説明

グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型の受容体

【課題】ヒトゲノム配列から効率的にGPCR配列を抽出する手法を開発し、これにより新規GPCRを網羅的に同定することを課題とする。
【解決手段】GPCR配列を発見するための自動システムを独自に開発し、このシステムを利用してヒトゲノム全体から1035の新規GPCRを同定することに成功した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔発明の属する技術分野〕
本発明は、グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型受容体(以下、「GPCR」と称する)ファミリーに属する新規なポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、並びにこれら分子の製造および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
〔従来の技術〕
これまでに世界の製薬企業により創られてきた薬剤は、その9割以上が細胞外空間での相互作用を標的としており、その中でも膜貫通ヘリックス7本を有するGPCR(Baldwin, J. M. Curr. Opin. Cell Biol. 6, 180-190 (1994)(非特許文献1). ,Strader, C. D., et al. FASEB. J. 9, 745-754 (1995)(非特許文献2).,Bockaert, J., Pin, J. P. EMBO. J. 18,1723-1729 (1999)(非特許文献3).)を標的とする薬剤が大部分を占めている。このためGPCRは、ドラッグデザインを行うための遺伝子を発見する最も重要な標的の一つである。GPCRは、アドレナリン、アセチルコリンのような特異的リガンドによって誘導されるシグナル伝達に関係しており、その結合メカニズムの特徴は実験によって精力的に調べられている(Watson, S & Arkinsrtall, S. The G-protein Linked receptor Facts Book. (Academic Press, London)(非特許文献4))。
【0003】
しかしながら、cDNA、EST、およびマイクロアレイ分析のような膨大なデータ源によっても、今までに発見される新規配列はごく限られたファミリーに過ぎない(Lee, D. K. et al. Brain Res. Mol. Brain Res. 31, 13-22 (2001)(非特許文献5).、Mizushima, K., et al. Genomics. 69, 314-321 (2000)(非特許文献6).、Matsumoto, M. et al. Gene. 28, 183-189 (2000)(非特許文献7).、Marchese, A., et al. Trends Pharmacol Sci. 20, 447 (1999)(非特許文献8).、Lee, D. K., FEBS. Lett. 446, 103-107 (1999)(非特許文献9).、Yonger, R. M et al. Genome Research. 11, 519-530 (2001)(非特許文献10).、Horn, F., et al. Nucleic Acids Res. 29, 346-349 (2001)(非特許文献11).)。GPCRdb(Lee, D. K. et al. Brain Res. Mol. Brain Res. 31, 13-22 (2001)(非特許文献5).)およびPSI-BLASTによるコレクション(Josefson, L. G. Gene. 239, 333-340 (1999)(非特許文献12).)のような既知のGPCR配列の大規模分類によってもなお、ゲノム全体レベルの幅広い解釈に至っていない。
【0004】
従って、全体の90%以上がすでに決定されているヒトゲノム配列(International Human Genome Sequencing Consortium. Initial sequencing and analysis of the human genome. Nature. 409, 860-921 (2001)(非特許文献13).,Venter, J. C. et al. Science. 291, 1304- 1351(2001)(非特許文献14).)をスキャンすることによって、GPCRファミリー全体を解明することは重要である。
【非特許文献1】Baldwin, J. M. Curr. Opin. Cell Biol. 6, 180-190 (1994)
【非特許文献2】Strader, C. D., et al. FASEB. J. 9, 745-754 (1995)
【非特許文献3】Bockaert, J., Pin, J. P. EMBO. J. 18,1723-1729 (1999)
【非特許文献4】Watson, S & Arkinsrtall, S. The G-protein Linked receptor Facts Book. (Academic Press, London)
【非特許文献5】Lee, D. K. et al. Brain Res. Mol. Brain Res. 31, 13-22 (2001)
【非特許文献6】Mizushima, K., et al. Genomics. 69, 314-321 (2000)
【非特許文献7】Matsumoto, M. et al. Gene. 28, 183-189 (2000)
【非特許文献8】Marchese, A., et al. Trends Pharmacol Sci. 20, 447 (1999)
【非特許文献9】Lee, D. K., FEBS. Lett. 446, 103-107 (1999)
【非特許文献10】Yonger, R. M et al. Genome Research. 11, 519-530 (2001)
【非特許文献11】Horn, F., et al. Nucleic Acids Res. 29, 346-349 (2001)
【非特許文献12】Josefson, L. G. Gene. 239, 333-340 (1999)
【非特許文献13】International Human Genome Sequencing Consortium. Initial sequencingand analysis of the human genome. Nature. 409, 860-921 (2001).
【非特許文献14】Venter, J. C. et al. Science. 291, 1304- 1351(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒトゲノム配列から効率的にGPCR配列を抽出する自動的手法を開発し、これにより新規GPCRを網羅的に同定することにある。
【0006】
また、本発明は、このようにして同定された新規GPCRの用途を提供することをも目的とする。新規GPCRの好ましい用途の一つの態様として、リガンドなどの医薬品候補化合物のスクリーニングのための用途を提供する。さらに、新規GPCRの好ましい用途の他の態様として、本発明は、新規GPCRの変異や発現異常を指標とした疾患の検査方法を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、新規GPCRまたはその活性を調節する分子の疾患の治療のための用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、まず、配列検索(Altschul, S. F. et al. Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402 (1997).)、モチーフおよびドメイン帰属(Bateman, A., et al. Nucleic Acids Res. 28, 263-266 (2000).,Bairoch, A. Nucreic Acids Res. 20, 2013-2018 (1992).)、膜貫通ヘリックスの予測(Hirokawa, T., et al. Bioinformatics. 14, 378-379 (1998).)のための解析方法を注意深く評価しながら、ヒトゲノム全体においてGPCR配列を発見するための自動システムを開発した。この自動システムは以下の3つの段階からなる。
【0009】
第一段階は遺伝子の予測、すなわち、ゲノム配列からアミノ酸配列への翻訳である。既知のGPCR遺伝子の多くはイントロンを含まないためヌクレオチド配列の6-フレーム展開を行うことでもある程度は対応できが、一方、複数のエキソンを有する配列では、遺伝子発見プログラムを用いて遺伝子構造全体を予測する必要がある。
【0010】
第二段階は、アミノ酸配列の三重解析からなる。即ち、1.既知のGPCRデータベースに対する配列の検索、2.モチーフおよびドメイン帰属ならびに3.膜貫通ヘリックス(TMH)の予測である。前者の2つの技法は、近縁のGPCR相同体を発見するために用いられ、一方、TMH予測は遠縁のGPCR相同体を扱うために用いられる。次に、3つの解析のそれぞれの結果の和集合をとることによって、候補配列をスクリーニングする。本発明者らは、スクリーニングの段階では候補配列の数をできる限り最大限にするために和集合を用いた。
【0011】
第三段階は、重複配列を消去することによって、または誤予測によって分離された断片配列を融合することによって、遺伝子候補の質をさらに精密化する段階である。
【0012】
この自動システムによれば効率的かつ網羅的にGPCRの配列を発見することができる。従来の方法では発見が困難であったマルチエクソンからなるGPCRの配列や遠縁のホモログ配列であっても発見することができる点もこの自動システムの大きな利点である。
【0013】
本発明者らは、独自に開発したこの自動システムを利用して、ヒトゲノム全体から高い信頼度で保証された1035の新規GPCR配列を同定することに成功した。新規GPCR配列の発見は、医薬品としての有用性が期待されるリガンド、アンタゴニストあるいはアゴニストのスクリーニングを可能とする。また、GPCRは、生体内で重要な機能を有すると考えられ、その発現や機能の異常は、種々の疾患の原因となり得る。このため、同定されたGPCRの不適当な活性または発現を指標とすることにより、このような疾患の検査を行なうことも可能である。同定されたGPCRやそれらをコードするポリヌクレオチド、および同定されたGPCRに対するリガンド、アンタゴニストあるいはアゴニストは、これら疾患に対する好適な治療薬となろう。
【0014】
本発明は、新規なGPCRおよびその遺伝子、並びにそれらの製造及び用途に関し、より詳しくは、以下の(1)から(29)を提供するものである。
(1) グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型の受容体をコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号:1から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号:1から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(2) 配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチド。
(3) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
(4) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドまたは(3)に記載のベクターを保持する宿主細胞。
(5) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
(6) (4)に記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞またはその培養上清から、産生させたポリペプチドを回収する工程を含む、(5)に記載のポリペプチドの製造方法。
(7) (5)に記載のポリペプチドに結合する抗体。
(8) (5)に記載のポリペプチドに対するリガンドの同定方法であって、
(a)(5)に記載のポリペプチドまたは(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が(5)に記載のポリペプチドまたは(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜に結合するか否かを検出する工程、を含む方法。
(9) (5)に記載のポリペプチドに対するアゴニストの同定方法であって、
(a)(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が(5)に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを発生させるか否かを検出する工程、を含む方法。
(10) (5)に記載のポリペプチドに対するアンタゴニストの同定方法であって、
(a)候補化合物の存在下で(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞と(5)に記載のポリペプチドに対するアゴニストとを接触させる工程、および
(b)候補化合物の非存在下で検出した場合と比較して、(5)に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルが減少するか否かを検出する工程、を含む方法。
(11) (8)に記載の方法により同定されたリガンド。
(12) (9)に記載の方法により同定されたアゴニスト。
(13) (10)に記載の方法により同定されたアンタゴニスト。
(14) (8)から(10)に記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)または(b)に記載の少なくとも一つの分子を含むキット。
(a)(5)に記載のポリペプチド
(b)(4)に記載の宿主細胞またはその細胞膜
(15) (5)に記載のポリペプチドの活性または発現を増加させる必要がある患者を治療するための医薬組成物であって、下記(a)から(c)に記載の分子を治療上有効な量含む医薬組成物。
(a)(5)に記載のポリペプチドに対するアゴニスト
(b)(1)または(2)に記載のポリヌクレオチド
(c)(3)に記載のベクター
(16) (5)に記載のポリペプチドの活性または発現を抑制する必要がある患者を治療するための医薬組成物であって、下記(a)または(b)に記載の分子を治療上有効な量含む医薬組成物。
(a)(5)に記載のポリペプチドに対するアンタゴニスト
(b)生体内において、内因性の(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチド
(17) (5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子またはその発現制御領域の変異を検出することを含む方法。
(18) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を単離する工程
(c)単離したDNAの塩基配列を決定する工程
(d)工程(c)により決定したDNAの塩基配列を、対照と比較する工程。
(19) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)調製したDNA試料を制限酵素により切断する工程
(c)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(d)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
(20) 以下の(a)〜(e)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを制限酵素により切断する工程
(d)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(e)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
(21) 以下の(a)〜(e)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程
(d)解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する工程
