説明

グアイアコール認識性を指標に選抜した微生物と微生物増殖促進活性を有するグアイアコール含有組成物

【課題】本発明は、動物・植物生体内にも存在するフェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法およびプロバイオティック乳酸菌の増殖促進作用を有するグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む含有組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法を鋭意開発したことにより見出し、これにより、フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物を見出したことによって上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物生体内に存在するフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識し増殖促進する微生物の選抜方法およびプロバイオティック乳酸菌の増殖促進活性を有するフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む組成物と、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識する微生物を含有する微生物添加剤および当該添加剤を用いる食品副産物の発酵飼料、飼料作物・牧草サイレージ、TMR発酵粗飼料調製方法並びに食品調製方法を含む、当該微生物および化合物の産業有効利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェルラ酸とは植物細胞壁由来成分の物質であり、豊富な天然由来バイオマス素材である。
【0003】
フェルラ酸は、主に米(非特許文献1および2)、小麦(非特許文献3および4)、野菜類(非特許文献5)、柑橘類(非特許文献6および7)などの植物や種子の細胞壁に存在する成分であり、フェニルアラニンおよびチロシンの代謝によって生成される(非特許文献8)。フェルラ酸は安全性が確認された物質であり、急性毒性試験や変異原性試験において担保されており(非特許文献8)、大量精製技術も既に確立されている(非特許文献8)。
【0004】
乳酸菌は、食品・飼料産業上の極めて重要な有益微生物である。また、ヒトおよび家畜の健康増進作用の観点から、乳酸菌増殖促進成分自体の市場価値も高い。乳酸菌の応用例としては、難消化性糖質(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等)に代表されるプレバイオティクスが挙げられる(非特許文献9)。
【0005】
近年、家畜用抗生剤の使用量増大による多剤耐性菌出現や環境汚染への懸念が社会問題化し、低減技術の確立が急務の課題である。使用量増大の理由として、家畜の成長促進のみならず、消化管内における有害微生物の増殖阻害を目的とした微生物叢改善への期待が挙げられる(非特許文献10)。
【0006】
一方、ヒトにおいては、精神的ストレスなどの各種ストレスにより、消化管内の微生物叢は悪化し、有害微生物が多く検出されるようになる(非特許文献11および12)。
【0007】
しかしながら、フェルラ酸のプロバイオティクス増殖促進作用を期待した共生細菌叢バランスを改善する技術は存在しない。
【0008】
家畜飼料の場合、消化管微生物叢を制御するために様々な抗生物質およびその投与方法が開発されている(非特許文献10)。また、飼料・食品にかかわらず、プロバイオティック微生物とりわけ乳酸菌による消化管微生物改善技術が数多く提唱されている。また、乳酸菌増殖促進作用を有する機能性成分として、これまで難消化性糖質が報告されており、いわゆるプレバイオティクスとして数多く商品化されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Fujimaki M., et al., 1977, Agric. Biol. Chem., 41, 1721−1725.
【非特許文献2】西沢知恵子 他, 1998. 45, 499−503.日本食品科学工業会誌
【非特許文献3】Pussay anawin V., et al., 1988, J. Agric. Food Chem. 36, 515−520.
【非特許文献4】Wetzel D.L., et al., 1988, Dev. Food Sci., 17 409−428.
【非特許文献5】Haimann W., HermannK., 1971, Z. Lebensm. Unters. Fors., 145, 20−26.
【非特許文献6】Naim M., et al., 1988, J. Food Sci., 53, 500−512.
【非特許文献7】Wheaton T.A., Stewart I., 1965, Nature, 206, 620−621.
【非特許文献8】山本正次, 2007, Bokin Bobai, 35, 317−323.
【非特許文献9】Roberfroid M.B., 1998, Br. J. Nutr., 80, 197−202.
【非特許文献10】Prescott J.F., 2008, Animal Health Research Review, 9, 127−133.
【非特許文献11】Holdman L.V., et al., 1976, Appl. Environ. Microbiol., 31, 359−375.
【非特許文献12】Takatsuka H. et al., 2000, Int. J. Hematol., 71, 273−277.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性を指標とした微生物選抜方法と、プロバイオティクスとして機能する乳酸菌に対して、増殖促進作用を発揮するフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含有する組成物を提供する。具体的には、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む生体内消化管環境を反映する低栄養培地を用いた培養系を確立することにより、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に対して増殖性を示す牧草サイレージ由来Lactobacillus plantarum TO1002をはじめとするLactobacillus乳酸菌に属する菌株(例えば、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei)を数株見出した。これまでに、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に対して増殖性を示す乳酸菌が発見された事例は本発明の開示まで発明者の知るところではなかった。したがって、本発明は、これまでに提供されたことのないフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物のプロバイオティクス増殖促進作用を期待した共生細菌叢バランスを改善する技術を提供する。
【0011】
また、乳酸菌の増殖活性化機能を有するフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物は、従来報告されている難消化性糖質成分とは化学構造上異なることから、プレバイオティクスとして、有用なグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を提供する。
【0012】
したがって、例えば、本発明は以下を提供する。
【0013】
1つの局面において、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus属乳酸菌株を提供する。
【0014】
1つの実施形態において、本発明は、グアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus plantarum菌株を提供する。
【0016】
1つの実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
およびコニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する。
【0017】
1つの実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、および
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する。
【0018】
1つの実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、および
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約7.8倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を上記の特徴に追加してあるいは独立して有する。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇し、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約3.8倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約6.9倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を上記の特徴に追加してあるいは独立して有する。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を上記の特徴に追加してあるいは独立して有する。
【0022】
1つの実施形態では、本発明において前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩ならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0023】
別の実施形態では、本発明において前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0024】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸およびカプサイシンからなる群より選択される。
【0025】
別の実施形態では、前記菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する。
【0026】
1つの実施形態では、本発明において、前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000、Lactobacillus plantarum TO1001、Lactobacillus plantarum TO1002またはLactobacillus plantarum TO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961である。あるいは、前記菌株は、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号:NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号:NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号:NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号:NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号:NITE AP−1312)でありうる。
【0027】
別の局面では、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を含む、Lactobacillus属乳酸菌株の増殖のための組成物を提供する。
【0028】
1つの実施形態では、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む、Lactobacillus plantarum菌株の増殖のための組成物を提供する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物を有する化合物を含む、Lactobacillus plantarum菌株の増殖のための組成物を提供する。
【0030】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物はフェルラ酸またはその誘導体である。
【0031】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩ならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0032】
別の実施形態では、本発明において前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む。
【0033】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物は、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、およびカプサイシンからなる群より選択される。
【0034】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物は、フェルラ酸またはその誘導体を含む。
【0035】
前記実施形態では、本発明において、前記菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する。
【0036】
1つの実施形態では、本発明において、前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000(受託番号NITE P−958)、Lactobacillus plantarum TO1001(受託番号NITE P−959)、Lactobacillus plantarum TO1002(受託番号NITE P−960)、Lactobacillus plantarum TO1003(受託番号NITE P−961)、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号:NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号:NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号:NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号:NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号:NITE AP−1312)である。
【0037】
1つの実施形態では、本発明において、前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000(受託番号NITE P−958)、TO1001(受託番号NITE P−959)、TO1002(受託番号NITE P−960)、TO1003(受託番号NITE P−961)またはJCM1149である。
【0038】
別の局面では、本発明は本発明の上記菌株を含むプロバイオティクス組成物を提供する。
【0039】
別の局面では、本発明は本発明の上記菌株とグアイアコール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクス組成物を提供する。
【0040】
別の局面では、本発明は本発明の上記菌株とグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクス組成物を提供する。
【0041】
1つの実施形態では、本発明において、前記化合物は、体内で存在する場合に前記菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも10μMで含まれる。
【0042】
別の局面では、本発明は本発明の上記菌株と組み合わせて使用するための、グアイアコール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクス組成物を提供する。
【0043】
別の局面では、本発明は本発明の上記菌株と組み合わせて使用するための、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクス組成物を提供する。
【0044】
別の局面では、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇する乳酸菌を選択する方法であって、該方法は、
A)乳酸菌を含む試料を提供する提供工程;
B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、グアイアコール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;および
C)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程
を包含する、方法を提供する。
【0045】
さらに別の局面では、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇する乳酸菌を選択する方法であって、該方法は、
A)乳酸菌を含む試料を提供する提供工程;
B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;および
C)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程
を包含する、方法を提供する。
【0046】
1つの実施形態では、本発明において、前記硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、前記硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、前記塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0である。
【0047】
1つの実施形態では、本発明において、前記培養工程は、32〜48時間実施される。
【0048】
1つの実施形態では、本発明において、前記培養工程は、25〜40℃で実施される。
【0049】
1つの実施形態では、本発明において、前記培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施される。
【0050】
1つの実施形態では、本発明において、前記乳酸菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する。
【0051】
1つの実施形態では、本発明において、前記乳酸菌は、Lactobacillus plantarum菌である。
【0052】
1つの実施形態では、本発明において、前記試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間でLactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される前記菌を含む。
【0053】
1つの実施形態では、本発明において、前記試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で前記Lactobacillus plantarum菌を含む。
【0054】
種々の実施形態において、本発明は、上記種々の実施形態のいずれか一つまたは複数の特徴を含む。
【発明の効果】
【0055】
本発明の微生物(例えば、Lactobacillus plantarum TO1002)は、牧草サイレージ由来であるため、食品残さ、サイレージ、発酵TMRに対して、プロバイオティック効果を期待した生菌剤として畜産分野において広範な利用が期待される。また、食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来フェルラ酸」も含まれ、それらのフェルラ酸等のグアイアコール骨格含有化合物を認識し増殖促進できることも見逃せない。植物性フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に着目することにより、糖類や水分調整といった従来の乳酸菌によるサイレージ発酵調製技術とは異なる観点から、サイレージ発酵促進剤としての付加価値も大いに期待でき、「新規サイレージ調製用乳酸菌添加物」や「乳酸菌増殖促進添加物」として飼料メーカーへの技術移転が期待される。
【0056】
フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および4−メトキシフェノール骨格を有する化合物は、上記のように植物性の食品素材に幅広く分布していることから、安全性が担保されている場合の利用性は極めて高いと考えられる。
【0057】
近年、家畜飼料分野においては、国産自給飼料拡大のため、飼料用米、飼料用麦あるいは廃棄野菜の飼料化が推進されており、これらに大量に含まれるフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の家畜健全育成に寄与する機能性について興味がもたれる。すなわち、本発明の応用化は、食品のみならず飼料分野にまで想定され、期待できるターゲット市場規模は大きく経済効果も高い。
【0058】
本発明は、食品や飼料にも応用しやすいフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物による乳酸菌の増殖促進作用により、腸内細菌のバランス改善や抗菌剤非依存型の家畜健全育成に貢献するものである。
【0059】
また、本研究で発明した選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒト糞便由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜により、ヒト由来である安全性が期待され、将来的に、ヒト向けの機能性食品の開発が期待できる。また、食経験と安全性が担保された植物資源(野菜・果物・種子等)由来の本含有組成物を有効利用することにより、プレバイオティクス様作用を発揮する新規機能性成分としての利用も充分に期待できる。先行例の難消化性糖質は、植物や海草由来成分も多く、製造者および消費者に比較的受け容れられやすいものである。
【0060】
抗生物質は、多剤耐性菌出現や環境汚染への懸念から、低減すべきものとして国際的にも注視されている。また、フェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物による消化管微生物叢の改善効果が期待される中で、フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に対する認識性を指標とする安全かつ有益な微生物の選抜方法が存在しなかったが、本発明は、本作用を積極的に利用したプロバイテオィック微生物の応用を可能にした。
【0061】
従って、本発明により効率の良い乳酸菌の増殖および活性を促進させるための培養技術確立が提供される。
【0062】
昨今の乳酸菌の増殖促進成分関連の市場規模を考慮すると、有益微生物の増殖促進成分に対するニーズは極めて高いが、フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含有する組成物による乳酸菌増殖促進作用の報告は国内外を通して見あたらず、このような物質での促進作用は初めて提供された。
【0063】
また、過敏性腸症候群患者の増加や腸内細菌叢バランスの悪化に端を発するアレルギー等の各種疾病の増大が深刻であり、増え続ける医療費が問題となっている。本発明は、このような問題を予防医学の観点から解決する手段を提供する。
【0064】
