説明

グラビアオフセット印刷用凹版およびそれを用いた印刷配線基材の製造方法ならびに印刷配線基材

【課題】インキ内部または凹版のパターン部内で発生した気泡による断線やピンホールの発生を防止し、高精細な配線パターンを備える印刷配線基材を安定的に供給するためのグラビアオフセット印刷用凹版を提供する。
【解決手段】配線パターンを形成するためのパターン部411を有するグラビアオフセット印刷用凹版410において、パターン部411のうち、グラビアオフセット印刷用凹版410の縦方向の終端部403が、パターン主部401と、パターン主部401からパターン主部401の外側に向かって延設されたパターン側部402とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアオフセット印刷に用いられる凹版、及びこの凹版を用いたグラビアオフセット印刷による印刷配線基材の製造方法、並びに配線パターンを備える印刷配線基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建材分野、パッケージ分野、出版分野、エレクトロニクス分野など生活系、電気系、情報系さまざまな分野における工業製品の製造方法として、グラビアオフセット印刷を用いるケースが増加している。グラビアオフセット印刷とは、印刷対象物の表面に各種インキ、樹脂、導電ペーストなどの各種の粘度の高い塗布材料を用いて、広範囲に高解像力、高寸法精度のある優れた画像を安定的に印刷するための技術である。
【0003】
グラビアオフセット印刷の工程は、一般に図1のように、ガラス、樹脂、金属などで作製されたグラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104内に、ドクター、スキージまたはスクレーパー103によってインキ102を充填する工程(工程1)と、そのパターン部104内にインキ102が充填されたグラビアオフセット印刷用凹版101上に、表面をシリコーンなどの樹脂で形成された転写層112を備える転写体111を接触させながら回転させ、該転写層112上にインキ皮膜113を転移させる工程(工程2)と、該転写体112を被印刷体121に圧着し、転写層112上に残るインキ皮膜113の印刷パターン122を被印刷体112に転写する工程(工程3)とを具備する転写印刷法であり、被印刷体の表面に各種インキ、樹脂、導電ペーストなどの粘度の高い塗布材料を高解像、高寸法精度で、広範囲に印刷することが可能である。
【0004】
グラビアオフセット印刷により、ICカードアンテナ(コイル状のパターン)や太陽電池バックシートの導配線、電磁波シールド、タッチパネル用の「信号取出し配線」等を、導電性インキ、導電性ペースト等を用いて、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル等からなるシート上に広範囲の面積に高精細に印刷する場合、下記のような機能が要求される。
[1]広範囲に均一かつ安定した高精細な細線の印刷を可能にすること。
[2]被印刷体に印刷された細線が、断線、ショートしないこと。
[3]安定した膜厚の細線を印刷できること。
【0005】
上記機能を達成するために、例えば、引用文献1には、厚膜印刷、特に微細画像、あるいはベタ像など、ピンホール、断線をきらうパターン形成において、オフセツト方式による重ね刷りを採用することにより、細線の不連続、版の目詰まりによるピンホール、印刷パターンの伸び縮みを防止することが記載されている。
【0006】
一方、上記の機能を有するグラビアオフセット印刷を用いて細線のパターンを量産するためには、インキ剥離性を有する転写層上に、凹版が備える所望のパターン部内に満たされたインキを確実に転移させることが必要となる。また、無断線の細線のパターンを形成するには、予めドクター、スキージまたはスクレーパーなどで所望のパターン部内にインキを充填し、そのパターン部内に満たされたインキ面を平滑にし、インキ剥離性の転写層を有する転写体との圧着時に、そのインキ面が均等に転写体と接触することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−5856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、凹版のパターン部内のインキを転写層への転写の際に、インキ面と転写層の表面が均等に接すれば接するほどに、インキに内包されているまたは凹版のパターン部内で発生した気泡が逃げ場を失い、被印刷体に転写された細線のパターンの断線やピンホールが発生してしまうという不具合が生じる。この課題は、グラビアオフセット印刷において、高精細な細線のパターンを形成しようとするほど顕著になる。一方、特許文献1に記載の方法では、版の目詰まりによるピンホールを防止することができても、発生した気泡によるピンホールを防止することはできない。そこで、本発明は、インキ内部または凹版のパターン部内で発生した気泡による断線やピンホールの発生を防止し、高精細な配線パターンを備える印刷配線基材を安定的に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、配線パターンを形成するためのパターン部を有するグラビアオフセット印刷用凹版であって、前記パターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向の終端部が、パターン主部と、前記パターン主部から前記パターン主部の外側に向かって延設されたパターン側部とからなることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用凹版である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記パターン側部の側壁と前記パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項2に記載のグラビアオフセット印刷用凹版である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用凹版である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、グラビアオフセット印刷によって形成された配線パターンを備える印刷配線基材であって、前記配線パターンのうち、印刷配線基材の縦方向の終端部が、配線パターン主部と、前記配線パターン主部の外側に向かって延設された配線パターン側部とからなることを特徴とする印刷配線基材である。