説明

グラウト孔の止水構造

【課題】閉塞蓋が開いたり止水パッキンが損傷することを防ぐことで、止水性の向上を図るようにした。
【解決手段】止水構造1は、セグメントの厚さ方向を貫通してなるグラウト孔10と、グラウト孔10の坑内側開口に取り付けられる閉塞蓋20とからなる。グラウト孔10には、その軸芯方向で坑内側の内周面に沿った平滑面状の孔側フラット部11が形成されるとともに、孔側フラット部11より地山側に雌ねじ部12が形成されている。閉塞蓋20は、円盤形状の頭部21と頭部21の一端面から伸ばされた筒状部22とからなり、筒状部22の先端外周面に雌ねじ部12に螺合可能な雄ねじ部23が形成されるとともに、筒状部22の基端側に周方向に沿って止水パッキン25が設けられている。雄ねじ部23を雌ねじ部12に螺合させて閉塞蓋20をグラウト孔10に取り付けた状態で、止水パッキン25を孔側フラット部11に液密に接触させる構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド工法に用いられるセグメントにおけるグラウト孔の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド工法では、シールドトンネルにセメントが構築され、シールド施工時においてセグメント組み立て後に、セグメントと地山との間に裏込め材を充填して地山とセグメントとの一体化を図る施工が行われている。この裏込め材の注入時に使用されるグラウト孔は、例えばRCセグメントにおいて、予めセグメント製造段階でセグメントの略中央部に厚さ方向に貫通させて設けられている。
【0003】
このようなグラウト孔の止水構造の一例として、例えば特許文献1、2に開示されているものがある。
すなわち、グラウト孔は、セグメントの厚さ方向を貫通する貫通孔に筒状の鋼管を一体に設けた構造をなし、その鋼管におけるセグメントの内周面側に閉塞蓋が着脱可能に設けられている。一般的に、グラウト孔(鋼管)の内面には雌ねじが形成されており、その雌ねじに螺合するように閉塞蓋には雄ねじが形成されている。そして、グラウト孔のセグメント内周面寄りの内面には、グラウト孔の軸芯方向で地山側から坑内側に向かうにしたがってグラウト孔が大径となる孔側テーパ面が形成されている。一方、その閉塞蓋の雄ねじ部にも、孔側テーパ面に一致する蓋側テーパ面が形成されている。そして、閉塞蓋をグラウト孔に取り付ける際には、それら孔側テーパ面と蓋側テーパ面との間に止水パッキンを配置させ、閉塞蓋の雄ねじ部をグラウト孔の雌ねじ部に螺合させつつ、止水パッキンを孔側テーパ面と蓋側テーパ面との間で押圧させて圧縮変形させて止水する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3309076号公報
【特許文献2】特許第2953949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグラウト孔の止水構造では、閉塞蓋の雄ねじ部をグラウト孔の雌ねじ部に螺合させて締め付けることで、止水パッキンが孔側テーパ面と蓋側テーパ面との間でグラウト孔の略軸芯方向に押圧された状態となっている。そのため、閉塞蓋の締め付けの程度(締め付けの強さ)によって、止水パッキンの圧縮変形量が異なることになる。つまり、閉塞蓋を締め付け過ぎた場合には、その押圧力によって止水パッキンが潰れて破損するおそれがあり、その際に止水性が低下して坑内への漏水が生じるといった問題があった。
また、孔側テーパ面と蓋側テーパ面との間で圧縮された状態の止水パッキンには弾性による反発力があるので、閉塞蓋が開く方向に力が作用して閉塞蓋が緩んだり、閉塞蓋の締め付け不足によって止水パッキンの止水効果が確実に発揮されないことになり、止水性能が低下するといった問題があった。