なお、フェルラ酸は乳酸菌に対して「抗菌作用」を有することが知られている。そして、pH5以下で抗菌作用が顕著となることも知られている。そうすると、本発明において見いだされた、フェルラ酸を与えて乳酸菌がpHを下げるように増殖するとの知見は従来の知見とは逆の方向であると考えられる。したがって、従来の知見からは本発明で見いだされた効果は、予想することができなかったものであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、フェルラ酸のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性の指標である培養液濁度を示す。培養終了後のpHの状況を示す参考として、同時に測定した培養液pHの測定結果を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)フェルラ酸を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度(A)および培養液pH(B)を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図2】図2は、フェルラ酸のLactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1003、JCM1149株に対する増殖促進活性を示す。これらの株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)フェルラ酸を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、***(P<0.001)で示す。AはTO1000株を示し、BはTO1001株を示し、CはTO1003株を示し、DはJCM1149株を示す。
【図3】図3は、フェルラ酸をLactobacillus plantarum TO1000、TO1001、TO1003、JCM1149株とともに培養後のpHの状況を示す参考として、同時に測定した培養液pHの測定結果を示す。これらの株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)フェルラ酸を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液pHを測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。AはTO1000株を示し、BはTO1001株を示し、CはTO1003株を示し、DはJCM1149株を示す。
【図4】図4は、バニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性の指標である培養液濁度を示す。培養終了後のpHの状況を示す参考として、同時に測定した培養液pHの測定結果を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)バニリン、あるいは、0、0.5、1、5、10、100または500(μM)ヒドロキシフェルラ酸、あるいは、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1または1.5(mM)カプサイシンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度(A)および培養液pH(B)を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図5】図5は、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)MHPG、ノルメタネフリン、VMA、3MT、HVA、VA、MOPETあるいはメタネフリンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図6】図6は、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩をLactobacillus plantarum TO1002株とともに培養後のpHの状況を示す参考として、同時に測定した培養液pHの測定結果を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)MHPG、ノルメタネフリン、VMA、3MT、HVA、VA、MOPETあるいはメタネフリンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液pHを測定した。無添加培地と比較した際の有意差を*(P<0.05)、**(P<0.01)、***(P<0.001)で示す。
【図7】図7は、グアイアコール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、アニソール、フェノールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ10,100または500(μM)のグアイアコール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、アニソール、フェノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間,37℃,嫌気条件下で培養し,培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)で示す。
【図8】図8は、ギンゲロールおよびショーガオールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0.1、0.25、0.5、0.75、1または1.5(mM)のギンゲロールおよびショーガオールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度(A,B)および培養液pH(C,D)を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【図9−1】図9は、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)のバニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールあるいはオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【図9−2】図9は、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)のバニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールあるいはオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【図10−1】図10は、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)のバニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールあるいはオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液のpHを測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【図10−2】図10は、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を示す。TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)のバニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールあるいはオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液のpHを測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【図11】図11は、カプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールのLactobacillus paraplantarum LOOC2020株、Lactobacillus sakei SG171株、およびLactobacillus casei LOOC82株に対する増殖促進活性を示す。各菌株を500(μM)のカプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールまたはおよびオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPO および30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。定義された用語は、特に言及しない限り、その変化形、対応する他の品詞においても同様の定義が適用されることが理解される。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0067】
(用語の定義)
本明細書において、必要に応じて、以下の略語を用いる。
【0068】
L.:Lactobacillus
L. plantarum:Lactobacillus plantarum
L. paraplantarum:Lactobacillus paraplantarum
L. sakei:Lactobacillus sakei
L. casei:Lactobacillus casei
MHPG:4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩
VMA:DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸 3MT:3−メトキシチラミン塩酸塩
HVA:ホモバニリン酸
VA:バニリン酸
MOPET:ホモバニリルアルコール。
【0069】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は本明細書中、統一した意味で使用し、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わされて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
【0070】
本明細書において「グアイアコール骨格を(含)有する化合物」または「グアイアコール骨格含有化合物」とは、グアイアコール(2−メトキシフェノール)骨格を有する任意の化合物を意味する。グアイアコール骨格を有する化合物は、いずれの異性体(光学異性体等)であってもよく、D/L体がある場合、両方をさすことが理解される。このような物質としては、例えば、グアイアコール、フェルラ酸、バニリン、クレオソール、4−エチルグアイアコール、ヒドロキシフェルラ酸、カプサイシン、ギンゲロール(ジンゲロール)、ショウガオール、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩、DL−ノルメタネフリン塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸、3−メトキシチラミン塩酸塩、ホモバニリン酸、バニリン酸(o−バニリン酸)、ホモバニリルアルコール、メタネフリン塩酸塩、コニフェリルアルコール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、塩化ペオニジン(Peonidin chloride)、2−メトキシヒドロキノン、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、イソバニリン、o−バニリン、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸ナトリウム、trans−フェルラ酸(トランスフェルラ酸)、イソフェルラ酸、イソクレオソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシけい皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾニトリル、2−メトキシ−5−メチルフェノール、3−ヒドロキシ−4−メトキシアニリン、ヘスペレチン、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリン酸、イソバニリルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、3−メトキシサリチル酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチルなどを挙げることができる。
【0071】
グアイアコール骨格を有する化合物の代表的な好ましい例としては、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物を挙げることができる。
【0072】
さらに好ましい実施形態としては、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸およびカプサイシンを挙げることができる。
【0073】
本明細書において、グアイアコール骨格を有する化合物のうちの「カテコールアミン代謝産物」とは、グアイアコール骨格を有する化合物のうち、生体内のカテコールアミン代謝産物またはその改変体をいう。
【0074】
本明細書において「4-メトキシフェノール骨格を(含)有する化合物」または「4-メトキシフェノール骨格含有化合物」とは、4-メトキシフェノール骨格を有する任意の化合物を意味する。4-メトキシフェノール骨格を有する化合物は、いずれの異性体(光学異性体等)であってもよく、D/L体がある場合、両方をさすことが理解される。このような物質としては、例えば、4-メトキシフェノール、4−メトキシ-3,5-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-5-メトキシカテコール、4-tert-ブチル-5-メトキシカテコール、1-(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-1-ブタノン、5-ヒドロキシ-8-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1(2H)-ナフタレノン、ブチルヒドロキシアニソール、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノンモノメチルエーテル、3-ブロモ-4-ヒドロキシアニソール、3-クロロ-4-ヒドロキシアニソール、3.4-ジメトキシフェノール、2-フルオロ-4-メトキシフェノール、2’-ヒドロキシ-5’-メトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシ-1-ナフトール、5-メトキシサリチル酸、4-メトキシ-2-ニトロフェノール、メチル5-メトキシサリチラート、シリンガアルコール、3,4,5-トリメトキシフェノール等挙げることができる。
【0075】
本明細書においてグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の「水溶性」とは、水に対する溶解性のほか、親水性溶媒(例えば、エタノール)を介して水に溶解しうる性質を包含する。本発明との関係で、水溶性の「高い」グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物は、エタノールに対する溶解性で分類することができ、「水溶性の高い」グアイアコール骨格は、エタノールに対して少なくとも50mg/ml溶解するものをいうが、これに限定されず、例えば、少なくとも100mg/ml、少なくとも90mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも60mg/ml、あるいは少なくとも40mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも20mg/ml、少なくとも10mg/ml溶解することをいう。
【0076】
本明細書においてグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の「分子量」は、当該分野において通常計算される手法で算出される。1つの実施形態において、例示的な分子量としては、本発明との関係で適切な「分子量」は、約1000Da以下、約900Da以下、約800Da以下、約700Da以下、約600Da以下、約400Da以下、約350Da以下等があげられるがこれに限定されない。なおグアイアコール自体の分子量が124.14であるので、最低限の分子量は、このグアイアコールの分子量ということになる。
【0077】
本明細書において「フェルラ酸」とは、フィトケミカルとして植物の細胞壁などに存在する有機化合物(CA537−98−4)であり、
【0078】
【化1】

【0079】
の構造式で表される。フェルラ酸は、抗酸化作用を有することが知られており、最近では抗菌性作用についても研究が進んでいる。フェルラ酸は、様々な細菌(乳酸菌も含む)に対して抗菌性を発揮するが、ソルビン酸などと同様、酸性側で抗菌性を発揮する酸型の抗菌成分である。理論に束縛されることを望まないが、代表的には至適pHは細菌によっても異なるがpH5.0以下とされていることから、本発明は、抗菌作用のない範囲での新たな活性を見出した点でも注目される。
【0080】
本明細書において、「Lactobacillus plantarum」または「L.plantarum」とは、Lactobacillus属に分類されるグラム陽性細菌であり、特に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・16S rRNA遺伝子配列の配列解析により、L.plantarum基準株(例えば、JCM1149T株)の16S rRNA配列(DDBJ/EMBL/GenBank accession number、X52653)と例えば99%などの高い相同性を示すこと
・CLUSTALX等によるアライメント解析後のMEGA等による系統樹解析により、L.plantarum基準株と系統学的に近縁な位置関係が認められること
・recA遺伝子を標的にしたmultiplex PCR法により、recAのPCR増幅産物がL.plantarum基準株の同増副産物と同じ電気泳動パターンを示すこと。
【0081】
本明細書において、「Lactobacillus paraplantarum」または「L.paraplantarum」とは、Lactobacillus属に分類されるグラム陽性細菌であり、特に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・16S rRNA遺伝子配列の配列解析により、L.paraplantarum基準株(例えば、DSM10667T)の16S rRNA配列(DDBJ/EMBL/GenBank accession number、AJ306297)と例えば99%などの高い相同性を示すこと
・CLUSTALX等によるアライメント解析後のMEGA等による系統樹解析により、L.paraplantarum基準株と系統学的に近縁な位置関係が認められること
・recA遺伝子を標的にしたmultiplex PCR法により、recAのPCR増幅産物がL.paraplantarum基準株の同増副産物と同じ電気泳動パターンを示すこと。
【0082】
本明細書において、「Lactobacillus sakei」または「L.sakei」とは、Lactobacillus属に分類されるグラム陽性細菌であり、特に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・16S rRNA遺伝子配列の配列解析により、L.sakei基準株(例えば、DSM20017T)の16S rRNA配列(DDBJ/EMBL/GenBank accession number、AM113784)と例えば99%などの高い相同性を示すこと
・CLUSTALX等によるアライメント解析後のMEGA等による系統樹解析により、L.sakei基準株と系統学的に近縁な位置関係が認められること
【0083】
本明細書において、「Lactobacillus casei」または「L.casei」とは、Lactobacillus属に分類されるグラム陽性細菌であり、特に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・16S rRNA遺伝子配列の配列解析により、L.casei基準株(例えば、ATCC393T)の16S rRNA配列(DDBJ/EMBL/GenBank accession number、AF469172)と例えば99%などの高い相同性を示すこと
・CLUSTALX等によるアライメント解析後のMEGA等による系統樹解析により、L.casei基準株と系統学的に近縁な位置関係が認められること
【0084】
本明細書において「乳酸菌属」とは、乳酸を多量に作る細菌属をいい、Lactobacillus属等に分類されるグラム陽性細菌であり、一般的に、以下の微生物学的特徴を有する菌株をいう。
・細胞はグラム陽性である。
・細胞形態は桿菌または球菌である。
・カタラーゼ陰性である。
・内性胞子を形成しない。
・運動性を持たない。
・消費したブドウ糖に対して50%以上の乳酸を産生する。
・ビタミンB群のうちナイアシンを必須要求する。
【0085】
本明細書において、「Lactobacillus属乳酸菌(株)」とは、乳酸菌のうち、Lactobacillus属に属する任意の種の菌株をいう。その特徴は以下のとおりである
・胞子を形成しない乳酸桿菌である。
・絶対ホモ型発酵、通性ヘテロ型発酵あるいは絶対ヘテロ型発酵形式を示す。
・Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology, Second edition,2009,Volume Three(The Firmicutes)のLactobacillus項(P465−P511)に記載されている菌種である。
【0086】
「乳酸菌属」の例としては、L.plantarumのほか、L.paraplantarum、L.pentosus、L.sakeiおよびL.caseiを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0087】
例えば、特定の菌株としては、L.plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961(それぞれ受領番号NITE AP−958、NITE AP−959、NITE AP−960またはNITE AP−961に対応))、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号NITE AP−1310)、Lactobacillus casei(受領番号NITE AP−1311) PR143またはLactobacillus casei PR150(受領番号NITE AP−1312)が挙げられる。これらの菌株は、供試したフェルラ酸等のグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の添加により、コントロール区に対して約2.3〜6.3倍あるいは場合によってはそれ以上と顕著に増殖活性が上昇したことを本発明において見出した。また、Lactobacillus属乳酸菌の他の菌株としてJCM1149T株を挙げることができるが、この株は理研バイオリソースセンターが管理するL.plantarumの基準株であり、同所から入手することができる。なお、本発明者らが本発明において確認したL.plantarumの基準株もまた、フェルラ酸に対して、反応性を有していることが本発明で明らかになった(500μMの供試化合物の添加により、コントロール区に対して約3.0倍の増殖活性が上昇する。)。
【0088】
L.plantarumおよびL.caseiは、「プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス」(財団法人日本ビフィズス菌センター監修、光岡知足編集)2006年の「プロバイオティクスの種類と微生物学的性質」のセクションにおいて、Lactobacillus属において、プロバイオティクスとして効果が報告されている菌種として紹介されている(Ouwehand, A. C., et al.,(2003). Bulletin of the IDF 380 (pp. 4−19)も参照)。また、L.paraplantarumもプロバイオティック作用を有する菌種として報告されている(Martin R.,et al., 2009, J.Dairy Res., 76, 418−425.)
