説明

グラウト注入方法

【課題】効率よくグラウト注入を行うことを可能としたグラウト注入方法を提案する。
【解決手段】注入対象領域1に対して振動を与えつつ、注入対象領域1にグラウトを注入するグラウト注入方法である。注入対象領域1に与える振動は、注入対象領域1の近傍に設けられた構造物を介して与えてもよいし、注入対象領域の表面に設置された振動発生装置を利用して与えてもよい。また、振動対象領域がコンクリート躯体内である場合は、振動を、当該コンクリート躯体を介して与えてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウト注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
難透水性の地盤や亀裂を有するコンクリート躯体へのグラウトの注入に際して、グラウトの浸透性を向上させることを目的として、種々の技術が開発されている。
【0003】
例えば、注入材の水セメント比を段階的に濃くする方法、微粒子セメントを使用する方法、高圧ポンプにより注入圧力を高める方法、注入圧力に特定周波数をもつ脈動圧力を与える動的注入方法等がある。
【0004】
また、本出願人等は、特許文献1に示すように、管軸方向に振動を与えることにより、注入する方法を開示し、実用化に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−183303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来の注入方法では、管軸方向に振動を与える機能を備えた専用の注入設備103を用意する等、設備費が嵩むおそれがある(図3参照)。
【0007】
また、図3に示すように、グラウト注入孔102から注入されたグラウト104が、入りやすい部分(例えば亀裂105等)にのみ浸透してしまい、注入領域101の制御ができなくなる場合があった。
また、大深度地下の高圧条件下に対しては、これに対応可能なポンプ等の機器類を開発する必要がある。
【0008】
本発明は、前記の問題点を解決するためになされたものであり、効率よくグラウト注入を行うことを可能としたグラウト注入方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明のグラウト注入方法は、注入対象領域に対して振動を与えつつ、前記注入対象領域にグラウトを注入することを特徴としている。
【0010】
かかるグラウト注入方法によれば、注入対象領域に振動を与えることとしたので、いわゆる動的注入専用の注入設備に頼らずともグラウトの浸透性を向上させることが可能となる。
また、振動によりグラウトの浸透性が向上するため、難透水性の地盤、高圧条件下の地盤やコンクリート躯体の亀裂等に対しても効率よく注入することができる。
【0011】
また、前記グラウト注入方法において注入対象領域に効率的に振動を与えることを目的として、前記振動を前記注入域の近傍に打設されたロックボルト、ボーリング鋼管、矢板等の構造物を介して与えてもよい。
また、前記注入対象領域がコンクリート躯体内である場合は、前記振動を当該コンクリート躯体を介して与えてもよい。
さらに、前記注入域が地盤内の場合は、前記振動を前記地盤の表面に設置された振動発生装置を利用して与えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のグラウト注入方法によれば、簡易な設備により効率よくグラウトを注入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係るグラウト注入方法の概要を示す断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係るグラウト注入方法の概要を示す断面図である。
【図3】従来のグラウト注入方法の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0015】
第1の実施の形態では、図1に示すように、トンネルTの内空から地山Gに対してグラウトを注入する場合について説明する。
【0016】
グラウトの注入は、まず、トンネルTの内空側から注入対象領域1に通じるグラウト注入孔2を形成し、このグラウト注入孔2の孔口に注入機器3から延設された注入管4を接続する。
【0017】
また、注入管4の設置にともない、グラウト注入孔2の周囲に設置されたロックボルト(構造物)5に、振動発生装置6を接続する。本実施形態では、グラウト注入孔2を囲む4本(図1では2本)のロックボルト5に振動発生装置6を接続するが、振動発生装置6を接続する構造物の配置は限定されるものではない。
なお、振動発生装置6を接続する構造物は、ロックボルト5に限定されるものではなく、例えば、ボーリング鋼管や矢板等、注入対象領域1の周囲に配設されたあらゆる構造物が採用可能である。
【0018】
次に、振動発生装置6を起動させることで、ロックボルト5を介して地山Gに振動を与える。これにより、注入対象領域1を含む振動域7が形成される。
このとき、振動発生装置6による振動の周波数は、地山の状況や注入対象領域1の規模等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、数Hz〜数10Hz程度の範囲内で設定する。
【0019】
