説明

グラフィカルユーザインターフェイス装置

【課題】グラフィカルな方法で可視化されたデータの一部を、ユーザが直感的に選択・操作可能にする。
【解決手段】ユーザはマウス109を操作して、ポインタで第1表示領域101上の所望の位置をスキャンする。マウス移動記録部103は、そのスキャンした位置を記録する。ラベル抽出部105は、スキャンした位置に表示されたデータ(計量φ)のうち、上位の計量値を有するデータを所定個数だけ抽出して選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを表示・操作するためのグラフィカルユーザインターフェイス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、社会や生活の基盤(いわゆる“インフラ”)には多くのセンサが組み込まれ、そのセンサから大量のデータが取得できるようになっている。また経済活動のオンライン化により、経済状況に関する大量のデータを蓄積することも可能となっている。こうした大量のデータの分析を効率的に行う目的で、各データに含まれる情報を計量化してグラフィカルに表示し、またその表示を操作する技術が提案されている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。
【0003】
グラフィカルに表示されたデータの一部を選択し、選択された部分のデータを異なる形式で別に表示させることにより、データの分析を可能にしたシステムが知られている。例えば特許文献1では、可視化したデータであるCT画像上の各領域がどのような材料の領域であるかを予めデータ化しておき、CT画像の領域をマウス(ポインティングデバイス)等で選択することにより、選択された領域の材料の特徴を表すデータ画像が他の表示領域に表示される構成となっている。
【0004】
また非特許文献1には、大量のデータを持つ表から必要な項目を選択して、縦軸と横軸を交差させた集計表を作成するクロス集計技術(ピボットテーブル)が開示されている。この技術では、複数の系列のデータをシステムに取り込み、二次元の表の縦軸・横軸のラベルとするデータをそれぞれ画面上で選択し、さらにその表の二次元空間上のグリッドに表示する計量を指定することによって、各系列のデータの関連性を可視化できる。
【0005】
また非特許文献2では、グラフィカルな方法でデータを選択し、それを操作する手法の一例が示されている。非特許文献2において、選択したデータの処理は、データ選択画面あるいはその補助画面上で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−125331号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Excel 2007 のヘルプと使い方 “ピボットテーブル レポートのデータを選択する”、[online ]、Microsoft Corporation、[平成23年2月14日検索]、インターネット<URL :http://office.microsoft.com/ja-jp/excel-help/HP010167767.aspx>
【非特許文献2】Photoshop CS5 ユーザーガイド “第7章:選択とマスク”、[online ]、Adobe Systems Incorporated、[平成23年2月14日検索]、インターネット<http://help.adobe.com/ja_JP/photoshop/cs/using/WSfd1234e1c4b69f30ea53e41001031ab64-7700a.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のようにグラフィカルに表示されたデータの一部を選択するシステムでは、ユーザが画面上のグラフィカルな表示を直接的に選択・操作できる機能が有効である。ユーザがデータの識別子(文字情報)を指定することによって行う間接的な選択・操作の方法もあるが、その方法では大量のデータを扱うには非効率的である。特許文献1では、ユーザが画面上のグラフィカルな表示を直接的に選択・操作可能であるが、その操作対象の選択が領域指定に限られるため柔軟性に欠ける。
【0009】
また非特許文献1のクロス集計技術では、表の縦軸・横軸を操作するため任意のデータを選択することが可能であるが、データ選択は、ラベルの値を書き写す操作となるため、特許文献1のような操作の直感性が失われている。一方、非特許文献2ではグラフィカルな方法でデータの一部の選択を行うことが可能であるが、選択したデータを異なる形式で表示するなどしてデータの分析に用いられるものではない。
