説明

クールビスまたはウォームビズの達成評価方法

【課題】 一つの建物について夏季のクールビズと冬季のウォームビズの現況を把握して達成の程度を評価し、室内環境やエネルギー効率を良好にできるか否かの判断に寄与するクールビスまたはウォームビズの達成評価方法を提案する。
【解決手段】 対象となる建物について複数の計測箇所での対象期間の平均温度を計測し、平均温度が、クールビズを達成している達成温度領域と未達成の未達成温度領域、達成を阻害している阻害温度領域のいずれに含まれるかを判定し、含まれている計測箇所数の割合を円グラフに描く。達成程度で数値を異ならせた任意のクールビズ係数α1、α2、α3を前記割合に乗じたクールビズ評価値Xc、、Yc、Zcを、C:クールビズ率 = (Xc+Yc+Zc)/10 に代入してクールビズ率Cを算出し、クールビズの達成程度の評価指標とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷房時期におけるクールビズ、または暖房時期におけるウォームビズの達成の程度を評価し、対象となる建物の空調運転の良否を判断して、建物のエネルギー消費の適否の指針を提供するクールビスまたはウォームビズの達成評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題の深刻化は、建物における省エネルギーやエネルギー効率の最適化を推進することを要求している。エネルギー削減を図る上において、種々のエネルギー効率の向上を図ることが要求される。このための手法として、ビルエネルギーマネジメントシステム(Building and Energy Management System、以下「BEMS」と略記する。)が導入され、建物の施設内における空調設備や照明設備等を対象として、室内環境や設備の状況を監視し、それらの運転制御を行うことによって、室内環境とエネルギー消費状況の最適化を図ることで、エネルギー削減が図られている。
【0003】
一方、地球環境改善のためには温室効果ガスの削減が急務であり、そのための方法としていわゆるクールビズの導入が図られている。これは、冷房時の室温を28℃に設定し、斯かる環境下で快適に過ごす工夫を組織や個人で行うようにしたものである。例えば、ノーネクタイやノージャケット等による快適に過ごせる服装を選択したり、窓辺に適宜な植物を配していわゆる緑のカーテンを配したりすることで、室温を28℃に設定した場合でも快適に過ごせるようにするものである。
【0004】
他方、秋冬の室内温度を20℃程度に低く設定した環境として、この環境下で快適に過ごせるよう、例えば厚手のシャツや保温下着、膝掛けの利用などにより工夫しようとするウォームビズが導入されている。
【0005】
ところで、前記BEMSを利用してエネルギーの適正化に寄与しようとする技術として、例えば、特許文献1には、建物で使用されるエネルギーの実績値を目標値以下にするためのビルエネルギー管理装置として、建物で使用されるエネルギーの現時点における実績値を入力し、入力された現時点の実績値と所定期間の目標値とを照合する照合手段と、照合手段による照合結果を月形式の累積グラフ、日形式の累積グラフまたは時間形式の累積グラフのいずれかで、前記所定期間の目標値に対する現時点の状況を表示部に表示させる表示制御手段と、を備えた構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、業務用ビル等の施設におけるエネルギー消費を監視するエネルギー監視装置として、施設内でのエネルギー消費に関するエネルギー消費情報を表示手段に表示するエネルギー監視装置において、所定の計量区分でのエネルギー消費に関する前記エネルギー消費情報を表示する際に、該計量区分を選択するための選択画面であって、上位の階層の計量区分を下位の階層において所定の要素で分別することによって選択可能な計量区分を階層化し、該階層化した各計量区分を選択可能に階層表示した選択画面を前記表示手段に表示させる選択画面表示手段と、前記選択画面表示手段により表示された選択画面において所望の計量区分を選択する選択手段と、前記選択手段により選択された計量区分のエネルギー消費に関するエネルギー消費情報を前記表示手段に表示させるエネルギー消費情報表示手段と、を備えた構成が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には、施設内の多数の計測器からの膨大な計測データに基づき所望の評価を行うためのグラフ表示が容易に行えるエネルギー管理システムのためのグラフ表示装置として、被計測対象に対して設けられた多数の計測器から得られる計測データに基づいて所望の評価を行うためのグラフ表示を入力手段と表