説明

グラウトおよび地盤を固結する方法

【課題】 コストや環境負荷低減という面に加え、施工の容易さや地盤改良効果という面において、より一層改善されたグラウトおよび地盤を固結する方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るグラウトは、地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなる。本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法によれば、地盤が固結する速度を調節することができることから、例えば、注入途中でのグラウトの固化を防止することができる他、地盤を均一に固結させることや地盤の固結に要する時間の調整を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウトおよび地盤を固結する方法に関し、より詳細には、アミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなるグラウトおよびこれらを用いた地盤を固結する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木などの分野においては、地盤の割れ目や空隙などの不良箇所の改良、軟弱地盤の強度改善、透水性地盤の透水性改善、あるいは湧き水箇所の防水を目的として、グラウトと呼ばれる注入材を用いるグラウト注入工法が広く採用されている。特に近年、微生物によるセメント物質生成のメカニズムを利用して透水性の制御および地盤強度の向上を図るべく、バイオグラウトと呼ばれる、微生物を用いた新しいグラウトによる地盤改良技術の開発が進められている。
【0003】
バイオグラウトは、概ね、(1)化学反応のみによるグラウトと比較して結晶化反応などが比較的ゆっくりと進行することから、地盤改良に要する時間の調整が容易である、(2)環境負荷が小さい、(3)コストを抑えた技術開発が期待できる、といったメリットを有している。
【0004】
これまでに報告されているバイオグラウトを用いた地盤を改良する方法としては、例えば、カルシウムイオン、グルコースおよびpHバッファーを含む溶液を地盤に加え、同時に加えた酵母または地盤中の微生物にグルコースを代謝分解させて二酸化炭素を発生させ、発生させた二酸化炭素とカルシウムイオンとを反応させて炭酸カルシウムを析出させることにより地盤を改良する方法(特許文献1、非特許文献1)や、尿素およびウレアーゼ産生菌を地盤に加え、ウレアーゼ産生菌に尿素を代謝分解させてアンモニアを発生させ、pHを調整するとともに、尿素を代謝分解させて二酸化炭素を発生させ、発生させた二酸化炭素とカルシウムイオンとを反応させて炭酸カルシウムを析出させることにより地盤を改良する方法(特許文献2、非特許文献2)、アルカリ性である活性シリカ溶液、グルコースならびに酵母または対象地盤の土中に存在する微生物を培養したものを地盤に加え、酵母または対象地盤の土中に存在する微生物を培養したものの代謝により二酸化炭素を発生させ、発生させた二酸化炭素によりゲル化を促進することにより地盤を改良する方法(特許文献3、非特許文献3)などを挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−169940号
【特許文献2】特表2008−524096号
【特許文献3】特開2009−155855号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川▲崎▼ら、応用地質、第47巻、第1号、第2−12頁、2006年
【非特許文献2】Harkes M.P.ら、Ecol.Eng.、第36巻、第112−117頁、2010年
【非特許文献3】寺島ら、土木学会論文集C、第65巻、第1号、第120−130頁、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、改良の対象となる地盤の物理化学特性は千差万別であり、それらに対応するために、より多様なグラウトや地盤改良技術の開発が望まれている。また、コストや環境負荷の低減という面からも、従来のグラウトや地盤改良技術について、より一層の改善が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、コストや環境負荷低減という面に加え、施工の容易さや地盤改良効果という面において、より一層改善されたグラウトおよび地盤を固結する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、グラウト中のカルシウム塩やリン酸塩の種類や混合割合を変化させることにより、リン酸カルシウムを主成分とする析出物の形態や体積を制御できること、およびアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸塩を含んでなるグラウトが、アミノ酸の適度な地盤pH上昇作用により析出物の再溶解を防ぎ、またリン酸カルシウムの結晶化を促進することを見出し、下記の各発明を完成させた。
【0010】
(1)地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなるグラウト。
【0011】
(2)カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩がリン酸カルシウムである、(1)に記載のグラウト。
【0012】
(3)カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩がリン酸カルシウムを除くカルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸カルシウムを除くリン酸塩である、(1)に記載のグラウト。
【0013】
(4)地盤を固結する方法であって、下記(i)、(ii)および(iii)の工程を有する前記方法;(i)地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を前記地盤に加える工程、(ii)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、(iii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを前記カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩の量に応じて上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程。
【0014】
