説明

グラビア印刷方法および該方法にて得られる印刷物

【課題】印刷機の乾燥装置での加熱で架橋(硬化)が完了し、エージング工程を必要としない速硬化性に優れ、耐溶剤性が良好で、かつプラスチックフィルムへの密着性を有するグラビア印刷方法を提供する。
【解決手段】被印刷体上に、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)、ポリイソシアネート架橋剤(c)、および金属キレート化合物(d)、溶媒(e)からなり、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30〜30:70であるグラビア印刷インキ組成物にて印刷する工程、次いで印刷皮膜を温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒の加熱、乾燥による皮膜架橋工程からなることを特徴とするグラビア印刷方法および該印刷法にて得られる印刷物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の乾燥装置で架橋(硬化)が終了し、エージング工程を必要としない速硬化性に優れ、耐溶剤性が良好で、かつプラスチックフィルムへの密着性を有するグラビア印刷インキ組成物のグラビア印刷方法および該方法にて得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂を含むインキ組成物は、プラスチックフィルム用途に広く使用されており、耐溶剤性などの皮膜物性を得るためにポリウレタン樹脂に架橋剤(硬化剤)としてポリイソシアネートが用いられていた。
また、硬化剤による硬化を促進するために樹脂中に脂肪酸のスズ化合物等が配合される事が多かった。しかしながら、従来のポリウレタン樹脂を含むインキ組成物では、耐溶剤性などの皮膜物性を得るためには、エージング温度およびエージング時間の管理が必要であり、例えば室温下で7日間もしくは40〜50℃下で24〜48時間程度のエージング工程が必須であった。エージングが十分でない場合は、目的の耐溶剤性が得られなかった。
【0003】
エージング時間を短縮する手段として、反応性が高いキシレンジイソシアネートを硬化剤として使用し、かつジブチル錫ジラウレート等の金属触媒の増量をするなど種々検討されているが、これらの手段はグラビア印刷インキの可使時間が短くなる欠点があった。
特開平5−97952号公報には、ポリイソシアネートと金属キレート剤を使用した硬化システムが開示されているが、可使時間は長くなるものの、乾燥機の温度ではインキ皮膜を短時間に硬化させることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−97952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のポリウレタン樹脂を用いたグラビア印刷インキ組成物の問題点を解決して、印刷機の乾燥装置で架橋が終了し、エージング工程を必要としない速硬化性に優れ、耐溶剤性が良好でかつプラスチックフィルムへの密着性を有するグラビア印刷インキ組成物を用いたグラビア印刷方法および該方法にて得られる印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、グラビア印刷インキ組成物中にポリウレタン/アクリル共重合樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂を含有し、架橋剤(硬化剤)としてポリイソシアネートと金属キレート化合物を併用することにより、印刷皮膜を温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒の加熱により印刷機の乾燥装置で架橋が終了し、エージング工程を必要としない速硬化性に優れ、耐溶剤性が良好でかつプラスチックフィルムへの密着性を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明は、被印刷体上に、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)、ポリイソシアネート架橋剤(c)、および金属キレート化合物(d)、溶媒(e)からなり、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30〜30:70であるグラビア印刷インキ組成物にて印刷する工程、次いで印刷皮膜を温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒の加熱、乾燥による皮膜架橋工程からなることを特徴とするグラビア印刷方法に関する。
【0008】
また、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)が架橋性官能基を有し、重量平均分子量が3万〜7万、水酸基価が20〜60mgKOH/gで、かつポリウレタンとアクリル
の比率が30/70〜50/50であることを特徴とする前記グラビア印刷方法である。
【0009】
また、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)の数平均分子量が2.5万〜5万で、水酸基価が60〜180mgKOH/gであるグラビア印刷インキ組成物を用いることを
特徴とする前記グラビア印刷方法である。
【0010】
また、ポリイソシアネート架橋剤(c)がヘキサメチレンジイソシアネートのビュレットタイプであり、その配合量がインキ中の樹脂固形分に対して20〜50重量%であることを特徴とする前記グラビア印刷方法である。
【0011】
また、金属キレート化合物(d)がチタンテトラキスアセチルアセトネートであり、該キレート化合物の配合量がインキ中の樹脂固形分に対して1.5〜6.0重量%であることを特徴とする前記グラビア印刷方法である。
【0012】
また、前記グラビア印刷方法により得られることを特徴とするグラビア印刷物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグラビア印刷インキ組成物は印刷機の乾燥装置で100℃〜170℃の熱を加えることで印刷皮膜の架橋(硬化)が終了し、従来製品で必要なエージング工程が不要になることから、生産性向上に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のグラビア印刷インキ組成物は、印刷機上の乾燥装置のみで耐溶剤性を発現させるために、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)を70:30〜30:70の重量比率となる量で使用される。好ましくは、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が50:50〜70:30の重量比率である。この重量比率で配合することで架橋(硬化)性が最も高くなり、短時間の加熱で充分な耐溶剤性が発現する。
