説明

グラビアロール及び塗布方法

【課題】
耳高現象を抑制し、かつ塗布幅方向の厚みプロファイルを均一にすることができるグラビアロール、及び該グラビアロールを用いた塗布方法を提供する。
【解決手段】
ロール周面にセルが形成されているグラビアロールであって、
該グラビアロールの回転軸方向の少なくとも一方の端部に、該グラビアロールの回転軸方向における中心のセル容積に対し、セル容積が0.90倍以下となっている領域があり、
該セル容積が0.90倍以下となっている領域の平均セル容積(Vb)と、該セル容積が0.90以下となっている領域を除く領域の平均セル容積(Va)との比(Vb/Va)が、0.70〜0.90である、グラビアロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアロール及びそれを用いた塗布方法に関し、詳しくは端部盛り上がり(耳高)を防止したグラビアロールと、そのグラビアロールを用いた塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアロールは塗布方式の1つとして一般的に知られており、特に薄膜の均一な塗布に好適である。グラビアロールはロールの周面にセルが形成されたロールで、このグラビアロールに供給された塗布液はセルに一旦保持された後、連続搬送する基材にグラビアロールが接触することによってセル内の塗布液が基材上に塗布される。
【0003】
一般的な塗布方式の1つとして、基材に塗布液を塗布するに際し、塗布液が基材裏面側へ回り込むのを防ぐために、塗布幅を基材幅より小さくして、基材の両端部に非塗布部を設ける塗布方式が広く採用されている。このような基材の両端部に非塗布部を設ける塗布方式においては、塗布層の端部が盛り上がる、いわゆる「耳高」が生じることが知られている。
【0004】
耳高の発生は、外観上問題となるばかりでなく、様々な問題を引き起こす場合がある。例えば、耳高は乾燥負荷を著しく増大させるため端部が未乾燥となることがあり、この端部未乾燥部は、乾燥工程や巻き取り工程の搬送ローラを汚染するという問題、あるいは巻き取りロールが未乾燥部でブロッキングを起こし巻き取りロールの巻き出し時に破断するという問題を引き起こすことがある。また、耳高が発生した基材をロール状に巻取ると、耳高部に応力が集中し、巻き取りロールが形崩れを起こしたり、基材が破断することがある。更にまた、耳高が発生した巻き取りロールは、次工程への適用に支障をきたす場合がある。
【0005】
上記の耳高は、グラビアロールを用いた塗布においても同様に問題となっていた。特にロールの周面に螺旋状の斜線型セルが形成されたグラビアロールの場合、グラビアロールに供給された塗布液は螺旋状の斜線型セルに沿って片側に流動するため、片側の端部で塗布量が部分的に多くなって、上記した耳高現象が起こりやすいという問題があった。
【0006】
グラビアロールにおいて上記の耳高現象を防止するために、中央部の溝や凹部(セル)の深さに対して端部の溝や凹部の深さを浅くしたグラビアロールもしくは塗工用バーが、特許文献1及び特許文献2に開示されている。また、グラビアロールの溝(セル)の傾斜角度を端部で小さくすることが特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭61−75870号公報
【特許文献2】特開2007−61709号公報
【特許文献3】特開平11−5052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示されているように、単に端部の溝や凹部の深さを浅くしたり、溝の傾斜角度を小さくしただけでは、十分に耳高現象を防止することができなかったり、あるいは耳高現象を防止することができても塗布幅方向の厚みプロファイルを均一に形成できないという問題(中央部に対して端部の塗布厚みが小さくなり過ぎるという問題)がある。上記の中央部と端部の厚み差が大きくなると、反射色ムラとなって現れることがあり、この反射色ムラは光学フィルムにおいて品質上問題となるものである。
【0009】
従って、本発明の目的は、上述した従来技術の課題に鑑み、耳高現象を抑制し、かつ塗布幅方向の厚みプロファイルを均一にすることができるグラビアロール、及び該グラビアロールを用いた塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
1)ロール周面にセルが形成されているグラビアロールであって、
該グラビアロールの回転軸方向の少なくとも一方の端部に、該グラビアロールの回転軸方向における中心のセル容積に対し、セル容積が0.90倍以下となっている領域があり、
該セル容積が0.90倍以下となっている領域の平均セル容積(Vb)と、該セル容積が0.90以下となっている領域を除く領域の平均セル容積(Va)との比(Vb/Va)が、0.70〜0.90である、グラビアロール。