(e)分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
(22) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する工程
(d)分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
(23) (5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子の発現量を検出することを含む方法。
(24) 以下の(a)〜(c)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者からRNA試料を調製する工程
(b)該RNA試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドをコードするRNAの量を測定する工程
(c)測定されたRNAの量を対照と比較する工程
(25) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者から調製したcDNA試料、および(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を提供する工程
(b)該cDNA試料と該基板を接触させる工程
(c)該cDNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を測定する工程
(d)測定された(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を対照と比較する工程
(26) 以下の(a)〜(c)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者からタンパク質試料を調製する工程
(b)該タンパク質試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドの量を測定する工程
(c)測定されたポリペプチドの量を対照と比較する工程
(27) (5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
(28) (27)に記載のオリゴヌクレオチドを含む、(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。
(29) (7)に記載の抗体を含む、(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。
【0015】
以下に本明細書に規定された用語の定義を示すが、これらは、本明細書中で使用される用語を理解を容易にする目的で記載されたものであり、本発明を限定する目的で用いられるべきではないことは理解されたい。
【0016】
本明細書において「グアノシン三リン酸結合蛋白質共役型受容体(GPCR)」とは、GTP結合蛋白質の活性化を介して細胞内にシグナルを伝達する細胞膜受容体を指す。
【0017】
本明細書において用いられる「ポリヌクレオチド」とは、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドであって、複数の塩基または塩基対からなる重合体を意味する。ポリヌクレオチドには、一本鎖型および二本鎖型のDNAを含む。ポリヌクレオチドは、天然に存在する状態から修飾されていないもの、および修飾されているものの双方を含む意である。修飾された塩基としては、例えば、トリチル化された塩基およびイノシンのような特殊な塩基がある。
【0018】
本明細書において用いられる「ポリペプチド」は、複数のアミノ酸からなる重合体を意味する。従って、オリゴペプチドおよび蛋白質もまた、ポリペプチドの概念に含まれる。ポリペプチドは、天然に存在する状態から修飾されていないもの、および修飾されているものの双方を含む意である。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加、ユビキチン化などが含まれる。
【0019】
本明細書において「単離」とは、本来の環境(たとえば自然に発生するのであればその自然環境)から取り出された物質(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)を指し、その自然状態から「人の手によって」変えられたものである。「単離」とは、対象化合物に実質的に富む試料中に存在する化合物および/または対象化合物が部分的または実質的に精製されている試料中に存在する化合物を含むことを意味する。ここで「実質的に精製した」という用語は、その天然の環境から切り離されて、天然に関連している他の成分を少なくとも60%、好ましくは75%、および最も好ましくは90%含まない化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド)を指す。
【0020】
本明細書において用いられる「変異」とは、アミノ酸配列におけるアミノ酸の変化または塩基配列における塩基の変化(すなわち単一または複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換、欠失、付加または挿入)を指す。従って、本明細書において用いられる「変異体」は、一つ以上のアミノ酸が変化しているアミノ酸配列または一つ以上の塩基が変化している塩基配列を指す。この変異体の塩基配列の変化は、基準ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変更しても、しなくてもよい。変異体はアレリック変異体のように天然に存在するものでも、天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。変異体は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有する保存的変化を有しうる。よりまれに、変異体は、非保存的置換を有しうる。生物学的または免疫学的活性を阻害することなく、いずれの、およびどれほど多くのアミノ酸残基を置換、挿入、または欠失するかを決定する手引きは、当技術分野において周知のコンピュータープログラム、例えばDNAスター・ソフトウェアを用いて発見することができる。
【0021】
「欠失」はその中で1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド残基がそれぞれ、天然に存在するGPCRまたはGPCR関連ポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して存在しない、アミノ酸またはヌクレオチド配列のいずれかの変化である。
【0022】
「挿入」または「付加」は、天然に存在するGPCRまたはGPCR関連ポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して、それぞれアミノ酸またなヌクレオチド残基1つ以上が付加されたアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化である。
【0023】
「置換」とは、天然に存在するGPCRまたはGPCR関連ポリペプチドのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して、アミノ酸またはヌクレオチド1つ以上がそれぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドに入替えられたアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化である。
【0024】
本明細書において用いられる「ハイブリダイズ」とは、核酸鎖が塩基対形成を通じて相補鎖と結合するプロセスを意味する。
【0025】
本明細書で用いられる「治療」とは、概して、薬理学的なおよび/または生理学的な効果を得ることを意味する。効果とは、疾患や症状を完全にあるいは部分的に妨げる点で予防的であってもよく、疾患の症状を完全にあるいは部分的に治療する点で治療的であっても良い。本明細書で用いられる「治療」という用語は、哺乳類、特にヒトにおける疾患の治療すべてを含んでいる。そしてさらに、疾患の素因があるが未だ発病していると診断されていない被検者の発病の予防、疾患の進行を抑制すること、または疾患を軽減させることなどもこの用語に含まれる。
【0026】
本明細書で用いられる「リガンド」とは、本発明のポリペプチドに結合する分子を意味する。リガンドには、天然リガンドおよび合成リガンドが含まれる。「アゴニスト」とは、本発明のポリペプチドに結合し、それを活性化する分子を意味する。一方、「アンタゴニスト」とは、本発明のポリペプチドの活性化を阻害する分子を意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、新規なGPCR、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含むベクター、該ベクターを含む宿主細胞、該ポリペプチドの製造方法が提供された。さらに、該ポリペプチドに結合するあるいはその活性を修飾する化合物の同定方法が提供された。本発明のポリペプチドやポリヌクレオチド、または本発明のポリペプチドに結合若しくはその活性を修飾する化合物は、本発明のポリペプチドが関連する疾患の新しい予防薬や治療薬の開発への利用が期待される。 さらに本発明によって、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の変異や発現を検出することを含む疾患の検査方法が提供された。GPCRは医薬品開発や医療の分野において最も重要かつ注目されている分子の一つであり、本発明において新規GPCRが網羅的に提供されたことにより、これら分野の飛躍的な発展が期待される。GPCRの研究者にとっても、本発明は貴重な情報源となろう。
【0028】
〔発明の実施の形態〕
<ポリペプチド>
本発明は、GPCRファミリーに属する新規なポリペプチドを提供する。本発明に含まれる、本発明者等により同定された1035のヒト由来のポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号:1から2069のうちの奇数番号に、該ポリヌクレオチドがコードするポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号:2から2070のうちの偶数番号に示す。配列番号:1から2069のうちの奇数番号に示した塩基配列において、塩基nはいずれもa、t、c、およびgから選択される任意の塩基1つを示す。また配列番号:2から2070のうちの偶数番号に示したアミノ酸配列において、Xaaは任意のアミノ酸残基1つを示す。GPCRは、そのリガンドの作用によりG蛋白質の活性化を通じて細胞内へシグナル伝達を行なう活性を有しており、遺伝的疾患を始めとして、脳神経系、循環器系、消化器系、免疫系、運動器系、泌尿器生殖器系などの非常に多くの領域の疾患に関連している。従って、本発明のポリペプチドは、その機能を調節するリガンド、アゴニストあるいはアンタゴニストなどのスクリーニングに利用することができ、上記疾患に対する医薬品の開発の重要な標的となる。
【0029】
本発明は、また、本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを提供する。ここで「機能的に同等」とは、対象となるポリペプチドが本発明者らにより同定されたポリペプチドと同等の生物学的特性を有していることを意味する。GPCRが持つ生物学的特性としては、リガンドとの結合活性や三量体型GTP結合蛋白質の活性化を介して細胞内へシグナル伝達を行なう活性が挙げられる。三量体型GTP結合蛋白質は、活性化する細胞内伝達系の種類によって、Ca2+を上昇させるGq型、cAMPを上昇させるGs型、そしてcAMPを抑制するGi型の3種類のカテゴリーに分類される (Trends Pharmacol. Sci. (99) 20:118)。従って、対象となるポリペプチドが本発明者らにより同定されたポリペプチドと同等の生物学的特性を有しているか否かは、例えば、その活性化による細胞内のcAMP濃度もしくはカルシウム濃度の変化を検出することにより評価することが可能である。
【0030】
本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための方法の1つの態様としては、蛋白質中のアミノ酸配列に変異を導入する方法が挙げられる。このような方法には、例えば、部位特異的変異誘発法(Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. Jhon Wily & Sons Section 8.1-8.5))が含まれる。また、ポリペプチド中のアミノ酸の変異は、自然界において生じることもある。本発明には、このように人工的か自然に生じたものかを問わず、本発明者らにより同定されたポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号:2から2070のうちの偶数番号)において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加などにより変異した蛋白質であって、本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドが含まれる。
【0031】
置換されるアミノ酸は、蛋白質の機能の保持の観点から、置換前のアミノ酸と似た性質を有するアミノ酸であることが好ましい。例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、共に非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有すると考えられる。また、非荷電性としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。また、酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。
【0032】
これらポリペプチドにおけるアミノ酸の変異数や変異部位は、その機能が保持される限り制限はない。変異数は、典型的には、全アミノ酸の10%以内であり、好ましくは全アミノ酸の5%以内であり、さらに好ましくは全アミノ酸の1%以内であると考えられる。
【0033】
本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを調製するための方法の他の態様としては、ハイブリダイゼーション技術あるいは遺伝子増幅技術を利用する方法が挙げられる。即ち、当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術 (Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. Jhon Wiely & Sons Section 6.3-6.4)を利用して本発明者らにより同定されたポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)またはその一部をもとに同種または異種生物由来のDNA試料から、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAから本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを得ることは、通常行いうることである。このように本発明者らにより同定されたポリペプチドをコードするDNAとハイブリダイズするDNAによりコードされるポリペプチドであって、本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドもまた本発明のポリペプチドに含まれる。
【0034】
このようなポリペプチドを単離するための生物としては、ヒト以外に、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ウシ等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0035】
本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードするDNAを単離するためのストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、通常「1xSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5xSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2xSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0036】