(5)地盤を固結する方法であって、下記(iv)、(v)、(vi)および(vii)の工程を有する前記方法;(iv)リン酸カルシウム水溶液を調製する工程、(v)前記リン酸カルシウム水溶液および地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸を前記地盤に加える工程、(vi)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、(vii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法によれば、地盤が固結する速度を調節することができることから、例えば、注入途中でのグラウトの固化を防止することができる他、地盤を均一に固結させることや地盤の固結に要する時間の調整を容易に行うことができる。また、本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法により地盤中に生じるリン酸カルシウムは、骨の主成分でもあり、安全で無害な物質であることから、本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法によれば、環境に負荷をかけず、安全無害に地盤の改良や固結を行うことができる。なお、地盤中に生じたリン酸カルシウムは、既報(図1;Tung M.S.ら、Kluwer Academic Publishers、第1−19頁、1998年)に示されているように、時間の経過により強度の大きいハイドロキシアパタイトに変化することから、本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法によれば、地盤強度を長期間に亘って向上させることができる。さらに、本発明に係るグラウトや地盤を固結する方法は、入手が容易で安価なリン酸アンモニウムや硝酸カルシウムなどの肥料成分を用いていることから、コストがかからないうえに、施工後の地盤は農業用試料としてリサイクルが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】時間の経過およびリン酸塩濃度の変化に伴う、リン酸カルシウムの結晶形態の変化を示す図である。図中、縦軸はリン酸塩濃度を、横軸は時間をそれぞれ示す。
【図2】リン酸カルシウムの溶解度と溶液のpHとの関係を示す図である。図中、縦軸はカルシウムイオン濃度を、横軸はpHをそれぞれ示す。
【図3】リン酸一アンモニウム{NHPO(以下、「MAP」という。)}、リン酸二アンモニウム{(NHHPO(以下、「DAP」という。)}および硝酸カルシウム{Ca(NO(以下、「CN」という。)}の混合割合を変化させた水溶液について、pHを測定した結果を示す図である。図中、縦軸はpHを示し、横軸は、サンプル名(数字部分)に対応したMAPとDAPの混合割合を示す。
【図4】MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させた水溶液について、pHと析出物体積比および析出物の形態との相関関係を示す図である。図中、縦軸は析出物体積比を示し、横軸はpHを示す。また、析出物の形態をプロットの形状(○、□または△)で示し、MAPとDAPの混合割合を色(黒、灰または白)で示す。
【図5】MAP、DAPおよび酢酸カルシウム{Ca(CHCOO)(以下、「CA」という。)}の混合割合を変化させた水溶液について、pHと析出物体積比および析出物の形態との相関関係を示す図である。図中、縦軸は析出物体積比を示し、横軸はpHを示す。また、析出物の形態をプロットの形状(○、□または△)で示す。
【図6】MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させた水溶液のうち、CN−C−c0、CN−C−c1、CN−C−c2、CN−C−c3、CN−C−c4、CN−C−c5、CN−C−c6、CN−C−c7、CN−C−c8、CN−C−c9およびCN−C−c10について、析出物の体積を示す図である。図中、各サンプルにおけるMAP、DAPおよびCNの混合割合ならびにpHの測定結果を各サンプル名の下部に示す。
【図7】終濃度を変化させた水溶液について、析出物の体積および形態を観察した結果を示す図である。図中、各サンプルの終濃度を各サンプル名の下部に示す。
【図8】さまざまな濃度のアスパラギン水溶液、グルタミン水溶液、グリシン水溶液、尿素水溶液および脱イオン水を加えた土のpHを測定した結果を示す図である。図中、縦軸はpHを示し、横軸は各水溶液および脱イオン水を添加後、経過した日数を示す。
【図9】アミノ酸を含まない陰性対照のグラウトに土を加えたサンプル(コントロールサンプル)および本発明に係るグラウトに土を加えたサンプル(試験サンプル)について、pHを測定した結果および析出物の形態を観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るグラウトおよび地盤を固結する方法について詳細に説明する。本発明に係るグラウトは、地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなる。
【0018】
「グラウト」とは、一般に、地盤改良、構築物の隙間や目地、ひび割れなどに注入、充填するセメントペースト、モルタル、薬液などのことをいい、本発明においては地盤の固結や改良などを目的とする地盤を対象とした注入材をいう。本発明における「グラウト」は、そのような注入材であればその形態は特に限定されず、例えば、液状のものやゲル状のもの、固形状のもの、液体とゲルとが混じり合った状態のもの、液体と固形物とが混じり合った状態のもの、ゲルと固形物とが混じり合った状態のもの、液体とゲルと固形物とが混じり合った状態のものを挙げることができる。また、「バイオグラウト」いう場合は、微生物代謝を利用したグラウトをいう。
【0019】
グラウトは対象となる地盤に応じた態様で用いることができるが、使用態様は特に限定されず、例えば、散布、注入、割裂、混練などの手法によりグラウトをそのまま用いてもよく、固形状のグラウトの場合、例えば、溶媒に溶解、半溶解、懸濁させて同様の手法により用いてもよく、粉砕したものや結晶状のものを散布、混練などしてもよい。また、グラウトは同じ地盤に対して1度のみならず繰り返し用いることができ、繰り返し用いる場合はその態様を変化させて用いることができる。
【0020】
「地盤」とは、一般には地の表面(地表)、地殻、工作物その他を据え置く基礎となる土地をいう(広辞苑第六版、岩波書店)が、本発明においては、地表や地殻などにとどまらず、地表から地下深部に至る範囲を指す。また、その主な構成物質としては、例えば、粘土(地質学においては粒径が3.9μm未満のもの)やシルト(地質学においては粒径が3.9μm以上62.5μm未満のもの、粘土とシルトを合わせて泥という場合がある)、砂(地質学においては粒径が62.5μm以上2mm未満のもの)、礫(地質学においては粒径が2mm以上のもの)などの砕屑物、これら砕屑物を含む軟質または硬質粘性土、砂質土、礫質土、砂利、土、石、岩、岩盤またはこれらが混合されたものなどを挙げることができる。なお、本発明において、「地盤」は、「土」、「土壌」、「砕屑物」、「砂利」、「石」、「岩」または「岩盤」と交換可能に用いられる。
【0021】