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記配線パターン側部が、前記配線パターン主部から前記配線パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項5に記載の印刷配線基材である。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、前記配線パターン側部の側線と前記配線パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項6に記載の印刷配線基材である。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、前記配線パターン側部が、前記配線パターン主部から前記配線パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項5に記載の印刷配線基材である。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、グラビアオフセット印刷によって形成された配線パターンを備える印刷配線基材の製造方法であって、配線パターンを形成するためのパターン部を有するグラビアオフセット印刷用凹版であって、前記パターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向の終端部が、パターン主部と、前記パターン主部からパターン主部の外側に向かって延設されたパターン側部とからなるグラビアオフセット印刷用凹版にインキを充填する工程と、前記グラビアオフセット印刷用凹版上で、前記グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向に転写層を有する転写体を回転及び移動させて、前記転写層上にインキ皮膜を形成する工程と、前記インキ皮膜を基材上に転写させて、配線パターンを形成する工程とを備えることを特徴とする印刷配線基材の製造方法である。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項9に記載の印刷配線基材の製造方法である。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、前記パターン側部の側壁と前記パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項10に記載の印刷配線基材の製造方法である。
【0020】
また、請求項12に記載の発明は、前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項9に記載の印刷配線基材の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のグラビアオフセット印刷用凹版を用いることで、基材上に形成された配線パターンの気泡起因の断線やピンホールが減少し、配線抵抗値の増加を抑えることが可能となり、作製される印刷配線基材の収率を著しく増加させることができる。また、気泡の影響は高精細の配線の際に特に大きいため、本発明のグラビアオフセット印刷用凹版を用いることで、高精細の配線パターンを安定的に形成することが可能となる。一方、本発明の印刷配線基材は、実際に通電に影響する配線パターン主部における気泡起因の断線やピンホールが少ないため、配線抵抗値の小さい高精細の配線パターンを備える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一般的なグラビアオフセット印刷の工程図である。
【図2】従来の形状からなるパターン部を備えるグラビアオフセット印刷用凹版の上面図である。
【図3】図2のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部の終端部を示した上面図である。
【図4】本発明のグラビアオフセット印刷用凹版の一実施形態であるパターン部の終端部を示した上面図である。
【図5】本発明のグラビアオフセット印刷用凹版の一実施形態であるパターン部の終端部を示した上面図である。
【図6】本発明の印刷配線基材の一実施形態である配線パターンの終端部を示した上面図である。
【図7】本発明の印刷配線基材の一実施形態である配線パターンの終端部を示した上面図である。
【図8】テスト用のパターン部を備えるグラビアオフセット印刷用凹版の上面図である。
【図9】実施例用のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部の終端部を示した上面図である。
【図10】比較例用のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部の終端部を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に記載する実施形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の実施形態の範囲に含まれうるものである。
【0024】
[グラビアオフセット印刷の工程]
本発明の実施形態に係るグラビアオフセット印刷の工程について、前述の一般的なグラビアオフセット印刷の工程図である図1を参照しながら説明する。
【0025】