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が100:0〜70:30の重量比率の場合、充分な耐溶剤性を得ることが困難になる。
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)の重量比が30:70〜0:100の場合、硬化剤配合後に短時間でインキ組成物がゲル状態となる。
【0015】
本発明に使用するポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)としては、Polym.,Bull.,8,239(1982)に製造法が開示されているポリウレタンセグメントとアクリルセグメントを化学的に結合し一液型として使用し得るポリウレタン/アクリルグラフト共重合樹脂、特開平10−1524号開示のエチレン性不飽和二重結合基を両末端に有する高分子直鎖状ポリウレタンに(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル系モノマーを重合させるポリウレタン/アクリル共重合樹脂などが使用できる。
ポリウレタンのポリマー成分としてはポリカボーネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが使用できる。
【0016】
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂は架橋基を有していることが好ましく、架橋基とし
ては、水酸基、 カルボンキシル基であり、好ましくは水酸基である。
水酸基価は20〜60mgKOH/gが好ましい。20mgKOH/g以下だと充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、60mgKOH/g以上だと硬化剤配合後の可使時間が短くなる。
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)の重量平均分子量は3万〜7万が好ましい。3万以下だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、かつ充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、7万以上だと硬化剤配合後の可使時間が短くなる。
ポリウレタン/アクリルの比率は50:50〜30:70が好ましい。ポリウレタン/
アクリル比率が100:0〜50:50だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、ポリウレタン/アクリル比率が30:70〜0:100だと被印刷体である
プラスチックフィルムへの充分な接着性を得ることが困難になる。
【0017】
本発明に使用する塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)としては、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニル樹脂共重合樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/マレイン酸共重合樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル酸共重合樹脂が挙げられ、これらから1種または2種以上が使用される。特にカルボキシル基、水酸基などの架橋基を有していることが好ましく、水酸基を含有する塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニル樹脂共重合樹脂が好適である。
水酸基価は60〜180mgKOH/gが好ましい。60mgKOH/g以下だと充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、180mgKOH/g以上だとインキ組成物の経時増
粘が顕著になり、かつ硬化剤配合後に短時間でインキ組成物がゲル状態となる。
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)の数平均分子量は2.5万〜5万が好ましい。2.5万以下だと印刷裏面へのインキ皮膜の転移(ブロッキング)が生じ、かつ充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、5万以上だと硬化剤配合後の可使時間が短くなる。
【0018】
本発明の硬化剤は、ポリイソシアネート架橋剤(c)が用いられる。ヘキサメチレンジイソシアネート、イソポロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどのアダクトタイプ、ビュレットタイプおよびトリマータイプなどのポリイソシアネートプレポリマーが挙げられ、これらから1種または2種以上が使用される。
耐溶剤性および可使時間の面から、イソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネートが好適である。ポリイソシアネート架橋剤(c)の配合比率は、インキ中の樹脂固形分に対して20〜50重量%配合するのが好ましい。
20重量%以下だと充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、50重量%以上だと硬化剤配合後の可使時間が極端に短くなり実用面で問題が生じる。
【0019】
上記ポリイソシアネート架橋剤(c)と併せて利用する金属キレート化合物(d)としては、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンテトラキスアセチルアセトネートなどが挙げられる。
耐溶剤性および架橋剤(硬化剤)配合時の安定性の面から、チタンテトラキスアセチルアセトネートが好適である。金属キレート化合物(d)の配合比率は、インキ中の樹脂固形分に対して1.5〜6.0重量%配合するのが望ましい。1.5重量%以下だと充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、6.0重量%以上だと硬化剤配合後に短時間でインキ組成物がゲル状態となる。
