説明

クーラント供給装置

【課題】廃棄するクーラントの量を低減させ、かつポンプ等に使用するエネルギーを低減し、省エネルギー化を実現できるクーラント供給装置を提供すること。
【解決手段】クーラント供給装置1は、複数のフィルタ22を備え、使用済みのクーラントが循環貯留される一次クーラントタンク11及び二次クーラントタンク30を連通し、複数のフィルタ22ごとに一次供給管21が設けられる。二次クーラントタンク30から複数の工作機械60へは、工作機械60ごとに二次供給管41が設けられて個別にクーラントを供給する二次ポンプ42を備える。また、二次クーラントタンク30には、クーラントの液面を検知するフロートスイッチ31を設け、二次クーラント制御部50は、二次クーラントタンク30の液面に応じて複数のフィルタ22の始動または停止を個別に制御するとともに、工作機械60の稼働に応じて二次ポンプ42を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント供給装置に関する。特に、クーラントの消費量やポンプ等の稼働に係るエネルギーの無駄を低減させることのできるクーラント供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すクーラント供給装置701では、複数の工作機械760から構成されている加工区では、複数の工作機械760それぞれにクーラントを供給するため、クーラントを集中管理して供給するようにしていた。
複数の工作機械にクーラントをそれぞれ供給するには、濾過されていないクーラントが貯留される一次クーラントタンク710から、濾過装置722を経て濾過されたクーラントが二次クーラントタンク730に貯留される。そして、二次クーラントタンク730から一本のメイン供給管741が複数の工作機械760に分岐されて延びている。このメイン供給管741の途中には、二次クーラントタンク730から複数の工作機械760にクーラントを供給する一台のポンプ742が設けられている。工作機械760で使用された加工滓を含むクーラントは、クーラント回収トラフ746を介して一次クーラントタンク710に環流され、また、一次クーラントタンク710では沈殿作用により加工滓がある程度除去される。ここで、クーラント回収トラフ746は、例えば断面がU字形の溝が用いられている。
【0003】
この場合、一台のポンプ742で複数の工作機械760にクーラントを供給しているため、一台でも工作機械760が稼働している場合には、ポンプ742はメイン供給管741全体にクーラントを供給し続ける必要がある。このため、ポンプ742のエネルギー消費量が多くなり、省エネルギー化を図ることが困難であった。また、複数の工作機械760のうち、一部の工作機械760において、自動工具交換装置が作動中であったり、工作機械760が停止中であったりしたことで使用されなかったクーラントは、クーラント回収トラフ746により一次クーラントタンク710に環流される。また、クーラント回収トラフ746内に加工滓が沈殿することを防ぐため、適量のクーラントがクーラント回収トラフ746内に流されている。このため、クーラント自体は再利用されるが、大量の清浄なクーラントを再度一次クーラントタンク710に戻して再度濾過装置722により濾過することになり、全体としてエネルギーの無駄が発生する。
【0004】
また、濾過装置722で廃棄されたクーラントは、ドレイン7221を通って二次クーラントタンク730からタンク726に一旦貯留される。その後、タンク726内のクーラントはトラフ7222に廃棄される。また、二次クーラントタンク730からオーバーフローしたクーラントもタンク726に一旦貯留される。
濾過装置722は、工作機械760で必要とされる最大量のクーラントを一台で常時濾過するため、クーラントの使用量が減少した場合には濾過するクーラント量をこれに合わせて減らすことができない。このため、濾過済みのクーラントが二次クーラントタンク730から溢れてしまい、無駄が生じる。さらには、無駄となった分のクーラントを濾過するためのエネルギーも無駄となってしまう。
