グラファイト材料およびその製造方法


【課題】機械的強度を有しながらも、更に向上した性質、特に熱伝導の違法性を有するグラファイトシートを提供する
【解決手段】 密度が0.1g/cm3〜0.9g/cm3であり、面方向の熱伝導率が面方向に対して垂直な方向の熱伝導率の200倍以上である熱異方性を有し、グラファイト部分および気体部分から構成されるシート形態のグラファイト材料は、シート形態のポリマー材料を不活性雰囲気下で熱処理することによってグラファイト化した炭素質フィルムを得るグラファイト材料の製造方法において、400℃〜800℃の加熱を1℃/分〜10℃/分の昇温速度で実施し、最終的に少なくとも2400℃まで加熱することにより製造する。


【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は異方性熱伝導性を有するグラファイトシートに関し、特に密度が0.1g/cm3〜0.9g/cm3の範囲であり、熱伝導の異方性が200倍以上であり、厚さが例えば15μmから1600μmの範囲であることを特徴とする、高純度で機械的な強度に優れた膨張グラファイトシートに関する。
【0002】
【従来の技術】グラファイトは、優れた熱伝導性、耐熱性、耐薬品性、電気伝導性などのため、熱伝導体、電極、発熱体、断熱材、パッキン、あるいは電界シールド材として工業的に広く使用されている。その中でも近年の電子機器の急速な進歩に伴い、電子機器に用いられている半導体の発熱とその冷却方法に関する問題は大きな問題となりつつある。
【0003】半導体を中心とする電子機器の回路における発熱の問題に対しては、発生する熱が周りに影響を与えないように、速やかに熱を機器の影響のない場所に逃がすことが大切である。そのためには発熱源の周辺部品に影響を与えないように、ある特定の方向の熱伝導率は極めて優れているが、別の方向の熱伝導率が悪い異方性熱伝導材料を用いることが必要となる。通常の金属フィルムは熱伝導自体は優れているが、熱伝導に関して異方性は有していないため、この目的には適当でない。グラファイトは本質的に異方性熱伝導体であるため、このような目的には有用であると考えられる。
【0004】電子機器において冷却用途に使用し得るグラファイトとして、シート状のグラファイトが考えられる。シート状グラファイトの製造には、まず、グラファイト粉末を濃硝酸と濃硫酸の混合液に浸漬し、その後、加熱によりグラファイト層間を広げていわゆる膨張グラファイトを製造する。グラファイトシートは、このようにして製造した膨張グラファイトをバインダーと共に高圧にてプレス加工して得られる。
【0005】しかし、この方法で得られたグラファイトシートの熱伝導率は、200W/(m・°K)以下であり、その熱伝導率の異方性もせいぜい10〜20倍(熱伝導率が最も大きい方向の熱伝導率/熱伝導率が最も小さい方向の熱伝導率)程度に過ぎず、その性能は必ずしも十分というものではない。また、得られたグラファイトシート内には膨張グラファイト製造時に用いた濃硝酸や濃硫酸が残存しており、これらの不純物が周辺の金属や半導体に悪影響を及ぼすと言う欠点もある。更に、このグラファイトシートは機械的性質の点でも、折り曲げに弱く、柔軟性に欠けるという問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、熱伝導率が400W/(m・°K)以上で折り曲げに強いシート状グラファイトとして、ポリマー材料を2400℃以上で熱処理してシート状(フィルム状)のグラファイトを得る方法が、特開平3−75211号に記載されている。しかし、この様なグラファイトシートはその熱伝導率の異方性は最大で100〜200倍であり、上述のグラファイトシートと比較した場合、向上した性質を有するが、機械的強度を有しながらも、更に向上した性質、特に熱伝導の違法性を有するグラファイトシートを提供することが望ましい。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述のような異方性熱伝導材料に関する課題を解決するために成されたものであって、グラファイト部分および気体部分を有する新規なシート形状のグラファイト材料を提供する。本発明のグラファイト材料のグラファイト部分および気体部分の詳細な構造は今のところ明らかではない。後述する本発明者らの検討結果によると、双方の部分が混在していると推定されるが、この推定は、本発明の範囲を何ら拘束するものではなく、後述する本発明の方法によって製造されるグラファイト材料と実質的に同じ性質を有する全てのグラファイト材料は、本発明の範囲内に含まれるものと理解すべきである。