このようなハイブリダイゼーション技術を利用して単離されるDNAがコードするポリペプチドは、通常、本発明者らにより同定されたポリペプチドとアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは少なくとも95%以上、さらに好ましくは少なくとも97%以上(例えば、98〜99%)の配列の相同性を指す。アミノ酸配列の同一性は、例えば、Karlin and Altschul によるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sei. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sei. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)。BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターはたとえば score = 50、wordlength = 3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。
【0037】
また、遺伝子増幅技術(PCR)(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 6.1-6.4)を用いて本発明者らにより同定されたポリペプチドをコードするDNA配列(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)の一部を基にプライマーを設計し、本発明者らにより同定されたポリペプチドをコードするDNA配列と相同性の高いDNA断片を単離し、該DNAを基に本発明者らにより同定されたポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドを得ることも可能である。
【0038】
本発明のポリペプチドは「成熟」タンパク質の形であっても、融合タンパク質のような、より大きいタンパク質の一部であってもよい。本発明のポリペプチドには、分泌すなわちリーダー配列、プロ配列、多重ヒスチジン残基のような精製に役立つ配列、または組換え生産の際の安定性を確保する付加的配列などが含まれていてもよい。
【0039】
<ポリペプチドの断片>
本発明は、また、本発明のポリペプチドの断片を提供する。こうした断片は全体的に前記本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の一部と同一であるが、全部とは同一でないアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本発明のポリペプチド断片は、通常、8アミノ酸残基以上、好ましくは12アミノ酸残基以上(例えば、15アミノ酸残基以上)の配列からなるポリペプチド断片である。好適な断片としては、例えば、アミノ末端を含む一連の残基もしくはカルボキシル末端を含む一連の残基の欠失、またはアミノ末端を含む一連の残基とカルボキシル末端を含む一連の残基の二連の残基の欠失したアミノ酸配列を有するトランケーション(truncation)ポリペプチドが含まれる。また、αヘリックスとαヘリックス形成領域、βシートとβシート形成領域、ターンとターン形成領域、コイルとコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、可変性領域、表面形成領域、基質結合領域、および高抗原指数領域を含む断片のような、構造的または機能的特性により特徴づけられる断片も好適である。その他の好適な断片は生物学的に活性な断片である。生物学的に活性な断片は、同様の活性をもつ断片、その活性が向上した断片、または望ましくない活性が減少した断片を含めて、本発明のポリペプチドの活性を媒介するものである。例えば、リガンドが結合して細胞内へシグナル伝達を行なう活性を有する断片が挙げられる。さらに、動物、特にヒトにおいて抗原性または免疫原性がある断片も含まれる。これらのポリペプチド断片は、抗原活性を含めた本発明のポリペプチドの生物学的活性を保持することが好ましい。特定された配列および断片の変異型も本発明の一部を構成する。好適な変異型は同類アミノ酸置換により対象物と異なるもの、すなわち、ある残基が同様の性質の他の残基で置換されているものである。典型的なこうした置換は、Ala, Val, Leu と Ileの間、Ser とThr の間、酸性残基 AspとGlu の間、Asn とGln の間、塩基性残基 LysとArg の間、または芳香族残基 PheとTyr の間で起こる。
【0040】
また、リガンドに結合して細胞内にシグナル伝達を行なわない断片は、本発明のポリペプチドの競合阻害剤になり得るため有用であり、このような断片も本発明に含まれる。
【0041】
<ポリペプチドの製造>
本発明のポリペプチドは任意の適当な方法で製造することができる。このようなポリペプチドには、単離された天然に存在するポリペプチド、組換え的に生産されたポリペプチド、合成的に製造されたポリペプチド、またはこれらの方法の組合せにより製造されたポリペプチドが含まれる。このようなポリペプチドの製造のための手段は当業界でよく理解されている。組み換え的なポリペプチドは、例えば、本発明のポリヌクレオチドを挿入したベクターを適当な宿主細胞に導入し、形質転換体内で発現したポリペプチドを精製することにより調製することが可能である。一方、天然由来のポリペプチドは、例えば、後述する本発明のポリペプチドに対する抗体を結合したアフィニティーカラムを利用して調製することができる (Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 16.1-16.19)。アフィニティー精製に用いる抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また、インビトロトランスレーション(例えば、「On the fidelity of mRNA translation in the nuclease-treated rabbit reticulocyte lysate system. Dasso,M.C.,Jackson,R.J.(1989) NAR 17:3129-3144」参照)などにより本発明のポリペプチドを調製することも可能である。本発明のポリペプチドの断片は、例えば、本発明のポリペプチドを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
【0042】
<ポリヌクレオチド>
本発明は、また、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドには、配列番号:2から2070のうちの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号:1から2069のうちの奇数番号に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド、遺伝コードの縮重により配列番号:1から2069のうちの奇数番号に記載の塩基配列と異なる塩基配列からなるが配列番号:2から2070のうちの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。本発明のポリヌクレオチドには、さらに、これらポリヌクレオチドがコードするポリペプチドと機能的に同等なポリペプチドをコードし、該ポリヌクレオチドの配列とその全長において少なくとも40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上(例えば、98〜99%)同一である塩基配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。塩基配列の同一性は、例えば、Karlin and Altschul によるアルゴリズムBLAST (Proc. Natl. Acad. Sei. USA 87:2264-2268, 1990、Proc. Natl. Acad. Sei. USA 90:5873-5877, 1993)によって決定することができる。このアルゴリズムに基づいて、BLASTNと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul et al. J. Mol. Biol.215:403-410, 1990)。BLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメーターはたとえばscore = 100、wordlength = 12とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov.)。本発明のポリヌクレオチドには、上記のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドが含まれる。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、標準的なクローニングおよびスクリーニングにより、例えば、細胞中のmRNAから誘導されたcDNAライブラリーから得ることができる。また、本発明のポリヌクレオチドはゲノムDNAライブラリーのような天然源から得ることができ、商業的に入手可能な公知の技法を用いて合成することもできる。
【0044】
本発明者らにより同定されたポリヌクレオチドの配列(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)と有意な相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーション技術 (Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 6.3-6.4)や遺伝子増幅技術(PCR)(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 6.1-6.4)を利用して調製することができる。即ち、ハイブリダイゼーション技術を利用して、本発明者らにより同定されたポリヌクレオチドの配列(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)またはその一部をもとに同種または異種生物由来のDNA試料から、これと相同性の高いDNAを単離することができる。また、遺伝子増幅技術を用いて、本発明者らにより同定されたポリヌクレオチドの配列(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)の一部を基にプライマーを設計し、該ポリヌクレオチドの配列と相同性の高いポリヌクレオチドを単離することができる。従って、本発明には、配列番号:1から2069のうちの奇数番号に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドが含まれる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、通常「1xSSC、0.1% SDS、37℃」程度の条件であり、より厳しい条件としては「0.5xSSC、0.1% SDS、42℃」程度の条件であり、さらに厳しい条件としては「0.2xSSC、0.1% SDS、65℃」程度の条件である。このようにハイブリダイゼーションの条件が厳しくなるほどプローブ配列と高い相同性を有するDNAの単離を期待しうる。但し、上記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する上記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間など)を適宜組み合わせることにより、上記と同様のストリンジェンシーを することが可能である。
【0045】
本発明者らにより同定されたポリヌクレオチドの配列と有意な相同性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチドは、配列番号:1から2069のうちの奇数番号に記載の塩基配列に変異を導入する方法(例えば、部位特異的変異誘発法(Current Protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons Section 8.1-8.5))を利用して調製することもできる。また、このようなポリヌクレオチドは、自然界における変異により生じることもある。本発明には、このような塩基配列の変異により、配列番号:2から2070のうちの偶数番号に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/もしくは付加などされたポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドを本発明のポリペプチドの組換え生産のために用いる場合、そのポリヌクレオチドには、成熟ポリペプチドのコード配列またはその断片単独、他のコード配列(例えば、リーダーもしくは分泌配列、プレ-、プロ-もしくはプレプロ-タンパク質配列、または他の融合ペプチド部分をコードするもの)と同じリーディングフレーム内にある成熟ポリペプチドのコード配列またはその断片が含まれる。例えば、融合ポリペプチドの精製を容易にするマーカー配列がコードされ得る。本発明のこの態様の好ましい具体例として、マーカー配列は、pcDNA3.1/Myc-Hisベクター(Invitrogen社)により提供されかつGentz ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1989) 86:821-824に記載されるようなヘキサ-ヒスチジンペプチド、またはMycタグである。また、このポリヌクレオチドは5'および3'非コード配列、例えば、転写されるが翻訳されない配列、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル、リボソーム結合部位、およびmRNA安定化配列を含んでいてもよい。
【0047】
<プローブ・プライマー・アンチセンス・リボザイム>
本発明は、本発明者らにより同定されたポリヌクレオチド(配列番号:1から2069のうちの奇数番号に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたはその相補鎖)に相補的な、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するヌクレオチドを提供する。ここで「相補鎖」とは、A:T(ただしRNAの場合は U)、G:Cの塩基対からなる2本鎖核酸の一方の鎖に対する他方の鎖を指す。また、「相補的」とは、少なくとも15個の連続したヌクレオチド領域で完全に相補配列である場合に限られず、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%以上の塩基配列上の相同性を有すればよい。相同性を決定するためのアルゴリズムは本明細書に記載したものを使用すればよい。このようなヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドを検出、単離するためのプローブとして、また、本発明のヌクレオチドを増幅するためのプライマーとして利用することが可能である。プライマーとして用いる場合には、通常、15〜100ヌクレオチド、好ましくは15〜35ヌクレオチドの鎖長を有する。また、プローブとして用いる場合には、本発明のDNAの少なくとも一部若しくは全部の配列を含む少なくとも15ヌクレオチド、好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの鎖長のヌクレオチドが用いられる。このようなヌクレオチドは、好ましくは本発明のポリペプチドをコードするDNAに特異的にハイブリダイズするものである。「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で、本発明者らにより同定されたヌクレオチド(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)とハイブリダイズし、他のポリペプチドをコードするDNAとはハイブリダイズしないことを意味する。
【0048】
これらヌクレオチドは、本発明のポリペプチドの活性の異常や該ポリペチドをコードする遺伝子の発現の異常を検査・診断するために利用できる。
【0049】