示手段を使用してオペレータと対話的に行う施設内のエネルギー管理を行うエネルギー管理システムのためのグラフ表示装置であって、各軸にそれぞれ計測名称又は時間軸が規定された所望の評価を行うための予め作成された多種の元グラフを格納した元グラフ格納手段と、上記各計測器から送られてくる計測データを蓄積して格納する計測データ蓄積格納手段と、上記元グラフ格納手段に格納されたグラフ一覧表を表示してオペレータに使用するグラフの選定を促す手段と、オペレータにより選定された元グラフの計測名称に関する上記計測データ蓄積手段に格納された計測データを表示しオペレータに上記元グラフの各軸に設定する計測データの選定を促す手段と、上記選定された元グラフおよび計測データによるグラフ表示の実行の指示をオペレータに促しこれに対する指示に従って表示を行うグラフ表示手段と、を備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−236904号公報
【特許文献2】特開2007−199783号公報
【特許文献3】特開2005−259062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ビルディング(以下「ビル」と略記する。)の管理を専門に行うビル管理会社等では複数のビル等の建物について管理を行っており、それぞれの建物について室内環境とエネルギー効率の最適化を図ることが行われている。この種の最適化のために、例えば特許文献1に記載されたエネルギー管理装置では、所定期間の目標値が設定され、この目標値と実績値とを照合した照合結果を月形式の累積グラフ等で表示させることが行われている。
【0010】
他方、ビルの室内環境等の最適化を図るためには、それぞれの室について個別にそれぞれの室内環境等を把握する必要がある。また、ビルの立地等によっても室内環境等が異なるから、複数の建物の管理を行っているビル管理会社等は、個別のビル毎についてそれぞれの室の室内環境等を把握することが必要となる。そして、把握した室内環境等のデータをもとにして、室内環境やエネルギー効率の最適化を図るための空調設備や照明設備等の運転の調整を行うことになる。
【0011】
ビル管理会社等は、把握した室内環境やエネルギー効率の最適化を図るための空調設備等の運転調整について、建物の所有者に対して説明する。このとき、所有者の理解が容易となるような資料を必要とする。
【0012】
建物の所有者にエネルギー効率の適否について説明を行う際に、特に、クールビズあるいはウォームビズを参照しながら行うことで、エネルギー効率の適否の判断基準となる一つのしきい値を示すことができるから、エネルギー効率の向上させるための対応策をより簡潔に理解することができる。
【0013】
そこで、この発明は、多くの建物にBEMSが導入されていることに着目し、このBEMSで得られる室内環境等の各種の計測データを基にして、当該建物におけるクルールビズあるいはウォームビズの達成の程度を容易に把握できて、当該建物についてのエネルギー効率の改善についての提案に供するのに便利となるクールビスまたはウォームビズの達成評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るクールビスの達成評価方法は、一つの建物についての複数箇所の所望の計測場所における任意の期間の温度を捕捉し、前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、前記平均温度を、クールビズの達成に寄与する達成温度領域と、クールビズに準ずる未達成温度領域と、クールビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害割合をZ(%)とし、これら割合X、Y、Zを円グラフに描いて、前記建物についてのクールビズの達成程度を表示させることを特徴としている。
【0015】
前記達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域に含まれる測定場所の割合を円グラフに描画する。この円グラフで達成領域割合が広く描かれていれば、当該建物のクールビズの達成程度は良好であり、阻害領域割合が広い場合には、改善の余地があると判断できる。
【0016】
また、請求項2の発明に係るクールビスの達成評価方法は、一つの建物についての複数箇所の所望の計測場所における任意の期間の温度を捕捉し、前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、前記平均温度を、クールビズの達成に寄与する達成温度領域と、クールビズに準ずる未達成温度領域と、クールビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、前記達成領域割合Xと未達成領域割合Y、阻害領域割合Zのそれぞれに任意に定めたクールビズ係数α1、α2、α3を乗じて、クールビズ評価値Xc(=X×α1)、Yc(=Y×α2)、Zc(=Z×α3)を求め、これらクールビズ評価値Xc、Yc、Zcを