本発明における「微生物」は、アミノ酸を代謝分解してアンモニアを発生させる性質を有するものであれば特に限定されず、そのような微生物としては、例えば、細菌、藻類、原生生物、菌類などを挙げることができ、そのような微生物から選択することができる1または2以上の微生物を用いることができる。また、その態様もまた限定されず、例えば、微生物塊などの態様のものを挙げることができる。また、本発明における「地盤中の微生物」としては、本発明に係るグラウトの投与や本発明に係る地盤を固結する方法の施工対象となる地盤中に、その投与や施工の前から存在するものの他、投与時や施工時またはそれ以降に地盤へ加えたものやこれらを併せたものを挙げることができる。投与時や施工時またはそれ以降に地盤へ加える場合は、例えば、乳酸菌やイースト菌、納豆菌など、従来食品に利用されていて市販されている微生物や、その投与や施工の対象である地盤または当該地盤以外の地盤から採取したものなどを用いることができる。さらに、微生物は当該投与後または施工後において繰り返し加えることができる。
【0022】
本発明における「微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸」としては、例えば、システイン、ヒスチジン、イソロイシン、メチオニン、セリン、バリン、アラニン、グリシン、ロイシン、プロリン、トレオニン、フェニルアラニン、アルギニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、α−ホスホセリン、デスモシン、β−アラニン、サルコシン、オルニチン、クレアチン、γアミノ酪酸、オパイン、テアニン、トリコロミン酸、カイニン酸、ドウモイ酸、イボテン酸、アクロメリン酸などを挙げることができ、本発明においてはそのようなアミノ酸から選択することができる1または2以上のアミノ酸を用いることができる。
【0023】
本発明における「カルシウム塩」としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウムなどを挙げることができ、本発明においてはそのようなカルシウム塩から選択することができる1または2以上のカルシウム塩を用いることができる。また、例えば、「炭酸カルシウム」という場合は炭酸カルシウムの他に炭酸水素カルシウムを、「リン酸カルシウム」という場合はリン酸カルシウムの他にリン酸水素カルシウムやリン酸三カルシウムをそれぞれ含む趣旨であり、以下、他の化合物についても同様の趣旨である。
【0024】
本発明における「リン酸塩」としては、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、酸性ヘキサメンタリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、6フッ化リン酸リチウムなどを挙げることができ、本発明においてはそのようなリン酸塩から選択することができる1または2以上のリン酸塩を用いることができる。
【0025】
本発明に係る「地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなるグラウト」には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて他の物質を含んでもよく、そのような物質としては、例えば、その他の微生物、糖類、ミネラル、アミノ酸以外の有機窒素源などの微生物の代謝を促進する物質、pH調整(緩衝)剤、硬化材、膨張剤、流動化剤、アルミナセメント、細骨材、凝結調整剤、増粘剤、消泡剤、ハイドロジェンポリシロキサンシリコーンオイル、スラグ、珪藻土、白土、ベントナイトなどの粘土鉱物、および珪石粉、火山灰などの天然珪酸鉱物、焼却灰、高炉スラグなどを挙げることができる。
【0026】
本発明に係るグラウトは、地盤中においてリン酸カルシウムを析出ないし存在させることにより地盤を固結ないし改良させることを目的としている。地盤中において析出ないし存在させるリン酸カルシウムは、カルシウム塩とリン酸塩とから析出ないし存在させてもよく、例えば、本発明に係るグラウトが微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸とリン酸カルシウム水溶液とを含んでなる場合に、地盤中で発生したアンモニアにより地盤中のpHを上昇させてリン酸カルシウムを析出ないし存在させてもよい。
【0027】
すなわち、本発明における「カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩」は、「リン酸カルシウム」または「リン酸カルシウムを除くカルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸カルシウムを除くリン酸塩」でもよい。
【0028】
次に、本発明は地盤を固結する方法を提供する。本発明に係る地盤を固結する方法は、(i)地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を前記地盤に加える工程、
(ii)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、
(iii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを前記カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩の量に応じて上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程、
以上(i)、(ii)および(iii)の工程を有する。なお、本発明に係る地盤を固結する方法において、上述した本発明に係るグラウトの構成と同等または相当する構成については再度の説明を省略する。
【0029】
工程(i)における「地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸やリン酸塩」は、予め混合したものを地盤に加えてもよく、それぞれ別々に地盤に加えてもよい。また、それらが固形状の場合は、粉砕したものや結晶状ものなどを地盤に加えてもよく、溶媒に溶解、半溶解、懸濁させたものを地盤に加えてもよい。
【0030】
本発明において、リン酸カルシウムは、カルシウム塩に由来するカルシウムイオンと、リン酸やリン酸塩に由来するリン酸イオン、ピロリン酸イオン、リン酸水素イオンなどのイオンとが反応して生成する。また、カルシウム塩に由来するイオンならびにリン酸やリン酸塩に由来するイオンに加えて、フッ化物イオンや塩化物イオンなどの地盤中の成分が反応して生成する場合もある。
【0031】
ここで、本発明におけるリン酸カルシウムとしては上述した通りであるが、より具体的には、リン酸二水素カルシウム一水和物、リン酸二水素カルシウム無水物、リン酸二カルシウム無水物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸八カルシウム、β−リン酸三カルシウム、α−リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム、whitlockite、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、炭酸含有アパタイトなどを挙げることできる。
【0032】
