説明

グラビア印刷装置

【課題】被印刷シート上への印刷ペーストの転写量を部分的に調整することができるグラビア印刷装置を得る。
【解決手段】グラビア印刷装置20は、表面に凹部24を有する版胴22と、版胴22と対向して配置される圧胴30とを含む。貯留槽26に蓄えられた導電性ペースト28を凹部24に充填し、版胴22と圧胴30との対向部において、セラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写する。版胴22の一部または圧胴30の一部を磁化することにより、磁化された部分における導電性ペースト28の転写量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、グラビア印刷装置に関し、特にたとえば、積層型電子部品に用いられるセラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷するためのグラビア印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、積層型電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを示す図解図である。積層セラミックコンデンサ1は、基体2を含む。基体2は、複数の誘電体セラミック層3を含み、隣接する誘電体セラミック層3間に内部電極4a,4bが形成される。一方の内部電極4aの一端側は、基体2の対向する端部の一方側に引き出され、内部電極4aの他端側は、基体2の対向する端部の他方側近傍まで延びるように形成される。また、他方の内部電極4bの一端側は、基体2の対向する端部の他方側に引き出され、内部電極4bの他端側は、基体2の対向する端部の一方側近傍まで延びるように形成される。これらの内部電極4a,4bは、基体2の厚み方向において、交互に配置される。したがって、基体2の内部において、内部電極4a,4bが重なり合い、隣接する内部電極4a,4bが、基体2の反対側の端部に引き出される。基体2の両端部には外部電極5a,5bが形成され、外部電極5a,5bには、それぞれ内部電極4a,4bが接続される。したがって、外部電極5a,5b間に静電容量が形成される。
【0003】
積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品を得るために、導電性ペーストなどで電極パターンを形成したセラミックグリーンシートを積層し、得られた積層体を焼成することにより内部電極を有する基体が形成される。この基体の端部に、内部電極に接続される外部電極を形成することにより、積層型電子部品が形成される。図14は、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを印刷するためのグラビア印刷装置の一例を示す図解図である。グラビア印刷装置10は、円筒状のグラビアロール11を含む。グラビアロール11の表面には、セラミックグリーンシート上に形成される電極パターンの形状の凹み12が形成される。グラビアロール11の下側部分は、インキパンに入れられた導電性塗料13に浸漬され、グラビアロール11を回転させることにより、凹み12に導電性塗料13が導入される。グラビアロール11の表面には、ドクターブレード14が圧接され、このドクターブレード14によって回転するグラビアロール11の表面に付着した導電性塗料が掻き落とされる。
【0004】
グラビアロール11に対向して、円筒状の圧胴15が配置される。圧胴15の内部には、磁石16が配置され、グラビアロール11と圧胴15との対向部分において、グラビアロール11の表面に対して直交する磁界が印加される。そして、回転するグラビアロール11と圧胴15の間にセラミックグリーンシート17を通すことにより、グラビアロール11の凹み12に導入された導電性塗料13がセラミックグリーンシート17上に転写されて電極パターンが形成される。ここで、導電性塗料13に磁性体粉末を含有させておくことにより、グラビアロール11と圧胴15との対向部において、磁石16による磁界によって、導電性塗料13がセラミックグリーンシート17側に引き付けられる。そのため、グラビアロール11からセラミックグリーンシート17への導電性塗料13の転写率を高めることができ、転写された導電性塗料13の印刷厚みの安定性を確保することができる(特許文献1参照)。
【0005】