また、これらヌクレオチドには、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドが含まれる。このようなポリヌクレオチドには、アンチセンスDNA(本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA)やリボザイム(本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNAをコードするDNA)が含まれる。
【0050】
アンチセンスDNAが標的遺伝子の発現を抑制する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。すなわち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造がつくられた部位とのハイブリッド形成による転写抑制、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエキソンとの接合点でのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行抑制、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング抑制、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始抑制、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳抑制、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻止、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現抑制などである。これらは、転写、スプライシング、または翻訳の過程を阻害して、標的遺伝子の発現を抑制する(平島および井上「新生化学実験講座2 核酸IV 遺伝子の複製と発現」,日本生化学会編,東京化学同人,pp.319-347,1993)。
【0051】
本発明で用いられるアンチセンスDNAは、上記のいずれの作用で標的遺伝子の発現を抑制してもよい。一つの態様としては、遺伝子のmRNAの5'端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的であろう。しかし、コード領域もしくは3'側の非翻訳領域に相補的な配列も使用し得る。このように、遺伝子の翻訳領域だけでなく非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含むDNAも、本発明で利用されるアンチセンスDNAに含まれる。使用されるアンチセンスDNAは、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3'側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。アンチセンスDNAの配列は、標的遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に阻害できる限り、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは、標的とする遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス配列を用いて、効果的に標的遺伝子の発現を阻害するには、アンチセンスDNAは、アンチセンス効果を引き起こすために、少なくとも15bp以上、好ましくは100bp、さらに好ましくは500bp以上の鎖長を有し、通常、3000bp以内、好ましくは2000bp以内の鎖長を有する。
【0052】
このようなアンチセンスDNAには、本発明のポリペプチドの異常(機能異常や発現異常)などに起因した疾患の遺伝子治療への応用も考えられる。該アンチセンスDNAは、例えば、本発明のポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号:1から2069のうちの奇数番号)の配列情報を基にホスホロチオネート法(Stein, 1988 Physicochemical properties of phosphorothioate oligodeoxynucleotides. Nucleic Acids Res 16, 3209-21 (1988))などにより調製することが可能である。
【0053】
内在性遺伝子の発現の抑制は、また、リボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子のことをいう。リボザイムには種々の活性を有するものがあるが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムの研究により、RNAの部位特異的な切断を目的とするリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型や、RNasePに含まれるM1RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子, (1990) 蛋白質核酸酵素,35:2191)。
【0054】
例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15のC15の3'側を切断するが、活性にはU14が9位のAと塩基対を形成することが重要とされ、15位の塩基はCの他にAまたはUでも切断されることが示されている(M.Koizumiら,(1988) FEBS Lett.228:225)。リボザイムの基質結合部を標的部位近傍のRNA配列と相補的になるように設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することが可能である(M.Koizumiら,(1988) FEBS Lett. 239:285、小泉誠および大塚栄子,(1990) 蛋白質核酸酵素,35:2191、 M.Koizumiら, (1989) Nucleic Acids Res. 17:7059)。本発明者らにより同定されたポリヌクレオチド(配列番号:1から2069のうちの奇数番号)中には標的となりうる部位が複数存在する。
【0055】
また、ヘアピン型リボザイムも、本発明の目的のために有用である。ヘアピン型リボザイムは、例えばタバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(J.M.Buzayan Nature 323:349,1986)。このリボザイムも、標的特異的なRNA切断を起こすように設計できることが示されている(Y.Kikuchi およびN.Sasaki (1992) Nucleic Acids Res. 19:6751、 菊池洋, (1992) 化学と生物 30:112)。
【0056】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドは、遺伝子治療に用いる場合には、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターやリポソームなどの非ウイルスベクターなどを利用して、ex vivo法やin vivo法などにより患者へ投与を行うことが考えられる。
【0057】
<ベクター、宿主細胞、ポリペプチドの製造>
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクター、本発明のポリヌクレオチドまたは該ベクターを保持する宿主細胞、および該宿主細胞を利用した本発明のポリペプチドの生産方法を提供する。
【0058】
本発明のベクターとしては、挿入したDNAを安定に保持するものであれば特に制限されず、例えば宿主に大腸菌を用いるのであれば、クローニング用ベクターとしてはpBluescriptベクター(Stratagene社製)などが好ましい。本発明のポリペプチドを生産する目的においてベクターを用いる場合には、特に発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、試験管内、大腸菌内、培養細胞内、生物個体内でポリペプチドを発現するベクターであれば特に制限されないが、例えば、試験管内発現であればpBESTベクター(プロメガ社製)、大腸菌であればpETベクター(Invitrogen社製)、培養細胞であればpME18S-FL3ベクター(GenBank Accession No. AB009864)、生物個体であればpME18Sベクター(Mol Cell Biol. 8:466-472(1988))などが好ましい。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により、例えば、制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4-11.11)。
【0059】
本発明のベクターが導入される宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられる。ポリペプチドを発現させるための細胞としては、例えば、細菌細胞(例:ストレプトコッカス、スタフィロコッカス、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌)、真菌細胞(例:酵母、アスペルギルス)、昆虫細胞(例:ドロソフィラS2、スポドプテラSF9)、動物細胞(例:CHO、COS、HeLa、C127、3T3、BHK、HEK293、Bowes メラノーマ細胞)および植物細胞を例示することができる。宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクタミン法(GIBCO-BRL社製)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
【0060】
宿主細胞において発現したポリペプチドを小胞体の内腔に、細胞周辺腔に、または細胞外の環境に分泌させるために、適当な分泌シグナルを目的のポリペプチドに組み込むことができる。これらのシグナルは目的のポリペプチドに対して内因性であっても、異種シグナルであってもよい。
【0061】
本発明のポリペプチドの回収は、本発明のポリペプチドが培地に分泌される場合は、培地を回収する。本発明のポリペプチドが細胞内に産生される場合は、その細胞をまず溶解し、その後にポリペプチドを回収する。
【0062】
組換え細胞培養物から本発明のポリペプチドを回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法を用いることができる。
【0063】
<検査方法>
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または本発明のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査方法を提供する。GPCRは、生体内で重要な機能を有すると考えられ、その発現や機能の異常は、種々の疾患の原因となり得る。従って、本発明のポリペプチドの不適当な活性または発現を指標とすることにより、このような疾患の検査を行なうことも可能である。
【0064】
本発明において「疾患の検査」とは、疾患の症状を呈している被検者の治療戦略を立てるための検査のみならず、被検者が疾患にかかりやすいか否かを判断するために行う予防のための検査も含まれる。
【0065】
本発明の検査方法の一つの態様は、被検者における本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域における変異を検出ことを含む方法である。
【0066】
一つの方法は、被検者における本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域の塩基配列を直接決定することによって検査を行う方法である。この方法においては、まず、被検者からDNA試料を調製する。DNA試料は、被検者の細胞、例えば血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料から抽出した染色体DNAあるいはRNAを基に調製することができる。染色体DNAから本方法のDNA試料を調製するには、例えば染色体DNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターにクローニングして、ゲノムライブラリーを作製すればよい。RNAから本方法のDNA試料を調製するには、例えば、逆転写酵素を用いて、RNAからcDNAライブラリーを作製すればよい。本方法においては、次いで、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを単離する。該DNAの単離は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAにハイブリダイズするプローブを用いて、ゲノムライブラリーやcDNAライブラリーのスクリーニングをすることにより行うことができる。また、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAにハイブリダイズするプライマーを用いて、ゲノムDNAライブラリー、cDNAライブラリー、あるいはRNAを鋳型としたPCRによって単離することもできる。本方法においては、次いで、単離したDNAの塩基配列を決定する。選択したDNAの塩基配列の決定は、当業者に公知の方法で行うことができる。本方法においては、次いで、決定したDNAの塩基配列を、対照と比較する。本方法における「対照」とは、正常な(野生型の)本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAの塩基配列を言う。このような比較の結果、被検者のDNAの塩基配列が対照と異なっていた場合には、被検者は、疾患に罹患しているまたは発症の危険があると判定される。
【0067】
本発明の検査方法は、上記の如く直接被検者由来のDNAの塩基配列を決定する方法以外に、種々の方法を用いることができる。
【0068】
その一つの方法においては、まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、調製したDNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。また、他の一つの態様においては、まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを制限酵素により切断する。次いで、DNA断片をその大きさに応じて分離する。次いで、検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する。
【0069】
このような方法としては、例えば、制限酵素断片長多型(Restriction Fragment Length Polymorphism/RFLP)を利用した方法やPCR−RFLP法等が挙げられる。具体的には、制限酵素の認識部位に変異が存在する場合、あるいは制限酵素処理によって生じるDNA断片内に塩基挿入または欠失がある場合、制限酵素処理後に生じる断片の大きさが対照と比較して変化する。この変異を含む部分をPCR法によって増幅し、それぞれの制限酵素で処理することによって、これらの変異を電気泳動後のバンドの移動度の差として検出することができる。あるいは、染色体DNAをこれらの制限酵素によって処理し、電気泳動した後、本発明のプローブDNAを用いてサザンブロッティングを行うことにより、変異の有無を検出することができる。用いられる制限酵素は、それぞれの変異に応じて適宜選択することができる。この方法では、ゲノムDNA以外にも被検者から調製したRNAを逆転写酵素でcDNAにし、これをそのまま制限酵素で切断した後、サザンブロッティングを行うことも可能である。また、このcDNAを鋳型としてPCRで本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを増幅し、それを制限酵素で切断した後、移動度の差を調べることも可能である。
【0070】
別の方法は、まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する。分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する。
【0071】