地盤中においてアンモニアを発生させることにより上昇させるpHの範囲は、後述の実施例2で示すように、地盤に加えるカルシウム塩やリン酸、リン酸塩の量に応じて、適宜、設定することができる。また、その上昇させるpHの範囲については、既報(図2;Tung M.S.ら、Kluwer Academic Publishers、第1−19頁、1998年)に示されるように、リン酸カルシウムの溶解度はその種類を問わずpHに応じて変化する他、リン酸カルシウムの種類によって溶解度が最小となるpHは異なることから、これらの既報に従い、析出させたいリン酸カルシウムの種類に応じて、上昇させるpHの範囲を適宜設定することができる。さらに、水質汚濁防止法の水質基準値であるpH5.8〜8.6を満たす範囲で適宜設定することができる。
【0033】
地盤に加えるリン酸やリン酸塩の量については、既報(Tung M.S.ら、Kluwer Academic Publishers、第1−19頁、1998年)に示されるように、リン酸塩濃度の低下と共にリン酸カルシウムの結晶化が進行する(図1)場合があることから、これらの既報に従い、地盤に加えるリン酸やリン酸塩の量を適宜設定することができる。
【0034】
工程(i)において加えるカルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩のpH(GpH)は、1<GpH<11が好ましく、1<GpH≦10がより好ましく、1<GpH≦9がさらに好ましく、1<GpH≦8がよりさらに好ましい。すなわち、水質汚濁防止法の水質基準値であるpH5.8〜8.6を満たす範囲である5.8≦GpH≦8.6とすることもできる。
【0035】
次に、本発明に係る地盤を固結する方法の第2の態様は、
(iv)リン酸カルシウム水溶液を調製する工程、
(v)前記リン酸カルシウム水溶液および地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸を前記地盤に加える工程、
(vi)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、
(vii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程、
以上(iv)、(v)、(vi)および(vii)の工程を有する。
【0036】
工程(iv)における「リン酸カルシウム水溶液」は、リン酸カルシウムを溶媒に溶解させることにより調製してもよく、リン酸カルシウムを除くリン酸塩またはリン酸とリン酸カルシウムを除くカルシウム塩とを溶媒に溶解させることにより調製してもよい。ここで、本発明において、リン酸カルシウム水溶液には、リン酸カルシウムが完全に溶解した溶液の他、リン酸カルシウムの懸濁液やコロイド溶液も含む。
【0037】
工程(v)の「アミノ酸」の使用態様については、上述した工程(i)と同様である。
【0038】
本発明に係る地盤を固結する方法には、その特徴を損なわない限り、他の工程を含んでもよく、他の工程としては、例えば、上述した本発明に係るグラウトに含ませることができる各物質を加える工程の他、地盤をボーリングする工程、地盤を攪拌する工程、地盤を洗浄する工程、地盤中に析出ないし存在するリン酸カルシウムを検出する工程を挙げることができる。
【0039】
本発明に係る地盤を固結する方法により、リン酸カルシウムを主として地盤の間隙に析出させることができ、地盤を固結することができる他、透水性の低下や地盤強度の向上といった地盤改良効果が得られる。
【0040】
以下、本発明に係るグラウトおよび地盤を固結する方法について、実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例】
【0041】
<実施例1>MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させた水溶液におけるpHの検討
(1)水溶液の調製
リン酸一アンモニウム{NHPO;和光純薬社(以下、「MAP」という。)}、リン酸二アンモニウム{(NHHPO;和光純薬社(以下、「DAP」という。)}および硝酸カルシウム{Ca(NO;和光純薬社(以下、「CN」という。)}をそれぞれ2mol/Lとなるように脱イオン水に溶解して、MAP水溶液、DAP水溶液およびCN水溶液を調製した。
【0042】
続いて、ラコムテスターpH計(防水型pHSpear;アズワン社)を用いて各水溶液の水素イオン濃度(以下pHとする)を測定した。その結果を以下に示す。
【0043】
MAP水溶液:pH4.0〜4.5
DAP水溶液:pH7.8〜8.3
CN水溶液 :pH4.0〜6.0
【0044】
次に、MAP水溶液とDAP水溶液とを様々な割合で混合して2mol/Lのリン酸アンモニウム水溶液を調製した。続いて、リン酸アンモニウム水溶液とCN水溶液とをさまざまな割合で混合することにより、MAP、DAPおよびCNの混合割合が異なる水溶液を計77サンプル調製して、a0〜a10、b0〜b10、c0〜c10、d0〜d10、e0〜e10、f0〜f10およびg0〜g10とした。各サンプルにおけるMAP、DAPおよびCNの混合割合、各サンプルの終濃度ならびにリン酸源(リン酸イオン;以下Pとする)およびカルシウム源(カルシウムイオン:以下Caとする)の終濃度を以下の表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
(2)水溶液のpH測定
本実施例(1)の各サンプルについて、20℃で3ヶ月間静置した後、ラコムテスターpH計(防水型pHSpear;アズワン社)を用いてpHを測定した。その測定結果を図3に示す。
【0047】
それぞれ図3A、B、Cに属するサンプル同士でpHを比較すると、図3A、BおよびCに示すように、a0〜a10ではa0<a1<a2<a3<a4<a5<a6<a7<a8<a9<a10、図3Aに示すように、b0〜b10ではb0<b1<b2<b3<b4<b5<b6<b7<b8<b9<b10、c0〜c10ではc0<c1<c2<c3<c4<c5<c6<c7<c8<c9<c10、図3Bに示すように、d0〜d10ではd0<d1<d2<d3<d4<d5<d6<d7<d8<d9<d10、e0〜e10ではe0<e1<e2<e3<e4<e5<e6<e7<e8<e9<e10、図3Cに示すように、f0〜f10ではf0<f1<f2<f3<f4<f5<f6<f7<f8<f9<f10およびg0〜g10ではg0<g1<g2<g3<g4<g5<g6<g7<g8<g9<g10であった。これらの結果から、MAPと比較してDAPの混合割合が大きいほど、水溶液のpHが高いことが明らかになった。
【0048】
また、図3Aにおける、サンプル名の数字部分が同じサンプル同士でpHを比較すると、図3Aに示すように、b0>c0>a0、b1>c1>a1、b2>c2>a2、b3>c3>a3、b4>c4>a4、b5>c5>a5、b6>c6>a6、b7>c7>a7、b8>c8>a8、b9>c9>a9およびb10>c10>a10であった。これらの結果から、リン酸源の終濃度に対してカルシウム源の終濃度が小さいほど、水溶液のpHが高いことが明らかになった。
【0049】