なお、図15に示すように、圧胴15の円周方向にN極とS極とが隣接して配置されるように形成されてもよい。この場合、圧胴15の表面に対して若干傾斜した向きに磁界が発生するが、上述のような効果を得ることができる(特許文献1参照)。
【0006】
導電性塗料13が転写された複数のセラミックグリーンシート17が積層されて、積層体が形成される。このとき、図16に示すように、1つのセラミックグリーンシート17上で隣接する導電性塗料13間のギャップ部分18が、隣のセラミックグリーンシート17上の導電性塗料13の中央部に配置されるようにして、複数のセラミックグリーンシート17が積層される。そして、1つのセラミックグリーンシート17上で隣接する導電性塗料13間のギャップ部分18において積層体が切断されることにより、チップが形成される。このチップの対向する端部には、セラミックグリーンシート17の積層方向において隣接する導電性塗料の端部が交互に引き出される。
【0007】
このチップを焼成することにより、誘電体セラミック層3を挟んで内部電極4a,4bが対向する基体2が形成される。得られた基体2を例えばバレル研磨し、内部電極4a,4bの引出し部を露出させるとともに、必要に応じて基体2の角部に丸みが形成される。そして、内部電極4a,4bが露出した基体2の端部に導電性ペーストを塗布し、焼結することによって、外部電極5a,5bが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−316091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
導電性塗料が転写されたセラミックグリーンシート17を積層するとき、図16に示すように、1つのセラミックグリーンシート17上で隣接する導電性塗料13の間のギャップ部分18に、隣のセラミックグリーンシート17上の導電性塗料13の中央部が重なり合って配置される。そのため、積層したセラミックグリーンシート17を圧着するときに、導電性塗料13間のギャップ部分18に隣のセラミックグリーンシート17が嵌り込み、その上にある導電性塗料13の中央部が変形し、中央部とそれ以外の部分で段差が生じる。このような段差は、セラミックグリーンシート17の積層枚数が多くなるほど大きくなり、積層セラミックコンデンサの構造欠陥になる。
【0010】
そこで、図17に示すように、セラミックグリーンシート17上に転写される導電性塗料13の中央付近の厚みを他の部分より大きくし、この部分を隣のセラミックグリーンシート17上の導電性塗料13間のギャップ部分18に重なり合うように配置すれば、ギャップ部分18と導電性塗料13の厚い部分とが重なりあって、導電性塗料13の変形を防止することができる。しかしながら、特許文献1の技術は、セラミックグリーンシート17上への導電性塗料13の転写量を多くするためのものであり、転写される導電性塗料13の一部の厚みを調整することはできない。
【0011】
それゆえに、この発明の主たる目的は、被印刷シート上への印刷ペーストの転写量を部分的に調整することができるグラビア印刷装置、特に、セラミックグリーンシート上への導電性塗料の転写量を局部的に調整することができるグラビア印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、外周面に印刷パターンの形状の凹部を備えた版胴を含み、凹部内に磁性体粉末を含む印刷ペーストを供給し、版胴に被印刷シートを接触させることにより、凹部内に保持された印刷ペーストを被印刷シートに転写するグラビア印刷装置であって、凹部の表面は局部的に磁化されていることを特徴とする、グラビア印刷装置である。
版胴の凹部の表面が局部的に磁化されていることにより、磁性体粉末を含む印刷ペーストが局部的に版胴側に引き付けられ、その部分だけセラミックグリーンシート上に転写される印刷ペーストの量が少なくなる。そのため、版胴の凹部の中で磁化された部分に対応した位置では、転写された印刷ペーストが薄くなり、磁化されていない部分に対応した位置では、印刷ペーストが厚くなる。
【0013】
このようなグラビア印刷装置において、被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、印刷ペーストは導電性ペーストであり、印刷パターンは内部電極パターンとして使用され、凹部は矩形状であり、矩形状の凹部を二つの領域に分けるような中央領域が設けられ、中央領域以外が磁化されるようにすることができる。
