説明

グラスファイバおよびパラアラミドを含む改良型耐切断性手袋

本発明は、耐切断性編成手袋において;
a)コア糸、およびコア糸のまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第1のラッピング糸を有する耐切断性複合糸であって、コア糸は少なくとも1本の50〜200デニール(56〜220dtex)のガラス繊維フィラメント糸を含み、第1のラッピング糸は1本の100〜600デニール(110〜680dtex)のパラアラミド糸である、耐切断性複合糸と;
b)脂肪族ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された随伴糸と;
c)100〜500デニール(110〜560dtex)の複合糸を含むライニング糸であって、複合糸が少なくとも1本のエラストマ糸を含むエラストマ糸コアと、糸コアのまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第2のラッピング糸とを有するライニング糸であって、第2のラッピング糸は、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1本の20〜300デニール(22〜340dtex)の糸を含んでいる、ライニング糸と;
を含む耐切断性編成手袋であって、耐切断性複合糸、随伴糸およびライニング糸は、ライニング糸が手袋の内側に添え糸編みされ、耐切断性複合糸と随伴糸が手袋の外側を形成している状態で、手袋の形に共編成されている、耐切断性編成手袋に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィラメントおよびパラアラミド繊維を含む耐切断性の編成された手袋の改良された構造に関する。手袋は、編成構造内に可動随伴糸を追加したことを理由の一部として、改良された快適性および耐摩耗性を有する。
【背景技術】
【0002】
綿などの糸に対して添え糸編みされたパラアラミド繊維糸を用いて編成され、この綿の層が手袋の内側にあって皮膚に接する、耐切断性手袋が市販されている。パラアラミド繊維は皮膚を傷つける可能性があるため、綿は手袋の快適性を改善する一助となる。Postに対する米国特許第6,044,493号明細書は、一緒に編成されて添え糸編み編成を形成する複数の耐切断性ストランドと複数の弾性ストランドを含む手袋などの保護用材料において、耐切断性ストランドがこの材料の外部表面を形成し、弾性ストランドがその内部表面を形成する保護用材料について開示している。
【0003】
耐切断性糸の切断性能を改善しようとして、高い硬度をもつ材料が耐切断性糸と組合わされてきた。Dunbarらに対する米国特許第5,119,512号明細書は、少なくとも1つの可撓性耐切断性繊維質材料と高い硬度レベルを有する少なくとも1つの別の材料とを含む単糸から製造された耐切断性糸、ファブリックおよび手袋を開示している。Hummelに対する米国特許第6,161,400号明細書は、耐切断性繊維を含む糸と高い硬度を有する繊維を含む糸という2本の異なる糸から製造された耐切断性ファブリックおよび手袋を開示している。2本の糸のうちの一方は主に手袋の外側に配置され、もう一方は主として内側に配置される。同様に、Andrewsらに対する米国特許第5,965,223号明細書は、本質的に耐切断性または高い引張り強度を有する材料の内部層に添え糸編みされる、摩耗性材料で構成された糸を用いて製造される外部層を最低限有する保護用ファブリックおよび手袋を開示している。
【0004】
裸のガラス繊維は、高い硬度を有するものの、同様に非常に脆く、容易に摩耗され、皮膚に対する刺激性が非常に高い。この皮膚刺激性の問題に対する1つの解決法は、一般に複合糸またはラップド糸と呼ばれてきたものの形をした、すなわちこの場合ガラス繊維のフィラメントが複数のらせん状に捲回された糸で被覆されているグラスファイバを使用することであった。代表的な糸およびこのような糸を製造するための方法は、例えばKolmesらに対する米国特許第5,628,172号明細書およびKolmesに対する米国特許第5,845,476号明細書などに開示されている。これらのラッピングは一般に、密に間隔どりされかつ/またはコアグラスファイバーフィラメントのまわりに密に捲回されて、優れた被覆率を得るようになっているが、予想外の結果は、これらの複合糸またはラップド糸の剛性が高くなる傾向にあるということである。
【0005】