また、図3Bにおける、サンプル名の数字部分が同じサンプル同士でpHを比較すると、図3Bに示すように、d0>e0>a0、d1>e1>a1、d2>e2>a2、d3>e3>a3、d4>e4>a4、d5>e5>a5、d6>e6>a6、d7>e7>a7、d8>e8>a8、d9=a9>c9およびd10<e10<a10であった。これらの結果から、MAP:DAP=1:9よりもDAPの混合割合が小さい場合は、水溶液の終濃度が大きいほどpHが低く、MAP:DAP=1:9よりもDAPの混合割合が大きい場合は、水溶液の終濃度が大きいほどpHが高いことが明らかになった。
【0050】
また、図3Cにおける、サンプル名の数字部分が同じサンプル同士でpHを比較すると、図3Cに示すように、f0≒g0≒a0、f1≒g1≒a1、f2≒g2≒a2、f3≒g3≒a3、f4≒g4≒a4、f5≒g5≒a5、f6≒g6≒a6、f7≒g7≒a7、f8≒g8<a8、f9≒g9<a9、f10≒g10<a10であった。これらの結果から、MAP:DAP=3:7よりもDAPの混合割合が小さい場合は、カルシウム源の終濃度1mol/Lに対して、リン酸源の濃度を0.1mol/Lから1mol/Lの間で変化させてもpHはほとんど変化せず、MAP:DAP=3:7よりもDAPの混合割合が大きい場合において、カルシウム源の終濃度1mol/Lに対してリン酸源の濃度を1mol/Lとした場合は、同様にリン酸源の濃度を0.1mol/Lおよび0.5mol/Lとしたものと比較してpHが高いことが明らかになった。
【0051】
以上の結果から、MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させることにより、水溶液のpHを変化させることができることが明らかになった。特に、リン酸アンモニウム水溶液におけるMAPとDAPとの混合割合を変化させることにより、リン酸源およびカルシウム源の終濃度を変化させずに、水溶液のpHを変化させることができることが明らかになった。すなわち、当該水溶液にアミノ酸を加えたグラウトにおいても、リン酸源およびカルシウム源の終濃度を変化させずにグラウトのpHを変化させることができることが示された。
【0052】
<実施例2>水溶液のpHと析出物の体積および形態との関係の検討
(1)水溶液の調製
実施例1(1)に記載の方法により、MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させた水溶液を計176サンプル調製して、CN−A−a0〜CN−A−a10、CN−A−b0〜CN−A−b10、CN−A−c0〜CN−A−c10、CN−A−d0〜CN−A−d10、CN−B−a0〜CN−B−a10、CN−B−b0〜CN−B−b10、CN−B−c0〜CN−B−c10、CN−B−d0〜CN−B−d10、CN−C−a0〜CN−C−a10、CN−C−b0〜CN−C−b10、CN−C−c0〜CN−C−c10、CN−C−d0〜CN−C−d10、CN−D−a0〜CN−D−a10、CN−D−b0〜CN−D−b10、CN−D−c0〜CN−D−c10およびCN−D−d0〜CN−D−d10とした。各サンプルにおけるMAP、DAPおよびCNの混合割合、ならびにリン酸源およびカルシウム源の終濃度を以下の表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
また、CNを酢酸カルシウム{Ca(CHCOO);和光純薬社(以下、「CA」という)}に代えて、MAP、DAPおよびCAの混合割合を変化させた水液を計132サンプル調製して、CA−A−a0〜CA−A−a10、CA−A−b0〜CA−A−b10、CA−A−c0〜CA−A−c10、CA−B−a0〜CA−B−a10、CA−B−b0〜CA−B−b10、CA−B−c0〜CA−B−c10、CA−C−a0〜CA−C−a10、CA−C−b0〜CA−C−b10、CA−C−c0〜CA−C−c10、CA−D−a0〜CA−D−a10、CA−D−b0〜CA−D−b10およびCA−D−c0〜CA−D−c10とした。各サンプルにおけるMAP、DAPおよびCAの混合割合、ならびにリン酸源およびカルシウム源の終濃度を以下の表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
(2)水溶液のpH測定、析出物の体積の測定および形態の観察
実施例1(2)に記載の方法により、本実施例(1)の各サンプルについて、20℃にて3ヶ月間静置した後、ラコムテスターpH計(防水型pHSpear;アズワン社)を用いてpHを測定した。また、析出物の体積を目視により測定して、水溶液の体積に占める析出物の体積の割合を算出し、これを析出物体積比(水溶液とリン酸カルシウムの体積が等しい場合を1.0とする)とした。また、析出物の形態を観察して、下記の三段階で評価した。なお、シンボルに付された色は下記の通り、サンプル名すなわちMAPとDAPとの混合割合を示す。
【0057】
析出物の形態
○:結晶状(透明または白色の固形物)
□:ゲル状(容器を傾けても析出物が変形しない)
△:液状(容器を傾けると変形し、流動性を有する)
サンプル名(数値部分)とMAP:DAP(比)
黒:0,10:0
灰:10,0:10
白:1〜9,9:1〜1:9
【0058】
なお、カルシウム塩およびリン酸塩を含んでなる水溶液における析出物の主成分は、カルシウム塩に由来するカルシウムイオンと、リン酸塩に由来するリン酸イオン、ピロリン酸イオン、リン酸水素イオンなどのイオンとが反応して生成するリン酸カルシウムである。リン酸カルシウムの結晶化は、一般に、ゲル状から結晶状へと進行する。また、リン酸カルシウムが液状となった場合は、時間経過に伴って、それ以上結晶化は進行せずに液状を維持する。また、リン酸カルシウムの体積はゲル状>結晶状である。
【0059】
続いて、各サンプルのpH、析出物体積比および析出物の形態について、pHを横軸、析出物体積比を縦軸にとったグラフにプロットした。これらのグラフは、リン酸源の終濃度とカルシウム源の終濃度とが同じであるサンプルごとに作成した。MAP、DAPおよびCNの混合割合を変化させた水溶液計176サンプルについての結果を図4に、MAP、DAPおよびCAの混合割合を変化させた132サンプルについての結果を図5にそれぞれ示す。また、CN−C−c0〜CN−C−c10について、析出物の体積を示す写真を図6に示す。
【0060】
図4および図6に示すように、析出物体積比は、A−a、A−b、A−c、A−d、B−a、B−b、B−c、B−d、C−a、C−b、C−c、C−d、D−a、D−b、D−cおよびD−dのいずれのグラフにおいても、pHが高いと析出物体積比が大きいこと、すなわち、pHと析出体積比とがほぼ正の相関関係にあることが明らかになった。
【0061】
また、析出物の形態は、A−a、B−a、B−b、C−a、C−b、C−c、D−aおよびD−bにおいては、pHが低いと析出物は結晶状であり、pHが高いと析出物はゲル状であった。なお、B−aにおいては、pHが中性付近では、析出物は液状であった。一方、A−b、A−c、A−d、B−c、B−d、C−d、D−cおよびD−dにおいては、pHの変化にかかわらず、析出物は結晶状であった。
【0062】
