmの間で変化させてよい。ノズルの幾何学的配置および直径は、必要に応じて選択されうる。一般に使用される押出機のノズルの直径は、典型的には、1から10mmの間、好ましくは2から8mmの間、最も好ましくは3から5mmの間である。異なる押出機は、それらのセットアップに関して異なる可能性がある。本発明の調製物の製造のために使用することができる押出機のスクリューの長さ対直径の比は、典型的には約40:1である。
【0099】
一般に、加熱域の温度は、医薬活性化合物を破壊しうる温度が生じないように選択されなければならない。供給速度およびスクリュー速度は、医薬活性化合物が、持続された好ましくは独立した不変の様式で、押出成形によって製造される調製物から放出されるように選択される。例えば供給速度を増加させる場合、同じ遅延を確保するために、それに応じてスクリュー速度を増加させなければならない可能性がある。
【0100】
特に好ましい実施形態では、本発明者は、ダイプレートを備え、混練する要素を備えていないLeistritz ZSE Micro 18またはLeistritz Micro 27などの、パドル手段を備えていない異方向回転2軸スクリュー押出機を使用する。これらの実施形態に関しては、本発明による製剤の製造のために使用される成分の供給速度は、約1〜3kg/hの間、好ましくは約1〜2kg/hの間である可能性がある。第1の加熱(供給)域内の温度は、約20から約30℃でありうる。第2の加熱域内の温度は、約50℃から約60℃でありうる。他の加熱域の数は、8区域まで拡張することができ、その温度は、約55°から約85℃の間であってよい。スクリュー速度は、約1から約500rpmの間であることができる。ノズルの直径は、約1から約10mmの間であることができる。
【0101】
本発明による製剤の押出成形による製造は、オピオイド作動薬およびオピオイド拮抗薬を含む製剤を有することが好ましい。特に好ましいのは、オキシコドンおよびナロキソンを含む、本発明による製剤の製造であり、作動薬と拮抗薬との好ましい重量比は、最大25:1から、好ましくは20:1、15:1、10:1、5:1および2:1の範囲内の重量比である。2:1の比が特に好ましい。
【0102】
特に好ましい実施形態は、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩をオピオイド作動薬としておよびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩をオピオイド拮抗薬として含む、クローン病を治療するための医薬剤形およびそれらの使用に関する。薬学的に許容される塩は、上記リストから選択されてよい。しかし、塩酸塩の使用が特に好ましい可能性がある。
【0103】
オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩の量は、典型的には、5から160mgの間、好ましくは10から80mgの間、より好ましくは20から40mgの間で変化する。ナロキソンの量は、2.5から80mgの間、好ましくは5から40mgの間、より好ましくは10から20mgの間で変化する。
【0104】
オキシコドンおよびナロキソンの間の重量比は、5:1、好ましくは4:1、より好ましくは3:1、特に好ましくは2:1である。
【0105】
オキシコドンまたはその塩酸塩およびナロキソンまたはその塩酸塩を2:1の比で含む医薬剤形は、クローン病を治療するためには特に好ましい。したがって、これらの剤形は、10mgのオキシコドンもしくはオキシコドン塩酸塩および5mgのナロキソン(もしくは対応する量の塩酸塩)、20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソン(もしくは対応する量の塩酸塩)、または40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソン(もしくは対応する量の塩酸塩)を含むことができる。20mgオキシコドンおよび10mgのナロキソン(または対応する量の塩酸塩)の投薬含量が、患者によるそれらの評価を考慮すると特に好ましい可能性がある。
【0106】
言うまでもなく、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む、本発明による医薬組成物は、次いで、上記のような持続放出挙動をもたらすために調剤されうる。上記に示された量の活性剤および上記に示された重量比のオキシコドンまたはその塩およびナロキソンまたはその塩を有する、オキシコドンおよびナロキソンの組合せまたはその薬学的に許容される塩の状況において、持続放出特性をもたらすための拡散マトリックスを使用することが特に好ましい可能性がある。そのような拡散マトリックスは、好ましくは膨潤不可能であってよく、上記のように、例えば疎水性セルロースエーテルおよび好ましくはエチルセルロースを含む疎水性ポリマーおよび/または脂肪酸から作ることができる。マトリックス形成成分として、例えばエチルセルロースおよび少なくとも1種の脂肪族アルコールの組合せが好ましい可能性がある。
【0107】
エチルセルロースおよび脂肪族アルコールが、持続放出マトリックスの、放出に影響を及ぼす成分として使用される場合、それらは医薬剤形の中に上記の量だけ存在しうる。
【0108】
仮に上記の組成物の持続放出拡散マトリックスを含む剤形が好ましい可能性があるとしても、本発明はまた、オキシコドンおよびナロキソンまたはその塩を含み、その持続放出特性が、クローン病を治療する状況において、コーティングによってもたらされる医薬剤形を確実に考慮する。他の持続放出技術も考慮されるべきである。
【0109】
オキシコドンおよびナロキソンまたはその塩を上記の量および比で含む医薬剤形は、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、以下のインビトロ溶出速度、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でオキシコドンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でオキシコドンまたはその前記塩の60〜80重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の75〜95重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でナロキソンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でナロキソンまたはその前記塩の60〜90重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の75〜95重量%および
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を示すことが好ましい可能性がある。
【0110】
これらの放出値は、剤形が、10mgのオキシコドンおよび5mgのナロキソンまたは20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソン(もしくは等量のその対応する塩)などの20mgまでのオキシコドンを含む場合に適用されることが好ましい。
【0111】
医薬剤形はまた、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、以下のインビトロ溶出速度、
15分でオキシコドンまたはその塩の10〜30重量%、
2時間でオキシコドンまたはその塩の40〜60重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその塩の10〜30重量%、
2時間でナロキソンまたはその塩の40〜60重量%、
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を示すことができる。
【0112】
これらの放出速度は、剤形が、40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソン、または80mgのオキシコドンおよび40mgのナロキソン(もしくは等量のその対応する塩)などの20mg以上のオキシコドンを含む場合に適用されることが好ましい。
【0113】
別の実施形態では、医薬剤形は米国薬局方バスケット法に従って、pH1.2で、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、以下のインビトロ溶出速度、
15分でオキシコドンまたはその塩の15〜30重量%、
2時間でオキシコドンまたはその塩の45〜70重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
12時間でオキシコドンまたはその前記塩の90重量%以上、
15分でナロキソンまたはその塩の15〜30重量%、
2時間でナロキソンまたはその塩の45〜70重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上、
12時間でナロキソンまたはその前記塩の90重量%以上
を示すことができる。
【0114】
クローン病の治療のために使用することができ、オキシコドンおよびナロキソンまたはその塩を含む、本発明による医薬剤形は、好ましくは少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間の治療有効性を可能にするように調剤されうる。
【0115】
この目的のために、本発明者は、以上に言及されている剤形に頼ることが好ましい可能性がある。したがって、オキシコドンおよびナロキソン(または好ましくはそれらの塩酸塩)を含み、これらの化合物を持続された様式で放出する剤形が、この目的のためには好ましい。2:1というオキシコドンとナロキソン(またはそれらの塩酸塩)との重量比が、特に好ましい。20mgオキシコドンおよび10mgナロキソンなどの、前述の量も特に好ましい可能性がある。これらの剤形は、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、以下のインビトロ溶出速度、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でオキシコドンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