このグラビア印刷装置は、特に、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストを転写するものであり、矩形状の中央領域以外の部分において凹部が磁化されることにより、セラミックグリーンシート上に導電性ペーストが矩形状に転写された電極パターンの中央領域の厚みを大きくし、それ以外の部分の厚みを小さくすることができる。そのため、1つのセラミックグリーンシート上で隣接する電極パターン間のギャップ部分と、隣のセラミックグリーンシート上の電極パターンの厚い部分とを重ね合わせるようにセラミックグリーンシートを積層することにより、電極パターンの歪みを少なくすることができる。
【0014】
また、被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、印刷ペーストは導電性ペーストであり、印刷パターンは矩形状であり、矩形状の印刷パターンは引出し部と容量部からなり、引出し部は、矩形状の印刷パターンの一辺に沿って設けられており、凹部のうち容量部が磁化されるようにすることができる。
このグラビア印刷装置は、特に、積層セラミックコンデンサを作製するために使用することができ、この場合、導電性ペーストを用いてセラミックグリーンシート上に、引出し部と容量部とからなる電極パターンが印刷される。このとき、版胴の凹部における容量部を磁化しておくことにより、内部電極の引出し部となる部分の厚みを大きくすることができる。この場合においても、電極パターンの引出し電極となる部分を隣のセラミックグリーンシート上の電極パターン間のギャップ部分に重ね合わせることにより、電極パターンの歪みを少なくすることができる。
【0015】
また、この発明は、外周面に印刷パターンの形状の凹部を備えた版胴と、版胴と対向する位置に設けられた圧胴とを含み、凹部内に磁性体粉末を含む印刷ペーストを供給し、版胴と圧胴とで被印刷シートを挟むことにより被印刷シートを版胴に接触させることで、凹部内に保持された印刷ペーストを被印刷シートに転写するグラビア印刷装置であって、圧胴の表面のうち凹部の対向する領域は局部的に磁化されていることを特徴とする、グラビア印刷装置である。
部分的に厚みが異なるように被印刷シート上に印刷ペーストを転写するために、版胴に対向して配置される圧胴を部分的に磁化してもよい。この場合、圧胴の磁化された部分において、印刷ペーストが圧胴に接触する被印刷シート側に引き付けられるため、被印刷シート上への印刷ペーストの転写量を部分的に多くすることができる。
【0016】
このようなグラビア印刷装置において、被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、印刷ペーストは導電性ペーストであり、印刷パターンは内部電極として使用され、圧胴のうち凹部の対向する領域は矩形状であり、矩形状の領域を二つの領域に分けるように中央領域が局所的に磁化されるようにすることができる。
グラビア印刷装置を積層型電子部品の作製に使用する場合において、矩形状の印刷パターンが内部電極として使用され、圧胴のうち凹部の対向する矩形上の領域を二つの領域に分けるように中央領域が局所的に磁化される。それにより、導電性ペーストが矩形状に転写された電極パターンの中央領域を厚くすることができる。
【0017】
また、被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、印刷ペーストは導電性ペーストであり、印刷パターンは矩形状であり、矩形状の印刷パターンは引出し部と容量部からなり、引出し部は、矩形状の印刷パターンの一辺に沿って設けられており、圧胴のうち被印刷シートに接触し、引出し部に対応する部分が磁化されるようにすることができる。
このグラビア印刷装置は、特に、積層セラミックコンデンサの作製に使用することができ、この場合、圧胴のうち被印刷シートに接触し、引出し部に対応する部分が磁化される。それにより、導電性ペーストが転写された電極パターンの引出し部を厚く形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、版胴や圧胴を部分的に磁化することにより、磁性体粉末を含む印刷ペーストを用いて、被印刷シート上に部分的に厚みを変えて印刷を行うことができる。このグラビア印刷装置は、積層型電子部品を作製するために使用することができる。この場合、セラミックグリーンシート上に磁性体粉末を含む導電性ペーストが印刷されるが、版胴や圧胴を部分的に磁化させることにより、例えば内部電極の引出し部となる部分だけを厚く形成することができる。それにより、例えば積層セラミックコンデンサを作製するためにセラミックグリーンシートを積層したとき、導電性ペーストを転写して形成された電極パターンの厚い部分を隣のセラミックグリーンシートの電極パターンがない部分に配置することにより、電極パターンの変形を抑えることができ、内部電極の引出し部とそれ以外の部分との段差を抑制することができる。そのため、内部電極の歪みが小さく、構造欠陥の少ない積層セラミックコンデンサを得ることができる。