【0089】
本明細書において、「増殖(活性)」(growth (activity))とは、微生物について言及する場合、その微生物の個体・細胞などが数を増すこと、あるいはその活性をいう。増殖活性は、種々のパラメータで測定することができ、たとえば、pH、特定波長での吸光度等が挙げられるが、本明細書では、格別に言及しない場合は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)で培養したときに600nmでの吸光度の濁度を基準として用いる。したがって、ある濃度のある因子について増殖活性が倍率は、その因子の不存在下での600nmでの吸光度の濁度に対して、その濃度のその因子の存在下での600nmでの吸光度の濁度の倍率で表すことができる。
【0090】
本明細書において「増殖のための組成物」とは、例えば、L.plantarum、L.paraplantarum、L.sakeiおよびL.casei菌株等の乳酸菌について言及する場合、その菌の増殖のための組成物を意味する。本発明では、代表的に、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物が含まれ、代謝等によってグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を生じる化合物・複合物等の物質もまた、増殖のための組成物の成分として、実質的にグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に加えてまたは代替的に使用することができることが理解される。
【0091】
本明細書において「プロバイオティクス」または「プロバイオティクス組成物」とは、ヒトまたは動物の身体に良い影響を与える微生物、またはそれらを含む製品、食品などをいう。体内のいわゆる「善玉菌」(例えば、乳酸菌)を増やし、消化管内の細菌叢を改善することによって、腸内細菌のバランスを保ち、宿主の健康に好影響を与え、病気になりにくい身体とすることにより作用する。例えば、発酵乳(例えば、ヨーグルト等)・乳酸菌飲料,生菌製剤などがプロバイオティクスとして利用されている。
【0092】
本明細書において「プレバイオティクス」または「プレバイオティクス組成物」とは、プロバイオティック効果を持った微生物を増加させる能力を持った成分、例えば、食餌成分、サプリメントをいう。腸内細菌に対して好影響を与えるオリゴ糖などの難消化性の炭水化物などを例示することができる。
【0093】
本明細書において「シンバイオティクス」または「シンバイオティクス組成物」とは、プロバイオティクス(組成物)とシンバイオティクス(組成物)とを含むものと定義される。プレバイオティクスは、特定のプロバイオティクスに対する影響を有する成分として定義されることから、シンバイオティクスは、あるプロバイオティクスが選択されるとそれに適切なプレバイオティクスを選択して組み合わせることによって適宜調製することができる。
【0094】
(好ましい実施形態)
本発明の好ましい実施形態を、以下に掲げる。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0095】
1つの局面において、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus属乳酸菌株(例えば、L.plantarum、L.paraplantarum、L.sakeiおよびL.casei菌株等)を提供する。Lactobacillus属乳酸菌株はどのような起源であってもよいが、牧草サイレージ由来のものであれば、食品残さ、サイレージ、発酵TMRに対して添加することにより、プロバイオティック効果を期待した生菌剤として畜産分野において広範な利用が期待される。ヒト糞便由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜により、ヒト由来である安全性がより期待される。また、ヒトにとって食経験豊富であり、安全性が経験的に担保されている野菜や漬け物等の発酵食品由来のプロバイオティック乳酸菌の選抜によっても、将来的に、環境変化時等ストレス応答時に有害微生物を積極的に排除しながら消化管環境を維持する機能性食品の開発が期待できる。例示的な実施形態では、前記菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する菌株が提供される。好ましくは、本発明における化合物は、グアイアコール骨格を有する化合物である。理論に束縛されることを望まないが、本明細書において、μM未満でも増殖活性を有する化合物が見出されているからである。しかしながら、グアイアコールと4-メトキシフェノールとの対比をみると、両者はほぼ同様の活性を有していることから、グアイアコール骨格を有する化合物に対応する(すなわち、骨格以外は同じ置換基を有する)4-メトキシフェノール骨格を有する化合物も同様の活性を有することが期待される。
【0096】
グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物もまた、どのような化合物であってもよく、本発明において使用されるグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物としては、本明細書に記載される4−メトキシフェノール、グアイアコール、フェルラ酸、バニリン、クレオソール、4−エチルグアイアコール、ヒドロキシフェルラ酸、カプサイシン、ギンゲロール(ジンゲロール)、ショウガオール、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩、DL−ノルメタネフリン塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸、3−メトキシチラミン塩酸塩、ホモバニリン酸、バニリン酸(o−バニリン酸)、ホモバニリルアルコール、メタネフリン塩酸塩、コニフェリルアルコール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、塩化ペオニジン(Peonidin chloride)、2−メトキシヒドロキノン、4’−ヒドロキシ−3’−メトキシアセトフェノン、イソバニリン、o−バニリン、4−ヒドロキシ−3−メトキシ安息香酸ナトリウム、trans−フェルラ酸(トランスフェルラ酸)、イソフェルラ酸、イソクレオソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシけい皮酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンゾニトリル、2−メトキシ−5−メチルフェノール、3−ヒドロキシ−4−メトキシアニリン、ヘスペレチン、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリン酸、イソバニリルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、3−メトキシサリチル酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸メチル、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、それらの塩、溶媒和物(例えば、水和物)などの任意の具体例のほか、他の同骨格を有する化合物が挙げられる。通常使用されうるグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の代表例としては、水溶性の高いもの(例えば、エタノールに対して50mg/ml溶解するもの等)が挙げられるがそれらに限定されない。あるいは分子量も指標にされ得る(例えば、約500ダルトン以下、約400ダルトン以下、約350ダルトン以下等)。
【0097】
あるいは、カテコールアミンの代謝産物(例えば、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL-4-ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩等。3,4‐ジヒドロキシフェニルグリコールアルデヒド(MOPEGAL)などであってもよい。)に該当するものであってもよい。理論に束縛されることを望まないが、本発明の菌株は、グアイアコール骨格の特定の位置にあるヒドロキシ部分とメトキシ基とを含む部分、または4−メトキシフェノール骨格の特定の位置にあるヒドロキシ部分とメトキシ基とを含む部分を認識し、刺激を受けることによって増殖活性が上昇するものと考えられる。したがって、理論に束縛されることを望まないが、本発明の化合物は、菌株に対してグアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格を認識することができることが重要であり、グアイアコール骨格および/または4−メトキシフェノール骨格の認識が可能な化合物であれば、他の部分がどのような構造をしていてもよく、グアイアコールまたは4−メトキシフェノール自体であってもよいことが理解される。また、いずれの異性体であってもよく、D/L体がある場合は、D体であってもL体であっても本発明に使用することができることが理解される。また、代謝等によってグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を生じる化合物・複合物等の物質もまた、本発明の成分として、実質的にグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に加えてまたは代替的に使用することができることが理解される。理論に束縛されることは望まないが、グアイアコール骨格を有するこれらの化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物は、本発明の微生物が増殖活性成分として認識する特定の構造をしていることが好ましい理由として挙げることができる。
【0098】
フェルラ酸が好ましい理由としては、理論に束縛されることを望まないが乳酸菌は有益であるが、食品中で増殖が過剰におこると酸度が増加し、風味上不適切な場合がある。中性付近のミルクを発酵する場合などは、迅速発酵に寄与する物質として働き、pHが低下した場合には、分解されると同時に、残存した物質が反応を抗菌的に停止することが考えられる。
【0099】
1つの実施形態において、本発明の菌株の増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、以下の少なくとも1つの活性を有する。
【0100】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する。
【0101】
1つの実施形態において、本発明の菌株の増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、以下の少なくとも1つの活性を有する。
【0102】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する;
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する;
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する;
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する;
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する;
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する;
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する;
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する;
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する;
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する;
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する;
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する;
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する。
【0103】
別の実施形態において、本発明の菌株の増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、以下の少なくとも1つの活性を有する。
【0104】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する;
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する;
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する;
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する;
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する;
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する;
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する;
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する;
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する;
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する;
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する;
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約7.8倍上昇する。
【0105】
さらなる実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇し、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約3.8倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約6.9倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を上記の特徴に追加してあるいは独立して有する。
【0106】
さらなる実施形態では、本発明の菌株の前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を上記の特徴に追加してあるいは独立して有する。
【0107】
1つの好ましい実施形態において、本発明で利用されるグアイアコール骨格を有する化合物は、カテコールアミンの代謝産物を含む。理論に束縛されることを望まないが、カテコールアミンは、神経伝達物質であり、動物体や植物体内においてホルモンや神経伝達物質として生理的作用を発揮し、また、神経線維末端のみならず、消化管組織、消化管内容物、糞便、尿、血中にも存在することから、潜在量は豊富であり、プレバイオティクス成分としての高度有効利用が十分に期待でき、これを増殖活性成分とする微生物はプロバイオティクスとして利用可能であるところ、このような微生物は今まで見出されていないことから、ユニークな有用性を有する。そのようなカテコールアミンの代謝産物としては、例えば、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL-4-ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩を挙げることができ、別の例としては、例えば、3,4‐ジヒドロキシフェニルグリコールアルデヒド(MOPEGAL)も例示することができる。
【0108】
食品・飼料産業上の極めて重要な有益微生物である乳酸菌に対して、プレバイオティク効果を示す物質としては難消化性糖質(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等)が研究されている。グアイアコール骨格を有する化合物の代表例として、環境変化時等ストレスに伴い生体内濃度が上昇するカテコールアミンの代謝産物を認識し増殖促進する病原性細菌の存在が示されていることから、ストレスに伴い出現するカテコールアミンの代謝産物を増殖活性成分とする微生物をプロバイオティクスとして活用することは、病原性細菌の競合阻害に繋がり、ストレスに対する新たな予防または治療法としての効果も期待できる。
【0109】
1つの実施形態では、本発明において使用される化合物は、好ましくは、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコール、オイゲノールならびにそれらの塩および溶媒和物であり、より好ましくは、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸およびカプサイシンであり、もっとも好ましくは、フェルラ酸またはその誘導体が利用される。
【0110】
