説明

グラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール

【課題】 本発明は、高速打撃時に反発性が高く、一方、低速打撃時に反発性が低いグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールを提供することを課題とする。
【解決手段】 球状のコア2と、コア2の周囲に設けられた中間層3と、中間層3の周囲に設けられた表面被覆層5と、を備えるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールであって、中間層3が、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)における貯蔵弾性率E’が100〜300MPa、損失係数tanδが0.07〜0.2の粘弾性体からなる低弾性層を含み、コア2が、貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラウンドゴルフ又はパークゴルフに使用されるボールに関する。
【背景技術】
【0002】
グラウンドゴルフやパークゴルフは、クラブでボールを打つことは一般のゴルフと共通するが、誰でも手軽に且つ安全に楽しめることを目的としているので、コースの長さは短く、コースを通じてボールを殆ど転がしながら移動させる点で、一般のゴルフとは根本的に相違する。従って、使用される用具も一般のゴルフと全く異なり、クラブにはロフトがなく、ボールは大きくて比較的重いものが用いられ、ボールが飛び上がらないように配慮されている。
このようなグラウンドゴルフ等は、高齢者から子供までその愛好者層は幅広い。
しかしながら、高齢者や子供などは比較的力が弱いので、ボールを強打したつもりでも、打撃力がボールに十分伝わらず、よって、ボールが遠くにまで転がらないことが多い。特に、ラフ等が設定されたコースでは、クラブが草に絡むことから強く振り抜けず、一打でボールをラフ等から転がし出すことは非常に困難である。
一方、ホールポストやカップのアプローチは、微妙なタッチが要求されるところ、高齢者や子供などは、力の加減をうまくコントロールできず、多少強く打ちすぎてオーバーすることも多い。
【0003】
このようなことから、グラウンドゴルフ又はパークゴルフに使用されるボールは、比較的非力な者でも遠くへ転がすことができ、一方、アプローチなどの際には、必要以上に強く打ってしまっても、遠くまで転がり難いものが望まれる。
言い換えると、グラウンドゴルフ又はパークゴルフの特質上、遠くまで転がすべくクラブを速く振って打撃した場合には、よく反発し、近くに転がすべくクラブをゆっくり振って打撃した場合には、反発し難いボールが望まれる。
【0004】
この点、特開2002−78829には、耐摩耗性に優れたグラウンドゴルフ用又はパークゴルフ用のボールについて開示されているが、上記のような点については何ら示唆がない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−78829
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、高速打撃時に反発性が高く、一方、低速打撃時に反発性が低いグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールを提供することを課題とする。さらに、打撃感に優れたグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、ボールの反発性は、反発係数で指標でき、ボールの反発係数は、打撃速度が遅くなるに従い上昇し、打撃速度が早くなるに従い低下する。この点、本発明者らは、打撃時のボールの変形に着目し、低速打撃時には主としてボールの外層側が変形し、一方、打撃エネルギーが大きい高速打撃時には、外層側が変形するだけでは足りずボールのコアにまで変形が及ぶことから、低速打撃時に比して打撃エネルギーが変形に費やされる割合が高くなり、その結果、高速打撃時の反発係数が小さくなると考え、かかる知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第1の手段は、球状のコアと、コアの周囲に設けられた中間層と、中間層の周囲に設けられた表面被覆層と、を備えるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールであって、中間層が、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)における貯蔵弾性率E’が100〜300MPa、損失係数tanδが0.07〜0.2の粘弾性体からなる低弾性層を含み、コアが、貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体からなることを特徴とする。
ここで、貯蔵弾性率E’及び損失係数tanδは、動的粘弾性測定による数値であり、貯蔵弾性率E’が小さいほど変形し易く、損失係数tanδが小さいほど変形時に於けるエネルギー吸収が小さい材料と言える。
【0009】