さらに、このようなラップド糸は、複合糸が無損傷の状態にとどまるかぎり皮膚の刺激性を防止する一助となる。残念なことに、通常の使用中に、このような手袋は、グラスファイバを露出させる断裂や摩耗を受け、これはたとえ手袋が使用可能な状態にあり続けるとしても皮膚に刺激を与える可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要とされているのは、通常の使用中の快適性および耐摩耗性を改善するための改良型手袋構造である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、耐切断性編成手袋において;
a)コア糸、およびコア糸のまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第1のラッピング糸を有する耐切断性複合糸であって、コア糸は少なくとも1本の50〜200デニール(56〜220dtex)のガラス繊維フィラメント糸を含み、第1のラッピング糸は1本の100〜600デニール(110〜680dtex)のパラアラミド糸である、耐切断性複合糸と;
b)脂肪族ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された随伴糸と;
c)100〜500デニール(110〜560dtex)の複合糸を含むライニング糸であって、複合糸が少なくとも1本のエラストマ糸を含むエラストマ糸コアと、糸コアのまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第2のラッピング糸とを有するライニング糸であって、第2のラッピング糸は、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1本の20〜300デニール(22〜340dtex)の糸を含んでいる、ライニング糸と;
を含む耐切断性編成手袋であって、耐切断性複合糸、随伴糸およびライニング糸は、ライニング糸が手袋の内側に添え糸編みされ、耐切断性複合糸と随伴糸が手袋の外側を形成している状態で、手袋の形に共編成されている、耐切断性編成手袋に関する。
【0008】
一実施形態において、本発明は、耐切断性編成手袋において;
a)コア糸、およびコア糸のまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第1のラッピング糸を有する耐切断性複合糸であって、コア糸は少なくとも1本の50〜200デニール(56〜220dtex)のガラス繊維フィラメント糸を含み、第1のラッピング糸は1本の100〜600デニール(110〜680dtex)のパラアラミド糸である、耐切断性複合糸と;
b)脂肪族ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された随伴糸と;
c)100〜500デニール(110〜560dtex)の複合糸を含むライニング糸であって、複合糸が少なくとも1本のスパンデックス糸を含むスパンデックス糸コア(前記糸コアは最高75デニール(84dtex)の綿密度を有する)と、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物を含む少なくとも1本の第2の20〜300デニール(22〜340dtex)のラッピング糸(前記少なくとも1本の第2のラッピング糸は糸コアのまわりにらせん状に捲回されている)とを有する、ライニング糸と;
を含む耐切断性編成手袋であって、耐切断性複合糸、随伴糸およびライニング糸は、ライニング糸が手袋の内側に添え糸編みされ、耐切断性複合糸と随伴糸が手袋の外側を形成している状態で、手袋の形に共編成されている、耐切断性編成手袋に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】手袋編機を用いて糸を編成することによって製造された耐切断性手袋を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、少なくとも3種類の糸を含む耐切断性編成手袋構造に関する。これらの糸は、手袋の内側上に添え糸編みされたライニング糸と合わせて共編成される、グラスファイバを含む耐切断性複合糸、随伴糸およびライナー糸を含む。
【0011】
耐切断性複合糸
耐切断性複合糸は、50〜200デニール(56〜220dtex)の線密度を有する、少なくとも1本のガラス繊維フィラメント糸のコア糸を有する。50デニール(56dtex)未満のデニールでは適切な切断保護が得られず、一方200デニール(220dtex)超のデニールでは、所望されるものよりも厚いファブリックが結果としてもたらされると考えられている。一部の好ましい実施形態においては、最終的な手袋のサイズは、13ゲージ以下の薄さであり、一部の実施形態においては、ガラス繊維フィラメント糸の線密度は50〜120デニール(56〜130dtex)である。