理論に束縛されることを望まないが、これらの化合物が好ましい理由としては、これらの化合物は、生体に対する活性について、抗酸化剤あるいは抗菌剤としてその効果が確認されているものであり、ストレス対応の物質として認知されていることから、ストレス対応のプロバイオティクスとしての効果が期待されるからである。また、理論に束縛されることを望まないが、これらの化合物の一部は、動物体内において抗生物質として機能するだけでなく、食経験の豊富な植物や食品中にも生理活性物質として存在が確認されている。これらの化合物を含む野菜などの植物や食品成分を本研究で発明したL.plantarumと同時摂取した場合において、プロバイオティクスとしてのL.plantarumの効率的な増殖促進が期待されるからである。さらに、理論に束縛されることを望まないが、野菜などの植物や食品成分を摂取した場合に、有害菌は除去しつつ、これらの化合物が一プレバイオティック成分として、生体内に生息するプロバイオティクスの増殖を促進し、腸内細菌叢バランスの改善に寄与することが期待できるという理由も存在する。
【0111】
好ましい実施形態では、本発明で利用されるグアイアコール骨格を有する化合物は、フェルラ酸またはその誘導体を含む。理論に束縛されることを望まないが、フェルラ酸は、抗酸化作用を有することが知られており、最近では抗菌性作用についても研究が進んでいることから、中性付近の食品や飼料への応用が期待でき、乳酸菌は有益であるが、食品中で増殖が過剰におこると酸度が増加し、風味上不適切な場合がある。中性付近のミルクを発酵する場合などは、迅速発酵に寄与する物質として働き、pHが低下した場合には、分解されると同時に、残存した物質が反応を抗菌的に停止することが期待されるからである。
【0112】
1つの実施形態では、本発明の菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する菌株であり、例えば、例示的な実施形態では、L.plantarum TO1000、L.plantarum TO1001、L.plantarum TO1002またはL.plantarum TO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)である。あるいは、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号NITE AP−1312)も使用されうる。
【0113】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株(例えば、L.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei菌株等のLactobacillus属乳酸菌)を含むプロバイオティクスまたはプロバイオティクス組成物を提供する。
【0114】
別の局面において、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む、L.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei菌株等のLactobacillus属乳酸菌株の増殖のための組成物を提供する。このような組成物は、プレバイオティクスとして利用することができ、有用である。本発明の組成物の実施の形態としては、以下のようなものが挙げられる:食品、飲料、飼料、たとえば、L.plantarumを摂取する場合において、何らかの添加物として同時摂取または異時摂取、L.plantarumを含むヨーグルトなどの発酵乳製品にフルーツ(たとえば、バナナ)ソース、野菜ジュース、果物ジュースなど。本発明の組成物に含まれうる化合物としては、本明細書に記載の任意のグアイアコール骨格を含む化合物のほか、他の任意の同骨格を有する化合物が含まれうることが理解される。
【0115】
1つの実施形態では、本発明の組成物に含まれる化合物は、好ましくは、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物であり、より好ましくは、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸およびカプサイシンであり、もっとも好ましくは、フェルラ酸またはその誘導体が利用される。
【0116】
1つの実施形態では、本発明の組成物の対象とする菌株は、L.plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)、JCM1149、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号NITE AP−1312)あるいはそれらの複数の菌株である。
【0117】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株と組み合わせて使用するための、本発明のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクスまたはプレバイオティクス組成物を提供する。このようなプレバイオティクスに含まれるべき化合物としては、本明細書において説明した上記のような任意の化合物を挙げることができる。
【0118】
別の局面において、本発明は、本発明の菌株とグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクスまたはシンバイオティクス組成物を提供する。このようなシンバイオティクスとして具体的な商品や製品の例としては、例えば、1)食品や植物由来のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物と乳酸菌を同時に含むように設計されたヨーグルト(固形、ドリンク)、チーズなどの発酵乳製品;2)食品や植物由来のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物と乳酸菌を同時に含むように設計されたタブレットなどの錠剤型サプリメント製品;3)当該L.plantarumで発酵させた漬け物(野菜)やキムチなどの発酵食品」などを挙げることができる。すなわち、乳酸菌と化合物が自然に、あるいは設計的に同時に存在するような食品形態をとれば、本発明のシンバイオティクスに該当することが意図される。そして、本明細書において、菌株およびグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を単独で使用する場合が、プロバイオティクスであり、プレバイオティクスということになることが理解される。
【0119】
1つの実施形態では、本発明において利用される化合物は、体内で存在する場合に、本発明の菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも5μM、少なくとも10μM、より好ましくは少なくとも20μM、より好ましくは少なくとも30μM、より好ましくは少なくとも40μM、より好ましくは少なくとも50μM、より好ましくは少なくとも60μM、より好ましくは少なくとも70μM、より好ましくは少なくとも80μM、より好ましくは少なくとも90μM、より好ましくは少なくとも100μMで含まれることが好ましいが、必ずしもこれに限定されず、これより低濃度でも作用しうることが理解される。したがって、本発明では、上記のcfu以下の菌数だった場合には、より低濃度(たとえば、少なくとも1μM)でも好ましく作用する可能性があることが当業者に理解されるべきである。
【0120】
1つの局面において、本発明は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇する乳酸菌(例えば、L.plantarum菌株)を選択する方法を提供する。この方法は、A)L.plantarum菌を含む試料を提供する提供工程;B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;およびC)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程を包含する。
【0121】
1つの実施形態では、本発明で利用される培地において含まれる硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0であるがこれに限定されず、これらより多くても少なくても増殖が見られる限り利用することができる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としては、汎用されている乳酸菌用培地(乳酸菌用MRS培地など)よりも生体内の環境を反映する組成となっており、生体内成分として血清を含むことからも、フェルラ酸、カテコールアミン代謝産物等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識する乳酸菌を選抜・同定する本実験系としてはより望ましい組成となることが挙げられる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としてはまた、乳酸菌用培地に含まれる酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待されること、およびこれにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できることが挙げられる。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が望ましい理由としてはまた、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体消化管内、例えば、大腸内などを想定した低栄養条件に設定可能であり、栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化することを考慮すると、一対象として、消化管内等に見出される生体のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物に対する認識性を指標とする選抜法の性格上、極めて有意義かつ特徴的であることも挙げることができる。
【0122】
例えば、好ましい培地組成としては、1.44 mM MgSO、8.92 mM NHNO、4.79 mM KCl、7.93 mM C12、2.62 mM KHPOおよび30% ウシ血清(bovine serum)を含むもの(pH 6.5)を挙げることができるがそれに限定されない。
【0123】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、32〜48時間実施される。好ましくは、36時間(例えば、プラスマイナス3時間程度範囲は許容される)にて実施され、そして、48時間以内に判定しうることも特徴でありうるがこれに限定されない。低栄養条件培地においてのこのような時間での判定は、従来の方法では困難であったことであり、その点で有利である。
【0124】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、20〜45℃、好ましくは、25〜40℃(例えば、30〜37℃)で実施されるがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの温度条件が望ましい理由としては、この温度条件は、通常、L.plantarum等の乳酸菌の増殖に適切な温度域であるため、バックグラウンドの環境として、より効率的な増殖温度条件に設定する、といった利点があり、また、本発明の菌株は、生体内のフェルラ酸、カテコールアミン代謝産物等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識することから、体温や腸管内温度と同等レベルという意味でも有意義であることが挙げられる。
【0125】
1つの実施形態では、本発明の方法の培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施され、好ましくは、5% CO、1% Oで実施されるがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が好ましいのは、通性嫌気性菌であるL.plantarum等の乳酸菌は、通常の大気圧レベルの酸素条件においても増殖が可能であるが、1%程度の酸素条件にすることにより、菌株の嫌気性菌としての本来の特性として、より効率的な増殖が可能となり、評価系として迅速な判定が可能になることが挙げられる。また、理論に束縛されることを望まないが、評価系システム上の利点以外にも、仮想腸管を考えた場合に、腸管内は極めて嫌気条件であるため、低酸素状態にすることにより、より腸管内の反応を反映した系として成立が期待できることも好ましい理由のひとつである。他方で、理論に束縛されることを望まないが、上部消化管(口腔や食道などを含む)は比較的好気状態であることから、広いガス範囲で検討できるという利点も存在する。理論に束縛されることを望まないが、また、二酸化炭素濃度は、通常の細胞培養時に5%に設定されているように、生体内環境を反映する組織・細胞培養モデルとして適切な範囲に設定できる利点も挙げられる。
【0126】
1つの実施形態では、本発明の方法で用いられる試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で、好ましくは、1×10コロニー形成単位/wellで前記L.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakei、Lactobacillus casei菌等のLactobacillus属乳酸菌株等の乳酸菌を含むがこれに限定されない。理論に束縛されることを望まないが、これらの範囲が好ましいのは、示した範囲で菌数を設定することにより、48時間以内に適切な濃度域の供試化合物の反応性の評価が可能となるからである。これ以下でも実施することができ、本明細書の記載に基づいて、当業者はその条件を適宜選択することができる。
【0127】
本発明で使用されうる培養容器としては、一般的な培養用ガラス試験管、培養用プラスチック製シャーレなどを使用することができ、選抜系として多サンプルを供試することが可能であり、一般的な12穴〜48穴プラスチック製培養プレートも使用可能である。
【0128】
本発明の選抜法において、供試する微生物自体を何らかの環境中から分離、選抜する「選抜系」は周知の技術で行うことが理解されるべきことに留意すべきである。
【0129】
本発明の方法は、このような周知の方法で取得した微生物について、フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性を指標にして検討する「選抜系」を意味することに留意すべきである。
【0130】
すなわち、このような周知な方法を利用して、本発明の出発材料である微生物L.plantarum等の乳酸菌は、主に植物環境などから比較的頻繁に分離選抜できる。したがって、出発材料自体の分離選抜法も、特別困難な技術と設備を要求するものではなく、微生物操作の知識があれば簡易に取り扱い・入手可能であり、ある程度の一般性があるというべきである。
【0131】
そのような例示の方法としては、例えば、チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージより以下の方法に従って分離、チモシー・オーチャードグラス混播牧草サイレージを滅菌水で充分にホモジナイズし(1:10 w/v)、サイレージ懸濁液上清を滅菌水で段階希釈後、Man Rogosa Sharpe(MRS)寒天培地(Difco、Detroit、USA)に塗布し、48時間培養する(30℃、嫌気条件下)。培養後、形成されたコロニーを純粋培養し、使用時まで10%グリセロールを含む栄養ブロス(nutrient broth)(Difco)中で−80℃保存することができる。
【0132】
本発明において供試した微生物は牧草サイレージ由来乳酸菌であるL.plantarumであり、家畜飼料用の発酵貯蔵飼料より頻繁に分離される菌種として既に多数の報告がある(Rossi F. & Dellaglio F., Journal of Applied Microbiology (2007)Vol.103, 1707−1715; Ennahar S. et al., Applied and Environmental Microbiology (2003)Vol.69, 444−451; Stevenson D−M., et al., Applied microbiology and biotechnology (2006)Vol.71, 329−338など)。いずれの場合も、各飼料の懸濁液から、乳酸菌用培地により容易かつ頻繁に分離されている。
【0133】
出発材料の選抜に使用されうる培地としては、例えば、「乳酸菌の科学と技術」(株式会社学会出版センター)の例えば18頁に記載される技術を用いることが例示されるがそれに限定されない。同文献では、巻末に記されている乳酸菌で使用されている主な培地の組成がされており、これらの文献は、本明細書において参考として援用される。
【0134】
出発材料の選抜に使用されうる培地としては、任意の適切なものを挙げることができるが、例えば、これまで周知の培地として、MRS培地、GYP培地、BL培地、BCP加プレートカウント寒天培地、GAM培地、トマトジュース培地などを挙げることができる。これらの培地の組成をみると、いずれも酵母エキスなどが含まれ、グルコース濃度が比較的高いなどに認められる。
【0135】