上記ボールは、コアの外側に設けられた低弾性層が、コアに比して、低弾性な粘弾性体からなる。従って、かかるボールは、(低速打撃時に主として影響を受ける)低弾性層が大きく変形しうるので、低速打撃時の打撃エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が高くなり、一方、(高速打撃時に主として影響を受ける)コアが変形し難いので、高速打撃時のコアの変形量が抑えられ、打撃エネルギーが熱エネルギーに変換される割合を低く抑えることができる。
よって、高速打撃時に反発性が高く、一方、低速打撃時に反発性が低いボールを提供できる。
また、低弾性層の貯蔵弾性率E’が100〜300MPaであるので、適度な弾性によって打撃感の良好なボールを提供できる。
【0010】
また、本発明の第2の手段は、球状のコアと、コアの周囲に設けられた中間層と、中間層の周囲に設けられた表面被覆層と、を備えるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールであって、中間層が、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)に於ける貯蔵弾性率E’が100〜300MPaの粘弾性体からなる低弾性層を含み、コアが、貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体からなり、低弾性層の損失係数tanδ/前記コアの損失係数tanδが、2以上であることを特徴とし、好ましくは、低弾性層の損失係数tanδが0.07〜0.2である。
【0011】
上記ボールは、コアの外側に設けられた低弾性層が、コアに比して、低弾性で損失係数の大きい粘弾性体からなる。従って、かかるボールは、低弾性層が大きく変形すると共にエネルギー吸収も多く、低速打撃時の打撃エネルギーが熱エネルギーに変換される割合が高くなり、一方、コアが変形し難くエネルギー吸収も少ないので、高速打撃時の打撃エネルギーが熱エネルギーに変換される割合を低く抑えることができる。
よって、高速打撃時に反発性が高く、一方、低速打撃時に反発性が低いボールを提供できる。
【0012】
さらに、本発明の好ましい態様では、上記コアの損失係数tanδが0.01〜0.06の粘弾性体からなる上記グラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールである。
また、本発明の好ましい態様では、上記中間層が複層で、そのうちの少なくとも1層が前記低弾性層である上記グラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールである。
さらに、本発明の好ましい態様では、ボールの半径:前記コアの半径が、1:0.5〜1:0.94、ボールの半径:前記低弾性層の層厚が、1:0.03〜1:0.33である上記グラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールは、高速打撃時には比較的反発性が高く、一方、低速打撃時には反発性が低く、更に、打球感にも優れている。従って、高齢者や子供などでも、比較的遠くにまで転がすことができ、一方、アプローチ時に、打ちすぎによる寄せミスを防止できるので、グラウンドゴルフ又はパークゴルフ用として好適なボールを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1に於いて、1は、球状のコア2と、このコア2の周囲に設けられた中間層3と、この中間層の周囲に設けられた表面被覆層5と、を備えるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボールを示す。
コア2は、中空又は中実の球体からなる。中間層3は、このコア2の外周面を被覆するように設けられている。中間層3は、図1(a)に示すように、コア2と表面被覆層5の間に1層設けられているもののほか、図1(c)に示すように、2層以上積層されている構成でもよい。尚、同図(c)は、複層の一例として、内側から順に、第1中間層31、第2中間層32、第3中間層33の3層構造からなる中間層3を例示している。
【0015】
コア2は、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)における貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体から形成されている。高速打撃時に於けるコア2の変形量を抑えて高速打撃時のボールの反発性を高めるためである。コア2の貯蔵弾性率E’の上限は特に限定されないが、打撃時の手の痺れの問題を考慮すると、2000MPa以下程度が好ましい。
また、コア2の粘弾性体は、(低弾性層の損失係数tanδ)/(コアの損失係数tanδ)≧2、となるものが好ましい。コア2と低弾性層の損失係数の差を大きくして、低速打撃時と高速打撃時に於ける反発性の違いをより顕在化させるためである。具体的にはコア2は、損失係数tanδが0.01〜0.06の粘弾性体が好ましい。損失係数を小さくして、打撃エネルギーのロスを抑えて高速打撃時のボールの反発性をより高めるためである。
【0016】
コア2は、図1(a)に示すような中実状又は同図(b)に示すような中空状の何れの構造でもよく、又、非発泡体又は発泡体(連続気泡又は独立気泡)の何れでもよい。発泡体は、周知のADCA系、水酸化アルミ等を用いた化学発泡に加えて、水発泡や炭酸ガス、窒素ガスなどを用いた超臨界ガス発泡を含む物理発泡でも良い。尚、この種のボールでは、ルール上、ボールの重量が定められているので、一般に、コア2を中実状に成形する場合には発泡体にて形成され、発泡倍率は1.5〜2.0倍程度が好ましい。もっとも、コア2は、中空状の発泡体でも構わない。