4時間でオキシコドンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の70〜95重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でナロキソンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でナロキソンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の70〜95重量%および
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を示すことができる。
【0116】
本発明のより好ましい実施形態のうちの1つは、オキシコドン塩酸塩およびナロキソン塩酸塩を、オキシコドン:ナロキソンが2:1の重量比で、好ましくは20mgオキシコドンおよび10mgナロキソンの(または等量の対応する塩の)量で含み、エチルセルロースなどの疎水性セルロースエーテルおよび/または脂肪族アルコールから作られることが好ましい可能性がある持続放出マトリックスによってもたらされる持続放出特性を示す剤形を有し、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、前述の以下のインビトロ溶出速度、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でオキシコドンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
4時間でオキシコドンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の70〜95重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でナロキソンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でナロキソンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の70〜95重量%および
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
をもたらす医薬剤形に関する。
【0117】
前述の剤形は、上記のように、造粒または押出成形によって製造することができる。押出成形に関しては、前述のパラメータを使用することが好ましい可能性がある。
【0118】
オキシコドンおよびナロキソンを含む剤形は、とりわけそれらの薬物動態パラメータを特徴とすることもできる。
【0119】
濃度勾配または血漿曲線を、Cmax、tmaxおよびAUCなどのパラメータによって描くことができる。これらのパラメータは、特定の薬物製剤の薬物動態特性を記載する際に重要である。
【0120】
max値は、活性剤、すなわちオキシコドンおよび/またはナロキソンの(またはそれらの塩の)最大血漿中濃度を示す。
【0121】
max値は、Cmax値に到達する時点を示す。言い換えれば、tmaxは、最大実測血漿中濃度の時点である。
【0122】
AUC(曲線下面積)値は、濃度曲線の面積に相当する。AUC値は、血液循環中に吸収される活性剤、すなわちオキシコドンおよびナロキソンの総量に比例し、それ故これはバイオアベイラビリティーの尺度である。
【0123】
AUCt値は、投与時から最終測定可能濃度までの血漿中濃度−時間曲線下面積の値である。AUCt値は、通常、線形台形法を使用して計算される。可能な場合には、終末ロック線形(lock−linear)相にあると決定された点を使用して、終末相速度定数であるLambdaZが推定される。見かけの終末相半減期であるt1/2Zは、一般に、ln2のLambdaZに対する比から決定される。
【0124】
最終測定点と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終実測血漿中濃度(Clast)のLambdaZに対する比から計算することができる。次いで、これをAUCtに加えて、投与時から無限大までの血漿中濃度−時間曲線下面積であるAUCinfが得られる。
【0125】
本発明の目的ために、「バイオアベイラビリティー」という用語は、オキシコドンおよびナロキソンなどの活性剤が単位剤形から吸収される程度と定義される。
【0126】
本発明の目的ために、T1/2という用語は、オピオイド作動薬、好ましくはオキシコドンおよびオピオイド拮抗薬、好ましくはナロキソンの吸収可能用量の2分の1が血漿に移動するのに必要な時間の量と定義される。この値は、「見かけの」吸収半減期よりはむしろ、「真の」値(排出過程の効果を考慮に入れることになる)として計算することができる。
【0127】
血漿曲線を描くパラメータは、臨床試験において、最初に、多数の被験者にオキシコドンおよびナロキソンなどの活性剤を1回だけ投与することによって得ることができる。次いで、個々の被験者の血漿値を平均して、例えば、平均AUC値、Cmax値およびtmax値が得られる。本発明の文脈において、AUC、Cmaxおよびtmaxなどの薬物動態パラメータは、平均値を指す。さらに、本発明の文脈において、AUC、Cmax、tmax、鎮痛有効性についての値などのインビボパラメータは、ヒト患者および/または健常ヒト対象への定常状態での投与後または単回用量の投与後に得られたパラメータまたは値を指す。
【0128】
平均tmax、CmaxおよびAUCなどの薬物動態パラメータが健常ヒト対象について測定される場合、それらは、典型的には、約16から24人の健常ヒト対象の試験集団において、経時的な血漿値の進展を測定することによって得られる。欧州医薬品審査庁(European Agency for the Evaluation of Medicinal Products)(EMEA)または食品医薬品局(FDA)などの規制機関は、通常、例えば20または24人の被験者から得られたデータを受理する。しかし、より少数の参加者が関与する初期の試験も容認されうる。
【0129】
この文脈において、「健常」ヒト対象という用語は、身長、体重および血圧などの生理学的パラメータなどに関して平均的な値を有する、通常は白人系の典型的な男性または女性を指す。本発明の目的のための健常ヒト対象は、日米EU医薬品規制調和国際会議(International Conference for Harmonization of Clinical Trials)(ICH)の勧告に基づき、かつ準拠する組み入れ基準および除外基準に従って選択される。本発明の目的のために、健常対象は、実施例7に説明されているような組み入れ基準および除外基準に従って特定することができる。
【0130】
したがって、例えば、組み入れ基準は、18歳以上から45歳以下の間の年齢;19〜29kg/mの範囲内のBMIならびに男性については60〜100kgおよび女性については55〜90kgの範囲内の体重;ただし、女性は、授乳、妊娠していない者でなければならず、被験薬を服用する前の24時間以内に尿中β−hCG妊娠検査陰性を呈しなければならない;病歴、身体検査、臨床検査、バイタルサインおよびECGなどに関して顕著に異常な所見がないことによって証明される概ね良好な健康状態を含む。
【0131】
除外基準は、例えば、被験薬の初回投与の3カ月以内に任意の治験薬またはプラセボを受けていること;被験薬の初回投与前30日以内の任意の重大な病気;病歴、身体検査または臨床検査分析についての予備試験スクリーニングで確認された臨床的に重要な任意の異常;被験薬の初回投与前、21日のうちに処方箋が必要な任意の医薬品(閉経後の女性に対するHRTおよび避妊薬を除く)または7日のうちに制酸薬、ビタミン類、ハーブ製品および/またはミネラルサプリメントを含む処方箋が必要でない医薬品を使用していること;胃腸薬吸収(例えば、胃内容排出遅延、吸収不良症候群)、分布(例えば、肥満)、代謝または排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)に干渉することが知られている併発病状;治験責任医師の意見で、試験を安全に完了する対象の能力を脅かす、病歴または併発病状;対象が薬物治療を必要とした発作障害の病歴;1日に5本を超える現行の喫煙歴;DSM−IV基準に従って、現在または過去の薬物乱用歴またはアルコール乱用歴の徴候を有する対象;1日に2本もしくはそれ以上のアルコール飲料の定期的な消費を報告した対象またはスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコールレベルを有する対象;被験薬の初回投与前3カ月のうちの、500mLを超える血液もしくは血液製剤の提供または他の大量失血;スクリーニング時に採取した尿の検体での、エタノール、アヘン剤、バルビツール酸塩、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピン系薬およびカンナビノイドについての予備試験スクリーニングにおける任意の陽性結果;オキシコドン、ナロキソンまたは関連化合物に対して感受性であると知られていることなどを含む。
【0132】
平均tmax、CmaxおよびAUCなどの薬物動態パラメータが、患者において得られる場合、患者群は、典型的には10から200人の間の患者を含む。合理的な患者数は、例えば、10、20、30、40、50、75、100、125または150人である。患者は、治療されるべき状態の症状に従って選択される。本発明の目的のために、患者は、実施例7の組み入れ基準および除外基準に従って選択することができる。したがって、患者は、例えば18歳以上であり、腫瘍および非腫瘍が原因の重症の慢性疼痛に罹患しており、WHOステップIIまたはIIIの鎮痛薬で不十分な有効性および/または忍容性を示す者などである。患者は、現行のアルコール乱用または薬物乱用の徴候、現行の重症の心血管疾患および呼吸器疾患の徴候、重症な肝機能不全および腎機能不全の徴候などがある場合、薬物動態パラメータの決定について考慮されない。
【0133】
上記および下記に示されているような薬物動態パラメータの値は、実施例7で得られたデータに基づいて導き出されており、これらの値はすべて、健常ヒト対象における単回投与試験に関するということが理解されるべきである。しかし、匹敵する結果が、健常ヒト対象における定常状態での投与時またはヒト患者における単回用量および定常状態での投与時に当然得られるものと考えられる。