【0012】
本明細書中、ガラス繊維およびグラスファイバという用語は、ガラス繊維フィラメント糸を意味するために互換的に用いられている。ガラス繊維は、溶融シリカベースのまたはその他の調合ガラスを、繊維加工に適した直径をもつ薄いストランドまたはフィラメントへと押出し加工することによって形成される。一般に使用される2種類のグラスファイバは、SガラスおよびEガラスと呼ばれる。Eガラスは優れた断熱特性を有し、1500°F(800℃)までその特性を維持する。Sガラスは高い引張り強度を有し、Eガラスより剛性が高い。適切なガラス繊維は、B&W Fiber Glass Inc.および数多くの他のガラス繊維メーカーから入手可能である。一部の実施形態においては、Eガラスの使用は、耐切断性複合糸の場合に好適である。
【0013】
次に少なくとも一本の追加の糸が、100〜600デニール(110〜680dtex)の線密度を有する、パラアラミド糸であるグラスファイバのコア糸のまわりにらせん状に捲回される。パラアラミド繊維はアラミドポリマーから製造され、ここで2つの環または基は分子鎖に沿って互いに対しパラ配向されている。パラアラミド繊維を製造するための方法は一般に、例えば米国特許第3,869,430号明細書;米国特許第3,869,429号明細書および米国特許第3,767,756号明細書中で開示されている。このような芳香族ポリアミド有機繊維およびこれらの繊維のさまざまな形態は、E.I.du Pont de Nemours & Company、(Wilmington、Delaware)からKevlar(登録商標)繊維の商標で販売され、および日本の帝人株式会社からTwaron(登録商標)繊維の商標で販売されており入手可能である。本明細書では、日本国東京の帝人株式会社から入手可能であるコポリ(p−フェニレン/3,4’ジフェニルエステルテレフタルアミド)から製造されているTechnora(登録商標)繊維を、パラアラミド繊維とみなす。一部の実施形態ではパラアラミド糸はステープル繊維を含み、一部の実施形態ではパラアラミド糸は連続フィラメントを含む。一部の実施形態では、パラアラミドはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である。
【0014】
一部の実施形態において、パラアラミド糸は、1インチあたり5〜20回(1cmあたり2〜8回)の捲回頻度でコア糸のまわりに捲回される。1インチあたり20回(1cmあたり8回)超の高い捲回頻度は、非常に高い剛性の糸を結果としてもたらし、1インチあたり5回(1cmあたり2回)未満の低い捲回頻度は、グラス繊維フィラメントコアが完全に被覆されないという点において、手袋の耐久性を損なう。一部の実施形態においては、ラッピング糸はスパンステープル糸であり、他の一部の実施形態では、ラッピング糸は連続フィラメント糸である。一部の好ましい実施形態において、ラッピング糸はテクスチャード加工された連続フィラメント糸である。
【0015】
耐切断性複合糸には2本の高耐切断性糸が使用されることから、耐切断性複合糸が手袋に主な耐切断性を提供する。一部の好ましい実施形態において、耐切断性複合糸は、わずか1本のグラスファイバーコア糸とパラアラミド繊維、詳細にはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)繊維の1本のラッピング糸だけで構成されている。
【0016】
随伴糸
耐切断性複合糸は、コア糸のまわりに複数のラッピング糸を含むことができるが、コアのまわりに複数の糸を密ならせん状に捲回することで耐切断性複合糸に剛性が付与されるため、糸は1本だけであることが好ましい。その代り、耐切断性複合糸を無作為に被覆するのを助ける、耐切断性複合糸と共に編成される随伴糸によって、耐切断性複合糸のグラスファイバに由来する潜在的な刺激に対する追加の保護が提供される。随伴糸は、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。随伴糸は同様に、手袋の形に束ね編成された(bundle knitted)糸に潤滑性も提供し、こうして編成された糸が編成構造内でより大きく移動できるようにする。一部の実施形態においては、随伴糸の線密度は100〜300デニール(110〜340dtex)である。この糸サイズ範囲により、手袋のファブリックの耐切断性を実質的に低減させることなく快適性および耐摩耗性を改善することができる。一部の好ましい実施形態においては、随伴糸は、脂肪族ポリアミド糸またはポリエステル糸などの単一の種類の糸のみで構成される。一部の実施形態においては、随伴糸は単糸であり得、一部の実施形態では随伴糸は、引揃え糸または諸撚り糸であり得る。一部の実施形態では、随伴糸はスパンステープル糸であり、他の一部の実施形態では、随伴糸は連続フィラメント糸である。一部の好ましい実施形態では、随伴糸はテクスチャード加工された連続フィラメント糸である。