他方、本発明のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するL.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei菌株等のLactobacillus属乳酸菌株を含む乳酸菌を選択する方法は、このような周知の方法からは容易に想定できないものである。フェルラ酸などのグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性については周知の事実ではなく、本発明の選抜法により、広くL.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei菌株等のLactobacillus属乳酸菌株などの乳酸菌株のフェルラ酸などのグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性について評価が可能になったという点でも顕著性が認められる。
【0136】
また、本発明の選抜系で使用した培地は、周知の技術で用いられる培地とは性質を異にしている。例えば、グルコースを例に取ると、本発明の使用した新培地は、最も汎用されているMRS培地の約1/20となる。また、酵母エキスはビタミン源およびアミノ酸源として、使われており、多くの培地に含まれることから、当該分野では必須の成分として共通認識があるところ、本発明の培地のように酵母エキスを含まない、低栄養条件である、などの利点は、本発明において顕著である。
【0137】
1つの例示的な実施形態では、以下のように選抜される。
【0138】
MgSO、NHNO、KCl、C12、KHPO、ウシ血清(bovine serum)を成分とするNo.189−091201培地を開発する。例示的なこの培地に含まれる各成分は、好ましくは以下の濃度およびpHで調製する(1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清を含む。pH6.5)。推奨される各成分の詳細は以下の通りであるが、同等品であれば培地性能に問題はない。
【0139】
D(+)−グルコース(C12)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、041−00595)
リン酸二水素カリウム(KHPO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、169−04245)
硝酸アンモニウム(NHNO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、017−03235)
塩化カリウム(KCl)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、163−03545)
硫酸マグネシウム七水和物、和光純薬工業株式会社(試薬特級、131−00405)
ウシ血清(Bovine serum),成体(Adult)、Sigma(B5433)。
【0140】
本培地の含有組成は、本発明で新たに調製したものであり、従来知られたものではない。また、微生物用培地(例えば、大腸菌用LB培地、乳酸菌用MRS培地など)で汎用されている酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待される。これにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できる。また、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体大腸内などを想定した低栄養条件に設定している。栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化するからである。
【0141】
供試微生物を適切な培地(例えばL.plantarum TO1002であれば、MRS培地や上述のNo.189−091201培地)で前培養し、充分に増殖させ、菌体を遠心操作により集菌後、培地上清を除去し、新鮮なPBSあるいは培地で数回、充分に遠心洗浄する。例示的に使用されるNo.189−091201培地に菌体を再懸濁し、各供試されたフェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物とともに、24穴プレートで嫌気条件下(5% CO、1% O)あるいは好気条件下(5%CO、20%O)により培養する(供試微生物の菌数を約1×10 CFU/wellとなるように調整する。CFUはコロニー形成単位)。約36時間培養し、菌体の増殖をコロニー形成数、培養液濁度(OD600)あるいは培養液pH測定等により解析する。
【0142】
これらの条件は、あくまで例示であり、当業者は、本発明の趣旨に基づいて変更することができることが理解される。
【0143】
期待できる本発明の選抜法の有用性としては以下が挙げられる。本発明において見出された選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒトや家畜糞便由来のプロバイオティック乳酸菌について、環境が酸性型に傾いたときに抗菌活性を有するフェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性を指標として選抜することにより、宿主由来である安全性が担保され、将来的に、環境変化認知時に有害微生物を積極的に競合排除しながら消化管環境を維持する機能性食品および飼料の開発を期待することができる。食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来フェルラ酸」も含まれることから、これらの素材を有効利用した家畜発酵飼料を調製する場合に、本発明の選抜技術により選抜された乳酸菌が「飼料調製用乳酸菌添加物」としての有効活用されることを期待することができる。さらに、糞便由来の大腸菌等の有害微生物を選抜した場合は、環境変化認知時に急激に増殖する有害微生物を特定することに繋がり、当該微生物に対する殺菌・静菌効果を期待した創薬にも資することを期待することができる。また、同時に複数の菌体サンプルを検討できる、という点も重要である。すなわち、理論に束縛されることを望まないが、培養条件および初発の添加菌数については、最適に設定しなければ系が成立しないことから、重要でありうる。
【0144】
本発明の特徴としては、以下をも挙げることができる。すなわち、一般的に、ある種の環境由来の試料から特定菌を生育させるためには、その菌を優先的に増殖・選抜させるための選択培地が用いられており、目的とする乳酸菌の有する新規機能・性質に関する研究や、その選抜試験において汎用されているのが現状である。乳酸菌用の代表的な選択培地として、MRS培地等が知られている。これらの培地の一般的な特徴として、(1)高濃度のグルコースを含有する、(2)ビタミンおよびアミノ酸源としての酵母抽出物などを含む等、目的とする乳酸菌をより効率よくスピーディに増殖させる能力が高いことが挙げられ、ある種の環境試料から乳酸菌を分離・選抜する際に使用することは極めて有意義であり、汎用されていたところ、これとは異なる条件を利用したことに本発明の意義の一つがある。また、植物試料からは極めて高い頻度でL.plantarum等の乳酸菌が分離選抜されてくることが報告されており、既に数多くの既知文献が存在するところ、周知のこれらの培地では、栄養吸収後の大腸内や植物試料など、一般的に低栄養条件下の生育状況を反映できない。また、培地自体の高栄養成分により、既に効率の良い増殖が達成されてしまうため、未知の増殖促進因子を検討する際に、その作用の判定が困難となる。また、乳酸菌は比較的栄養要求性が高いことも知られているため、詳細な栄養条件を未検討なまま低栄養条件に設定すると、培養すら成立しないなどの問題も発生することがあり、極めて制御が困難であるといえる。
【0145】
周知のMRS培地で分離したL.plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus casei菌株等のLactobacillus属乳酸菌株等の乳酸菌の新規機能性を検討する際には、MRS培地でそのまま選抜法を構築することが好ましくない場合があり、適切に設計された培養条件の開発が極めて重要であると考えられる。本発明により、低栄養成分条件下における乳酸菌の増殖選抜試験が可能となり、増殖性についてより精査できる選抜系が構築できたと考えられる。また、「グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識する乳酸菌を選抜する」という目的をもった研究や技術が存在していない点も見逃せないというべきである。
【0146】
乳酸菌に対してグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を添加するトライアルがこれまで未実施かつ未知であった点を考慮すると、本発明で取り組んだ「新規組成培地」、「グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の添加トライアル」および「グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の作用を判定するために適切な培養・試験条件の設定」により、従来のプロバイオティック乳酸菌培養試験、機能試験、選抜試験では証明や見出すことが困難であった「グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識し増殖促進するプロバイオティック乳酸菌の選抜」が可能となったと考えられる。
【0147】
(一般技術)
本明細書において用いられる生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、以下を挙げることができる。「プロバイオティクス・プレバイオティクス・バイオジェニックス」(財団法人日本ビフィズス菌センター監修、光岡知足編集);「標準微生物学」(医学書院、山西弘一監修、平松啓一・中込治編集);「乳酸菌実験マニュアル −分離から同定までー」(朝倉書店、小崎道雄監修、内村泰・岡田早苗著);「プロバイオティクスとバイオジェニクス 科学的根拠と今後の開発展望」(株式会社NTS、伊藤喜久治編集代表);「乳酸菌の保健機能と応用」(シーエムシー出版、上野川修一監修);Lactic Acid Bacteria: Microbiological and Functional Aspects, Fourth Edition(Crc Pr I Llc、Seppo Salminen);Handbook of Probiotics and Prebiotics(Wiley−Interscience、Seppo Salminen)およびHandbook of Probiotics(Wiley−Interscience、Yuan−Kun, Koji Nomoto, Seppo Salminen, Sherwood L. Gorbach)。
【0148】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0149】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0150】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、この実施例等により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、市販されているものを使用した。
【0151】
(実施例1:フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物を認識する微生物を選抜する方法)
本実施例では、フェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物を認識する微生物の新規選抜法を開発した。
【0152】
(材料および方法)
(グアイアコール骨格を有する化合物を認識する微生物の新規選抜法)
(培地)
1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% Adult
bovine serumを含む培地(pH6.5, No.189−091201培地)を用いて、微好気(5%CO、1%O)条件下で培養した。
【0153】
本実施例において、推奨される各成分の詳細は以下の通りであるが、同等品であれば培地性能に問題はないと期待される。
・D(+)−グルコース(C12)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、041−00595)
・リン酸二水素カリウム(KHPO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、169−04245)
・硝酸アンモニウム(NHNO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、017−03235)
・塩化カリウム(KCl)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、163−03545)
・硫酸マグネシウム七水和物、和光純薬工業株式会社(試薬特級、131−00405)・ウシ血清(Bovine serum),成体(Adult)、Sigma(B5433)。
【0154】
本実施例の培地の組成は、本実施例で新たに調製したものであり、微生物用培地(例えば、大腸菌用LB培地、乳酸菌用MRS培地など)で汎用されている酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待される。これにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できる。
【0155】
また、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体大腸内などを想定した低栄養条件に設定している。栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化することを考慮すると、一対象として、抗生物質、抗酸化物質として知られるフェルラ酸等のグアイアコール骨格を有する化合物の認識性を指標とする選抜法の性格上、極めて有意義かつ特徴的であると考えられる。
【0156】
(実験方法)
本研究で供試したフェルラ酸の化学構造を以下に示す。
【0157】
【化1】

【0158】
本化合物を含む培地中における供試乳酸菌株の用量依存的増殖について、培養液濁度測定により解析した。
【0159】
すべての実験を3連で実施し、独立した実験として3回繰り返した。GraphPad
PRISM (Prism software, CA, USA)により、得られたすべてのデータを統計解析した。
【0160】
詳細には、供試微生物を適切な培地(例えばL.plantarum TO1002であれば、MRS培地や上述のNo.189−091201培地)で前培養し、充分に増殖させた。菌体を遠心操作により集菌後、培地上清を除去し、新鮮なPBSあるいは培地で数回、充分に遠心洗浄した。No.189−091201培地に菌体を再懸濁し、各供試グアイアコール骨格含有化合物とともに、24穴プレートで嫌気条件下(5% CO、1% O)あるいは好気条件下(5% CO、20% O)により培養した(供試微生物の菌数を約1×10 CFU/wellとなるように調整した。CFUはコロニー形成単位)。約36時間培養し、菌体の増殖をコロニー形成数、培養液濁度(OD600)あるいは培養液pH測定等により分析した。
【0161】
(結果)
得られた菌株は、L.plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)として、平成22年7月7日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託された。
【0162】
フェルラ酸添加(嫌気条件、36時間培養)により、調査した500μMを最大活性とする用量依存的なL.plantarum TO1002の増殖が認められた(図1A)。また、TO1002の増殖にともなって、培養液のpHの顕著な低下が認められた(図1B)。以上のことから、フェルラ酸認識性L.plantarum TO1002株および乳酸菌増殖促進作用を有するフェルラ酸の産業的有用性・活用性が期待される。
【0163】
(考察)
本実施例から、期待できる本選抜法の有用性は以下のとおりである。本研究で発明した選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒトや家畜糞便由来のプロバイオティック乳酸菌について、抗生物質または抗酸化物質として知られるフェルラ酸の認識性を指標として選抜することにより、宿主由来である安全性が担保され、将来的に、環境変化認知時に有害微生物を積極的に競合排除しながら消化管環境を維持する機能性食品や飼料の開発が期待できる。食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来グアイアコール骨格化合物」も含まれることから、これらの素材を有効利用した家畜発酵飼料を調製する場合に、本選抜技術により選抜された乳酸菌が「飼料調製用乳酸菌添加物」としての有効活用されることが期待できる。さらに、糞便由来の大腸菌等の有害微生物の選抜した場合は、環境変化認知時に急激に増殖する有害微生物を特定することに繋がり、当該微生物に対する殺菌・静菌効果を期待した創薬にも資することが期待される。
【0164】
(本実施例で供試した微生物について)