【0134】
薬物動態パラメータの計算は、WinNonlin Enterprise Edition、Version4.1を用いて行うことができる。
【0135】
「定常状態」という用語は、所与の薬物についての血漿中レベルが達成されており、それが、その薬物のその後の投与によって、最小有効治療レベルまたはそれを超えるレベルで、およびオキシコドンについての最小毒性血漿中レベル未満の濃度で維持されることを意味する。オキシコドンなどのオピオイド鎮痛薬に関しては、最小有効治療レベルは、所与の患者において達成された疼痛緩和の量によって部分的に決定される。疼痛測定が、非常に主観的であり、患者間で大きな個人差が生じうることは、医療技術分野の技術者によって十分に理解される。各用量の投与後、その濃度は最大値を通過し、次いで再び最小値に低下することは明らかである。
【0136】
定常状態は、以下のように記載することができる。t=0の時点、すなわち初回用量が投与される時点では、濃度Cも0である。次いで、その濃度は第1の最大値を通過し、次いで、第1の最小値に低下する。濃度が0に低下する前に、別の用量が投与されるため、第2の濃度の増加は、0から始まらない。この第1の濃度最小値に基づいて、曲線は、2回目の投与後に、第1の最大値を超える第2の最大値を通過し、第1の最小値を超える第2の最小値に低下する。このようにして、血漿曲線は、吸収と排出とのバランスがとれている時点に安定するまで、活性剤の反復投与およびこれに伴う段階的な蓄積によって上昇する。吸収と排出とが平衡状態にあり、濃度が明確な最小値と明確な最大値との間を常に往復しているこの状態が、定常状態と呼ばれている。
【0137】
本発明の目的のために、「維持療法」および「長期療法」という用語は、以上に定義されているような定常状態に、患者をオピオイド鎮痛薬でタイトレーションした後、患者に施される薬物療法と定義される。
【0138】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、ヒト患者または健常ヒト対象への定常状態での投与後または単回用量の投与後、オキシコドンについて、約1から約17時間に、約2から約15時間に、約3から約8時間にまたは約4から約5時間に平均tmaxをもたらす。1つの好ましい実施形態では、剤形は、ヒト健常対象またはヒト患者への定常状態での投与後または単回用量の投与後、オキシコドンについて、3時間、3.5時間または4.0時間の平均tmaxをもたらす。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0139】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、ヒト患者または健常ヒト対象への定常状態での投与後または単回用量の投与後、ナロキソン−3−グルクロニドについて、約0.25から約15時間に、約0.5から約12時間に、約1から約4時間にまたは約1から約3時間に平均tmaxをもたらす。1つの好ましい実施形態では、剤形は、ヒト健常対象またはヒト患者への定常状態での投与後または単回用量の投与後、ナロキソン−3−グルクロニドについて、0.5時間、1時間または2.0時間の平均tmaxをもたらす。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0140】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、オキシコドンについて、約100ng・h/mLまたは約200ng・h/mLまたは約300ng・h/mLから約600ng・h/mL、より好ましくは約400ng・h/mLから約550ng・h/mL、最も好ましくは約450ng・h/mLから約510ng・h/mLの平均AUCt値をもたらす。好ましくは、についてのこれらの平均AUCt値は、ヒト健常対象またはヒト患者への定常状態での投与後または単回用量の投与後に達成される。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0141】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、ナロキソン−3−グルクロニドについて、約100ng・h/mLまたは約200ng・h/mLまたは約300ng・h/mLから約750ng・h/mL、より好ましくは約400ng・h/mLから約700ng・h/mL、最も好ましくは約500ng・h/mLから約600ng・h/mLの平均AUCt値をもたらす。好ましくは、ナロキソン−3−グルクロニドについてのこれらの平均AUCt値は、ヒト健常対象またはヒト患者への定常状態での投与後または単回用量の投与後に達成される。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0142】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、オキシコドンについて、約5ng/mLから約50ng/mL、より好ましくは約20ng/mLから40ng/mLまたは最も好ましくは約30ng/mLから約35ng/mLの平均Cmax値をもたらす。好ましくは、オキシコドンについてのこれらの平均Cmax値は、ヒト健常対象またはヒト患者への定常状態での投与後または単回用量の投与後に達成される。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0143】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、オキシコドンについて、オキシコドン1mg当たり約0.125ng/mLからオキシコドン1mg当たり約1.25ng/mL、より好ましくはオキシコドン1mg当たり約0.5ng/mLからオキシコドン1mg当たり1ng/mLまたは最も好ましくはオキシコドン1mg当たり約0.75ng/mLからオキシコドン1mg当たり約0.875ng/mLの平均Cmax値をもたらす。上記の値は、健常ヒト対象または患者における、単回投与または定常状態での投与に関する。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0144】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、ナロキソン−3−グルクロニドについて、約10pg/mLから約100pg/mL、より好ましくは約40pg/mLから90pg/mLまたは最も好ましくは約60pg/mLから約90pg/mLの平均Cmax値をもたらす。好ましくは、オキシコドンについてのこれらの平均Cmax値は、ヒト健常対象またはヒト患者への単回用量の投与後に達成される。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。これらの調製物は、1日当たり最大40mgオキシコドンおよび20mgナロキソンの総量まで投与されることが好ましい。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0145】
好ましくは、または代わりとして、本発明によるオキシコドン/ナロキソン剤形の使用は、ナロキソン−3−グルクロニドについて、ナロキソン1mg当たり約2pg/mLからナロキソン1mg当たり約4.5pg/mL、より好ましくはナロキソン1mg当たり約3pg/mLからナロキソン1mg当たり4.5pg/mLの平均Cmax値をもたらす。上記の値は、健常ヒト対象または患者における、単回投与または定常状態での投与に関する。好ましい実施形態では、そのような剤形は、オキシコドンおよびナロキソンを2:1の重量比で含む。好ましくは、剤形は、約40mgのオキシコドンおよび20mgのナロキソンを含み、より好ましくは、約20mgのオキシコドンおよび10mgのナロキソンを含む。剤形は、持続された様式で、前述の放出速度によって、薬剤を放出することが好ましい。
【0146】
一実施形態では、本発明によって使用される剤形は、20mgオキシコドンに相当する量のオキシコドン塩酸塩および10mgナロキソンに相当する量のナロキソン塩酸塩を含む。
【0147】
20mgオキシコドンおよび10mgナロキソンの等価物を含む剤形に関しては、持続放出が持続放出マトリックスによって達成されることが特に好ましい可能性がある。遅延物質は、エチルセルロースを含むセルロースエーテルなどの疎水性ポリマーおよび/またはステアリルアルコールを含む脂肪族アルコールから選択することができる。いくつかの特定の実施形態では、そのような剤形は、約20〜25重量%の脂肪族アルコールを含む。この実施形態による剤形中のセルロースエーテルについての好ましい量は、約7〜9重量%のセルロースエーテルである。以上に言及されたインビトロ放出速度が、好ましい可能性がある。
【0148】
他の実施形態では、剤形は、10mg無水オキシコドン塩酸塩に相当する量のオキシコドンおよび5mgナロキソン塩酸塩に相当する量のナロキソンを含む。この実施形態では、遅延物質が、セルロースエーテルおよび/または脂肪族アルコールから選択されることも好ましい。20mgオキシコドンおよびナロキソンを含む剤形の、前述の重量比、遅延原則およびインビトロ放出が、好ましい可能性がある。
【0149】
他の好ましい実施形態では、本発明によって使用される剤形は、40mgオキシコドンに相当する量のオキシコドンおよび20mgナロキソンに相当する量のナロキソン塩を含む。この場合も、遅延物質は、セルロースエーテルおよび/または脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。20mgオキシコドンおよびナロキソンを含む剤形の、前述の重量比、遅延原則およびインビトロ放出が、好ましい可能性がある。
【0150】
本発明は、これから実施例に関して説明されるが、この実施例は限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例
【実施例1】
【0151】
膨潤不可能な拡散マトリックス中に異なるオキシコドン/ナロキソン量を有する錠剤の噴霧造粒による製造
掲載されている成分の以下の量を、本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に使用した。
【0152】
【表1】