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、閉塞蓋が開いたり止水パッキンが損傷することを防ぐことで、止水性の向上を図るようにしたグラウト孔の止水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るグラウト孔の止水構造では、セグメントの厚さ方向を貫通してなるグラウト孔と、グラウト孔の坑内側開口に取り付けられる閉塞蓋とを備えたグラウト孔の止水構造であって、グラウト孔には、その軸芯方向で坑内側の内周面に沿った平滑面状の孔側フラット部が形成されるとともに、孔側フラット部より地山側に雌ねじ部が形成され、閉塞蓋は、円盤形状の蓋本体と蓋本体の一端面から伸ばされた筒状部とからなり、筒状部の先端外周面に雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部が形成されるとともに、筒状部の基端側に周方向に沿って止水パッキンが設けられてなり、雄ねじ部を雌ねじ部に螺合させて閉塞蓋をグラウト孔に取り付けた状態で、止水パッキンを孔側フラット部に液密に接触させる構成とされていることを特徴としている。
本発明では、閉塞蓋の雄ねじ部を、グラウト孔の雌ねじ部に螺合させて締め付けることで、止水パッキンがグラウト孔の孔側フラット部に液密に接触し、閉塞蓋の筒状部と孔側フラット部との間で止水されることになる。このように圧縮変形した止水パッキンは、筒状部と孔側フラット部との隙間が一定であり、その隙間の寸法が締め付けの程度によって変わることがないので、一定の弾性力によって圧縮変形させて止水効果を発揮させることができる。つまり、止水パッキンにおける圧縮される方向がグラウト孔の径方向となることから、止水パッキンの弾性による反発力によって閉塞蓋が開く(抜け出る)方向に作用することがなく、閉塞蓋が開く方向に回転して緩むといった不具合を防止することができる。しかも、止水パッキンは孔側フラット部に接する範囲に位置していれば、どの位置であっても止水パッキンの圧縮変形量が一定となることから、閉塞蓋の締め付けの程度(締め付け力の強さ)が一定していなくても、所定の止水性を確実に確保することができる。
【0008】
また、本発明に係るグラウト孔の止水構造では、筒状部の基端側にはその外周面に沿った平滑面状の蓋側フラット部が形成され、蓋側フラット部には、周方向に沿う周溝が形成され、周溝には、止水パッキンが装着されていることが好ましい。
本発明では、周溝に止水パッキンが装着されているので、閉塞蓋をグラウト孔に取り付ける際に止水パッキンがずれることがないので、止水パッキンを孔側フラット部に対して確実に接触させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグラウト孔の止水構造によれば、止水パッキンがグラウト孔の径方向に圧縮変形してグラウト孔の孔側フラット部と閉塞蓋の筒状部との間を液密に接触した状態で止水させることができる。そのため、従来のようにグラウト孔の略軸芯方向(閉塞蓋の挿入方向)に押圧されて圧縮変形される止水構造ではないので、止水パッキンの弾性による反発力によって閉塞蓋が開く方向に作用して閉塞蓋が緩んだり、閉塞蓋の締め付け過ぎによって止水パッキンを損傷させたり、或いは閉塞蓋の締め付け不足によって止水パッキンの止水性能を確保できないといった不具合を防ぐことができ、止水性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態によるグラウト孔の止水構造を示す図であって、グラウト孔に閉塞蓋を取り付けた状態を示す縦断側面図である。
【図2】図1に示すグラウト孔の縦断側面図である。
【図3】図1に示す閉塞蓋の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態によるグラウト孔の止水構造について、図1乃至図3に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるグラウト孔の止水構造を示す図であって、グラウト孔に閉塞蓋を取り付けた状態を示す縦断側面図、図2は図1に示すグラウト孔の縦断側面図、図3は図1に示す閉塞蓋の縦断側面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態によるグラウト孔の止水構造1は、セグメントの平面視でほぼ中央部に厚さ方向に貫通してなるグラウト孔10と、グラウト孔10の一方の開口(坑内側開口)を塞ぐための閉塞蓋20とからなる。グラウト孔10は、掘削面の地山とセグメントとの間にモルタルなどの裏込め材を充填するためのものである。
なお、以下の説明では、トンネル半径方向で外側を「地山側」とし、内側を「坑内側」として以下統一して用いる。