【0020】
ポリイソシアネート架橋剤(c)と金属キレート化合物(d)との組み合わせにおいて、樹脂を所定の温度で、短時間で硬化させる必要がある。そのためにはポリイソシアネート架橋剤(c)と金属キレート化合物(d)が短時間でインキ皮膜中に均一に分散し、水酸基等の活性水素との反応がスムーズに進行する必要がある。特に溶剤が揮発後でも適度な樹脂の柔軟さが必要であり、また、インキ皮膜が硬化しつつも金属キレート化合物(d)、ポリイソシアネート架橋剤(c)が樹脂中で十分に均一に分散されることが必要である。
一般に樹脂の架橋、硬化性は、単位体積当たりの架橋密度により表され、硬化剤の添加量、硬化剤の官能基数及び硬化剤の反応相手となるバインダー樹脂の使用量、官能基数等に依存するが、所定の温度、時間で架橋させるには単に架橋密度だけではなく、樹脂そのものの化学構造に由来する柔軟性が効いてくる。
本発明においては、ウレタン/アクリル樹脂(a)及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(b)を併用することで特定の温度で、短時間でインキ皮膜の硬化が可能となった。
【0021】
本発明のインキ組成物で利用する溶剤(d)としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸Nプロピルなどのエステル系などの有機溶剤が利用できる。安定した耐溶剤性を発現させるためには、インキ組成中にイソプロパノール、ノルマルプロパノールなどのアルコール系溶剤を含有しないことが望ましい。
【0022】
本発明に用いるグラビア印刷インキ組成物は、耐摩擦性などの皮膜物性の向上を目的にワックス成分を含有させることができる。ワックスとしてはポリエチレンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。
さらに、顔料分散剤、レベリング剤、界面活性剤などの各種インキ用添加剤を添加することができる。
【0023】
グラビア印刷は円筒状のシリンダー表面に彫られた画線部となる凹部にインキを詰め、ドクターと呼ばれる金属板で非画線部のインキをかきとった後、シリンダーの凹部に残ったインキを紙やプラスチックフィルムなどの被印刷体に転移させて画像を形成する印刷する方法である。
凹部の深さでインキ量を制御し印刷画像の濃淡を表現し、食品包装の印刷などに広く用いられている。
本発明のグラビア印刷インキ組成物は従来のグラビア印刷方式がそのまま使用できる。
【0024】
本発明におけるグラビア印刷インキ組成物は、印刷機の乾燥装置で温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒の加熱、乾燥を行なうことでグラビア印刷された皮膜の架橋(硬化)が終了する。乾燥温度が100℃以下では充分な耐溶剤性を得ることが困難になり、170℃以上では被印刷体であるプラスチックフィルムに変形が生じることがある。
乾燥装置について、1例を示すと印刷速度が150m/分の場合は印刷機の乾燥装置は
30m以上の長さが必要となる。乾燥装置の内部は5〜6ゾーンに分割されており、温度勾配を付けられる構造であるのが望ましい。インキ皮膜の厚さによっても硬化状態が変わるが、通常のグラビア印刷による膜厚2μm以下/層が好ましい。
【0025】
本発明のグラビア印刷方法が適用される被印刷体としては、熱による変形がないことが望ましく、例えば汎用プラスチックフィルムであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが好適に用いられる。その他のプラスチックフィルムとしてはポリブチレンテレフタレート(PBT)等がある。乾燥における風量は、30〜70m3/分であることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例で本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において特に断りのない限り「部」および「%」は「重量部」および「重量%」である。
【0027】
実施例1
<塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)ワニスの調整>
塩化ビニル/酢酸ビニル/ポリビニールアルコール共重合樹脂(=88/1/11、水酸基価166mgKOH/g、数平均分子量28,000、)25部を酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスb1、固形分25重量%)を得た。
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(=86/14、水酸基価0mgKOH/g、数平均分子量25,000)25部を酢酸エチル75部に混合溶解させて、試験用塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスb2、固形分25重量%)を得た。
【0028】
実施例2〜7、比較例1〜4
実施例2〜7、比較例1〜4については、実施例1と同様な方法により、上記の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂およびポリウレタン/アクリル共重合樹脂の各樹脂を用いて、表1に示す材料をサンドミルで混練し、更に硬化剤、架橋剤を配合し、本発明の印刷インキ組成物を得た。
なお、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂ワニス(樹脂ワニスa1)、(樹脂ワニスa2)、顔料、滑剤、溶剤、硬化剤、架橋剤としては下記のものを用いた。
【0029】
樹脂ワニスa1:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=30/70、固形分40%、水酸基価42.5mgKOH/g(固形分換算)、重量平均分子量30,000、大成ファインケミカル(株)製
樹脂ワニスa2:ポリウレタン(ポリエステル系)/アクリル=50/50、固形分40%、水酸基価0mgKOH/g(固形分換算)、重量平均分子量30,000、大成ファインケミカル(株)製「アクリット8UA−140」
顔料:リオノールブルー7358(東洋インキ製造(株))
滑剤:ハイフラットT10P4(岐阜セラック製造所(株)製)