2)前記セルが斜線型セルである、前記1)に記載のグラビアロール。
3)前記1)または2)に記載のグラビアロールを用いたことを特徴とする、リバースグラビア塗布方法。
4)前記塗布方法により塗布される塗布液がハードコート層形成用塗布液である、前記3)に記載のリバースグラビア塗布方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耳高現象を抑制し、かつ塗布幅方向の厚みプロファイルを均一にすることができるグラビアロールを提供することができる。本発明のグラビアロールを用いた塗布方法を採用することにより、耳高の発生が抑制されるので、乾燥工程における耳高部の未乾燥による諸問題、例えば未乾燥部分が乾燥工程や巻き取り工程の搬送ローラを汚染するという問題、巻き取りロールが未乾燥部でブロッキングを起こし巻き取りロールの巻き出す時に破断するという問題等が解消される。また、耳高が発生した基材をロール状に巻取ると、耳高部に応力が集中し、巻き取りロールが型崩れを起こしたり、基材が破断することがあるが、本発明の塗布方法はこれらの問題も解消することができる。また更に、本発明の塗布方法は、耳高の発生が抑制されるので、巻き取りロールを次工程で支障なく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のグラビアロールの一例の部分模式断面図。
【図2】図1の円で囲んだ部分の拡大図。
【図3】本発明のグラビアロールの他の態様を示す部分模式断面図。
【図4】本発明のグラビアロールを用いたリバースグラビア塗布装置の一例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
グラビアロールはロールの周面にセルが形成されたものである。グラビアロールを用いた塗布方式では、グラビアロールに供給された塗布液はセルに一旦保持された後、連続搬送する基材にグラビアロールが接触してセル内の塗布液が基材上に塗布される。
【0014】
本発明のグラビアロールにおいて、セルの形状は特に限定されず、例えば一般的に知られている、斜線型、格子型(矩形状)、ハニカム型(亀甲型)、ピラミッド型等を採用することができる。
【0015】
本発明は、特に斜線型セルのグラビアロールに好適である。以下、斜線型セルのグラビアロールにて本発明を詳細に説明する。
【0016】
斜線型セルのグラビアロールは、ロール周面に螺旋状の斜線彫刻溝からなるセルが形成されたものであり、グラビア塗布方式に一般的に用いられているグラビアロールである。
【0017】
本発明は、グラビアロールの回転軸方向における少なくとも一方の端部の平均セル容積と、その他の部分の平均セル容積との比率を特定の比率とすることにより、前述した耳高現象の抑制と塗布幅方向の厚みプロファイルの均一化が図られることを見いだしたものである。
【0018】
具体的には、グラビアロールの回転軸方向の少なくとも一方の端部に、グラビアロールの回転軸方向における中心のセル容積に対し、セル容積が0.90倍以下となっている領域(以下、端部Bとする)を設け、この端部Bを除く領域を内側領域Aとしたとき、端部Bの平均セル容積(Vb)と内側領域Aの平均セル容積(Va)との比(Vb/Va)を0.70〜0.90とすることにより、耳高現象の抑制と塗布幅方向の厚みプロファイルの均一化が図られる。
【0019】
図1は、本発明のグラビアロールの一例の部分模式断面図であり、図2は図1の円で囲んだ部分の拡大図である。図1、図2において、グラビアロール1は、ロール周面に螺旋状の斜線彫刻溝からなるセル2(斜線表示)が設けられている。グラビアロール1の回転軸3と同方向における一方の端部Bの平均セル容積(Vb)は、端部Bより内側の領域(内側領域A)の平均セル容積(Va)より小さく、かつその比率(Vb/Va)が0.70〜0.90となるように形成されている。
【0020】
ここで、ある位置におけるセル容積は、例えば斜線型セルの場合はセルの断面積と線数から以下の式1より求めることができる。
・V=D×L×25.4×1.55 ・・・・ 式1
式中、Vは測定点のセル容積(cm/m)、Dは測定点のセルの断面積(mm)(図2の斜線部分の面積)、Lは測定点を中心とした回転軸(3)方向の前後0.5インチずつの計1インチ(25.4mm)当たりの線数である。
【0021】
例えば、セルの断面形状が図2に示すように台形の場合、セル断面積Dは、セルの開口幅a、セルの底部幅b、セルの深度cを測定し、それらの値から求めることができる。
【0022】