【0010】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、グラフィカルな方法で可視化されたデータの一部を、ユーザが直感的に選択・操作可能なグラフィカルユーザインターフェイス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置は、二次元座標として表現したラベルに関連付けされたデータが、当該データのラベルに対応した位置に当該データの計量値に応じた態様で表示される第1表示部と、前記第1表示部上の位置を指定するポインタを制御するポインティングデバイスと、前記ポインタにより連続的に指定された一連の位置を記録する記録部と、前記記録部が記録した位置に対応するラベルのうちから、比較的上位の計量値を有するデータのラベルを抽出して選択するラベル抽出部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザは、三次元的な凹凸を有する表面の凸部を削り取る感覚でポインティングデバイスを直感的に操作することにより、局所的な特徴を有する部分の選択を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施の形態1における第1表示領域の表示例を示す図である。
【図4】実施の形態1における第2表示領域の表示例を示す図である。
【図5】実施の形態2に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態3における第2表示領域の表示例を示す図である。
【図7】本発明に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置の適用例である実施の形態4に係るデータ管理システムの構成図である。
【図8】本発明に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置の適用例である実施の形態6に係る画像エディタの構成図である。
【図9】実施の形態6に係る画像エディタにおける画素選択動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置(データ可視化ユーザインターフェイス装置)である表示装置100の内部構成を示すブロック図である。同図の如く、表示装置100は、第1表示領域101(第1表示部)、第1表示処理部102、マウス移動記録部103、マウスストローク検出部104、ラベル抽出部105、第2表示領域106(第2表示部)、第2表示処理部107、ラベル変換処理部108、マウス109を含む構成となっている。
【0015】
第1表示領域101は、二次元座標として表現されたラベル(μ,ν)が関連付けられたデータの計量(φと定義する)を、そのラベルに対応した位置に表示すことができる。第1表示領域101の表示は、第1表示処理部102により制御される。第1表示領域101における計量φの表示態様は、当該計量φの値を輝度や色に変換する、あるいは表示オブジェクトの大きさに変換するなど、特に限定されない。
【0016】
ここで、計量φが関連付けされる二次元のラベルは、本来的に二次元のものであるとは限らず、第1表示領域101上の位置を特定できるように、1次元または3次元以上の多次元のラベルを二次元に変換したものが用いられてもよい。例えば、計量φがもともと3次元のラベル(μ,ν,ξ)に関連付けされているが、第1表示領域101への表示の都合上、ξを無視してあるいは定数と仮定して得た2次元のラベル(μ,ν)を計量φのラベルとして使用する場合が考えられる。
【0017】
第2表示領域106は、第1表示領域101とは異なる形式でデータを表示する表示領域である。第2表示領域106の表示内容は、第2表示処理部107により制御される。第2表示領域106には、計量φのラベルと対応関係のあるラベル(計量φと同じラベルの場合もある)に関連付けられたデータの計量(fと定義する)が、そのラベルに対応する位置に表示される。基本的に、第2表示領域106におけるデータのラベルと表示位置との関係は、第1表示領域101のそれとは異なる。
【0018】
ラベル変換処理部108は、計量φのラベルを計量fのラベルへと変換(マッピング)する。このマッピングは、計量φのラベルから一般に複数のfラベルが定まる多対多のマッピングでもよい。
【0019】
マウス109は、第1表示領域101および第2表示領域106を含む画面上の位置を指定するポインタ(マウスポインタ)を操作するポインティングデバイスである。マウス移動記録部103は、マウス109の操作に応じて第1表示領域101上を移動したポインタの移動記録(ポインタの画面上の位置とそのときの時刻;以下「マウス移動記録」)を取得するものである。マウスストローク検出部104は、マウス移動記録部103が取得したマウス移動記録をストロークごとに分割する。
【0020】