そこで、省エネルギー化を実現するため、クーラントを循環させて工作機械760に供給するクーラント供給装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−109645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、定回転ポンプ及び可変回転ポンプで複数の工作機械それぞれにクーラントを循環供給すると共に、複数の工作機械それぞれに電磁開閉弁を配置して、ライン圧に応じて可変回転ポンプの回転数を調整する。しかし、バイパスを経由してクーラントを循環させる必要があるため、工作機械にクーラントを供給するために必要な可変回転ポンプによる圧力に加えて、定回転ポンプが常時稼働するため、エネルギーの省力化を図ることが困難である。
また、フィルタの効率が考慮されていないため、フィルタの濾過効率が低い場合には、クリーンタンク内のクーラントが汚染されるなどして、クリーンタンク内を頻繁にメンテナンスする必要が生じる。
【0007】
本発明は、廃棄するクーラントの量を低減させ、かつポンプ等に使用するエネルギーを低減し、省エネルギー化を実現できるクーラント供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)複数の工作機械にクーラントを供給するクーラント供給装置であって、使用済みの前記クーラントが貯留される一次クーラントタンクと、前記一次クーラントタンクに貯留された前記クーラントの不純物を分離する複数のサイクロン式濾過装置と、前記複数のサイクロン式濾過装置を通過した前記クーラントが貯留される二次クーラントタンクと、前記一次クーラントタンク及び前記二次クーラントタンクを連通し、前記複数の濾過装置ごとにそれぞれ設けられる複数の一次クーラント供給管と、前記二次クーラントタンクから前記複数の工作機械ごとにそれぞれ設けられる複数の二次クーラント供給管と、前記複数の二次クーラント供給管それぞれに設けられ、前記二次クーラントタンクから前記クーラントを供給する供給圧力を制御する複数の供給ポンプと、前記二次クーラントタンクにおける前記クーラントの液面を検知する検知装置と、前記複数の供給ポンプ及び前記複数のサイクロン式濾過装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記検知装置が検知した前記液面に応じて前記複数のサイクロン式濾過装置を個別に始動又は停止させることを特徴とするクーラント供給装置。
【0009】
(1)に係る発明によれば、クーラント供給装置は、複数のサイクロン式濾過装置を備え、使用済みのクーラントが循環貯留される一次クーラントタンク及び複数のサイクロン式濾過装置で濾過されたクーラントが貯留される二次クーラントタンクを連通し、複数のサイクロン式濾過装置ごとに設けられた一次クーラントタンク供給管を備える。二次クーラントタンクから複数の工作機械へは、工作機械ごとに二次クーラント供給管が設けられて個別にクーラントを供給する供給ポンプを備える。また、二次クーラントタンクには、クーラントの液面を検知する検知装置を設け、制御装置は、二次クーラントタンクの液面に応じて複数のサイクロン式濾過装置の始動または停止を個別に制御する。
【0010】
これにより、サイクロン式濾過装置の稼働台数をこまめに制御して二次クーラントタンクへの流入流量を制御することができる。また、検知装置が二次クーラントタンクの液面を検知するので、制御装置がこれに基づいてサイクロン式濾過装置の稼働台数を変更することができる。よって、二次クーラントタンクの液面調整を細かく行うことができる。
さらには工作機械ごとに二次クーラントタンクからクーラントを供給したり、停止したりすることができるので、例えば、工作機械で自動工具交換装置が作動中であってもその間クーラントを棄てる必要がない。
このように、クーラントに無駄が発生せず、また、工作機械の稼働台数が少ない場合は、二次クーラントタンク内のクーラントの消費量も少ないので、サイクロン式濾過装置の稼働台数も少なくすることができ、全体として省エネルギー化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、廃棄するクーラントの量を低減させ、かつポンプ等に使用するエネルギーを低減し、省エネルギー化を実現できるクーラント供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るクーラント供給装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるクーラント供給装置の機能構成図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるクーラント供給装置の動作を示したフローチャートである。