C:クールビズ率 = (Xc+Yc+Zc)/10 (式1)
に代入してクールビズ率Cを求めて、クールビズの達成程度の指標に供することを特徴としている。
【0017】
前記クールビズ係数α1、α2、α3は任意に定めた数値を係数として扱うことで構わないが、その場合、前記達成領域割合Xに対するクールビズ係数α1を有利な数値と、未達成領域割合Yに対するクールビズ係数α2を中間の数値と、阻害領域割合Zに対するクールビズ係数α3を不利な数値として設定する。例えば、α1 = 10に、α2 = 5に、α3 = 0に設定する。これにより、それぞれのクールビズ評価値は、
Xc = X × α1 = X×10
Yc = Y × α2= Y × 5
Zc = Z × α3 = Z × 0 = 0
として算出される。
これらクールビズ評価値Xc、Yc、Zcからクールビズ率Cを前記式1により算出するものである。
【0018】
また、請求項3の発明に係るクールビスの達成評価方法は、前記クールビズ率を前年同期間の値と比較して、クールビズの達成の程度を評価することを特徴としている。
【0019】
クールビズの達成程度を把握する場合に、前年の同期間のクールビズ率Cと比較して判断しようとするものである。
【0020】
また、請求項4の発明に係るウォームビズの達成評価方法は、一つの建物についての所望の計測場所における一の期間の温度を捕捉し、前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、前記平均温度を、ウォームビズの達成に寄与する達成温度領域と、ウォームビズに準ずる未達成温度領域と、ウォームビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、これら割合X、Y、Zを円グラフに描いて、前記建物についてのウォームビズの達成程度を表示させることを特徴としている。
【0021】
前記達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域に含まれる測定場所の割合を円グラフに描画する。この円グラフで達成領域割合が広く描かれていれば、当該建物のウォームビズの達成程度は良好であり、阻害領域割合が広い場合には、改善の余地があると判断できる。
【0022】
また、請求項5の発明に係るウォームビズの達成評価方法は、一つの建物についての所望の計測場所における一の期間の温度を捕捉し、前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、前記平均温度を、ウォームビズの達成に寄与する達成温度領域と、ウォームビズに準ずる未達成温度領域と、ウォームビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、前記達成領域割合Xと未達成領域割合Y、阻害領域割合Zのそれぞれに任意に定めたウォームビズ係数β1、β2、β3を乗じて、ウォームビズ評価値Xw(=X×β1)、Yw(=Y×β2)、Zw(=Z×β3)を求め、これらウォームビズ評価値Xw、Yw、Zwを
W:ウォームビズ率 = (Xw+Yw+Zw)/10 (式2)
に代入してウォームビズ率Wを求めて、ウォームビズの達成程度の指標に供することを特徴としている。
【0023】
前記ウォームビズ係数β1、β2、β3は任意に定めた数値を係数として扱うことで構わないが、その場合、前記達成範囲Xに対するウォームビズ係数β1を有利な数値と、未達成範囲Yに対するウォームビズ係数β2を中間の数値と、阻害範囲Zに対するウォームビズ係数β3を不利な数値として設定する。例えば、β1 = 10に、β2 = 5に、β3 = 0に設定する。これにより、それぞれのウォームビズ評価値は、
Xw = X × β1 = X × 10
Yw = Y × β2 = Y × 5
Zw = Z × β3 = Z × 0 = 0
として算出される。
これらウォームビズ評価値Xw、Yw、Zwからウォームビズ率Wを前記式2により算出するものである。
【0024】
また、請求項6の発明に係るウォームビズの達成評価方法は、前記ウォームビズ率を前年同期間の値と比較して、ウォームビズの達成の程度を評価することを特徴としている。
【0025】