【0153】
使用したSurelease(登録商標)E−7−7050ポリマー混合物は、以下の組成を有していた。
【0154】
【表2】

【0155】
錠剤を製造するために、オキシコドンHCl、ナロキソンHCl、ポビドン30およびラクトース Flow Lac100をタンブリングミキサー(Bohle)中で混合し、続いて流動浴造粒装置(GPCG3)中で、Surelease(登録商標)E−7−7050とともに噴霧造粒した。物質は、Comill 1.4mmふるい上でふるい分けした。追加の造粒工程を、高剪断ミキサー(Collette)中で、溶融した脂肪族アルコールとともに行った。このアプローチによって製造されたすべての錠剤コアは、乾燥物質に基づいて123mgの重量を有していた。
【実施例2】
【0156】
膨潤不可能な拡散マトリックス中にオキシコドンおよびナロキソンを有する錠剤の押出成形による製造
掲載されている成分の以下の量を、本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に使用した。
【0157】
【表3】

【0158】
掲載されている量のオキシコドンHCl、ナロキソンHCl、エチルセルロース45cpi、ポビドン30、ステアリルアルコールおよびラクトース Flow Lac100をタンブリングミキサー(Bohle)中で混合した。続いてこの混合物を、型式Micro 18 GGL(Leistritz AG、Nurnberg、Germany)の異方向回転2軸スクリュー押出機を用いて押し出した。加熱域1の温度は25℃、加熱域2の温度は50℃、加熱域3から5の温度は60℃、加熱域6から8の温度は55℃、加熱域9の温度は60℃および加熱域10の温度は65℃であった。スクリュー回転速度は150回転/分(rpm)であり、得られた溶融温度は87℃であり、供給速度は1.5kg/hであり、ノズル開口部の直径は3mmであった。押し出された物質を、Frewitt0.68×1.00mmふるいを用いてふるい分けした。次いで、粉砕された押出物に、タルカムおよびステアリン酸マグネシウムを1mm手ふるい上で加えて混合し、続いて圧縮して錠剤にした。
【0159】
噴霧造粒によって製造されたSurelease(登録商標)ベースの膨潤不可能な拡散マトリックスも有するオキシコドン/ナロキソン錠剤(実施例1を参照のこと)と比較して、押出調製物は、より少ない成分を含む。
【実施例3】
【0160】
実施例1由来のオキシコドン/ナロキソン錠剤の放出プロフィール
活性化合物の放出は、米国薬局方によるpH1.2でのバスケット法を適用し、HPLCを使用して、12時間の期間にわたって測定した。錠剤OXN_1、OXN_2およびOXN_3を試験した。
【0161】
異なるオキシコドン量の放出速度は、ナロキソン量から独立しており、等しいまま(不変)である。相応じて、不変の放出プロフィールが、異なるオキシコドン量でのナロキソンについて観察される。
【0162】
【表4】

【0163】
放出値は、オキシコドンまたはナロキソンについて言及しており(2行目)、百分率として与えられる。Oxyc.およびNal.は、オキシコドンおよびナロキソンを表し、測定された化合物を指す。
【実施例4】
【0164】
実施例2由来のオキシコドン/ナロキソン錠剤の異なるpH値での放出プロフィール
錠剤からの活性化合物の放出を、pH1.2で12時間の期間にわたって、または1.2で1時間および続いてpH6.5で11時間測定した。放出速度は、米国薬局方によるバスケット法によって、HPLCを使用して決定した。
【0165】
以下の放出速度は、pH1.2で12時間測定されたものである。
【0166】
【表5】

【0167】
以下の放出速度は、pH1.2で1時間およびpH6.5で11時間測定されたものである。
【0168】
【表6】

【0169】
放出速度は、オキシコドンまたはナロキソンについて言及しており(2行目)、百分率として与えられる。Oxyc.およびNal.は、オキシコドンおよびナロキソンを表し、測定された化合物を指す。
【実施例5】
【0170】
膨潤不可能な拡散マトリックス中に異なるオキシコドンおよびナロキソン量を有する錠剤の押出成形による製造
掲載されている成分の以下の量を、本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に使用した。
【0171】
【表7】

【0172】
以下のパラメータを用いて、上記(実施例2)のように押出成形を行った。
【0173】
【表8】

【0174】
一般的な錠剤成形装置を用い、以下のパラメータを用いて、錠剤製造を行った。
【0175】
【表9】

【0176】
活性化合物の放出は、米国薬局方によるpH1.2でのバスケット法を適用し、HPLCを使用して、12時間の期間にわたって測定した。錠剤OXN_5、OXN_6、OXN_7およびOXN_8を試験した。
【0177】
【表10】

【0178】
放出値は、オキシコドンまたはナロキソンについて言及しており(2行目)、百分率として与えられる。Oxyc.およびNal.は、オキシコドンおよびナロキソンを表し、測定された活性化合物を指す。
【実施例6】
【0179】
膨潤不可能な拡散マトリックス中にオキシコドン/ナロキソンを有する錠剤の押出成形による製造
以下の実施例では、本発明による製剤を使用して、特定の放出挙動を有するオキシコドンおよびナロキソンを含む調製物を得ることができることを目指す。
【0180】
掲載されている成分の以下の量を、本発明によるオキシコドン/ナロキソン錠剤の製造に使用した。
【0181】
【表11】

【0182】
以下のパラメータを用いて、上記のように押出成形を行った。
【0183】
【表12】

【0184】
一般的な錠剤成形装置を用い、以下のパラメータを用いて、錠剤製造を行った。
【0185】
【表13】

【0186】
活性化合物の放出は、米国薬局方によるpH1.2でのバスケット法を適用し、HPLCを使用して、12時間の期間にわたって測定した。錠剤OXN_9、OXN_10、OXN_11、OXN_12、OXN_13およびOXN_14を試験した。
【0187】
【表14】

