説明

グミキャンディ

【課題】風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れ、嗜好性の高いグミキャンディを提供すること。
【解決手段】ゲル化剤として酸処理澱粉及び沈降積3.0〜9.9の架橋澱粉を含有させ、調製することにより、風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディを提供する。本発明のグミキャンディは、従来のゼラチンをゲル化剤として使用したグミキャンディにみられる特有の風味(獣臭)、色調(褐変色)、歯付きを改善し、更に、従来のゼラチン代替として知られていた酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用することで発生する硬すぎる食感、歯付き、色調(白濁)を改善して、風味、色調、食感に優れた嗜好性の高いグミキャンディとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工澱粉をゲル化剤として用いて調製した、風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディに関する。より具体的には、酸処理澱粉及び架橋澱粉をゲル化剤として含有させ、調製したグミキャンディに関し、従来ゼラチンをゲル化剤として使用したグミキャンディにみられる特有の風味(獣臭)、色調(褐変色)、歯付きなどが改善された風味、色調、食感に優れたグミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、口に含んで噛んだときに独特の弾力を呈する面白さから、若者を中心に幅広い年齢層で食され、メーカー各社は、グミキャンディの食感にバラエティーを持たせる工夫を種々試みており、現在、柔らかくソフトな食感のものから硬くハードな食感のものまで、様々な食感を有するグミキャンディが市場に出回っている。
【0003】
従来、グミキャンディは、砂糖と水飴などを濃縮したものに、溶解したゼラチンを加え、必要に応じて酸味料や香料・果汁等の副原料を添加し、多くの場合、これを澱粉やプラスチックで作成したひとくちサイズのモールドに充填して乾燥後、油脂等で表面処理することで製造されている。ゼラチンは、成型するためのゲル化剤として一般に広く利用されているが、動物組織に存在するコラーゲンを原料とするためコラーゲン臭と呼ばれる動物臭(獣臭)を有しており、ゼラチンを使用したグミキャンディは、ゼラチン特有の風味(獣臭)、色調(褐変色)、食感を持つこととなる。よって、このゼラチン特有の風味や色調がグミキャンディの嗜好性に重大な影響を及ぼしている。
【0004】
そこで、従来より、このゼラチンの特有の風味や色調を改善する方法、及び、その食感を改善する方法が種々検討されている。例えば、グミキャンディの調製に際してコラーゲン臭をマスキングする方法として、特開2009−171862号公報には、キャンディベースに酵母エキス及び植物由来カテキン、タンニン或いはゆずポリフェノールを含有させる方法が、特開2011−152097号公報には、ココアパウダーを添加する方法が、及び、特開2011−177036号公報には、デーツ果汁を混合する方法が開示されている。
【0005】
また、ゼラチンをゲル化剤として用いるグミキャンディにおいては、特有の風味や色調の改善とともに、食感の改善、バリエーションを図るために、各種の方法が開示されている。例えば、特開平11−146761号公報には、ペクチンを含有させて、表面の溶解や濡れべたつきを抑制したグミキャンディが、特開2002−45116号公報には、トレハロース及び還元澱粉糖化物を含有させ、離水を防止したグミキャンディが、特開2010−51235号公報には、ポリデキストロース、DE20〜35及びDE70以上の水飴、及び砂糖を配合したキャンディベースとゼラチン含有させた硬い食感のハードグミキャンディが、特開2010−130935号公報には、ゼラチンと糖質、乳清タンパク質を含有させた硬さ、噛みごたえのあるグミキャンディが、及び、特開2010−252681号公報には、ゼラチンと糖質と、ペクチン及びアラビアガムを含有させた歯付きを防止したグミキャンディ入りソフトキャンディが開示されている。
【0006】
更に、特開2010−252681号公報には、コラーゲンペプチド及び寒天分解物を添加することによりキャンディベースに弾力を付与したグミキャンディが、特開2011−188816号公報には、カラギーナン及び寒天からなる増粘多糖類と、二糖類以下の糖類或いは糖アルコールからなるゼリー菓子本体に、トランスグルタミナーゼで架橋処理したゼラチンと糖質、油脂を含むグミキャンディを含有させたコシと弾力性のある食感を有するゼリー菓子が、及び、特開2011−130731号公報には、結晶性糖類、食用油脂、ゼラチン、及びもち米由来アルファ化澱粉からなる引き裂き可能なグミキャンディ様菓子が開示されている。
