説明

グラビア版に用いる銅の再利用方法

【課題】グラビア版の再版時に発生する銅及びクロムメッキ層から銅を効率よく分離し、再利用する方法を提供する。
【解決手段】銅メッキ層を、銅イオンを通さないイオン交換膜6で陰極側5を保護したバラード層溶解槽1に入れて通電することで、陽極4付近に銅イオンを濃縮し、前記銅イオンを濃縮した溶液の一部を、銅メッキ槽に追加し、前記銅メッキ槽に通電することにより、グラビア版を銅メッキし、銅メッキ後の銅イオン濃度の下がった前記銅メッキ槽の溶液の一部を、前記バラード溶解槽1に追加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア版の再利用時に、剥離した銅メッキ層に用いた銅を再利用する方法であり、特には銅メッキ層の銅を効率よく回収し再利用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラビア版は鉄芯と銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層とからなり、グラビア版の使用後は、バラード層を剥がし、鉄芯は再利用していた。銅メッキ層の銅の再利用はプリント積層版などでは知られているが、クロムメッキ層との分離の必要性から効率よく再生利用できないため、グラビア版では行われていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−33435号公報
【特許文献2】特開2001−9283号公報
【特許文献3】特開2002−47584号公報
【特許文献4】特開平9−277488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、グラビア版の再版時に発生する銅及びクロムメッキ層から銅を効率よく分離し、再利用する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、1)使用後のグラビア版の鉄芯から、銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層を剥がす工程。2)前記バラード層を濃度30〜40重量%の硫酸銅(II)曹にてクロムメッキ層のみ溶解させ、銅メッキ層を得る工程。3)前記銅メッキ層を、銅イオンを通さないイオン交換膜で陰極側を保護したバラード層溶解槽に入れて通電することで、陽極付近に銅イオンを濃縮する工程。4)前記銅イオンを濃縮した溶液の一部を、銅メッキ槽に追加する工程。5)前記銅メッキ槽に通電することにより、グラビア版を銅メッキする工程。6)銅メッキ後の銅イオン濃度の下がった前記銅メッキ槽の溶液の一部を、前記バラード溶解槽に追加する工程。以上からなることを特徴とするグラビア版に用いる銅の再利用方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明により、濃度30〜40重量%の硫酸銅曹を用いることでクロムメッキ層を容易に分離でき、バラード層溶解曹にて銅イオンを通さないイオン交換膜を用いることで効率よく銅イオンを濃縮することが可能となる。
【0007】
また、バラード層溶解曹にて濃縮した銅イオン水溶液を銅メッキ槽に添加して、通電することで、銅メッキする。次に銅メッキ後の銅イオン濃度の下がった水溶液を該バラード層溶解曹に戻すことにより新規に銅及び銅化合物を購入しなくてもすむ効果がある。
【0008】
更に、新規の銅及び銅化合物を購入しなくてもすむので、銅山から銅鉱石を採取し、精錬し、グラビア製版工場に輸送しなくてもすむので地球温暖化ガスの炭酸ガス等を新たに放出しなくてもすむ効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のバラード層溶解槽の構造の概略を示す説明図である。
【図2】本発明の銅メッキ槽の構造の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、グラビア版からバラード層を剥離し、濃度30〜40重量%の硫酸銅曹(図示せず)につけることでクロムメッキ層を分離し、銅メッキ層のみを取り出す。クロムメッキ層を分離する硫酸銅曹としては、硫酸銅の濃度30〜40重量%のものを用いる。30重量%未満では分離が十分ではなく、40重量%を超えると銅メッキ層に影響が及ぶものとなってしまう。最適には35重量%である。
【0011】
次に、銅イオンを濃縮する。図1にバラード層溶解槽での銅イオンを濃縮する方法の概略を示す。バラード層溶解槽1の中には硫酸銅水溶液2が満たされ、バラード層溶解槽外の電池3を通じて繋がっている陽極4と陰極5が硫酸銅水溶液2中に配される。そして陰極5の周りにイオン交換膜6が配されている。このイオン交換膜6は水酸化物イオン、水、水素イオンを通すが銅イオン8やスルフォン酸イオンを通さないものを用いているので、銅イオン8が陽極側に濃縮される。
【0012】
本発明におけるイオン交換膜6としては、マイナス電荷を帯びた官能基(例えばスルフォン酸)が固定されていて、固定されている電荷と同じ電荷のイオンは膜内の透過を邪魔される。しかし、原子の大きさによっては、固定されている電荷と異なる電荷の原子でも膜の物理的な穴によって通ったり、通らなかったりする。本発明では、原子の大きさが銅イオンより小さいプラス電荷を帯びた水酸化物イオンを通すが、原子の大きさがプラス電荷を帯びた銅イオン8やスルフォン酸を通さない陽イオン交換膜を用いる。具体的には、厚さ130μmの陽イオン交換膜が使用可能であり、AGCエンジニアリング(株)製:「セレミオン(登録商標)CMV」が好適に用いられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0013】
本発明におけるバラード層溶解槽1の硫酸銅(無水物)の濃度は、濃縮前がおよそ190〜200g/リットル(40℃)として、220〜230g/リットル(40℃)程度に濃縮すれば良い。220g/リットルより薄いとメッキの効率が悪く、230g/リットルより濃くすると水酸化銅が析出して効率が低下する。
【0014】
このようにして濃縮して得た銅イオンを含む硫酸銅水溶液2を、図2に示す銅メッキ槽9における新規な銅の使用と同様に使用することで、グラビア版に再利用することが可能となる。ここでは銅メッキ槽9中に高濃度で濃縮した銅イオンを、グラビア版11を陰極とすることで、グラビア版の表面で銅12を析出させ銅メッキとしている。
【0015】
そして、銅メッキ槽9の硫酸銅の濃度が190g/リットル(40℃)を下回ったら、メッキ槽9の硫酸銅水溶液をバラード層溶解槽1へ戻す。
【0016】
本発明におけるバラード層溶解槽の電流密度としては、10〜100A/dmが好適であり、およそ0.1から8時間程濃縮させるのが効率が良い。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明はグラビア版の銅メッキに利用可能であり、使用後に銅を回収し、効率よく再利用することが出来る。
【符号の説明】
【0018】
1…バラード層溶解槽
2…硫酸銅水溶液
3…電池
4…陽極(白金製)
5…陰極(白金製)
6…イオン交換膜
8…銅イオンCu2+
9…銅メッキ槽
11…グラビア版(陰極)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなることを特徴とするグラビア版に用いる銅の再利用方法。
1)使用後のグラビア版の鉄芯から、銅メッキ層とクロムメッキ層とからなるバラード層を剥がす工程。
2)前記バラード層を濃度30〜40重量%の硫酸銅(II)曹にてクロムメッキ層のみ溶解させ、銅メッキ層を得る工程。
3)前記銅メッキ層を、銅イオンを通さないイオン交換膜で陰極側を保護したバラード溶解槽に入れて通電することで、陽極付近に銅イオンを濃縮する工程。
4)前記銅イオンを濃縮した溶液の一部を、銅メッキ槽に追加する工程。
5)前記銅メッキ槽に通電することにより、グラビア版を銅メッキする工程。
6)銅メッキ後の銅イオン濃度の下がった前記銅メッキ槽の溶液の一部を、前記バラード溶解槽に追加する工程。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−163670(P2010−163670A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8474(P2009−8474)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)