【0017】
ライニング糸
編成された手袋内の第3の糸構成要素は、皮膚に接する輪奈織されたライニング糸の層を提供する。このライニング糸は、100〜500デニール(110〜560dtex)の合計糸線密度を有し、少なくとも1本のエラストマ糸を含むエラストマ糸コアとこの糸コアのまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本のラッピング糸を有する複合糸である。ラッピングは、手袋内において編成中および使用中に、幾分か耐久性の低いエラストマ糸を磨耗から保護するために役立つ。一部の好ましい実施形態では、複合糸は、アパレルステープル繊維糸すなわち従来の衣服において使用されている糸、例えば脂肪族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物だけを含む。一部の実施形態では、ラッピング糸は単一の種類の糸のみで構成されている。一部の実施形態では、ラッピング糸は単糸であり得、一部の実施形態ではラッピング糸は引揃え糸または諸撚り糸であり得る。一部の実施形態において、ラッピング糸はスパンステープル糸であり、一部のその他の実施形態では、ラッピング糸はテクスチャード加工された連続フィラメント糸である。
【0018】
一部の実施形態において、エラストマ糸は、20〜100デニール(22〜110dtex)の線密度を有する。一部の実施形態では、エラストマ糸は75デニール(84dtex)以下の線密度を有し、一部の好ましい実施形態では、30〜50デニール(33〜56dtex)の線密度を有する。一部の実施形態では、エラストマ糸は、スパンデックス糸である。一部の実施形態では、好ましいエラストマ繊維糸はスパンデックス繊維糸であるが、一般的に、伸縮性および復元性を有するあらゆる繊維を使用することができる。本明細書中で使用する「スパンデックス」という用語は、繊維形成物質が少なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンで構成された長鎖合成ポリマーである人造繊維という、その通常の定義を有する。スパンデックスタイプのセグメント化ポリウレタンとしては、例えば米国特許第2,929,801号明細書;米国特許第2,929,802号明細書;米国特許第2,929,803号明細書;米国特許第2,929,804号明細書;米国特許第2,953,839号明細書;米国特許第2,957,852号明細書;米国特許第2,962,470号明細書;米国特許第2,999,839号明細書および米国特許第3,009,901号明細書中に記載されているものがある。
【0019】
エラストマ糸コアのまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の糸は、20〜300デニール(22〜340dtex)の線密度を有し、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物からなる群から選択されている。一部の実施形態において、糸は、エラストマ糸コアのまわりに、1インチあたり5〜20回(1cmあたり2〜8回)の捲回頻度で捲回されている。1インチあたり20回(1cmあたり8回)超の捲回頻度は、所望のものより剛性の高い糸を結果としてもたらし、1インチあたり5回(1cmあたり2回)未満の捲回頻度は、エラストマ糸コアを適切に被覆しない。
【0020】
手袋
手袋は、編成中に手袋の内側にライニング糸が添え糸編みされ、一方耐切断性複合糸および随伴糸は編成中に手袋の外側に添え糸編みされるような形で構成されている。このような形で手袋を構成することで、複数の利点が得られる。こうして、手袋装着者には、二つの方法で、すなわち第一に装着者の皮膚と接触し耐切断性糸を皮膚から離隔させるライニング糸によって、そして第二に手袋全体にわたりライニング糸と耐切断性複合糸の間に無作為に位置づけされている随伴糸によって、耐切断性複合糸からの保護の改善が提供される。
【0021】