【0019】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための形態の説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明のグラビア印刷装置の一例を示す図解図である。
【図2】図1に示すグラビア印刷装置の一部を示す図解図である。
【図3】図2に示すセラミックグリーンシートに形成される電極パターンを示す図解図である。
【図4】図2に示す版胴に形成される凹部を示す図解図である。
【図5】図1に示すグラビア印刷装置を用いて印刷されたセラミックグリーンシートの積層状態を示す図解図である。
【図6】図1に示すグラビア印刷装置の他の例の一部を示す図解図である。
【図7】図6に示す圧胴の磁化部を示す図解図である。
【図8】セラミックグリーンシートに形成される電極パターンの他の例を示す図解図である。
【図9】図8に示す電極パターンを形成するために用いられるグラビア印刷装置の一部を示す図解図である。
【図10】図9に示す版胴に形成される凹部の例を示す図解図である。
【図11】図8に示す電極パターンを形成するためのグラビア印刷装置の他の例に用いられる圧胴を示す図解図である。
【図12】図11に示す圧胴に形成される磁化部を示す図解図である。
【図13】積層型電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサを示す図解図である。
【図14】従来の印刷装置の一例を示す図解図である。
【図15】従来の印刷装置の他の例を示す図解図である。
【図16】従来の印刷装置を用いて印刷されたセラミックグリーンシートの積層状態を示す図解図である。
【図17】図16に示す積層状態の課題を解決するために考えられる積層状態を示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、この発明のグラビア印刷装置の一例を示す図解図である。このグラビア印刷装置は、印刷ペーストを用いて、被印刷シート上に模様などを印刷するために用いられる。ここでは、例えば積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品を作製するために使用されるグラビア印刷装置であって、セラミックグリーンシート上に内部電極となる電極パターンを印刷するためのグラビア印刷装置として説明する。グラビア印刷装置20は、円筒状の版胴22を含む。版胴22の表面には、セラミックグリーンシートに印刷される電極パターンの形状になるように、複数の凹部24が形成される。凹部24は、例えば、深さが5〜50μmとなるようにして、版胴22の円周方向および幅方向に間隔を隔てて形成される。凹部24は、例えば、フォトマスク原版を用いたエッチングや彫刻などによって形成される。
【0022】
版胴22の下方には、貯留槽26が配置され、貯留槽26には、印刷ペーストとしての導電性ペースト28が蓄えられる。導電性ペースト28は、例えば、導体材料として、0.03〜1μmの粒子径を有するNi粉末などが用いられる。Ni粉末は、導体材料として用いられるだけでなく、磁性体材料としても用いられる。導体材料としてNi以外の非磁性体が用いられる場合、例えば磁性樹脂などの磁性体粉末が添加される。また、バインダとして樹脂が使用される。さらに、焼結時の収縮を制御するためのセラミック材料、分散剤などが添加されている。この導電性ペースト28が貯留槽26に蓄えられ、版胴22の下方部分が導電性ペースト28に浸漬される。それにより、版胴22の表面の凹部24に導電性ペースト28が導入される。
【0023】
さらに、版胴22の上方において、版胴22と対向するようにして、円筒状の圧胴30が配置される。版胴22と圧胴30とは平行に配置され、版胴22と圧胴30との間にセラミックグリーンシート32が通される。
【0024】