本実施例で供試した微生物は牧草サイレージ由来乳酸菌であるL. plantarumであり、家畜飼料用の発酵貯蔵飼料より頻繁に分離される菌種として既に多数の報告がある(Rossi F. & Dellaglio F., Journal of Applied Microbiology (2007)Vol.103, 1707−1715; Ennahar S. et al., Applied and Environmental Microbiology (2003)Vol.69, 444−451; Stevenson D−M., et al., Applied microbiology and biotechnology (2006)Vol.71, 329−338など)。いずれの場合も、各飼料の懸濁液から、乳酸菌用培地により容易かつ頻繁に分離されている。容易に分離されている菌種であるが、グアイアコール骨格化合物認識性については公知の事実ではなく、本実施例の選抜法により、広くL.plantarumなどの乳酸菌株の、フェルラ酸等のグアイアコール骨格化合物認識性について評価可能であると考えられる。
【0165】
(実施例2:他の菌株のフェルラ酸での増殖活性化測定)
次に実施例1で分離したTO1002以外の他の菌株について、グアイアコール骨格化合物の代表例であるフェルラ酸についてその認識能力の実験を行った。
【0166】
使用した方法は、実施例1に記載の培養方法、培養液濁度(OD600)測定あるいは培養液pH測定等と同様である。具体的には、フェルラ酸のL.plantarum TO1000、TO1001、TO1003、JCM1149株に対する増殖促進活性を示す。これらの株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)フェルラ酸を含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。
【0167】
(結果)
フェルラ酸のL.plantarum TO1000、TO1001、TO1003、JCM1149株に対する増殖促進活性の結果(培養後の培養液の濁度)を図2に、培地のpHを図3に示す。フェルラ酸に対して、標準株を含めTO1002株と同様の増殖活性化傾向を示した。また、pH値は、増殖活性が認められると低下するが、いずれもpH5.0以上であった。
【0168】
(実施例3:バニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンの活性測定)
次に実施例1で分離した代表菌株TO1002について、フェルラ酸以外のグアイアコール骨格化合物の代表例としてバニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンについてその認識能力の実験を行った。
【0169】
使用した方法は、実施例1に記載の培養方法、培養液濁度(OD600)測定あるいは培養液pH測定等と同様である。具体的には、TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)バニリン、あるいは、0、0.5、1、5、10,100または500(μM)ヒドロキシフェルラ酸、あるいは、0、0.1、0.25、0.5、0.75、1または1.5(mM)カプサイシンを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度(A)および培養液pH(B)を測定した。
【0170】
(結果)
バニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンのL.plantarum TO1002株に対する増殖促進活性について、図4Aに濁度を示し、図4Bに培地のpHを示す。グアイアコール骨格を有するフェルラ酸以外の化合物であるバニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンに対しても、本発明の菌株はフェルラ酸に対するのと同様の増殖活性化傾向を示した。また、pH値は、増殖活性が認められると低下するが、いずれもpH5.0以上であった。
【0171】
(実施例4:他のグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の活性測定)
次に実施例1で分離した代表菌株TO1002について、実施例1〜3で使用した化合物以外のグアイアコール骨格化合物の代表例として4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、アニソール、フェノール、ギンゲロール、ショーガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールおよびオイゲノール、についてその認識能力の実験を行った。
【0172】
使用した方法は、実施例1に記載の培養方法、培養液濁度(OD600)測定あるいは培養液pH測定等と同様である。具体的には、TO1002株をそれぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)MHPG、Normetanephrine、VMA、3MT、HVA、VA、MOPETあるいはMetanephrineを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度を測定した。グアイアコール、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、アニソール、フェノールについては、それぞれ10,100または500(μM)の濃度で実験を行った。ギンゲロールおよびショーガオールは、それぞれ0.1、0.25、0.5、0.75、1または1.5(mM)の濃度で実験を行った。バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o-バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン、ヘスペレチン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o-バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5-ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチルおよびコニフェリルアルコールは、それぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)の濃度で実験を行った。バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o-バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン、ヘスペレチン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o-バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5-ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールおよびオイゲノールは、それぞれ0、0.5、1、5、10、100または500(μM)の濃度で実験を行った。
【0173】
(結果)
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩のL.plantarum TO1002株に対する増殖促進活性について、図5に濁度を示し、図6に培地のpHを示す。実施例1〜3において実証した化合物以外のグアイアコール骨格を有する数多くの他の化合物に対しても、本発明の菌株はフェルラ酸、バニリン、ヒドロキシフェルラ酸およびカプサイシンに対するのと同様の増殖活性化傾向を示した。また、pH値は、増殖活性が認められると低下するが、いずれもpH5.0以上であった。
【0174】
グアイアコール(2−メトキシフェノール)、3-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、アニソール、フェノールのLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性を図7に示す。グアイアコールおよびそのパラ異性体の4-メトキシフェノールは顕著な増殖を示したのに対して、3-メトキシフェノール、アニソール、フェノールは、試験した範囲の濃度では有意な増殖しなかった。したがって、本発明の目的においてグアイアコール骨格は対応するそのパラ異性体に置換しうることを示す。
【0175】
ギンゲロール(ジンゲロールともいう;(S)−5−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−デカノン)およびショウガオール((E)−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)デク−4−エン−3−オン)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性およびpH変化を図8に示す。培養後の培養液の濁度(A,B)および培養液pH(C,D)の測定値が示される。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。ギンゲロールは高濃度になるほど増殖効果が高くなるのに対して、ショウガオールは、0.25mM付近の低濃度で増殖活性が顕著であるが、高濃度になると増殖活性が減少することを示す。
【0176】
図9(図9−1、図9−2)において、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性(濁度)を示す。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールおよびオイゲノールのいずれも、濃度を上昇させると増殖活性を有することが示された。
【0177】
図10(図10−1、図10−2)において、バニリン酸ジエチルアミド(a)、イソオイゲノール(b)、イソバニリン酸(c)、o−バニリン(d)、トランスフェルラ酸(e)、イソフェルラ酸(f)、イソクレオソール(g)、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン(h)、ヘスペレチン(i)、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸(j)、イソバニリルアルコール(k)、クレオソール(l)、o−バニリン酸(m)、バニリン酸メチル(n)、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩(o)、5−ニトログアイアコール(p)、スコポレチン(q)、シリビン(r)、バニリルアルコール(s)、バニリン酸エチル(t)、コニフェリルアルコール(u)およびオイゲノール(v)のLactobacillus plantarum TO1002株に対する増殖促進活性(pH)が示される。無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。pHの値によっても、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、イソバニリン酸、o-バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン、ヘスペレチン、3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o-バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル-3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5-ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチルおよびコニフェリルアルコールのいずれも、濃度を上昇させると増殖活性を有することが示された。
【0178】
(実施例5:4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を認識する微生物を選抜する方法)
本実施例では、4−メトキシフェノール骨格(例えば、4−メトキシフェノール等)を有する化合物を認識する微生物の新規選抜法を開発した。
【0179】
(材料および方法)
(4−メトキシフェノール骨格を認識する微生物の新規選抜法)
【0180】
(培地)
1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% Adult
bovine serumを含む培地(pH6.5, No.189−091201培地)を用いて、微好気(5%CO、1%O)条件下で培養した。
【0181】
本実施例において、推奨される各成分の詳細は以下の通りであるが、同等品であれば培地性能に問題はないと期待される。
・D(+)−グルコース(C12)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、041−00595)
・リン酸二水素カリウム(KHPO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、169−04245)
・硝酸アンモニウム(NHNO)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、017−03235)
・塩化カリウム(KCl)、和光純薬工業株式会社(試薬特級、163−03545)
・硫酸マグネシウム七水和物、和光純薬工業株式会社(試薬特級、131−00405)・ウシ血清(Bovine serum),成体(Adult)、Sigma(B5433)。
【0182】
本実施例の培地の組成は、本実施例で新たに調製したものであり、微生物用培地(例えば、大腸菌用LB培地、乳酸菌用MRS培地など)で汎用されている酵母抽出物などの微生物由来成分を一切含まないため、培養に供した微生物以外の微生物成分について、培地中への汚染を防止することが期待される。これにより、培養に供した微生物の性能・性質について、他の微生物由来成分汚染による誤認を防ぐことが強く期待できる。
【0183】
また、グルコース濃度を従来の培地に比べて極めて低濃度に維持しながら乳酸菌の培養が可能であるなど、生体大腸内などを想定した低栄養条件に設定している。栄養条件によって、菌体の性質が劇的に変化することを考慮すると、一対象として、抗生物質、抗酸化物質として知られる4−メトキシフェノール等の4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の認識性を指標とする選抜法の性格上、極めて有意義かつ特徴的であると考えられる。
(実験方法)
本研究で供試した物質は4−メトキシフェノールである。
【0184】
本化合物を含む培地中における供試乳酸菌株の用量依存的増殖について、培養液濁度測定により解析した。
【0185】
すべての実験を3連で実施し、独立した実験として3回繰り返した。GraphPad PRISM (Prism software, CA, USA)により、得られたすべてのデータを統計解析した。
【0186】
詳細には、供試微生物を適切な培地(例えばL.plantarum TO1002であれば、MRS培地や上述のNo.189−091201培地)で前培養し、充分に増殖させた。菌体を遠心操作により集菌後、培地上清を除去し、新鮮なPBSあるいは培地で数回、充分に遠心洗浄した。No.189−091201培地に菌体を再懸濁し、各供試4−メトキシフェノール骨格含有化合物とともに、24穴プレートで嫌気条件下(5% CO、1% O)あるいは好気条件下(5% CO、20% O)により培養した(供試微生物の菌数を約1×10 CFU/wellとなるように調整した。CFUはコロニー形成単位)。約36時間培養し、菌体の増殖をコロニー形成数、培養液濁度(OD600)あるいは培養液pH測定等により分析した。
【0187】
(結果)
得られた菌株は、L.plantarum TO1000、TO1001、TO1002またはTO1003(受託番号NITE P−958、NITE P−959、NITE P−960またはNITE P−961)として、平成22年7月7日に独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託された。
【0188】
4−メトキシフェノール添加(嫌気条件、36時間培養)により、調査した500μMを最大活性とする用量依存的なL.plantarum TO1002の増殖が認められた(図7)。以上のことから、4−メトキシフェノール認識性L.plantarum TO1002株および乳酸菌増殖促進作用を有する4−メトキシフェノール等の4−メトキシフェノール骨格含有化合物の産業的有用性・活用性が期待される。
【0189】
(考察)
本実施例から、期待できる本選抜法の有用性は以下のとおりである。本研究で発明した選抜技術により、様々な環境由来の微生物のスクリーニングが可能である。例えば、ヒトや家畜糞便由来のプロバイオティック乳酸菌について、4−メトキシフェノール骨格含有化合物の認識性を指標として選抜することにより、宿主由来である安全性が担保され、将来的に、環境変化認知時に有害微生物を積極的に競合排除しながら消化管環境を維持する機能性食品や飼料の開発が期待できる。食品残さ、サイレージ、発酵TMRには、「食品・植物由来4−メトキシフェノール骨格含有化合物」も含まれることから、これらの素材を有効利用した家畜発酵飼料を調製する場合に、本選抜技術により選抜された乳酸菌が「飼料調製用乳酸菌添加物」としての有効活用されることが期待できる。さらに、糞便由来の大腸菌等の有害微生物の選抜した場合は、環境変化認知時に急激に増殖する有害微生物を特定することに繋がり、当該微生物に対する殺菌・静菌効果を期待した創薬にも資することが期待される。
【0190】