また、内側領域Aと端部Bとの境界は以下のようにして定めたものである。まず、グラビアロールの回転軸3の方向における中心のセル容積、つまり、グラビアロールの端から端の真ん中のセル容積を測定する。次に、グラビアロールの端から回転軸3の方向内側に向かってセル容積を測定していき、セル容積がロールの中心点のセル容積の0.9倍を越え始める地点を境界とする。その境界からロールの端まで、つまり、ロールの中心点のセル容積に対しセル容積が0.9倍以下となっている領域が端部Bである。そして、セルが形成された全領域(セル形成領域)において、端部B以外の残りの全ての領域が内側領域Aである。一般的には、内側領域Aと端部Bとの境界は、セル容積に影響を与える要素、例えば図2における、セルの土手幅W、セルの開口幅a、セルの深度c、セルのピッチP等が内側領域Aに対して変化する位置である。
【0023】
また、内側領域Aの平均セル容積(Va)及び端部Bの平均セル容積(Vb)は、内側領域A及び端部Bにおいて、それぞれの領域を回転軸3の方向に4等分する3箇所の点のセル容積を算出し、それを平均したものである。本発明のグラビアロールは、内側領域A及び端部Bにおいて、それぞれ回転軸3の方向にセル容積が異なる態様も含むため、それぞれの領域のセル容積を特定の1点のみで代表するのは好ましくないので、このように3点の平均値で代表することとする。
【0024】
例えば、端部Bの長さが20mmである場合、端部Bの平均セル容積(Vb)は、端部Bの最端部から5mmの部位、10mmの部位、及び15mmの部位について、それぞれ上記のしたようにしてセル容積を算出し、それらを平均することによって求められる。
【0025】
内側領域Aについても、上記と同様に、内側領域の長さが980mmの場合、その平均セル容積(Va)は、内側領域Aと端部Bとの境界から、245mm、490mm、及び735mmの部位について、それぞれのセル容積を算出し、それらを平均することによって求められる。
【0026】
本発明のグラビアロールにおいては、一方の端部のみに端部Bがあってもよく、あるいは両方の端部に端部Bがあってもよい。
【0027】
斜線型セルのグラビアロールの場合、グラビアロールに供給された塗布液は螺旋状の斜線型セルに沿って片側に流動するため、片側の端部で塗布量が部分的に多くなる「耳高」の現象が起こりやすいので、少なくともグラビアロールに供給された塗布液が斜線型セル内で流動していく方向の端部を端部Bとすることが好ましい。
【0028】
図1は、一方の端部(右側端部)のみに端部Bがある実施態様を示すものであり、端部B以外の全ての領域(中央部と左側端部)が内側領域Aとなる。図3は、本発明のグラビアロールの他の態様を示す部分模式断面図であり、両方の端部に端部Bがある一例を示すもので、両方の端部B以外の中央の領域が内側領域Aとなる。
【0029】
端部Bの長さ(グラビアロールの回転軸3の方向における長さ)は、10〜80mmの範囲が適当であり、10〜50mmの範囲が好ましく、15〜40mmの範囲がより好ましい。グラビアロールにおけるセル形成領域の長さ(グラビアロールの回転軸3の方向における長さ)は実際の塗布幅に応じて適宜設定されるが、一般的には500〜2000mm程度である。なお、端部Bがグラビアロールの両端にある場合は、それぞれの端部Bの長さのことである。
【0030】
本発明のグラビアロールにおいて、内側領域Aは、その領域内では回転軸3の方向にほぼ一定のセル容積となるようにセルが形成されていることが好ましい。つまり、内側領域Aはいずれの部位もセル容積に影響与える要素(セルの土手幅W、セルの開口幅a、セルの深度c、セルのピッチP等)はほぼ一定となるように形成されていることが好ましい。
【0031】
端部Bは、その領域内において回転軸3の方向にセル容積に影響与える要素(セルの土手幅W、セルの開口幅a、セルの深度c、セルのピッチP等)がほぼ一定となるように形成されていてもよいし、あるいは内側領域Aと端部Bとの境界から最端部に向かって段階的にセル容積が小さくなるようにセル容積に影響与える要素(セルの土手幅W、セルの開口幅a、セルの深度c、セルのピッチP等)を変化させてもよい。
【0032】
本発明において、内側領域Aと端部Bとの平均セル容積比(Vb/Va)は、0.70〜0.90の範囲とすることが重要である。上記平均セル容積比(Vb/Va)が0.90より大きくなると耳高現象が抑制されず、一方、上記平均セル容積比(Vb/Va)が0.70未満となると、耳高現象は抑制されるが、塗布幅方向の厚みプロファイルが不均一となり、その厚みの差が反射色ムラとなって現れることがある。なお、端部Bがグラビアロールの両端にある場合は、それぞれの端部Bの平均セル容積が、この平均セル容積比の範囲内である必要がある。つまり、それぞれの端部Bの平均セル容積をVb1,Vb2として、平均セル容積比(Vb1/Va)が0.70〜0.90の範囲、かつ平均セル容積比(Vb2/Va)が0.70〜0.90の範囲とすることが重要である。
【0033】
本発明において、上記平均セル容積比(Vb/Va)は、0.70〜0.88の範囲が好ましく、0.70〜0.85の範囲がより好ましい。
【0034】