この印刷装置20では、貯留槽26に蓄えられた導電性ペースト28が版胴22の凹部24に導入され、セラミックグリーンシート32との接触部分まで導電性ペースト28が運ばれるが、その途中において、ブレード34が版胴22の表面に押し当てられる。このブレード34によって、凹部24外の版胴22表面に付着した導電性ペースト28が掻き落とされる。
【0025】
このグラビア印刷装置20を用いて、セラミックグリーンシート32に導電性ペースト28を転写して電極パターン36を形成するには、版胴22および圧胴30を回転させた状態で、版胴22と圧胴30の間にセラミックグリーンシート32が通される。それにより、セラミックグリーンシート32は、圧胴30によって搬送されるとともに、版胴22の表面に押し当てられる。
【0026】
版胴22の表面には、貯留槽26において導電性ペースト28が付与されるが、版胴22の回転方向に配置されたブレード28によって余分な導電性ペースト28は掻き落とされる。それにより、版胴22の凹部24に導電性ペースト28が導入された状態で、セラミックグリーンシート32が版胴22に押し当てられる。そして、図2に示すように、圧胴30によってセラミックグリーンシート32が版胴22に押し当てられることにより、凹部24に充填された導電性ペースト28がセラミックグリーンシート32上に転写されて、電極パターン36が形成される。
【0027】
ここで、図3に示すように、例えば凹部24の長手方向の両側部分24aにおいて版胴22の表面が磁化され、凹部22の長手方向の中央領域が磁化されていない状態とされる。このように、版胴22の凹部24の表面付近が局部的に磁化されているため、凹部24内の導電性ペースト28は磁化された部分において版胴22側に引き付けられる。そのため、版胴22と圧胴30との対向部において、凹部24の磁化されている部分の導電性ペースト28のセラミックグリーンシート32上への転写量が少なく、凹部24の磁化されていない部分の導電性ペースト28のセラミックグリーンシート32上への転写量が多くなる。
【0028】
このグラビア印刷装置20の場合、矩形状の凹部24の長手方向の中央領域を除いて磁化されているため、導電性ペースト28のうち、磁化されていない長手方向の中央領域に位置する導電性ペーストがセラミックグリーンシート32に転写されやすくなり、導電性ペースト28の長手方向の中央部がその周辺部よりも厚くなる。このように、セラミックグリーンシート32に導電性ペースト28を転写することによって電極パターン36が形成され、図4に示すように、電極パターン36の長手方向の両側の薄い部分が容量部36aとして用いられ、長手方向の中央の厚い部分が引出し部36bとして用いられる。
【0029】
電極パターン36が形成されたセラミックグリーンシート32は、複数枚積層される。このとき、図5に示すように、1つのセラミックグリーンシート32の電極パターン36間のギャップ部分38と、隣のセラミックグリーンシート32の電極パターン36の引出し部36bとが重なるようにして、セラミックグリーンシート32が積層される。さらに、その両側に導電性ペーストのないセラミックグリーンシート32を積層して圧着することにより、積層体が形成される。
【0030】
積層体は、所定の分割線において切断されることにより、電極パターン36の引出し部36bが交互に両端に引き出されたチップが形成される。ここで、分割線は、電極パターン36を二つの領域に分けるような長手方向の中央領域において引出し部36bを分割する位置に設定される。なお、隣接するセラミックグリーンシート32において電極パターン36の引出し部36bとギャップ部分38とが重なるように積層されるため、電極パターン36間のギャップ部分38の中央領域も分割線として設定される。このようにして得られたチップを焼成することにより、図13に示すようなセラミック層3を挟んで内部電極4a,4bが対向し、その一端が交互に対向端部に引き出された基体2が形成される。得られた基体2を例えば焼成して、バレル研磨し、内部電極4a,4bの引出し部を露出させるとともに、必要に応じて基体2の角部に丸みが形成される。そして、内部電極4a,4bが露出した基体2の端部に導電性ペーストを塗布し、導電性ペーストを焼き付けすることによって、外部電極5a,5bが形成される。
【0031】