【0007】
上記のとおり、ゼラチンをゲル化剤の主体とするグミキャンディにおいて、ゼラチンの特有の風味や色調、或いは、その食感を改善する各種の方法が開示されており、ゼラチンをペクチン、カラギーナン、澱粉などのゼラチン以外のゲル化剤で、一部又は全部を代替する方法が知られている。かかる方法において、ゼラチンの一部又は全部を澱粉で代替する方法においては、製造過程におけるモールド充填適性及び成型性の面から、低粘度でゲル化能に優れる酸処理澱粉や酸化澱粉といった、いわゆる薄手糊澱粉を使用する方法が一般的であった。しかしながら、この方法で得られるグミキャンディの食感は非常に硬く、ゼラチンを使用したグミキャンディに特有の好ましい弾力感は失われ、噛んだときの歯付きが激しい、といった種々の問題が発生するために、消費者にとってはなかなか受け入れ難いものであった。
【0008】
そこで、澱粉を用いたグミキャンディの製造に際して、澱粉として加工澱粉を用い、食感を改善する方法が開示されている。例えば、特開平6−169696号公報には、ゼラチンをゼリー化剤として用いるグミキャンディにおいて、モノ置換基としてアセチル基又はヒドロキシプロピル基、架橋基として燐酸基又はアジピン酸基を有する加工澱粉を用いることによりソフトな弾性及びジューシーな食感を与えるグミキャンディを製造する方法が開示されている。この方法のものは、例えば該公報に、グミキャンディ中のゼラチンに対する当該加工澱粉の割合は「最高60%程度であり、これ以上澱粉が増えるとゲル強度が低下し始め、」と記載されているように、グミキャンディにゲル強度を持たせるためにはゼラチンの併用が必須となっており、したがって、該方法で得られるグミキャンディは、前述したようにゼラチン特有の風味や色調を完全に改善したグミキャンディとはなっていない。
【0009】
また、特開2003−235455号公報には、食物繊維としてアカシアガムを多量に含むグミキャンディの製造におけるデポジットに際して、糸引き、テーリングを防止するために、オリゴ糖或いは糖アルコールと、架橋澱粉、アルキル化澱粉、又はアルキル化架橋澱粉のような加工澱粉を用いる方法が、特開2011−130718号公報には、グミキャンディに、強い弾力と歯切れの良さを付与するために燐酸架橋澱粉を用いる方法が開示されている。しかしながら、これらの方法のものは、何れもゲル化剤としてゼラチンを用いることが必須となっており、上記特開平6−169696号公報の場合と同様に、ゼラチン特有の風味や色調を完全に改善したグミキャンディとはなっていない。
【0010】
更に、特許第4523668号公報には、保形性に優れ、且つざらつきや糊状感のない口溶けと風味に優れたペースト状又はゲル状食品を提供するために、アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉を含有するペースト状又はゲル状食品が開示されている。該特許公報には、ゲル状食品の例示としてグミキャンディが挙げられているが、具体的実施例は示されておらず、プリンやゼリーの実施例から明らかなように、グミキャンディの製造に際して、成型性を得るためには、当該加工澱粉以外のゲル化剤が必須となる。すなわち、当該加工澱粉のみを使用しただけではプリンやゼリーとして必要とされる保形性が得られないためであり、該公報に開示の方法を、グミキャンディに適用しようとすれば、なおさら保形性が不十分となるからである。他方、仮に、当該加工澱粉の配合量を上げて保形性を得ようとした場合、粘度上昇によりモールドへの充填適性を失い、グミキャンディ自体を製造することが困難となる。
【0011】
また、特許第3126453号公報には、ゼラチンを主剤として製造されるグミと呼ばれるゼリーの「歯ごたえ」を改善するために、タピオカ澱粉又はα化タピオカ澱粉或いは架橋タピオカ澱粉のような変性タピオカ澱粉を主剤として用いたグミゼリーの食感を有することを特徴とする餅状菓子が開示されている。しかし、ゲル化剤として当該澱粉のみを用いてグミキャンディの製造を試みても、適切な保形成は得られず、更に、配合量を上げて保形性を得ようとすれば、過度に増粘してモールドへの充填が困難となるために製造できない。したがって、該公報の発明の実施例に示されるとおり、保形性を得るためには寒天やカラギーナンといった他の糊料が必須である上、例えば、該特許公報に開示の方法を、グミキャンディの製造に適用するとしても、モールドへの充填適性が考慮されているものではないから、結局、該特許公報に開示の方法は、該特許公報に示されるように、大きい直方型に流し込んで固めたのちに切断して得られる餅状菓子の場合にしか適用できないものである。