本発明のグラビアロールにおいて、斜線型セルの線数Lは1インチ(25.4mm)当たり30〜300線の範囲が好ましく、50〜250線の範囲がより好ましく、特に80〜200線の範囲が好ましい。セルの深度Dは、20〜300μmの範囲が好ましく、30〜200μmの範囲がより好ましく、特に40〜100μmの範囲が好ましい。また、斜線型セルの傾斜角度(グラビアロールの回転軸方向に対する角度)は、30〜70度の範囲が一般的であり、40〜60度の範囲が好ましい。
【0035】
内側領域A及び端部Bとも、線数L、セルの深度c、及び斜線型セルの傾斜角度については、上記の範囲内で設計されることが好ましい。また、線数Lについては、内側領域Aと端部Bとは同一であることが好ましい。また、斜線型セルの傾斜角度について、内側領域Aと端部Bとは同一であることが好ましい。
【0036】
内側領域Aの平均セル容積(Va)は10〜70cm/mの範囲が好ましく、15〜60cm/mの範囲がより好ましく、特に18〜50cm/mの範囲が好ましい。端部Bの平均セル容積(Vb)は、7〜63cm/mの範囲が好ましく、10〜54cm/mの範囲がより好ましく、特に12〜45cm/mの範囲が好ましい。
【0037】
内側領域Aの土手幅Waは6〜18μmの範囲が好ましく、端部Bの土手幅Wbは18〜46μmの範囲が好ましく、両者の比(Wb/Wa)は1.8〜3.6の範囲が好ましい。内側領域Aと端部Bの土手幅の比率(Wb/Wa)を1.8〜3.6の範囲にすることにより、更に耳高現象の抑制と塗布幅方向の厚みプロファイルの均一化が図られる。
【0038】
本発明にかかるグラビアロールの外径は20〜100mmの範囲であることが好ましい。
【0039】
本発明のグラビアロールは、リバースグラビア塗布方法のグラビアロールとして用いることが好ましい。つまり、リバースグラビア塗布方法に本発明のグラビアロールを用いることによって、耳高の抑制と塗布幅方向の厚みプロファイルの均一化がより効果的に発現する。
【0040】
かかるリバースグラビア塗布方法は、連続搬送される基材の搬送方向とは逆方向に回転させられるグラビアロールが前記基材に押し当てられることによって、前記グラビアロールに供給された塗布液が前記基材に塗布される塗布方法である。通常、グラビアロールに供給された塗布液は基材に塗布される前に、その余剰分がドクターブレードによって掻き落とされて塗布量が調整される。
【0041】
上記のリバースグラビア塗布方法に好適に用いられるリバースグラビア塗布装置について説明する。
【0042】
図4は、本発明のグラビアロールを用いたリバースグラビア塗布装置の一例を示す概略図である。このリバースグラビア塗工装置はキス方式であり、グラビアロール10、塗布液供給手段20、ドクターブレード30、及び一対の搬送ローラ41、42を具備している。ここで、キス方式とは、基材50を挟んでグラビアロール10に対向する位置にバックロールが配置されていない方式であって、一対の搬送ローラ41と42に支持されながら搬送する基材50にグラビアロール10を押し当てて塗布する方式である。
【0043】
グラビアロール10は、図示しない回転駆動手段によって矢印yの方向へ駆動回転させられる。塗布液供給手段20は、塗布液貯留容器21と、この塗布液貯留容器21に収容されている塗布液22とで構成されている。一対の搬送ローラ41、42は、グラビアロール10の両側に所定間隔をおいて配置されており、基材50はグラビアロール10が押し当てられた状態で矢印zの方向に搬送される。
【0044】
グラビアロール10は、その下部が塗布液貯留容器21内の塗布液22に浸漬するように配置されている。グラビアロール10を回転させることによってグラビアロール10の周面に形成されたセルに塗布液が供給され、ドクターブレード30によってグラビアロール10の表面の余剰塗布液が掻き落とされ、塗布液の量が調整される。グラビアロール10を基材50の搬送方向(矢印zの方向)とは逆方向(矢印yの方向)に回転させながら、グラビアロール10を基材50に押し当てることによって、グラビアロール10のセル内の塗布液が基材50に塗布される。
【0045】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法に好適に用いられる塗布液は、比較的低粘度の塗布液であり、塗布液の粘度(23℃)は、具体的には50mPa・s以下が好ましく、40mPa・s以下がより好ましく、更に30mPa・s以下が好ましく、特に15mPa・s以下が好ましい。塗布液の下限粘度は、1mPa・s程度である。また、塗布液のWet塗布量は1〜50g/mの範囲が好ましく、2〜40g/mの範囲がより好ましく、特に3〜30g/mの範囲が好ましい。
【0046】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法によって基材上に形成された塗布膜の乾燥厚みは、0.5〜10μmの範囲が好ましく、1〜8μmの範囲がより好ましい。
