説明

グラフェンと金属電極との電気的接合デバイス、それを用いた電子デバイス,電子集積回路及び光/電子集積回路

【課題】グラフェンと金属電極との間の接触抵抗を低減する。
【解決手段】グラフェンの単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、接触面積をSとして、接触抵抗は


と計算できる。rGPを10Ω/μm2、rCを10Ωμm2とした場合の計算結果を示し、接触面積を




にすることにより、接触抵抗を収束値の10%増し、あるいは30%増しの値にまで、低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンと金属電極との電気的接合デバイス、それを用いた電子デバイス,電子集積回路および光/電子集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブと金属電極との接触抵抗(カーボンナノチューブ自身の電気抵抗と、カーボンナノチューブと金属電極との間の界面抵抗が、並列になっている)はkΩオーダであることが、非特許文献1に記載されている。グラフェンと金属電極との接触抵抗も、接触面積が同程度であれば、kΩオーダであると予想される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Phys. D: Appl. Phys. 33, 1953 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、グラフェンと金属電極との間の接触抵抗を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明のグラフェンと金属電極との電気的接合デバイスは、グラフェンの単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、グラフェンと金属電極との接触面積Sが

を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、グラフェンと金属電極との間の接触抵抗(グラフェン自身の抵抗と、グラフェンと金属電極との界面抵抗が並列)を十分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の原理説明図。
【図2】本発明の第1の実施例の説明図。
【図3】本発明の第2の実施例の説明図。
【図4】本発明の第3の実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
グラフェンはカーボンナノチューブと異なり平面構造であるため、金属電極との接触面積をカーボンナノチューブに比べて、大きくすることが可能である。グラフェンと金属電極との接触面積を大きくすることにより、接触抵抗を低減することが可能である。
【0010】
グラフェン自身の単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、接触面積をSとして、接触抵抗は

と計算できる。rGPを10Ω/μm2、rCを10Ωμm2とした場合の計算結果を図1に示す。接触面積が大きくなるとともに、接触抵抗は

に収束する。接触面積を

あるいは

になる値に設定することにより、接触抵抗を収束値の10%増し、あるいは30%増しの値にまで、低減することができる。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1の実施例を図2を用いて説明する。本実施例は、グラフェンを配線材料として用いた例である。グラフェンはグラフェン配線201とグラフェンと金属電極との接合部202とからなる。基板上全面にグラフェン層を気相成長法により形成し、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法により図2の破線部分のようにパターンニングを行う。次に、その両端に金属電極203を形成する。
【0012】
グラフェンと金属電極との接合部202の面積Sは、グラフェン自身の単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、

を満たすように設定する必要がある。さらに望ましくは、

を満たすように設定する必要がある。また、rGPを10Ω/μm2、rCを10Ωμm2として、上式に代入することにより、グラフェンと金属電極との接合部202の面積Sは、1.0μm2以上に設定する必要がある。さらに望ましくは1.5μm2以上に設定する必要がある。
【0013】
上記のように、グラフェンと金属電極との接合部202の面積Sを設定することにより、接合部での接触抵抗を十分低い値に抑えることができる。このように、二つの金属電極203の間を、グラフェン配線201を用いて、金属電極203とグラフェン配線201の接触抵抗を十分小さい値に押さえて、電気的に接合することができた。なお、金属電極203とグラフェン電極201の接触抵抗は、通常の二端子法、もしくは四端子法により測定した。
【実施例2】
【0014】
本発明の第2の実施例を図3を用いて説明する。本実施例は、グラフェンを電界効果トランジスタのチャネル材料として用いた例である。グラフェンはグラフェンチャネル301,グラフェンとソース電極との接合部302,グラフェンとドレイン電極との接合部303、とからなる。基板上全面にグラフェン層を気相成長法により形成し、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法により図3の破線部分のようにパターンニングを行う。次に、その両端にソース電極304,ドレイン電極305を形成する。さらにゲート絶縁膜を介してゲート電極306を形成する。
【0015】
グラフェンとソース電極との接合部302およびグラフェンとドレイン電極との接合部303の面積Sは、グラフェン自身の単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、

を満たすように設定する必要がある。さらに望ましくは、

を満たすように設定する必要がある。また、上式に、rGPを10Ω/μm2、rCを10Ωμm2を代入することにより、グラフェンとソース電極との接合部302およびグラフェンとドレイン電極との接合部303の面積Sは、1.0μm2以上に設定する必要がある。さらに望ましくは1.5μm2以上に設定する必要がある。
【0016】
上記のようにグラフェンとソース電極との接合部302およびグラフェンとドレイン電極との接合部303の面積Sを設定することにより、接合部での接触抵抗を十分低い値に抑えることができる。
【実施例3】
【0017】
本発明の第3の実施例を図4を用いて説明する。本実施例は、グラフェンを発受光素子として用いた例である。グラフェン発光素子とは、バンドギャップを有するグラフェンに、一方の電極から電子を、もう一方の電極からホールを注入することにより、直接遷移により発光を得る素子のことである。また、グラフェン受光素子とは、バンドギャップを有するグラフェンに接続した二つの電極間に電圧を印加することにより、光照射によって生じた電子とホールを検知することにより、光を検出する素子である。グラフェンはグラフェン発受光素子401とグラフェンと金属電極との接合部402とからなる。基板上全面にグラフェン層を気相成長法により形成し、フォトリソグラフィ法とドライエッチング法により図4の破線部分のようにパターンニングを行う。次に、その両端に金属電極403を形成する。
【0018】
グラフェンと金属電極との接合部402の面積Sは、グラフェン自身の単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、

を満たすように設定する必要がある。さらに望ましくは、

を満たすように設定する必要がある。また、上式に、rGPを10Ω/μm2、rCを10Ωμm2を代入することにより、グラフェンと金属電極との接合部402の面積Sは、1.0μm2以上に設定する必要がある。さらに望ましくは1.5μm2以上に設定する必要がある。
【0019】
上記のようにグラフェンと金属電極との接合部402の面積Sを設定することにより、接合部での接触抵抗を十分低い値に抑えることができる。
【符号の説明】
【0020】
201 グラフェン配線
202,402 グラフェンと金属電極との接合部
203,403 金属電極
301 グラフェンチャネル
302 グラフェンとソース電極との接合部
303 グラフェンとドレイン電極との接合部
304 ソース電極
305 ドレイン電極
306 ゲート電極
401 グラフェン発受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンの単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、グラフェンと金属電極との接触面積Sが

を満たすことを特徴とするグラフェンと金属電極との電気的接合デバイス。
【請求項2】
前記接触面積Sが、

を満たすことを特徴とする請求項1に記載のグラフェンと金属電極との電気的接合デバイス。
【請求項3】
前記接触面積Sが、1.0μm2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のグラフェンと金属電極との電気的接合デバイス。
【請求項4】
前記接触面積Sが、1.5μm2以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のグラフェンと金属電極との電気的接合デバイス。
【請求項5】
前記グラフェンが、単層あるいは複数層からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のグラフェンと金属電極との電気的接合デバイス。
【請求項6】
グラフェンの単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、グラフェンと金属電極との接触面積Sが

を満たし、前記グラフェンが配線材料であることを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
グラフェンの単位面積あたりの電気抵抗をrGP[Ω/μm2]、グラフェンと金属電極との単位面積当たりの界面抵抗をrC[Ωμm2]とすると、グラフェンと金属電極との接触面積Sが

を満たし、前記グラフェンが電界効果トランジスタのチャネル材料,配線材料,発受光素子であることを特徴とする電子集積回路および光/電子集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−258246(P2010−258246A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107259(P2009−107259)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】