まず、図1の工程1に示すように、グラビアオフセット印刷用凹版101上にインキ102を乗せ、ドクター、スキージまたはスクレーパー103にてインキ102を一定の圧力で図中の矢印の方向に転がしながらグラビアオフセット印刷用凹版101上を移動させることで、グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104内にインキ102を充填する。
【0026】
この際、グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104は、幅が10μmから5mm程度、深さが5μmから20μm程度の溝によって形成される。本発明は、特に幅が10μmから100μm程度の溝を備えるグラビアオフセット印刷用凹版に対して有効であり、幅が10μmから100μm程度の溝を備えるグラビアオフセット印刷用凹版が後述する気泡集積部を備えることにより、気泡起因の断線を防止することができる。
【0027】
また、グラビアオフセット印刷用凹版101はその表面が平滑であることが望ましい。これにより、マスク表面にインキ漏れを起こす事無く印刷可能である。また、ドクター欠けなどの異常の抑制にもなる。ここで、グラビアオフセット印刷用凹版101の表面とは、グラビアオフセット印刷用凹版101におけるドクター、スキージまたはスクレーパー103と接触する表面、又は、グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104(溝)の内側表面のことをいう。なお、グラビアオフセット印刷用凹版101の表面は、租面研磨加工、鏡面研磨加工、超精密研磨加工(ラッピングやポリシング)によって平滑にすることができる。
【0028】
グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104の形成方法としては、エッチング法、電鋳法、サンドブラスト法などが挙げられる。これらの形成方法による加工性という点から、グラビアオフセット印刷用凹版101はガラス又は銅、ニッケルなどの金属であることが望ましい。また、表面にクロムやカーボンによる耐擦性皮膜を形成している事が望ましい。
【0029】
また、ドクター、スキージまたはスクレーパー103には、グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104内にインキ102を充填しかつグラビアオフセット印刷用凹版101上のインキ102を掻き取る必要があることから、ある程度のしなりが求められる。よって、ドクター、スキージまたはスクレーパー103は、ステンレスなどの金属、またはウレタンなどの樹脂、セラミックであることが望ましい。
【0030】
次に、図1の工程2に示すように、転写層112を有する転写体111を、パターン部104にインキ102が充填されたグラビアオフセット印刷用凹版101上で回転及び移動させて、グラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104内のインキ102を転写層112に転写し、転写層112上にインキ皮膜113が形成される。転写層112を形成する材料としては、公知の材料を用いることができるが、その中でもシリコーンゴムが望ましい。
【0031】
この際に、断線のない配線パターンを形成するためには、転写層112の表面とグラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104に充填されたインキ102面とが接触面内で均等に接している必要がある。しかしながら、それにより、インキ102内部またはグラビアオフセット印刷用凹版101のパターン部104内で発生した気泡が逃げ道をなくし、転写層112上に形成されたインキ皮膜113内にその気泡が残存することで、その後転写されるインキ皮膜113の配線パターンに断線、ピンホールが頻発する。
【0032】
例えば、図2に示すような従来の形状のパターン部211を備えるグラビアオフセット印刷用凹版210を用いて、Y方向に転写体を移動させた場合、図3に示した図2中の破線で囲まれたパターン部211の終端部203(図2に示したパターン部211のうちのY方向の終端部)の角部305に気泡が集中してしまい、その後形成された配線パターンに断線が発生する確率が高くなる。また、断線が発生しなかったとしても、角部305に充填されたインキが転写された部分の配線パターンが極端に細くなってしまい、抵抗値の増大、発熱などの問題が発生する。
【0033】
そこで、本発明のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部は、例えば、図4に示すように、パターン部411のうちのY方向の終端部403が、パターン主部401(図3のパターン部211の終端部203に相当する部分)と、パターン主部401からパターン主部401の外側に向かって延設されたパターン側部402とから構成される。これにより、Y方向に転写体を移動させた場合に、パターン部411で発生した気泡を、転写体とグラビアオフセット印刷用凹版との間の圧力移動とともにパターン主部401の外側に延設されたパターン側部402に向かって移動させ、パターン側部402に気泡を集積することができる。
【0034】
ここで、パターン主部とは、実際に通電する配線パターンの一部分を形成するためのグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部である。また、パターン側部とは、実際に通電に影響がない配線パターンの一部分を形成するためのグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部であって、パターン主部の外側に向かって延設され、パターン主部で発生した気泡を集積するものである。また、パターン部の終端部とは、パターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版上を回転する転写体の移動方向の終端に相当する部分であり、特に、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向の終端部のことをいう。なお、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向は、グラビアオフセット印刷用凹版上を回転する転写体の移動方向と略同方向である。