このように、電極パターン36が形成されたセラミックグリーンシート32を積層圧着するとき、図5に示すように、セラミックグリーンシート32上で隣接する電極パターン36間のギャップ部分38が、隣のセラミックグリーンシート32の電極パターン36の中央の厚い引出し部36bに配置されるようにして、複数のセラミックグリーンシート32が積層される。このように積層することにより、電極パターン36間のギャップ部分38と電極パターン36の厚い引出し部36bとが重なり合って、電極パターン36の変形を防ぐことができる。したがって、電極パターン36の引出し部36bの中央領域およびギャップ部分38においてセラミックグリーンシート32の積層体を切断し、得られたチップを焼成することにより、内部電極の歪みの少ない基体を得ることができる。
【0032】
このように、部分的に厚みが異なるようにセラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写する場合、図2に示す版胴22の凹部24部分を磁化しないで、図6に示すように、圧胴30を部分的に磁化してもよい。この場合、版胴22と圧胴30とは同径に形成され、これらが完全に同期して回転する機構が設けられる。そして、図7に示すように、圧胴30のうち版胴22の凹部24に対応する部分40において、電極パターン36の容量部36aに対応する部分40aは磁化されず、引出し部36bに対応する部分40bが磁化される。
【0033】
このようなグラビア印刷装置20では、圧胴30のうち版胴22の凹部に対向する領域が局部的に磁化されているため、版胴22と圧胴30との間でセラミックグリーンシート32に導電性ペースト28が転写されるとき、凹部24を二つの領域に分けるように設定された長手方向の中央領域にある導電性ペースト28がセラミックグリーンシート32側に強く引き付けられる。したがって、セラミックグリーンシート32に矩形状に導電性ペースト28が転写されて形成された電極パターン36は、その長手方向の中央の引出し部36bにおいて、その他の容量部36aよりも厚くなっている。
【0034】
なお、電極パターン34として、図8に示すように、1つの図形が1つの電極となる電極パターンを形成することができる。この電極パターン36では、近接して配置される2つの電極パターン36が1対となり、セラミックグリーンシート32の長手方向において、複数対の電極パターン36がギャップ部分38を介して並ぶように形成される。この場合、近接する1対の電極パターン36の対向する端部が厚く形成された引出し部36bとなり、その両側に延びる部分が容量部36aとなる。このような電極パターン36が形成されたセラミックグリーンシート32を積層する場合、隣接するセラミックグリーンシート32において、近接する1対の電極パターン36の厚くなった引出し部36bと、ギャップ部分38とが重ね合わされるように配置される。それにより、セラミックグリーンシート32を積層したとき、電極パターン36における変形の発生が防止される。このような電極パターン36が形成されている場合、近接する1対の電極パターン36の間およびギャップ部分38が分割線42として設定され、この分割線42において積層体が切断される。
【0035】
このような電極パターン36を形成する場合、図9に示すように、版胴22の幅方向および円周方向に複数の凹部24が形成される。ここで、図10に示すように、近接する1対の電極パターン36に対応する1対の凹部24において、1対の凹部24の対向する端部24bを除く部分24aが磁化される。それにより、凹部24の磁化された部分24aに保持された導電性ペースト28が版胴22側に引き付けられ、セラミックグリーンシート32に転写される導電性ペースト28の量が少なくなる。そのため、セラミックグリーンシート32に導電性ペースト28を転写して形成される電極パターン36は、近接する1対の電極パターン36の対向部分である引出し部36bで厚くなる。
【0036】
また、版胴22と圧胴30とを同径となるように形成し、これらが同期するように回転させ、図11に示すように、圧胴30のうちの凹部24に対応する部分40の一部を磁化させてもよい。この場合、図12に示すように、版胴22に形成された凹部24に対応する部分40のうち、近接する1対の電極パターン36の引出し部36bに対応する部分40bが磁化され、容量部36aに対応する部分40aは磁化されない。それにより、セラミックグリーンシート32に導電性ペースト28を転写する際に、版胴22の凹部24に保持された導電性ペースト28は、圧胴30の磁化された部分においてセラミックグリーンシート32側に引き付けられる。それにより、近接する1対の電極パターン36の対向部分である引出し部36bが容量部36aより厚くなるように、導電性ペースト28をセラミックグリーンシート32に転写することができる。