【0047】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法は、例えばハードコートフィルム、反射防止フィルム、近赤外線遮蔽フィルムなどの光学フィルムやディスプレイ用フィルターの機能層の塗布に好適である。かかる機能層としては、ハードコート層、反射防止層、近赤外線遮蔽層等がある。これらの機能層は一般的に樹脂成分が含まれており、本発明のグラビアロールを用いた塗布方法は、樹脂成分を含む塗布液であることが好ましい。
【0048】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法に好適な塗布液は、樹脂成分が塗布液の固形分総量100質量%に対して10質量%以上含まれていることが好ましく、15質量%以上含まれていることがより好ましく、更に20質量%以上含まれていることが好ましく、特に25質量%以上含まれていることが好ましい。上限は98質量%程度である。本発明では、樹脂成分として常温で液状の重合性モノマー(例えばアクリル系モノマー)を用いる場合、該重合性モノマーは固形分として取り扱う。
【0049】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法は、特にハードコートフィルム、反射防止フィルム、あるいはディスプレイ用フィルターに積層されるハードコート層の塗布に好適である。以下、ハードコート層形成用塗布液(以下、HC層用塗布液と言う)について説明する。
【0050】
HC層用塗布液は、樹脂成分として熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられ、特に紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
上記熱硬化性樹脂としては、熱によって重合又は架橋する、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記紫外線硬化性樹脂としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有する、モノマー、オリゴマー、プレポリマーを適宜混合した組成物を用いることができる。
【0052】
モノマーの例としては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート等の単官能アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)トリアクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパン安息香酸エステル等の多官能アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等のウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0053】
オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキット(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0054】
上記した、モノマー、オリゴマー、プレポリマーは、単独もしくは複数混合して使用してもよいが、3官能以上の多官能モノマーを用いることが好ましい。
【0055】
上記の樹脂成分は、HC層用塗布液の固形分総量100質量%に対して10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含まれていることがより好ましく、更に20質量%以上含まれていることが好ましく、特に25質量%以上含まれていることが好ましい。上限は98質量%程度である。
【0056】
上記した、モノマー、オリゴマー、プレポリマーの重合を開始させるために、光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。上記光重合開始剤は、HC層用塗布液の固形分総量100質量%に対して0.1〜10質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0057】
HC層用塗布液には、ハードコート層の屈折率を高くするため(例えば屈折率を1.55〜1.80に上げるため)、あるいはハードコート層に帯電防止性を付与するために、金属酸化物微粒子を含有させることができる。金属酸化物微粒子としては、屈折率が1.6以上のものが好ましく、特に屈折率が1.7〜2.8のものが好ましく用いられる。かかる金属酸化物微粒子としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、錫、アンチモン、セリウム、鉄、インジウム等の金属酸化物粒子が挙げられる。金属酸化物微粒子の具体例としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられ、これらの金属酸化物微粒子は単独で用いても良いし、複数併用してもよい。上記金属酸化物微粒子は、HC層用塗布液の固形分総量100質量%に対して1〜80質量%の範囲で含むことが好ましく、3〜75質量%の範囲で含むことがより好ましく、特に5〜70質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0058】