【0008】即ち、本発明は、グラファイト部分および気体部分から構成されるシート形態のグラファイト材料であって、密度(比重であってもよい)が0.1g/cm3〜0.9g/cm3、好ましくは0.6g/cm3〜0.9g/cm3の範囲であり、面方向の熱伝導率が面方向に対して垂直な方向の熱伝導率の200倍以上、好ましくは200倍〜600倍である熱異方性を有するグラファイト材料を提供する。尚、このグラファイト材料の面方向の熱伝導率は、少なくとも400W/(m・°K)、好ましくは600W/(m・°K)以上、より好ましくは1000W/(m・°K)以下である。このグラファイト材料の厚さは、好ましくは15μm〜1600μm、より好ましくは50μm〜500μmの範囲である。本発明者らが知る限りでは、このような性質を有するグラファイト材料は、これまでに知られていない。
【0009】このようなグラファイト材料は、シート形態のポリマー材料を不活性雰囲気下で加熱して得られるグラファイト化した炭素質フィルムを得る熱処理を特定の加熱条件下で実施して、ポリマーの分解時に発生するガスを利用してグラファイトを膨張させることによって得ることができる。
【0010】詳細な熱処理条件を検討した結果、不活性雰囲気中でポリマー材料を最終的に2400℃以上、昇華温度以下、好ましくは約2700℃まで加熱する必要があり、そのような最終温度までの加熱には、400℃〜800℃間の昇温速度が重要であることが判った。
【0011】400℃〜800℃間の昇温速度は、得られるグラファイト材料の膨張率を種々変えることになり、膨張率によってグラファイト材料の表面状態、引っ張り強度等が大きく影響を受けることが判った。例えば、ほとんど膨張しない場合、硬く引き裂け易いグラファイトシートが得られる。適当な膨張が実現した場合には、グラファイト部分とそのようなグラファイト部分の間に気体部分が混在する理想的な膨張グラファイトシートが得られることが判った。他方、膨張し過ぎた場合には、グラファイト部分の破壊が進行し、シート表面ではグラファイト層の剥離が顕著に見られる様になる。更に膨張し過ぎると材料の表面が鱗片状となってもはやシートを形成しなくなってしまう。
【0012】このような結果から、良好な膨張グラファイトシートを得るには膨張の割合を制御する必要があることが重要であることが判った。より定量的には、ポリマーシートの元の厚さの1.5倍〜8倍、好ましくは2〜5倍の厚さに膨張したグラファイト材料とすることにより、優れた電気伝導度および熱伝導率の異方性をもち、引っ張り強度特性にも優れたグラファイトシートを得ることができることが見出された。
【0013】このような膨張率は、上述のようなグラファイトシートを製造するための熱処理において、400℃〜800℃の間の昇温速度を1℃/分〜10℃/分、より好ましくは2℃/分〜7℃/分とすることにより達成される。尚、400℃までの昇温および800℃以上〜最終温度の間の昇温速度は、通常実施可能な昇温であれば、特に限定されるものではない。
【0014】従って、本発明は、シート形態のポリマー材料を不活性雰囲気下で熱処理することによってグラファイト化した炭素質フィルムを得るグラファイト材料の製造方法であって、400℃〜800℃の加熱を1℃/分〜10℃/分の昇温速度で実施し、最終的に少なくとも2400℃まで加熱することを特徴とする製造方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において、熱処理は、ポリマー材料を熱分解して炭素化する必要があるので、不活性条件下(例えばアルゴン、窒素等の雰囲気下)で実施する。熱処理の圧力は、常圧であってよいが、多少加圧(例えばゲージ圧で2kgf/cm2−G程度まで、好ましくは1kgf/cm2−Gまたはそれ以下)とすることにより熱処理系内への周辺からの気体の流入が防止できるので好ましい。炭素化の過程で分解ガスが生じるがこれを速やかに系外に排出できるように、不活性気体の気流したで熱処理するのが好ましい。