【0037】
このように、版胴22または圧胴30を局所的に磁化することにより、部分的に厚みが異なるようにして、セラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写することができる。したがって、このグラビア印刷装置20を用いてセラミックグリーンシート32上に電極パターン36を形成し、積層セラミックコンデンサなどの積層型電子部品の作製に応用すれば、内部電極の歪みの少ない電子部品を得ることができる。
【0038】
なお、上述の実施例では、セラミックグリーンシート32上に導電性ペースト28を転写する場合について説明したが、セラミックグリーンシート以外の被印刷シートを使用し、導電性ペースト以外の印刷ペーストを用いてもよいことは言うまでもない。この場合、印刷ペーストには、磁性体粉末が添加される。
【符号の説明】
【0039】
20 グラビア印刷装置
22 版胴
24 凹部
26 貯留槽
28 導電性ペースト
30 圧胴
32 セラミックグリーンシート
34 ブレード
36 電極パターン
36a 容量部
36b 引出し部
38 ギャップ部分
40 凹部に対応する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に印刷パターンの形状の凹部を備えた版胴を含み、前記凹部内に磁性体粉末を含む印刷ペーストを供給し、前記版胴に被印刷シートを接触させることにより、前記凹部内に保持された前記印刷ペーストを前記被印刷シートに転写するグラビア印刷装置であって、
前記凹部の表面は局部的に磁化されていることを特徴とする、クラビア印刷装置。
【請求項2】
前記被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、前記印刷ペーストは導電性ペーストであり、前記印刷パターンは内部電極パターンとして使用され、前記凹部は矩形状であり、前記矩形状の凹部を二つの領域に分けるような中央領域が設けられ、前記中央領域以外が磁化されていることを特徴とする、請求項1に記載のグラビア印刷装置。
【請求項3】
前記被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、前記印刷ペーストは導電性ペーストであり、前記印刷パターンは矩形状であり、前記矩形状の印刷パターンは引出し部と容量部からなり、前記引出し部は、前記矩形状の印刷パターンの一辺に沿って設けられており、前記凹部のうち前記容量部が磁化されていることを特徴とする、請求項1に記載のグラビア印刷装置。
【請求項4】
外周面に印刷パターンの形状の凹部を備えた版胴と、前記版胴と対向する位置に設けられた圧胴とを含み、前記凹部内に磁性体粉末を含む印刷ペーストを供給し、前記版胴と前記圧胴とで被印刷シートを挟むことにより前記被印刷シートを前記版胴に接触させることで、前記凹部内に保持された前記印刷ペーストを前記被印刷シートに転写するグラビア印刷装置であって、
前記圧胴の表面のうち前記凹部の対向する領域は局部的に磁化されていることを特徴とする、グラビア印刷装置。
【請求項5】
前記被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、前記印刷ペーストは導電性ペーストであり、前記印刷パターンは内部電極として使用され、前記圧胴のうち前記凹部の対向する領域は矩形状であり、前記矩形状の領域を二つの領域に分けるように中央領域が局所的に磁化されていることを特徴とする、請求項4に記載のグラビア印刷装置。
【請求項6】
前記被印刷シートはセラミックグリーンシートであり、前記印刷ペーストは導電性ペーストであり、前記印刷パターンは矩形状であり、前記矩形状の印刷パターンは引出し部と容量部からなり、前記引出し部は、前記矩形状の印刷パターンの一辺に沿って設けられており、前記圧胴のうち前記被印刷シートに接触し、前記引出し部に対応する部分が磁化されていることを特徴とする、請求項4に記載のグラビア印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−89765(P2013−89765A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228968(P2011−228968)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】