説明

グラビア印刷方法

【課題】グラビア版とインプレッションロールを用いた鏡面部材用の化粧シートの印刷方法において、化粧シートの基材がグラビアシリンダーから均一に剥離して、印刷ムラが生ずることのないグラビア印刷方法を提供すること。
【解決手段】グラビア版とインプレッションロールを用いたグラビア印刷方法において、前記インプレッションロールの表面に動的摩擦係数が0.1〜0.4であるゴム弾性体を用いること、前記ゴム弾性体がフッ素樹脂からなること、前記インプレッションロールの表面をフッ素樹脂からなるチューブで覆ってなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビア版とインプレッションロールを用いたグラビア印刷方法に関するものであり、特には冷蔵庫、ユニットバス表面材、ドア、内装部材等用に使われる鏡面部材用の化粧シートの印刷に好適なグラビア印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫、ユニットバス表面材、ドア、内装部材等用に使われる鏡面部材用の化粧シートの印刷方法としては、化粧シートの基材をグラビア版とインプレッションロールでニップ(挟んで)して印刷していた。
【0003】
ところが、接着剤や表面保護層(トップコート)のグラビア印刷と異なり、鏡面状の印刷はインキの転移を均一に行なうのが困難な為、化粧シートの基材がグラビアシリンダーから均一に剥離せず、印刷ムラが生し、鏡面性が損なわれることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−245409号公報
【特許文献2】特開2007−098785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、グラビア版とインプレッションロールを用いた鏡面部材用の化粧シートの印刷方法において、化粧シートの基材がグラビアシリンダーから均一に剥離して、印刷ムラが生ずることのないグラビア印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、グラビア版とインプレッションロールを用いたグラビア印刷方法において、前記インプレッションロールの表面に動的摩擦係数が0.1〜0.4であるゴム弾性体を用いることを特徴とするグラビア印刷方法である。
【0007】
またその請求項2記載の発明は、前記ゴム弾性体がフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷方法である。
【0008】
またその請求項3記載の発明は、前記インプレッションロールの表面をフッ素樹脂からなるチューブで覆ってなることを特徴とする請求項2記載のグラビア印刷方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明はその請求項1記載の発明により、従来使われているシリコーン樹脂からなるインプレッションロールの動的摩擦係数が0.5程度であるため、鏡面状の印刷を施した化粧シートの基材が自由に動けない為、応力が溜まり、安定した剥離が行えないところ、ゴム弾性体からなるインプレッションロールの表面の動的摩擦係数が0.1〜0.4のものを用いることで、見当ずれを起こさない程度に鏡面状の印刷基材が自由に動くため、応力が溜まらず安定してグラビアシリンダーからの剥離が安定する効果がある。
【0010】
またその請求項2記載の発明により、前記ゴム弾性体がフッ素樹脂からなるものとすることで、汚れ付着が簡単に落ち、動的摩擦係数が低く保たれる効果がある。
【0011】
またその請求項3記載の発明により、インプレッションロールの表面が、フッ素樹脂のチューブにて覆われたことにより、傷や摩耗が生じても、インプレッションロールのゴム弾性体を交換しないで、表面のフッ素樹脂チューブのみ簡単に交換できる。更に、チューブ状であるため繋ぎがないので印刷時に繋ぎ目が現れない効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のグラビア印刷方法の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】従来のグラビア印刷方法の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図1に本発明のグラビア印刷方法の一実施例の断面の構造を示す。グラビアインキ1を溜めたインキパン(槽)2につけられるグラビアシリンダー(グラビア版)3と、インプレッションロール4とで、鏡面印刷を施す化粧シート基材5を挟んでなる。前記インプレッションロール4は通常バックアップロール6でバックアップされる。印刷方向7の方向で印刷されるが、従来の場合、図2に示すように、印刷後の位置で前記鏡面印刷を施す化粧シート基材5が撓(たわ)んだ状態8となってしまう。
【0014】