このような方法としては、例えばPCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism、一本鎖高次構造多型)法(Cloning and polymerase chain reaction-single-strand conformation polymorphism analysis of anonymous Alu repeats on chromosome 11. Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139-146.、Detection of p53 gene mutations in human brain tumors by single-strand conformation polymorphism analysis of polymerase chain reaction products. Oncogene. 1991 Aug 1; 6(8): 1313-1318.、Multiple fluorescence-based PCR-SSCP analysis with postlabeling. 、PCR Methods Appl. 1995 Apr 1; 4(5): 275-282.)が挙げられる。この方法は操作が比較的簡便であり、また被検試料の量も少なくて済む等の利点を有するため、特に多数のDNA試料をスクリーニングするのに好適である。その原理は次の通りである。二本鎖DNA断片を一本鎖に解離すると、各鎖はその塩基配列に依存した独自の高次構造を形成する。この解離したDNA鎖を、変性剤を含まないポリアクリルアミドゲル中で電気泳動すると、それぞれの高次構造の差に応じて、相補的な同じ鎖長の一本鎖DNAが異なる位置に移動する。一塩基の置換によってもこの一本鎖DNAの高次構造は変化し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動において異なる移動度を示す。従って、この移動度の変化を検出することによりDNA断片に点突然変異や欠失、あるいは挿入等による変異が存在することを検出することができる。
【0072】
具体的には、まず、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAをPCR法等によって増幅する。増幅される範囲としては、通常200〜400bp程度の長さが好ましい。PCRは、当業者においては反応条件等を適宜選択して行うことができる。PCRの際に、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識したプライマーを用いることにより、増幅DNA産物を標識することができる。あるいはPCR反応液に32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を加えてPCRを行うことにより、増幅DNA産物を標識することも可能である。さらに、PCR反応後にクレノウ酵素等を用いて、32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を、増幅DNA断片に付加することによっても標識を行うことができる。こうして得られた標識されたDNA断片を、熱を加えること等により変性させ、尿素などの変性剤を含まないポリアクリルアミドゲルによって電気泳動を行う。この際、ポリアクリルアミドゲルに適量(5から10%程度)のグリセロールを添加することにより、DNA断片の分離の条件を改善することができる。また、泳動条件は各DNA断片の性質により変動するが、通常、室温(20から25℃)で行い、好ましい分離が得られないときには4から30℃までの温度で最適の移動度を与える温度の検討を行う。電気泳動後、DNA断片の移動度を、X線フィルムを用いたオートラジオグラフィーや、蛍光を検出するスキャナー等で検出し、解析を行う。移動度に差があるバンドが検出された場合、このバンドを直接ゲルから切り出し、PCRによって再度増幅し、それを直接シークエンシングすることにより、変異の存在を確認することができる。また、標識したDNAを使わない場合においても、電気泳動後のゲルをエチジウムブロマイドや銀染色法などによって染色することによって、バンドを検出することができる。
【0073】
さらに別の方法は、まず、被検者からDNA試料を調製する。次いで、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを増幅する。さらに、増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する。次いで、分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する。
【0074】
このような方法としては、例えば、変性剤濃度勾配ゲル(denaturant gradient gel electrophoresis: DGGE法)等を例示することができる。DGGE法は、変性剤の濃度勾配のあるポリアクリルアミドゲル中で、DNA断片の混合物を泳動し、それぞれの不安定性の違いによってDNA断片を分離する方法である。ミスマッチのある不安定なDNA断片が、ゲル中のある変性剤濃度の部分まで移動すると、ミスマッチ周辺のDNA配列はその不安定さのために、部分的に1本鎖へと解離する。この部分的に解離したDNA断片の移動度は、非常に遅くなり、解離部分のない完全な二本鎖DNAの移動度と差がつくことから、両者を分離することができる。具体的には、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を含むDNAを本発明のプライマー等を用いたPCR法等によって増幅し、これを尿素などの変性剤の濃度が移動するに従って徐々に高くなっているポリアクリルアミドゲル中で電気泳動し、対照と比較する。変異が存在するDNA断片の場合、より低い変性剤濃度位置でDNA断片が一本鎖になり、極端に移動速度が遅くなるため、この移動度の差を検出することにより変異の有無を検出することができる。
【0075】
上記の方法以外にも、特定位置の変異のみを検出する目的にはアレル特異的オリゴヌクレオチド(Allele Specific Oligonucleotide/ASO)ハイブリダイゼーション法が利用できる。変異が存在すると考えられる塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを作製し、これと試料DNAでハイブリダイゼーションを行わせると、変異が存在する場合、ハイブリッド形成の効率が低下する。それをサザンブロット法や、特殊な蛍光試薬がハイブリッドのギャップにインターカレーションすることにより消光する性質を利用した方法、等により検出することができる。また、リボヌクレアーゼAミスマッチ切断法による検出も可能である。具体的には、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子を含むDNAをPCR法等によって増幅し、これをプラスミドベクター等に組み込んだ対照cDNA等から調製した標識RNAとハイブリダイゼーションを行う。変異が存在する部分においてはハイブリッドが一本鎖構造となるので、この部分をリボヌクレアーゼAによって切断し、これをオートラジオグラフィー等で検出することによって変異の存在を検出することができる。
【0076】
本発明の検査方法の他の態様は、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を検出することを含む方法である。ここで「遺伝子の発現」には、転写および翻訳が含まれる。従って、「発現産物」には、mRNAおよびタンパク質が含まれる。
【0077】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写レベルにおける検査法においては、まず、被検者からRNA試料を調製する。次いで、該RNA試料に含まれる本発明のポリペプチドをコードするRNAの量を測定する。次いで、測定された本発明のポリペプチドをコードRNAの量を対照と比較する。
【0078】
このような方法としては、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプローブを用いたノーザンブロッティング法、または本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするプライマーを用いたRT-PCR法等を例示することができる。
【0079】
また、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の転写レベルにおける検査においては、DNAアレイ(新遺伝子工学ハンドブック、村松正實・山本雅、羊土社、p280-284)を利用することもできる。具体的には、まず、被検者から調製したcDNA試料、および本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチドプローブが固定された基板を提供する。基盤に固定されるポリヌクレオチドプローブは、複数種の本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検出するために、複数種であってもよい。被検者からのcDNA試料の調製は、当業者に周知の方法で行うことができる。cDNA試料の調製の好ましい態様においては、まず被検者の細胞から全RNAの抽出を行う。細胞としては、例えば血液、尿、唾液、組織の生検または剖検材料の細胞などが例示できる。全RNAの抽出は、例えば次のようにして行うことができる。純度の高い全RNAが調製できる方法であれば、既存の方法およびキット等を用いることが可能である。例えばAmbion社 "RNA later"を用い前処理を行った後、ニッポンジーン社"Isogen"を用いて全RNAの抽出を行う。具体的方法にはそれらの添付プロトコールに従えばよい。次いで、抽出した全RNAを鋳型として、逆転写酵素を用いてcDNAの合成を行い、cDNA試料を調製する。全RNAからのcDNAの合成は、当業者に周知の方法で実施することができる。調製したcDNA試料には、必要に応じて、検出のための標識を施す。標識物質としては、検出可能なものであれば特に制限はなく、例えば、蛍光物質、放射性元素等を挙げることができる。標識は、当業者によって一般的に行われる方法(L Luo et al., Gene expression profiles of laser-capturedadjacent neuronal subtypes. Nat Med. 1999, 117-122)で実施することができる。
【0080】
本発明において「基板」とは、ポリヌクレオチドを固定することが可能な板状の材料を意味する。本発明の基板は、ポリヌクレオチドを固定することが可能であれば特に制限はないが、一般にDNAアレイ技術で使用される基板を好適に用いることができる。
【0081】
DNAアレイ技術の利点は、ハイブリダイゼーションの溶液量が非常に少なく、固定されたヌクレオチドプローブに、細胞の全RNAに由来するcDNAを含む非常に複雑なターゲットをハイブリダイズすることができることである。一般にDNAアレイは、高密度に基板にプリントされた何千ものヌクレオチドで構成されている。通常これらのDNAは非透過性(non- porous)の基板の表層にプリントされる。基板の表層は、一般的にはガラスであるが、透過性(porous)の膜、例えばニトロセルロースメンブレムを使用することができる。ヌクレオチドの固定(アレイ)には2つのタイプがあり、一つはAffymetrix社開発によるポリヌクレオチドを基本としたアレイであり、もう一つは主としてStanford大学で開発されたcDNAのアレイである。ポリヌクレオチドのアレイにおいて、ポリヌクレオチドは通常インサイチュ(in situ)で合成される。例えば、photolithographicの技術(Affymetrix社)、および化学物質を固定させるためのインクジェット(Rosetta Inpharmatics社)技術等によるポリヌクレオチドのインサイチュ合成法が既に知られており、いずれの技術も本発明の基板の作製に利用することができる。基板に固定するポリヌクレオチドプローブは、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子と特異的にハイブリダイズするものであれば特に制限はない。本発明のポリヌクレオチドプローブには、ポリヌクレオチド、またはcDNAが含まれる。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと実質的にハイブリダイズし、それ以外のポリヌクレオチドとは実質的にハイブリダイズしないことを意味する。特異的なハイブリダイズが可能であれば、ポリヌクレオチドプローブは、検出の対象となるポリヌクレオチドの塩基配列に対し、完全に相補的である必要はない。基板に結合するポリヌクレオチドプローブの長さは、通常cDNAを固定する場合100〜4000ベースであり、好ましくは200〜4000ベースであり、さらに好ましくは500〜4000ベースである。合成ポリヌクレオチドを固定する場合は、通常15〜500ベースであり、好ましくは30〜200ベースであり、さらに好ましくは50〜200ベースである。基板へのポリヌクレオチドの固定の工程は、一般に「プリント」とも呼ばれる。具体的には、例えば以下ようにプリントすることができるが、これに限定されるものではない。数種のポリヌクレオチドプローブを4.5 mm x4.5 mmの一つの領域内にプリントする。その際、それぞれのアレイをプリントするのには一つのピンを用いて行うことが可能である。従って48ピンのツールを用いた場合、48回の繰り返したアレイを一つの標準的な顕微鏡用スライドにプリントすることが可能である。
【0082】
本方法においては、次いで、該cDNA試料と該基板を接触させる。本工程により、本発明のポリペプチドをコードするDNAと特異的にハイブリダイズ可能な基板上のヌクレオチドプローブに対し、cDNA試料をハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションの反応液および反応条件は、基板に固定するヌクレオチドプローブの長さ等の諸要因により変動しうるが、一般的に当業者に周知の方法により行うことができる。
【0083】
本方法においては、次いで、該cDNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を測定する。さらに、測定された本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を対照と比較する。
【0084】
本発明においては、cDNA試料中に本発明のポリペプチドをコードする遺伝子由来のcDNAが存在する場合、基板に固定されたヌクレオチドプローブと該cDNAとがハイブリダイズする。従って、ポリヌクレオチドプローブと該cDNAとのハイブリダイズの強度を検出することにより、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を測定することができる。ポリヌクレオチドプローブと該cDNAとのハイブリダイズの強度の検出は、cDNA試料を標識した物質の種類に応じて当業者においては適宜行うことができる。例えば、cDNAが蛍光物質によって標識された場合、スキャナーによって蛍光シグナルを読み取ることによって検出することができる。
【0085】
本発明の方法においては、被検者および対照(健常者)由来のcDNA試料について、異なる蛍光物質で標識を施すことにより、1回の測定でそれぞれにおける本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を同時に測定することができる。例えば、上記それぞれのcDNA試料の一方を蛍光物質であるCy5で、他方をCy3で標識することができる。それぞれの蛍光シグナルの相対強度は、被検者および対照での本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量に応じた相対量を示す(Duggan et al., Nat. Genet. 21: 10-14, 1999)。
【0086】
一方、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の翻訳レベルにおける検査においては、まず、被検者からポリペプチド試料を調製する。次いで、該ポリペプチド試料に含まれる本発明のポリペプチドの量を測定する。次いで、測定された本発明のポリペプチドの量を対照と比較する。
【0087】
このような方法としては、SDSポリアクリルアミド電気泳動法、並びに本発明のポリペプチドに結合する抗体を用いた、ウェスタンブロッティング法、ドットブロッティング法、免疫沈降法、酵素結合免疫測定法(ELISA)、および免疫蛍光法を例示することができる。
【0088】
上記の方法において、対照と比較して、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量が有意に変化していた場合、被検者は、該遺伝子の発現異常に関連した疾患を罹患している、または該疾患を発症する危険を有すると判定される。
【0089】
<検査薬>