【0016】更に、本発明のグラファイト材料の製造において、ポリマーフィルムの熱分解の過程で、完全にガス化するような材料や液体となるような材料は不適当である。本発明のグラファイト材料の製造に使用できるポリマー材料としては、一般に耐熱性フィルムと呼ばれるポリマーフィルムが適当である。特に、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサチアゾール、ポリベンゾ(ビス)チアゾール、ポリフェニレンオキサジアゾール、ポリパラフェニレンビニレン等のポリマーが本発明には適当である。
【0017】本発明のグラファイト材料の製造に使用できるポリマーフィルムは、向上した性質を有するグラファイトを得るために、十分な膨張が可能である限り、いずれの厚さであってもよい。本発明の特に好ましい態様では、ポリマーフィルムは10μm〜200μm、特に50μm〜130μmの厚さであることが望ましい。
【0018】ポリマーフィルムの厚さが10μmを下回るの場合には、種々の熱処理条件下でも、十分に膨張せず、良好な膨張状態を作り出すことができない場合がある。他方、フィルムの厚さが200μmを越えると、分解ガスのために表面状態の極端に悪化し、また、引っ張り強度が不充分なグラファイトフィルムしか得られない場合がある。本発明の1つの態様では、グラファイトシートでは上述のように膨張率が1.5倍〜8倍の厚さであるので、膨張状態でのグラファイトシートは15μmから1600μmの厚さとなる。
【0019】本発明のグラファイトシートの製造において、400℃までの加熱条件は、特に限定されるものではなく、不活性雰囲気下で常温から400℃まで加熱すればよい。例えば、20℃/分のような大きい昇温速度で一気に加熱しても、あるいは0.1℃/分のような小さい昇温速度で徐々に加熱してもよい。通常3℃/分〜10℃/分、例えば5℃/分のような昇温速度で加熱する。また、800℃〜最終温度までの加熱は、通常1℃/分〜30℃/分、好ましくは3℃/分〜15℃/分で実施する。
【0020】本発明のグラファイト材料の製造に際して、得られるグラファイトシートの性質に悪影響を及ぼさない限り、熱処理の間、昇温を一時的に停止して恒温としてもよい。また、最終温度に達した後においても、その温度を一定時間(例えば1時間)保持してもよい。本発明のグラファイトシートの製造に際しては、昇温速度の調節が可能であり、発生する気体を除去しながら不活性雰囲気を維持できるものであれば、通常の加熱炉を使用することができる。例えばカーボン通電発熱炉のような加熱炉を使用できる。
【0021】尚、本発明のグラファイトシートは電気伝導性を有するが、グラファイトシートの適用(例えば、電子機器内における放熱のための適用)に際して、そのような性質が悪影響を及ぼす可能性がある用途には、グラファイトシートの表面に絶縁処理を施すのが好ましい。そのような処理は、いずれの適当な処理方法であってもよいが、例えばセラミック、樹脂等のコーティングをグラファイトシート表面に形成する、あるいはコーティングにより封入する方法であってよい。但し、放熱等を必要とする熱源との接触には、そのような絶縁処理部が熱伝導の抵抗となるので、接触部分は、絶縁処理を施さない、あるいはコーティング厚さを薄くする(例えば5〜50μm)のが好ましい。
【0022】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)厚さ75μmのポリマー材料(芳香族ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン300H))を、以下の加熱条件(圧力(ゲージ圧)1kgf/cm2、アルゴン雰囲気)で膨張させて種々の本発明のグラファイトシートを製造し、その密度を測定した。その結果を、加熱条件と共に表1に示す:
【0023】
【表1】
400℃〜800℃の グラファイトシート 膨張倍率 密度 昇温速度 厚さ(μm) (−) (g/cm3
10℃/分 115 1.5 0.90 3℃/分 250 3.3 0.43 1℃/分 600 8.0 0.10但し、室温〜400℃の昇温速度は5℃/分で、800℃〜最終温度(2700℃)の昇温速度は、5℃/分(但し、膨張倍率が8倍の場合は、12℃/分)とした。