また、図5に示すように、析出物体積比は、A−bおよびA−cのグラフにおいてはpHが高いと析出体積比が小さい一方で、A−a、B−a、B−b、B−c、C−a、C−b、C−c、C−d、D−a、D−b、D−cおよびD−dのいずれのグラフにおいても、pHが高いと析出物体積比が大きいこと、すなわち、pHと析出物体積比とがほぼ正の相関関係にあることが明らかになった。
【0063】
また、析出物の形態は、B−a、B−c、C−a、C−b、C−c、C−d、D−a、D−b、D−cおよびD−dにおいては、pHが低いと析出物は結晶状であり、pHが高いと析出物はゲル状であった。一方、A−aおよびB−bにおいては、pHの変化にかかわらず、析出物は結晶状であり、A−bおよびA−cにおいては、pHの変化にかかわらず、析出物は液状であった。
【0064】
これらの結果から、水溶液のpHの上昇に伴って、リン酸カルシウムを主成分とする析出物の体積が大きくなることが明らかになった。すなわち、当該水溶液にアミノ酸を加えたグラウトにおけるpHをコントロールすることにより、リン酸カルシウムを主成分とする析出物の体積をコントロールすることができることが示された。
【0065】
また、所定の混合割合の水溶液においては、水溶液のpHの上昇に伴って、リン酸カルシウムの結晶化の進行速度が遅くなる一方で、それとは異なる混合割合の水溶液においては、水溶液のpHの上昇にかかわらず、リン酸カルシウムの結晶化の進行速度があまり変化しないことが明らかになった。すなわち、当該水溶液にアミノ酸を加えたグラウトにおけるMAP、DAPおよびCNもしくはCAの混合割合をコントロールすることにより、リン酸カルシウムの結晶化の進行速度をコントロールすることができることが示された。さらに、所定の混合割合の水溶液においては、pHをコントロールすることにより、リン酸カルシウムの結晶化の進行速度をコントロールすることができることが明らかになった。
【0066】
<実施例3>水溶液の濃度と析出物の体積および形態との関係の検討
(1)水溶液の調製
実施例1(1)に記載の方法により、MAP、DAPおよびCNの混合割合が0:10:10であって、終濃度が0.1mol/L、0.5mol/L、1.0mol/Lおよび1.5mol/Lである水溶液を調製し、a、b、cおよびdとした。
【0067】
(2)析出物の体積および形態の観察
本実施例(1)のa、b、cおよびdについて、20℃で3ヶ月間静置した後、析出物の体積および形態を目視により観察した。その結果を図7に示す。
【0068】
図7に示すように、析出物の体積はb<a<c<dであった。また、析出物の形態は、a、bおよびcはゲル状であり、dは結晶状であった。
【0069】
これらの結果から、水溶液の終濃度を変化させると、リン酸カルシウムを主成分とする析出物の体積およびリン酸カルシウムの結晶化の進行速度が変化することが明らかになった。すなわち、当該水溶液にアミノ酸を加えたグラウトの終濃度をコントロールすることにより、リン酸カルシウムを主成分とする析出物の体積やリン酸カルシウムの結晶化の進行速度をコントロールすることができることが示された。
【0070】
<実施例4>アミノ酸による地盤pH上昇作用の検討
(1)アミノ酸水溶液および尿素水溶液の調製
アスパラギン、グルタミン、グリシンおよび尿素をそれぞれ下記の濃度となるよう脱イオン水に溶解して、アスパラギン水溶液、グルタミン水溶液、グリシン水溶液および尿素水溶液を調製した。
【0071】
アスパラギン水溶液;0.1mol/L、0.01mol/L、約0.15mol/L(飽和水溶液)
グルタミン水溶液;0.1mol/L、0.01mol/L、約0.25mol/L(飽和水溶液)
グリシン水溶液;0.1mol/L、0.01mol/L、1.0mol/L
尿素水溶液;0.1mol/L、0.01mol/L、1.0mol/L
【0072】
(2)地盤へのアミノ酸および尿素の添加
北海道大学農場および岡山大学農場から土をそれぞれ採取し、25gずつに分けて、北海道大学農場の土を計13サンプルおよび岡山大学農場の土を計13サンプル用意した。北海道大学農場の土13サンプルを、北1、北2、北3、北4、北5、北6、北7、北8、北9、北10、北11、北12および北13とし、岡山大学農場の土13サンプルを、岡1、岡2、岡3、岡4、岡5、岡6、岡7、岡8、岡9、岡10、岡11、岡12および岡13とした。
【0073】
続いて、本実施例(1)のアスパラギン水溶液、グルタミン水溶液、グリシン水溶液、尿素水溶液および脱イオン水を、下記のとおり各サンプルに32.5mLずつ添加した。
【0074】
北1、岡1: 脱イオン水(コントロール)
北2、岡2: アスパラギン水溶液 0.01mol/L
北3、岡3: アスパラギン水溶液 0.1 mol/L
北4、岡4: アスパラギン水溶液 約0.15mol/L(飽和水溶液)
北5、岡5: グルタミン水溶液 0.01mol/L
北6、岡6: グルタミン水溶液 0.1 mol/L
北7、岡7: グルタミン水溶液 約0.25mol/L(飽和水溶液)
北8、岡8: グリシン水溶液 0.01mol/L
北9、岡9: グリシン水溶液 0.1 mol/L
北10、岡10:グリシン水溶液 1 mol/L
北11、岡11:尿素水溶液 0.01mol/L
北12、岡12:尿素水溶液 0.1 mol/L
北13、岡13:尿素水溶液 1 mol/L
【0075】
(3)pHの測定
本実施例(2)の各サンプルを6週間静置し、その間の0日目(サンプル調製直後)、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目に、ラコムテスターpH計(防水型pHSpear;アズワン社)を用いて土のpHを測定した。
【0076】
pHの測定結果について、添加した水溶液の種類ごとにグラフに表した。北1、北2、北3および北4についてのグラフを図8のAに、岡1、岡2、岡3および岡4についてのグラフを図8のBに、北1、北5、北6および北7についてのグラフを図8のCに、岡1、岡5、岡6および岡7についてのグラフを図8のDに、北1、北8、北9および北10についてのグラフを図8のEに、岡1、岡8、岡9および岡10についてのグラフを図8のFに、北1、北11、北12および北13についてのグラフを図8のGに岡1、岡11、岡12および岡13についてのグラフを図8のHにそれぞれ示す。
【0077】
図8Aに示すように、北2、北3および北4におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、北1におけるpHよりも高かった。
【0078】
また、北2、北3および北4におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間にはほぼ一定であるか、または緩やかに上昇した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、北2、北3および北4の間で同様の形状となった。
【0079】
また、図8Bに示すように、岡2、岡3および岡4におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、岡1におけるpHよりも高かった。
【0080】