快適性を改善するために、好ましい実施形態において、随伴糸は、手袋の外側を形成する前に耐切断性複合糸と予備集合されない。これにより、随伴糸および耐切断性複合糸は、局所的な規模で互いとの関係において移動することができる。好ましい実施形態においては、随伴糸および耐切断性複合糸は、ファブリック内で共に連結されたり撚り合わされたりしていないことから、糸の表面に沿って層の内部を長手方向に互いに対して移動しないように制約を受けておらず、快適性および耐摩耗性を改善するため互いとの関係において移動することができる。
【0022】
さらに、随伴糸および耐切断性複合糸は、手袋中で同じ編成層内にあるが、その層内で局所的に移動して層の外側または内側のいずれかに移動できる。すなわち2本の糸は、随伴糸が、手袋のファブリック内において手袋内の耐切断性複合糸の内側または手袋内の耐切断性複合糸の外側のいずれかに優先的に配置されることなく、耐切断性複合糸の外側、内側および近傍に全体にわたって無作為に分布されるような形で編成されている。これにより、随伴糸は、耐切断性複合糸から手袋の内側に追加の被覆も提供して装着者に対するさらなる保護を追加しながら、手袋の外側から耐切断性複合糸に対する追加の耐摩耗性を同時に提供することができる。
【0023】
一部の好ましい実施形態においては、袖口のための何らかの特殊な処理は別にして、手袋全体は、耐切断性複合糸、随伴糸およびライニング糸の組合せを用いて編成されている。すなわち、図に示されているように、手袋1の全ての指部2および手袋の掌部分、側面および裏を形成する手袋の筒状部分3は、耐切断性複合糸、随伴糸およびライニング糸で構成される糸の組合せから形成されている。典型的には、手袋のスリーブすなわち袖口4は、所望される場合、追加のエラストマー糸を有することができ、袖口が異なる場合でもなお、3本の糸の組合せと、任意の追加の把持用または封止用糸または特徴とを含む。
【0024】
一実施形態において、これらの手袋は、手先の巧緻性が改善された、より軽量の耐切断性手袋が所望される場合に極めて適している。特に、手袋は、鋭い刃先を有する小さい物品を扱う際に有用である。一部の実施形態において、手袋は、1平方ヤードあたり7〜14オンス(1平方メートルあたり240〜475グラム)の編成ファブリック坪量を有する。一部の実施形態において、手袋はファブリック1平方ヤード1オンスあたり100グラム重以上(ファブリック1平方メートル1グラムあたり3グラム重以上)という耐切断性指数を有する。
【0025】
手袋の製造方法
一実施形態において、手袋は、最初に手袋内で使用される個々の糸を集合させて、耐切断性複合糸の第1のボビン、随伴糸の第2のボビンそしてライニング糸の第3のボビンを創製することによって製造可能である。3つの個々のボビンからの糸は次に、本質的に1つのステップで、株式会社島精機製作所製のもののような市販の手袋編機を用いて、手袋の形に直接共編成される。これらの機械は、個々の糸から完成した手袋を編成することができる。好ましい実施形態においては、個々の糸は、糸を諸撚りしたりその他の形で組合せたりすることなく、編機に補給される。ライナー糸は編機内に補給され、手袋の内側表面全体を通してライナー糸が添え糸編みされるように、糸が編成された時に耐切断性複合糸および随伴糸の前に来るような形で保持される。得られた手袋は、手袋の外側表面全体を通して耐切断性複合糸と随伴糸の混合物をそして手袋の内側表面全体を通してライナー糸を有する。
【0026】
コーティングされた手袋
手袋に対して追加の把持性能が所望される場合、手袋に可撓性ポリマーコーティングを施すことができる。一部の実施形態において、手袋には、ニトリル、ラテックス、ポリウレタン、ネオプレン、ゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択された外部合成ポリマーコーティングが施される。一般に、このようなコーティングは、手袋またはその一部分をポリマーメルトまたは溶液中に浸漬させ、次にコーティングを硬化させることにより適用される。
【0027】
試験方法