【図4】本発明の従来例に係るクーラント供給装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2を参照してクーラント供給装置について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るクーラント供給装置の構成を示す図であり、図2は、クーラント供給装置の機能構成図である。
【0014】
本実施形態に係るクーラント供給装置1は、一次クーラントタンク11からのクーラントを供給する一次クーラント供給部10と、使用済みのクーラントを濾過し、濾過したクーラントの供給を行う二次クーラント供給部2と、から構成され、濾過済みのクーラントを複数の工作機械部6に供給する。そして、工作機械部6で使用された使用済みのクーラントは、複数の工作機械60および一次側ライン20から一次クーラントタンク11に連通するクーラント回収トラフ61を通って一次クーラントタンク11に流入し、再利用される。
【0015】
一次クーラント供給部10は、使用済みのクーラントを貯留する一次クーラントタンク11と、一次フィルタ12と、一次ポンプ13と、一次フィルタ12及び一次ポンプ13の動作を制御する一次クーラント制御部14(図2参照)と、から構成される。
【0016】
一次クーラントタンク11は、複数の工作機械60で使用された使用済みのクーラントが貯留されるタンクである。使用済みのクーラントに含まれる加工滓は、一次クーラントタンク11内に沈殿して分離される。
一次フィルタ12は、クーラント回収トラフ61から流入するクーラントに含まれるスラッジや工作機械60から出る加工滓を除去するものであり、除去したスラッジや加工滓はベルトコンベア等(図示せず)により一次クーラントタンク11の外に運搬される。
【0017】
一次ポンプ13は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30へクーラントを流通させるポンプである。この一次ポンプ13は、本実施形態では、1つ設けられる。また、一次フィルタ12及び一次ポンプ13は、一次クーラント制御部14により始動や停止が制御される。
【0018】
二次クーラント供給部2は、一次クーラント供給部10に連通して一次クーラントタンク11内のクーラントを供給する一次側ライン20と、一次側ライン20から供給されたクーラントが貯留される二次クーラントタンク30と、二次クーラントタンク30から複数の工作機械60それぞれにクーラントを供給する二次ライン40と、二次クーラント供給部2を制御する制御装置としての二次クーラント制御部50(図2参照)と、により構成される。
【0019】
一次側ライン20は、一次クーラントタンク11内のクーラントを、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に供給するラインである。この一次側ライン20は、一次クーラントタンク11から二次クーラントタンク30に連通する一次クーラント供給管としての一次供給管21と、一次供給管21の途中に設けられ、一次クーラントタンク11に貯留されたクーラントの不純物を分離するサイクロン式濾過装置としてのフィルタ22と、一次供給管21の途中であってフィルタ22の上流側に設けられる上流側開閉バルブ23と、同様にフィルタ22の下流側に設けられるバルブとしての下流側開閉バルブ24と、フィルタ22の排出口からクーラント回収トラフ61にクーラントを流入させる排出流路221と、により構成される。
【0020】
一次供給管21は、一次クーラント供給部10から、上流側開閉バルブ23、フィルタ22、下流側開閉バルブ24及び二次クーラントタンク30をそれぞれ連通する供給管であり、一次ポンプ13により取水されたクーラントが通過する管である。この一次供給管21は、フィルタ22の数に応じて、フィルタ22ごとに複数設けられる。したがって、上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24もフィルタ22の数に応じて、一次供給管21ごとに設けられる。
【0021】