【0188】
放出値は、オキシコドンまたはナロキソンについて言及しており(2行目)、百分率として与えられる。Oxyc.およびNal.は、オキシコドンおよびナロキソンを表し、測定された活性化合物を指す。
【実施例7】
【0189】
異なる含量のオキシコドンおよびナロキソンの固定配合剤ならびにOxygesic(登録商標)+ナロキソンCRの配合剤の薬物動態およびバイオアベイラビリティー特性
【0190】
1.目的
この試験の目的は、(i)制御放出固定配合錠剤製剤として投与した場合のオキシコドンおよびナロキソンならびにそれらの主要代謝物の薬物動態パラメータおよびバイオアベイラビリティーパラメータを評価すること;(ii)3つの異なる含量の固定配合剤、OXN10/5、OXN20/10およびOXN40/20間の互換性を評価すること;ならびに(iii)固定配合製剤の薬物動態およびバイオアベイラビリティーを、市販のOxygesic(登録商標)をナロキソンCR錠剤と一緒に投与する場合と比較することであった。
【0191】
2.試験集団
24人の対象が本試験を完了し、有効な薬物動態データを提供することを目指して、合計28人の健常成人の男性対象および女性対象をランダム化し、試験薬を服用させた。
【0192】
組み入れ基準
本試験に組み入れられた対象は、以下の基準のすべてを満たす者であった。
・任意の人種の男性または女性;
・18歳以上から45歳以下の間の年齢;
・19〜29kg/mの範囲内のBMIならびに男性については60〜100kgおよび女性については55〜90kgの範囲内の体重;
・女性は、授乳、妊娠していない者でなければならず、被験薬を服用する前の24時間以内に尿中β−hCG妊娠検査陰性を呈しなければならない。妊娠の可能性がある女性対象は、信頼できる形態の避妊法(例えば、子宮内避妊器具、経口避妊薬、バリア法)を使用していなければならない。閉経後である女性対象は、1年以上閉経していなければならず、HRTを行っていない場合には高い血清FSHを有していなければならない;
・病歴、身体検査、臨床検査、バイタルサインおよびECGに関して顕著に異常な所見がないことによって証明される概ね良好な健康状態。バイタルサイン(仰臥位で3分間の休息後)は、以下の範囲内でなければならない:35.0〜37.5℃の間の経口体温;収縮期血圧、90〜140mmHg;拡張期血圧、50〜90mmHg;および脈拍数、40〜100bpm。血圧および脈拍は、起立位で3分後に再び測定した。仰臥位から起立して3分後、収縮期血圧において20mmHg以下の低下、拡張期血圧において10mmHg以下の低下および脈拍数において20bpmを超えない増加が見られるべきである;同意文書が得られている;試験中に供給されるすべての食物を食する意思がある。
【0193】
除外基準
本試験から除外された対象は、以下の基準のいずれかを満たす者であった。
・被験薬の初回投与の3カ月以内に任意の治験薬またはプラセボを受けていること;
・被験薬の初回投与前30日以内の任意の重大な病気;
・病歴、身体検査または検査室分析についての予備試験スクリーニングで確認された臨床的に顕著な任意の異常;
・被験薬の初回投与前、21日のうちに処方箋が必要な任意の医薬品(閉経後の女性に対するHRTおよび避妊薬を除く)または7日のうちに制酸薬、ビタミン類、ハーブ製品および/またはミネラルサプリメントを含む処方箋が必要でない医薬品を使用していること;
・胃腸薬吸収(例えば、胃内容排出遅延、吸収不良症候群)、分布(例えば、肥満)、代謝または排泄(例えば、肝炎、糸球体腎炎)に干渉することが知られている併発病状;
・治験責任医師の意見で、試験を安全に完了する対象の能力を脅かす、病歴または併発病状;
・対象が薬物治療を必要とした発作障害の病歴;
・1日に5本を超える現行の喫煙歴;
・DSM−IV基準3に従って、現在もしくは過去の薬物乱用歴もしくはアルコール乱用歴の徴候を有する対象、または治験責任医師の意見で、嗜癖性もしくは薬物乱用挙動を示している対象;
・1日に2本もしくはそれ以上のアルコール飲料の定期的な消費を報告した対象またはスクリーニング時に0.5%以上の血中アルコールレベルを有する対象;
・被験薬の初回投与前3カ月のうちの、500mLを超える血液もしくは血液製剤の提供または他の大量失血;
・血液サンプルを介して感染症を伝染させるリスクがある、例えば、スクリーニング時にHIV検査で陽性を呈する、またはHIVに罹患するリスクが高い活動に参加していた;スクリーニング時にB型肝炎表面抗原検査で陽性を呈する;スクリーニング時にC型肝炎抗体検査で陽性を呈するなど;
・スクリーニング時に採取した尿の検体での、エタノール、アヘン剤、バルビツール酸塩、アンフェタミン、コカイン代謝物、メタドン、プロポキシフェン、フェンシクリジン、ベンゾジアゼピン系薬およびカンナビノイドについての予備試験スクリーンにおける任意の陽性結果;
・オキシコドン、ナロキソンまたは関連化合物に対して感受性であると知られていること;
・Oxygesic@についてのデータシートに詳述されているような禁忌および注意;
・(該当する場合)プライマリケアの主治医に報告することへの拒絶;
・治験責任医師が、除外基準に特に明記されていない理由で、その対象は適切でないと考えた場合。
【0194】
人口統計データを表11に示す。
【0195】
【表15】

【0196】
3.試験デザイン、試験治療用量および投与方法
試験製品の調製
2:1のオキシコドン:ナロキソン比を有する溶融押出オキシコドン/ナロキソン制御放出錠剤製剤を製造した。3つの投薬含量、すなわちOXN10/5、OXN20/10およびOXN40/20を利用することができ、この場合、最初の数はオキシコドン塩酸塩のmg量であり、2番目の数はナロキソン塩酸塩のmg量である(表12を参照のこと)。OXN20/10およびOXN40/20は、同じ顆粒剤を由来とするが、OXN10/5は、活性成分の添加剤に対する比に関してわずかに異なる配合を有する。
【0197】
本実施例によるオキシコドン/ナロキソン錠剤(OXN錠剤)は、2:1の比のオキシコドンおよびナロキソンの固定配合剤を含む。錠剤製剤を以下にまとめる(表12を参照のこと)。
【0198】
20/10mgおよび40/20mg錠剤は、同じ造粒物から製造され、これら2つの錠剤含量は、組成的に比例している。本実施例によるオキシコドン/ナロキソン長期放出錠剤(OXN)錠剤は、遅延剤としてステアリルアルコールおよびエチルセルロースのマトリックスを使用する制御放出錠剤である。錠剤は、オキシコドン塩酸塩およびナロキソン塩酸塩の組合せを、含量10/5mg、20/10mgおよび40/20mg(両方とも塩酸塩として)で含む。オキシコドン/ナロキソン長期放出錠剤の成分および定量的組成の完全な明細を、下表12に示す。
【0199】
【表16】