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または本発明のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬を提供する。
【0090】
その一つの態様は、上記した本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその発現制御領域を含むDNAにハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチドを含む検査薬である。該オリゴヌクレオチドは、上記本発明の検査方法において、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を検出するためのプローブとして、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子またはその発現制御領域を増幅するためのプライマーとして用いることができる。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。プローブは、制限酵素処理等によって取得されるの二本鎖DNA断片として作製することもできる。本発明のオリゴヌクレオチドをプローブとして用いる場合は、適宜標識して用いることが好ましい。標識する方法としては、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて、オリゴヌクレオチドの5'端を32Pでリン酸化することにより標識する方法、およびクレノウ酵素等のDNAポリメラーゼを用い、ランダムヘキサマーオリゴヌクレオチド等をプライマーとして32P等のアイソトープ、蛍光色素、またはビオチン等によって標識された基質塩基を取り込ませる方法(ランダムプライム法等)を例示することができる。
【0091】
本発明の検査薬の他の一つの態様は、後述する本発明のポリペプチドに結合する抗体を含む検査薬である。該抗体は、上記の本発明の検査方法において、本発明のポリペプチドを検出するために用いられる。抗体は、本発明のポリペプチドを検出可能であればその形態に制限はない。検査のための抗体には、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が含まれる。抗体は必要に応じて標識されていてもよい。
【0092】
上記の検査薬においては、有効成分であるオリゴヌクレオチドや抗体以外に、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤等が必要に応じて混合されていてもよい。
【0093】
<抗体>
本発明は、本発明のポリペプチドに結合する抗体を提供する。ここで「抗体」には、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、さらにFabまたは他の免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含むFabフラグメントが含まれる。
【0094】
本発明のポリペプチドまたはその断片もしくは類似体、またはそれらを発現する細胞は、本発明のポリペプチドに結合する抗体を産生するための免疫原としても使用することができる。抗体は、好ましくは、本発明のポリペプチドに免疫特異的である。「免疫特異的」とは、その抗体が他のポリペプチドに対するその親和性よりも本発明のポリペプチドに対して実質的に高い親和性を有することを意味する。
【0095】
本発明のポリペプチドに結合する抗体は、当業者に公知の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、次のようにして得ることができる。本発明のポリペプチドあるいはそのGSTとの融合タンパク質をウサギ等の小動物に免疫し血清を得る。これを、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のポリペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することにより調製する。また、モノクローナル抗体であれば、例えば、本発明のポリペプチドをマウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞を分離し、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のポリペプチドに結合する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明のポリペプチドをカップリングしたアフィニティーカラム等により精製することで、調製することが可能である。
【0096】
本発明の抗体は、本発明のポリペプチドやこれを発現する細胞の単離、同定、および精製に利用することができる。本発明のポリペプチドに結合する抗体は、本発明のポリペプチドの発現異常に関連した疾患の検査において、本発明のポリペプチドの発現量を測定するために用いることもできる。
【0097】
<リガンド、アゴニスト、アンタゴニストの同定>
本発明のポリペプチドは、そのリガンド、アゴニストまたはアンタゴニストの同定において使用することができる。同定の対象となるこれら分子は、天然由来であっても、人工的に合成された構造的または機能的な模擬物であってもよい。本発明のポリペプチドは多くの病理を含めて多数の生物学的機能に関与している。従って、本発明のポリペプチドを活性化する化合物および本発明のポリペプチドの活性化を阻害し得る化合物を発見することが望まれる。
【0098】
本発明のポリペプチドに対するリガンドの同定においては、まず、本発明のポリペプチドと候補化合物とを接触させ、次いで、候補化合物が本発明のポリペプチドに結合するか否かを検出する。
【0099】
被検試料としては、特に制限はなく、例えば、種々のGPCRのリガンド活性については不明の公知化合物やペプチド(例えば、ケミカルファイルに登録されているもの)あるいはファージ・ディスプレイ法(J.Mol.Biol. (1991) 222, 301-310)などを応用して作成されたランダム・ペプチド群を用いることができる。また、微生物の培養上清や、植物、海洋生物由来の天然成分などもスクリーニングの対象となる。その他、脳をはじめとする生体組織抽出物、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0100】
本方法においては、精製された本発明のポリペプチドを用いて候補化合物との結合を検出することができる。結合の検出には、例えば、本発明のポリペプチドのアフィニティーカラムに被検試料を接触させ本発明のポリペプチドに結合する化合物を精製する方法やウエストウエスタンブロッティング法など多くの公知の方法を利用することができる。これら方法を利用する場合には、候補化合物は適宜標識し、この標識を利用して本発明のポリペプチドとの結合を検出することができる。また、本発明のポリペプチドを発現する細胞膜を調製して、これをチップ上に固定し、リガンド結合時に三量体型GTP結合蛋白質が解離する事を、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)の変化で検出する方法(Nature Biotechnology (99) 17:1105)を用いることも可能である。さらに、候補化合物と本発明のポリペプチドとの結合活性は、本発明のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを指標に検出することもできる。このようなシグナルとしては、例えば、細胞内のCa2+レベルの変化、細胞内のcAMPレベルの変化、細胞内のpHの変化、細胞内のアデニル酸シクラーゼレベルの変化が挙げられるが、これらに制限されない。
【0101】
この方法の1つの実施例として、本発明のポリペプチドを発現させた細胞膜を20mM HEPES (pH7.4), 100mM NaCl, 10mM MgCl2, 50μM GDP溶液中で、35Sで標識されたGTPγS 400pMと混合させ、被検試料存在下と非存在下でインキュベーション後、濾過(filtration)を行い、結合したGTPγSの放射活性を比較する手法を用いることができる。
【0102】
またGPCRは、三量体型GTP結合蛋白質の活性化を介して細胞内にシグナルを伝達するシステムを共有している。三量体型GTP結合蛋白質は、活性化する細胞内伝達系の種類によって、Ca2+を上昇させるGq型、cAMPを上昇させるGs型、そしてcAMPを抑制するGi型の3種類に分類される。このことを応用してGq蛋白質αサブユニットと他のG蛋白質αサブユニットとをキメラ化し、あるいはpromiscuousなGα蛋白質、Gα15、Gα16を用いてリガンドスクリーニングの際の陽性シグナルをGqの細胞内伝達経路である、Ca2+上昇に帰結させることが可能である。上昇したCa2+レベルは、TRE(TPA responsive element)またはMRE(multiple responsive element)を上流に有するレポーター遺伝子系、Fura-2、Fluo-3などの染色指示薬そして蛍光蛋白aequorinなどの変化を指標として検出ができる。同様に、Gs蛋白質αサブユニットと他のG蛋白質αサブユニットとをキメラ化し、陽性シグナルをGsの細胞内伝達経路である、cAMP上昇に帰結させ、CRE(cAMP-responsive element)を上流に有するレポーター遺伝子系での変化を指標とすることも可能である(Trends Pharmacol.Sci. (99) 20:118)。
【0103】
このスクリーニング系において本発明のポリペプチドを発現させる宿主細胞としては特に制限はなく、目的に応じて種々の宿主細胞が用いられるが、例えば、COS細胞、CHO細胞、HEK293細胞などの哺乳動物細胞、酵母、ショウジョウバエ由来の細胞、または大腸菌細胞を例示することができる。本発明のポリペプチドを脊椎動物細胞で発現させるためのベクターとしては、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位および転写終結配列や複製起点等を有するものを好適に用いることができる。例えば、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Mol.Cell.Biol.(1981)1,854-864)や、pEF-BOS(Nucleic Acids Res.(1990)18,5322)、pCDM8(Nature(1987)329,840-842)、pCEP4(Invitrogen社)などは、GPCRを発現させるのに有用なベクターである。ベクターへの本発明のポリペプチドをコードするDNAの挿入は常法により制限酵素サイトを用いたリガーゼ反応により行うことができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 11.4〜11.11)。また、宿主細胞へのベクター導入は、例えば、リン酸カルシウム沈殿法、電気パルス穿孔法(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al. (1987) Publish. John Wiley & Sons.Section 9.1-9.9)、リポフェクタミン法(GIBCO-BRL社製)、FuGENE6試薬(ベーリンガーマンハイム社)、マイクロインジェクション法などの公知の方法で行うことが可能である。
【0104】
本発明のポリペプチドに対するアゴニストの同定においては、本発明のポリペプチドを発現している細胞と候補化合物とを接触させ、候補化合物が本発明のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを発生させるか否かを検出する。即ち、上記した、本発明のポリペプチドを発現する細胞を用いたリガンドの同定法において、候補化合物の作用により、本発明のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを発生させる化合物を同定する。このような化合物は、本発明のポリペプチドに対するアゴニストの候補となる。
【0105】
本発明のポリペプチドに対するアンタゴニストの同定においては、候補化合物の存在下で本発明のポリペプチドを発現している細胞と本発明のポリペプチドに対するアゴニストとを接触させ、候補化合物の非存在下で検出した場合(対照)と比較して、本発明のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルが減少するか否かを検出する。即ち、上記した、本発明のポリペプチドを発現する細胞を用いたリガンドの同定法において、該細胞に対し、候補化合物に加えてアゴニストを作用させ、アゴニスト刺激に応答した本発明のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルの発生を抑制する化合物を同定する。このような化合物は、本発明のポリペプチドに対するアンタゴニストの候補となる。本発明のポリペプチドの潜在的なアンタゴニストの例としては、抗体、ある場合には、リガンドと密接な関係があるポリペプチド(例えば、リガンドの断片)、または本発明のポリペプチドと結合するが応答を誘導しない(それゆえ該受容体の活性を妨げる)小分子などが挙げられる。
【0106】
本発明は、また、上記同定方法に用いるためのキットを提供する。このキットは、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドを発現する細胞若しくはその細胞膜を含む。該キットには、GPCRのリガンド、アゴニスト、あるいはアンタゴニストの候補となる化合物が含まれていてもよい。
【0107】
<疾患の治療のための医薬組成物>
本発明は、本発明のポリペプチドの活性または発現を増加または抑制させる必要がある患者を治療するための医薬組成物を提供する。
【0108】
本発明のポリペプチドの活性または発現を増加させるための、医薬組成物の有効成分としては、本発明のポリペプチドに対するアゴニスト、本発明のポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドが挿入されたベクターを用いることができる。一方、本発明のポリペプチドの活性または発現を抑制させるための、医薬組成物の有効成分としては、本発明のポリペプチドに対するアンタゴニスト、生体内において、内因性の本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを用いることができる。アンタゴニストには、内因性の本発明のポリペプチドとの競合状態でリガンドと結合する能力がある可溶性形態の本発明のポリペプチドが含まれる。このような競合物質の典型的な例は、本発明のポリペプチドの断片である。本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドとしては、上記したアンチセンスDNAやリボザイムが含まれる。
【0109】
治療用化合物を医薬品として用いる場合には、該化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化した医薬組成物として投与を行うことも可能である。例えば、薬理学上許容しうる担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、希釈剤、溶解補助剤等)と混合して得られる医薬組成物または錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、眼軟膏等の製剤として経口または非経口に適した形態で処方される。
【0110】
患者への投与は、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。
【0111】
遺伝子治療用ベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどのウイルスベクターやリポソームなどの非ウイルスベクターなどを例示することができる。該ベクターを利用して、ex vivo法やin vivo法などにより患者へ目的のDNAの投与を行うことができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例により、本発明のポリペプチドの同定に関して詳細に説明する。
【0113】
[実施例1] ヒトゲノムデータからのアミノ酸配列の抽出