コア2の半径Aは、ボール1の半径Rに対し、0.5倍〜0.94倍程度、更に、0.65倍〜0.94に形成されることが好ましい。協会ルール上、ボールの重量が所定範囲に定められているのでボールの重量調整をコア2で行う必要がある上、ボール全体に対するコア2の占める体積が小さいと、高速打撃時の反発性を高めることができず、一方、コア2の体積が大きすぎると中間層3や表面被覆層5の占める体積が小さくなり過ぎるからである。また、コア2が中空状で且つ非発泡体の場合には、重量調整上、コア2の中空部21の半径Bは、ボール1の半径Rに対して0.48倍〜0.63倍程度に形成されることが好ましい。
尚、グラウンドゴルフの現状ルール(日本グラウンドゴルフ協会)では、ボールの重量は75〜115g、半径約30mm、パークゴルフの現状ルール(国際パークゴルフ協会)では、重量80〜95g、半径約30mmとなっている。
【0017】
コア2の材料としては、上記貯蔵弾性率E’及び損失係数を有するものであれば特に限定されず、従来公知の熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーが使用できる。熱可塑性樹脂であれば、例えば、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアミド、メタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ABS、ポリイミド、EPDM、シリコーン樹脂、ポリアリレート、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を1種または2種以上用いることができる。熱可塑性エラストマーであれば、例えば、スチレン系、オレフィン系、ポリウレタン系、塩ビ系、ポリアミド系などの1種または2種以上を用いることができる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉を1種または2種以上混合することもできる。また、従来公知の熱可塑性樹脂に、動的粘弾性及び重量調製のために、黒鉛、ケッチンブラック、カーボンブラック、タルク、マイカ、モンモリロナイト、酸化チタン、煙霧状シリカ、酸化亜鉛、炭素繊維、炭酸カルシウム、酸化アルミ、金属、繊維状チタン酸カリウム、カーボンナノチューブ、フラーレン等、プロティンパウダー等の添加剤、パラフィンやプロセスオイル、可塑剤を加えることもできる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉などを1種または2種以上混合することもできる。着色には、顔料、染料、蛍光増白剤、金属粉、気泡をいれることもできる。
【0018】
次に、中間層3は、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)に於ける貯蔵弾性率E’が100〜300MPaの粘弾性体からなる低弾性層を有する。コア2の外側に、かかる低弾性層を設けることにより、低速打撃時における変形量を大きくして、低速打撃時のボールの反発性を抑えるためである。また、貯蔵弾性率E’が100MPa未満であると、成形時の寸法安定性に欠け、一方、300MPaを超えると打球感が悪くなるからである。
また、低弾性層は、損失係数tanδが0.07〜0.2、更に0.07〜0.14の粘弾性体が好ましい。かかる損失係数により、打撃エネルギーの吸収ロスを大きくして、低速打撃時のボールの反発性をより抑えるためである。
【0019】
中間層3は、コア2の周囲に略均一な層厚で積層される。中間層3が、図1(a)、(b)に示すような単層構造の場合には、中間層3全体が、上記物性の低弾性層(以下、単に低弾性層という)で構成される。また、中間層3が、図1(c)に示すような複層構造の場合には、そのうちの少なくとも1層に低弾性層が設けられる。
従って、複層のうち、その全てが低弾性層で構成されていてもよいし、或いは、1層のみが低弾性層で構成されていてもよい。中間層3が、複層構造で且つ低弾性層と異なる層(上記低弾性層の物性値範囲から外れる層)を有する場合、低弾性層は、内側(コア2に近い側)又は外側(表面被覆層5に近い側)の何れの側に設けられていても良いが、外側に設けることが好ましい。また、中間層3が、2層以上の低弾性層で構成されている場合には、外側の低弾性層は、内側の低弾性層に比して、貯蔵弾性率E’が小さいものが好ましく、更に、内側の低弾性層に比して損失係数tanδが大きいものがより好ましい。
低弾性層の層厚C(低弾性層が2層以上設けられている場合には、各層厚の合計)は、ボール1の半径Rに対し、0.03倍〜0.3倍程度、更に0.03倍〜0.17倍程度に形成されることが好ましい。低弾性層の占める体積が小さいと、低速打撃時の反発性を抑えることができず、一方、大きすぎると高速打撃時の反発性を高めるという効果が十分に発揮できない虞があるからである。
尚、コア2や低弾性層の貯蔵弾性率E’及び損失係数tanδは、下記実施例に示す測定法で測定された数値を言う。
【0020】