【0200】
【表17】

【0201】
試験デザイン
本試験は、非盲検、単回投与、4治療、4期、ランダム化アクロスオーバー試験および健常対象であった。治療は、空腹状態で以下のように経口投与された。
−治療A:OXN10/5の錠剤×4個
−治療B:OXN20/10の錠剤×2個
−治療C:OXN40/20の錠剤×1個
【0202】
標準治療は、Oxygesic(登録商標)20mg錠剤であった。ナロキソンは、ナロキソン10mgCR噴霧造粒錠剤の形で使用した。したがって、標準治療は、
−治療D:Oxygesic(登録商標)20mgの錠剤2個およびナロキソンCR10mgの錠剤2個
であった。
【0203】
治療期間には、21日間のスクリーニング期間および試験薬をそれぞれ単回投与する4つの試験期間、続いて7日間のウォッシュアウト期間が含まれた。試験期間4の投与後7から10日目および試験中止後7から10日目に試験後診断があった。全期間は、49から52日であった。
【0204】
治療スケジュールは、4つの試験期間の各々における試験薬の単回投与であった。試験薬の各投与は、7日間のウォッシュアウト期間によって隔てられた。
【0205】
登録集団は、本試験の参加について同意文書を提出した対象集団と定義された。薬物動態のための最大の解析集団は、少なくとも1つの治療に基づいて計算された少なくとも1つの妥当な薬物動態パラメータを有した対象と定義された。
【0206】
4.薬物動態評価
薬物濃度測定
オキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン、ナロキソン、6β−ナロキソールおよびナロキソン−3−グルクロニド濃度を決定するための血液サンプルを、4つの各試験期間中、各対象について、投与直前ならびに投与後0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8、10、12、16、24、28、32、36、48、72および96時間目に(1試験期間当たり22個の血液サンプル)得た。可能な場合には、重篤なまたは重症の予期されない有害事象の最初の報告時およびその消散時にも採血した。
【0207】
血漿測定の時間毎に、6mL静脈血を前腕の静脈から採取して、K2EDTA抗凝血剤を含む試験管に入れた。すべてのサンプルを、一般的なサンプル取り扱い手順に従って処理した。
【0208】
薬物動態パラメータ
以下の薬物動態パラメータを、オキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホン、ナロキソン、6β−ナロキソールおよびナロキソン−3−グルクロニドの血漿中濃度から計算した。
−最終測定可能濃度まで計算した血漿中濃度時間曲線下面積(AUCt);
−投与時から無限大までの血漿中濃度−時間曲線下面積(AUCINF);
−最大実測血漿中濃度(Cmax);
−最大実測血漿中濃度の時点(tmax);
−終末相速度定数(LambdaZ);
−見かけの終末相半減期(t1/2Z)。
【0209】
オキシコドン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホンおよびナロキソン−3−グルクロニドについては、AUC値をng・h/mLで、Cmax値をng/mLで示した。ナロキソンおよび6β−ナロキソールについては、低濃度のため、AUC値をpg・h/mLで、Cmax値をpg/mLで示した。
【0210】
AUCt、AUCINFおよびCmaxを主要なパラメータとみなした。
【0211】
AUCtは、線形台形法を使用して計算した。可能な場合には、終末対数線形相にあると決定された点を使用して、LambdaZを推定した。t1/2Zは、ln2のLambdaZに対する比から決定した。最終測定点と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終実測血漿中濃度(Clast)のLambdaZに対する比から計算した。次いで、これをAUCtに加えて、AUCINFを得た。
【0212】
薬物動態の計算はすべて、WinNonlin Enterprise Edition、Version4.1を用いて行った。
【0213】
統計的方法
オキシコドンのCmaxおよびAUCINFは、4つの治療の同等性を評価するために重要であった。AUCtは、線形台形法を使用して計算した。可能な場合には、終末対数線形相にあると決定された点を使用して、LambdaZを推定した。t1/2Zは、ln2のLambdaZに対する比から決定した。最終測定点と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積は、最終実測血漿中濃度(Clast)のLambdaZに対する比から計算した。これをAUCtに加えて、投与時と無限大との間の血漿中濃度−時間曲線下面積(AUCINF)を得た。
【0214】
用量調整された相対的全身アベイラビリティー(FreltおよびFrelINF)およびCmax比は、関心対象の以下の比較:
固定配合剤A対非固定配合剤D
固定配合剤B対非固定配合剤D
固定配合剤C対非固定配合剤D
固定配合剤A対固定配合剤B
固定配合剤A対固定配合剤C
固定配合剤B対固定配合剤C
における明確な差について、それぞれAUCt値、AUCINF値およびCmax値の比から得た。
【0215】
薬物動態のための最大の解析集団を、これらの解析に使用した。
【0216】
代謝物:可能な場合には、親薬物のAUCtおよびAUCINF比を、各治療について推定した。
【0217】
5.臨床薬理試験の結果
オキシコドン、ナロキソン−3−グルクロニド、ナロキソン、ノルオキシコドン、オキシモルホン、ノルオキシモルホンおよび6−β−ナロキソールについての平均実測血漿中濃度−時間曲線を、図1から7に提示する。
【0218】
オキシコドン、ナロキソン−3−グルクロニドおよびナロキソンについての薬物動態パラメータを、それぞれ表14から19に提示する。
【0219】
【表18】