溶剤:メチルエチルケトン
ポリイソシアネート架橋剤A:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュッレトタイプ
ポリイソシアネート架橋剤B:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレットタイプ
金属キレート化合物:チタンテトラキスアセチルアセトネート
【0030】
調整した試験用グラビア印刷インキ組成物を用いて、コロナ放電処理したポリエステルフィルム(ルミラーS10東レ(株)製)にグラビア校正機を利用して印刷し、乾燥オーブンで90℃、105℃、120℃、165℃の各温度で12秒間の加熱行なった後、下記の方法で、再溶解性、耐溶剤性、可使時間の評価を行なった。
【0031】
メチルエチルケトンとトルエンの混合溶剤で希釈した試験用グラビア印刷インキ組成物を室温・密栓状態で室温中に6時間静置し、下記の方法でポットライフの評価を行なった。
それぞれの試験用グラビア印刷インキ組成物の評価結果を表1に示した。
【0032】
(再溶解性評価)
再溶解性:調整した試験用グラビア印刷インキ組成物を用いて、コロナ放電処理したポリエステルフィルム(ルミラーS10 東レ(株)製)に#6ミヤバーで塗布し、50℃
オーブンで20秒乾燥させた後、駒込ピペットでメチルエチルケトン:トルエン=50:50の混合溶剤を吹きかけ、インキ皮膜が溶解する程度を評価した。
溶解性の基準を示す。
〇:溶剤を吹きかけると簡単にインキ皮膜が溶解する
△:溶剤を吹きかけてしばらくするとインキ皮膜が溶解する
×:溶剤を吹きかけてもインキ皮膜が全く溶解しない
【0033】
(耐溶剤性評価)
耐溶剤性:学振型摩擦試験機を使用して、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=50:50の混合溶剤で湿した木綿布で印刷面を擦り、印刷図柄が取られる回数で評価した。
耐溶剤性の基準を示す。
〇:70回以上摩擦しないと印刷図柄が消失しない
△:50〜60回摩擦すると印刷図柄が消失する
×:30〜40回摩擦すると印刷図柄が消失する
【0034】
(可使時間評価)
可使時間:硬化剤、架橋剤を配合した試験用印刷インキ組成物をメチルエチルケトン:トルエン=65:35の溶剤で希釈した後、室温保管で6時間後の溶液粘度を離合社製ザーンカップ#3で測定した。
可使時間の評価基準を示す。
〇:硬化剤、架橋剤配合6時間後でもほとんど粘度変化がない
△:硬化剤、架橋剤配合6時間後に5〜10秒程度の増粘が認められる
×:硬化剤、架橋剤配合1時間後までにインキが著しく増粘あるいはゲル化状になる
【0035】
【表1】

【0036】
表1中、樹脂組成比は、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)/塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)を示し、*1はインキ中の樹脂固形分に対して27.8重量%、*2はインキ中の樹脂固形分に対して5.5重量%である。
【0037】
本発明のグラビア印刷方法においては、グラビア印刷インキ組成物としてポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)に、ポリイソシアネート架橋剤(c)と金属キレート化合物(d)、溶媒(d)を用い、印刷後、温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒で加熱、乾燥することで従来のポリウレタン樹脂を含むインキ組成物に比べ速硬化性に優れ、印刷機の乾燥装置で架橋(硬化)が終了する。
従来のポリウレタン樹脂を含むインキ組成物で耐溶剤性などの皮膜物性を得るため必要なエージング工程が不要となる。 このことから生産性向上によるコスト低減に加えて、エージング工程を除けることによる納期短縮にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体上に、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)、ポリイソシアネート架橋剤(c)、および金属キレート化合物(d)、溶媒(e)からなり、ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)が重量換算(固形)で70:30〜30:70であるグラビア印刷インキ組成物にて印刷する工程、次いで印刷皮膜を温度100℃〜170℃、時間10秒〜15秒の加熱、乾燥による皮膜架橋工程からなることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項2】
ポリウレタン/アクリル共重合樹脂(a)が架橋性官能基を有し、重量平均分子量が3万〜7万、水酸基価が20〜60mgKOH/gで、かつポリウレタンとアクリルの比率
が30/70〜50/50であることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項3】
塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂(b)の数平均分子量が2.5万〜5万で、水酸基価が60〜180mgKOH/gであるグラビア印刷インキ組成物を用いることを特徴と
する請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項4】
ポリイソシアネート架橋剤(c)がヘキサメチレンジイソシアネートのビュレットタイプであり、その配合量がインキ中の樹脂固形分に対して20〜50重量%であることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項5】
金属キレート化合物(d)がチタンテトラキスアセチルアセトネートであり、該キレート化合物の配合量がインキ中の樹脂固形分に対して1.5〜6.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載のグラビア印刷方法により得られることを特徴とするグラビア印刷物。

【公開番号】特開2012−25107(P2012−25107A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168099(P2010−168099)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】