また、岡2、岡3および岡4におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間には緩やかに上昇または低下した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、岡2、岡3および岡4の間で同様の形状となった。
【0081】
また、図8Cに示すように、北5、北6および北7におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、北1におけるpHよりも高かった。
【0082】
また、北5、北6および北7におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間には緩やかに上昇した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、北5、北6および北7の間で同様の形状となった。
【0083】
また、図8Dに示すように、岡5、岡6および岡7におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、岡1におけるpHよりも高かった。
【0084】
また、岡5、岡6および岡7におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間には緩やかに上昇した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、岡5、岡6および岡7の間で同様の形状となった。
【0085】
また、図8Eに示すように、北8におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目および28日目の時点においては、北1におけるpHよりも高く、35日目の時点においては、北1におけるpHとほぼ同じであり、42日目の時点においては、北1におけるpHよりも低かった。一方、北9および北10におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、北1におけるpHよりも高かった。
【0086】
また、北8におけるpHは、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から28日目の間には緩やかに上昇して、35日目から42日目の間にやや顕著に低下した。一方、北9および北10におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間にはほぼ一定であるか、または緩やかに上昇した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、北9および北10の間で同様の形状となった。
【0087】
また、図8Fに示すように、岡8におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目および28日目の時点においては、岡1におけるpHよりも高く、35日目の時点においては、岡1におけるpHとほぼ同じであり、42日目の時点においては、岡1におけるpHよりも低くなった。一方、岡9および岡10におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、岡1におけるpHよりも高かった。
【0088】
また、岡8におけるpHは、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から28日目の間にはほぼ一定であるか、または緩やかに上昇して、35日目から42日目の間にやや顕著に低下した。一方、岡9および岡10におけるpHはいずれも、添加後から3日目の間にやや顕著に上昇し、7日目から42日目の間には緩やかに上昇した。経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、岡9および岡10の間で同様の形状となった。
【0089】
また、図8Gに示すように、北11におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目および21日目の時点において、北1におけるpHよりも高く、28日目の時点において、北1におけるpHとほぼ同じであり、35日目および42日目の時点において、北1におけるpHよりも低かった。一方、北12および北13におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、北1におけるpHよりも高かった。
【0090】
また、北11におけるpHは、添加後から14日目の間に上昇し、21日目から42日目の間に低下した。一方、北12におけるpHは、添加後から42日目まで継続して上昇した。また一方、北13におけるpHは、添加後から14日目の間に急激かつ顕著に上昇し、21日目から42日目の間はほぼ一定であった。すなわち、経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、北11、北12および北13の間で全く異なる形状となった。
【0091】
また、図8Hに示すように、岡11におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目および28日目の時点において、岡1におけるpHよりも高く、35日目および42日目の時点において、岡1におけるpHよりも低かった。一方、岡12および岡13におけるpHは、1日目、2日目、3日目、7日目、14日目、21日目、28日目、35日目および42日目のいずれの時点においても、北1ならびに岡1におけるpHよりもそれぞれ高かった。
【0092】
また、岡11におけるpHは、添加後から14日目の間に上昇し、21日目から42日目の間に低下した。一方、岡12におけるpHは、添加後から42日目まで継続して上昇した。また一方、岡13におけるpHは、添加後から21日目の間に急激かつ顕著に上昇し、28日目から42日目の間はほぼ一定であった。すなわち、経過日数に伴うpH変化を示す折れ線グラフは、岡11、岡12および岡13の間で全く異なる形状となった。
【0093】
以上の結果から、アスパラギン、グルタミン、一定濃度以上のグリシンおよび一定濃度以上の尿素を土に加えると、土のpHが上昇することが明らかになった。すなわち、地盤にアミノ酸を加えることにより地盤のpHを上昇させることができることが明らかになった。
【0094】
また、アスパラギン、グルタミンおよび一定濃度以上のグリシンは、濃度にかかわらず、緩やかに土のpHを上昇させるのに対し、尿素は濃度によって土のpHを上昇させる効果が顕著に変化することが明らかになった。
【0095】
<実施例5>アミノ酸による結晶維持作用の検討
(1)サンプル調製
実施例1(1)に記載の方法により、MAP:DAP:CN=1:1:2であって終濃度が2mol/Lである水溶液を調製し、調製した水溶液4mLをチューブに入れたものを2つ用意した。続いて、一方には0.1mol/Lのグルタミン水溶液2mLを加えて本発明に係るグラウトを調製した後、北海道大学農場より採取した土を24g加えて試験サンプルとし、他方には脱イオン水2mLを加えてアミノ酸を含まない陰性対照のグラウトを調製した後、北海道大学農場より採取した土を24g加えてコントロールサンプルを調製し、いずれも4週間静置した。