グラビアインキ1としては、油性、水性のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂共重合体樹脂、2液や1液のウレタン樹脂、消化綿樹脂、酢酸セルロース樹脂及びこれらの混合物、エチレン二重結合をもつ紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂からなる樹脂(メジウム)に有機や無機及び有機と無機の混合物からなる顔料、公知の各種添加剤、シリカや硫酸バリウムからなる体質顔料などからなるグラビアインキが使用可能である。
【0015】
インキパン(槽)2としては、従来のものが使用可能であり、鉄製、ステンレス製及び銅製などのインキパンが使用可能であり、特に限定するものではない。
【0016】
グラビアシリンダー(グラビア版)3としては、鏡面印刷を施す場合も含めて従来のものが使用可能であり、特に限定するものではない。
【0017】
本発明におけるインプレッションロール4としては、表面の動的摩擦係数が0.1〜0.4であるゴム弾性体を用いる。表面がフッ素樹脂のものが好ましく、鉄芯にシリコーン樹脂を巻きつけた後、フッ素樹脂を積層して良いが、フッ素樹脂からなるチューブを巻きつけたものが交換などを適宜行えるので好適である。フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレンと4フッ化エチレンとの共重合樹脂及びこれらの混合物、共重合物が使用可能である。
【0018】
鏡面印刷を施す化粧シート基材5としては、二軸延伸ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、金属酸化物を蒸着した二軸延伸ポリエステル樹脂及びこれらの複層の基材が使用可能であるが、特にこれらに限定するものではなく、従来公知のものが使用可能である。厚みは、5μmから200μm程度が好適である。鏡面印刷とは、中心線平均粗さRa(JIS B 0601−1982)が0.06から0.30程度の表面状態をいう。
【0019】
バックアップロール6としては、従来公知の鋼鉄製の通常のロールが使用可能であり、特に限定するものではない。バックアップロール6は、主にインプレッションロールの撓みを抑えるために用いられる。
【実施例1】
【0020】
鉄芯の外周に厚み20mmのシリコーン樹脂層、さらにその外周に厚み10mmのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂の層を設け、インプレッションロールを作製した。表面の動的摩擦係数は0.3であった。これに中心線平均粗さRaが0.1程度の木目柄のグラビアシリンダーを用い、ウレタン樹脂バインダーインキにて、ライン速度80m/minにて印刷したが、印刷ムラは発生しなかった。
【実施例2】
【0021】
前記厚み10mmのテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂の層の代わりにシリコーン樹脂層を10mm増やして30mmにし、厚み100μmのテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体チューブを巻きつけた以外は実施例1と同様にして印刷した。表面の動的摩擦係数は0.2であった。ムラは発生しなかった。
【0022】
<比較例1>
前記シリコーン樹脂層とテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂の層の代わりに厚みシリコーン樹脂層30mmとした以外は実施例1と同様にして印刷を行った。表面の動的摩擦係数は0.5であった。結果、剥離が安定せず印刷ムラが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、冷蔵庫、ユニットバス表面材、ドア、内装部材等用に使われる鏡面部材用の化粧シートのグラビア印刷方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…グラビアインキ
2…インキパン(槽)
3…グラビアシリンダー(グラビア版)
4…インプレッションロール
5…鏡面印刷を施す化粧シート基材
6…バックアップロール
7…印刷方向
8…撓(たわ)んだ状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版とインプレッションロールを用いたグラビア印刷方法において、前記インプレッションロールの表面に動的摩擦係数が0.1〜0.4であるゴム弾性体を用いることを特徴とするグラビア印刷方法。
【請求項2】
前記ゴム弾性体がフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項3】
前記インプレッションロールの表面をフッ素樹脂からなるチューブで覆ってなることを特徴とする請求項2記載のグラビア印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−241054(P2010−241054A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94362(P2009−94362)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】