【0024】尚、密度は、島津・マイクロメリテックス社製のマルチポリウム密度計1305を使用して測定した。得られた結果から、本発明のグラファイトシートは約0.1〜0.90(g/cm3)の密度を有することが判る。上述の本発明のグラファイトシートの内、厚さ250μmのものについて、グラファイトシート1g当たりのμg数である不純物含有率を測定した。その結果を表2に示す:
【0025】
【表2】
不純物元素 含有量(μg/g)
Na 0.23Mg 0.14Al 0.28K 0.13Fe 0.27Si 3P <2Ca 0.45合計 <0.1重量%
【0026】尚、不純物含有率は、Na〜Feについてはフレームレス原子吸光分析法により、Si〜Caについては発光分光分析法を用いて測定した。この結果から、明らかなように、本発明のグラファイトシートは不純物を殆ど含まないことが判る。更に、上述の本発明のグラファイトシートの内、厚さ250μmのものについて、ラマン散乱測定により炭素原子の結合状態を測定した。測定結果を図1に示す。
【0027】この結果によれば、本発明のグラファイトシートの場合、1580〜1590cm-1付近にラマンバンドが見られる。単結晶に近いグラファイトシートは1580cm-1にラマンバンドを有し、また、グラファイト結晶の減少と共に、1355cm-1にラマンバンドが現れる(図1では、この箇所にラマンバンドは実質的に認められない)ので、本発明のグラファイトシートは、実質的に単結晶グラファイトに近い構造を有することが判る。
【0028】(実施例2)厚さ75μmの芳香族ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン300H)を以下の加熱条件で実施例1と同様に熱処理して厚さ85μmの膨張グラファイトシートを得た:室温〜400℃: 5℃/分400℃〜800℃: 15℃/分800℃〜2700℃: 5℃/分
【0029】400℃〜800℃の昇温速度を10℃/分、3℃/分、1℃/分、0.5℃/分とした以外は、上記と同じようにして、厚さ120μm、250μm、600μm(但し、800℃〜2700℃の加熱は12℃/分)、650μm(但し、800℃〜2700℃の加熱は10℃/分)にそれぞれ膨張させて更に4種類のグラファイトシートを得た。得られたグラファイトシートの引っ張り破断強度、折り曲げ強度について評価した。評価結果を以下の表3に示す。
【0030】尚、引っ張り破断強度は、グラファイトシートを幅5mmに切断し、チャック間距離を40mm、引っ張り速度を25mm/分として引っ張り試験機を用いてグラファイトシートが破断したときの強度とした。折り曲げ強度は、図2に示すように先端が曲率半径5mmの円柱状側面を有する治具10の間にグラファイトシート12を挟み、グラファイトシートに100gの荷重をかけた状態で、矢印14で示すように円柱状側面に沿って左右に各135°折り曲げたときのグラファイトシートが切断するまでの回数(1往復で1回)とした。
【0031】
【表3】
ク゛ラファイトシートの 膨張倍率 引張破断 折り曲げ厚さ(μm) 強度(kgf) 強度(回) 85 1.1倍 2.7 200回 120 1.6倍 3.0 1000回以上 250 3.3倍 3.4 1000回以上 600 8.0倍 2.8 1000回以上 650 8.7倍 1.5 5回
【0032】この結果から、得られた膨張グラファイトシートの厚さがポリマー材料の元の厚さの1.1倍の場合、グラファイトシートは柔軟性がなく、折り曲げに対して弱くなる(この場合、グラファイトシートは金属光沢を有した)。また、グラファイトシートの熱処理後の厚さがポリマー材料の厚さの8.7倍になると、シートには層間剥離が認められ、引っ張り、折り曲げに対する強度が弱くなる。これらの間の膨張率(例えば1.5倍〜8倍の膨張率)では、表面状態が良好で、また、引っ張りおよび折り曲げに強いグラファイトシートが得られる。
【0033】(実施例3)実施例2において得られたグラファイトシート(厚さ650μmのものを除く)の熱伝導率を測定した。その結果を表4に示す:
【0034】
【表4】
グラファイトシート 熱伝導度(cm2/sec) 異方性厚さ(μm)(膨張倍率) 面方向 垂直方向 (面方向/垂直方向)
85(1.1) 9.4 0.0060 157 120(1.6) 8.2 0.0026 315 250(3.3) 8.2 0.0017 482 600(8.0) 7.9 0.0009 878