ラベル抽出部105は、第1表示領域101上の各ストロークによってポインタが指定した各位置(ラベル)およびその位置の表示内容(計量φの値)を取得し、取得した計量φのラベルのうち、上位の値を有する計量φのラベルを抽出する。本実施の形態では、値のより大きいものを「上位の値」と定義する。
【0021】
図2は、本実施の形態に係る表示装置100の動作を示すフローチャートである。具体的には、表示装置100のユーザがマウス109を操作して第1表示領域101に表示された計量φの一部を選択し、選択した計量φのラベルに対応するラベルの計量fを第2表示領域106の特定の位置に表示させる際の一連の動作の流れを示している。
【0022】
ユーザがマウス109を操作して、第1表示領域101上の位置を指定しながらポインタを移動させると、マウス移動記録部103は、ポインタが指定した位置(計量φのラベル)を読み取る(スキャン)と共にそのときの時刻を取得する(ステップS1)。マウス109によってスキャンした位置と時刻の情報(スキャン情報)は、マウス移動記録部103により順次記録され、その結果ポインタの移動記録(マウス移動記録)が得られる(ステップS2)。
【0023】
続いてマウスストローク検出部104が、マウス移動記録をもとに計算したポインタの動きの変化、例えば移動速度や加速度の変化に基づいて、マウス109の単位操作ごとのポインタの軌跡(ストローク)を検出し、ストロークごとにマウス移動記録を分割する(ステップS3)。そしてラベル抽出部105が、各ストロークに含まれる第1表示領域101上の位置(計量φのラベル)を特定し、そのうち上位の値(大きな値)を有する計量φのラベルを抽出して選択する(ステップS4)。つまりステップS4では、各ストロークでスキャンした複数の計量φのうち、上位の値を有するものだけが選択される。
【0024】
その後ユーザは、マウス109を操作してポインタを第2表示領域106へ移動させ、第2表示領域106上の特定の位置をマウスクリックにより指定する(ステップS5)。
【0025】
するとラベル変換処理部108が、選択された計量φのラベルを、対応する計量fのラベルに変換する(ステップS6)。第2表示処理部107は、ラベル変換処理部108が得た計量fのラベルに基づいて、ステップS5でユーザが指定した第2表示領域106上の位置に、選択した計量φに対応する計量fを表示させる(ステップS7)。
【0026】
なお、ユーザによる第2表示領域106上の位置指定(ステップS5)は、ステップS6,S7より前であれば、どのタイミングで行われてもよい。例えば、ステップS1〜ステップS4と平行して行われてもよいし、ステップS1〜ステップS4よりも先に行われてもよい。
【0027】
ステップS4において、各ストロークで選択する計量φの数は任意でよい。またその数は、固定値でもよいし、ストロークがスキャンした計量φの数や、ストロークに要した時間に応じて増減させてもよい。例えば、ストロークの距離が長いほど(スキャンした計量φの数が多いほど)、あるいはストロークの時間が長いほど、より多くの数の計量φが選択されるようにしてもよい。
【0028】
またステップS4における計量φの選択方法としては、ストロークごとにスキャンした計量φから上位の値を有するものを所定個数ずつ選択する方法でもよいし、複数のストロークでスキャンした全ての計量φのうちから上位の値を有する所定個数の計量φを選択する方法でもよい。
【0029】
また複数のストロークが行われた場合に、計量φの選択をストロークの時系列順に行い、先のストロークで既に選択済みの計量φをその後のストロークにおける選択の候補から除外するようにしてもよい。その場合、例えばストロークごとに計量φの選択個数が1ずつ選択されるケースでは、第1表示領域101の同じ部分を繰り返しスキャン(複数のストロークでスキャン)すると、1回目のスキャンでは最上位の計量φが選択され、2回目のスキャンでは2番目に上位の計量φが追加して選択される。つまりストロークの回数に応じた数の計量φが選択されるようになる。また複数のストロークでスキャンした全ての計量φのうちから上位の値を有する複数個の計量φを選択されるケースでは、選択された複数個の計量φに同じラベルのものが重複して含まれることを防止できる。
【0030】
またスキャンによって多くの計量φが選択される場合、選択された計量φは必ずしも上位の値を持つものだけでなくてよく、許容される範囲内で、下位の値を有する計量φが含まれていてもよい。ユーザの使用感や扱うデータの性質に適応した柔軟なデータ選択が可能になる。但し、下位の値を有する計量φが必要以上に多く選択されると本発明の効果が損なわれるため、選択に含ませる下位の値の計量φを個数は、多くても全体の半数以下に抑えるべきである。
【0031】