耐切断性。使用される方法は、「保護衣料で使用される材料の耐切断性を測定するための標準試験方法」ASTM規格F1790−97である。試験を実施するにあたっては、規定の力を受けた刃先を、マンドレル上に取付けられた試料を横断して一回引く。異なる複数の力で、最初の接触から切断(cut through)に至るまで引いた距離を記録し、切断に至るまでの距離の関数としての力についてグラフを作成する。このグラフから、25ミリメートルの距離での切断のための力を判定し、これを正規化してブレード供給の一貫性が正しいことを認証する。正規化された力は耐切断性力として報告される。刃先は、長さ70ミリメートルの鋭い刃を有するステンレス鋼のナイフブレードである。ブレード供給は、試験の開始時点と終了時点においてネオプレン較正材料上で400gの負荷を用いて較正される。切断試験(cut test)毎に新しい刃先を使用する。試料は、縦糸および横糸の両方から45度のバイアスで切断した50×100ミリメートルのファブリック矩形片である。マンドレルは、半径38ミリメートルの丸味ある導電性の棒であり、両面テープを用いてこれに試料を取り付ける。マンドレルの長手方向軸と直角に、マンドレル上のファブリックを横断して刃先を引く。刃先がマンドレルと電気的に接触した時に切断を記録する。本明細書中で報告されている通り、指数は好ましくは、グラム単位の切断力を平方ヤードあたりのオンス単位の坪量で除したものとして報告されるが、SI単位への換算も容易に行なわれる。
【0028】
摩耗性能。ファブリックの摩耗性能は、ASTM D−3884−01「繊維ファブリックの耐摩耗性に関する標準的指針(回転式プラットホーム、2重ヘッド方法)」にしたがって決定される。編成ファブリックを第1の穴まで摩耗させるためのサイクル数が、手袋ファブリックの耐摩耗性として記録される。
【実施例】
【0029】
耐切断性手袋は以下の方法で製造される。コア1インチあたり7回(1cmあたり3回)の捲回頻度で295dtex(266デニールまたは20/1綿番手)の1本のポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)ステープルスパン糸で捲回された110dtex(100デニール)のEグラスファイバの長手方向コアを有する耐切断性複合糸のボビンを作製した。295dtex(266デニールまたは20/1綿番手)のポリエステルステープル繊維糸で諸撚りされた40デニールのスパンデックスの長手方向コアを有するライニング糸のボビンを作製した。コア1インチあたり7回(1cmあたり3回)の捲回頻度で44dtex(40デニール)のテクスチャード加工された連続フィラメントナイロン糸を1回捲回することで、コアのラッピングを行なった。これら2つの糸ボビンからの糸を、167dtex(150デニール)のテクスチャード加工された連続フィラメントポリエステル糸の随伴糸ボビンからの糸と共に、糸の予備集合(すなわち諸撚り、より合せ)を全く行なわずに、添え糸編み能力を有する島精機製作所の13−ゲージ自動手袋編機の中に補給した。手袋の内側にライニング糸が添え糸編みされ、耐切断性複合糸および随伴糸が手袋の外側に添え糸編みされた状態で、手袋を製造した。手袋の特性を表に示す。
【0030】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コア糸、および前記コア糸のまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第1のラッピング糸を有する耐切断性複合糸であって、
前記コア糸は少なくとも1本の50〜200デニール(56〜220dtex)のガラス繊維フィラメント糸を含み、前記第1のラッピング糸は1本の100〜600デニール(110〜680dtex)のパラアラミド糸である、耐切断性複合糸と;
b)脂肪族ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された随伴糸と;
c)100〜500デニール(110〜560dtex)の複合糸を含むライニング糸であって、前記複合糸が少なくとも1本のエラストマ糸を含むエラストマ糸コアと、前記糸コアのまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第2のラッピング糸とを有するライニング糸であって、
前記第2のラッピング糸は、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された、少なくとも1本の20〜300デニール(22〜340dtex)の糸を含んでいる、ライニング糸と;
を含む耐切断性編成手袋であって、
前記耐切断性複合糸、前記随伴糸および前記ライニング糸は、前記ライニング糸が前記手袋の内側に添え糸編みされ、前記耐切断性複合糸と随伴糸が前記手袋の外側を形成している状態で、前記手袋の形に共編成されている、耐切断性編成手袋。
【請求項2】
前記パラアラミド糸がステープル繊維または連続フィラメントを含む、請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項3】