【0035】これらの結果から明らかなように、グラファイトシートの厚さが厚いほど、熱伝導度の異方性が大きく、ポリマーフィルムを約1.5倍程度以上に膨張させると、熱伝導度の異方性が200倍以上のグラファイトシートを得ることができる。
【0036】(実施例4)実施例2と同様にして膨張グラファイトシートを製造した。但し、800℃〜1500℃では5℃/分、1500℃以上では5℃/分と10℃/分の2種の昇温速度で加熱した。このようにして製造したグラファイトシートの厚さを測定し、その結果を以下の表5に、膨張倍率と共に示す。
【0037】
【表5】


【0038】このように400℃から800℃までの温度範囲を、1.0℃/分以上、10℃/分以下の昇温速度で昇温することにより、グラファイトシートの熱処理後の厚さをポリマー材料の厚さの1.5倍以上8倍以下にすることが出来る。400℃から800℃の温度範囲での昇温速度は最終的なグラファイトシートの膨張状態に大きな影響を与える。
【0039】(実施例5)厚さ75μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン300H)を40mm×30mmに切断し、最高温度2700℃で熱処理した。400℃から800℃までの昇温速度は3℃/分とし、それ以降の昇温速度は5℃/分とした。
【0040】このようにして製造したグラファイトシートの熱処理後の厚さは250μmでポリイミドフィルムの厚さの3.3倍に膨張していた。また、サイズは33mm×25mmでポリイミドフィルムの約83%に収縮していた。表面状態は良好で、圧延処理後の引っ張り破断強度は3.4kgf、折り曲げ強度は1000回以上であった。また、熱伝導度の異方性は482倍であった。
【0041】(実施例6)厚さ125μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン500H)を40mm×30mmに切断し、最高温度2700℃で熱処理した。300℃から800℃までの昇温速度は7℃/分とし、それ以降の昇温速度は5℃/分とした。
【0042】このようにして製造したグラファイトシートの熱処理後の厚さは800μmでポリイミドフィルムの厚さの6.4倍に膨張していた。また、サイズは32mm×24mmでポリイミドフィルムの80%に収縮していた。表面状態は良好で、圧延処理後の引っ張り破断強度は3.1kgf、折り曲げ強度は1000回以上であった。また、熱伝導度の異方性は820倍であった。
【0043】(実施例7)厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製カプトン100H)を40mm×30mmに切断し、最高温度2700℃で熱処理した。300℃から800℃までの昇温速度は1℃/分とし、それ以降の昇温速度は5℃/分とした。
【0044】このようにして製造したグラファイトシートの熱処理後の厚さは40μmでポリイミドフィルムの厚さの1.6倍に膨張している。また、サイズは35mm×26mmでポリイミドフィルムの約87%に収縮していた。表面状態は良好で、圧延処理後の引っ張り破断強度は2.2kgf、折り曲げ強度は1000回以上であった。また、熱伝導度の異方性は280倍であった。
【0045】
【発明の効果】本発明では、グラファイト部分とグラファイト部分の間に存在する気体部分とからなり、密度が0.9g/cm3から0.1g/cm3、厚さが15μmから1600μm、フィルムの面方向の電気伝導度がフィルムの垂直方向の電気伝導の200倍以上、フィルムの面方向の熱伝導率がフィルムの垂直方向の熱伝導の200倍以上である事を特徴とする膨張グラファイトシートが提供される。
【0046】特に、本発明では、ポリマー材料を、400℃〜800℃の間の加熱を1℃/分〜10℃の昇温速度で加熱し、最終的に2400℃以上の温度まで加熱する熱処理により、グラファイトシートの熱処理後の厚さをポリマーフィルムの約1.5倍〜8倍にすることができ、表面状態が良好で引っ張り強度と折り曲げ強度が強く、また、熱伝導異方性が非常に大きいグラファイトシートを得ることができる。
【0047】このようなグラファイトシートは、機械的強度と特有の熱伝導異方性を利用して、種々の電子機器の内部に配置して機器内で発生する熱を除くために好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のグラファイト材料のラマン散乱分析の結果を示す。