ここで、図2を用いて説明した表示装置100の動作の具体例を示す。図3は、第1表示領域101に表示されたデータすなわち計量φの一例である。同図に示す曲線Mは、第1表示領域101のスキャンに係るポインタの軌道の例を示している。
【0032】
この例は、異なる時系列データf(μ)およびf(ν)のラベル(μ,ν)をそれぞれ縦軸と横軸に配し、その時系列データの自己相関値を計量φとして表示させたものである。すなわち計量φの値は、
φ(μ,ν)=(1/T)Σt=1~T{f(μ,t)・f(ν,t)} …(1)
から算出される。第1表示領域101において、計量φはその値に比例する輝度によって表されている。つまり図3で白く表示された部分は時系列データ同士の相関が強い。
【0033】
ユーザがマウス109を用いて、図3の曲線Mのような軌道でポインタを動かすと、その部分のスキャンが行われ(ステップS1,S2)、スキャンされた計量φのうち上位の値を有する計量φのラベルが選択される(ステップS3,S4)。ここではより大きな値を有する(より白く表示された)計量φほど上位であるので、自己相関値がより高い時系列データfから得られた計量φのラベルが選択される。
【0034】
なお図3では、マウスによるスキャンの軌道を表す曲線Mが一続きの線となっているが、例えばマウス109のボタンやキーボード(不図示)の特定のキーを押しながらマウスを移動させたときのみをスキャン期間として認識するようにすれば、第1表示領域101上のスキャンを不連続な軌道で行うことができ、複数に分かれた領域をスキャンすることができるようになる。
【0035】
次にユーザは、ポインタを第2表示領域106へと移動させ、マウス109をクリックすることで第2表示領域106の所望の位置を指定する(ステップS5)。
【0036】
図4(a)は、第2表示領域106に表示されたデータすなわち計量fの例である。この例において、計量fは、上記の時系列データそのものの値を表している。図4(a)の第2表示領域106においては、縦軸に計量fのラベル、横軸に時刻を配し、計量fが、各時刻ごとの時系列データを正規化した値に比例する輝度によって表されている。つまり図4(a)において、輝度の高い部分は計量fの値が大きい。
【0037】
図4(a)の第2表示領域106上にポインタを移動させて所望の位置をクリックして指定すると、ラベル変換処理により、第1表示領域101上で選択した計量φのラベルに対応するラベルを有する計量fが導出される(ステップS6)。そしてその計量fのデータが、第2表示領域106上で指定した位置に挿入されて表示されるように、第2表示領域106上で計量fの表示位置(縦軸の表示順)の並べ替えが行われる(ステップS7)。
【0038】
図4(b)は、計量fの表示位置の並べ替えを行った後の第2表示領域106を示している。図4(a)では時系列データの相関を視覚的に把握することは困難であるが、図4(b)では、自己相関値の大きい時系列データ(計量f)が近接して表示されているため、時系列データの相関が視覚的に把握可能になっている。本実施の形態では、そのような計量fの並べ替えを、グラフィカルなオペレーションのみで実現することができる。
【0039】
なお、図3および図4では、各データの値(計量値)を輝度で表現したが、各データの違いを視認できれば他の方法でもよく、例えば色で表現したり、輝度と色を組み合わせて表現してもよい。
【0040】
本実施の形態によれば、第1表示領域101においてマウス109を用いてスキャンしたデータのうち上位の値をとるもの(例えば値の大きいもの)を抽出して選択することができる。第1表示領域101では、輝度や色で表現された計量φの値が二次元的に配列しているが、その輝度や色を高さに見立てると、凹凸を有する三次元表面を想定することができる。そして上位の値を有する計量φ(例えば輝度の高い部分)を凸部と見立てると、本実施の形態において計量φを選択する操作は、ポインタを用いて凸部分を削り取る感覚の直感的な操作になる。
【0041】
またマウス109のクリックによって第2表示領域106上の指定した位置に、先に選択した計量φに対応する計量fを表示させるための操作は、削り取った破片を、ポインタから第2表示領域106の指定位置に落下させる感覚の直感的な操作になる。
【0042】
本実施の形態によれば、大量のデータを詳細に分析するために、そのデータを画像化して表示した第1表示領域101から局所的に顕著なデータを選択し、その選択したデータを第2表示領域106の指定した位置に他の方法で表示させる操作を、データのIDなどメタデータの表示や入力を必要とせずに、直感的な操作のみで実施することができる。
【0043】
なお計量φの選択の基準となる「上位の値」は、大きい値とせずに、小さい値としてもよい。その場合、下方向に突出した凸部を有する三次元表面の凸部を擦って削り取る作業がメタファとして実現されることになる。
【0044】
<実施の形態2>