【0035】
特に、グラビアオフセット印刷用凹版のパターン部のうち、転写体の移動方向の終端部に、転写体の移動方向と略垂直なパターン主部がある場合、そのパターン主部の幅方向の外側に向かって、例えば、図4に示すようなパターン側部402を延設することが望ましい。パターン主部が転写体の移動方向と略垂直であると、パターン部内で発生した気泡がパターン主部の幅方向の外側に向かって集中することから、そのパターン主部の幅方向の外側に向かってパターン側部を延設することで、パターン側部に気泡を集積することができる。なお、この場合、パターン側部の形状は、図4に示すようなパターン側部402に限定されず、例えば、パターン側部402の終端部405が、パターン主部401の略中央からパターン主部401の幅方向の外側に向かって延設された形状であってもよい。
【0036】
特に、図4に示すように、転写体の移動方向(Y方向)と略垂直なパターン主部401がある場合、パターン側部402の側壁404とパターン主部401の長手方向(X方向)とがなす角度(A)が、1度以上20度以下であることが望ましい。この角度の範囲であると、転写体とグラビアオフセット印刷用凹版との間の圧力移動とともに側壁404に沿って気泡が移動し、最終的にパターン側部402の終端部405に気泡を集中的に集積させることができる。
【0037】
また、本発明のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部は、図5に示すように、転写体の移動方向(Y方向)におけるパターン部511の終端部503に、パターン主部501と、パターン主部501からパターン主部501の長手方向の外側に向かって延設されたパターン側部502とから構成されてもよい。これは、転写体の移動方向(Y方向)の終端部に設けられたパターン主部が、転写体の移動方向と垂直でない場合に有効であり、パターン部511で発生した気泡がパターン主部501の側壁504に沿って移動し、最後にパターン側部502に集中する。
【0038】
本発明のグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部における転写体の移動方向の終端部は、少なくとも、通電する配線パターンの一部分を形成するためのパターン主部と、パターン主部からパターン主部の外側に向かって延設され、パターン主部で発生した気泡を集積するためのパターン側部とから構成されていればよく、図4、5に示したパターン主部とパターン側部に限定されない。また、パターン側部の形状は、パターン部で発生した気泡を転写体とグラビアオフセット印刷用凹版との間の圧力移動とともにパターン側部に集積させることができれば特に限定されない。特に、パターン側部の形状は、図4に示したパターン側部402の終端部405のように、パターン側部のうちの一箇所に集中して気泡を集積させることができる形状であることが望ましい。
【0039】
最後に、図1の工程3に示すように、被印刷体121上に転写体111を転がしインキ皮膜113を転写することで印刷パターン122が形成され、印刷配線基材が得られる。
【0040】
[印刷配線基材]
上記のグラビアオフセット印刷の工程によって得られた印刷配線基材は、配線パターン主部と配線パターン主部の外側に向かって延設された配線パターン側部とからなる終端部を印刷配線基材の縦方向に有する配線パターンを備える。ここで、配線パターン主部とは、実際に通電する配線パターンのことをいう。また、配線パターン側部とは、実際に通電に影響がない配線パターンのことをいう。また、配線パターンの終端部とは、グラビアオフセット印刷用凹版のパターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版上を回転する転写体の移動方向の終端に相当する部分によって形成される配線パターンの部分であり、印刷配線基材の縦方向の終端部のことをいう。なお、印刷配線基材の縦方向は、グラビアオフセット印刷用凹版上を回転する転写体の移動方向と略同方向である。
【0041】
配線パターン主部は、例えば、図4、5のパターン主部401、501に充填されたインキを、転写体を介して被印刷体に転写させて形成されたものである。また、配線パターン側部は、例えば、図4、5のパターン側部402、502に充填されたインキを、転写体を介して被印刷体に転写させて形成されたものである。したがって、配線パターン主部は、グラビアオフセット印刷用凹版のパターン部で発生した気泡の影響が軽減され、配線パターン主部の断線やピンホールを防止することができる。一方、配線パターン側部は実際に通電に影響がない配線パターンの一部分であるから、配線パターン側部がグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部で発生した気泡が集積されたパターン側部からのインキの転写によって形成されても、配線パターンの通電に影響はない。
【0042】
印刷配線基材の配線パターンは、図4で示したパターン主部401、パターン側部402と同様に、図6に示した印刷配線基材612の配線パターン613の終端部603のうち、印刷配線基材612の縦方向(Y方向)と略垂直な配線パターン主部601がある場合、配線パターン主部601の幅方向の外側に向かって配線パターン側部602が延設されていることが望ましい。これにより、配線パターン主部601に対するグラビアオフセット印刷用凹版のパターン部で発生した気泡の影響が軽減され、配線パターン主部601の断線やピンホールを防止することができる。なお、この場合、配線パターン側部の形状は、図6に示すような配線パターン側部602に限定されず、例えば、配線パターン側部602の終端部が、配線パターン主部601の略中央からパターン主部601の幅方向の外側に向かって延設された形状であってもよい。