【0220】
【表19】

【0221】
【表20】

【0222】
【表21】

【0223】
【表22】

【0224】
【表23】

【0225】
6.データ解析
a)オキシコドンの結果
−AUCt
オキシコドンについて得られたAUCt値は、治療間で非常に一貫していた。治療の各々が、473ng.h/mL(4×OXN10/5)と502ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)との間の平均AUCt値を有した。
【0226】
AUCtに関して、固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のオキシコドンのアベイラビリティーをもたらした。相対的バイオアベイラビリティー計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0227】
−t1/2Z
オキシコドンについて得られたt1/2Z値は、治療間で一貫していた。治療の各々が、4.69時間(4×OXN10/5)と5.01時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)との間の平均t1/2Z値を有した。行ったいずれの比較に関しても、治療についてのt1/2Z値の間に統計学的な差はなかった。
【0228】
−AUCINF
オキシコドンについて得られたAUCINF値は、治療間で非常に一貫していた。治療の各々が、475ng.h/mL(4×OXN10/5)と509ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)との間の平均AUCINF値を有した。
【0229】
AUCINFに関して、固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のオキシコドンのアベイラビリティーをもたらした。相対的バイオアベイラビリティー計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0230】
−Cmax
オキシコドンについて得られたCmax値は、固定配合剤治療間で一貫しており、34.46ng/mL(1×OXN40/20)から35.73ng/mL(2×OXN20/10)までの範囲にわたった。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgについての平均Cmax値は、40.45ng/mLで、わずかに高かった。
【0231】
固定配合錠剤を互いに比較するCmax比は、97.5%から103.1%までの範囲にわたり、各々が80〜125%の範囲内の90%信頼区間を有した。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgについての平均Cmax値がより高いということは、固定配合錠剤を標準製品と比較したCmax比がより低く、85.8%から88.4%までの範囲にわたることを意味した。しかし、これらのCmax比は、それでも80〜125%の範囲内である90%信頼区間を伴っていた。
【0232】
−tmax
固定配合錠剤についてのtmax中央値は、3時間(1×OXN40/20)から4時間(2×OXN20/10)までの範囲にわたった。これらの2つの治療間の差は、見たところでは小さいが、統計学的には有意であった。2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgについてのtmax中央値は2.5時間であり、この標準治療と2×OXN20/10との間には統計学的に有意な差があった。
【0233】
b)ナロキソン−3−グルクロニドの結果
−AUCt
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたAUCt値は、治療間で非常に一貫していた。各治療が、520ng.h/mL(1×OXN40/20)と540ng.h/mL(4×OXN10/5)との間の平均AUCt値を有した。
【0234】
AUCtに関して、固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のナロキソン−3−グルクロニドのアベイラビリティーをもたらした。相対的バイオアベイラビリティー計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0235】
−t1/2Z
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたt1/2Z値は、治療間で一貫していた。治療の各々が、7.66時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)と8.48時間(4×OXN10/5)との間の平均t1/2Z値を有した。行ったいずれの比較に関しても、治療についてのt1/2Z値の間に統計学的な差はなかった。
【0236】
−AUCINF
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたAUCINF値は、治療間で非常に一貫していた。治療の各々が、521ng.h/mL(2×OXN20/10)と563ng.h/mL(4×OXN10/5)との間の平均AUCINF値を有した。
【0237】
AUCINFに関して、固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のナロキソン−3−グルクロニドのアベイラビリティーをもたらした。バイオアベイラビリティー計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0238】
−Cmax
ナロキソン−3−グルクロニドについて得られたCmax値は、治療間で一貫していた。各治療が、61.95ng.mL(1×OXN40/20)から63.62ng.mL(2×OXN20/10)までの範囲にわたる平均Cmax値を有した。
【0239】
固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のナロキソン−3−グルクロニドCmaxをもたらした。Cmax比計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0240】
−tmax
すべての治療についてのtmax中央値は、0.5時間(2×OXN20/10)から1時間(4×OXN10/5、1×OXN40/20および2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)までの範囲にわたった。いずれの治療についてもtmax中央値の間に有意な差はなかった。
【0241】
−ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比
平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比は、852.25(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)から933.46(4×OXN10/5)までの範囲にわたった。
【0242】
−ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比
ナロキソンについてのAUCINF推定値が欠如しているということは、平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比が、2×OXN20/10錠剤についてしか計算することができないことを意味した。これらは、対象5人のデータに基づいた平均ナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCINF比414.56をもたらした。
【0243】
c)ナロキソンの結果
ナロキソン濃度は予想通り低く、それ故、これらの結果は十分な薬物動態評価を裏付けるものではなかった。
【0244】
−AUCt
ナロキソンについて得られたAUCt値は、治療間で一貫していた。治療の各々が、0.84ng.h/mL(2×OXN20/10)と0.97ng.h/mL(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)との間の平均AUCt値を有した。
【0245】
AUCtに関して、固定配合錠剤の各々が、標準治療に同等のおよび互いに同等のナロキソンのアベイラビリティーをもたらした。バイオアベイラビリティー計算値のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0246】
−t1/2Z
すべての対象に関するナロキソンのt1/2Z値を、自信をもって計算することは不可能であった。これは、片対数目盛上にプロットした場合、そのグラフの末端部分における血漿中濃度が必ずしも直線に近づくとは限らなかったためである。平均値は、4から9までの範囲にわたる対象数に基づいた。
【0247】
ナロキソンについて得られた平均t1/2Z値は、9.89時間(4×OXN10/5)から13.83時間(1×OXN40/20)までの範囲にわたった。広範囲のt1/2Z値が平均に寄与していたが、行ったいずれの比較に関しても、治療についてのt1/2Z値の間に統計学的な差はなかった。
【0248】
−AUCINF
推定可能なt1/2Z値を有する対象について、AUCINF値を計算した。AUCINF値のいくつかは、AUCの外挿部分がAUCINF値の20%超を占めたため、報告できなかった。平均AUCINF値は、2×OXN20/10に関してのみ、1.64ng.h/mLが報告可能であった。他の治療のいずれもが、平均AUCINF値を報告するための十分なデータを有さなかった。治療間の比較を行うための十分なデータがなかった。
【0249】
−Cmax
治療の各々が、0.07ng/mL(4×OXN10/5)と0.08ng/mL(2×OXN20/10、1×OXN40/20および2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)との間の平均Cmax値を有した。
【0250】
固定配合錠剤の各々が、互いに同等のナロキソンCmaxをもたらした。固定配合錠剤を比較するCmax比のすべてが、生物学的同等性の許容域80〜125%の範囲内である90%信頼区間を有した。
【0251】
固定配合錠剤を標準製品と比較した場合、2×OXN20/10錠剤対2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgは、生物学的同等性の許容域80〜125%を超える90%信頼区間を有した。残りの固定配合錠剤は、標準製品と同等のナロキソンCmaxをもたらした。
【0252】
−tmax
治療についてのtmax中央値は、1時間(2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mg)から5時間(2×OXN20/10)までの範囲にわたった。治療の各々について、広範囲のtmax値が存在した。いずれの治療についてもtmax中央値の間に有意な差はなかった。
【0253】
7.臨床薬理試験の考察および結論
低い経口バイオアベイラビリティーは、ナロキソンの完全な薬物動態評価を妨げる。このことは、大部分の対象に関してナロキソンのAUCINF値を推定することができないという結果を生じた低い血漿中濃度として確認された。ナロキソン−3−グルクロニドは、さらに高い濃度で血漿中に存在し、大多数の対象に関してナロキソン−3−グルクロニドについてのAUCINF推定値が得られた。固定配合錠剤のナロキソン成分についての結論は、ナロキソン−3−グルクロニドパラメータに基づいた。
【0254】
a)オキシコドン
2×Oxygesic20mg&2×ナロキソンCR10mgおよび固定配合錠剤についての平均血漿中オキシコドン濃度−時間曲線は、ほとんど重ね合わせることが可能であった。
【0255】
オキシコドンに関して生物学的同等性の評価を行った。生物学的同等性比較の各々が、Frelt、FrelINFおよびCmax比に関して、生物学的同等性の許容域内である90%信頼区間を有した。オキシコドンの結果は、固定配合錠剤含量の各々が、互いにも、およびナロキソンCR錠剤と一緒に投与されるOxygesicとも、生物学的同等であったことを示している。いずれの治療についてのいずれのtmax値またはt1/2Z値の間にも統計学的な差はなく、これによって、製品同士の類似性がさらに確認された。
【0256】
標準製品の投与後に達成された血漿中オキシコドン濃度は、以前の研究においてOxyContinの投与後に見られた用量調整されたオキシコドン濃度に類似していた。固定配合錠剤についての平均Cmax値のほうがわずかに低かったが、これらを標準製品と比較した場合、Cmax比は、生物学的同等性の許容域内である信頼区間を有した。
【0257】
b)ナロキソン
平均血漿中ナロキソン濃度は低く、0.1ng/mL未満であり、二相性であるように見え、8から16時間の間に第2のピークが発生した。
【0258】
対象のすべてが、定量可能な血漿中ナロキソン濃度を有したが、個々の対象の血漿中ナロキソン濃度は低く、非常にばらつきがあった。最大実測血漿中ナロキソン濃度は、0.07から0.08ng/mLであった。