実施の形態1に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置である表示装置100では、ポインティングデバイスとしてマウスを使用していたが、他の装置を用いてもよい。本実施の形態では、一般的なポインティングデバイス、例えばペン形入力装置やユーザの指先を利用した接触型ポインティングデバイスや、レーザポインタなどの光学式ポインティングデバイス、カメラや加速度センサを用いた受動型ポインティングデバイスを用いた構成を示す。
【0045】
図5は、実施の形態2に係る表示装置100の構成を示すブロック図である。当該表示装置100は、図1の構成に対し、マウス109、マウス移動記録部103およびマウスストローク検出部104を、それぞれ同様に機能する、一般的なポインティングデバイス(PD)409、PD移動記録部403、PDストローク検出部404に置き換えている。
【0046】
例えばポインティングデバイス409が接触型ポインティングデバイスの場合、ユーザが操作するときの接触圧力も検出することが可能である。そのため、第1表示領域101上で計量φを選択する際に(図2のステップS4)、選択する計量φの数を、接触圧力の強さに従って増加させることも可能である。その場合、第1表示領域101を輝度や色に応じた凹凸を有する三次元表面を見立てると、強い力を加えればより多くの凸部が削り取られる感覚となり、より直感的な操作となる。特に第1表示領域101および第2表示領域106の表面を直接操作するタッチパネル型のものであれば、さらに直感的になる。
【0047】
また接触/非接触をストローク抽出の基準とすれば、各ストロークがユーザによる操作と直接的に関連づけされるので、ユーザにとっての操作性が向上する。
【0048】
<実施の形態3>
実施の形態1で例示した、第1表示領域101の表示例(図3)および第2表示領域106の表示例(図4)は、共に輝度や色の違いを用いた画像表現であったが、第2表示領域106におけるデータの表示形式は任意でよい。
【0049】
図6は、第2表示領域106における計量fの他の表示例を示す図である。ここでは、第1表示領域101上の操作で選択された計量φに対応する計量fが計量値の時系列データであるとする。この例では、ユーザが第2表示領域106をクリックしたとき(図2のステップS5)、その位置に関係なく第2表示領域106に、選択された計量φに対応する計量fの時系列データが、折れ線グラフとして表示されている。図6の縦軸は計量fすなわち時系列データの値(またはそれを正規化したもの)であり、横軸は時刻である。
【0050】
<実施の形態4>
実施の形態4では、本発明のグラフィカルユーザインターフェイス装置の具体的な適用例を示す。
【0051】
図7は、ビルや工場などで稼働する複数の設備の稼働状況を記録したデータの収集および分析を行うデータ管理システム500と、そこから得られたデータの解析を行うデータブラウザ200を示している。当該データ管理システム500は、各設備に設けられた複数のセンサ501、複数のセンサ501を一括して監視制御するローカルコントローラ502、複数のローカルコントローラ502を制御する監視制御サーバ503、監視制御サーバ503に集められるデータを保存・管理するレポジトリ504を備えている。監視制御サーバ503には、本発明に係るグラフィカルユーザインターフェイス装置(上記の表示装置100)を備えるデータブラウザ200が接続されている。
【0052】
図7の例では、ローカルコントローラ502と監視制御サーバ503とが直接接続しているが、この間に中間コントローラの階層があってもよい。
【0053】
データ管理システム500では、各設備の稼働状況時系列データ、稼働状況の定性的変化を示すイベントデータなど(稼働状況データ)が、センサ501から定常的に発生する。このためレポジトリ504には大量のデータが集められる。
【0054】
ここで、設備の稼働状況データに基づいて、各設備の故障診断や省エネ運転に向けた最適化などを行う場合を考える。稼働状況データの特性が予め分かっていれば、データブラウザ200等が、必要な情報を抽出して演算処理による分析を行い、その分析結果を表示するといった一連の処理を自動的に行うことができるが、演算による分析方法が確立していない状況では、収集したデータを人(専門家)が見て必要な情報を選択したり、演算処理による解析方法の開発を行ったりする必要がある。つまり専門家によるデータの特性や傾向の分析並びに定式化の実施が必要になる。そのような場合に、大量のデータを効率よくかつ直感的に選択して表示するユーザインターフェイスの使用が有効である。
【0055】