また、HC層用塗布液には、ハードコート層に防眩性(蛍光灯などの外光の映り込み防止)付与のために、数平均粒子径が1〜20μmの粒子、例えば、シリカ粒子などの無機系粒子やアクリル粒子などの有機系粒子を含有させてもよい。上記粒子は、HC層用塗布液の固形分総量100質量%に対して0.1〜20質量%の範囲で含むことが好ましく、0.5〜15質量%の範囲で含むことがより好ましく、特に1〜10質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0059】
また、HC層用塗布液には、更にレベリング剤、例えばフッ素系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤を含有させることができる。上記レベリング剤は、HC層用塗布液の固形分総量100質量%に対して0.1〜5質量%の範囲で含むことが好ましい。
【0060】
また、HC層用塗布液は、更に、着色剤、顔料、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、滑剤等を含むことができる。
【0061】
HC層用塗布液は、固形分濃度が5〜70質量%の範囲が好ましく、10〜65質量%の範囲がより好ましく、特に20〜60質量%の範囲が好ましい。ここで、固形分には、常温で液状の重合性モノマー(例えば、アクリル系モノマー等の上述したエチレン性不飽和基を有するモノマー)が含まれる。
【0062】
HC層用塗布液には、上記の固形分濃度に調整するために有機溶媒を含有することが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばグリコールアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、オクタン等)、脂環族炭化水素類(例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン等)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
本発明のグラビアロールを用いた塗布方法において、上記したHC層用塗布液等の塗布液が塗布される基材としては、紙、プラスチックフィルム、紙とプラスチックフィルムの複合基材等を用いることができる。上記基材の中でも、プラスチックフィルムが好ましく用いられる。
【0064】
かかるプラスチックフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アートン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びセルロース樹脂が好ましく、特にポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、上記の樹脂からなる層が2層以上積層された積層プラスチックフィルムであってもよい。
【0065】
上記プラスチックフィルムは、塗布層との密着強度(接着強度)を高めるための易接着層(プライマー層)が予め積層されたプラスチックフィルムであることが好ましい。
【0066】
基材の厚みとしては、50〜300μmの範囲が適当であり、90〜250μmの範囲が好ましい。
【0067】
また、本発明のグラビアロールを用いた塗布方法に適用される他の基材として、上記したプラスチックフィルムにメッシュ状導電層が設けられた電磁波遮蔽フィルムを挙げることができる。
【0068】
上記電磁波遮蔽フィルムは、プラズマディスプレイの前面に装着されるプラズマディスプレイ用フィルターの1つの部材として、プラズマディスプレイ用フィルターに組み込まれるものである。更に、プラズマディスプレイ用フィルターには、擦れ傷を防止するためのハードコート層や外光の映り込みを防止するための反射防止層が、一般的に設けられている。一般的なプラズマディスプレイ用フィルターは、上記ハードコート層や反射防止層が別のプラスチックフィルムに積層された反射防止フィルムと、上記電磁波遮蔽フィルムとを粘着剤で貼り合わせて製造されているが、生産コスト低減のためには、電磁波遮蔽フィルムのメッシュ状導電層上に、直接にハードコート層や反射防止層を塗布して積層することが好ましい。
【0069】