【0012】
なお、特開2002−281906号公報には、「ゲル化剤と糖類と、穀物加工食品及び/又は澱粉加工食品とを含有してなる餅様菓子」が開示されており、グミ生地を適宜の大きさのトレイに充填固化させ、それを所定サイズに切断する際に、穀物加工食品及び/又は澱粉加工食品とを含有させて、グミ生地が切断刃に付着することを防止する方法が記載されている。しかしながら、該方法において用いられている「澱粉加工食品」としては、「パン粉や乾燥マッシュポテト」が例示されており、上記「餅様菓子」の製造に加工澱粉を用いることを開示しているものではない。
【0013】
以上のとおり、従来のゼラチンをゲル化剤として用いるグミキャンディにおいては、特有の風味や色調の改善、或いは、食感の改善、バリエーションを図るための各種の方法が提案されてきたが、かかる目的を完全に達成し得た方法は提供されていない。前記のように、ゲル化剤として酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用するグミキャンディの製造方法は知られていたものの、ゼラチンの一部又は全量をこれら澱粉に代替するだけでは、近年の消費者、特に日本人に広く好まれる食感を満足し得るグミキャンディを提供できるものではなく、実際の製造において用いられることがほとんどなかった。また、上記のとおり、加工澱粉を使用する方法も開示されているが、従来技術のように加工澱粉の単独使用では保形性が不充分なために、ゼラチンや他のゲル化剤との併用が必須となっており、ゲル化剤として、ゼラチンに代替して、加工澱粉を主体として使用し、調製した風味、色調、食感の良好なグミキャンディは未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−169696号公報。
【特許文献2】特開平11−146761号公報。
【特許文献3】特開2002−45116号公報。
【特許文献4】特開2002−281906号公報。
【特許文献5】特開2003−235455号公報。
【特許文献6】特開2009−171862号公報。
【特許文献7】特開2010−51235号公報。
【特許文献8】特開2010−130935号公報。
【特許文献9】特開2010−252681号公報。
【特許文献10】特開2011−130731号公報。
【特許文献11】特開2011−130718号公報
【特許文献12】特開2011−152097号公報。
【特許文献13】特開2011−177036号公報。
【特許文献14】特開2011−188816号公報。
【特許文献15】特許第3126453号公報。
【特許文献16】特許第4523668号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れ、嗜好性の高いグミキャンディを提供すること、特に、従来のゼラチンをゲル化剤として使用したグミキャンディにみられる特有の風味(獣臭)、色調(褐変色)、歯付きを改善し、更には、従来のゼラチン代替として知られていた酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用することで発生する硬すぎる食感、歯付き、色調(白濁)を改善することにより、風味、色調、食感に優れたグミキャンディを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、従来のゼラチンをゲル化剤として使用したグミキャンディや、ゼラチン代替として知られていた酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用したグミキャンディの嗜好性の障害となる風味、色調、食感・歯付きの改善について鋭意検討する中で、グミキャンディの調製に用いるゲル化剤として、酸処理澱粉と特定の沈降積の架橋澱粉を併用することで、ゼラチンをゲル化剤として使用した場合のように、特有の風味(獣臭)、色調(褐変色)、及び歯付きのような問題がなく、更に、薄手糊澱粉を使用した場合のように、硬すぎる食感、歯付き、色調(白濁)のような問題がなく、風味、色調、弾力性や歯切れの良さに優れたグミキャンディを提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、ゲル化剤として酸処理澱粉及び沈降積3.0〜9.9の架橋澱粉を含有させ、調製したことを特徴とする風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディからなる。ここで、本発明における沈降積は、以下の方法によって測定される沈降積として表示される:まず、澱粉試料0.15g(固形物換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64%により調製)15mlを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25〜35℃まで冷却する。この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーに10ml流し込み、25℃にて20時間静置後、沈殿物の目盛を読み取り、この値を沈降積とする。
【0018】
本発明において、グミキャンディにおける酸処理澱粉及び架橋澱粉の含有割合は、固形物換算割合で、酸処理澱粉6〜14質量%、架橋澱粉1〜4質量%であり、更に、酸処理澱粉及び架橋澱粉の合計含有割合が8〜16質量%となる含有割合が採用される。
【0019】
本発明において、用いられる酸処理澱粉としては、原料澱粉を硫酸又は塩酸を用いて調製した酸性水溶液中に浸漬し、浸漬後に中和及び洗浄処理して得られる酸処理澱粉を挙げることができ、用いられる架橋澱粉の特に好ましい例としては、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、及び、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉よりなる群から選ばれる1種以上の架橋澱粉を挙げることができる。
【0020】
すなわち具体的には本発明は、(1)ゲル化剤として酸処理澱粉及び沈降積3.0〜9.9の架橋澱粉を含有させ、調製したことを特徴とする風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディや、(2)グミキャンディにおける酸処理澱粉及び架橋澱粉の含有割合が、固形物換算割合で、酸処理澱粉6〜14質量%、架橋澱粉1〜4質量%であり、更に、酸処理澱粉及び架橋澱粉の合計含有割合が8〜16質量%であることを特徴とする前記(1)記載のグミキャンディや、(3)酸処理澱粉が、原料澱粉を硫酸又は塩酸を用いて調製した酸性水溶液中に浸漬し、浸漬後に中和及び洗浄処理して得られる酸処理澱粉であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のグミキャンディや、(4)架橋澱粉が、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、及び、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉よりなる群から選ばれる1種以上の架橋澱粉であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のグミキャンディからなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、ゼラチンをゲル化剤として使用した場合や、該ゲル化剤の代替として知られていた酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用した場合のような、従来のゲル化剤を用いた場合のグミキャンディにみられる特有の風味(獣臭)、色調(褐変色;白濁)、食感、歯付きを改善した、風味、色調、食感に優れた嗜好性の高いグミキャンディを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ゲル化剤として酸処理澱粉及び沈降積3.0〜9.9の架橋澱粉を含有させ、調製したことを特徴とする風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディからなる。本発明におけるグミキャンディとは、主に砂糖や水飴などの糖類を煮詰めた糖液に、ゲル化剤を加えて固めて(ゲル化させて)製造されたものをいい、作業性、保存性、あるいは消費者の嗜好性の観点から、これら主原料の他に、必要に応じて種々の副原料、例えば、果汁、酸味料、香料、油脂などを用いることもできる。
【0023】