本発明に係る表示装置100を備えるデータブラウザ200を、専門家によるデータの分析に利用した場合、データブラウザ200は、レポジトリ504に集められたデータを監視制御サーバ503を介して取得し、これに対して計算機処理による一般的なデータ分析を行った結果を第1表示領域101に計量φとして表示させる。そして専門家が第1表示領域101で選択した計量φに対応するデータ(計量f)を、監視制御サーバ503から取得して、それを第2表示領域106に表示する。なお、一般的なデータ分析とは、例えば、異なるセンサからの時系列データの相互相関や相互情報量を求めたり、あるいは時系列データの特異値分布を求めたりすることが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0056】
またデータブラウザ200が備える表示装置100は、それぞれ異なる種類のデータを表示可能な複数の第1表示領域101を有していてもよいし、同様に、それぞれ異なる種類のデータを表示可能な複数の第2表示領域106を有していてもよい。また状況に応じて、第1表示領域101として機能したり、第2表示領域106として機能することができる表示領域を有していてもよい。
【0057】
例えば、第1表示領域101で選択される計量φのラベルが、各センサ501を指し示すものであり、第2表示領域106で表示される計量fが各センサ501の出力の時系列データである場合のように、計量φおよび計量fがどちらも個々のセンサに関するものの場合は、第1表示領域101と第2表示領域106は各センサ501を同じラベルで扱って表示処理を行っている。このような場合、ラベル変換処理部108は入力されたラベルをそのまま出力する恒等変換を行うことになる。
【0058】
一方、第2表示領域106では個々のセンサ501に関するデータを表示するが、第1表示領域101で選択される計量φラベルが複数のセンサ501を集合的にとりまとめたもの(例えば複数のセンサ501の出力の平均値など)である場合には、ラベル変換処理部108によって計量φのラベルから計量fのラベルへの変換が必要となる。例えば、第1表示領域101で選択される計量φのラベルがローカルコントローラ502を指し示すものであり、第2表示領域106ではそれに接続した個々のセンサ501に関する計量fが表示される場合である。この場合、ラベル変換処理部108では、選択された計量φに対応するローカルコントローラ502のラベルから、当該ローカルコントローラ502接続したセンサ501のラベルへの変換が成される。
【0059】
また、第1表示領域101で選択される計量φのラベルと、第2表示領域106で表示する計量fのラベルとが同じであっても、例えば一連のポインティングデバイス操作で選択した計量φのラベルを集合的に扱う場合には、第1表示領域101において計量φを集合的に表す別のラベルが指定されるようにしてもよい。
【0060】
本実施の形態では、設備の稼働状況監視や稼働状況監視のためのデータ処理方法の開発におけるデータ可視化において、データの閲覧を直感的な操作によって行うことができ、人によるデータ解析の効率化を図ることができる。
【0061】
<実施の形態5>
上記のように、第1表示領域101でのデータ(計量φのラベル)の選択の方法における処理、すなわち図2のステップS3,S4の処理は、データの選択を、凹凸を有する三次元表面の凸部を擦って削り取る作業をメタファとして実現するものである。この選択には幾つかの処理方法が考えられる。ここではその処理方法について説明する。
【0062】
マウス移動情報を、ポインタの動きの変化に基づいて複数のストロークに分割するステップS3の処理は、ポインタの位置と時刻の情報(スキャン情報)から得られる速度変化が一定の範囲内にある一連のポインタの軌跡を、一つのストロークとすることが考えられる。この方法は、ポインタのジグザグな動きの頂点や、ポインタの動きの停止位置がストロークの区切りとなる。
【0063】
またポインタが同じ位置に戻ったことをストロークの区切りとしてもよい。この方法は、円に近い軌道や曲線の軌道でスキャンされた場合に有効とである。もちろん複数の方法を組み合わせてもよい。
【0064】
タッチパネル式のポインティングデバイスや、光学センサまたはパッシブセンサを用いるポインティングデバイスなど、ポインタが表示領域内を不連続に移動できるものの場合は、(ポインタの移動速度とは無関係に)ポインタ移動の不連続点をストロークの区切りとしてもよい。
【0065】
またスキャンした計量φのラベルのうち上位の値を有する計量φのラベルを選択する処理、すなわち図2ステップS4の処理は、例えば計量φの値が大きいものを所定個数だけ選択することで実現する。ここで選択の候補とするラベル(第1表示領域101上の位置)は、実際にスキャンされたラベルに加え、その近傍のものを加えてもよい。この場合、データの選択が三次元表面の凸部を、広い幅で削り取る感覚となるであろう。これによりユーザの使用感や扱うデータの性質に適応した柔軟なデータ選択が可能になる。