フィルタ22は、本実施形態ではサイクロン式の濾過装置である。このフィルタ22は、二次クーラント制御部50によりその始動又は停止が制御される。フィルタ22は、クーラントに含まれる固形粒子等の不純物を除去するフィルタである。
【0022】
排出流路221は、複数のフィルタ22それぞれの排出口から、クーラント回収トラフ61にクーラントを流入させるように形成された排出用の流路である。この流路は、パイプ状の部材またはトラフのような溝状の部材により形成される。この排出流路221には、フィルタ22がクーラントから分離した不純物を高濃度に含む廃液が排出され、クーラント回収トラフ61にこれらの廃液が導出される。排出流路221の出口は、クーラント回収トラフ61の上流側となるように設けられることが好ましい。この上流側とは、クーラント回収トラフ61において、一次クーラントタンク11から最も遠い位置に配置された工作機械60からクーラント回収トラフ61に接続する部分近傍と同じか、これよりも遠い位置であることを示す。
この排出流路221の途中には、ドレインバルブ222が設けられており、排出流路221に流れるクーラントの流量を調節する。
【0023】
上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24は、一次供給管21を遮断又は開放するバルブであり、本実施形態では電磁弁が使用され、二次クーラント制御部50により制御される。
例えば、二次クーラント制御部50が複数のフィルタ22のうち、所定のフィルタ22を始動させる場合には、まず、当該フィルタ22の上流側に配置された上流側開閉バルブ23をオンにして開けた状態とする。そして、一次ポンプ13とフィルタ22を始動させる。このとき、下流側開閉バルブ24はオフとして閉じた状態のままである。そして、フィルタ22が始動してから所定時間経過後、下流側開閉バルブ24をオンにして開けた状態にして、二次クーラントタンク30への供給を開始する。
また、フィルタ22の廃液は排出流路221に導出されるが、廃液に含まれる固形粒子等の不純物が堆積する場合がある。この場合には、一次ポンプ13を稼働させたまま下流側開閉バルブ24を閉じた状態にして一次供給管21内を高圧にし、排出流路221のドレインバルブ222を開閉して高圧のクーラントをフラッシングし、堆積した固形粒子等を除去することができる。このとき、堆積する不純物を除去するため、ドレインバルブ222を高圧として必要量のみ間欠的に吐出するようにすることが好ましい。
【0024】
二次クーラントタンク30は、フィルタ22により不純物が除去されたクーラントが貯留されるタンクである。二次クーラントタンク30には、二次クーラントタンク30内のクーラント量を検知する検知装置としてのフロートスイッチ31が設けられる。
【0025】
フロートスイッチ31は、二次クーラントタンク30内に貯留されるクーラントの液面を検知する。詳細には、二次クーラントタンク30内のクーラントの液面の高さを検知して、その高さを示す信号を二次クーラント制御部50に送信する。液面が上昇又は下降するのに応じて、液面に浮かぶフロート(図示せず)も同様に上昇又は下降し、フロートの位置で液面を検知する。
【0026】
二次ライン40は、複数の工作機械60に二次クーラントタンク30内のクーラントを供給するラインであり、工作機械60に連通する二次クーラント供給管としての二次供給管41と、二次供給管41の途中に設けられて二次クーラントタンク30内のクーラントを二次ライン40に流通させる二次ポンプ42と、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60の間に設けられる圧力センサ43とにより構成される。
【0027】
二次供給管41は、二次クーラントタンク30と工作機械60とを連通して、二次クーラントタンク30内のクーラントを工作機械60に供給する管である。二次供給管41は、工作機械60の数に応じて設けられる。したがって、二次ポンプ42や圧力センサ43も工作機械60の数に応じて設けられ、二次供給管41ごとに個別に配置される。
【0028】
二次ポンプ42は、二次クーラントタンク30から工作機械60へクーラントを流通させるポンプである。この二次ポンプ42は、工作機械60の数に応じて複数設けられ、二次クーラントタンク30から工作機械60へ個別に連通する二次供給管41ごとに設けられる。また、二次ポンプ42は、二次クーラント制御部50により始動や停止が制御される。