【図2】 折り曲げ強度の測定方法を示す。
【符号の説明】
10−治具、12−グラファイトシート。


【特許請求の範囲】
【請求項1】 密度が0.1g/cm3〜0.9g/cm3であり、面方向の熱伝導率が面方向に対して垂直な方向の熱伝導率の200倍以上である熱異方性を有し、グラファイト部分および気体部分から構成されるシート形態のグラファイト材料。
【請求項2】 面方向の熱伝導率が少なくとも400W/(m・°K)である請求項1に記載のグラファイト材料。
【請求項3】 厚さが15μm〜1600μmの範囲である請求項1または2に記載のグラファイト材料。
【請求項4】 密度が、0.6g/cm3〜0.9g/cm3である請求項1〜3のいずれかに記載のグラファイト材料。
【請求項5】 面方向の熱伝導率が面方向に対して垂直な方向の熱伝導率の200倍〜600倍である請求項1〜4のいずれかに記載のグラファイト材料。
【請求項6】 シート形態のポリマー材料を不活性雰囲気下で熱処理することによってグラファイト化した炭素質フィルムを得るグラファイト材料の製造方法であって、400℃〜800℃の加熱を1℃/分〜10℃/分の昇温速度で実施し、最終的に少なくとも2400℃まで加熱することを特徴とするグラファイト材料の製造方法。
【請求項7】 ポリマー材料は、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドまたはポリオキサジアゾールである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】 シート形態のポリマー材料の厚さは、10μm〜200μmである請求の範囲6または7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】 400℃〜800℃の加熱を2℃/分〜7℃/分の昇温速度で実施する請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】 最終的に2700℃まで加熱する請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】 800℃から最終温度までの加熱を1℃/分〜30℃/分の昇温速度で実施する請求項6〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】 請求項6〜11のいずれかに記載の製造方法により製造されたグラファイト材料。


【図1】


【図2】


【公開番号】特開2000−169125(P2000−169125A)
【公開日】平成12年6月20日(2000.6.20)
【国際特許分類】
化学;冶金 | 無機化学 | 非金属元素;その化合物  | 炭素;その化合物 | 炭素の製造;精製 | 黒鉛
電気 | 基本的電気素子 | 半導体装置,他に属さない電気的固体装置 | 半導体または他の固体装置の細部 | 冷却,加熱,換気または温度補償用装置 | 冷却または加熱を容易にするための材料の選択または成形,例.ヒート・シンク | 装置用材料の選択により容易になる冷却
【出願番号】特願平10−345665
【出願日】平成10年12月4日(1998.12.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社
【Fターム(参考)】
炭素、炭素化合物 | 原料(黒鉛の製造用) | 合成高分子化合物
炭素、炭素化合物 | 原料(黒鉛の製造用) | グラファイト粉末
炭素、炭素化合物 | 黒鉛の製造、処理 | 黒鉛化処理 | 加熱、焼成によるもの
炭素、炭素化合物 | 黒鉛の製造、処理 | 黒鉛化処理 | 加熱、焼成によるもの | 雰囲気ガスの調整(温度、ガス種の特定等)
炭素、炭素化合物 | 黒鉛の外形、性質(用途) | 外形に特徴があるもの(例;繊維状) | 薄膜(黒鉛層間化合物を含む)
炭素、炭素化合物 | 黒鉛の外形、性質(用途) | 性質(用途) | 高導電率(電極用)
炭素、炭素化合物 | 黒鉛の外形、性質(用途) | 性質(用途) | 高密度・可撓性
半導体又は固体装置の冷却等 | 目的 | 冷却
半導体又は固体装置の冷却等 | 冷却装置 | 素子から放熱部材への熱伝導部材
半導体又は固体装置の冷却等 | 冷却装置の構成材料 | 非金属