【0013】
図2に示すように、グラウト孔10は、両端が開口した略筒形状をなす管体を、その軸芯方向をセグメントの厚さ方向に向けてセグメントに埋設させた構成をなしている。
グラウト孔10の内面には、その軸芯方向の坑内側(セグメントの内周側)に内周面に沿った平坦面状の孔側フラット部11が形成され、その孔側フラット部11より奥側(地山側、或いはセグメントの外周側)に雌ねじ部12が形成されている。そして、グラウト孔10の管体の外周面には、凹凸部13が形成され、その外周面がセグメントのコンクリートに固着した状態になっている。
【0014】
また、孔側フラット部11の坑内側端部には、グラウト孔10の軸芯方向で地山側から坑内側に向かうにしたがって漸次内径が大きくなるテーパ部10bが形成されている。このテーパ部10bは、図3に示す閉塞蓋20をグラウト孔10に取り付ける際に、閉塞蓋20の筒状部22が挿入しやすくするために入口を広くしたものである。
【0015】
図3に示すように、閉塞蓋20は、有底筒体をなし、円盤形状をなす頭部21(蓋本体)と、 頭部21の裏面(一端面)から筒状に伸ばされた筒状部22とからなる。筒状部22の先端外周面には、上述した図2に示すグラウト孔10の雌ねじ部12に螺合する雄ねじ部23が形成されている。また、筒状部22の基端側には、その外周面に沿った平坦面状の蓋側フラット部24が形成されている。蓋側フラット部24の外径寸法は、孔側フラット部11の内径寸法と略同一径となっている。蓋側フラット部24の所定位置(雄ねじ部23寄りの位置)には、全周にわたって周溝24aが形成されている。
【0016】
そして、周溝24aには、Oリングからなる止水パッキン25が装着されている。止水パッキン25の外径寸法は、周溝24aに装着された状態で前記孔側フラット部11の内径寸法より僅かに大きい寸法であって、閉塞蓋20をグラウト孔10に取り付けた状態で孔側フラット部11に対して止水パッキン25が所定の弾性力で圧縮変形して密接する寸法となっている(図1参照)。つまり、閉塞蓋20がグラウト孔10に取り付けた状態において、止水パッキン25が圧縮変形して孔側フラット部11に全周にわたって液密に接触することで、蓋側フラット部24(筒状部22)と孔側フラット部11との間が止水される構成になっている。
【0017】
また、頭部21の上面には、締め付け冶具用の凹部21aが形成されている。すなわち、凹部21aに図示しない締め付け冶具の先端部(凹部21a内に挿入して係止可能な先端形状をなす先端部)を係止し、その冶具を回転させることで閉塞蓋20を締め付けることができるようになっている。
【0018】
次に、このように構成される止水構造1の作用について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、閉塞蓋20の雄ねじ部23を、グラウト孔10の雌ねじ部12に螺合させながら締め付けることにより、閉塞蓋20の頭部21の縁部21bがグラウト孔10の管体の坑内側一端部10aに当接したときに取り付けられた状態となる。この取り付けられた状態において、止水パッキン25が圧縮変形してグラウト孔10の孔側フラット部11に全周にわたって密接し、蓋側フラット部24(筒状部22)と孔側フラット部11との間で止水されることになり、グラウト孔10からの坑内への水の浸入を阻止することができる。
【0019】
このように圧縮変形した止水パッキン25は、蓋側フラット部24(筒状部22)と孔側フラット部11との隙間が一定であり、その隙間の寸法が締め付けの程度によって変わることがないので、一定の弾性力によって圧縮変形させて止水効果を発揮させることができる。つまり、止水パッキン25における圧縮される方向がグラウト孔10の径方向となることから、止水パッキン25の弾性による反発力(膨張復元力)によって閉塞蓋20が開く(抜け出る)方向に作用することがなく、閉塞蓋20が開く方向に回転して緩むといった不具合を防止することができる。
しかも、止水パッキン25は孔側フラット部11に接する範囲に位置していれば、どの位置であっても止水パッキン25の圧縮変形量が一定となることから、閉塞蓋20の締め付けの程度(締め付け力の強さ)が一定していなくても、所定の止水性を確実に確保することができる。