本発明において用いる酸処理澱粉とは、塩酸や硫酸を用いて調製した酸性水溶液中に、原料澱粉を糊化温度以下で半日ないし数日間浸漬し、次いで中和、水洗、濾過、乾燥して得られる澱粉のことを指す。外観は原料澱粉と変わりないが、加熱により糊化させると透明な低粘度の糊液となるため、薄手糊澱粉(thin-boiling starch)とも呼ばれるものである。本発明において使用する酸処理澱粉の原料澱粉としては、どのような澱粉を用いてもよく、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、ワキシーポテト澱粉、ワキシーコーンスターチ、甘薯澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉、もち米澱粉など種々挙げられるが、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチを用いる方がより好ましい。
【0024】
本発明において用いる架橋澱粉は、架橋剤を用いて澱粉の水酸基間に架橋結合を生じさせた澱粉のことをいい、その架橋構造により澱粉粒の膨潤が抑制されるので、酸やアルカリ、又は機械的せん断力によっても粘度低下を起こしにくい加工澱粉を指す。具体的には、無水リン酸、オキシ塩化リン、トリメタリン酸塩などの架橋剤による架橋反応で得られるリン酸架橋澱粉、アジピン酸により架橋されたアジピン酸架橋澱粉が挙げられ、使用する架橋剤の種類や量、若しくは反応温度などの条件によって架橋の程度を調整することができるので、目的に応じた適当な架橋澱粉を選択使用することができる。
【0025】
本発明において用いる架橋澱粉には、上述した架橋剤による架橋反応と同時にエーテル化剤やエステル化剤によるエーテル化反応やアセチル化反応を行った架橋澱粉も含まれ、具体的には、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉が挙げられる。本発明において用いる架橋澱粉の原料澱粉としては、どのような澱粉を用いてもよく、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、ワキシーポテト澱粉、ワキシーコーンスターチ、ワキシータピオカ澱粉、甘薯澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、米澱粉、もち米澱粉、ハイアミロースコーンスターチなどを挙げることができる。
【0026】
本発明において用いる架橋澱粉は、上記架橋澱粉において、沈降積が3.0〜9.9のものが用いられる。これは、沈降積の数値がこの範囲内に入らない場合、得られるグミキャンディの弾力性が劣るためである。なお、本発明において用いる架橋澱粉においては、沈降積が5.5〜9.8であるものがより好ましい。
【0027】
本発明において、沈降積は、次の方法によって測定される:まず、澱粉試料0.15g(固形物換算)を試験管に計量し、あらかじめ調製しておいた試薬(塩化アンモニウム26質量%、塩化亜鉛10質量%、水64%により調製)15mlを注ぎ込む。次に、卓上バイブレーターを用いて、試験管中の澱粉試料を均一に分散させ、直ちに沸騰浴中に固定して10分間加熱後、25〜35℃まで冷却する。この試験管中の澱粉試料を、卓上バイブレーターを用いて再度分散させ、10ml容量メスシリンダーに10ml流し込み、25℃にて20時間静置後、沈殿物の目盛を読み取り、この値を沈降積とする。
【0028】
本発明のグミキャンディは、ゲル化剤として、上記の酸処理澱粉及び沈降積が3.0〜9.9の上記架橋澱粉を併用するものである。酸処理澱粉を適当量用いることでグミキャンディはゲル化するが、酸処理澱粉を使用しただけでは、弾力性のない固いグミキャンディが得られるだけで、歯付きや白濁といった問題点も生じるところ、該架橋澱粉を併用することにより、グミキャンディに好ましい弾力、歯切れの良さ、及び透明感を付与することができる。
【0029】
本発明で使用される酸処理澱粉及び架橋澱粉の詳細については上述のとおりであるが、それぞれの澱粉について、複数種を同時に用いることができる。特に、食感に弾力性のバリエーションを持たせたい場合、後述の配合割合の範囲内で、各種酸処理澱粉や架橋澱粉を複数種配合したり、使い分けたりすれば良い。
【0030】
本発明のグミキャンディにおける酸処理澱粉及び架橋澱粉の含有量(固形物換算含有率)は、それぞれが6〜14質量%及び1〜4質量%であり、かつ、合計量が8〜16質量%となることが好ましい。更にいうならば、酸処理澱粉及び架橋澱粉の含有量は、それぞれが8〜13質量%及び2〜3質量%であり、かつ、合計量が10〜15質量%となることがより好ましい。これは、酸処理澱粉のグミキャンディにおける含有量が6質量%より少なければ、グミキャンディのゲル化が不十分となり成型できず、また、14質量%より多ければ、過度に増粘してモールドへの充填ができなくなるためである。