中間層3の材料としては、特に限定されず、目的とする動的粘弾性特性が示せれば公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーを使用することができる。熱可塑性樹脂であれば、例えば、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアミド、メタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ABS、ポリイミド、EPDM、シリコーン樹脂、ポリアリレート、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を1種または2種以上用いることができる。熱可塑性エラストマーであればスチレン系、オレフィン系、ポリウレタン系、塩ビ系、ポリアミド系などの1種または2種以上を用いることができる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉を1種または2種以上混合することもできる。また、従来公知の熱可塑性樹脂に、動的粘弾性及び重量調製のために、黒鉛、ケッチンブラック、カーボンブラック、タルク、マイカ、モンモリロナイト、酸化チタン、煙霧状シリカ、酸化亜鉛、炭素繊維、炭酸カルシウム、酸化アルミ、金属、繊維状チタン酸カリウム、カーボンナノチューブ、フラーレン等、プロティンパウダー等の添加剤、パラフィンやプロセスオイル、可塑剤を加えることもできる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉などを1種または2種以上混合することもできる。着色には、顔料、染料、蛍光増白剤、金属粉、気泡をいれることもできる。
【0021】
表面被覆層5は、中間層3の周囲に略均一に積層され、その層厚Dは、ボール1の半径Rに対し、0.03倍〜0.17倍程度に形成されることが好ましい。余りに薄いと、表面保護として機能せず、余りに厚いと冷却などのため生産性が落ちるからである。尚、表面被覆層5の貯蔵弾性率E’は、200〜600MPa程度、損失係数tanδは、0.05〜0.15程度のものが好ましい。
表面被覆層5の材料としては、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーを使用することができる。熱可塑性樹脂であれば、例えば、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアミド、メタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、液晶ポリマー(LCP)、ABS、ポリイミド、EPDM、シリコーン樹脂、ポリアリレート、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を1種または2種以上用いることができる。熱可塑性エラストマーであればスチレン系、オレフィン系、ポリウレタン系、塩ビ系、ポリアミド系などの1種または2種以上を用いることができる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉を1種または2種以上混合することもできる。また、従来公知の熱可塑性樹脂に、動的粘弾性及び重量調製のために、黒鉛、ケッチンブラック、カーボンブラック、タルク、マイカ、モンモリロナイト、酸化チタン、煙霧状シリカ、酸化亜鉛、炭素繊維、炭酸カルシウム、酸化アルミ、金属、繊維状チタン酸カリウム、カーボンナノチューブ、フラーレン等、プロティンパウダー等の添加剤、パラフィンやプロセスオイル、可塑剤を加えることもできる。また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、架橋ゴム粉などを1種または2種以上混合することもできる。着色には、顔料、染料、蛍光増白剤、金属粉、気泡をいれることもできる。
表面被覆層5は、主としてボール表面を保護するものなので、例えば、特開2002−78829などに記載されている耐摩耗性に優れたものを用いることが好ましい。
尚、上記ボール1は、例えば、表面被覆層5と中間層3の間にラベルを介在させたり、或いは、中間層3などを着色するなど、本発明の意図する範囲で、適宜の構成を付加、変更などすることができる。
【0022】
上記コア2、中間層3及び表面被覆層5を、それぞれ射出成形など公知の成形法に従って順に作製することにより、本発明のボール1を得ることができる。
得られたボール1は、クラブで打撃した際に手が痺れることもなく、高速打撃時には反発性が高く、低速打撃時には反発性が低く、グラウンドゴルフ用又はパークゴルフ用のボールとして好適なものである。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例を示して、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0024】
(実施例及び比較例に使用した材料)
ポリカーボネート…三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、製品名:ノバレックス[登録商標]7022A。
ABS(1)…テクノポリマー(株)製、製品名:テクノABS110。
ABS(2)…テクノポリマー(株)製、製品名:テクノABS170。
ナイロン…宇部興産(株)製、製品名:1013W。
アイオノマー(1)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]1855。