【0043】
特に、配線パターン側部602の側線604と配線パターン主部601の長手方向(X方向)とがなす角度(A)が、1度以上20度以下であることが望ましい。この角度の範囲であると、配線パターン側部のみに気泡の影響を集中させることができ、配線パターン主部601の断線やピンホールを防ぐことができる。
【0044】
また、印刷配線基材の配線パターンは、図5で示したパターン主部501、パターン側部502と同様に、図7に示した印刷配線基材712の配線パターンの終端部703のうち、印刷配線基材712の縦方向(Y方向)と垂直でない配線パターン主部701がある場合、配線パターン主部701と、配線パターン主部701から配線パターン主部701の長手方向の外側に向かって延設された配線パターン側部702を有していてもよい。これにより、配線パターン側部702のみに気泡の影響を集中させることができ、配線パターン主部の断線やピンホールを防ぐことができる。
【0045】
本発明の印刷配線基材の配線パターンにおける印刷配線基材の縦方向の終端部は、少なくとも、通電する配線パターン主部と、配線パターン主部から配線パターン主部の外側に向かって延設され、気泡が集積された配線パターン側部とから構成されていればよく、図6、7に示した配線パターン主部と配線パターン側部に限定されない。また、配線パターン側部の形状は、気泡が集積されることができれば特に限定されない。
【実施例】
【0046】
まず、テスト用のパターン部を備えるグラビアオフセット印刷用凹版を、実施例用と比較例用の2種用意した。図8にそのグラビアオフセット印刷用凹版の概略を示す。グラビアオフセット印刷用凹版810は、縦が120mm、横が120mm、高さが3mmのガラスを用いて、エッチングにてパターン部811を形成したものである。パターン部811の幅は30μmであり、サーペンタイン形状をしている。パターン部811の深さは10μmである。また、パターン部811の両端には断線チェック用の電極パターン部814を有する。
【0047】
図8中の破線で囲まれたパターン部811は、3種類のパターン部の終端部803a、803b、803cからなっており、パターン部の終端部803a、803b、803cが、実施例用と比較例用の2種のグラビアオフセット印刷用凹版のテスト用のパターン部で異なる。この2種のグラビアオフセット印刷用凹版を用いて、ポリエチレンテレフタレート基材上に導電性銀ペーストによる配線パターンを形成するために、グラビアオフセット印刷を行った。
【0048】
ポリエチレンテレフタレート基材は、厚さが188μm、縦が120mm、横が120mmのものを使用した。また、導電性銀ペーストとして、レオロジー測定装置で角速度10rad/秒で、9.5Pa.sのインキを使用した。また、インキ剥離性の転写体は、金陽社製のシリコーンゴムを主体とするゴム硬さ(JIS A)45°、ゴム厚さ 0.6mmを円筒に巻いたものを使用した。また、ドクターは、MDC社製ドクターブレードのレギュラータイプを使用した。
【0049】
グラビアオフセット印刷装置は、一般に使用されている印刷装置を使用した。印刷条件は、ドクター速度が50mm/秒、転写体速度が50mm/秒とし、転写体と凹版の接触幅、転写体とポリエチレンテレフタレート基材の接触幅は一律で10mmとした。
【0050】
印刷配線基材は以下の工程により作製した。まず、用意したグラビアオフセット印刷用凹版810のパターン部に上記導電性銀ペーストをドクターによって充填した。次に、インキが充填されたグラビアオフセット印刷用凹版810上で、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向(Y方向)に上記転写体を回転及び移動させて、シリコーンゴム上に導電性銀ペーストの皮膜を形成した。最後に、導電性銀ペーストの皮膜が形成された転写体をポリエチレンテレフタレート基材の縦方向に回転及び移動させて、ポリエチレンテレフタレート基材上に導電性銀ペーストの皮膜を転写し、配線パターンを形成した。
【0051】
[実施例]
実施例用のグラビアオフセット印刷用凹版のテスト用のパターン部の終端部803a、803b、803cは、図9に示す形状となっており、パターン主部からパターン主部の外側に向かって延設されたパターン側部902a、902b、902cを具備している。このグラビアオフセット印刷用凹版を用いて、ポリエチレンテレフタレート基材上に導電性銀ペーストによる配線パターンを形成した。なお、パターン側部902cは、パターン主部からパターン主部の幅方向の外側に向かって延設されるものに相当する。
【0052】
[比較例]
比較例用のグラビアオフセット印刷用凹版のテスト用のパターン部の終端部803a、803b、803cは、図10に示す形状となっており、図9で示したパターン側部902a、902b、902cを具備していない。このグラビアオフセット印刷用凹版を用いて、ポリエチレンテレフタレート基材上に導電性銀ペーストによる配線パターンを形成した。
【0053】
上記条件において、実施例用と比較例用のグラビアオフセット印刷用凹版にてグラビアオフセット印刷を行い、実施例と比較例の印刷配線基材を各20枚作製した。実施例と比較例の印刷配線基材の配線パターンについて、テスターを用いて断線の確認を行ったところ、実施例の印刷配線基材は、全数理論値に近い抵抗値が測定された。一方、比較例の印刷配線基材は、7割程度が断線してしまい、残りの印刷配線基材も抵抗値が増加していた。
【0054】