【0031】
また、架橋澱粉のグミキャンディにおける含有量が1質量%より少なければ、グミキャンディに弾力性を付与することができず、歯切れの悪い食感となり、また、4質量%より多ければ、過度に増粘してモールドへの充填ができなくなるからである。更に、酸処理澱粉と架橋澱粉の合計は8〜16質量%が好ましい。その理由は8質量%より少なければグミキャンディのゲル化が不十分となり成型できず、また弾力性が付与できず、歯切れの悪い食感となるためである。また、16質量%より多ければ過度に増粘してモールドへの充填ができなくなるためである。
【0032】
本発明は、ゲル化剤としては、酸処理澱粉及び架橋澱粉を使用することにより、グミキャンディを調製するものであるが、本発明の効果を逸脱しない範囲、すなわち、ゲル化剤としては、酸処理澱粉及び架橋澱粉を使用することにより、従来のゲル化剤を用いたグミキャンディ特有の風味、色調、食感を改良した効果を奏する範囲内において、従来のゲル化剤、例えば、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ペクチン等の他のゲル化剤を併用することもできる。これらゲル化剤を併用することで、食感にバリエーションを持たせることが可能である。
しかし、例えば、ゲル化剤として従来から使用されているゼラチンを併用することも可能であるが、本発明の課題及び効果が、グミキャンディ製造において、ゲル化剤として頻繁に使用されるゼラチンを加工澱粉に代替することで、ゼラチン特有の風味、色調、食感が改良されたグミキャンディを調製することにあるから、本発明において、特にゼラチンを併用する場合には、その含有量は固形物換算割合で2質量%以下に押さえることが望ましい。
【0033】
本発明により製造されるグミキャンディは、従来のゼラチン等ゲル化剤として使用するグミキャンディの製法では得られなかったクリアーな味質と色調を持ち、従来の酸処理澱粉のみを使用する製法では得られなかった弾力性と歯切れの良い食感を持つグミキャンディを提供する。
【0034】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[実施例1〜4及び比較例2〜4]
表1に示す配合にて、下記のようにグミキャンディを調製した:全実施例において使用した酸処理澱粉は、ボーメ度(懸濁液比重)20に調製したサゴ澱粉を水に縣濁した水性スラリーを30℃に保ちながら、硫酸を加えてpHを1.5に調整し、これを20時間攪拌して反応後、pHが5以上になるまで水洗を繰り返し、乾燥調製したものである。
【0036】
まず、加工澱粉と水とを充分に加熱攪拌して澱粉糊液を得て、引き続き加熱攪拌しながら砂糖と、予め60℃以上に温めておいた水飴を加え、さらに加熱攪拌して水分が25%となるまで煮詰めた。これを80℃に冷却し、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、香料を加え攪拌し、65℃にて直径2cm、高さ2cmの円錐形のスターチモールドへ流し込んで充填した。これを22℃、相対湿度50%の恒温室で144時間乾燥し、水分を18%にして実施例1〜4および比較例2〜4のグミキャンディを得た。
【0037】
[比較例1]
表1に示す配合にて、次のようにグミキャンディを調製した:砂糖と水飴に加水して水分40%に調製した糖液を攪拌しながら加熱し、水分が19%になるまで煮詰めた。これを80℃まで冷却し、予め溶解してから70℃に保温しておいたゼラチン水溶液(37%溶液)を加えて攪拌し、さらにクエン酸三ナトリウム、クエン酸、香料を加えて攪拌混合し、65℃にて直径2cm、高さ2cmの円錐形のスターチモールドの型へ流し込んで充填した。これを22℃、相対湿度50%の恒温室で144時間乾燥し、水分を18%にして比較例1のグミキャンディを得た。
【0038】
実施例1〜4および比較例1〜4で得られたグミキャンディの外観と食感を、パネラー10名によって評価した。この結果を表1に合わせて示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果から明らかなように、酸処理澱粉の固形物換算含有率が6〜14質量%、かつ、架橋澱粉の固形物換算含有率が2質量%であるすべての実施例において、スターチモールドへの充填適性があり、グミキャンディとしての保形性があり、色調、風味、弾力性、歯離れの良いグミキャンディが得られた。一方、比較例は、粘度上昇によりスターチモールドへ充填できず成型が困難であったり、スターチモールドへの充填できても保形性が不充分なためにグミキャンディの形態をなさなかったり、保形性があってもクリアーな色調や風味が得られなかったり、弾力性のない歯付きのある食感であった。