アイオノマー(2)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]1555。
アイオノマー(3)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]1555及びハイラミン[登録商標]1706。同1555と同1706の混合樹脂(重量比2:1)。
アイオノマー(4)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]1856。
アイオノマー(5)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]1652。
アイオノマー(6)…三井デュポンポリケミカル(株)製、製品名:ハイラミン[登録商標]79102。
スチレン系エラストマー(1)…(株)クラレ製、製品名:セプトン[登録商標]4001。
スチレン系エラストマー(2)…(株)クラレ製、製品名:セプトン[登録商標]4001及びセプトン[登録商標]4003。同4001と同4003の混合樹脂(重量比1:1)。
【0025】
実施例1
(コア)
ポリカーボネート100重量部に、発泡剤(永和化成工業(株)製、商品名:ビニホールAC#3)0.02重量部を加えてミキサーで十分に混合した後、射出成形機(射出速度:60mm/s、射出温度(スクリュー部):300℃、射出圧力:68.6MPa)により、半径23.7mm、発泡倍率1.8倍の中実状のコアを作製した。
(中間層)
次に、このコアを、射出成形機の金型の中央部に保持ピンで保持し、アイオノマー(1)を射出して(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):230℃、射出圧力:58.8MPa)、層厚2.8mmの中間層を作製した。
(表面被覆層)
上記中間層を設けた球体を、射出成形機の金型の中央部に保持ピンで保持し、アイオノマー(2)を射出して(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):230℃、射出圧力:58.8MPa)、層厚3.5mmの表面被覆層を設けることにより、3層構造の実施例1に係るボールを作製した。
【0026】
実施例2
半円状の凹部を有する金型と半円状の凸部を有する金型によって形成されたキャビティ内に、アイオノマー(3)を射出して(射出速度:30mm/s、射出温度(スクリュー部):200℃、射出圧力:78.4MPa)、肉厚8.9mmの半球体を2個作製した。この半球体を接合することにより、半径23.7mmの中空状のコアを作製した。
このコアの周囲に、実施例1と同様にして、中間層及び表面被覆層を積層することにより、3層構造の実施例2に係るボールを作製した。
【0027】
実施例3
コアの材料として、ポリカーボネートを用いた(射出速度:30mm/s、射出温度(スクリュー部):300℃、射出圧力:78.4MPa)こと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の実施例3に係るボールを作製した。
【0028】
実施例4
中間層の材料として、セプトン(1)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の実施例4に係るボールを作製した。
【0029】
実施例5
ABS(1)100重量部に、発泡剤(永和化成工業(株)製、商品名:ビニホールAC#3)0.02重量部を加えてミキサーで十分に混合した後、射出成形機(射出速度:30mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:68.6MPa)により、半径23.7mm、発泡倍率1.6倍の中実状のコアを作製した。
このコアに、中間層の材料として、アイオノマー(4)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):230℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の実施例5に係るボールを作製した。
【0030】
実施例6
コアの材料として、ABS(2)を用いた(射出速度:30mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:68.6MPa)こと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の実施例6に係るボールを作製した。
【0031】
実施例7
中間層の材料として、アイオノマー(5)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の実施例7に係るボールを作製した。
【0032】
実施例8
中間層の材料として、アイオノマー(5)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、3層構造の実施例8に係るボールを作製した。
【0033】
実施例9
コアの材料として、ナイロンを用いた(射出速度:60mm/s、射出温度(スクリュー部):300℃、射出圧力:78.4MPa)こと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の実施例9に係るボールを作製した。
【0034】
実施例10