二次ポンプ42は、本実施形態においては、インバータ44を有しており、二次クーラント制御部50はこのインバータ44に指令信号を送信することで二次ポンプ42を制御する。
【0029】
圧力センサ43は、二次供給管41の途中であって、二次ポンプ42と工作機械60との間に設けられるセンサである。この圧力センサ43は、二次ポンプ42から工作機械60までの二次供給管41の圧力を測定する。また、圧力センサ43が測定した圧力は、常時二次ポンプ42のインバータ44にフィードバックされ、インバータ44を通じて二次クーラント制御部50が当該圧力をモニタするとともに、最適な圧力を維持するように二次ポンプ42の回転数が制御される。
【0030】
二次クーラント制御部50は、図2に示すように、二次クーラント供給部2を制御する。具体的には、一次側ライン20では、二次クーラント制御部50は、フィルタ22の始動や停止、回転数等を制御し、上流側開閉バルブ23及び下流側開閉バルブ24、及びドレインバルブ222の開閉を制御する。
また、二次ライン40では、インバータ44を介して二次ポンプ42の始動や停止、回転数等を制御する。圧力センサ43は測定した圧力値を二次ポンプ42のインバータ44に送信し、二次ポンプ42のインバータ44を通じて二次クーラント制御部50が間接的に制御する。
また、二次クーラント制御部50は、一次クーラント供給部10の一次クーラント制御部14、及び複数の工作機械部6とそれぞれ通信を行い、工作機械60の稼働数に合わせて二次ポンプ42、フィルタ22、上流側開閉バルブ23、下流側開閉バルブ24等の動作を制御する。詳細は後述する。
【0031】
濾過済みのクーラントが二次クーラント供給部2から工作機械60に供給される。工作機械60は、工作機械制御部601と、開閉バルブ602とを少なくとも有する。
工作機械制御部601は、工作機械60の動作及び開閉バルブ602の動作を制御する。
開閉バルブ602は、二次クーラント供給部2と工作機械60との間に配置され、二次クーラント供給部2から連通する二次供給管41を遮断又は開放するバルブである。
【0032】
また、工作機械60と一次クーラントタンク11とは、クーラント回収トラフ61により連通する。クーラント回収トラフ61は、工作機械60と一次クーラントタンク11とを連通して、工作機械60で使用された使用済みのクーラントを回収して、一次クーラントタンク11に導出する。このクーラント回収トラフ61は、工作機械60ごとにそれぞれ設けられてよく、また、複数の工作機械60からそれぞれ一本のラインに集約して一次クーラントタンク11に連通するようにしてもよい。また、クーラント回収トラフ61には、フィルタ22の排出流路221がクーラント回収トラフ61の上流側に接続され、フィルタ22の廃液も導入される。
【0033】
図3を参照して、クーラント供給装置1の動きについて説明する。図3は、クーラント供給装置1の動きを示すフローチャートである。なお、一次クーラント供給部10の一次ポンプ13は稼働しているものとする。
【0034】
ステップS10では、二次クーラント制御部50は二次クーラントタンク30の液面を検知する。具体的には、二次クーラントタンク30に設けられたフロートスイッチ31から液面高さを示す信号を受信する。
【0035】
ステップS11では、二次クーラント制御部50はフロートスイッチ31から受信した信号に基づいて、二次クーラントタンク30内のクーラントの液面高さが所定の高さであるか否かを判別する。液面が所定の高さである場合には、ステップS12に移り、所定の高さでない場合には、ステップS10に戻る。なお、この液面の高さは、複数のフィルタ22の稼働台数を決定するために参照されるものであり、フィルタ22の稼働台数や各フィルタ22の濾過流量に応じて複数設定することができる。なお、この設定は、クーラント供給装置1の管理者により設定可能である。また、この判断は、液面の高さが所定の高さまで下がった場合だけでなく、液面の高さがある高さに達した場合であってもよい。
【0036】