【0066】
実施の形態1でも説明したように、選択する個数は固定値でもよいし、ストロークの長さや時間、ストロークがカバーする範囲の広さに応じ、所定の関数に基づいて変更さてもよい。またストロークごとにスキャンした計量φから上位の値を有するものを所定個数ずつ選択してもよいし、複数のストロークでスキャンした全ての計量φのうちから上位の値を有する所定個数の計量φを選択してもよい。複数のストロークが行われた場合には、先のストロークで既に選択済みの計量φを新たな選択の対象から除外するようにしてもよい。
【0067】
またスキャンによって多くの計量φが選択される場合、選択される計量φは必ずしも上位の値を持つものだけでなくてよく、許容される範囲内(例えば過半数未満)で、下位の値を有する計量φが含まれていてもよい。
【0068】
第1表示領域101において、選択された計量φは、速やかにその表示態様(輝度や色など)が変更されることが望ましい。それにより、ユーザは、選択された範囲を視覚的に認識することができる。これはユーザによる不要な操作の低減に寄与する。
【0069】
<実施の形態6>
本実施の形態では、本発明に係るデータ可視化ユーザインターフェイスを、例えば非特許文献2のような画像エディタへ適用する。図8は画像エディタ600の構成を示すブロック図である。
【0070】
当該画像エディタ600は、図1の表示装置100の構成に対し、第1表示領域101、第1表示処理部102およびラベル抽出部105を、それぞれ画像表示領域601、画素情報表示処理部602および画素位置抽出処理部605に置き換え、第2表示領域106、第2表示処理部107、ラベル変換処理部108を省略した構成を有している。マウス109、マウス移動記録部103、マウスストローク検出部104は、実施の形態2(図5)に示したポインティングデバイス409、PD移動記録部403、PDストローク検出部404であってもよい。
【0071】
画像表示領域601は図1の第1表示領域101と同様の機能を有し、画素情報表示処理部602は図1の第1表示処理部102と同様の機能を有し、画素位置抽出処理部605は図1のラベル抽出部105と同様の機能を有する。画像エディタ600では、画像表示領域601の各画素の値すなわち輝度が計量φであり、各画素の座標がそのラベルとして扱われる。
【0072】
なお図8では、画像表示領域601に表示された画像の一部の画素を、本発明に係る方法で選択する動作を担う部分のみを示している。通常、画像エディタでは、選択した部分の編集等が実施されるが、それについては従来の画像エディタと同じでよいので、それらの説明は省略する。また画像エディタ600は、ここで示す以外の画素の選択方法もサポートしているが、それらについても従来の画像エディタと同じでよいため説明は省略する。
【0073】
図9は、本実施の形態に係る画像エディタ600における、画素の選択処理を示すフローチャートである。具体的には、画像エディタ600のユーザがマウス109を操作して画像表示領域601に表示された画像から、輝度の高い部分を選択する際の一連の動作の流れを示している。
【0074】
ユーザがマウス109を操作して、画像表示領域601上の特定の位置を指定しながらポインタを移動させると、マウス移動記録部103は、ポインタが指定した座標を読み取る(スキャン)と共にそのときの時刻を取得する(ステップS11)。マウス109によってスキャンした座標と時刻の情報(スキャン情報)は、マウス移動記録部103により順次記録され、その結果ポインタの移動記録(マウス移動記録)が得られる(ステップS12)。
【0075】
続いてマウスストローク検出部104が、マウス移動記録を取得し、それから求められるポインタの動きの変化、例えば移動速度および加速度の変化に基づいて、各ストロークごとにマウス移動記録を分割する(ステップS13)。そしてラベル抽出部105が、各ストロークに含まれる画像表示領域601上の座標を特定し、そのうち上位の値すなわち高い輝度を有する画素の座標を抽出して選択する(ステップS14)。その結果、各ストロークでスキャンした複数の画素のうち、上位の値を有するものだけが選択される。
【0076】
本実施の形態によれば、選択される画素はストローク毎に画素の輝度が評価され、輝度の高い画素が選択される。従来の画像エディタでは、画像全体から輝度の高い部分を抽出して選択することは可能であったが、輝度のピークを有する局所的な部分だけを選択することはできなかったが、本実施の形態ではそのような画素の選択が可能になる。
【0077】
また画素の選択の基準となる「上位の値」は、高い輝度ではなく、低い輝度としてもよい。その場合、画像表示領域601に表示された画像から、局所的に暗い部分を選択することができる。
【符号の説明】
【0078】