本発明者らは、GPCR遺伝子発見のための第一段階、即ち、配列抽出段階において、ヒトゲノム配列から開始コドンおよび停止コドンのあいだに存在する6フレーム翻訳配列の全ての候補体を選択した(6F展開配列)。同一の配列上で開始コドン(ATG)が多数見つかる場合には最も長い配列を選択した。一方、複数のエキソンを有する配列を検出するために、遺伝子発見プログラム(GeneDecoder)(Asai, K., et al. Pacific Symposium on Biocomputing 98, pp.228-239 (PSB98, 1998).)を用いて、蛋白質コード領域を発見した(GD配列)。GPCR蛋白質は、長さが約20残基程度の7個の膜貫通ヘリックスを有するため、双方の配列ともに150残基以上(>20*7)必要であるとの条件をつけた。
【0114】
NCBIのヒトゲノムドラフト配列(2001年2月版)に基づいて、6-フレーム翻訳により375,412配列を、そしてGeneDecoderにより95,900配列を予測した。前者の配列はイントロンを含まない場合に対応し、後者は主に複数のエキソンで構成される。
【0115】
なお、GeneDecoderは隠れマルコフモデル(HMM)を用いた遺伝子発見プログラムであり、配列類似性とエキソン長の分布に関する情報も利用する。このプログラムを、複数のエキソンから成る配列462個およびエキソン2,843個を含むGenset98(http//bioinformatics weizmann.ac.il/databases/gensets/Human/)を用いて評価したところヌクレオチドレベルで97.6%の感度と40.4%の選択性を示し、一方、正しいエキソン境界を検出するために64.2%の感度、21.3%の選択性を示すことがわかった。
【0116】
[実施例2] 三重解析
三重解析の段階において、本発明者らは、配列検索のためにBLASTP(Altschul, S. F. et al. Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402 (1997).)、ドメインおよびモチーフの帰属のためにPFAMデータベース(Bateman, A., et al. Nucleic Acids Res. 28, 263-266 (2000).)およびPROSITE(Bairoch, A. Nucreic Acids Res. 20, 2013-2018 (1992).)データベース、ならびにTMH予測には本発明者らの独自のアルゴリズムであるTMWindowsを用い、さらにMitakuの方法(Hirokawa, T., et al. Bioinformatics. 14, 378-379 (1998).)を加味した。具体的には、以下の通りである。
(1)BLASTPを用いて、配列抽出段階で得たアミノ酸配列(6F展開配列、GD配列)をSWISSPROTデータベースに対して検索し、E値<10−10または10−50で既知のGPCR配列と一致する配列を列挙した。
(2)HMMERプログラムを用いて6F展開配列、GD配列にPFAMデータベース注のGPCRに特有なドメインをE値<1.0または<10-10で帰属できた配列を列挙した。同時にPROSITE(Bairoch, A. Nucreic Acids Res. 20, 2013-2018 (1992).)データベース中のGPCRに特有なモチーフパターンをP値<2×10−3または<10−5で帰属できた配列を列挙した。
(3)TMWindowsおよびMitakuの方法を用いて、6F展開配列、GD配列の膜貫通ヘリックス本数を予測した。例えばTMWindowsによって7本と予測した結果およびMitakuの方法で6本〜8本の範囲で予測された結果の和集合の関係を{TMWindows(7)またはMitaku(6-8)}と記載するとして、{TMWindows(7)またはMitaku(6-8)}、{TMWindows(7)またはMitaku(7)}ならびに{TMWindows(7)かつMitaku(7)}として用意した各条件に一致した配列を列挙する。
【0117】
以上の解析において使われたプログラムやデータベースについて詳細を記述する。PFAMは、隠れマルコフモデル(HMM)によって記述された蛋白質ドメインデータベースであり、HMMER(Bateman, A., et al. Nucleic Acids Res. 28, 263-266 (2000).)は、それらを配列に帰属し、その有意性をE値でスコア付けする。一方、PROSITEは、正規表現によって記述されたモチーフパターンである。本発明者らは帰属の有意性をスコア付けするため、各残基の出現確率を乗算した(P値)を指標とした。例えば、正規表現パターンがA-[T,S]-Gである場合、P値はP*{Pt+Ps}*Pである。
【0118】
TMWindowsは、TMH予測に関する本発明者独自のプログラムである。これは、Engelman-Staitz-Goldman(Engelman, D. M., et al. Annual Review of Biophysics and Biophysical Chemistry. 15, 321-353. (1986).)の疎水性指数をアミノ酸残基ごとに割り付け、9つの異なるウインドウ幅(19〜27残基)で全配列をスキャンする。この指標はAAindexデータベース(Tomii, K. & Kanehisa, M. Protein Eng. 9, 27-36 (1996).)に含まれたあらゆる指数の比較を通して膜タンパク質解析に最も適した指標として決定した。それぞれのウィンドウ幅に関して、平均疎水性指数>2.5である連続領域を、膜貫通ヘリックスとして予測する。それぞれの異なるウィンドウセットで予測される数は、ヘリックスの本数の範囲を意味する。一方、Mitakuの方法は、物理化学パラメータを用いてヘリックスの本数を予測する。
【0119】
これらの解析で使われた閾値は、本発明者がそれぞれの方法を評価することで得たものである。評価に用いた参考データセットは、SWISSPROTバージョン39(Bairoch, A. & Apweiler, R. Nucleic Acids Res. 28, 45-48 (2000).)から断片配列を除外することによって得た配列である。これは、既知のGPCR配列1,054個および非GPCR配列64,154個を含む。以下に解析法の具体的な評価手順を示す。
(1)BLASTPを用いて、既知のGPCR配列1,054個を評価用データセットに対して検索し、正確および非正確な対の識別に関する感度、選択性を各E値に対して計算した。
(2)HMMERを用いて、GPCRに特有なPFAMドメインを評価用データセットの配列に帰属し、E値の感度および選択性を正確および非正確帰属の数に対して計算した。一方、PROSITEパターンに関して、P値の感度および選択性を、正確および非正確帰属の数に関して計算した。
(3)TMH予測ツールは、一般的にヘリックスの真の数を予測することにおいてあまり正確ではない。しかし、予測されるヘリックスの本数を、6〜8本、5〜9本、または4〜10本等というように広く取れば、真の7本の膜貫通ヘリックスタイプを検出するための感度を明らかに増加できる。TMWindowsおよびMitakuの方法のいずれに関しても、われわれは4通りの範囲、7、6〜8、5〜9、4〜10を考慮し、お互いの全ての組合せ(16通り)に対して、真の7本の膜貫通ヘリックスを検出する感度および選択性を計算した。
【0120】
評価を通じて、本発明者らは2つの閾値すなわち最善感度閾値と最善選択性閾値に重点を置いた。前者の閾値は、疑陽性が最小になりほぼ100%の感度を得ることを意図しており、一方、後者は疑陰性が最小になりほぼ100%の選択性を得ることを意図している。
【0121】
例えば、BLASTPの閾値の評価を図1に示す。左矢印が示す線はGPCR同士の対の個数を表し、右矢印が示す線はGPCRと非GPCR配列との対を示す。E値が10-50未満である領域では、境界域周辺のいくつかの無関係な対を除いてほぼ全ての対がGPCR配列同士のものであった。これは最善選択性閾値に対応する。興味深いことに、これらの疑陽性は、膜貫通ヘリックスを1本だけ持つ受容体に特徴的なLDL受容体ドメインまたはEGF因子ドメインとの一致によって引き起こされた。E値が10-10未満の場合、疑陽性は115個であったがほとんど全てのGPCRが範囲に含まれた。この境界域は最善感度閾値に対応する。
【0122】
同様に、本発明者らは、表1に要約したように、それぞれのツールの閾値を評価しそれらを基に4つのレベルのデータセットを作成した。
【0123】
【表1】

【0124】
ここで、各プログラムの閾値の下の括弧内には、その閾値を用いたときの感度(左)と選択性(右)を表す。
最も信頼の置けるデータ(レベルA,最善選択性データセット)は、BLASTP、PFAM、およびPROSITEの最善選択性閾値から得られた配列の和集合によって得られた。これに加え、関係の遠いGPCR配列を発見するために、TMH予測閾値の3つのレベル(表1)による結果とBLASTP、PFAMおよびPROSITEの最善感度閾値による結果との和集合を得た。次に、最も感度の高いデータセットを最善感度データセットとして準備した(レベルD)。本発明者らが評価した方法によれば、最善選択性データセットにおいて発見された如何なる配列も膜貫通ヘリックス7本を有する蛋白質であり、そのほとんどがグアノシン三リン酸結合タンパク質共役型である可能性が極めて高い。
【0125】
[実施例3] 遺伝子数の精密化
第一の段階において生成した配列から、表1に示す閾値を用いてGPCR候補物質をスクリーニングした。しかしこれらの配列は、なおも以下の重複例を含んでいたため、最終的に候補数をより絞り込む必要があった。
【0126】
ケース1:同じ遺伝子の位置での完全なマッチまたは重なり。それらは2つの配列生成方法、すなわち(1)6-フレーム翻訳および(2)GeneDecoderによる予測、の結果である。本発明者らはそれらを同じ遺伝子であると見なした。
【0127】
ケース2:異なる染色体間または同じ染色体上の異なる位置の間での多数のコピー。生物学的観点から、本発明者らはそれらを異なる遺伝子と見なした。重複遺伝子の最大数は染色体2と11とのあいだに多く認められた。
【0128】
ケース3:何らかの長い既知の配列に部分的にヒットする2つ以上の配列。これらが生成された理由は、遺伝子発見プログラムによるミススプライシングであると考えられる。本発明者らはそれらを本来は同じ遺伝子として融合するべきとした。
【0129】
本発明者らは、上記の各ケースを検討することによってまず候補遺伝子の精度を上げた。具体的なアルゴリズムとして本発見者らは、染色体番号をC、フレーム番号をFおよびゲノム配列上の位置をRとして配列をS(C、F、R)と記述し、2つの配列i,jがC=C、F=F、n=n、e-t<0(i<j)で、50残基以上99%以上の類似度でアラインされた場合に、2つの配列を同じ遺伝子であると見なした。(ここでnがコンティグ番号であって、t,eがコンティグ配列でのNおよびC末端での相対的位置である場合、位置R=R(n,t,e)である)。
【0130】
上記のような篩い分けを行った後、さらに、生物学的知見も加えて最終的に本発明者らは827配列からなる最善選択性データセット、および2109配列からなる最善感度データセットをそれぞれ得、さらにその他のレベルのデータセットも得た(2001年および2002年2月版のNCBIヒトゲノムドラフト配列を使用)。各データセットに対して染色体ごとのGPCR候補体の数を表2にまとめる。
【0131】
【表2】

各染色体ごとのGPCR候補数 Unは、染色体番号が判らないもの。
【0132】
全てのレベルのデータセットにおいて染色体11はGPCR候補体の最大数を有し、染色体1、6、19も多数のGPCR候補体を示すことがわかる。一方、染色体21およびYでは、GPCR候補は極めて少ない。しかもこの傾向は、これまで毎月データを更新する過程でも変わらなかった。
【0133】
最善選択性データセットに関するさらなる分析を表3に要約する。
【表3】

【0134】
本発明者らは、30%の配列類似性によって配列を分類した。これは一般的に、進化的に関連したファミリーの閾値であると考えられる。最大のファミリーは507メンバーを含む嗅覚受容体であった。20メンバー以上の主要なファミリーは、アドレナリン、ドーパミンおよびセロトニン受容体(37)、ファミリー2B受容体(18)、ファミリー3C受容体(28)ケモカインおよび化学遊走受容体(31)、ならびにオーファン受容体(68)であった。
【0135】
[実施例4] 新規配列の抽出
配列をUNIGENE(Schuler, G. D. J.Mol Med. 75, 694-698 (1997).)およびnr-aa(ftp://ncbi.nlm.nih.gov/blast/db/README)データベースに対して検索した。調べた配列中の少なくとも100残基以上が既知配列に対して連続してアラインされ、その領域のアミノ酸同一性が96%以上であれば、本発明者らはこの配列を既知の配列であると判断し、この基準で、本発明者らは、新規GPCR候補を得た。これらのデータセットは、定常的な再計算により、将来にわたり、維持、更新されるものである。
【0136】
本発明者らは、抽出した新規配列を下記A群、B群、C群に分類した(表4から表6)。配列A群、B群、C群は、三重分析で得られた配列セットのうち、それぞれ最善選択性データセット(レベルA)、レベルBデータセット、レベルCデータセットを基にして個数の精密化を行った後、UNIGENEおよびnr-aaデータベースに対する検索に従って新規配列を求めたものである。
【0137】
なお、A群に記載の新規遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列番号:1から936に、B群に記載の新規遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列番号:1から1684に、C群に記載の新規遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列番号:1から2070に示した。
【0138】
【表4】

A-1 6F配列を相同性検索にて解析した配列セット。(もっとも簡易な方法の利用)
A-2 GD配列の利用により、マルチエキソンからなるアミノ酸配列分が増加した。
A-3 モチーフ、ドメイン帰属の利用によって初めて発見された配列セット。通常の配列検索では見出せない非常に遠いホモログを検出している。
【0139】
【表5】

B-1 6F配列を相同性検索にて解析した配列セット。(もっとも簡易な方法の利用)
B-2 GD配列の利用により、マルチエキソンからなるアミノ酸配列分が増加した。
B-3 モチーフ、ドメイン帰属の利用によって初めて発見された配列セット。通常の配列検索では見出せない非常に遠いホモログを検出している。
B-4 膜貫通へリックス予測法の利用により初めて発見された配列セット。通常の相同性検索、モチーフ、ドメイン帰属でさえも見つからないような配列も発見している。
【0140】
【表6】

C-1 6F配列を相同性検索にて解析した配列セット。(もっとも簡易な方法の利用)
C-2 GD配列の利用により、マルチエクソンからなるアミノ酸配列分が増加した。
C-3 モチーフ、ドメイン帰属の利用によって初めて発見された配列セット。通常の配列検索では見出せない非常に遠いホモログを検出している。
C-4 膜貫通へリックス予測法の利用により初めて発見された配列セット。通常の相同性検索、モチーフ、ドメイン帰属でさえも見つからないような配列も発見している。
【0141】
なお、本発明の実施の態様は以下の通りである。
(1) グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型の受容体をコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号:1から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号:1から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
(2) 配列番号:2から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチド。
(3) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
(4) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドまたは(3)に記載のベクターを保持する宿主細胞。
(5) (1)または(2)に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
(6) (4)に記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞またはその培養上清から、産生させたポリペプチドを回収する工程を含む、(5)に記載のポリペプチドの製造方法。
(7) (5)に記載のポリペプチドに結合する抗体。