詳細には、フロートスイッチ31は、上記液面の高さを5段階で検知するように設定される。具体的には、フロートスイッチ31は、液面高さが高い順に「満水」、「上限」、「クリーン供給1」、「クリーン供給2」及び「下限」という5段階のレベルで液面の高さを検知する。フィルタ22を稼働させるレベルは、「上限」レベル、「クリーン供給1」レベル及び「クリーン供給2」レベルであり、「上限」レベルに液面高さがあるときはフィルタ22の稼働台数は0台であるとする。また、「クリーン供給1」レベルに液面高さがあるときは、フィルタ22の稼働台数はフィルタ22の全稼働可能台数の半数であり、「クリーン供給2」レベルに液面高さがあるときはフィルタ22の稼働台数は全台数であるとする。
ここで、フィルタ22は、液面高さが「上限」レベル又は「クリーン供給1」レベルにあるときを中心として稼働するため、頻繁に稼働するフィルタ22と稼働しないフィルタ22との間に稼働時間の差が出る場合がある。そこで、一次クーラント制御部14はタイマ(図示せず)を備え、稼働するフィルタ22の台数をレベルに合わせて一定に保持しながら、実際に稼働するフィルタ22をタイマ設定により一定時間毎に順番に稼働させることが好ましい。これにより、フィルタ22の劣化等の偏りを抑制して、フィルタ22の性能の確保と長寿命化を図ることができる。
また、「クリーン供給1」レベル及び「クリーン供給2」レベル時のフィルタ22の稼働台数を二次クーラント制御部50により設定可能とすることが好ましい。工作機械60及び二次ポンプ42の稼働台数やクーラントの使用流量によって、二次クーラントタンク30内の液面変動が異なるためである。「クリーン供給1」レベル及び「クリーン供給2」レベル時の設定台数を決定できることにより、必要なときだけフィルタ22を稼働させることができる。
【0037】
ステップS12では、二次クーラント制御部50はフィルタ22の稼働台数を決定する。稼働台数を決定するには、フィルタ22の濾過流量及び現在の稼働台数、工作機械60で使用されるクーラント量及び工作機械60の稼働台数に応じて決定される。
【0038】
ステップS13では、フィルタ22を始動又は停止させる。フィルタ22を始動させるには、詳細には、二次クーラント制御部50は、まず、上流側開閉バルブ23を開ける。これにより、フィルタ22に一次クーラントタンク11内のクーラントが供給される。
次に、二次クーラント制御部50は、稼働させるフィルタ22に始動信号を送信してフィルタ22を始動させて濾過を開始させる。本実施形態では、サイクロン式のフィルタを使用するので、分離精度が所定のレベルに上がるまで所定時間を要する。したがって、この状態では下流側開閉バルブ24を閉じた状態とし、分離精度の低い状態で濾過されたクーラントを二次クーラントタンク30に供給しない。このとき、フィルタ22を通過したクーラントはフィルタ22の排出流路221を通ってクーラント回収トラフ61に導出される。
また、フィルタ22を停止させるには、二次クーラント制御部50は、停止させるフィルタ22に停止信号を送信してフィルタ22の稼働を停止させると共に、当該フィルタ22が停止することを意味する信号を一次クーラント供給部10の一次クーラント制御部14に送信する。
【0039】
ステップS14では、二次クーラント制御部50は、所定時間が経過したか否かを判別する。この所定時間は、フィルタ22が始動してからの経過時間である。二次クーラント制御部50は所定時間が経過した場合にはステップS15に移り、所定時間が経過しない場合は、このまま待機する。すなわち、フィルタ22の分離精度が所定のレベルに上がるまでステップS13の状態を維持する。
【0040】
ステップS15では、二次クーラント制御部50は下流側開閉バルブ24をオンにして開けた状態にし、フィルタ22を通過したクーラントを二次クーラントタンク30に供給する。
【0041】
ステップS16では、二次クーラント制御部50は、工作機械60にクーラントを供給するか否かを判別する。この場合、二次クーラント制御部50は、複数ある工作機械60それぞれの工作機械制御部601から工作機械60が稼働を開始する旨の信号を受信したか否かを判別する。そして、工作機械制御部601から稼働開始の信号を受信した場合には、ステップS17に移る。また、工作機械制御部601から稼働開始の信号を受信せず、クーラントを供給しない場合には、ステップS10に戻る。
【0042】
ステップS17では、二次クーラント制御部50は、クーラントを供給する工作機械60に連通する二次供給管41に設けられた二次ポンプ42に始動信号を送信し、二次ポンプ42の稼働を開始して、クーラントを供給する工作機械60の工作機械制御部601にクーラントの供給が開始可能である旨の信号を送信する。この処理が終了した場合には、ステップS10に移る。