上記したように、電磁波遮蔽フィルムのメッシュ状導電層上にハードコート層形成用塗布液や反射防止層形成用塗布液を塗布する塗布方法にも、本発明のグラビアロールは好適である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0071】
本実施例及び比較例では、1インチ当たりの線数150線の斜線型セルのグラビアロールを用いた。セルの断面形状は、図2に示すような台形である。セル容積を算出するために必要なセル断面積Dは、セルの開口幅a、セルの底部幅b、及びセルの深度cを下記の方法で測定し、それらの値から求めた。
【0072】
(1)セルの開口幅aと底部幅bの測定
(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープ(VHX−200)を用いて、倍率300倍で表面観察を行い、その画像からセルの開口幅aと底部幅bを測定した。
【0073】
(2)セルの深度cの測定
表面粗さ計(東京精密(株)製のサーフコム120A)でグラビアロールの表面の十点平均粗さRz(JIS B0601;1994年)を測定した。測定条件を以下に示す。
・カットオフ波長;0.8mm
・カットオフ種別;ガウシアン
・測定長さ;2.5mm
・測定倍率;500倍
このようにして求めたRzの値を、測定長さの中心点におけるセルの深度cとした。
【0074】
(3)内側領域A及び端部Bの平均セル容積の算出
内側領域Aの平均セル容積(Va)と端部Bの平均セル容積(Vb)は、以下のようにして算出する。まず、内側領域A及び端部Bについて、それぞれの領域を回転軸方向に4等分する3箇所の部位について、上記(1)、(2)によりセルの開口幅a、底部幅b及びセルの深度cをそれぞれ測定し、それらのデータからセル断面積D(mm)をそれぞれ算出する。これらのセル断面積Dと1インチ当たりの線数L(本実施例は150線)から下記式1より、セル容積V(cm/m)をそれぞれ算出する。そして、3箇所のセル容積を平均して、それぞれの領域の平均セル容積を求めた。
・V=D×L×25.4×1.55 ・・・・ 式1
式中、Vは測定点のセル容積(cm/m)、D(mm)は測定点のセル断面積、Lは測定点を中心とした回転軸方向の前後0.5インチずつの計1インチ(25.4mm)当たりの線数である。
【0075】
(4)内側領域aの土手幅Waと端部Bの土手幅bの測定
内側領域A及び端部Bについて、それぞれの領域を回転軸方向に4等分する3箇所の部位で、上記1)と同様にして表面観察し、それぞれの土手幅を求め平均した。
【0076】
(5)耳高現象の評価
ハードコートフィルムの巻き取りロールの外観を観察し、耳高によって巻き取りロールの形が歪になっていないかどうかを評価した。
○;巻き取りロールの形が正常である。
×;巻き取りロールの一方の端部が膨らんで歪になっている。
【0077】
(6)塗布幅方向の厚みプロファイルの測定及び反射色ムラの発生状況の観察
ハードコートフィルムの巻き取り長さ50mと300mでサンプリングし、グラビアロールの内側領域Aに相当する部分のハードコート層の乾燥膜厚み(Ta)と端部Bに相当する部分のハードコート層の乾燥膜厚み(Tb)をそれぞれ測定して平均し、下記式2から内側領域Aと端部Bの厚みの振れ率を求め、塗布幅方向厚みプロファイルとした。尚、1つのサンプルについて、内側領域Aに相当する部分のハードコート層の厚みは、フィルム幅方向を4等分する3箇所の点を測定したデータの平均値とし、端部Bに相当する部分のハードコート層の厚みは1箇所のみの測定とした。
{(Ta−Tb)/Ta}×100 ・・・ 式2
上記の内側領域A及び端部Bにおけるハードコート層の乾燥膜厚みは、以下に示す光学膜厚である。
上記式2で求められる塗布幅方向の厚みプロファイルは、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下が好ましい。
【0078】
<光学膜厚の測定>
ハードコートフィルムのハードコート層とは反対側の基材面に#320〜400の耐水サンドペーパーで均一に傷をつけた後、黒マジックインキ(登録商標)を塗布して、ハードコート層とは反対側の面からの反射を完全になくした状態にして、島津製作所(株)の分光光度計UV−3150を用いてハードコート層表面の反射スペクトル(450〜600nm)を測定し、得られた反射スペクトルとハードコート層の屈折率から、上記分光光度計UV−3150に組み込まれた専用ソフトで光学膜厚を求めた。
【0079】
<反射色ムラの発生状況>
同時に、内側領域A及び端部Bにおけるハードコート層の厚み差に起因して起こる反射色ムラの発生状況を目視で観察した。
【0080】
(実施例1)
図1に示すように一方の端部のみを端部Bとした斜線型セルのグラビアロールを用意した。上記端部Bは、グラビアロールに供給された塗布液が斜線型セル内で流動していく方向の端部である。このグラビアロールの仕様を以下に示す。
・外径;55mm
・線数;1インチ当たり150線、