ウォームビズの達成程度を把握する場合に、前年の同期間のウォームビズ率Wと比較して判断しようとするものである。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係るクールビスの達成評価方法によれば、クールビズの達成温度領域等を円グラフで表示することにより、達成の程度を視覚により確実で容易に、かつ、迅速に把握することができる。これにより、当該建物のエネルギー効率を向上させる方策を施すことができる。
【0027】
また、請求項2の発明に係るクールビスの達成評価方法によれば、クールビズ率とした数値により判断できるので、他の建物との比較に客観性を備えさせることができる。
【0028】
また、請求項3の発明に係るクールビスの達成評価方法によれば、クールビズに対する長期的な対応を把握でき、エネルギー効率の改善を確実に図ることができる。
【0029】
また、請求項4の発明に係るウォームビズの達成評価方法によれば、円グラフによりウォームビズの達成程度の把握を迅速、確実、かつ、容易に把握できる。
【0030】
また、請求項5の発明に係るウォームビズの達成評価方法によれば、ウォームビズ率とした数値により判断できるので、他の建物との比較に客観性を備えさせることができる。
【0031】
また、請求項6の発明に係るウォームビズの達成評価方法によれば、ウォームビズの導入についての評価を長期的に行い、エネルギー効率の改善により効果的に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明に係るクールビスの達成評価方法に用いられる円グラフであり、図2に示す一覧表が得られた建物に関して、クールビズの達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域のそれぞれに含まれる計測場所の割合を示す円グラフである。
【図2】この発明に係るクールビスの達成評価方法を実施するために、一つの建物について取得された温度を示す一覧表である。
【図3】過去3年間における同一期間のクールビズ率を比較する表であり、達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域の割合とクールビズ率とを示している。
【図4】図3に示した達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域に含まれる計測場所数の割合の変遷を示すグラフである。
【図5】図3に示したクールビズ率の変遷を示すグラフである。
【図6】この発明に係るウォームビズの達成評価方法を実施するために、一つの建物について取得された温度を示す一覧表である。
【図7】図6に示す一覧表が得られた建物に関して、ウォームビズの達成温度領域と未達成温度領域、阻害温度領域のそれぞれに含まれる計測場所の割合を示す円グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るクールビスまたはウォームビズの達成評価方法を具体的に説明する。
【0034】
図1〜図5にはクールビズの達成評価方法に使用される図表等である。図2には任意のビルについての温度を計測した結果を示す表である。このビルは24階建てであり、各階を4つのゾーンに分割して2階を除いた92箇所の計測場所について平均温度と最高温度、最低温度、設定温度を示しているものである。このうちの平均温度が27.5℃以上がクールビズの達成温度領域であり、平均温度が26.5−27.5℃の範囲がクールビズの達成に準じる未達成温度領域、26.5℃以下がクールビズの達成を阻害する阻害温度領域である。なお、前記達成温度領域にある計測箇所を二重線の枠で表示し、阻害温度領域にある計測箇所を枠内に1本の斜線を描き、阻害温度領域にあってクールビズの達成にとって甚だ不都合であり、迅速に改善する必要がある25℃以下の計測箇所については枠内に交差させた2本の斜線を描いてある。
【0035】
図1は図2に示したそれぞれの温度領域に含まれる計測箇所数の割合を表す円グラフであり、右上がりの斜線を描いた部分が達成温度領域にある計測箇所の達成領域割合Xを、左上がりの斜線を描いた部分が阻害温度領域にある計測箇所の阻害領域割合Zを、描画のない部分が未達成温度領域にある計測箇所の未達成領域割合Yを、それぞれ示しており、達成領域割合が36%、未達成領域割合が42%、阻害領域割合が22%となっている。
【0036】
図3は、図1に示すビルについて計測した過去3年にわたる同期間のクールビズの実施状況を示す一覧表で、各年の7月と8月のデータであり、図2に示す一覧表は2010年7月のデータである。この一覧表に示された割合の変化を図4に示してあり、同図において縦軸に実施割合(%)を横軸に計測期間を示している。また、図5には前記クールビズ率Cの変遷を示しており、縦軸にクールビズ率を、横軸に計測期間を示している。