実施例1と同様にして作製したコアを、射出成形機の金型の中央部に保持ピンで保持し、アイオノマー(1)を射出して、層厚1.4mmの第1中間層を作製した。更に、この周囲に、セプトン(1)を射出して、層厚1.4mmの第2中間層を作製することにより、計2.8mmの中間層を作製した。
事後、実施例1と同様にして、層厚3.5mmの表面被覆層を積層することにより、4層構造の実施例10に係るボールを作製した。
【0035】
実施例11
実施例6と同様にして作製したコアを用い、第2中間層の材料として、アイオノマー(4)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例10と同様にして、4層構造の実施例11に係るボールを作製した。
【0036】
実施例12
実施例1と同様にして作製したコアを、射出成形機の金型の中央部に保持ピンで保持し、アイオノマー(1)を射出して、層厚1.0mmの第1中間層を設け、この周囲に、セプトン(1)を射出して、層厚1.0mmの第2中間層を設け、更に、この周囲に、アイオノマー(3)を射出(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力: 58.8MPa)して、層厚0.8mmの第3中間層を設けることにより、計2.8mmの中間層を作製した。
事後、実施例1と同様にして、表面被覆層を積層することにより、5層構造の実施例12に係るボールを作製した。
【0037】
比較例1
中間層の材料として、アイオノマー(3)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の比較例1に係るボールを作製した。
【0038】
比較例2
コアの材料として、アイオノマー(1)を用い(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)、中間層の材料として、アイオノマー(3)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の比較例2に係るボールを作製した。
【0039】
比較例3
コアの材料として、アイオノマー(6)を用い(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)、中間層の材料として、アイオノマー(4)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の比較例3に係るボールを作製した。
【0040】
比較例4
中間層の材料として、アイオノマー(3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の比較例4に係るボールを作製した。
【0041】
比較例5
中間層の材料として、セプトン(2)を用いた(射出速度:40mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の比較例5に係るボールを作製した。
【0042】
比較例6
中間層の材料として、ABS(2)を用いた(射出速度:50mm/s、射出温度(スクリュー部):240℃、射出圧力:58.8MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の比較例6に係るボールを作製した。
【0043】
比較例7
中間層の材料として、ナイロンを用いた(射出速度:60mm/s、射出温度(スクリュー部):300℃、射出圧力:78.4MPa)こと以外は、実施例1と同様にして、3層構造の比較例7に係るボールを作製した。
【0044】
比較例8
コアの材料として、アイオノマー(1)を用い、中間層の材料として、ナイロンを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、3層構造の比較例8に係るボールを作製した。
【0045】
比較例9
第1中間層として、ナイロンを用い、第2中間層として、セプトン(2)を用いたこと以外は、実施例10と同様にして、4層構造の比較例9に係るボールを作製した。
【0046】
比較例10
第1中間層として、ナイロンを用い、第2中間層として、セプトン(2)を用いたこと以外は、実施例12と同様にして、5層構造の比較例10に係るボールを作製した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
(動的粘弾性の測定)
厚み1.0〜2.0mm、幅3.0〜5.0mm、長さ15.0〜20.0mmの短冊状の試験片(但し中間層が2層以上の実施例及び比較例の各中間層については、厚み0.3〜1.0mm、幅2.0〜4.0mm、長さ15.0〜20.0mmの短冊状の試験片)を用い、下記条件で動的粘弾性を測定することにより、貯蔵弾性率E’及び損失係数tanδを求めた。尚、試験片は、実施例1〜12及び比較例1〜10でボールを作製する段階で、それぞれ切り出した。すなわち、各実施例及び比較例に於いて、ボールを2個作製し、そのうちの1個は、後述する反発係数などを測定するために用いた。残る1個は、動的粘弾性の測定のために用い、コアを作製した段階で、そのコアから上記寸法の試験片を切り出し、次に中間層を作製した段階で(複層のものは、各層を成形する毎に)上記寸法の試験片を切り出し、表面被覆層を作製した段階で上記寸法の試験片を切り出して、それぞれ測定した。その結果を各表に示す。

測定機器:(株)ユービーエム製、動的粘弾性測定装置 Rheogel-E4000