【0259】
以前の研究からのナロキソンの薬物動態プロフィールを検討した。平均すると、1mgの単回用量に用量調整されたこれらの研究からの平均Cmax値は、4から15pg/mLの間の範囲にわたっており、これによって、今回観察された低い血漿中ナロキソン濃度は、以前の研究において測定されたレベルと一致することが確認された。
【0260】
ナロキソンに関して生物学的同等性の評価を行った。血漿中ナロキソン濃度のばらつきにより、AUCINFを推定することができず、それ故FrelINF値も推定することができなかった。バイオアベイラビリティーの推定は、Frelt値に基づいていた。バイオアベイラビリティー比較の各々が、生物学的同等性の許容域内である90%信頼区間を有した。ナロキソンについての平均Cmax値は比較でき、6つのバイオアベイラビリティー比較のうちの5つが、生物学的同等性の基準を満たす90%信頼区間を有した。
【0261】
治療についてのtmax値およびt1/2Z値は、ばらつきがあったが、いずれの治療の間にも、これらの2つのパラメータについて有意な差はなかった。
【0262】
予想通り、固定配合錠剤およびOxygesic+ナロキソンの投与後に血漿中に見られたナロキソン−3−グルクロニドのレベルは、達成されたナロキソンのレベルよりもさらに高く、結果としてナロキソン−3−グルクロニド:ナロキソンAUCt比は約900となった。6β−ナロキソールもナロキソンよりも高い量で測定され、結果として6β−ナロキソール:ナロキソンAUCt比は約22となった。これらの代謝物:親AUCt比は、固定配合錠剤および標準治療全体にわたって一貫していた。
【0263】
c)ナロキソン−3−グルクロニド
平均血漿中ナロキソン−3−グルクロニドレベルは、ナロキソンよりも高く、FrelINF値に基づくバイオアベイラビリティーの評価を行うことが可能であった。
【0264】
ナロキソン−3−グルクロニドに関して生物学的同等性の評価を行った。生物学的同等性比較の各々が、Frelt、FrelINFおよびCmax比に関して、生物学的同等性の許容域内である90%信頼区間を有した。ナロキソン−3−グルクロニドの結果は、固定配合錠剤含量の各々が、互いにも、およびOxygesic+ナロキソンとも、生物学的同等であったことを示している。いずれの治療についてのいずれのtmax値またはt1/2Z値の間にも統計学的な差はなく、これによって、製品同士の類似性がさらに確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物におけるクローン病を治療するためのおよび/またはクローン病に関連する症状を治療するための医薬剤形の製造における、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩の、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた使用。
【請求項2】
前記オピオイド作動薬が、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ニコモルヒネ、ジヒドロコデイン、ジアモルヒネ、パパベレタム、コデイン、エチルモルヒネ、フェニルピペリジン、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ブプレノルフィン、ペンタゾシン、チリジン、トラマドール、ヒドロコドンおよびそれらの塩からなる群から選択され、オピオイド拮抗薬が、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナロルフィン、ナルブフィン、ナロキソナジネン(naloxonazinene)、メチルナルトレキソン、ケチルシクラゾシン(ketylcyclazocine)、ノルビナルトルフィミン、ナルトリンドール、6−β−ナロキソール、6−β−ナルトレキソールおよびそれらの塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記オピオイド作動薬および/またはオピオイド拮抗薬が、それらの薬学的に許容される塩の形で、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酒石酸塩、硝酸塩、クエン酸塩、酒石酸水素塩、リン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、フマル酸塩またはコハク酸塩の形態で存在する、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩および前記オピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩が、前記剤形から持続形態で放出される、請求項1から3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記持続放出特性が、マトリックスによって本質的にもたらされる、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記持続放出特性が、拡散マトリックスによって本質的にもたらされる、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記拡散マトリックスが、少なくとも1種の疎水性ポリマーおよび/または少なくとも1種の脂肪族アルコールを含む、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記疎水性ポリマーが、疎水性セルロースエーテルであり、好ましくはエチルセルロースある、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記脂肪族アルコールが、ラウリルアルコール、ミレスチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、セリルアルコールおよび/またはセチルアルコールである、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
前記持続放出特性が、コーティングによって本質的にもたらされる、請求項4に記載の使用。
【請求項11】
前記コーティングが、ポリマーから、好ましくはエチルセルロースおよび/またはアクリルポリマー樹脂から作られる、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬剤形が、前記オピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩の即時放出相をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記剤形が、錠剤、カプセル剤、糖衣錠、顆粒剤および/または散剤である、請求項1から12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
前記剤形が、少なくとも8時間、好ましくは少なくとも12時間または少なくとも24時間の治療有効性をもたらす、請求項1から13のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記剤形が、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1から14のいずれかに記載の使用。
【請求項16】
前記その薬学的に許容される塩が、オキシコドンおよびナロキソンの塩酸塩である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記剤形が、5から160mgの間のオキシコドンまたはその薬学的に許容される塩および2.5から40mgのナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記剤形が、オキシコドンおよびナロキソンまたはそれらの薬学的に許容される塩を、オキシコドン:ナロキソンが5:1、4:1、3:1、好ましくは2:1の重量比で含む、請求項15から17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
前記剤形が、10mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および5mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩、20mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および10mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩、または40mgのオキシコドンもしくはその薬学的に許容される塩および20mgのナロキソンもしくはその薬学的に許容される塩を含む、請求項15から18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記剤形が、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を、以下のインビトロ溶出速度で、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の40〜65重量%、
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を放出する、請求項15から19のいずれかに記載の使用。
【請求項21】
前記剤形が、ヨーロッパ薬局方パドル試験に従って、900ml 0.1N HCl pH1.2中、50rpmで、270nmでのUV検出を使用して測定される場合、オキシコドンまたはその薬学的に許容される塩およびナロキソンまたはその薬学的に許容される塩を、以下のインビトロ溶出速度で、
15分でオキシコドンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でオキシコドンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でオキシコドンまたはその前記塩の40〜65重量%、
4時間でオキシコドンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でオキシコドンまたはその前記塩の70〜95重量%、
10時間でオキシコドンまたはその前記塩の80重量%以上、
15分でナロキソンまたはその前記塩の10〜30重量%、
1時間でナロキソンまたはその前記塩の30〜50重量%、
2時間でナロキソンまたはその前記塩の45〜65重量%、
4時間でナロキソンまたはその前記塩の60〜85重量%、
7時間でナロキソンまたはその前記塩の70〜95重量%および
10時間でナロキソンまたはその前記塩の80重量%以上
を放出する、請求項15から20のいずれかに記載の使用。
【請求項22】
前記剤形が、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約1から約17時間に、約2から約15時間に、約3から約8時間に、または約4から約5時間に、平均tmaxをもたらす、請求項15から21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記剤形が、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約100ng・h/mLから約600ng・h/mL、約400ng・h/mLから約550ng・h/mL、または約450から約510ng・h/mLの平均AUCt値をもたらす、請求項15から22のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
前記剤形が、健常ヒト対象への単回投与後、オキシコドンについて、約5ng/mLから約50ng/mL、約30ng/mLから約40ng/mL、または約35ng/mLの平均Cmaxをもたらす、請求項15から22のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
ヒトまたは動物におけるクローン病に関連する主要な症状としての疼痛を治療するための医薬剤形の製造における、少なくとも1種のオピオイド作動薬またはその薬学的に許容される塩の、少なくとも1種のオピオイド拮抗薬またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、請求項1から24のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2010−540492(P2010−540492A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526285(P2010−526285)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062834
【国際公開番号】WO2009/040394
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】