【0037】
前記クールビズ率Cは、
C:クールビズ率 = (Xc+Yc+Zc)/10 (式1)
で求められる。
式1中のXc、Yc、Zcはクールビズ評価値であり、前記実施割合(%)にクールビズ係数α1、α2、α3を乗じて求める。
【0038】
前記クールビズ係数α1、α2、α3は、クールビズの達成の程度の指標となるクールビズ評価値を算出するための数値であり、任意に定めて構わないが、一つのビルについては一定であり、複数のビルにおけるクールビズ率の比較を行う場合には、当該ビル間のクールビズ率の比較に客観性を具備させるためには、これら複数のビルについても一定とすることになる。そして、例えば、達成領域割合Xに乗ずるクールビズ係数α1はクールビズの達成に対する評価ポイントが大きいため(α1 = 10)とし、阻害領域割合はクールビズの達成に何ら寄与していないのであるから(α3 = 0)とし、未達成領域割合は中間の領域であるから(α2 = 5)とする。
【0039】
ここで、図3に示す08年8月を例示して、クールビズ率Cの算出について説明する。
達成領域割合Xは14%であるので、クールビズ評価値Xcは、
Xc = X×α1 = 14×10 = 140 (式3)
同様に、
Yc = Y×α2 = 40×5 = 200 (式4)
Zc = Z×α3 = 46×0 = 0 (式5)
これらのクールビズ評価値を前記式1に代入すると、
クールビズ率 C = 140+200+0/10 = 34 (式6)
となり、クールビズ率が「C34」として取得される。
【0040】
そして、前述したように取得されたクルービズ率Cを比較することで、該当する建物におけるクールビズの達成の程度を把握できて、改善の対策について吟味することができる。すなわち、図3に示す実施状況において、10年7月についいてのクールビズ率Cを参照すると、「C57」となっており、08年8月のクールビズ率「C34」に対して23ポイント上昇していることが把握でき、クールビズの達成の程度が向上している。なお、10年8月には「C50」となってポイントが低下したことが把握できる。また、図5に示すように、グラフ化することによってクールビズ率Cの変遷を容易に把握することができ、改善の余地の有無等の判断を迅速に行える。
【0041】
以上の説明では、任意の建物についてのクールビズの達成程度を把握し、検証する場合について説明したが、複数の建物についてのクールビズ率の達成程度を比較する場合にも前記クールビズ率Cを利用することができる。
【0042】
次に、図6と図7に基づいて、この発明に係るウォームビズの達成評価方法について説明する。
【0043】
図6は図1に示すクールビズ率の評価を行った建物について同一の計測箇所における温度を計測した結果を示す表である。なお、本建物においては、暖房系統が少なく、17階と18階の第1ゾーンと第2ゾーンのみに暖房系統が利用されているのみである。そして、平均温度が21.0℃以下を達成温度領域、22℃を未達成温度領域、23.0℃以上を阻害温度領域とし、それぞれにウォームビズ係数β1、β2、β3を対応させ、それぞれの領域に含まれる測定箇所の割合をこれらウォームビズ係数β1、β2、β3に乗じて、ウォームビズ評価値Xw、Yw、Zwを算出し、これらウォームビズ評価値を、次式に代入してウォームビズ率Wを求める。
W:ウォームビズ率 = (Xw+Yw+Zw)/10 (式2)
なお、図6に示す一覧表に示されているように、この建物の暖房領域においてはいずれのゾーンでもウォームビズが達成されていない。
【0044】
また、図7は図6に示したそれぞれの温度領域に含まれる計測箇所数の割合を表す円グラフである。この建物においては暖房系統が少ないため、達成温度領域にある計測箇所の割合を示す範囲に斜線を描画し、その他の部分は何も描画していない。なお、達成温度領域と阻害温度領域については0%であるので、円グラフには現出しない。なお、便宜上、暖房系統無しの比率は、達成温度領域に加算し、その旨を特記する。
【0045】
このウォームビズ率Wについても、他のビルにおけるウォームビズの達成程度を比較する指標とすることができ、また、任意のビルの前年同期間におけるウォームビズ率Wの変遷の判断の指標とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明に係るクールビスまたはウォームビズの達成評価方法によれば、クールビズまたはウォームビズの達成程度を容易に把握でき、建物の所有者が室内環境やエネルギー効率の改善の要否を容易に把握できるので、これらの改善の促進に寄与する。
【符号の説明】
【0047】
X 達成領域割合
Y 未達成領域割合