前記パラアラミドがポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)である請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項4】
前記エラストマ糸がスパンデックス糸である、請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項5】
前記エラストマ糸が、最高100デニール(110dtex)の線密度を有する、請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項6】
ファブリック1平方ヤード1オンスあたり100グラム重以上(ファブリック1平方メートル1グラムあたり3390グラム重以上)という耐切断性指数をさらに有する、請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項7】
1平方ヤードあたり7〜14オンス(1平方メートルあたり240〜475グラム)の編成ファブリック坪量を有する、請求項6に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項8】
ニトリル、ラテックス、ポリウレタン、ネオプレン、ゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択された外部合成ポリマーコーティングをさらに含む、請求項1に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項9】
a)コア糸、および前記コア糸のまわりにらせん状に捲回された少なくとも1本の第1のラッピング糸を有する耐切断性複合糸であって、
前記コア糸は少なくとも1本の50〜200デニール(56〜220dtex)のガラス繊維フィラメント糸を含み、前記第1のラッピング糸は1本の100〜600デニール(110〜680dtex)のポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)糸である、耐切断性複合糸と;
b)脂肪族ポリアミド、ポリエステルおよびそれらの混合物からなる群から選択された随伴糸と;
c)100〜500デニール(110〜560dtex)の複合糸を含むライニング糸であって、前記複合糸が少なくとも1本のスパンデックス糸を含むスパンデックス糸コア(前記糸コアは最高75デニール(84dtex)の綿密度を有する)と、脂肪族ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、セルロース系繊維およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1本の第2の20〜300デニール(22〜340dtex)のラッピング糸(前記少なくとも1本の第2のラッピング糸は前記糸コアのまわりにらせん状に捲回されている)とを有する、ライニング糸と;
を含む耐切断性編成手袋であって、
前記耐切断性複合糸、前記随伴糸および前記ライニング糸は、前記ライニング糸が前記手袋の内側に添え糸編みされ、前記耐切断性複合糸と随伴糸が前記手袋の外側を形成している状態で、前記手袋の形に共編成されている、耐切断性編成手袋。
【請求項10】
ファブリック1平方ヤード1オンスあたり100グラム重以上(ファブリック1平方メートル1グラムあたり3グラム重以上)という耐切断性指数をさらに有する、請求項9に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項11】
1平方ヤードあたり7〜14オンス(1平方メートルあたり240〜475グラム)の編成ファブリック坪量を有する、請求項10に記載の耐切断性編成手袋。
【請求項12】
ニトリル、ラテックス、ポリウレタン、ネオプレン、ゴムおよびそれらの混合物からなる群から選択された外部合成ポリマーコーティングをさらに含む、請求項11に記載の耐切断性編成手袋。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515856(P2012−515856A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548038(P2011−548038)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/021119
【国際公開番号】WO2010/085421
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】