なお、二次クーラント制御部50からクーラントの供給を開始可能である旨の信号を受信した工作機械部6の工作機械制御部601は、信号を受信した工作機械60の工作機械制御部601は、開閉バルブ602を開けた状態とし、当該工作機械60にクーラントの供給を開始する。
【0043】
本実施形態によれば、フィルタ22を複数備え、フィルタ22ごとに一次供給管21を備えて一次クーラントタンク11と二次クーラントタンク30とを個別に連通するとしたので、フィルタ22の稼働台数をこまめに制御して二次クーラントタンク30への流入流量を制御することができる。
【0044】
本実施形態によれば、二次クーラントタンク30には検知装置としてのフロートスイッチ31を設け、二次クーラント制御部50は、フロートスイッチ31が検知した二次クーラントタンク30の液面の高さに応じてフィルタ22の稼働台数を制御する。これにより、二次クーラントタンクのオーバーフローを防止することができるとともに、従来オーバーフローにかかっていたエネルギーロスをなくすことができる。
【0045】
本実施形態によれば、工作機械60ごとに二次供給管41及び二次ポンプ42を備えるので、稼働している工作機械60に連通する二次供給管41の二次ポンプ42のみ稼働させて、他の二次ポンプ42を停止させればよいので、使用するクーラントの量を効率的に制御するとともに、二次ポンプ42等を稼働するためのエネルギーを抑制することができ、省エネルギー化に寄与することができる。
【0046】
本実施形態によれば、二次ポンプ42と工作機械60との間に開閉バルブ602を備えたので、工作機械60において自動工具交換装置が稼働中の場合には、開閉バルブ602をオフにして閉じた状態とすることができる。このため、工作機械60において一時的にクーラントを使用しない場合があっても、クーラントを棄てる必要が無い。一方で、圧力センサ43により二次供給管41内の圧力を常時監視して二次ポンプ42のインバータ44にフィードバックしており、インバータ44を通じて二次クーラント制御部50が二次ポンプ42の回転数を制御することができる。このため、開閉バルブ602をオフの状態であったり、クーラントの消費量が低い場合であったりしても最適な圧力に維持したりするなど、こまめな調整をすることができる。また、二次ライン40において、常に高圧で維持する必要が無いので、二次供給管41内のクーラントの温度が上昇することを抑制することができる。
【0047】
本実施形態によれば、複数のフィルタ22を備える。このフィルタ22は、サイクロン式のフィルタである。サイクロン式のフィルタは基本的にメンテナンスフリーとすることができるが、十分な濾過精度が得られるまでは稼働開始から多少の時間を要する。しかし、複数のフィルタ22を備えるため、複数のフィルタ22を、時間差を設けて稼働開始させることにより、段階的に二次クーラントタンク30に濾過したクーラントの供給を開始させることができ、全体として稼働開始のために要する時間を短縮することができる。
【0048】
本実施形態によれば、複数のフィルタ22それぞれについて、下流側に下流側開閉バルブ24を備えた。これにより、フィルタ22の濾過精度が低い状態のときにフィルタ22を通過したクーラントが二次クーラントタンク30に流入することを防止することができる。このため、二次クーラントタンク30内に固形粒子等の不純物が堆積することを防止し、二次クーラントタンク30のメンテナンス頻度を低減することができる。
【0049】
本実施形態によれば、フィルタ22を複数備え、フィルタ22ごとに一次供給管21を備えるとしたので、一次供給管21にクーラントを供給する一次ポンプ13や、フィルタ22は、単一のラインしかない場合よりも容量が小さいものを使用することができる。また、二次供給管41も工作機械60ごとに設け、二次ポンプ42も個別に設けたので、二次ポンプ42は、単一のラインしかない場合よりも小さい容量のものを使用することができる。さらには、二次クーラント制御部50によりこまめに一次ポンプ13や二次ポンプ42の回転数や稼働台数を制御することができるので、全体として使用するエネルギーの省力化をすることができる。
【0050】