【0096】
(2)pH測定および析出物の形態の観察
本実施例(1)の試験サンプルおよびコントロールサンプルについて、サンプル調製直後および4週間経過後に、ラコムテスターpH計(防水型pHSpear;アズワン社)を用いて土のpHを測定し、また、析出物を目視により観察した。その結果を図9に示す。
【0097】
図9に示すように、サンプル調製直後は、コントロールサンプルおよび試験サンプルはいずれもpHが5.0であり、結晶状の析出物が確認された。一方、4週間経過後は、コントロールサンプルでは、pHが4.7であり、析出物が溶解して液状となったのに対し、試験サンプルでは、pHが5.1であり、析出物がサンプル調製直後と同様に結晶状であることが確認された。
【0098】
これらの結果から、アミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸塩を含んでなるグラウトが、地盤のpHの低下を防いでリン酸カルシウムを主成分とする析出物の再溶解を防ぐことや、地盤のpHを上昇させて、リン酸カルシウムの結晶化を促進することができることが明らかになった。
【0099】
<実施例6>透水性試験
(1)グラウトの調製
北海道大学農場の土を滅菌水に懸濁した後、濾過することにより、微生物抽出水を調製した。続いて、微生物抽出水にグルタミンを0.1mol/Lとなるよう溶解して、微生物抽出グルタミン水溶液を調製した。
【0100】
次に、実施例1(1)に記載の方法において、脱イオン水を微生物抽出グルタミン酸水溶液に代え、MAP:DAP:CN=1:1:2であって終濃度が2mol/Lであるグラウトを調製し、これを試験グラウトとした。また、実施例1(1)に記載の方法において、脱イオン水を微生物抽出水に代え、MAP:DAP:CN=1:1:2であって終濃度が2mol/Lである水溶液を調製し(すなわち、試験グラウトにおいて微生物抽出グルタミン酸水溶液を脱イオン水に代えたもの)、これをコントロール溶液とした。
【0101】
(2)サンプル調製
直径5cm、高さ5.1cmの試料円筒に砂約150gを詰めたものを2つ用意し、試験サンプルおよびコントロールサンプルとした。
【0102】
本実施例(1)の試験グラウトおよびコントロール溶液を、それぞれ、平底容器(内径約10cm、高さ約2cm)に加えた。試験グラウトを入れた平底容器に試験サンプルを、コントロール溶液の入れた平底容器にコントロールサンプルをそれぞれ置いて、室温にて24時間静置した。この操作により、毛管作用を利用して試料円筒の下端から試料円筒内の土壌に試験グラウトおよびコントロール溶液を吸い上げさせて注入した。
【0103】
(3)土壌透水性の測定
本実施例(2)の試験サンプルおよびコントロールサンプルについて、土壌透水性測定器DIK−400(大起理化工業株式会社)を用いて、添付の仕様書に従い、変水位法による室内透水性試験を行って、透水係数を測定した。
【0104】
その結果、コントロールサンプルと比較して試験サンプルでは、透水係数が小さくなった。
【0105】
これらの結果から、アミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸塩を含んでなるグラウトにより、地盤の透水性を顕著に低下させることができることが明らかになった。
【0106】
<実施例7>一軸圧縮強度試験
(1)グラウトの調製
実施例6(1)に記載の方法により、試験グラウトおよびコントロール液を調製した。
【0107】
(2)サンプル調製
直径5cm×高さ10cmのモールドに、砂約320gを詰めたものを2つ用意し、試験サンプルおよびコントロールサンプルとした。
【0108】
試験サンプルに本実施例(1)の試験グラウトを、コントロールサンプルに本実施例(1)のコントロール溶液を、それぞれ73.3mLずつ添加した後、20℃の湿潤環境下にて、28日間保管した。続いて、サンプルからモールドを外し、一軸圧縮試験機を用いて、添付の仕様書に従い、一軸圧縮強度を測定した。
【0109】
その結果、コントロールサンプルと比較して試験サンプルでは、一軸圧縮強度が大きくなった。
【0110】
これらの結果から、アミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸塩を含んでなるグラウトにより、地盤強度を顕著に向上させることができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を含んでなるグラウト。
【請求項2】
カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩がリン酸カルシウムである、請求項1に記載のグラウト。
【請求項3】
カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩がリン酸カルシウムを除くカルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸カルシウムを除くリン酸塩である、請求項1に記載のグラウト。
【請求項4】
地盤を固結する方法であって、下記(i)、(ii)および(iii)の工程を有する前記方法;
(i)地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸、カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩を前記地盤に加える工程、
(ii)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、
(iii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを前記カルシウム塩ならびにリン酸および/またはリン酸塩の量に応じて上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程。
【請求項5】
地盤を固結する方法であって、下記(iv)、(v)、(vi)および(vii)の工程を有する前記方法;
(iv)リン酸カルシウム水溶液を調製する工程、
(v)前記リン酸カルシウム水溶液および地盤中の微生物によって代謝分解されてアンモニアを発生させるアミノ酸を前記地盤に加える工程、
(vi)前記アミノ酸を前記地盤中の微生物に代謝分解させてアンモニアを発生させる工程、
(vii)前記アンモニアにより前記地盤のpHを上昇させてリン酸カルシウムを地盤中に析出させる工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172060(P2012−172060A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35415(P2011−35415)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(500030482)株式会社地層科学研究所 (1)
【Fターム(参考)】