100 表示装置、101 第1表示領域、102 第1表示処理部、103 マウス移動記録部、104 マウスストローク検出部、105 ラベル抽出部、106 第2表示領域、107 第2表示処理部、108 ラベル変換処理部、109 マウス、200 データブラウザ、400 表示装置、403 PD移動記録部、404 PDストローク検出部、409 ポインティングデバイス、501 センサ、502 ローカルコントローラ、503 監視制御サーバ、504 レポジトリ、505 データ管理システム、600 画像エディタ、601 画像表示領域、602 画素情報表示処理部、605 画素位置抽出処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元座標として表現したラベルに関連付けされたデータが、当該データのラベルに対応した位置に当該データの計量値に応じた態様で表示される第1表示部と、
前記第1表示部上の位置を指定するポインタを制御するポインティングデバイスと、
前記ポインタにより連続的に指定された一連の位置を記録する記録部と、
前記記録部が記録した位置に対応するラベルのうちから、比較的上位の計量値を有するデータのラベルを抽出して選択するラベル抽出部とを備える
ことを特徴とするグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項2】
前記ポインタにより連続的に指定された一連の位置を、前記ポインタの動きの変化に基づいてストロークごとに分割するストローク検出部をさらに備え、
前記ラベル抽出部は、比較的上位の計量値を有するデータのラベルの選択を、前記ストロークごとに行う
請求項1記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項3】
前記ラベル抽出部は、比較的上位の計量値を有するデータのラベルの選択を前記ストロークの時系列順に行い、先のストロークで選択済みのデータのラベルは、その後のストロークで選択するデータのラベルの候補から除外する
請求項2記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項4】
前記ラベル抽出部は、選択するデータのラベルに、比較的下位の計量値を有するデータのラベルを、比較的上位の計量値を有するデータのラベルよりも少ない数だけ含ませる
請求項1から請求項3のいずれか一項記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項5】
前記ラベル抽出部は、選択するデータのラベルの候補に、前記記録部が記録した位置の近傍の位置に対応するラベルをも加える
請求項1から請求項4のいずれか一項記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項6】
前記ラベル抽出部により選択されたデータは、前記第1表示部における表示態様が変更される
請求項1から請求項5のいずれか一項記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項7】
前記ラベル抽出部により選択されたデータが前記第1表示部とは異なる形式で表示される第2表示部をさらに備える
請求項1から請求項6のいずれか一項記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項8】
前記ポインティングデバイスは、前記第2表示部上の位置も指定でき、
前記第2表示部において、前記ラベル抽出部により選択されたデータは、前記ポインティングデバイスによって指定された位置に表示される
請求項7記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項9】
前記第2表示部において、前記ラベル抽出部により選択された複数のデータは、前記ポインティングデバイスによって指定された位置に互いに近接して表示される
請求項8記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。
【請求項10】
前記第2表示部において、前記ポインティングデバイスによって指定された位置に、前記ラベル抽出部により選択されたデータが挿入されて表示されるように、他のデータの表示位置が並べ替えられる
請求項8または請求項9記載のグラフィカルユーザインターフェイス装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−238149(P2012−238149A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106176(P2011−106176)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】