・斜線型セルの角度(グラビアロールの軸方向に対する角度);45度
・セル形成領域の長さ(塗布幅);1000mm
・端部Bの長さ;20mm
・内側領域Aの長さ;980mm
・端部Bの平均セル容積(Vb);16.3cm/m
・内側領域Aの平均セル容積(Va);22.5cm/m
・端部Bと内側領域Aの平均セル容積比(Vb/Va);0.72
・端部Bの土手幅Wb;42μm
・内側領域の土手幅Wa;12μm
・端部Bと内側領域Aの土手幅比(Wb/Wa);3.5。
【0081】
<ハードコートフィルムの作製>
図4のリバースグラビア塗布装置のグラビアロール10に上記のグラビアロールを用い、基材(両面に易接着層が積層された光学用易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製の「ルミラー(登録商標)」;厚み100μm))の一方の面に、ハードコート層の乾燥膜厚みが2μmとなるように、下記のハードコート層形成用塗布液を塗布し、100℃で乾燥後、高圧水銀UVランプ(120W/cm)の紫外線を積算光量450mW/cmにて照射して硬化させた後、ロール状に巻き取った。巻き取り長さは300mである。
【0082】
<ハードコート層形成用塗布液>
紫外線硬化性樹脂30質量部、五酸化アンチモン粒子70質量部、光重合開始剤3質量部を、有機溶媒(メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンの混合溶媒)に溶解・分散したハードコート層形成用塗布液を用意した。この塗布液の固形分濃度は35質量%で、粘度(23℃)は7mPa・s、屈折率は1.64であった。
【0083】
(実施例2、3及び比較例1〜3)
グラビアロールの仕様を表1のように変更した以外は、実施例1のグラビアロールの仕様と同一である各種グラビアロールを用意した。それぞれのグラビアロールを用いた以外は、実施例1と同様にしてそれぞれのハードコートフィルムを作製した。
【0084】
なお、比較例2については、ロール端部から20mmまでのセル容積が21.3cm/mで一定であり、それ以外の部分のセル容積が22.5cm/mで一定であったので、「グラビアロールの端から回転軸方向内側に向かってセル容積を測定していき、セル容積が、ロールの中心点のセル容積の0.9倍を越え始める地点」が存在しないが、便宜的にロール端部から20mmまでを端部Bとした。
【0085】
<評価>
上記で作製した実施例及び比較例のハードコートフィルムについて、耳高現象と幅方向厚みプロファイル、反射色ムラを評価した。その結果を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1の結果より、本発明の実施例1〜3は、耳高現象が抑制され、塗布幅方向の厚みプロファイルが均一で反射色ムラの発生がないことが分かる。
【0088】
一方、比較例1は、端部Bを設けないグラビアロールを用いているので、耳高現象が抑制されていない。比較例2は、内側領域Aと端部Bの平均セル容積比(Vb/Va)が0.90を越えているので、耳高現象が抑制されていない。比較例3は、内側領域Aと端部Bの平均セル容積比(Vb/Va)が0.70未満であるので、塗布幅方向の厚みプロファイルが均一でないため、内側領域Aと端部Bの厚み差よる反射色ムラの発生があった。
【符号の説明】
【0089】
1、10 グラビアロール
2 セル
3 グラビアロールの回転軸
20 塗布液供給手段
21 塗布液貯留容器
22 塗布液
30 ドクターブレード
41、42 一対の搬送ローラ
50 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール周面にセルが形成されているグラビアロールであって、
該グラビアロールの回転軸方向の少なくとも一方の端部に、該グラビアロールの回転軸方向における中心のセル容積に対し、セル容積が0.90以下となっている領域があり、
該セル容積が0.90以下となっている領域の平均セル容積(Vb)と、該セル容積が0.90以下となっている領域を除く領域の平均セル容積(Va)との比(Vb/Va)が、0.70〜0.90である、グラビアロール。
【請求項2】
前記セルが斜線型セルである、請求項1のグラビアロール。
【請求項3】
請求項1または2のグラビアロールを用いた、リバースグラビア塗布方法。
【請求項4】
前記塗布方法により塗布される塗布液がハードコート層形成用塗布液である、請求項3のリバースグラビア塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−194381(P2011−194381A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67261(P2010−67261)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】