本実施形態によれば、複数のフィルタ22それぞれの排出口からクーラント回収トラフ61にクーラントを流入させる排出流路221を備え、また、複数のフィルタ22それぞれの排出口に連通する排出流路221にそれぞれドレインバルブ222を設けた。これにより、クーラントを高圧で流した状態でドレインバルブ222を開閉してフラッシングすることにより、フィルタ22が分離したクーラントの不純物が排出流路221に堆積するのを防止することができる。
さらには、排出流路221は、クーラント回収トラフ61の上流側にクーラントを導出されるように形成される。これにより、排出流路221に堆積したクーラントをクーラント回収トラフ61に押し流すと共に、クーラント回収トラフ61に堆積した工作機械60の加工滓もまた、一次クーラントタンク11側に押し流すことができる。
また、この場合、ドレインバルブ222よりクーラントの流量を調節することが可能であるので、排出流路221及びクーラント回収トラフ61に堆積した不純物や加工滓を押し流す分だけのクーラントを、排出流路221やクーラント回収トラフ61に流すよう調節することができるので、クーラント供給装置1においてメンテナンスに使用されるクーラントも節約することが可能である。
【0051】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【0052】
本実施形態においては、2つのフィルタ22及び工作機械60を図示しているがこれに限らず2つ以上のフィルタ22及び工作機械60を設けることができる。したがって、一次側ライン20の各構成(一次供給管21や一次ポンプ13等)もフィルタ22の台数に応じて設けられ、二次ライン40の各構成(二次供給管41や二次ポンプ42等)も工作機械60の台数に応じて設けられる。
【0053】
本実施形態においては、二次ポンプ42はインバータ44を備えるとしたがこれに限らない。例えば、インバータ44を備えず、二次クーラント制御部50が直接二次ポンプ42を制御するとしてもよい。この場合、圧力センサ43が測定した圧力のデータは、二次クーラント制御部50に送信される。
【符号の説明】
【0054】
1 クーラント供給装置
2 二次クーラント供給部
6 工作機械部
10 一次クーラント供給部
11 一次クーラントタンク
12 一次フィルタ
13 一次ポンプ
20 一次側ライン
21 一次供給管
22 フィルタ
23 上流側開閉バルブ
24 下流側開閉バルブ
30 二次クーラントタンク
31 フロートスイッチ
40 二次ライン
41 二次供給管
42 二次ポンプ
43 圧力センサ
44 インバータ
60 工作機械
61 クーラント回収トラフ
221 排出流路
222 ドレインバルブ
602 開閉バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工作機械にクーラントを供給するクーラント供給装置であって、
使用済みの前記クーラントが貯留される一次クーラントタンクと、
前記一次クーラントタンクに貯留された前記クーラントの不純物を分離する複数のサイクロン式濾過装置と、
前記複数のサイクロン式濾過装置を通過した前記クーラントが貯留される二次クーラントタンクと、
前記一次クーラントタンク及び前記二次クーラントタンクを連通し、前記複数の濾過装置ごとにそれぞれ設けられる複数の一次クーラント供給管と、
前記二次クーラントタンクから前記複数の工作機械ごとにそれぞれ設けられる複数の二次クーラント供給管と、
前記複数の二次クーラント供給管それぞれに設けられ、前記二次クーラントタンクから前記クーラントを供給する供給圧力を制御する複数の供給ポンプと、
前記二次クーラントタンクにおける前記クーラントの液面を検知する検知装置と、
前記複数の供給ポンプ及び前記複数のサイクロン式濾過装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検知装置が検知した前記液面に応じて前記複数のサイクロン式濾過装置を個別に始動又は停止させることを特徴とするクーラント供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−31341(P2011−31341A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180484(P2009−180484)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【Fターム(参考)】