Z 阻害領域割合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの建物についての複数箇所の所望の計測場所における任意の期間の温度を捕捉し、
前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、
前記平均温度を、クールビズの達成に寄与する達成温度領域と、クールビズに準ずる未達成温度領域と、クールビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、
前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、
これら割合X、Y、Zを円グラフに描いて、前記建物についてのクールビズの達成程度を表示させることを特徴とするクールビスの達成評価方法。
【請求項2】
一つの建物についての複数箇所の所望の計測場所における任意の期間の温度を捕捉し、
前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、
前記平均温度を、クールビズの達成に寄与する達成温度領域と、クールビズに準ずる未達成温度領域と、クールビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、
前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、
前記達成領域割合Xと未達成領域割合Y、阻害領域割合Zのそれぞれに任意に定めたクールビズ係数α1、α2、α3を乗じて、クールビズ評価値Xc(=X×α1)、Yc(=Y×α2)、Zc(=Z×α3)を求め、
これらクールビズ評価値Xc、Yc、Zcを
C:クールビズ率 = (Xc+Yc+Zc)/10 (式1)
に代入してクールビズ率Cを求めて、クールビズの達成程度の指標に供することを特徴とするクールビスの達成評価方法。
【請求項3】
前記クールビズ率を前年同期間の値と比較して、クールビズの達成の程度を評価することを特徴とする請求項2に記載のクールビスの達成評価方法。
【請求項4】
一つの建物についての所望の計測場所における一の期間の温度を捕捉し、
前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、
前記平均温度を、ウォームビズの達成に寄与する達成温度領域と、ウォームビズに準ずる未達成温度領域と、ウォームビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、
前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、
これら割合X、Y、Zを円グラフに描いて、前記建物についてのウォームビズの達成程度を表示させることを特徴とするウォームビズの達成評価方法。
【請求項5】
一つの建物についての所望の計測場所における一の期間の温度を捕捉し、
前記温度から前記計測場所における平均温度を算出し、
前記平均温度を、ウォームビズの達成に寄与する達成温度領域と、ウォームビズに準ずる未達成温度領域と、ウォームビズの達成を阻害している阻害温度領域とに区分し、
前記それぞれの領域に存する測定場所の数の割合を算出し、前記達成温度領域に含まれる測定場所数の達成領域割合をX(%)と、前記未達成温度領域に含まれる測定場所数の未達成領域割合をY(%)と、前記阻害温度領域に含まれる測定場所数の阻害領域割合をZ(%)とし、
前記達成領域割合Xと未達成領域割合Y、阻害領域割合Zのそれぞれに任意に定めたウォームビズ係数β1、β2、β3を乗じて、ウォームビズ評価値Xw(=X×β1)、Yw(=Y×β2)、Zw(=Z×β3)を求め、
これらウォームビズ評価値Xw、Yw、Zwを
W:ウォームビズ率 = (Xw+Yw+Zw)/10 (式2)
に代入してウォームビズ率Wを求めて、ウォームビズの達成程度の指標に供することを特徴とするウォームビズの達成評価方法。
【請求項6】
前記ウォームビズ率を前年同期間の値と比較して、ウォームビズの達成の程度を評価することを特徴とする請求項5に記載のウォームビスの達成評価方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47870(P2013−47870A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185595(P2011−185595)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000227618)日比谷総合設備株式会社 (13)
【出願人】(509201920)エヌ・ティ・ティ都市開発ビルサービス株式会社 (6)