さらに、振動発生装置6により地山Gに振動を与えるのとともに、グラウト注入孔2から注入対象領域1の中央部に対してグラウトを注入する。
【0020】
本実施形態のグラウト注入方法によれば、注入対象領域1を直接振動させることでグラウトの浸透性が向上するため、注入機器3は一般的な装置で構成することができる。なお、注入効率をさらに向上させることを目的として、注入圧力に特定周波数をもつ脈動圧力を与えることが可能な装置を注入機器3に採用してもよい。
【0021】
また、注入対象領域1に対して全体的に振動を与えることでグラウトの浸透性が向上するため、グラウトの浸透が一部分(例えば岩盤中の特定の亀裂等)のみに集中してしまうことを防止し、注入対象領域1全体に浸透するようにグラウトの注入範囲を制御することができる。
【0022】
また、振動によりグラウトの浸透性が向上することで、難透水性の地盤、高圧条件下の地盤やコンクリート躯体の亀裂等に対しても効率よく注入することが可能となる。
【0023】
また、グラウト自体に動的特性を与える従来の動的注入方法(図3参照)は、グラウトが注入対象領域全域に浸透する前に、動的効果が減衰する場合があったが、本実施形態のグラウト注入方法によれば、注入対象領域1を全体的に振動させるため、注入対象領域1全域にグラウトが浸透するまで動的効果の減衰が少なく、高品質施工が可能となる。
【0024】
次に、第二の実施の形態のグラウト注入方法について説明する。
第二の実施の形態に係るグラウト注入方法は、図2に示すように、トンネルTの内壁面に設置された振動発生装置6を利用して、注入対象領域1に対して振動を与える点で、ロックボルト5を介して注入対象領域1に対して振動を与える第一の実施の形態のグラウトの注入方法(図1参照)と異なっている。
【0025】
本実施形態では、図2に示すように、グラウト注入孔2の孔口周辺のトンネルTの覆工表面(構造物)に、振動発生装置6から延設された振動部材6aを接続し、トンネルTの覆工を介して地盤(地山)Gに振動を与える。
【0026】
なお、振動発生装置6は、直接地盤Gの表面に接していてもよいし、トンネルの覆工コンクリート等の構造体を介して地山Gの表面に設置されていてもよい。また、本実施形態では、グラウト注入孔2の孔口を鉛直方向で挟むように2ヶ所、縦断方向で挟むように2ヶ所の計4箇所の振動部材6aを1つのグラウト注入孔2に対して配置するものとしたが、振動部材6aの配置は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0027】
第2の実施の形態のグラウト注入方法に係るグラウト注入孔2や注入機器3等に関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0028】
第2の実施の形態のグラウト注入方法による作用効果は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0029】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、注入対象領域が岩盤や地盤等の地山の場合について説明したが、注入対象領域は、地山に限定されるものではない。例えば、亀裂が生じたコンクリート躯体に対してグラウトを注入する場合であっても、本発明のグラウトの注入方法を採用することができる。この場合には、コンクリート躯体を介して振動を与えればよい。また、コンクリート躯体に配置されたアンカーや鉄筋等を介して振動を与えてもよい。
【0030】
また、本発明のグラウト注入方法が適用可能な注入対象領域は、トンネル周囲の地山に限定されるものではなく、例えば、地上から形成されたボーリング孔等を介して注入する場合や鋼矢板の周囲等、あらゆるグラウト注入に採用可能である。この場合において、振動発生装置は、地表面に設置されていてもよいし、地盤内に設けられた構造物に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 注入対象領域
2 グラウト注入孔
3 注入機器
4 注入管
5 ロックボルト(構造物)
6 振動発生装置
7 振動域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入対象領域に対して振動を与えつつ、前記注入対象領域にグラウトを注入することを特徴とするグラウト注入方法。
【請求項2】
前記振動を前記注入対象領域の近傍に設けられた構造物を介して与えることを特徴とする、請求項1に記載のグラウト注入方法。
【請求項3】
前記注入対象領域がコンクリート躯体内であり、前記振動を、当該コンクリート躯体を介して与えることを特徴とする、請求項1に記載のグラウト注入方法。
【請求項4】
前記注入対象領域が地盤内であり、前記振動を前記地盤の表面に設置された振動発生装置を利用して与えることを特徴とする、請求項1に記載のグラウト注入方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−168764(P2010−168764A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10599(P2009−10599)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】