【0020】
また、本止水構造1では、止水パッキン25をグラウト孔10の径方向(すなわち、閉塞蓋20の挿入方向に略直交する方向)に圧縮変形させる構造であり、孔側フラット部11に対して止水パッキン25を滑らせるようにして閉塞蓋20をグラウト孔10に押し込むことができるので、その押し込み力は、止水パッキンをグラウト孔の略軸芯方向(閉塞蓋の挿入方向)に押圧させる場合に比べて小さくすることができる。
なお、本止水構造1では、蓋側フラット部24に形成した周溝24aに止水パッキン25が装着されているので、閉塞蓋20をグラウト孔10に取り付ける際に止水パッキン25がずれることがなく、止水パッキン25を孔側フラット部11に対して確実に接触させることができる。
【0021】
上述のように本実施の形態によるグラウト孔の止水構造では、止水パッキン25がグラウト孔10の径方向に圧縮変形してグラウト孔10の孔側フラット部11と閉塞蓋20の蓋側フラット部24(筒状部22)との間を液密に接触した状態で止水させることができる。
そのため、従来のようにグラウト孔の略軸芯方向(閉塞蓋の挿入方向)に押圧されて圧縮変形される止水構造ではないので、止水パッキンの弾性による反発力によって閉塞蓋が開く方向に作用して開閉蓋が緩んだり、閉塞蓋の締め付け過ぎによって止水パッキンを損傷させたり、或いは閉塞蓋の締め付け不足によって止水パッキンの止水性能を確保できないといった不具合を防ぐことができ、止水性の向上を図ることができる。
【0022】
以上、本発明によるグラウト孔の止水構造の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では閉塞蓋20の筒状部22に1段の止水パッキン25を設けた止水構造としているが、これに限定されることはなく、例えば止水パッキン25を蓋側フラット部24に2段、又は3段以上設けるようにしてもかまわない。
また、孔側フラット部11および蓋側フラット部24の範囲、蓋側フラット部24に対する止水パッキン25の位置などは任意であり、適宜設定することができる。要は、グラウト孔10に閉塞蓋20を取り付けた状態で、止水パッキン25が所定の圧縮変形量で押圧されて孔側フラット部11に液密に接触した状態となっていればよいのである。
【符号の説明】
【0023】
1 止水構造
10 グラウト孔
11 孔側フラット部
12 雌ねじ部
20 閉塞蓋
21 頭部(蓋本体)
22 筒状部
23 雄ねじ部
24 蓋側フラット部
24a 周溝
25 止水パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントの厚さ方向を貫通してなるグラウト孔と、該グラウト孔の坑内側開口に取り付けられる閉塞蓋とを備えたグラウト孔の止水構造であって、
前記グラウト孔には、その軸芯方向で坑内側の内周面に沿った平滑面状の孔側フラット部が形成されるとともに、前記孔側フラット部より地山側に雌ねじ部が形成され、
前記閉塞蓋は、円盤形状の蓋本体と該蓋本体の一端面から伸ばされた筒状部とからなり、前記筒状部の先端外周面に前記雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部が形成されるとともに、前記筒状部の基端側に周方向に沿って止水パッキンが設けられてなり、
前記雄ねじ部を前記雌ねじ部に螺合させて前記閉塞蓋を前記グラウト孔に取り付けた状態で、前記止水パッキンを前記孔側フラット部に液密に接触させる構成とされていることを特徴とするグラウト孔の止水構造。
【請求項2】
前記筒状部の基端側にはその外周面に沿った平滑面状の蓋側フラット部が形成され、
前記蓋側フラット部には、周方向に沿う周溝が形成され、
該周溝には、前記止水パッキンが装着されていることを特徴とする請求項1に記載のグラウト孔の止水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−117326(P2012−117326A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269703(P2010−269703)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】