また、4−メトキシフェノールのほか、このほか4−メトキシ-3,5-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-5-メトキシカテコール、4-tert-ブチル-5-メトキシカテコール、1-(2-ヒドロキシ-4,5-ジメトキシフェニル)-1-ブタノン、5-ヒドロキシ-8-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1(2H)-ナフタレノン、ブチルヒドロキシアニソール、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノンモノメチルエーテル、3-ブロモ-4-ヒドロキシアニソール、3-クロロ-4-ヒドロキシアニソール、3.4-ジメトキシフェノール、2-フルオロ-4-メトキシフェノール、2’-ヒドロキシ-5’-メトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-5-メトキシベンズアルデヒド、4-メトキシ-1-ナフトール、5-メトキシサリチル酸、4-メトキシ-2-ニトロフェノール、メチル5-メトキシサリチラート、シリンガアルコール、3,4,5-トリメトキシフェノールも使用可能である。
【0191】
(本実施例で供試した微生物について)
本実施例で供試した微生物は牧草サイレージ由来乳酸菌であるL. plantarumであり、家畜飼料用の発酵貯蔵飼料より頻繁に分離される菌種として既に多数の報告がある(Rossi F. & Dellaglio F., Journal of Applied Microbiology (2007)Vol.103, 1707−1715; Ennahar S. et al., Applied and Environmental Microbiology (2003)Vol.69, 444−451; Stevenson D−M., et al., Applied microbiology and biotechnology (2006)Vol.71, 329−338など)。いずれの場合も、各飼料の懸濁液から、乳酸菌用培地により容易かつ頻繁に分離されている。容易に分離されている菌種であるが、グアイアコール骨格化合物認識性については公知の事実ではなく、本実施例の選抜法により、広くL.plantarumなどの乳酸菌株の、4−メトキシフェノール骨格含有化合物認識性について評価可能であると考えられる。
【0192】
(実施例6:L.plantarum以外の他の乳酸菌での実験)
本実施例では、L.plantarum以外の他の乳酸菌を用いて、実施例1〜4と同様の実験を行った。本実施例では、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiを用いた。
【0193】
その代表例として、実施例1の方法に従って選抜したLactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号NITE AP−1310)を用いた。
【0194】
上記Lactobacillus paraplantarum LOOC2020株、Lactobacillus sakei SG171株、およびLactobacillus casei LOOC82株を用いて、カプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールに対する増殖促進活性を調べた。なお、各菌株牧草や飼料用米等のサイレージより分離した。
【0195】
使用した方法は、実施例1に記載の培養方法、培養液濁度(OD600)測定あるいは培養液pH測定等と同様である。具体的には、各菌株をそれぞれ500(μM)のカプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールまたはオイゲノールを含むNo.189−091201培地<1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30%ウシ血清(bovine serum)、pH6.5)>中で36時間、37℃、嫌気条件下で培養し、培養後の培養液の濁度およびpHを測定した。
【0196】
濁度の結果を図11上に示す。また、培養液pHが図11下に示される。図11では、無添加培地と比較した際の有意差を***(P<0.001)、**(P<0.01)、*(P<0.05)で示す。Lactobacillus paraplantarum LOOC2020株、Lactobacillus sakei SG171株、およびLactobacillus casei LOOC82株では試験した化合物すべてで増殖活性(濁度およびpHの両方の点)を示した。Lactobacillus paraplantarum LOOC2020株では、500(μM)のカプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールについて、培養液濁度(OD600)が、それぞれコントロールの約4.4倍、約3.9倍、約5.9倍、約2.7倍、約5.8倍および約6.9倍であった。Lactobacillus sakei SG171株については、500(μM)のカプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールについて、培養液濁度(OD600)が、それぞれコントロールの約3.8倍、約2.7倍、約6.8倍、約3.0倍、約6.4倍および約7.3倍であった。Lactobacillus casei LOOC82株については、500(μM)のカプサイシン、バニリン、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールについて、培養液濁度(OD600)が、それぞれ約7.3倍、約3.2倍、約4.9倍、約9.2倍、約9.2倍および約9.8倍であった。
【0197】
上記菌株のほか、実施例1の方法に従って選抜したさらなる株L.casei PR143株(受領番号NITE AP−1311)およびL.casei PR150株(受領番号NITE AP−1312)を用いて実験をしたところ、フェルラ酸、シリビン、グアイアコールおよびオイゲノールに対して同様に増殖活性を示した。
【0198】
本実施例で得られた菌株は、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020について受領番号:NITE AP−1308として、Lactobacillus sakei SG171について受領番号:NITE AP−1309として、Lactobacillus casei LOOC82について受領番号:NITE AP−1310として、Lactobacillus casei PR143について受領番号:NITE AP−1311として、そしてLactobacillus casei PR150について受領番号:NITE AP−1312として独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託された。
【0199】
他の試験対象菌としては、例えば、L.pentosusも用いることができる。
【0200】
(実施例7:増殖活性倍率の計算)
本実施例では、各菌株をより特徴付けるため、増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)における増殖活性の変化を計算した。実施例1〜5と同様の実験を行なってその結果を、以下のような計算を行なった。以下には、まず、Lactobacillus plantarumの菌株でまとめた結果を示す。
【0201】
無添加区およびグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物添加区それぞれの増殖活性を、培養後の培養液の濁度(optical density、OD 600nm)により解析した。各区の値の平均値を算出し、無添加区との相対値を算出することにより(各試験区/無添加区)、各グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物による増殖活性倍率とした。
【0202】
そして、JCM1149T株を含めた本明細書において試験したLactobacillus plantarumの全株について、上述の培地において、以下のような結果が得られた。
【0203】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇し、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇し、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇し、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇し、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇し、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇し、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇し、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇し、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇し、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇し、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する。
試験したLactobacillus plantarumについては以下の活性も有する。
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約7.8倍上昇する。
【0204】
寄託株について以下のような結果が得られた。
【0205】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇し、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇し、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇し、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇し、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇し、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇し、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇し、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇し、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇し、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇し、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇し、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約7.8倍上昇する(ただし、グアイアコール以下はTO0002株のみを測定)。
【0206】
そして、実施例6も含めた本明細書において試験した全株について、上述の培地において、以下のような結果が得られた。以下では、図11に示したものを含めた結果示す。
【0207】
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇し、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約3.8倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約6.9倍上昇する。
【0208】
次に、L.casei PR143株およびL.casei PR150株で得られた結果をまとめたものを以下に示す。
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇し、
グアイアコールの非存在下に比べて500mMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する。
【0209】
(実施例8:プレバイオティクスの実施例 錠剤)
本発明により同定した、化合物について、常法により次の組成からなる錠剤を製造する。本発明の成分は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。菌株を併用する場合は、乾燥させて菌株末とする。これらの錠剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 100mg
乳 糖 60mg
馬鈴薯でんぷん 30mg
ポリビニルアルコール 2mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
タール色素 微量。
【0210】
(実施例9:プレバイオティクスの実施例 散剤)
本発明により同定した化合物について、常法により次の組成からなる散剤を製造する。本発明の成分は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。菌株を併用する場合は、乾燥させて菌株末とする。これらの散剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 150mg
乳 糖 280mg。
【0211】
(実施例10:プレバイオティクスの実施例 シロップ剤)
本発明により同定した化合物、菌株について、常法により次の組成からなるシロップ剤を製造する。本発明の成分は、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。菌株を併用する場合は、乾燥させて菌株末とする。これらのシロップ剤は、例えば、本発明菌株を用いた発酵食品等と別途、併用処方することができる。
本発明の成分 100mg
精製白糖 40 g
p−ヒドロキシ安息香酸エチル 40mg
p−ヒドロキシ安息香酸プロピル 10mg
チョコフレーバー 0.1cc
これに水を加えて全量100ccとする。
【0212】
(実施例11:プロバイオティクスの実施例)
本発明により同定したプロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなるはっ酵乳を製造する。本発明の菌株は、ヨーグルト発酵スターターと同時に添加することで、共発酵とする。乳酸菌スターターとしては、特に限定されなく、通常ヨーグルトの発酵に使用するものを用いることができる。
【0213】
下記配合表に記載の原材料のうち、本発明菌株とスターター以外を一括して混合し、加温、濾過、均質処理する。次いで常法に従い殺菌、冷却、本発明菌株とスターターを添加後、容器に充填し、静置状態で発酵させた後、冷却してプレインヨーグルトやハードヨーグルトを得ることができる。また、本発明菌株とスターターを添加後、常法のタンク発酵方式を実施することにより、ソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトの製造が可能である。
本発明の菌株 10kg
乳酸菌スターター 20kg
還元乳 800kg
糖類 10kg
安定剤 1kg。
【0214】
(実施例12:プロバイオティクスの実施例)
本発明により同定したプロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなる家畜貯蔵発酵飼料を製造する。本発明の菌株を、例えば、飼料作物・牧草・食品副産物に添加し、常法のロールベール法等の保存処理を実施する。飼料作物・牧草・食品副産物としては、特に限定されなく、通常家畜飼料に使用するものを用いることができる。本発明の菌株の場合は、乾燥させて菌株末とし、使用する際に50gを10Lの水に溶解させ、飼料作物・牧草・食品副産物にスプレーする。
本発明の菌株 50 g
調合水 10kg
飼料作物・牧草・食品副産物 10 t。
【0215】
(実施例13:シンバイオティクスの実施例)
本発明により同定した、プロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなるはっ酵乳を製造する。本発明の菌株は、ヨーグルト発酵スターターと同時に添加することで、共発酵とする。乳酸菌スターターとしては、特に限定されなく、通常ヨーグルトの発酵に使用するものを用いることができる。グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。
【0216】
下記配合表に記載の原材料のうち、本発明菌株とスターター以外を一括して混合し、加温、濾過、均質処理する。次いで常法に従い殺菌、冷却、本発明の菌株とスターター、本発明の化合物を添加後、容器に充填し、静置状態で発酵させた後、冷却してプレインヨーグルトやハードヨーグルトを得ることができる。また、本発明の菌株とスターターを添加後、常法のタンク発酵方式を実施することにより、ソフトヨーグルトやドリンクヨーグルトの製造が可能である。
本発明の菌株 10kg
本発明の化合物 10kg
乳酸菌スターター 20kg
還元乳 800kg
糖類 10kg
安定剤 1kg。
【0217】
(実施例14:シンバイオティクスの実施例)