【0041】
[実施例5〜11及び比較例5〜8]
表2に示す配合にて、次のようにしてグミキャンディを調製した:まず、加工澱粉と水とを攪拌しながら十分に加熱することで澱粉糊液を得で、さらに加熱攪拌しながら、砂糖と水飴(予め60℃以上に温めておく)を加え、水分が25%となるまで煮詰めた。これを80℃に冷却し、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、香料を加えて攪拌混合しし、65℃にて直径2cm、高さ2cmの円錐形のスターチモールドへ流し込んで充填した。これを22℃、相対湿度50%の恒温室で144時間乾燥し、水分を18%にして実施例5〜11および比較例5〜8のグミキャンディを得た。
【0042】
[実施例12]
表2に示す配合にて、次のようにしてグミキャンディを調製した:まず、加工澱粉と水とを充分に加熱攪拌して澱粉糊液を得て、引き続き加熱攪拌しながら砂糖と、予め60℃以上に温めておいた水飴を加え、さらに加熱攪拌して水分が23%になるまで煮詰めた。これに予め濃度30%に溶解して70℃に保温しておいたゼラチン水溶液を加えて攪拌し、これを80℃に冷却し、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、香料を加え攪拌し、65℃にて直径2cm、高さ2cmの円錐形のスターチモールドの型へ流し込んで充填した。これを22℃、相対湿度50%の恒温室で144時間乾燥し、水分を18%にして実施例12のグミキャンディを得た。
【0043】
実施例5〜12および比較例5〜8で得られたグミキャンディの外観と食感を、パネラー10名によって評価した。この結果を表2に合わせて示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2の結果から明らかなように、酸処理澱粉の固形物換算含有率が8質量%かつ、沈降積が3.0〜9.9である架橋澱粉の固形物換算含有率が1〜4質量%であるすべての実施例において、スターチモールドへの充填適性があり、グミキャンディとしての保形性があり、色調、風味、弾力性、歯離れの良いグミキャンディが得られた。一方、比較例は、スターチモールドへの充填できても保形性が不充分なためにグミキャンディの形態をなさなかったり、保形性があっても弾力性のない歯付きのある食感であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ゼラチンをゲル化剤として使用した場合や、該ゲル化剤の代替として知られていた酸処理澱粉や酸化澱粉といった薄手糊澱粉を使用した場合のような、従来のゲル化剤を用いた場合のグミキャンディにみられる特有の風味(獣臭)、色調(褐変色;白濁)、食感、歯付きを改善した、風味、色調、食感に優れた嗜好性の高いグミキャンディを提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤として酸処理澱粉及び沈降積3.0〜9.9の架橋澱粉を含有させ、調製したことを特徴とする風味、色調、及び弾力性・歯切れの良さに優れたグミキャンディ。
【請求項2】
グミキャンディにおける酸処理澱粉及び架橋澱粉の含有割合が、固形物換算割合で、酸処理澱粉6〜14質量%、架橋澱粉1〜4質量%であり、更に、酸処理澱粉及び架橋澱粉の合計含有割合が8〜16質量%であることを特徴とする請求項1記載のグミキャンディ。
【請求項3】
酸処理澱粉が、原料澱粉を硫酸又は塩酸を用いて調製した酸性水溶液中に浸漬し、浸漬後に中和及び洗浄処理して得られる酸処理澱粉であることを特徴とする請求項1又は2記載のグミキャンディ。
【請求項4】
架橋澱粉が、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、及び、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉よりなる群から選ばれる1種以上の架橋澱粉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のグミキャンディ。

【公開番号】特開2013−81432(P2013−81432A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224774(P2011−224774)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】