(8) (5)に記載のポリペプチドに対するリガンドの同定方法であって、
(a)(5)に記載のポリペプチドまたは(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が(5)に記載のポリペプチドまたは(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜に結合するか否かを検出する工程、を含む方法。
(9) (5)に記載のポリペプチドに対するアゴニストの同定方法であって、
(a)(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が(5)に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを発生させるか否かを検出する工程、を含む方法。
(10) (5)に記載のポリペプチドに対するアンタゴニストの同定方法であって、
(a)候補化合物の存在下で(5)に記載のポリペプチドを発現している細胞と(5)に記載のポリペプチドに対するアゴニストとを接触させる工程、および
(b)候補化合物の非存在下で検出した場合と比較して、(5)に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルが減少するか否かを検出する工程、を含む方法。
(11) (8)に記載の方法により同定されたリガンド。
(12) (9)に記載の方法により同定されたアゴニスト。
(13) (10)に記載の方法により同定されたアンタゴニスト。
(14) (8)から(10)に記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)または(b)に記載の少なくとも一つの分子を含むキット。
(a)(5)に記載のポリペプチド
(b)(4)に記載の宿主細胞またはその細胞膜
(15) (5)に記載のポリペプチドの活性または発現を増加させる必要がある患者を治療するための医薬組成物であって、下記(a)から(c)に記載の分子を治療上有効な量含む医薬組成物。
(a)(5)に記載のポリペプチドに対するアゴニスト
(b)(1)または(2)に記載のポリヌクレオチド
(c)(3)に記載のベクター
(16) (5)に記載のポリペプチドの活性または発現を抑制する必要がある患者を治療するための医薬組成物であって、下記(a)または(b)に記載の分子を治療上有効な量含む医薬組成物。
(a)(5)に記載のポリペプチドに対するアンタゴニスト
(b)生体内において、内因性の(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチド
(17) (5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子またはその発現制御領域の変異を検出することを含む方法。
(18) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を単離する工程
(c)単離したDNAの塩基配列を決定する工程
(d)工程(c)により決定したDNAの塩基配列を、対照と比較する工程。
(19) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)調製したDNA試料を制限酵素により切断する工程
(c)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(d)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
(20) 以下の(a)〜(e)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを制限酵素により切断する工程
(d)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(e)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
(21) 以下の(a)〜(e)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程
(d)解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する工程
(e)分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
(22) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(17)に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する工程
(d)分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
(23) (5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子の発現量を検出することを含む方法。
(24) 以下の(a)〜(c)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者からRNA試料を調製する工程
(b)該RNA試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドをコードするRNAの量を測定する工程
(c)測定されたRNAの量を対照と比較する工程
(25) 以下の(a)〜(d)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者から調製したcDNA試料、および(5)に記載のポリペプチドをコードするDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を提供する工程
(b)該cDNA試料と該基板を接触させる工程
(c)該cDNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を測定する工程
(d)測定された(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を対照と比較する工程
(26) 以下の(a)〜(c)の工程を含む、(23)に記載の検査方法。
(a)被検者からタンパク質試料を調製する工程
(b)該タンパク質試料に含まれる(5)に記載のポリペプチドの量を測定する工程
(c)測定されたポリペプチドの量を対照と比較する工程
(27) (5)に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
(28) (27)に記載のオリゴヌクレオチドを含む、(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。
(29) (7)に記載の抗体を含む、(5)に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または(5)に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】既知のGPCR配列を、GPCR配列1,054個および非GPCR配列64,154個を含む評価用データベースに対して検索した際、E値に対してプロットしたGPCR配列同士対の数およびGPCR配列と非GPCR配列の対の数を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアノシン三リン酸結合タンパク質共役型の受容体をコードする下記(a)から(d)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
(a)配列番号:4から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号:3から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド
(c)配列番号:4から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入したアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号:3から2069のうちのいずれかの奇数番号に記載の塩基配列からなるDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
【請求項2】
配列番号:4から2070のうちのいずれかの偶数番号に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの断片をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドまたは請求項3に記載のベクターを保持する宿主細胞。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド。
【請求項6】
請求項4に記載の宿主細胞を培養し、該宿主細胞またはその培養上清から、産生させたポリペプチドを回収する工程を含む、請求項5に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載のポリペプチドに結合する抗体。
【請求項8】
請求項5に記載のポリペプチドに対するリガンドの同定方法であって、
(a)請求項5に記載のポリペプチドまたは請求項5に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が請求項5に記載のポリペプチドまたは請求項5に記載のポリペプチドを発現している細胞若しくはその細胞膜に結合するか否かを検出する工程、を含む方法。
【請求項9】
請求項5に記載のポリペプチドに対するアゴニストの同定方法であって、
(a)請求項5に記載のポリペプチドを発現している細胞と候補化合物とを接触させる工程、および
(b)候補化合物が請求項5に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルを発生させるか否かを検出する工程、を含む方法。
【請求項10】
請求項5に記載のポリペプチドに対するアンタゴニストの同定方法であって、
(a)候補化合物の存在下で請求項5に記載のポリペプチドを発現している細胞と請求項5に記載のポリペプチドに対するアゴニストとを接触させる工程、および
(b)候補化合物の非存在下で検出した場合と比較して、請求項5に記載のポリペプチドの活性化の指標となるシグナルが減少するか否かを検出する工程、を含む方法。
【請求項11】
請求項8から10に記載の方法に用いるためのキットであって、下記(a)または(b)に記載の少なくとも一つの分子を含むキット。
(a)請求項5に記載のポリペプチド
(b)請求項4に記載の宿主細胞またはその細胞膜
【請求項12】
請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または請求項5に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子またはその発現制御領域の変異を検出することを含む方法。
【請求項13】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項12に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を単離する工程
(c)単離したDNAの塩基配列を決定する工程
(d)工程(c)により決定したDNAの塩基配列を、対照と比較する工程。
【請求項14】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項12に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)調製したDNA試料を制限酵素により切断する工程
(c)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(d)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
【請求項15】
以下の(a)〜(e)の工程を含む、請求項12に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを制限酵素により切断する工程
(d)DNA断片をその大きさに応じて分離する工程
(e)検出されたDNA断片の大きさを、対照と比較する工程
【請求項16】
以下の(a)〜(e)の工程を含む、請求項12に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる工程
(d)解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離する工程
(e)分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
【請求項17】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項12に記載の検査方法。
(a)被検者からDNA試料を調製する工程
(b)請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域を増幅する工程
(c)増幅したDNAを、DNA変性剤の濃度が次第に高まるゲル上で分離する工程
(d)分離したDNAのゲル上での移動度を対照と比較する工程
【請求項18】
請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常に関連した疾患の検査方法であって、被検者における該遺伝子の発現量を検出することを含む方法。
【請求項19】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項18に記載の検査方法。
(a)被検者からRNA試料を調製する工程
(b)該RNA試料に含まれる請求項5に記載のポリペプチドをコードするRNAの量を測定する工程
(c)測定されたRNAの量を対照と比較する工程
【請求項20】
以下の(a)〜(d)の工程を含む、請求項18に記載の検査方法。
(a)被検者から調製したcDNA試料、および請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAとハイブリダイズするヌクレオチドプローブが固定された基板を提供する工程
(b)該cDNA試料と該基板を接触させる工程
(c)該cDNA試料と基板に固定されたヌクレオチドプローブとのハイブリダイズの強度を検出することにより、該cDNA試料に含まれる請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を測定する工程
(d)測定された請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現量を対照と比較する工程
【請求項21】
以下の(a)〜(c)の工程を含む、請求項18に記載の検査方法。
(a)被検者からタンパク質試料を調製する工程
(b)該タンパク質試料に含まれる請求項5に記載のポリペプチドの量を測定する工程
(c)測定されたポリペプチドの量を対照と比較する工程
【請求項22】
請求項5に記載のポリペプチドをコードするDNAまたはその発現制御領域にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22に記載のオリゴヌクレオチドを含む、請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または請求項5に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。
【請求項24】
請求項7に記載の抗体を含む、請求項5に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の発現の異常または請求項5に記載のポリペプチドの活性の異常に関連した疾患の検査薬。

【図1】
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【公開番号】特開2008−200045(P2008−200045A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90039(P2008−90039)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【分割の表示】特願2002−217260(P2002−217260)の分割
【原出願日】平成14年6月17日(2002.6.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】