本発明により同定したプロバイオティック乳酸菌について、常法により次の組成からなる家畜貯蔵発酵飼料を製造する。本発明の菌株を、例えば、飼料作物・牧草・食品副産物に添加し、常法のロールベール法等の保存処理を実施する。飼料作物・牧草・食品副産物としては、特に限定されなく、通常家畜飼料に使用するものを用いることができる。本発明の菌株の場合は、乾燥させて菌株末とし、使用する際に50gを本発明の化合物50gと同時に10Lの水に溶解させ、飼料作物・牧草・食品副産物にスプレーする。グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物の場合は、一般の低分子化合物と同様に調製する。
本発明の菌株 50 g
本発明の化合物 50 g
調合水 10kg
飼料作物・牧草・食品副産物 10 t。
【0218】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【受託番号】
【0219】
NITE P−958
NITE P−959
NITE P−960
NITE P−961
NITE AP−1308
NITE AP−1309
NITE AP−1310
NITE AP−1311
NITE AP−1312

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇するLactobacillus属乳酸菌株。
【請求項2】
前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約4.2倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約2.7倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記増殖活性は、1.45mM MgSO、8.92mM NHNO、4.79 mM KCl、3.96mM C12、2.62mM KHPOおよび30% ウシ血清を含む培地(pH6.5)において、
フェルラ酸の非存在下に比べて500μMのフェルラ酸の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリンの非存在下に比べて500μMのバニリンの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
ヒドロキシフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのヒドロキシフェルラ酸の存在下で、少なくとも約8.2倍上昇する、
カプサイシンの非存在下に比べて500μMのカプサイシンの存在下で、少なくとも約5.0倍上昇する、
4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の非存在下に比べて500μMの4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)の存在下で、少なくとも約2.8倍上昇する、
DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのDL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.4倍上昇する、
DL−4−ヒドロキシ−3メトキシマンデル酸(VMA)の非存在下に比べて500μMのDL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)の存在下で、少なくとも約5.1倍上昇する、
3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の非存在下に比べて500μMの3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩の存在下で、少なくとも約5.8倍上昇する、
ホモバニリン酸(HVA)の非存在下に比べて500μMのホモバニリン酸(HVA)の存在下で、少なくとも約5.5倍上昇する、
バニリン酸(VA)の非存在下に比べて500μMのバニリン酸(VA)の存在下で、少なくとも約6.3倍上昇する、
ホモバニリルアルコール(MOPET)の非存在下に比べて500μMのホモバニリルアルコール(MOPET)の存在下で、少なくとも約3.9倍上昇する、
メタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の非存在下に比べて500μMのメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩の存在下で、少なくとも約4.8倍上昇する、
グアイアコールの非存在下に比べて500μMのグアイアコールの存在下で、少なくとも約7.9倍上昇する、
4−メトキシフェノールの非存在下に比べて500μMの4−メトキシフェノールの存在下で、少なくとも約8.5倍上昇する、
ギンゲロールの非存在下に比べて1.5mMのギンゲロールの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
ショウガオールの非存在下に比べて0.25mMのショウガオールの存在下で、少なくとも約2.3倍上昇する、
バニリン酸ジエチルアミドの非存在下に比べて500μMのバニリン酸ジエチルアミドの存在下で、少なくとも約3.7倍上昇する、
イソオイゲノールの非存在下に比べて500μMのイソオイゲノールの存在下で、少なくとも約4.6倍上昇する、
イソバニリン酸の非存在下に比べて500μMのイソバニリン酸の存在下で、少なくとも約5.7倍上昇する、
o−バニリンの非存在下に比べて500μMのo−バニリンの存在下で、少なくとも約6.1倍上昇する、
トランスフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのトランスフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.3倍上昇する、
イソフェルラ酸の非存在下に比べて500μMのイソフェルラ酸の存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
イソクレオソールの非存在下に比べて500μMのイソクレオソールの存在下で、少なくとも約12.6倍上昇する、
4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの非存在下に比べて500μMの4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オンの存在下で、少なくとも約9.8倍上昇する、
ヘスペレチンの非存在下に比べて500μMのヘスペレチンの存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の非存在下に比べて500μMの3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸の存在下で、少なくとも約5.9倍上昇する、
イソバニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのイソバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約4.4倍上昇する、
クレオソールの非存在下に比べて500μMのクレオソールの存在下で、少なくとも約9.7倍上昇する、
o−バニリン酸の非存在下に比べて500μMのo−バニリン酸の存在下で、少なくとも約7.2倍上昇する、
バニリン酸メチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸メチルの存在下で、少なくとも約7.4倍上昇する、
メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の非存在下に比べて500μMのメチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩の存在下で、少なくとも約6.6倍上昇する、
5−ニトログアイアコールの非存在下に比べて500μMの5−ニトログアイアコールの存在下で、少なくとも約3.6倍上昇する、
スコポレチンの非存在下に比べて500μMのスコポレチンの存在下で、少なくとも約8.8倍上昇する、
シリビンの非存在下に比べて500μMのシリビンの存在下で、少なくとも約3.4倍上昇する、
バニリルアルコールの非存在下に比べて500μMのバニリルアルコールの存在下で、少なくとも約6.5倍上昇する、
バニリン酸エチルの非存在下に比べて500μMのバニリン酸エチルの存在下で、少なくとも約1.5倍上昇する、
コニフェリルアルコールの非存在下に比べて500μMのコニフェリルアルコールの存在下で、少なくとも約1.8倍上昇する、および
オイゲノールの非存在下に比べて500μMのオイゲノールの存在下で、少なくとも約7.8倍上昇する
からなる群より選択される特徴の少なくとも1つの特徴を有する、請求項1に記載の菌株。
【請求項4】
前記化合物が、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の菌株。
【請求項5】
前記化合物が、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸およびカプサイシンからなる群より選択される、請求項1に記載の菌株。
【請求項6】
前記化合物は、フェルラ酸またはその誘導体を含む、請求項1に記載の菌株。
【請求項7】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する、請求項1に記載の菌株。
【請求項8】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000(受託番号NITE P−958)、Lactobacillus plantarum TO1001(受託番号NITE P−959)、Lactobacillus plantarum TO1002(受託番号NITE P−960)、Lactobacillus plantarum TO1003(受託番号NITE P−961)、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号:NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号:NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号:NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号:NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号:NITE AP−1312)である請求項1に記載の菌株。
【請求項9】
グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含む、Lactobacillus属乳酸菌株の増殖のための組成物。
【請求項10】
前記化合物が、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、カプサイシン、4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニルグリコールヘミピペラジニウム塩(MHPG)、DL−ノルメタネフリン(Normetanephrine)塩酸塩、DL−4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸(VMA)、3−メトキシチラミン(3MT)塩酸塩、ホモバニリン酸(HVA)、バニリン酸(VA)、ホモバニリルアルコール(MOPET)、およびメタネフリン(Metanephrine)塩酸塩、グアイアコール(2−メトキシフェノール)、4-メトキシフェノール、ギンゲロール、ショウガオール、バニリン酸ジエチルアミド、イソオイゲノール、オイゲノール、イソバニリン酸、o−バニリン、トランスフェルラ酸、イソフェルラ酸、イソクレオソール、4−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−ブテン−2−オン、ヘスペレチン、3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸、イソバニリルアルコール、クレオソール、o−バニリン酸、バニリン酸メチル、メチル−3−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロピオン酸塩、5−ニトログアイアコール、スコポレチン、シリビン、バニリルアルコール、バニリン酸エチル、コニフェリルアルコールならびにそれらの塩および溶媒和物からなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物が、フェルラ酸、ヒドロキシフェルラ酸、バニリン酸、およびカプサイシンからなる群より選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物がフェルラ酸またはその誘導体である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
前記菌株は、Lactobacillus plantarum TO1000(受託番号NITE P−958)、Lactobacillus plantarum TO1001(受託番号NITE P−959)、Lactobacillus plantarum TO1002(受託番号NITE P−960)、Lactobacillus plantarum TO1003(受託番号NITE P−961)、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactobacillus paraplantarum LOOC 2020(受領番号:NITE AP−1308)、Lactobacillus sakei SG171(受領番号:NITE AP−1309)、Lactobacillus casei LOOC82(受領番号:NITE AP−1310)、Lactobacillus casei PR143(受領番号:NITE AP−1311)またはLactobacillus casei PR150(受領番号:NITE AP−1312)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株を含むプロバイオティクス組成物。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株とグアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物とを組み合わせたシンバイオティクス組成物。
【請求項17】
前記化合物は、体内で存在する場合に前記菌株の1×10コロニー形成単位(cfu)あたり少なくとも10μMで含まれる請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の菌株と組み合わせて使用するための、グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物を含むプレバイオティクス組成物。
【請求項19】
グアイアコール骨格を有する化合物および/または4−メトキシフェノール骨格を有する化合物によって増殖活性が上昇する乳酸菌を選択する方法であって、該方法は、
A)乳酸菌を含む試料を提供する提供工程;
B)硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸アンモニウム(NHNO)、塩化カリウム(KCl)、D−(+)−グルコース、リン酸二水素カリウム(KHPO)およびウシ血清を含む培地中で、グアイアコール骨格を有する化合物の存在下または不存在下で該試料を培養する培養工程;および
C)該化合物の不存在下で増殖せず、かつ、存在下において増殖したか、または該化合物の存在下において不存在下よりも増殖が促進された菌株を分離する分離工程
を包含する、方法。
【請求項20】
前記硫酸マグネシウムは、1.16〜1.74mM、前記硝酸アンモニウムは、8.02〜9.81mM、前記塩化カリウムは、3.83〜5.74mM、前記D−(+)−グルコースは3.96〜39.64mM、前記リン酸二水素カリウムは、2.09〜3.14mM、および前記ウシ血清は15〜30%で前記培地中に存在し、前記培地はpHが6.0〜7.0である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記培養工程は、32〜48時間実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記培養工程は、25〜40℃で実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記培養工程は、0〜5%CO、および1〜20%Oの条件下で実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記乳酸菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus sakeiおよびLactobacillus caseiからなる群より選択される種に属する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記試料は、5×10〜5×10コロニー形成単位/wellの間で前記乳酸菌を含む、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−213396(P2012−213396A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84340(P2012−84340)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】