比較例の印刷配線基材を顕微鏡にて確認したところ、断線は全て配線パターンの終端部にて発生していた。よって、実施例用のグラビアオフセット印刷用凹版のように、パターン部の終端部にパターン主部からパターン主部の外側にパターン側部を延設することにより、それにより形成された配線パターンの断線の軽減が可能ということが確認された。本発明のグラビアオフセット印刷用凹版を用いることで、高精細な配線パターンを形成する場合においても収率良く安定して印刷配線基材を作製することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
101・・・グラビアオフセット印刷用凹版
102・・・インキ
103・・・ドクター、スキージまたはスクレーパー
104・・・パターン部
111・・・転写体
112・・・転写層
113・・・インキ皮膜
121・・・被印刷体
122・・・印刷パターン
203・・・パターン部の終端部
210・・・グラビアオフセット印刷用凹版
211・・・パターン部
305・・・角部
401・・・パターン主部
402・・・パターン側部
403・・・パターン部の終端部
404・・・側壁
405・・・パターン側部の終端部
410・・・グラビアオフセット印刷用凹版
411・・・パターン部
501・・・パターン主部
502・・・パターン側部
503・・・パターン部の終端部
504・・・側壁
510・・・グラビアオフセット印刷用凹版
511・・・パターン部
601・・・配線パターン主部
602・・・配線パターン側部
603・・・配線パターンの終端部
604・・・側線
612・・・印刷配線基材
613・・・配線パターン
701・・・配線パターン主部
702・・・パターン側部
703・・・配線パターンの終端部
712・・・印刷配線基材
713・・・配線パターン
803a、803b、803c・・・パターン部の終端部
810・・・グラビアオフセット印刷用凹版
811・・・パターン部
814・・・電極パターン部
902a、902b、902c・・・パターン側部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンを形成するためのパターン部を有するグラビアオフセット印刷用凹版であって、
前記パターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向の終端部が、パターン主部と、前記パターン主部から前記パターン主部の外側に向かって延設されたパターン側部とからなることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項2】
前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項3】
前記パターン側部の側壁と前記パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項2に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項4】
前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項5】
グラビアオフセット印刷によって形成された配線パターンを備える印刷配線基材であって、前記配線パターンのうち、印刷配線基材の縦方向の終端部が、配線パターン主部と、前記配線パターン主部の外側に向かって延設された配線パターン側部とからなることを特徴とする印刷配線基材。
【請求項6】
前記配線パターン側部が、前記配線パターン主部から前記配線パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項5に記載の印刷配線基材。
【請求項7】
前記配線パターン側部の側線と前記配線パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項6に記載の印刷配線基材。
【請求項8】
前記配線パターン側部が、前記配線パターン主部から前記配線パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項5に記載の印刷配線基材。
【請求項9】
グラビアオフセット印刷によって形成された配線パターンを備える印刷配線基材の製造方法であって、
配線パターンを形成するためのパターン部を有するグラビアオフセット印刷用凹版であって、前記パターン部のうち、グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向の終端部が、パターン主部と、前記パターン主部からパターン主部の外側に向かって延設されたパターン側部とからなるグラビアオフセット印刷用凹版にインキを充填する工程と、
前記グラビアオフセット印刷用凹版上で、前記グラビアオフセット印刷用凹版の縦方向に転写層を有する転写体を回転及び移動させて、前記転写層上にインキ皮膜を形成する工程と、
前記インキ皮膜を基材上に転写させて、配線パターンを形成する工程と
を備えることを特徴とする印刷配線基材の製造方法。
【請求項10】
前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の幅方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項9に記載の印刷配線基材の製造方法。
【請求項11】
前記パターン側部の側壁と前記パターン主部の長手方向とがなす角度が、1度以上20度以下であることを特徴とする請求項10に記載の印刷配線基材の製造方法。
【請求項12】
前記パターン側部が、前記パターン主部から前記パターン主部の長手方向の外側に向かって延設されることを特徴とする請求項9に記載の印刷配線基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115237(P2013−115237A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260112(P2011−260112)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】