モード:引張りによる周波数依存性。
波形:正弦波歪み(連続加振)。
チャック間距離:10mm
温度:23(±1)℃。
周波数:100Hz。
荷重:初期荷重。
変位:5μm一定。
【0052】
(ボールの反発試験)
実施例1〜12及び比較例1〜10のボールについて、下記方法により低速時及び高速時のボールの反発係数を測定した。その結果を各表に示す。
低速反発試験:高さ100cmの地点から、金属板(鋼材、厚み50mm)の上にボールを自然落下させ、跳ね返った高さX(cm)を測定し、下記式に基づいて低速時の反発係数を測定した。尚、この試験は、衝突速度約4.43m/secの反発係数に相当する。式…低速反発係数=√(X/100)。
高速反発試験:高さ1310cmの地点から、金属板(鋼材、厚み50mm)の上にボールを自然落下させ、跳ね返った高さY(cm)を測定し、下記式に基づいて高速時の反発係数を測定した。尚、この試験は、衝突速度約16.03m/secの反発係数に相当する。式…高速反発係数=√(Y/1310)。
尚、速度依存性は、次の式による。速度依存係数=(低速反発係数−高速反発係数)/(16.03−4.43)。
【0053】
(打球感)
任意に抽出した試験者20名に、グラウンドゴルフ用クラブ((株)アシックス製、GGG130)を用いて、芝コース上でスタートマットからホールポストまでの50mを一打で到達する程度の力で、実施例1〜12及び比較例1〜10のボールと市販のグラウンドゴルフ用ボール((株)アシックス製、GGG311)をそれぞれ実際に打撃してもらい、手へ伝わる感触を確認した。各人、各ボールを5回試打し、「良好」、「硬い」、「非常に硬い」の3段階で評価し、統計的有意差のある結果のみを各表に示す。
【0054】
実施例1〜12のボールは、低速反発係数が比較的低く、速度依存係数が小さいことが確認された。また、実施例1〜12のボールは打球感にも優れていた。一方、比較例1〜10のボールは、低速反発係数が比較的高く、又、低速反発係数が比較的低いものは速度依存係数が高く(従って高速反発係数が低い)、打球感に劣っているものが多かった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のボールを示す縦断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…ボール、2…コア、3…中間層、31…第1中間層、32…第2中間層、33…第3中間層、5…表面被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のコアと、コアの周囲に設けられた中間層と、中間層の周囲に設けられた表面被覆層と、を備えるボールであって、
前記中間層が、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)における貯蔵弾性率E’が100〜300MPa、損失係数tanδが0.07〜0.2の粘弾性体からなる低弾性層を含み、
前記コアが、貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体からなるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。
【請求項2】
球状のコアと、コアの周囲に設けられた中間層と、中間層の周囲に設けられた表面被覆層と、を備えるボールであって、
前記中間層が、動的粘弾性測定(23±1℃、100Hz)に於ける貯蔵弾性率E’が100〜300MPaの粘弾性体からなる低弾性層を含み、
前記コアが、貯蔵弾性率E’が300MPa以上の粘弾性体からなり、
前記低弾性層の損失係数tanδ/前記コアの損失係数tanδが、2以上であるグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。
【請求項3】
前記低弾性層の損失係数tanδが、0.07〜0.2である請求項2記載のグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。
【請求項4】
前記コアの損失係数tanδが、0.01〜0.06である請求項1〜3の何れかに記載のグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。
【請求項5】
前記中間層が複層で構成されており、そのうちの少なくとも1層が前記低弾性層である請求項1〜4の何れかに記載のグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。
【請求項6】
ボールの半径:前記コアの半径が、1:0.5〜1:0.94、ボールの半径:前記低弾性層の層厚が、1:0.03〜1:0.33である請求項1〜5の何れかに記載のグラウンドゴルフ・パークゴルフ用のボール。

【図1】
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【公開番号】特開2006−218049(P2006−218049A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33641(P2005−33641)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000000310)株式会社アシックス (57)